JP7269469B2 - サスペンションアーム、および、自動車サスペンション構造 - Google Patents

サスペンションアーム、および、自動車サスペンション構造 Download PDF

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Description

本開示は、サスペンションアーム、および、自動車サスペンション構造に関する。
特許文献1に記載のサスペンションアームは、ダブルウィッシュボーン式サスペンションに用いられる。
特開昭59-102606号公報
自動車のサスペンションとして、上述したダブルウィッシュボーン式サスペンション以外にも、ストラット式サスペンション等が存在する。そして、自動車のサスペンション構造に備えられるサスペンションアームは、破損に対する耐性としての強度を向上すること、および、自動車走行時における外力に起因する変形のし難さとしての剛性を向上すること、の双方が求められている。
本発明の目的の一つは、サスペンションアームにおける強度と剛性の双方をより高くすることにある。
本発明は、下記のサスペンションアーム、および、自動車サスペンション構造を要旨とする。
(1)湾曲部を含む本体と、
前記湾曲部から前記湾曲部の内周側に突出し前記湾曲部の長手方向に沿って延びる第1フランジと、
前記長手方向に沿って延び前記第1フランジに接合される第2フランジと、
前記第1フランジの先端および前記第2フランジの先端の少なくとも一方に設けられた所定の延長部であって、前記長手方向に見て各前記フランジの延びる方向とは異なる方向に延びる所定の延長部と、
を備えている、サスペンションアーム。
(2)(1)に記載のサスペンションアームであって、
前記所定の延長部と当該延長部が設けられている前記フランジとをつなぐ稜線部をさらに備え、
前記稜線部は、前記長手方向に見て湾曲した形状に形成されている。
(3)(1)または(2)に記載のサスペンションアームであって、
前記第2フランジは、前記湾曲部に設けられており、前記湾曲部から前記湾曲部の内周側に突出し前記湾曲部の長手方向に沿って延びている。
(4)(1)~(3)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記所定の延長部として、前記第1フランジに設けられた第1延長部と、前記第2フランジに設けられた第2延長部と、が設けられている。
(5)(4)に記載のサスペンションアームであって、
各前記フランジは、2つの前記フランジ同士の接合面と、この接合面とは反対向きの外側面と、を有し、
前記長手方向に見て、前記第1延長部は、前記第1フランジの前記外側面側に延びており、前記第2延長部は、前記第2フランジの前記外側面側に延びている。
(6)(4)に記載のサスペンションアームであって、
各前記フランジは、2つの前記フランジ同士の接合面と、この接合面とは反対向きの外側面と、を有し、
前記長手方向に見て、前記第1延長部および前記第2延長部の双方が、前記第2フランジの前記外側面側に延びている。
(7)(1)~(3)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記所定の延長部として、前記第1フランジに第1延長部が設けられており、
前記第2フランジには前記延長部が設けられていない。
(8)(7)に記載のサスペンションアームであって、
前記第1延長部は、前記第2フランジ側に向けて延びている。
(9)(1)~(8)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記第1フランジおよび前記第2フランジの少なくとも一方に設けられた補強板であって、各前記フランジとは別部材で形成された補強板をさらに備え、
前記補強板は、前記延長部を含んでいる。
(10)に記載のサスペンションアームであって、
前記補強板の板厚t1と、各前記フランジにおける板厚の最大値としての最大板厚t2との関係がt1≧t2である。
(11)(1)~(10)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記本体は、前記第1フランジが設けられた板状の第1半部と、前記第2フランジが設けられた板状の第2半部であって、前記第1半部と協働することで前記長手方向に見たときに閉断面を前記長手方向の少なくとも一部に形成する第2半部と、を用いて形成されている。
(12)(1)~(11)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記所定の延長部は、前記本体のうち前記湾曲部以外の箇所には設けられていない。
(13)(1)~(12)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記サスペンションアームを構成している部材が、2.5mm以下の板厚の部材を含んでいる。
(14)(1)~(13)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記サスペンションアームを構成している部材が、引張強さ980MPa以上の鋼板により形成される部材を含んでいる。
(15)(1)~(14)の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記サスペンションアームは、自動車サスペンション構造に含まれるロアアームまたは、アッパーアームである。
(16)(1)~(15)の何れか1項に記載のサスペンションアームを備えている、自動車サスペンション構造。
本開示によれば、サスペンションアームにおける強度と剛性の双方をより高くできる。
図1は、従来のサスペンションアームの一部を示す図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係る自動車サスペンション構造の主要部を示す模式的な平面図である。 図3は、自動車のサスペンション構造のロアアームの斜視図である。 図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。 図5(A)は、図2のVA-VA線に沿う模式的な断面図であり、図5(B)は、図2のVB-VB線に沿う模式的な断面図である。 図6(A)は、第1変形例の主要部を示す図であり、図6(B)は、第2変形例の主要部を示す図である。 図7(A)は、第3変形例の主要部を示す図であり、図7(B)は、第4変形例の主要部を示す図である。 図8(A)は、第5変形例の主要部を示す図であり、図8(B)は、第6変形例の主要部を示す図である。 図9は、本発明の第2実施形態に係る自動車サスペンション構造の主要部を示す模式的な側面図である。 図10(A)は、図9のXA-XA線に沿う模式的な断面図であって、XA-XA線に沿う断面の背後の図示を省略しており、図10(B)は、図9のXB-XB線に沿う模式的な断面図であって、XB-XB線に沿う断面の背後の図示を省略している。
以下では、まず、本発明を想到するに至った経緯を説明し、次に、実施形態を詳細に説明する。
[本発明を想到するに至った経緯]
本明細書では、サスペンションアームの強度とは、サスペンションアームにおける破損に対する耐性(破損し難さを示す値)をいう、また、本明細書では、サスペンションアームの剛性とは、サスペンションアームについて、自動車走行時における外力に起因する変形のし難さを示す値をいう。
上述した強度に関してより具体的に説明すると、自動車の走行時において、タイヤが縁石へ乗り上げたとき、または、タイヤが縁石に衝突したときに、自動車のタイヤおよびホイールを介してサスペンションアームに大きな荷重(特に衝撃荷重)が加わる場合がある。このような大きな荷重が加わると、サスペンションアームに座屈が生じることがある。座屈によってタイヤの向きがずれると、自動車の走行が不可能となる。自動車の走行が不可能となると、自動車を修理工場まで移動させることが困難となる。よって、サスペンションアームには、上述の大きな荷重に耐えるだけの十分な強度を持たせる必要がある。例えば、サスペンションアームの一種であるロアアームは、平面視で略L字型に湾曲した形状を有している。このロアアームは、タイヤが縁石へ乗り上げたときや縁石に衝突したとき等に、タイヤを介して大きな荷重を受けて曲げ変形を生じ、サスペンションアームの湾曲部において面外変形が生じ得る。
面外変形は、例えば、図1に示すような態様で生じる。図1は、従来のサスペンションアーム100の一部を示す図である。サスペンションアーム100は、ハット形状の2枚の鋼板を平板状のフランジ101,102で互いに溶接することで形成されている。フランジ101,102は、サスペンションアーム100に形成された湾曲部103の内周側に突出し湾曲部103の長手方向に沿って延びている。そして、このサスペンションアーム100に図示しないタイヤおよびホイールから大きな荷重が加わると、湾曲部103の内周側部分が圧縮されるように曲げ変形し、面外変形部104が生じる。その結果、フランジ101,102は、真っ直ぐに延びている状態から、波打ったように変形する。すなわち、フランジ101,102が互いに接している面と交差する方向にフランジ101,102が変形するという、面外変形が生じる。
また、マルチリンク式サスペンションに用いられる、車長方向(車両前後方向)に見て略V字形状に屈曲した屈曲部を有するアッパーアームは、サスペンションアームの一種である。このアッパーアームは、タイヤの横滑りによってタイヤがタイヤ側面側から縁石に衝突する場合等に、車幅方向の入力による曲げ変形を受け、屈曲部において上述と同様の面外変形が生じ得る。このような面外変形を抑制することが、強度向上の観点から重要である。
次に、上述した剛性についてより具体的に説明すると、自動車の操縦安定性能の確保において、タイヤが路面を確実にグリップして走行することが重要となる。このタイヤを支持するサスペンションアームは、路面からの荷重に対して変形せず、設計されたジオメトリを保持することが、操縦安定性能の観点から求められる。
一方で、自動車車体の軽量化のため自動車車体を構成する部材の薄肉化が進んでいる。サスペンションアームについても薄肉化が進んでいる。そして、板厚が薄く且つ湾曲部を有する部材は、曲げ変形を受ける場合に、圧縮力を受ける面で圧縮力が大きいと面外変形が発生しやすい。すなわち、部材の強度不足が生じ易い。
とりわけサスペンションアームは、自動車のレイアウトの制約等によって湾曲部や屈曲部を有する形状に設計される場合が多く、その結果、湾曲部の内周側部分(曲率中心点寄りの部分)にて圧縮力が生じ易い。この圧縮力が大きいと、上述の面外変形が生じ易い。そして、湾曲部の内周側部分(曲率中心点寄りの部分)にフランジを有する場合、フランジでの面外変形を抑制することが期待される。ここで、サスペンションアームにフランジを設けた場合、複数のフランジ同士の重ね代(重ね領域)を確保し易いため、寸法精度の影響を受けにくい状態で複数枚の板の溶接が可能となる。しかしながら、フランジの先端は自由端であるが故、フランジ自体に面外変形が生じ易い。
特に、フランジの板厚が薄い場合は、図1で示したような従来の平面状のフランジでは、十分な面外変形の抑止効果が得られない可能性がある。また、サスペンションアームの湾曲部における湾曲の内側部分にフランジを設ける場合、単に平面フランジを設ける場合だと、湾曲部にタイヤからの外力が作用したときに生じる曲げ変形の中立軸から遠くに位置する材料をフランジの先端に十分に確保し難い。このため、湾曲部における曲げ強度および曲げ剛性を十分に確保し難い。
本願発明者は、鋭意研究の結果、上述の課題を発見するに至った。そして、更なる鋭意研究の結果、湾曲部の内側部分にフランジを有するサスペンションアームにおいて、強度と剛性の双方を高くできるフランジ形状を想到するに至った。
[実施形態の説明]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係る自動車サスペンション構造1の主要部を示す模式的な平面図である。図3は、自動車サスペンション構造1のロアアーム2の斜視図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。図5(A)は、図2のVA-VA線に沿う模式的な断面図であり、図5(B)は、図2のVB-VB線に沿う模式的な断面図である。
図2~図5(B)を参照して説明すると、本実施形態の自動車サスペンション構造1は、ストラット式サスペンションであり、サスペンションアームとしてのロアアーム2を有している。なお、本実施形態では、サスペンション構造としてストラット式サスペンション構造を例に説明するけれども、本発明は、ストラット式サスペンション以外のサスペンション構造に適用されてもよい。このようなサスペンション構造として、マルチリンク式サスペンション、ダブルウィッシュボーン式サスペンション等の独立懸架式サスペンション構造を例示できる。また、独立懸架式サスペンション構造以外のサスペンション構造として、リジッドアクスル式サスペンション構造を例示できる。本発明は、サスペンションアームを有するサスペンション構造であれば、適用できる。
なお、本実施形態では、ロアアーム2がサスペンション構造1を有する自動車に設置されているときの当該自動車の車長方向、車幅方向、および、車高方向に沿って、ロアアーム2の長さ方向X、幅方向Y、および、高さ方向Zをいう。
サスペンション構造1のロアアーム2は、本実施形態では、平面視で略L字状に形成されている。ロアアーム2は、複数の鋼板を溶接することで形成された、閉断面を有する中空部材であり、側面視で扁平な形状に形成されている。このロアアーム2は、高さ方向Zにおける当該ロアアーム2の一方側部分(上部)を構成する第1半部11と、高さ方向Zにおける当該ロアアーム2の他方側部分(下部)を構成する第2半部12と、を有している。
第1半部11および第2半部12は、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって板状に形成されている。この鋼板は、好ましくは高張力鋼板であり、この鋼板の引張強さは、好ましくは780MPa以上である。この鋼板は、より好ましくは超高張力鋼板であり、この場合の引張強さは、好ましくは980MPa以上である。また、好ましくは、第1半部11および第2半部12の少なくとも一方の板厚が、2.5mm以下に形成されている。各半部11,12の板厚は、より好ましくは、下限が1.0mmであり、上限が2.0mmである。各半部11,12の板厚が薄いほど、後述する第1フランジユニット14を設けることによる面外変形抑制効果は高く現れる。なお、第1半部11の板厚と第2半部12の板厚とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、第1半部11と第2半部12とは、フランジ結合によって一体化されることでロアアーム2を形成している。
ロアアーム2は、本体13と、本体13に形成された第1フランジユニット14、第2フランジユニット15および第3フランジユニット16と、を有している。
本体13は、閉断面(水平面と直交する断面が閉じた断面)を少なくとも一部に有している。本体13は、板状の第1半部11と、板状の第2半部12を、用いて形成されており、第1半部11と第2半部12とが互いに協働することで、後述する湾曲壁部23の長手方向L1に見たときに、閉断面を長手方向L1の少なくとも一部に形成している。この閉断面は、上記断面において例えば矩形状に形成されている。
本体13は、第1半部11に形成された天板17および第1縦壁形成部18と、第2半部12に形成された底板19および第2縦壁形成部20と、を有している。
天板17は、ロアアーム2の上端部を形成する部分であり、略水平に延びている。第1縦壁形成部18は、略高さ方向Zに沿って延びる縦壁部分であり、天板17の外周縁部から下方に延びている。
底板19は、ロアアーム2の下端部を形成する部分であり、略水平に延びている。第2縦壁形成部20は、略高さ方向Zに沿って延びる縦壁部分であり、底板19の外周縁部から上方に延びている。第1縦壁形成部18と第2縦壁形成部20とは、高さ方向Zに互いに向かい合って配置されている。
上記の構成を有する本体13は、前端部21と、後端部22と、湾曲壁部23と、この湾曲壁部23と幅方向Yに対向する対向壁部24と、を有している。
本体13の前端部21は、幅方向Yに延びる部分であり、幅方向Yの一端部に、図示しないボールジョイントを連結するための第1連結部25が形成されている。第1連結部25は、例えば第1半部11に形成されており、高さ方向Zに延びる孔部である。第1連結部25は、上述のボールジョイントおよびこのボールジョイントに支持されるナックル(図示せず)等を介して、ホイールおよびタイヤ3に連結されている。また、前端部21における幅方向Yの他端部に、第2連結部26が設けられている。第2連結部26は、長さ方向Xに延びる円筒状部分である。この第2連結部26には図示しないブッシュが圧入されている。第2連結部26は、このブッシュに通されたボルトと、このボルトにネジ結合するナットとを用いて、車体4の例えばブラケットに取り付けられている。
本体13の後端部22は、長さ方向Xの後側を向く部分である。この後端部22には、第3連結部27が設けられている。第3連結部27は、例えば第1半部11に設けられている。第3連結部27には、本実施形態では、高さ方向Zを向く貫通孔が形成されている。この第3連結部27には図示しないブッシュが圧入されている。第3連結部27は、このブッシュに通されたボルトと、このボルトにネジ結合するナットとを用いて、車体4の例えばサブフレームに連結されている。なお、第3連結部27は、第2連結部26と同様に、長さ方向Xに延びる円筒状に形成されていてもよい。
上記の構成により、タイヤ3からの荷重は、第1連結部25からロアアーム2に入力され、第2および第3連結部26,27を介して車体4に伝わる。
本体13の湾曲壁部23は、平面視においてロアアーム2の内方に向けて凸形状となるように湾曲する壁部である。本実施形態では、湾曲壁部23は、長さ方向Xの一端側部分が、第2連結部26に向けて凸となる形状に形成されている。本実施形態では、ロアアーム2が車体4に取り付けられているとき、湾曲壁部23は、車体4に組み込まれたロアアーム2における、幅方向Yの外側を向く位置に形成されている。湾曲壁部23は、ロアアーム2が車体4に取り付けられているときに、車体4の車幅方向の内側(幅方向Yの一方側)に進むに従い車体の長さ方向の後側(長さ方向Xの一方側)に進む形状に形成されており、平面視で滑らかに湾曲している。湾曲壁部23の長手方向L1は、平面視で湾曲壁部23に沿って延びる方向である。
本体13の対向壁部24は、ロアアーム2における、幅方向Yの他端側に形成されている。対向壁部24は、本実施形態では、長さ方向Xに沿って延びている。
上述の構成を有する本体13の第1縦壁形成部18と第2縦壁形成部20とは、3つのフランジユニット14,15,16によって結合されている。第1フランジユニット14は、本体13の湾曲壁部23における縦壁形成部18,20を互いに結合している。第2フランジユニット15は、本体13の対向壁部24における縦壁形成部18,20を互いに結合している。第3フランジユニット16は、本体13の前端部21における縦壁形成部18,20を互いに結合している。
第1フランジユニット14は、湾曲壁部23に設けられたフランジユニットであり、湾曲壁部23から湾曲壁部23の内周側(湾曲壁部23の曲率中心点側)に突出している。
第1フランジユニット14は、第1半部11に設けられた第1フランジ31、第1稜線部32および第1延長部33と、第2半部12に設けられた第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36と、を有している。
第1フランジ31は、第1縦壁形成部18の下端から湾曲壁部23の内周側に突出し、湾曲壁部23の長手方向L1に沿って延びている。第2フランジ34は、第2縦壁形成部20の上端から湾曲壁部23の内周側に突出し、湾曲壁部23の長手方向L1に沿って延びている。本実施形態では、第1フランジ31は、長手方向L1に見て下方に向けて凸となる湾曲状に形成されている。また、本実施形態では、第2フランジ34は、長手方向L1に見て上方に向けて凸となる湾曲状に形成されている。なお、各フランジ31,34は、互いに平行に延びる平板状に形成されていてもよく、具体的な形状は限定されない。
第1フランジ31の内側面(下側面)と第2フランジ34の内側面(上側面)は、互いに溶接等によって接合(固定)されることで形成された接合面37を有している。上記の溶接として、アーク溶接、スポット溶接およびレーザー溶接を例示でき、また、溶接以外の固定方法として、構造接着剤を用いた固定方法を例示できる。また、第1フランジ31の外側面(上側面)と第2フランジ34の外側面(下側面)は、接合面37とは互いに反対方向を向いている。縦壁形成部18,20からのフランジ31,34の突出量は、特に限定されない。高さ方向Zにおけるフランジ31,34同士の接合面37の位置は、特に限定されないけれども、本実施形態では、高さ方向Zにおける湾曲壁部23の中心位置と揃えられている。
なお、本実施形態では、第1半部11および第2半部12の双方が断面ハット形状に形成された形態を例に説明しているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、第1半部11および第2半部12の何れか一方を断面ハット形状に形成するとともに、他方を平板状に形成してもよい。
第1フランジ31の先端に第1稜線部32および第1延長部33が設けられ、第2フランジ34の先端に第2稜線部35および第2延長部36が設けられている。
なお、第1稜線部32および第1延長部33が設けられる一方で第2稜線部35および第2延長部36が省略されてもよいし、第2稜線部35および第2延長部36が設けられる一方で第1稜線部32および第1延長部33が省略されてもよい。
また、第1延長部33が設けられる場合において、第1稜線部32を省略することで第1延長部33が直接第1フランジ31の先端から延びていてもよい。同様に、第2延長部36が設けられる場合において、第2稜線部35を省略することで第2延長部36が直接第2フランジ34の先端から延びていてもよい。
次に、第1稜線部32および第1延長部33のより具体的な構成の一例を説明する。
第1稜線部32は、第1延長部33とこの第1延長部33が設けられている第1フランジ31とをつないでいる。第1稜線部32は、長手方向L1に見て湾曲した形状に形成されている。第1稜線部32は、本実施形態では、第1フランジ31と第2フランジ34との互いの接合面37から湾曲壁部23の内周側(曲率中心点側)に進んだ箇所に形成されている。第1稜線部32は、本実施形態では、長手方向L1に見て円弧状に形成されている。本実施形態では、第1稜線部32の先端は、高さ方向Zにおける上側を向いている。第1稜線部32の先端に、第1延長部33が連続している。
第1延長部33は、「所定の延長部」の一例である。第1延長部33は、第1フランジユニット14における面外変形を抑制するために設けられている。第1延長部33は、長手方向L1に沿って延びており、第1稜線部32とともに、長手方向L1における湾曲壁部23の少なくとも一部(本実施形態では、全部)に設けられている。本実施形態では、第1延長部33は、各縦壁形成部18,20と平行に延びており、高さ方向Zに延びている。このように第1延長部33が設けられていることで、第1延長部33は、長手方向L1に見て各フランジ31,34(特に第1フランジ31)の延びる方向(水平方向)とは異なる方向に延びている。各縦壁形成部18,20と第1延長部33との距離は、第1延長部33による面外変形抑制効果を十分に発揮できる最小値以上に適宜設定されている。本実施形態では、高さ方向Zにおいて、第1延長部33の先端(自由端)は、天板17の上面の下方に配置されている。なお、第1延長部33の先端は、天板17の上面における高さ位置よりも高い位置に配置されていてもよい。このような構成により、第1延長部33は、面外変形抑制効果をより高くできる。
次に、第2稜線部35および第2延長部36のより具体的な構成の一例を説明する。
本実施形態では、第2稜線部35および第2延長部36は、対応する第1稜線部32および第1延長部33と高さ方向Zに対称な形状に形成されている。
第2稜線部35は、第2延長部36とこの第2延長部36が設けられている第2フランジ34とをつないでいる。第2稜線部35は、長手方向L1に見て湾曲した形状に形成されている。本実施形態では、第2稜線部35の先端は、高さ方向Zにおける下側を向いている。第2稜線部35の先端に、第2延長部36が連続している。
第2延長部36は、「所定の延長部」の一例である。第2延長部36は、第1フランジユニット14における面外変形を抑制するために設けられており、本実施形態では、第1延長部33と協働して、面外変形抑制効果を発揮する。第2延長部36は、長手方向L1に見て各フランジ31,34(特に第2フランジ34)の延びる方向(水平方向)とは異なる方向に延びている。第2延長部36は、長手方向L1に沿って延びており、第2稜線部35とともに、長手方向L1における湾曲壁部23の少なくとも一部(本実施形態では、全部)に設けられている。本実施形態では、高さ方向Zにおいて、第2延長部36の先端(自由端)は、底板19の下面の上方に配置されている。なお、第2延長部36の先端は、底板19の下面における高さ位置よりも低い位置に配置されていてもよい。このような構成により、第2延長部36は、面外変形抑制効果をより高くできる。
上記の構成により、本実施形態では、長手方向L1に見て、第1延長部33は、第1フランジ31の外側面側(上側)に延びており、第2延長部36は、第2フランジ34の外側面側(下側)に延びている。また、長手方向L1における第1フランジ31、第1稜線部32、第1延長部33、第2フランジ34、第2稜線部35、および、第2延長部36の両端面は、他の部材とは結合されていない自由端となっている。
本実施形態では、第1稜線部32および第1延長部33が第2稜線部35および第2延長部36と高さ方向Zに対称である形態を例に説明しているけれども、この通りでなくてもよい。第1稜線部32および第1延長部33が第2稜線部35および第2延長部36と高さ方向Zに非対称に形成されていてもよい。例えば、第1延長部33が天板17の上面における高さ位置よりも高い位置に配置される一方、第2延長部36が底板19の下面における高さ位置よりも高い位置に配置されてもよい。この場合、本体13に対して第2延長部36が下方に突出せずに済み、ロアアーム2における最低地上高が過度に低くならずに済む一方で、第1延長部33による面外変形抑制効果を十分に確保できる。
以上が、第1フランジユニット14の概略構成である。次に、第2フランジユニット15の構成、および、第3フランジユニット16の構成を説明する。
第2フランジユニット15は、対向壁部24に設けられたフランジユニットであり、対向壁部24と略平行に延びている。
第2フランジユニット15は、第1半部11に設けられた第3フランジ38と、第2半部12に設けられた第4フランジ39と、を有している。
第3フランジ38は、対向壁部24の第1縦壁形成部18の下端から下方に延びている。第4フランジ39は、対向壁部24の第2縦壁形成部20の上端から上方に延びている。第3フランジ38および第4フランジ39は、本実施形態では、平板状に形成されている。
第3フランジ38の例えば内側面と第4フランジ39の例えば外側面は、互いに溶接等によって接合(固定)されている。上記の固定方法として、第1フランジ31と第2フランジ34とを互いに固定する構成と同様の構成を例示できる。
第3フランジユニット16は、前端部21に設けられたフランジユニットであり、幅方向Yに沿って延びている。
第3フランジユニット16は、第1半部11に設けられた第5フランジ40と、第2半部12に設けられた第6フランジ41と、を有している。
第5フランジ40は、前端部21の第1縦壁形成部18の下端から下方に延びている。第6フランジ41は、前端部21の第2縦壁形成部20の上端から上方に延びている。第5フランジ40および第6フランジ41は、本実施形態では、平板状に形成されている。
第5フランジ40の例えば内側面と第6フランジ41の例えば外側面は、互いに溶接等によって接合(固定)されている。上記の固定方法として、第1フランジ31と第2フランジ34とを互いに固定する構成と同様の構成を例示できる。
上記の構成により、第2フランジユニット15および第3フランジユニット16においては、稜線部および延長部が設けられていない。換言すれば、第1フランジユニット14の稜線部32,35および延長部33,36は、本体13のうち湾曲壁部23以外の箇所には設けられていない。
以上説明したように、本実施形態によると、湾曲壁部23には、当該湾曲壁部23の内周側に突出し長手方向L1に沿って延びる第1フランジ31および第2フランジ34が設けられている。そして、これらのフランジ31,34の少なくとも一方(本実施形態では、双方)に延長部33,36が設けられている。この構成によると、第1フランジ31および第2フランジ34の面外変形、換言すれば、フランジ31,34の接合面37を含む平面P(図5(A)参照)に対して交差する方向への第1および第2フランジ31,34の変形、さらに換言すれば、第1および第2フランジ31,34が波打つような変形が生じることを、第1および第2延長部33,36によって抑制できる。このように、第1および第2延長部33,36が設けられていることにより、第1および第2フランジ31,34の面外変形に関するロアアーム2の断面二次モーメントを高くできる。よって、ロアアーム2における強度と剛性の双方をより高くできる。
面外変形についてより具体的に説明すると、自動車の走行時において、タイヤ3が縁石へ乗り上げたとき、または、タイヤ3が縁石に衝突することによって、ロアアーム2の第1連結部25に大きな荷重(特に衝撃荷重)が加わる場合がある。このような大きな荷重が加わると、ロアアーム2の湾曲壁部23において、第1および第3連結部25,27間の距離が短くなるような方向の圧縮荷重が作用する。その結果、第1フランジユニット14の第1および第2フランジ31,34は、高い圧縮応力を生じ、面外変形するような変形力を受ける。しかしながら、前述したように、第1および第2延長部33,36が設けられていることにより、上述した面外変形の発生を抑制できる。これにより、ロアアーム2の曲げ強度、および、圧縮強度を高くできる。さらに、上記の圧縮が作用したときにおける、曲げ変形の中立面P1は、ロアアーム2における長手方向L1と直交する閉断面における湾曲壁部23と対向壁部24との間に存在する。そして、第1フランジユニット14のうち、中立面P1から最も遠い箇所に第1および第2延長部33,36が配置されている。これにより、高い曲げ剛性を、より少ない材料で実現できるため、曲げ剛性に対する材料の配置効率を高くできる。
また、本実施形態によると、第1および第2フランジ31,34と第1および第2延長部33,36とは、湾曲形状の第1および第2稜線部32,35を介して接続されている。この構成によると、第1および第2フランジ31,34と対応する第1および第2延長部33,36との間における応力集中を緩和できる。
また、本実施形態によると、第1フランジ31に加えて、第2フランジ34も湾曲壁部23に設けられている。この構成によると、湾曲壁部23に作用する圧縮荷重を、2つのフランジ31,34で協働して受けることができる。よって、ロアアーム2は、上述の圧縮荷重についてより高い荷重を、面外変形を伴わずに受けることができる。
また、本実施形態によると、長手方向L1に見て、第1延長部33は、第1フランジ31の外側面(上側面)側に延びており、第2延長部36は、第2フランジの外側面(下側面)側に延びている。この構成によると、長手方向L1に見て、第1フランジユニット14は、T字状に形成される。タイヤ3および車体4から種々の方向の荷重が入力されるロアアーム2において、第1フランジユニット14がこのような形状であることにより、第1フランジユニット14は、湾曲壁部23が圧縮荷重を受けつつ圧縮荷重以外の荷重を受けたときでも、面外変形抑制効果を十分に発揮できる。
また、本実施形態によると、第1および第2延長部33,36は、本体13のうち湾曲壁部23以外の箇所には設けられていない。この構成によると、第1~第3フランジユニット14,15,16のうち圧縮荷重によって最も曲げ変形し易い箇所に第1および第2延長部33,36を設けることで面外変形を抑制する一方、曲げ変形し難い箇所には延長部を設けていない。これにより、第1および第2延長部33,36を設ける効果の薄い箇所には必要以上の鋼材を配置しなくて済み、ロアアーム2をより軽量化できる。特に、ばね下重量となるロアアーム2の重量を小さくする効果は、ばね上重量となる車体4等の重量を小さくする効果と比べて、走行性能向上効果を格段に向上できる。
また、本実施形態によると、ロアアーム2の少なくとも一部(本実施形態では、全部)の板厚が2.5mm以下に設定されている。この構成によると、湾曲壁部23におけるフランジ31,34の面外変形を抑制しつつ、ロアアーム2の軽量化を実現できる。
また、本実施形態によると、ロアアーム2の少なくとも一部(本実施形態では、全部)が、引張強さ980MPa以上の鋼板により形成される部材である。このような、超高張力鋼板でロアアーム2が形成されていることにより、ロアアーム2について、軽量化を達成しつつ、ロアアーム2の衝撃に対する耐性(強度)を、より高くできる。仮に、ロアアームが低強度材料で形成されている場合、当該ロアアームは、弾性変形領域が少なく,上述した面外変形の有無による強度の差がそもそも生じ難い。よって、ロアアーム2の引張強さを例えば980MPaとすることで、ロアアーム2の弾性変形領域を十分に確保しつつ、ロアアーム2の強度をより高くできる。
なお、以下では、第1実施形態の構成と異なる点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
上述の実施形態では、第1フランジユニット14の第1および第2延長部33,36が湾曲壁部23の第1および第2縦壁形成部18,20と平行に延びている形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図6(A)に第1変形例として示されているように、第1および第2延長部33,36が内向きに延びていてもよい。より具体的には、第1および第2延長部33,36の先端が第1および第2縦壁形成部18,20に向かうように第1および第2延長部33,36を形成してもよい。この場合、第1および第2延長部33,36は、第1および第2フランジ31,34から遠ざかるに従い対応する縦壁形成部18,20に近づいている。
また、例えば、図6(B)に第2変形例として示されているように、第1および第2延長部33,36が外向きに延びていてもよい。より具体的には、第1および第2延長部33,36の先端が第1および第2縦壁形成部18,20から遠ざかる向きを向くように第1および第2延長部33,36を形成してもよい。この場合、第1および第2延長部33,36は、第1および第2フランジ31,34から遠ざかるに従い第1および第2縦壁形成部18,20との距離が増している。
上述の実施形態では、第1フランジユニット14の第1および第2フランジ31,34の双方に対応する延長部33,36が設けられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図7(A)に第3変形例として示されているように、第1フランジ31に第1稜線部32および第1延長部33が設けられる一方で、第2フランジ34には第2稜線部35および第2延長部36が設けられていなくてもよい。このとき、第1稜線部32および第1延長部33は、第1フランジ31側(上側)に延びていてもよいし、第2フランジ34側(下側)に延びていてもよい。また、図示していないけれども、第2フランジ34に第2稜線部35および第2延長部36が設けられる一方で、第1フランジ31には第1稜線部32および第1延長部33が設けられていなくてもよい。この場合、第2延長部36は、第2フランジ34側に向けて延びていてもよいし、第1フランジ31側に延びていてもよい。
上述の実施形態では、第1フランジユニット14の第1および第2フランジ31,34が互いに逆向きに延びている形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図7(B)に第4変形例として示されているように、第1延長部33が、第2フランジ34側に向けて延びていてもよい。この場合、第1延長部33は、第2延長部36と重ね合わされており、第1延長部33および第2延長部36の双方が、第2フランジ34の外側面(上側面)側に延びている。なお、図示していないけれども、第1延長部33および第2延長部36が、第1フランジ31側に向けて延びていてもよい。
上述の実施形態では、第1および第2延長部33,36が対応する第1および第2フランジ31,34と一体成形された形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図8(A)に第5変形例として示されているように、ロアアーム2において、第1および第2フランジ31,34と一体成形される延長部33,36を省略し、代わりに、第1および第2フランジ31,34とは別部材で形成された補強板42が設けられていてもよい。この場合、補強板42は、第1フランジ31および第2フランジ34の少なくとも一方(第5変形例では、双方)に設けられている。補強板42は、長手方向L1(図8(A)において、紙面と垂直な方向)に見て、第1および第2フランジ31,34の延びる方向とは異なる方向に延びている。補強板42は、例えば、平板状に形成されて高さ方向Zに延びている。
補強板42の板厚t1は、好ましくは、フランジ31,34における板厚の最大値としての最大板厚t2との関係がt1≧t2である。この第5変形例では、補強板42は、湾曲壁部23における縦壁形成部18,20と平行に延びている。フランジ31,34の先端と補強板42とは、例えば、隅肉溶接等によって互いに固定されている。補強板42は、第1フランジ31に対して上方に延びており、且つ、第2フランジ34に対して下方に延びている。補強板42は、第1延長部33Aおよび第2延長部36Aを含んでいる。
この第5変形例では、補強板42のうち、第1フランジ31の上方に延びる部分が、第1延長部33Aを形成している。また、補強板42のうち、第2フランジ34の下方に延びる部分が、第2延長部36Aを形成している。本実施形態の第1延長部33とこの第1延長部33Aとの主な差異は、第1延長部33,33Aが第1フランジ31および補強板42の何れと一体成形であるか、という点と、第1延長部33Aには第1稜線部が設けられていないという点である。同様に、本実施形態の第2延長部36とこの第2延長部36Aとの主な差異は、第2延長部36,36Aが第2フランジ34および補強板42の何れと一体成形であるか、という点と、第2延長部36Aには第2稜線部が設けられていないという点である。よって、第1延長部33Aの詳細な説明は、第1延長部33の説明に代え、また、第2延長部36Aの詳細な説明は、第2延長部36の説明に代える。
この第5変形例によると、フランジ31,34とは別部材である補強板42を用いて第1および第2延長部33A,36Aが形成されている。これにより、第1および第2延長部33A,36Aを第1および第2フランジ31,34と一体成形するための金型が不要である。また、板厚t1≧t2としていることにより、第1および第2延長部33A,36Aの断面二次モーメントをより高くできる。さらに、第1および第2延長部33A,36A同士が一体成形されている。これにより、第1および第2延長部33A,36Aの断面二次モーメントをより高くできる。
なお、第5変形例において、補強板42の上半分または下半分を省略することで、第1延長部33Aおよび第2延長部36Aの何れか一方を省略してもよい。
また、前述の実施形態では、第1および第2延長部33,36が対応する第1および第2フランジ31,34と一体成形された形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図8(B)に第6変形例として示されているように、ロアアーム2において、本体13に設けられた第1および第2フランジ31,34とは別の部材(フランジ34B)に第2稜線部35Bおよび第2延長部36Bが設けられていてもよい。第6変形例では、例えば、第2フランジ34とは別のフランジ34Bであって、第1フランジ31に接合されたフランジ34Bに第2稜線部35Bおよび第2延長部36Bが設けられる。このフランジ34Bは、本発明の「第2フランジ」の一例である。第2延長部36Bは、例えば、車体4に取り付けられた左右のロアアーム同士を連結するスタビライザーのリンク(図示せず)が取り付けられるステーとして用いられる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る自動車サスペンション構造1Cの主要部を示す模式的な側面図である。図10(A)は、図9のXA-XA線に沿う模式的な断面図であって、XA-XA線に沿う断面の背後の図示を省略している。図10(B)は、図9のXB-XB線に沿う模式的な断面図であって、XB-XB線に沿う断面の背後の図示を省略している。
図9、図10(A)および図10(B)を参照して説明すると、自動車サスペンション構造1Cは、マルチリンク式サスペンションであり、サスペンションアームとしてのアッパーアーム51およびロアアーム52を有している。
アッパーアーム51は、本実施形態では、長さ方向Xに見て略V字状に形成されている。アッパーアーム51は、本実施形態では、1枚の鋼板をプレス加工および溶接することで形成された、閉断面を有する中空部材である。なお、アッパーアーム51は、複数枚の鋼板を溶接等によって接合することで形成された、閉断面を有する中空部材であってもよい。
このアッパーアーム51を構成する鋼板は、第1半部11を構成する鋼板と同様の鋼板であり、板厚が、第1半部11を構成する鋼板の板厚と同様に設定されている。
アッパーアーム51は、本体13Cと、本体13Cに形成された第1フランジユニット14Cおよび第2フランジユニット15Cと、を有している。
本体13Cは、閉断面(幅方向Yと直交する断面が閉じた断面)を少なくとも一部に有している。本体13Cのうち幅方向Yの両端部以外は、幅方向Yと直交する断面において、矩形状の平断面を有している。
本体13Cは、当該本体13Cの上板を形成する第1上板53および第2上板54を有している。
第1上板53および第2上板54は、略長さ方向Xに沿って延びている。第1上板53と第2上板54とは、長さ方向Xに並んでいる。
上記の構成を有する本体13Cは、一端部55と、他端部56と、湾曲壁部57と、を有している。
本体13Cの一端部55は、本体13Cにおける幅方向Yの一端部を構成する部分であり、第1連結部58が形成されている。第1連結部58は、長さ方向Xに延びる円筒状部分である。この第1連結部58には図示しないブッシュが圧入されており、このブッシュに通されたボルトと、このボルトにネジ結合するナットとを用いて、アッパーアーム51とナックル(図示せず)とが連結されている。ナックルは、ホイールおよびタイヤ3に連結されている。他端部56は、本体13Cにおける幅方向Yの他端部を構成する部分であり、第2連結部59が形成されている。第2連結部59は、長さ方向Xに延びる円筒状部分である。この第2連結部59には図示しないブッシュが圧入されており、このブッシュに通されたボルトと、このボルトにネジ結合するナットとを用いて、アッパーアーム51と車体4の例えばブラケットとが連結されている。
本実施形態では、アッパーアーム51が車体4に取り付けられているとき、一端部55は、車体4における幅方向の外側に配置され、アッパーアーム51の外側端部として機能する。また、アッパーアーム51が車体4に取り付けられているとき、他端部56は、車体4における幅方向の内側に配置され、アッパーアーム51の内側端部として機能する。上記の構成により、タイヤ3からの荷重は、一端部55の第1連結部58からアッパーアーム51に入力され、他端部56の第2連結部59を介して車体4に伝わる。
本実施形態では、アッパーアーム51が車体4に取り付けられているとき、湾曲壁部57は、上向きに配置される。湾曲壁部57は、長さ方向Xから見てU字状に形成されており略円弧状に湾曲している。湾曲壁部57の長手方向L1Cは、長さ方向Xから見て略円弧状に湾曲して延びる方向である。
上述の構成を有する本体13Cの第1上板53と第2上板54とは、2つのフランジユニット14C,15Cによって結合されている。第1フランジユニット14Cは、本体13Cの湾曲壁部57における第1上板53と第2上板54とを互いに結合している。第2フランジユニット15Cは、本体13Cの第1上板53および第2上板54のうち湾曲壁部57に対して他端部56側に配置された箇所を互いに結合している。
第1フランジユニット14Cは、湾曲壁部57に設けられたフランジユニットであり、湾曲壁部57から湾曲壁部57の内周側(湾曲壁部57の曲率中心点側)に突出している。
第1フランジユニット14Cは、第1上板53に設けられた第1フランジ31C、第1稜線部32Cおよび第1延長部33Cと、第2上板54に設けられた第2フランジ34C、第2稜線部35Cおよび第2延長部36Cと、を有している。
第1フランジ31C、第1稜線部32Cおよび第1延長部33Cは、湾曲壁部57の長手方向L1Cに沿って延びている点と、ロアアーム52が車体4に取り付けられた状態において本体13Cから上向きに沿って延びている点以外は、第1実施形態の対応する第1フランジ31、第1稜線部32および第1延長部33と概ね同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。同様に、第2フランジ34C、第2稜線部35Cおよび第2延長部36Cは、湾曲壁部57の長手方向L1Cに沿って延びている点と、ロアアーム52が車体4に取り付けられた状態において本体13Cから上向きに沿って延びている点以外は、第1実施形態の対応する第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36と概ね同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
また、第2実施形態において、第1稜線部32C、第1延長部33C、第2稜線部35C、および、第2延長部36Cは、第1実施形態における各上記変形例で示した形態と同様の構成が採用されてもよい。
以上が、第1フランジユニット14Cの概略構成である。次に、第2フランジユニット15Cの構成の構成を説明する。
第2フランジユニット15Cは、第1上板53に設けられた第3フランジ38Cと、第2上板54に設けられた第4フランジ39Cと、を有している。
第3フランジ38Cは、第1フランジ31Cのうち、他端部56寄りの端部から他端部56に向けて幅方向Yに延びている。第3フランジ38Cは、第1上板53から第3フランジ38の先端までのフランジ高さが略一定となるようにして、幅方向Yに沿って延びている。第3フランジ38Cは、第1フランジ31Cと一体に延びている一方、第1稜線部32Cおよび第1延長部33Cを有していない。第4フランジ39Cは、第2フランジ34Cのうち、他端部56寄りの端部から他端部56に向けて幅方向Yに延びている。第4フランジ39Cは、第2上板54から第4フランジ39の先端までのフランジ高さが略一定となるようにして、幅方向Yに沿って延びている。第4フランジ39Cは、第2フランジ34Cと一体に延びている一方、第2稜線部35Cおよび第2延長部36Cを有していない。第3フランジ38Cおよび第4フランジ39Cは、本実施形態では、平板状に形成されている。
第3フランジ38Cの内側面と第4フランジ39Cの内側面は、互いに溶接等によって接合(固定)されている。上記の固定方法として、第1フランジ31と第2フランジ34とを互いに固定する構成と同様の構成を例示できる。
上記の構成により、第2フランジユニット15Cにおいては、稜線部および延長部が設けられていない。換言すれば、第1および第2稜線部32C,35Cと、第1および第2延長部33C,36Cは、本体13Cのうち湾曲壁部57以外の箇所には設けられていない。
以上説明したように、本実施形態によると、湾曲壁部57には、当該湾曲壁部57の内周側に突出し長手方向L1Cに沿って延びる第1フランジ31Cおよび第2フランジ34Cが設けられている。そして、これら第1および第2フランジ31C,32Cの少なくとも一方(本実施形態では、双方)に第1および第2延長部33C,36Cが設けられている。この構成によると、第1フランジ31Cおよび第2フランジ34Cの面外変形、換言すれば、第1および第2フランジ31C,32Cの接合面37Cを含む平面P2Cに対して交差する方向への第1および第2フランジ31C,32Cの変形、さらに換言すれば、第1および第2フランジ31C,32Cが波打つような変形が生じることを、第1および第2延長部33C,36Cによって抑制できる。このように、第1および第2延長部33C,36Cが設けられていることにより、第1および第2フランジ31C,34Cの面外変形に関するアッパーアーム51の断面二次モーメントを高くできる。よって、アッパーアーム51における強度および剛性の双方をより高くできる。
面外変形についてより具体的に説明すると、自動車の走行時において、タイヤ3が縁石へ乗り上げたとき、または、タイヤ3が縁石に衝突することによって、アッパーアーム51の第1連結部58に大きな荷重(特に衝撃荷重)が加わる場合がある。このような大きな荷重が加わると、アッパーアーム51の湾曲壁部57において、第1および第2連結部58,59間の距離が短くなるような方向の圧縮荷重が作用する。その結果、第1フランジユニット14Cの第1および第2フランジ31C,32Cは、高い圧縮応力を生じ、面外変形するような変形力が作用する。しかしながら、前述したように、第1および第2延長部33C,36Cが設けられていることにより、上述した面外変形の発生を抑制できる。
以上、本発明の実施形態および変形例について説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態および変形例に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載の範囲において、種々の変更が可能である。
本発明は、サスペンションアーム、および、自動車サスペンション構造として広く適用することができる。
1,1C 自動車サスペンション構造
2 ロアアーム(サスペンションアーム)
11 第1半部
12 第2半部
13,13C 本体
23 湾曲壁部(湾曲部)
31,31C 第1フランジ
32,32C 第1稜線部(稜線部)
33,33A,33C 第1延長部(延長部)
34,34B,34C 第2フランジ
35,35B,35C 第2稜線部(稜線部)
36,36A,36B,36C 第2延長部(延長部)
37,37C 接合面
42 補強板
51 アッパーアーム(サスペンションアーム)
57 湾曲壁部(湾曲部)
L1,L1C 湾曲部の長手方向

Claims (16)

  1. 湾曲部を含む本体と、
    前記湾曲部から前記湾曲部の内周側のみに突出し前記湾曲部の長手方向に沿って延びる第1フランジと、
    前記長手方向に沿って延び前記第1フランジに接合される第2フランジと、
    前記第1フランジの先端および前記第2フランジの先端の少なくとも一方に設けられた所定の延長部であって、前記長手方向に見て各前記フランジの延びる方向とは異なる方向に延びる所定の延長部と、
    を備えている、サスペンションアーム。
  2. 請求項1に記載のサスペンションアームであって、
    前記所定の延長部と当該延長部が設けられている前記フランジとをつなぐ稜線部をさらに備え、
    前記稜線部は、前記長手方向に見て湾曲した形状に形成されている、サスペンションアーム。
  3. 請求項1または請求項2に記載のサスペンションアームであって、
    前記第2フランジは、前記湾曲部に設けられており、前記湾曲部から前記湾曲部の内周側のみに突出し前記湾曲部の長手方向に沿って延びている、サスペンションアーム。
  4. 請求項1~3の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記所定の延長部として、前記第1フランジに設けられた第1延長部と、前記第2フランジに設けられた第2延長部と、が設けられている、サスペンションアーム。
  5. 請求項4に記載のサスペンションアームであって、
    各前記フランジは、2つの前記フランジ同士の接合面と、この接合面とは反対向きの外側面と、を有し、
    前記長手方向に見て、前記第1延長部は、前記第1フランジの前記外側面側に延びており、前記第2延長部は、前記第2フランジの前記外側面側に延びている、サスペンションアーム。
  6. 請求項4に記載のサスペンションアームであって、
    各前記フランジは、2つの前記フランジ同士の接合面と、この接合面とは反対向きの外側面と、を有し、
    前記長手方向に見て、前記第1延長部および前記第2延長部の双方が、前記第2フランジの前記外側面側に延びている、サスペンションアーム。
  7. 請求項1~3の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記所定の延長部として、前記第1フランジに第1延長部が設けられており、
    前記第2フランジには前記延長部が設けられていない、サスペンションアーム。
  8. 請求項7に記載のサスペンションアームであって、
    前記第1延長部は、前記第2フランジ側に向けて延びている、サスペンションアーム。
  9. 請求項1~請求項8の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記第1フランジおよび前記第2フランジの少なくとも一方に設けられた補強板であって、各前記フランジとは別部材で形成された補強板をさらに備え、
    前記補強板は、前記延長部を含んでいる、サスペンションアーム。
  10. 請求項9に記載のサスペンションアームであって、
    前記補強板の板厚t1と、各前記フランジにおける板厚の最大値としての最大板厚t2との関係がt1≧t2である、サスペンションアーム。
  11. 請求項1~請求項10の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記本体は、前記第1フランジが設けられた板状の第1半部と、前記第2フランジが設けられた板状の第2半部であって、前記第1半部と協働することで前記長手方向に見たときに閉断面を前記長手方向の少なくとも一部に形成する第2半部と、を用いて形成されている、サスペンションアーム。
  12. 請求項1~請求項11の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記所定の延長部は、前記本体のうち前記湾曲部以外の箇所には設けられていない、サスペンションアーム。
  13. 請求項1~請求項12の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記サスペンションアームを構成している部材が、2.5mm以下の板厚の部材を含んでいる、サスペンションアーム。
  14. 請求項1~請求項13の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記サスペンションアームを構成している部材が、引張強さ980MPa以上の鋼板により形成される部材を含んでいる、サスペンションアーム。
  15. 請求項1~請求項14の何れか1項に記載のサスペンションアームであって、
    前記サスペンションアームは、自動車サスペンション構造に含まれるロアアームまたは、アッパーアームである、サスペンションアーム。
  16. 請求項1~請求項15の何れか1項に記載のサスペンションアームを備えている、自動車サスペンション構造。
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