JP7269551B2 - 電動車両 - Google Patents

Description

本発明は、電動車両に関し、さらに詳しくは、電動歩行補助車としても利用可能な小型電動車両に係るものである。

従来、歩行に負担を抱える利用者のための車両としては、電動車椅子などの小型電動車両や、手押し車型の電動歩行補助車が利用されている。例えば、特許文献１には、ハンドルの角度を変更可能とし、かつ、座席を前後反転可能とすることで、利用者自身が搭乗して操縦する自走モードの他に、利用者を着座させた状態で介護者等が歩行しながら操縦する介助歩行モードを有する電動車両が開示されている。しかし、この電動車両は、利用者自身が歩行しながら操縦する電動歩行補助車としての利用は考慮されていない。

特開２００２－２３３００７号公報

小型電動車両は、座席を有する分、従来の電動歩行補助車に比べてホイールベースが長く、電動歩行補助車として利用するには取り回しが良くない。電動歩行補助車は、短車長で小回りが利く方が好ましい。そこで、本発明者らは、前後に伸縮可能な車体と折り畳み式のシートを備え、小型電動車モードと電動歩行補助車モードの利用に適した電動車両を開発している。

この電動車両では、電動歩行補助車モードでの利用時には、座席の後方に設けた操作部を使用する。この操作部は利用者の身長や使用目的に合わせて高さ調整できるように構成されるが、外観および操作部からの信号線や導電線のフレキシブルな配策を考慮した安定的な支持構造が必要とされた。

本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型電動車モードと電動歩行補助車モードの切替え可能な電動車両において、高さ調整可能な後方操作部の外観および配線を考慮した安定的な支持構造を得ることにある。

上記課題を解決するために、本発明は、
前輪を有する前側ベースと後輪を有する後側ベースを含み、前記前側ベースと前記後側ベースとが車両前後方向に伸縮可能に連結されている移動ベースと、
前記後側ベースの左右両側部から上方に立設された左右一対のフレームの上端が車幅方向に延びる上端フレームで連結された上部フレームと、
前記上部フレームに車幅方向の軸周りに回動可能に支持され、かつ、その回動支持部を越えて下方に延びる脚部が、前記前側ベースに回動かつ摺動可能に連結され、着座位置と折畳み位置との間で移動可能に構成されたシートと、
前記シートに着座した利用者が操作する着座操作部と、
前記シートの後方において利用者が起立歩行姿勢で操作する後方操作部と、
を備え、
前記上部フレームは、前記上端フレームの下側に間隔を有して車幅方向に延びる後部カバーフレームと、前記上端フレームを貫通するように上下に延び、下端が前記後部カバーフレームの底面で終端する筒状のステム支持部とを備え、前記上端フレームと前記後部カバーフレームとの間に物品収納部が形成され、
前記後方操作部は、前記ステム支持部に高さ調整可能に支持されたリアハンドルに設けられている、電動車両にある。

本発明に係る電動車両は、上記のように、上端フレームの下側に後部カバーフレームを備え、下端が後部カバーフレームの底面で終端する筒状のステム支持部を備えたことで、リアハンドルのステム支持部が、上端フレームと後部カバーフレームとの上下２箇所で剛結合され、高さ調整可能なリアハンドルに支持剛性を得るうえで有利である。

また、リアハンドルのステム下端部がステム支持部に収容されることで、リアハンドルの操作部からの信号線や導電線のフレキシブルな配策をステム支持部内部で行うことができ、この部分の外観を良好に維持するうえで有利であるとともに、補強構造のための中空スペースを物品収納部として利用できる利点もある。

本発明実施形態の電動車両を示す側面図である。 本発明実施形態の電動車両を示す下部を省略した正面図である。 本発明実施形態の電動車両を示す下部を省略した背面図である。 本発明実施形態の電動車両の制御系統を示すブロック図である。 本発明実施形態の電動車両のステム支持部を後方から見た斜視図である。

以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図１において、本発明実施形態に係る電動車両１は、移動ベース２１（下部走行体）およびその後部（後側ベース２４）に立設された上部フレーム２２からなる車体２を備えており、図中実線で示される小型電動車モード（１）と、図中２点鎖線で示される電動歩行補助車モード（１′）で利用可能である。

移動ベース２１は、左右の後輪４（駆動輪）および上部フレーム２２が設けられた後側ベース２４（本体部）と、左右の前輪５（従動輪）が設けられた前側ベース２５を備え、前側ベース２５は、後側ベース２４の前側に前後方向に摺動可能に連結されており、移動ベース２１はホイールベースが伸縮可能に構成されている。

左右の後輪４は、後側ベース２４に搭載された左右のモータ４０（４０Ｌ，４０Ｒ）により独立して駆動される。左右の前輪５は、接地部に周方向の軸周りに回転可能な多数のローラー５０を備えたオムニホイール（全方位車輪）で構成されており、電動車両１は、後述する操作部８３（着座操作部）または後方操作部３３によるモータ４０Ｌ，４０Ｒの制御のみで操舵および制駆動操作が可能になっている。

上部フレーム２２は、後側ベース２４の左右両側部から上方に立設された左右一対のフレーム（側部フレーム）の上端が車幅方向に延びる上端フレーム２６で連結された逆Ｕ字状もしくは門形状の基本形状をなし、さらに、上端フレーム２６の下側に間隔を有して車幅方向に延びる後部カバーフレーム２８が配設されており、これら上端フレーム２６と後部カバーフレーム２８の幅方向中央には、上端フレーム２６を貫通して上方に延びるステム支持部２３が設けられている。

後部カバーフレーム２８は、上部フレーム２２の左右の側部フレーム間に車幅方向に延びる底面と、該底面の両側縁ないしは後縁から上方に延びる両側面ないしは後面を備え、両側面の前側は左右の側部フレーム（２２）に接合されている。後部カバーフレーム２８の底面の前縁と上端フレーム２６との間は、左右の側部フレーム（２２）に沿って傾斜した前面で閉鎖され、車幅方向に延びる中空角筒状の補強構造を形成するとともに、後部カバーフレーム２８と上端フレーム２６との間に開口する内部空間をポケット状の物品収納部として利用できるようにしている。

ステム支持部２３は、下端が後部カバーフレーム２８の底面で終端した中空筒状をなしており、リアハンドル３のステム３１の下端部が上下方向に摺動可能に支持されるとともに、不図示の高さ調整可能なロック手段により固定される。図示例のステム３１およびステム支持部２３は、車幅方向に扁平な筒状（非回転体形状）をなしており、リアハンドル３の回り止めを構成している。

リアハンドル３は、図２に示すように、ステム３１の上端との接続部３２から左右に延出した一対の後方操作部３３を有するＴバー形状をなしている。この後方操作部３３は、利用者自身が電動歩行補助車モードで使用する場合、および、利用者をシート７に着座させた状態で介護者などが電動車両を操縦する場合の操作部となる。

なお、高さ調整可能なリアハンドル３の後方操作部３３からの信号線や導電線などのハーネスは、ステム支持部２３に収容されたステム３１の下端部から、ステム支持部２３の内部で車体側にフレキシブルに配策されるが、ステム支持部２３の下部が後部カバーフレーム２８の内部に位置しているので、ステム支持部２３に隣接した後部カバーフレーム２８の内部空間を配線接続や基板部品の搭載スペースに利用する場合にも有利である。

さらに、後部カバーフレーム２８は、後述するアームレスト８の上部フレーム２２への回動支持部（８ａ）にも隣接しているので、アームレスト８の操作部８３からの信号線や導電線などのハーネスのフレキシブル配線の接続に利用する場合にも有利である。

上部フレーム２２には、シートバック６の下端部（６ａ）、シート７（シートクッション）のレッグ部７１（７ａ）、アームレスト８の基部（８ａ）が、何れも車幅方向に平行な軸６ａ，７ａ，８ａで枢支される一方、レッグ部７１の下端は、連結部７ｂ（スロット）を介して前側ベース２５（ピン）に回動可能かつ摺動可能に連結されている。

上記構成により、図中実線で示される小型電動車モードから、図中２点鎖線で示されるように、シート７を前下方に回動させて折畳み位置７′に移動させると、前側ベース２５が後方にスライドし、移動ベース２１が短縮され、後方操作部３３により利用者が起立歩行しながら操作できる電動歩行補助車モードとなる。

この際、シートバック６を前方に倒して折畳み位置６′とすることで、シートバック６′の上面（背面）は、荷物の積載スペースとして利用でき、アームレスト８は、載置した荷物の落下防止ガードとして利用できる。なお、後側ベース２４および前側ベース２５の上面２４ｂ，２５ｂも荷物を積載するトレイとして利用できる。

また、図中２点鎖線で示される電動歩行補助車モードにおいて、シートバック６′を起こし着座位置６に戻してから、シート７′を後方に回動させて着座位置７に戻すと、図中実線で示されるように、前側ベース２５が前方にスライドし、移動ベース２１が伸長され、シート７に利用者が着座してアームレスト８の操作部８３の操作により自走可能な小型電動車モードとなる。

上記の着座位置６において、シートバック６は、リアハンドル３のステム３１またはステム支持部２３で後方から支持される構成とすることが好ましい。この構成により、別途支持構造を設けることなく、シートバック６に安定的な支持剛性が得られる。

操作部８３は、アームレスト８の先端部に設けられ、該先端部から斜前上方に延びるハンドルまたはジョイスティックで構成されている。操作部８３は、左右のハンドルに左右のモータ４０Ｌ，４０Ｒを割当てて前進・後退・左右旋回・信地旋回を行う方式の操作部、または、左右何れか一方のハンドルで前進・後退・左右旋回を行うジョイスティック方式の操作部とすることができ、何れか一方（または両方）の操作部３３の頂部に各種情報を表示する表示部８０が設けられている。

図４は、電動車両の制御系統を示すブロック図であり、制御部１０には、アームレスト８の操作部８３および後方操作部３３からの操作入力のほかに、フレーム位置センサ７０に検出される着座位置／折畳み位置情報、着座センサ７２に検知される搭乗者情報、ジャイロセンサ２０に検知される加速度や傾斜などの車両姿勢情報、バッテリー９の残量（充電率、ＳＯＣ）などの各種情報が入力され、表示部８０に表示される。

制御部１０は、フレーム位置センサ７０にシート７の着座位置が検出され、かつ、着座センサ７２に利用者の着座が検出されている場合に、アームレスト８の操作部８３の操作を有効にし、表示部８０に「自走モード」が表示される。また、その状態で、後方操作部３３からの操作により、利用者を搭乗させての「介助走行モード」に移行すれば、「介助走行モード」が表示部８０に表示される。

一方、フレーム位置センサ７０にシート７の折畳み位置が検出されている場合は、後方操作部３３の操作を有効にし、「歩行補助モード」が表示部８０に表示される。なお、シート７が着座位置／折畳み位置の中間にあり、フレーム位置センサ７０に着座位置も折畳み位置も検出されない場合は、アームレスト８の操作部８３の操作も後方操作部３３の操作も無効になる。

なお、上記実施形態では、前輪５としてオムニホイールを用いる場合を示したが、キャスター形式などにより操舵自在に支持された従動輪を用いることもできる。

以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。

１ 電動車両
２ 車体
３ リアハンドル
４ 後輪
５ 前輪
６ シートバック
７ シート
８ アームレスト
１０ 制御部
２１ 移動ベース
２２ 上部フレーム
２３ ステム支持部
２４ 後側ベース
２５ 前側ベース
２６ 上端フレーム
２８ 後部カバーフレーム
３１ ステム
３３ 後方操作部
４０ モータ
８３ 操作部

Claims (3)

1. 前輪を有する前側ベースと後輪を有する後側ベースを含み、前記前側ベースと前記後側ベースとが車両前後方向に伸縮可能に連結されている移動ベースと、
   前記後側ベースの左右両側部から上方に立設された左右一対のフレームの上端が車幅方向に延びる上端フレームで連結された上部フレームと、
   前記上部フレームに車幅方向の軸周りに回動可能に支持され、かつ、その回動支持部を越えて下方に延びる脚部が、前記前側ベースに回動かつ摺動可能に連結され、着座位置と折畳み位置との間で移動可能に構成されたシートと、
   前記シートに着座した利用者が操作する着座操作部と、
   前記シートの後方において利用者が起立歩行姿勢で操作する後方操作部と、
   を備え、
   前記上部フレームは、前記上端フレームの下側に間隔を有して車幅方向に延びる後部カバーフレームと、前記上端フレームを貫通するように上下に延び、下端が前記後部カバーフレームの底面で終端する筒状のステム支持部とを備え、前記上端フレームと前記後部カバーフレームとの間に物品収納部が形成され、
   前記後方操作部は、前記ステム支持部に高さ調整可能に支持されたリアハンドルに設けられている、電動車両。
2. 前記前側ベースおよび前記脚部が前記後側ベースから離れる側に位置した前記移動ベースの伸長位置で、前記シートは着座位置にあり、前記前側ベースおよび前記脚部が前記後側ベース側に位置した前記移動ベースの短縮位置で、前記シートは前傾した折畳み位置にあるように構成されている、請求項１記載の電動車両。
3. 前記シートの上方で、前記上部フレームに車幅方向の軸周りに回動可能に支持されたシートバックをさらに備え、前記シートバックは、上後方に回動した着座位置で、前記リアハンドルのステム部または前記ステム支持部で後方から支持されるように構成されている、請求項１または２記載の電動車両。

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