地震により鉛直上方の荷重が道路橋に作用したとき、橋脚及び上部工に対しこれらを上方へ変位させる力が働く。特許文献1-4で使用される緩衝体は、ゴム板と鋼板とを交互に積層した構造、又は、2枚の板の間にハニカム体又は円筒体を挟んだ構造であるが、このような構造の緩衝体では、地震による上部工及び橋脚の上方変位を抑制することは難しいと考えられる。その理由は、緩衝体が前者のゴム板と鋼板とを交互に積層した構造の場合、緩衝体は、荷重で弾性的に圧縮変形した後に必ず復元するから、上部工及び橋脚の上方変位を抑制できない。他方、緩衝体が2枚の板の間に挟んだハニカム体又は円筒体を座屈変形させる構造の場合、緩衝体は、初期降伏荷重で座屈変形が生じた後、エネルギーをそれ以上吸収できなくなるため、荷重が継続して加わると、上部工及び橋脚の変位を抑制できない。
このように、特許文献1-4の発明は、地震による上部工及び橋脚の上方変位を抑制することができないため、次のような問題を生じさせる。荷重が上部工に上昇方向の加速度を生じさせるような大きいものである場合、荷重の作用が終了した後も、上部工が慣性で上昇を継続させる。このとき、特許文献1のように橋脚がフーチングに固定されていると、橋脚の上部に上部工の慣性力に基づく上向きの力が作用すると共に、橋脚下部に対してはフーチングの固定力に基づく下向きの力が作用し、結果的に、鉛直上下方向に橋脚を引っ張る力が働くことになる。この引っ張り力が橋脚の引っ張り強度を超えると、橋脚に亀裂や破壊が生じる。
又、特許文献2、4のように、橋脚がフーチングに固定されておらず昇降可能な場合は、荷重の作用により上部工と橋脚とが慣性で一体に上昇した後、これらが重力で下降する。上方への変位量が大きいと、下降して着地した時の衝撃も大きくなり、これによって特に上部工と橋脚との接続部分に亀裂や破壊が生じるおそれがある。
上記の問題点は、地震により鉛直上方の荷重が道路橋に作用したときに、上部工が上方に変位することに起因していると考えられる。従って本発明の目的は、道路橋が地震による鉛直上方への荷重を受けたときに、上部工の上方変位を抑制できる手段を提供することである。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、橋脚と、橋脚の上部に設置される上部工と、橋脚と上部工との間に配置される緩衝体とを備える道路橋の橋脚構造であって、上部工と橋脚とは、両者間の距離が、緩衝体の変形に従って変化するように構成され、緩衝体は、橋脚及び上部工それぞれの圧縮強度未満である鉛直方向の予め定められた降伏荷重を有し、鉛直方向に加えられる荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は橋脚と上部工との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能であり、緩衝体の周囲に配置される支持体を更に備え、支持体は、緩衝体の鉛直方向の変形に抵抗する抵抗力を発揮するものであって、緩衝体が降伏開始点に達するまでの予め定めた鉛直方向の変位量で塑性変形して抵抗力を消失又は低減するように設定されているものである。
このように構成すると、地震により道路橋に対し鉛直上方への荷重が加えられたとき、上部工は慣性によりその位置に留まろうとするのに対し、上部工と橋脚とは距離が可変であることにより橋脚だけが上方へ移動するため橋脚を通じて荷重が作用し、この荷重に対し、はじめに支持体が抵抗力を発揮する。支持体の変位量が、緩衝体の降伏開始点に達するまでの予め定めた鉛直方向の変位量に達すと、支持体は抵抗力を失う。支持体が抵抗力を失った時点では緩衝体は降伏開始点に到達していないので、上部工と橋脚との間に配置された緩衝体が、橋脚を通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。緩衝体は、荷重が降伏荷重に達するまでは、弾性変形し、荷重が降伏荷重以上となったときは塑性変形し、更に荷重が継続したときは、橋脚と上部工との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させることにより、いずれの場合もエネルギーを吸収して、上部工及び橋脚に作用する応力が降伏荷重を超えないように機能する。
請求項2記載の発明は、フーチングと、フーチングの上部に設置される橋脚と、フーチングと橋脚との間に配置される緩衝体とを備える道路橋の橋脚構造であって、フーチングの表面にベースプレートが固定され、ベースプレートの上に鋼板から成る支持材が設置され、支持材によって、橋脚の基部及び緩衝体を収納する収納部が設けられ、橋脚とフーチングとは、両者間の距離が、緩衝体の変形に従って変化するように構成され、緩衝体は、橋脚及びフーチングそれぞれの圧縮強度未満である鉛直方向の予め定められた降伏荷重を有し、鉛直方向に加えられる荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は橋脚とフーチングとの相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能であるものである。
このように構成すると、地震により道路橋に対し鉛直上方への荷重が加えられたとき、橋脚とフーチングとは距離が可変であるので、両者の間に配置された緩衝体が、橋脚を通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。緩衝体は、荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重以上となったときは塑性変形し、更に荷重が継続したときは、橋脚とフーチングとの相対的変位量が予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させることにより、いずれの場合もエネルギーを吸収して、橋脚及びフーチングに作用する応力が降伏荷重を超えないように機能する。
請求項3記載の発明は、橋脚と、橋脚の上部に設置される上部工と、橋脚と上部工との間に配置される第1の緩衝体及び第2の緩衝体を備える道路橋の橋脚構造であって、上部工と橋脚とは、両者間の距離が、第1の緩衝体及び第2の緩衝体の変形に従って変化するように構成され、第1の緩衝体は、上部工及び橋脚それぞれの圧縮強度未満である鉛直方向の予め定められた降伏荷重を有し、鉛直方向に加えられる荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は橋脚と上部工との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能であり、第2の緩衝体は、第1の緩衝体の鉛直方向の変形に抵抗する抵抗力を弾性変形することによって発揮するものであって、第1の緩衝体の降伏開始点における変位量以下の予め定めた変位量で抵抗力を失うと共に、抵抗力を失う時に上部工及び橋脚に生じる圧縮力が上部工及び橋脚の圧縮強度未満の予め定めた値となるように設計されているものである。
このように構成すると、地震により道路橋に対し鉛直上方への荷重が加えられたとき、上部工と橋脚とは距離が可変であるので、両者の間に配置された第1の緩衝体が、橋脚を通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。第2の緩衝体は、第1の緩衝体が圧縮変形すると、弾性変形することによってこの変形に抵抗する抵抗力を発揮する。そして第2の緩衝体は、変位量が第1の緩衝体の降伏開始点における変位量以下の予め定めた変位量に達すると、抵抗力を失う。第2の緩衝体が抵抗力を失った時点では、第1の緩衝体は降伏開始点に到達していないので、荷重がまだ継続している場合、第1の緩衝体は、降伏荷重に達するまで弾性変形する。荷重が第1の緩衝体の降伏荷重以上となったとき、第1の緩衝体は塑性変形する。更に荷重が継続したとき、第1の緩衝体は、橋脚と上部工との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。すなわち、荷重が作用する初期段階では、第1の緩衝体及び第2の緩衝体がいずれも弾性変形することによりエネルギーを吸収し、第2の緩衝体が予め定めた変形量に達して抵抗力を失う際にエネルギーを吸収し、それ以降は、第1の緩衝体が塑性変形することによりエネルギーを吸収して、いずれの場合も、上部工及び橋脚に作用する応力が降伏荷重を超えないように機能する。
請求項4記載の発明は、橋脚と、橋脚の上部に設置される上部工と、橋脚と上部工との間に配置される第1の緩衝体及び第2の緩衝体を備える道路橋の橋脚構造であって、上部工と橋脚とは、両者間の距離が、第1の緩衝体及び第2の緩衝体の変形に従って変化するように構成され、第1の緩衝体は、上部工及び橋脚それぞれの圧縮強度未満である鉛直方向の予め定められた降伏荷重を有し、鉛直方向に加えられる荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は橋脚と上部工との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能であり、第2の緩衝体は、第1の緩衝体の鉛直方向の変形に抵抗する抵抗力を弾性変形することによって発揮するものであって、第1の緩衝体の降伏開始点以降における予め定めた変位量で抵抗力を失うと共に、抵抗力を失う時に上部工及び橋脚に生じる圧縮力が上部工及び橋脚の圧縮強度未満の予め定めた値となるように設計されているものである。
このように構成すると、地震により道路橋に対し鉛直上方への荷重が加えられたとき、上部工と橋脚とは距離が可変であるので、両者の間に配置された第1の緩衝体が、橋脚を通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。第2の緩衝体は、第1の緩衝体が圧縮変形すると、弾性変形することによってこの変形に抵抗する抵抗力を発揮する。第1の緩衝体は、荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は橋脚と上部工との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能である。第2の緩衝体は、第1の緩衝体が塑性変形を開始した時点では降伏開始点に到達していないので、荷重が継続する場合、その降伏荷重に達するまで弾性変形して第1の緩衝体に抵抗力を継続して与える。そして変位量が予め定めた変位量に達すると、第2の緩衝体は抵抗力を失う。すなわち、荷重が作用する初期段階では、先ず第1の緩衝体が弾性変形することでエネルギーを吸収し、次いで降伏荷重に達した後は塑性変形を継続させることでエネルギーを吸収し、その際、第2の緩衝体も共同して抵抗力を発揮し、最後に予め定めた変形量に達して第2の緩衝体が抵抗力を失う際にエネルギーを吸収するというように、段階的にエネルギーの吸収量を増大させる。
請求項5記載の発明は、水平方向の面で分割された第1部分と第2部分とを有する橋脚と、第1部分と第2部分との間に配置される緩衝体とを備える道路橋の橋脚構造であって、第1部分と第2部分とは、両者間の距離が、緩衝体の変形に従って変化するように構成され、緩衝体は、第1部分及び第2部分それぞれの圧縮強度未満である鉛直方向の予め定められた降伏荷重を有し、鉛直方向に加えられる荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は第1部分と第2部分との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能であるものである。
このように構成すると、地震により道路橋に対し鉛直上方への荷重が加えられたとき、第1部分と第2部分とは距離が可変であるので、両者の間に配置された緩衝体が圧縮方向に変形する。緩衝体は、荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形することでエネルギーを吸収し、荷重が降伏荷重以上となったときは塑性変形することでエネルギーを吸収し、更に荷重が継続したときは、第1部分と第2部分との相対的変位量が予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させることによりエネルギーを吸収して、いずれの場合も、第1部分及び第2部分に作用する応力が降伏荷重を超えないように機能する。
請求項6記載の発明は、請求項2又は請求項5記載の発明の構成において、緩衝体の周囲に配置される支持体をさらに備え、支持体は、緩衝体の鉛直方向の変形に抵抗する抵抗力を発揮するものであって、緩衝体が降伏開始点に達するまでの予め定めた鉛直方向の変位量で塑性変形して抵抗力を消失又は低減するように設定されているものである。
このように構成すると、地震により道路橋に対し鉛直上方への荷重が加えられたとき、はじめに支持体が荷重に抵抗する抵抗力を発揮する。支持体の変位量が、緩衝体の降伏開始点に達するまでの予め定めた鉛直方向の変位量に達すと、支持体は抵抗力を失う。支持体が抵抗力を失った時点では緩衝体は降伏開始点に到達していないので、荷重が更に継続する場合、緩衝体は降伏荷重に達するまで弾性変形し、降伏荷重を超えると塑性変形する。更に荷重が継続したとき、緩衝体は予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。
以上説明したように、請求項1記載の発明は、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように緩衝体が変形することにより、上部工が上方へ変位するのが抑制されるから、従来のように慣性力が上部工に生じる可能性が少なくなる。従って、橋脚に対しこれを鉛直上下方向に引っ張る力が作用することが無くなる又は低減するので、これに亀裂や破壊が発生するのが防止される。又、緩衝体は、上部工及び橋脚に作用する応力が降伏荷重を超えないように機能し、降伏荷重は上部工及び橋脚の圧縮強度未満に設定されているから、地震により上部工及び橋脚の圧縮強度以上の荷重が作用したとしても、これらの破壊を防止することができる。更に、地震により作用する鉛直方向の荷重に対し、初めに支持体が抵抗力を発揮し、変位量が緩衝体の降伏開始点に達する前にこの支持体が塑性変形してエネルギーを吸収するから、地震により道路橋が初めに大きな衝撃を受けたときに、この衝撃による応力を緩和することができるので、道路橋の破壊を防止する効果が向上する。
請求項2記載の発明は、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように緩衝体が変形することにより、上部工が上方へ変位するのが抑制されるから、従来のように慣性力が橋脚及び上部工に生じる可能性が少なくなる。よって、橋脚に対しこれを鉛直上下方向に引っ張る力が作用することが無くなる又は低減するだけでなく、上部工と橋脚とが一体に上昇した後、重力により下降して着地したときの衝撃によって、特に上部工と橋脚との接続部分に亀裂や破壊が生じる問題を防止できる。又、緩衝体は、橋脚及びフーチングに作用する応力が降伏荷重を超えないように機能し、降伏荷重は橋脚及びフーチングの圧縮強度未満に設定されているので、地震により橋脚及びフーチングの圧縮強度以上の荷重が作用したとしても、これらの破壊を防止することができる。
請求項3記載の発明は、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように第1の緩衝体及び第2の緩衝体が変形することにより、上部工の上方への変位が抑制される。よって、橋脚に対しこれを鉛直上下方向に引っ張る力が作用することが無くなる又は低減するので、これに亀裂や破壊が発生するのが防止される。又、第2の緩衝体が初期に受ける荷重のエネルギーを吸収するから、第1の緩衝体を単独で用いた場合と比べて、エネルギーの吸収能力を大きくすることができ、地震による最初の衝撃を緩和することが可能となる。そして第1の緩衝体及び第2の緩衝体は、上部工及び橋脚に作用する応力が降伏荷重を超えないように機能し、降伏荷重は上部工及び橋脚の圧縮強度未満に設定されているので、地震により上部工及び橋脚の圧縮強度以上の荷重が作用したとしても、これらの破壊を防止することができる。
請求項4記載の発明は、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように第1の緩衝体及び第2の緩衝体が変形することにより、上部工の上方への変位が抑制されるから、従来のように慣性力が上部工に生じる可能性が少なくなる。よって、橋脚に対しこれを鉛直方向に上下に引っ張る力が作用することが無くなる又は低減するので、これに亀裂や破壊が発生するのが防止される。又、段階的にエネルギーの吸収量を増大させるように設計されているから、第1の緩衝体だけでは地震の荷重による変位を十分に抑制できない場合でも、第2の緩衝体が変形することによりエネルギーを吸収して変位を抑制することができるので、道路橋に及ぼされる衝撃を確実に緩和して、上部工及び橋脚の破壊を防止する確実性を高めることができる。
請求項5記載の発明は、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように緩衝体が変形することにより、第1部分に対し第2部分が上方へ変位するのが抑制されるから、従来のように慣性力が橋脚及び上部工に生じる可能性が少なくなる。よって、橋脚に対しこれを鉛直方向に上下に引っ張る力が作用することが無くなる又は低減する。又、緩衝体が弾性変形又は塑性変形してエネルギーを吸収することにより、橋脚の第1部分及び第2部分に及ぼす応力を降伏荷重を超えないように抑制するから、これらの破壊を防止することができる。
請求項6記載の発明は、請求項2又は請求項5記載の発明の効果に加えて、地震により作用する鉛直方向の荷重に対し、初めに支持体が抵抗力を発揮し、変位量が緩衝体の降伏開始点に達する前にこの支持体が塑性変形してエネルギーを吸収するから、地震により道路橋が初めに大きな衝撃を受けたときに、この衝撃による応力を緩和することができるので、道路橋の破壊を防止する効果が向上する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による橋脚構造を概略的に示す図であって、道路橋を長手方向に対し垂直な方向で断面した状態の図であり、図2は、図1における緩衝体の周辺を拡大して示す図であり、図3は、本発明の第1の実施の形態に使用する緩衝体の変位量と荷重との関係を示すグラフである。
本発明の第1の実施形態による道路橋の橋脚構造は、上部工2と橋脚3との間に緩衝体10を配置した構成とするものである。
図1を参照して、道路橋1Aは、路面を構成する床版2a、橋桁2b、補強材2c等から成る上部工2、上部工2を支持する橋脚3、及び、橋脚を支持するフーチング4等を備える。橋脚3は、上部工2の直下に位置する頂版3aと、フーチング4上に立設されて頂版3aを支持する柱3bとを有している。フーチング4は、全体又は一部が表層地盤S1に埋設されると共に、岩盤等の固い支持層S2に達するように打設された複数の杭5によって支持される。
本例の橋脚構造は、上部工2と橋脚3との間に緩衝体10を配置したところを特色としている。具体的には、例えば、図2に示すように、橋脚3の頂版3aの上面に凹部30を形成すると共に、必要に応じ底板31を配置し、この底板31上に載置した緩衝体10によって、橋桁2bの下面を支持する構成としている。緩衝体10は、鉛直方向に圧縮可能な変位量に応じて決定される寸法だけ、凹部30から上方に突出する。又、上部工2と橋脚3との距離、詳しくは橋桁2bと頂版3との間の距離は、緩衝体10が変形するのに応じて変化することが可能である。
緩衝体10は、例えば、弾性を有する合成樹脂の層と、織布・不織布・編み布などの繊維の層とを交互に積層したものである。この緩衝体10は、圧縮荷重を作用させたとき、図3に示すように、この荷重が降伏開始点に対応する降伏荷重(初期降伏荷重)に達するまでは弾性変形することでエネルギーを吸収し、この荷重が初期降伏荷重を超えると、内部の繊維の層の1つが破断することによって塑性変形することでエネルギーを吸収し、更に圧縮荷重が継続して作用したときは、内部の繊維の層が断続的に破断することにより、予め定める変位量に達するまで塑性変形を反復して生起させることでエネルギーを吸収するように設計されている。そして吸収したエネルギーは、ゴム等の弾性体のように蓄積されるのではなく、塑性変形(繊維層の破断)に消費される。従って上記緩衝体10は、降伏開始点以降、変位が増大しても、塑性変形によるエネルギーの吸収によって荷重を増大させない構造となっている。尚、緩衝体10の降伏荷重は、上部工2及び橋脚3の圧縮強度未満となるように設定されている。
上記のように構成された本例の橋脚構造は、地震により道路橋1Aに対し鉛直上方へ突き上げるような荷重が加えられたとき、上部工2は慣性によりその位置に留まろうとするのに対し、橋脚3は上方へ移動しようとするから、橋脚3を通じて作用する荷重により、上部工2と橋脚3との間に配置された緩衝体10が圧縮方向に変形する。このとき、上部工2と橋脚3とは距離が可変であるので、緩衝体10の圧縮変形に従って、上部工2と橋脚3との距離が縮まる。緩衝体10は、荷重が初期降伏荷重に達するまでは圧縮方向に弾性変形し、荷重が初期降伏荷重以上となったときは、内部の繊維層を破断させて塑性変形する。緩衝体10の降伏荷重は上部工2及び橋脚3の圧縮強度未満に設定されているから、緩衝体10は、塑性変形を生じることで地震のエネルギーを吸収して、上部工2及び橋脚3に及ぼす応力がこれらの圧縮強度を超えないよう機能するから、上部工2及び橋脚3に損傷や破壊が発生するのを防止することができる。
緩衝体10に対し降伏荷重以上の荷重が継続して作用したときは、緩衝体10の内部の複数の繊維の層が順に破断することにより、予め定める変位量に達するまで塑性変形を断続的に継続させる。従って、継続して荷重が作用したときには、塑性変形を反復して生じさせることで、上部工2及び橋脚3の損傷・破壊を防止する。
このように、本例の橋脚構造によれば、地震により鉛直上方に向かう荷重を道路橋が受けたとき、上記のように緩衝体が圧縮方向に弾性変形し、次いで塑性変形してエネルギーを吸収することにより、上部工の上方への変位を抑制する。その結果、従来のように上部工に上方への変位が生じる可能性が少なくなるから、橋脚に対しこれを鉛直方向に上下に引っ張る力が作用することが無くなるか又は低減するので、橋脚に亀裂や破壊を発生させることが防止される。
又、緩衝体の降伏荷重は上部工及び橋脚の圧縮強度未満に設定されているので、地震により上部工及び橋脚の圧縮強度以上の荷重が作用したとしても、緩衝体が継続して塑性変形することで、これらの破壊を防止することができる。
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態による橋脚構造を概略的に示す図であって、道路橋を長手方向に対し垂直な方向で断面した状態の図であり、図5は、図4における緩衝体の周辺を拡大して示す図である。
本発明の第2の実施形態による道路橋の橋脚構造は、橋脚3A-3Cとフーチング4A-4Cとの間に緩衝体10A-10Cを配置した構成とするものである。本実施の形態は、上部工と橋脚とが一体構成されるラーメン構造の道路橋等に適用することができる。
図4を参照して、道路橋1Bは、上部工2が、橋脚3A-3Cによって支持され、橋脚3A-3Cは地盤に埋設されたフーチング4A-4Cによって支持され、フーチング4A-4Cは支持層に達するように打設された複数の杭5によって支持される構成を有している。橋脚3A-3Cは上部工2と一体に構成され、ラーメン構造を形成している。
本例の橋脚構造は、橋脚3A-3Cとフーチング4A-4Cとの間に緩衝体10A-10Cを配置したところを特色としている。具体的には、例えば、図5に示すように、フーチング4Aの表面にベースプレート40をアンカーボルト41で固定し、ベースプレート40の上に、鋼板から成り補鋼リブ43を有する支持材42で、橋脚3Aの基部及び緩衝体10Aを収納する収納部44を設ける。そして、この収納部44内に配置した緩衝体10Aで、橋脚3Aの下面を支持する構成としている。尚、緩衝体10Aの上下には天板45及び底板46が配置され、これにより緩衝体10Aと橋脚3A及びフーチング4Aとの間で作用する荷重及び応力を均等化している。又、橋脚3Aとフーチング4Aとの距離は、緩衝体10Aが変形するのに応じて変化することが可能である。
緩衝体10は、例えば、第1の実施の形態で使用したものと共通のものを使用できる。従って、その変位量と荷重との関係は、図3に例示した特性を有している。
図5を参照して、上記のように構成された本例の橋脚構造は、地震により道路橋1Bに対し鉛直上方へ突き上げるような荷重が加えられたとき、上部工2及び橋脚3Aは慣性によりその位置に留まろうとするので、橋脚3Aとフーチング4Aとの間に配置された緩衝体10Aが、フーチング4Aを通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。
この緩衝体10Aの圧縮変形に従い、橋脚3Aとフーチング4Aとは両者間の距離を縮める。そして緩衝体10Aは、荷重が初期降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が初期降伏荷重以上になると、内部の繊維層を破断させて塑性変形する。緩衝体の初期降伏荷重は橋脚及びフーチングの圧縮強度未満に設定されているから、塑性変形を生じることで地震のエネルギーを吸収し、橋脚及びフーチングに及ぼす荷重がこれらの圧縮強度以上になるのを抑制して、橋脚及びフーチングの損傷や破壊を回避する。緩衝体に対し、降伏荷重以上の荷重が継続して作用したときは、内部の複数の繊維の層が順に破断することにより、予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。従って、継続して荷重が作用したときには、断続的に塑性変形を生じさせることにより、橋脚及びフーチングの損傷・破壊が防止される。
このように、本例の橋脚構造によれば、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように緩衝体が圧縮方向に弾性変形し、次いで塑性変形することにより、橋脚及び上部工が上方へ変位するのを抑制する。本例では、橋脚の基部がフーチングに固定されていないから、上部工が上方に変位した場合でも橋脚が鉛直方向の上下に引っ張られるおそれはない。しかし、上部工と橋脚とが一体に上昇した場合は、上昇後、重力により必ず下降することになる。そして、上方への変位量が大きければそれだけ着地時の衝撃も大きくなるから、特に上部工と橋脚との接続部分に亀裂や破壊が生じるおそれがある。しかし本例の橋脚構造によれば、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように緩衝体が変形することにより、橋脚及び上部工の上方への変位を抑制するから、着地時の衝撃が低減され、損傷や破壊が生じるのを防止することができる。
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の第3の実施の形態による橋脚構造を示す図であって、第1の緩衝体及び第2の緩衝体の周辺を拡大して示す図であり、図7は、本発明の第3の実施の形態に使用する第1の緩衝体及び第2の緩衝体の変位量と荷重との関係を示すグラフである。
本発明の第3の実施形態による道路橋の橋脚構造は、上部工2と橋脚3との間に第1の緩衝体11及び第2の緩衝体12を配置した構成とするものである。
図6を参照して、道路橋1Cの路面を構成する床版2a、橋桁2b、補強材2c等を備える上部工2が、橋脚3によって支持され、橋脚3がフーチングによって支持される構成は、上記第1の実施の形態と共通である。又、上部工2と橋脚3との距離が可変に構成されている点も第1の実施の形態と共通である。
本例の橋脚構造は、上部工2と橋脚3との間に第1の緩衝体11及び第2の緩衝体12から成る緩衝構造を設けたところを特色としている。具体的には、図6に示すように、橋脚3の頂版3aの上面に凹部30を形成し、この凹部30内に収納した第1の緩衝体11の上面に、橋桁2bの下面を支える支持プレート33を配置すると共に、橋脚3の頂版3aに一端を埋設したアンカーボルト32を、進退自在に支持プレート33を貫通させて頭部32aを上方へ突出させる。そして、アンカーボルト32の突出部分に、コイルばね等の第2の緩衝体12を配置する。この第2の緩衝体12は、上端がアンカーボルト32の頭部32aに固定され、下端が支持プレート33の上面に固定され、頭部32aと支持プレート33との間の距離の拡大に対し抵抗力を発揮するように設定されている。尚、第1の緩衝体11には、上記第1の実施形態と共通のものを使用することができる。
第2の緩衝体12は、第1の緩衝体11の変形に伴う支持プレート33の変位に対し、弾性変形することによって抵抗力を発揮するものである。図7に示すように、第2の緩衝体の特性は、第1の緩衝体の降伏開始点における変位量以下の予め定めた変位量で抵抗力を失うと共に、抵抗力を失う時の降伏荷重が、上部工2及び橋脚3の圧縮強度未満の予め定めた値となるように設計されている。
図6を参照して、上記のように構成された本例の橋脚構造は、地震により道路橋1Cに対し鉛直上方へ突き上げるような荷重が加えられたとき、橋脚3が上方へ変位しようとするのに対し、上部工2は慣性によりその位置に留まろうとし、且つ、上部工2と橋脚3とは距離が可変であるので、両者の間に配置された第1の緩衝体11が、橋脚3を通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。このとき、第1の緩衝体11の圧縮変形に伴い橋脚3が支持プレート33に接近し、支持プレート33に対しアンカーボルト32を上昇させる結果、第2の緩衝体12は弾性的に伸長する。この伸長時、第2の緩衝体12は、伸長量に比例する収縮力を働かせるので、第1の緩衝体11の圧縮変形に対する抵抗力を発揮することになる。
図7に示すように、第2の緩衝体12の変位量が、第2の緩衝体12の降伏開始点に対応する予め定めた変位量に達すると、破断などを生じて抵抗力を失う。尚、この抵抗力の喪失は、第2の緩衝体12自体を破断させる以外に、第2の緩衝体12とアンカーボルト32又は支持プレート33との固定部が破壊されるように構成することも可能である。
第2の緩衝体12が破断などにより抵抗力を失った時点では、第1の緩衝体11は、降伏開始点に到達していないように設定されている。従って、荷重が更に継続する場合、第1の緩衝体11は、その降伏開始点に対応する変位量に達するまで弾性変形する。そして、荷重が第1の緩衝体11の初期降伏荷重以上となったとき、第1の緩衝体11は塑性変形を生じさせる。更に、降伏荷重以上の荷重が継続したとき、第1の緩衝体11は、予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。
このように、本例の橋脚構造によれば、地震による鉛直上方の荷重を道路橋が受けたとき、上記のように第1の緩衝体及び第2の緩衝体が変形することにより、上部工の上方への変位が抑制されるから、従来のような上方変位後の慣性力が上部工に生じる可能性が少なくなる。よって、橋脚に対しこれを鉛直方向に上下に引っ張る力が作用することが無くなる又は低減するので、橋脚に亀裂や破壊が発生するのが防止される。
特に本例では、荷重が作用する初期段階において、第1の緩衝体及び第2の緩衝体がいずれも弾性変形することにより、エネルギーを吸収する。そして第2の緩衝体が、予め定めた変位量に達したときに破断などを生じさせて抵抗力を失う。この抵抗力を失う際に、第2の緩衝体が多くのエネルギーを最初に吸収するから、第1の緩衝体を単独で用いた場合と比べて、エネルギーの吸収能力を大きくすることができる(図7参照)。
第2の緩衝体が抵抗力を失った後、更に荷重が継続して作用するときは、第1の緩衝体がエネルギーを吸収して、上部工及び橋脚に及ぼす応力を降伏荷重以下に抑えるので、地震により上部工及び橋脚の圧縮強度以上の荷重が作用したとしても、これらの破壊を防止することができる。
尚、地震の衝撃に対し、第2の緩衝体12の破断のみによって荷重を緩和することができ、第1の緩衝体11に塑性変形が生じなかった場合は、第2の緩衝体12だけを交換することで、継続してこの橋脚構造を使用することが可能である。
[第4の実施の形態]
図8は、本発明の第4の実施の形態に使用する第1の緩衝体及び第2の緩衝体の変位量と荷重との関係を示すグラフである。
この実施の形態は、上記第3の実施の形態において、第2の緩衝体の物理的特性を変更したものである。すなわち第2の緩衝体が、抵抗力を失う降伏開始点を、第1の緩衝体の降伏開始点以降における予め定めた変位量となるように設定した点が異なる。尚、第2の緩衝体が、第1の緩衝体の変形に抵抗する抵抗力を弾性変形することによって発揮するものである点、及び、第2の緩衝体が抵抗力を失う時に上部工及び橋脚に生じる圧縮力が、上部工及び橋脚の圧縮強度未満の予め定めた値となるように設計されている点は共通である。又、上部工、橋脚、及び、第1の緩衝体の構成については、図6に示す橋脚構造と共通である。
図6を参照して、本例の橋脚構造は、地震により道路橋1Cに対し鉛直上方へ突き上げるような荷重が加えられたとき、上部工2と橋脚3とは距離が可変であるので、両者の間に配置された第1の緩衝体11が、橋脚3を通じて作用する荷重により圧縮方向に変形する。このとき、第1の緩衝体11の圧縮変形に伴い橋脚3が支持プレート33に接近し、支持プレート33に対してアンカーボルト32を上昇させる結果、第2の緩衝体12が弾性的に伸長する。この伸長時、第2の緩衝体12は、伸長量に比例する収縮力を働かせるので、第1の緩衝体11の圧縮変形に対する抵抗力を発揮することになる。
図8に示すように、第1の緩衝体11は、変位量が降伏開始点に対応する予め定めた変位量に達するまでは弾性変形し、降伏開始点に到達した以降は塑性変形する。そして荷重が更に継続する場合、予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。第2の緩衝体12は、その降伏開始点の位置が第1の緩衝体11の降伏開始点以降に設定されているので、第1の緩衝体が弾性変形し、次いで塑性変形する間、同時に弾性変形する。そして、変位量が予め定めた量に達すると破断などを生じて抵抗力を失う際にエネルギーを吸収する。
このように、本例の橋脚構造によれば、荷重が作用する初期段階では、第1の緩衝体11が弾性変形し、次いで塑性変形することによりエネルギーを吸収すると同時に、第2の緩衝体12も弾性変形し、変位量がその降伏開始点に達して破断するまで弾性変形を継続してエネルギーを吸収する。従って、エネルギーの吸収量が大きいから、第1の緩衝体11だけでは地震の荷重による変位を十分に抑制できない場合でも、第2の緩衝体12が弾性変形し、その後破断することにより変位を抑制するから、道路橋1Cに及ぼされる衝撃を確実に緩和して、上部工及び橋脚の破壊を防止する確実性を高めることができる。
[第5の実施の形態]
図9は、本発明の第5の実施の形態による橋脚構造を示す図である。
図9を参照して、本実施の形態の道路橋1Dは、橋脚3が、水平方向の面で分割された第1部分3αと第2部分3βとを有し、これら第1部分3αと第2部分3βとの間に中間緩衝体10yが配置される構造に特色を有している。第1部分3αと第2部分3βとは、両者間の距離が中間緩衝体10yの変形に従って変化するように構成され、中間緩衝体10yは、第1部分3α及び第2部分3βそれぞれの圧縮強度未満である鉛直方向の予め定められた降伏荷重を有し、作用する荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重を超えると塑性変形し、この塑性変形は第1部分3αと第2部分3βとの相対的変位量が予め定める変位量に達するまで継続可能であるものである。
尚、図9において、上部工2と橋脚3との間に上位の緩衝体10xを配置する構造は第1の実施の形態と共通であり、橋脚3とフーチング4との間に下位の緩衝体10zを配置する構造は第2の実施の形態と共通であるので、ここでの説明は省略する。
本実施の形態の構成によれば、地震により道路橋に対し鉛直上方へ荷重が作用したとき、第1部分3αと第2部分3βとの間に配置された中間緩衝体10yが圧縮方向に変形する。中間緩衝体10yは、荷重が降伏荷重に達するまでは弾性変形し、荷重が降伏荷重以上となったときは塑性変形し、更に荷重が継続したときは、第1部分3αと第2部分3βとの相対的変位量が予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。これにより、上部工2が上方へ変位するのを抑制して、慣性力で橋脚が鉛直上下方向に引っ張られるのを防止する。又、中間緩衝体10yは、上部工2と橋脚3とが一体に上昇した場合、重力により下降して着地したときの衝撃エネルギーを吸収して、第1部分3α及び第2部分3βに亀裂や破壊が発生するのを防止することができる。
[第6の実施の形態]
図10は、本発明の第6の実施の形態による橋脚構造を示す図であって、(A)は緩衝体の周囲に支持体を設けた状況を示す図、(B)は支持体が塑性変形した状況を示す図である。
図10を参照して、本実施の形態の道路橋1Eは、橋脚3とフーチング4との間に配置される緩衝体10の周囲に、支持体51を設けたところを特色とする。支持体51は、例えば金属やFRP等の剛性の高い材質で製作した筒状の部材である。支持体51は、その剛性により、緩衝体10の鉛直方向の変形に抵抗する抵抗力を発揮するものであって、緩衝体10が降伏開始点に達するまでの予め定めた鉛直方向の変位量で座屈等の塑性変形を生じることで、その抵抗力を消失又は低減するように設定されている。尚、橋脚3の荷重を支持体51に均一に伝達させるため、橋脚3の下面と緩衝体10の上面との間には、平板材52が配置される。
本実施の形態の構成によれば、地震により鉛直上方への荷重が加えられたとき、当初は(A)に示すように、支持体51が荷重に抵抗する抵抗力を発揮する。そして支持体51の変位量が緩衝体10の降伏開始点より以前の予め定めた変位量に達すると、(B)に示すように支持体51は座屈等の塑性変形を生じて抵抗力を失う。支持体51が抵抗力を失った時点では緩衝体10は降伏開始点に到達していないので、荷重が更に継続する場合、緩衝体10は降伏荷重に達するまで弾性変形し、降伏荷重を超えると塑性変形する。更に荷重が継続したとき、緩衝体は予め定める変位量に達するまで塑性変形を継続させる。
このように本実施の形態では、地震により作用する鉛直方向の荷重に対し、支持体51によるエネルギー吸収と緩衝体10によるエネルギー吸収とを利用するから、緩衝体10を単独で使用する場合と比べて、強い地震に対する変位の抑制効果が大きくなり、道路橋の破壊を防止する確実性を高めることができる。又、荷重が作用したときに、支持体51が最初に塑性変形することでエネルギーを吸収するから、地震による初期の強い衝撃に対し、上部工や橋脚の変位を抑制する効果に優れる。
[応用例]
図11は、本発明の応用例を示す図である。
図11に示すように、本発明は、地下道や地下鉄などが施工される地下空間7の天井部8を支持する支持構造に応用することが可能である。すなわち、地盤9に形成した地下空間7の天井部8を支持するための支持柱6と地下空間7の床部7a等の適当な位置に緩衝体10を設ける。これにより、地震による鉛直方向の荷重が作用したときに、支持柱6や天井部8が損傷するのを防止することができる。
尚、上記の第1、第3、又は第4の実施の形態と、第2の実施の形態とは、同時に施工してもよい。
上記の第3、第4の実施の形態において、第2の緩衝体を、橋脚の頂版と支持プレートとの間に配置し、頂版と支持プレートとの接近に対し弾性的に抵抗力を発揮すると共に、予め定めた変位量に到達すると座屈するように設計された弾性体(例えばコイルばね、板バネ、合成ゴム等)とすることも可能である。
上記の第5の実施の形態において、上位の緩衝体及び下位の緩衝体はいずれか一方又は両方を省略することが可能である。
上記の第6の実施の形態において、支持体は、筒状のほか、複数の板部材を緩衝体の周囲に起立状態に配置したものや、複数のフレームを連結して組み立てたもの等であってもよい。又、上記の第6の実施の形態は、上部工と橋脚との間に位置される上位の緩衝体、橋脚の途中に配置される中間緩衝体、橋脚とフーチングとの間に配置される下位の緩衝体のいずれか1つ以上に適用することができる。
尚、本発明の各実施の形態は道路橋の橋脚構造を前提としているが、本願にあっては、本発明の権利範囲に、本発明を同様に適用できる鉄道橋の橋脚構造も含むことを意図するものである。この場合、特許請求の範囲等に記載した「道路橋」は「鉄道橋」と読み替えればよい。
又、本発明は、例えば鉄筋コンクリート造りのビルディング等の建築物の柱構造体にも同様に適用することが可能である。すなわち建築物において、緩衝体を、躯体天井部と柱との間、柱と床スラブとの間、又は柱の中間位置に配置することにより、鉛直方向の荷重を緩和できる柱構造体を提供することができる。