JP7266022B2 - ピペリジン誘導体のピペリジン窒素を重水素低級アルキルでモノアルキル化する工業的製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ピペリジン誘導体のピペリジン窒素を重水素低級アルキルでモノアルキル化する方法に関する。より具体的には、デキストロメトルファンのN-メチルをN-(d-メチル)に置き換える方法に関する。
デキストロメトルファンは、鎮静作用および解離作用を有するモルフィナン系薬物であり、下記の構造を有しており、鎮咳去痰薬として広く用いられている。
Figure 0007266022000001
デキストロメトルファンは肝臓で代謝されるが、その代謝に変更を与えて、作用の持続の延長、副作用の低減、新たな作用の創生などを期待した検討がなされている。具体的には、デキストロメトルファンの代謝においてはO-およびN-脱メチルから分解が開始されるとされており、これらのメチル基を重メチル基に置き換えることで、その代謝に変更を与える検討がなされている(特許文献1)。
ここで、デキストロメトルファンのN-メチルをN-(d-メチル)に置き換えるためには、一旦N-脱メチル化し、d-メチル化剤でN-(d-メチル)化することが一般的である。例えば非特許文献1では、N-デスメチル-デキストロメトルファンをTHF中水素化ナトリウムの存在下、d-メチル化剤としてCDIを作用させて、N-(d-メチル)のデキストロメトルファンを実験室スケールで調製しているが、水素化ナトリウムは水と激しく反応して水素を発生する強塩基であり、工業製造スケールでこの反応を採用するには、安全の観点から、反応溶媒を完全に脱水化し、不活性ガス下での反応を余儀なくされるなど現実的ではなかった。また、N-デスメチル-デキストロメトルファンのアミン部位へのアルキル化では、一般的にN-モノアルキル化の反応制御が難しく、過剰反応してN-ジアルキル化生成物も不純物として生成することから、純度の低下や収率の低下を招くことが懸念され、特に高価なd-メチル化剤を使用しての収率の低下は、工業製造においては、大きな問題であった。
Figure 0007266022000002
また、N-デスメチル-デキストロメトルファンをd-メチル化剤を用いず、別の方法でd-メチル化する方法も知られている(特許文献1、非特許文献2)。ここでは一旦クロロギ酸エチルでN-デスメチル-デキストロメトルファンの窒素部分をカルバメートとし、重水素源であるLiAlDで還元することで、N-ジアルキル化生成物への過剰反応を抑えて、N-(d-メチル)のデキストロメトルファンを調製している。しかしながら、LiAlDによる重水素化では、すべての水素が重水素に置き換わらずに、17-CHD体が生成するという、重水素化率低下の問題があった。
Figure 0007266022000003
WO 2008/137474
ARKIVOC 2008 (iii) 182-193 J Label Compd Radiopharm 2002, 45, 1153-1158
上記のように、デキストロメトルファンのN-メチルをN-(d-メチル)に工業的製造手法によって置き換えるには、副生成物の生成を如何に抑えるかが課題であり、実際には、その工業的生産が可能な有効な調製方法はなかった。
本発明者らは、種々研究を重ねた結果、N-デスメチル-デキストロメトルファンのアミン窒素部分を、一旦ベンジル基のようなアラルキル保護基で保護し、中性または塩基性条件下重水素メチル化剤でデキストロメトルファンの窒素部分を四級アミンになるよう重水素メチル化し、次いでアラルキル基を脱保護することで、課題であった副生成物を生成することなく、目的の重水素化デキストロメトルファンを調製できることを見出し、本発明の完成に至った。本発明の技術は、N-デスメチル-デキストロメトルファンと同様のピペリジン誘導体の窒素部分への重水素低級アルキル化にも応用可能であると考えられる。
本発明は下記の態様のものを含む。
[項1]ピペリジン誘導体のピペリジン窒素を重水素低級アルキルでモノアルキル化する方法であって、ピペリジン窒素をアラルキル保護基で保護し、中性または塩基性条件下重水素低級アルキル化剤でピペリジン窒素を低級アルキル化し、次いでアラルキル保護基を脱保護することを含む方法。
[項2]ピペリジン誘導体がモルフィナン誘導体である、項1の方法。
[項3]モルフィナン誘導体がデキストロメトルファンのN-デスメチル体(すなわち、3-メトキシモルフィナン)である、項2の方法。
[項4]モノアルキル化がモノメチル化またはモノエチル化であり、重水素低級アルキル化剤が重水素メチル化剤または重水素エチル化剤である、項1~3のいずれかの方法。
[項5]モノアルキル化がモノメチル化であり、重水素低級アルキル化剤が[]メチル メタンスルホネート、[]メチル ベンゼンスルホネート、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート、[]メチル 2-ニトロベンゼンスルホネート、[]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジ[]メチル硫酸、炭酸ジ[]メチル、[]メチル トリフルオロメタンスルホネート、[]臭化メチル、または[]ヨウ化メチルである、項1~3のいずれかの方法。
[項6]アラルキル保護基がベンジル誘導体保護基である、項1~5のいずれかの方法。
[項7]ベンジル誘導体保護基がベンジル保護基である、項6の方法。
[項8]脱保護が水素添加によるベンジル誘導体保護基の脱保護である、項6または7の方法。
[9]塩基性条件下が炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルキルリチウム(例えば、ノルマルブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ノルマルヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウム ジイソプロピルアミド、リチウム ヘキサメチルジシラジド)、ナトリウムメトキシド、またはtert-アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)による塩基性条件である、項1~8のいずれかの方法。
[項10]3-(メトキシ-d)-17-(メチル-d)-モルフィナンの製造方法であって、項3~9のいずれかの方法において、ピペリジン窒素をアラルキル保護基で保護した後、モルフィナンの3位のメトキシ基を酸性条件下またはルイス酸存在下ヒドロキシ基にしてから、重水素低級アルキル化、次いで脱保護を行う方法。
本発明によれば、モルフィナン誘導体、特に3-メトキシモルフィナンのピペリジン窒素を、一旦ベンジル基のようなアラルキル保護基で保護して、重水素化メチル化剤で重水素メチル化し、アラルキル保護基を脱保護することで、ジ重水素メチル化した副生成物を生成することなく、効率的にモノ重水素メチル化することができる。また、アラルキル保護基でピペリジン窒素を保護した後、モルフィナンの3位のメトキシ基を酸性条件下またはルイス酸存在下ヒドロキシ基にしてから、重水素メチル化、次いで脱保護を行うことで、3-(メトキシ-d)-17-(メチル-d)-モルフィナンを効率よく製造することができる。更に、本発明の技術は、重水素化メチル化剤だけでなく重水素低級アルキル化剤を用いた反応でも応用可能であり、また3-メトキシモルフィナンと同様の一般的なピペリジン誘導体の窒素部分への重水素低級アルキル化にも応用可能である。
本発明によれば、副生成物の産生を抑えることで、高価なd-メチル化剤の使用量を抑えて、工業生産コストを抑えることができる。またここで使用できるd-メチル化剤の[]メチル メタンスルホネートや[]メチル ベンゼンスルホネートは、重水素源として汎用可能な高純度の重メタノール(CDOD、d-メタノール)から調製可能であることから、更なるコストカットなどの効果が期待できる。また、これらスルホネート基を有する重水素メチル化剤の原料となる重メタノールは、CDIのような変異原性がないので、輸送等を含めた取り扱いにおいても安全性が高い。
本発明において「モルフィナン誘導体」とは、下記の構造を有するモルフィナン自身およびモルフィナンに類似する骨格の化合物の各種誘導体であり、またその塩も含まれ、これらの化合物群においてはピペリジン窒素以外の部分に各種置換基を有していてもよく、例えばデキストロメトルファンのN-デスメチル体(3-メトキシモルフィナン)、ジメモルファンのN-デスメチル体(3-メチルモルフィナン)、デキストロルファンのN-デスメチル体(3-ヒドロキシモルフィナン)、ドロテバノールのN-デスメチル体、シノメニンのN-デスメチル体などが挙げられる。なお、ここでピペリジン窒素とは、ピペリジン誘導体において、化合物内に含まれるピペリジン環の二級アミンの窒素原子部分を意味する。
Figure 0007266022000004
本発明においてピペリジン窒素を保護する「アラルキル保護基」とは、アルキル基の水素原子の1つがアリール基で置換されているアルキル基の保護基をいい、具体的にはベンジル基誘導体保護基が含まれ、より具体的にはベンジル基、4-ニトロベンジル基、4-メトキシベンジル基、2-ニトロベンジル基、4-クロロベンジル基、2,6-ジクロロベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基が挙げられる。好ましくはベンジル基である。
これらのアラルキル保護基をピペリジン窒素に導入する方法は、例えば、T. W. Greene and P. G. M. Wuts、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版、Wiley、New York 2006年に記載の方法またはそれに準じた方法を挙げることができる。例えば、塩基存在下にハロゲン化ベンジルを作用させる方法、またはピペリジン窒素をベンズアルデヒド化合物と反応させ、イミン形成後に還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム)を作用させる還元的アミノ化方法が挙げられる。
アラルキル基を脱保護する方法も、T. W. Greene and P. G. M. Wuts、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版、Wiley、New York 2006年に記載の方法またはそれに準じた方法で行えばよく、具体的にはベンジル基やp-メトキシベンジル基であれば、例えばパラジウムを触媒とした水素添加やDDQやCANなどの温和な酸化条件によって脱保護できる。
本発明において「重水素低級アルキルでモノ低級アルキル化」とは、アルキル基の1つ以上の水素を重水素に置換した低級アルキル基が1つ置換することをいい、例えば低級アルキル部分はメチルまたはエチルが挙げられ、好ましくはメチルである。また、メチルまたはエチルにおいては、すべての水素が重水素に置換されたアルキル基である重水素低級アルキル基が好ましく、具体的には、[]メチルや[]エチルが挙げられる。なお、本発明においては、例えば3つの水素原子がすべて重水素原子に置換されたメチル基を、[]メチル、d-メチル、メチル-d、重メチル、CDなどと表す。
「重水素低級アルキル化剤」としては、重水素低級アルキル基に適当な脱離基が結合した構造を有し、重水素低級アルキル基については上記に定義されたものが挙げられ、脱離基についてはハロゲン基(例えば、ヨウ素、臭素)、スルホネート基(例えば、メタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、4-メチルベンゼンスルホネート基、2-ニトロベンゼンスルホネート基、4-ニトロベンゼンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基)が好ましく、また2つのアルキル基が結合可能な2価の脱離基であるサルフェート基、カーボネート基も好ましい。具体的な重水素低級アルキル化剤としては、[]メチル メタンスルホネート、[]メチル ベンゼンスルホネート、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート、[]メチル 2-ニトロベンゼンスルホネート、[]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジ[]メチル硫酸、炭酸ジ[]メチル、[]メチル トリフルオロメタンスルホネート、[]臭化メチル、[]ヨウ化メチルなどが挙げられ、[]ヨウ化メチルおよび[]メチル スルホネート基(特に[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート)が好ましい。
「重水素低級アルキル化剤」の中で、スルホネート基を含むアルキル化剤は、例えば重メタノールを用いて、常法により調製することができる。具体的には下記の参考例に示すように、スルホニルクロライド試薬と重メタノールを塩基性条件下反応させて得ることができる。
ピペリジン窒素への重水素低級アルキル化は、不活性溶媒中、中性または塩基性条件下、ピペリジン誘導体と重水素低級アルキル化剤を反応させることで達成される。ここで「中性条件」は、原料、試薬、溶媒などにより得られるpHで、特にpH調整を行っていない状態、または下記の塩基性条件で用いられるような試薬を加えて得られる中性付近のpH条件を意味し、具体的なpHとしては6~8程度の範囲を指し、好ましくは6.5~7.5を指す。ここで用いる「塩基性条件」は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルキルリチウム(例えば、ノルマルブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ノルマルヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウム ジイソプロピルアミド、リチウム ヘキサメチルジシラジド)、ナトリウムメトキシド、またはtert-アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)による塩基性条件が挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムであり、特に炭酸水素ナトリウムが好ましい。これらの塩基性化合物は、1種単独でまたは2種以上混合して使用される。塩基性化合物の使用量は、出発物質の化合物1モルに対して、通常1モル~10モル程度、好ましくは1モル~6モル程度である。
反応は下記の反応式に示すように、ピペリジン窒素において四級アミンになるよう重水素低級メチル化すると推察されるが、好ましくは、ここでの生成物を単離せずに、次工程に進められる、すなわち、アラルキル基を脱保護して、重水素メチルでモノ低級アルキル化した目的生成物まで進められる。
Figure 0007266022000005
(式中、Rはベンジルなどのアラルキル保護基。)
更に、3-メトキシ-モルフィナン誘導体においては、例えば下記の反応式に示すように、不活性溶媒中、3位のメトキシ基を酸性条件下またはルイス酸存在下ヒドロキシ基にしてから、ピペリジン窒素への重水素低級アルキル化の際、ヒドロキシ基も重水素低級アルキル化してもよい。なお、ヒドロキシ基も併せて重水素低級アルキル化する場合は、中性ではなく塩基性条件下行うことが好ましい。3位のメトキシ基をヒドロキシ基に変換する酸性条件は、臭化水素酸などで調整してもよく、ルイス酸としては、三臭化ホウ素などが挙げられる。
Figure 0007266022000006
(式中、Rはベンジルなどのアラルキル保護基、XはClなどのハロゲン。)
上記で説明した本発明の反応においては、不活性溶媒中行ってもよく、不活性溶媒としては適宜反応条件によって選択されるが、例えば、水;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル等の極性溶剤を挙げることができる。これらの不活性溶媒は、1種単独でまたは2種以上混合して使用される。
上記で説明した本発明の反応においては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、常圧下で行うことも、また加圧下でも行うことができる。上記反応は、通常室温~200℃、好ましくは室温~150℃の温度条件下で行われ、一般に1~30時間程度にて終了する。
本発明においては、出発物質、中間体、および/または目的化合物が塩化合物であってもよく、塩化合物を含んだ製造方法も本発明に包含される。塩化合物としては、酸付加塩、または置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;及びメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸等が挙げられる。かかる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基;及びメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン等の有機塩基;及びアンモニウム塩等が挙げられる。また、例えばリジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸と塩を形成してもよい。
以下に参考例および実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。また、参考例および実施例において用いる「UPLC純度」は、Waters社製のAcquity Ultra Performance LCを用いて測定した。
-メタノールを用いたd -メチル化剤の合成
Figure 0007266022000007
(式中、Rはメチル、フェニル、4-メチルフェニル、2-ニトロフェニル、または4-ニトロフェニルである。)
各Rのd-メチル化剤を、下記の参考例1~5にて調製した。
参考例1
]メチル メタンスルホネートの合成
-メタノール(5.0mL)、トリエチルアミン(25.7mL)をジクロロメタン(123mL)に溶解させ、-30℃に冷却後、メタンスルホニルクロライド(10.6mL)のジクロロメタン(20mL)溶液を滴下し-30℃にて3時間撹拌した。0℃に昇温後、精製水(150mL)を加え、有機層を分離し、得られた有機層を1N塩酸溶液(50mL)で洗浄、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)にて洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下にて溶媒を留去し、標題化合物(9.27g)を無色の油状化合物として得た(66%収率)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 3.02 (3H, s).
参考例2
]メチル ベンゼンスルホネートの合成
ベンゼンスルホニルクロライド(26.1g)、d-メタノール(5.0mL)をトルエン(200mL)に溶解させ、0℃以下に冷却した。48%水酸化ナトリウム水溶液(30mL)を10℃を超えないよう滴下し、10℃以下で30分撹拌した。次いで30℃を超えないように昇温し1時間撹拌、さらに加温し40℃にて2時間撹拌した。精製水(75mL)を加え、有機層を分離、精製水(50mL)にて3回洗浄、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。得られた溶液を減圧下にて溶媒を留去し、標題化合物(21.1g)を無色の油状化合物として得た(97.4%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.55-7.61 (2H, m), 7.65-7.71 (1H, m), 7.91-7.95 (2H, m).
参考例3
]メチル 4-メチルベンゼンスルホネートの合成
4-トルエンスルホニルクロライド(282g)、d-メタノール(50mL)をトルエン(1.0L)に溶解させ、0℃以下に冷却した。48%水酸化ナトリウム水溶液(300mL)を10℃を超えないよう滴下し、10℃以下で30分撹拌した。次いで30℃を超えないように昇温し1時間撹拌、さらに加温し40℃にて3時間撹拌した。精製水(1.0L)を加え、さらに40℃にて1時間撹拌し、有機層を分離、精製水(1.0L)にて2回洗浄、減圧下にて溶媒を留去し、標題化合物(262.1g)を無色のトルエン溶液として得た(87.1%含量、98.0%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 2.45 (3H, s), 7.36 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.80 (2H, d, J = 8.4 Hz).
参考例4
]メチル 2-ニトロベンゼンスルホネートの合成
2-ニトロベンゼンスルホニルクロライド(196g)、d-メタノール(30mL)をトルエン(1.2L)に溶解させ、-10℃以下に冷却した。48%水酸化ナトリウム水溶液(180mL)を5℃を超えないよう滴下し、15℃以下で3時間撹拌した。精製水(600mL)を加え、有機層を分離、精製水(300mL)にて3回洗浄した。減圧下にて溶媒(900mL程度)を留去し、得られた溶液を氷浴下冷却撹拌し結晶を析出させた。得られた懸濁液にヘプタン(600mL)を加え室温に昇温後、濾過し、へプタン(300mL)で洗浄、50℃にて送風乾燥し、標題化合物(120.2g)を微黄色固体として得た(73.9%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ: 7.75-7.87 (3H, m), 8.12-8.15 (1H, m).
参考例5
]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネートの合成
4-ニトロベンゼンスルホニルクロライド(12.6g)、d-メタノール(1.92mL)をトルエン(77mL)に溶解させ、-10℃以下に冷却した。48%水酸化ナトリウム水溶液(11.5mL)を5℃を超えないよう滴下し、15℃以下で3時間撹拌した。精製水(29mL)を加え、有機層を分離、精製水(19mL)にて4回洗浄した。減圧下にて溶媒(60mL程度)を留去し、得られた溶液を氷浴下冷却撹拌し結晶を析出させた。得られた懸濁液にヘプタン(38mL)を加え、室温に昇温後、濾過し、へプタン(38mL)で洗浄、50℃にて送風乾燥し、標題化合物(6.64g)を微黄色固体として得た(63.6%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ: 8.11-8.15 (2H, m), 8.40-8.45 (2H, m).
参考例6
(9S,13S,14S)-3-メトキシモルフィナン塩酸塩の合成
Figure 0007266022000008
(9S,13S,14S)-3-メトキシ-17-メチルモルフィナン(200g)をトルエン(1.0L)に溶解させ、クロロギ酸 1-クロロエチル(88mL)を加え、室温にて1時間撹拌した。65℃に昇温後、MeOH(200mL)を加え1時間還流した。室温に冷却後、減圧下溶媒を留去(200mL程度)、トルエン(400mL)を加え溶媒(400mL程度)を留去、トルエン(200mL)を加え溶媒(200mL程度)を留去した。2-プロパノール(20mL)を加え、70℃にて1時間撹拌し、室温に冷却後濾過し、トルエン(600mL)にて洗浄を行い、終夜60℃に送風乾燥し、標題化合物(182.1g)を白色~微黄色固体として得た(84.1%収率、>96% UPLC純度)。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6) δ: 0.89-0.96 (1H, m), 1.14 (1H, t, J = 12.6 Hz), 1.25 (2H, t, J = 12.6 Hz), 1.38-1.65 (4H, m), 1.76 (1H, dt, J = 4.8 Hz, J = 13.5 Hz), 1.92 (1H, d, J = 12.6 Hz), 2.36-2.45 (2H, m), 2.96-3.15 (3H, m), 3.60-3.62 (1H, m), 3.73 (3H, s), 6.79-6.84 (2H, m), 7.11-7.14 (1H, m), 9.34 (2H, br).
実施例1
(9S,13S,14S)-3-メトキシ-17-ベンジルモルフィナンシュウ酸塩の合成
Figure 0007266022000009
(式中、Bnはベンジル基を表す。以下同じ。)
(9S,13S,14S)-3-メトキシモルフィナン塩酸塩(50.0g)、炭酸カリウム(51.7g)、ヨウ化カリウム(2.82g)をDMF(200mL)に懸濁させ、塩化ベンジル(19.8mL)を加え、60℃に加温し1時間撹拌した。トルエン(300mL)、精製水(300mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(300mL)で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、2-プロパノール(400mL)を加え、70℃に加温後、シュウ酸二水和物(21.5g)を加え、10分間ほど撹拌を行った。結晶の析出を確認後、還流下1時間撹拌を行い、室温まで冷却後30分間ほど熟成を行った。得られた固体を濾過し、2-プロパノール(100mL)で洗浄を行い、50℃にて終夜送風乾燥を行い、標題化合物(70.2g)を白色~微黄色固体として得た(94.4%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 0.91-0.99 (1H, m), 1.11-1.60 (7H, m), 1.89 (1H, dt, J = 4.2 Hz, J = 13.2 Hz), 2.09 (1H, d, J = 12.6 Hz), 2.41-2.53 (2H, m), 2.85-2.98 (2H, m), 3.27-3.33 (2H, m), 3.74 (3H, s), 4.31 (2H, s), 5.92 (2H, br), 6.81-6.84 (2H, m), 7.14-7.17 (1H, m), 7.41-7.46 (3H, m), 7.54-7.58 (2H, m).
実施例2
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩の合成
Figure 0007266022000010
(9S,13S,14S)-3-メトキシ-17-ベンジルモルフィナンシュウ酸塩(50.0g)に酢酸(62.5mL)、48%臭化水素酸水溶液(187.5mL)を加え、110℃以上に昇温し1時間撹拌した。別の反応容器に精製水(600mL)を加え80℃に加温し、先の反応混合物を60℃以上で投入、60℃以上の精製水(300mL)で流しこみ、反応溶液を室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、精製水(750mL)で濾液のpHが6~7になるまで洗浄を行い、60℃にて送風乾燥し、標題化合物(45.0g)を白色~微黄色固体として得た(95.1%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ:0.85-0.99 (1H, m), 1.11-1.60 (7H, m), 1.82-1.91 (1H, m), 2.03-2.07 (1H, m), 2.10-2.45 (2H, m), 2.55-2.75 (2H, m), 2.80-2.95 (1H, m), 3.05-3.20 (1H, m), 4.44 (2H, d, J = 4.8 Hz, major), 4.66 (2H, d, J = 5.4 Hz, minor), 6.63-7.72 (2H, m), 6.96-6.99 (2H, m, minor), 7.05-7.08 (1H, m, major), 7.46-7.48 (3H, m), 7.62-7.63 (2H, m),9.27 (1H, s), 9.43 (1H, br, minor), 9.57 (1H, br, major).
(9S,13S,14S)-3-[ ]メトキシ-17-[17,17,17- ]メチルモルフィナンの合成
Figure 0007266022000011
各d-メチル化剤を用いて、下記の実施例3~8にて標題化合物を調製した。
実施例3
]ヨウ化メチルを用いた合成
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(10.0g)をDMF(100mL)に懸濁させ、10℃に冷却後、ナトリウムtert-ブトキシド(4.87g)を加えた。10℃に再度冷却後、[]ヨウ化メチル(1.65mL)を加え、10~20℃で1時間撹拌した。トルエン(80mL)、精製水(100mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(80mL)で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた油状化合物をそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物に炭酸水素ナトリウム(0.41g)、[]ヨウ化メチル(1.8mL)、アセトニトリル(40mL)を加え、50℃にて5時間撹拌、さらに[]ヨウ化メチル(0.45mL)を追加し、50℃にて3時間撹拌した。室温に冷却後、窒素置換を行い、精製水(20mL)を加え、30分還流した。室温に冷却後、再度窒素置換を行い、目的物をジアステレオマー混合物の溶液としてそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物に対し、5%Pd-C(0.5g)を加え、水素雰囲気下50℃で6時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、メタノール(20mL)と精製水(20mL)にて洗浄した。得られた溶液は減圧下大部分の有機溶媒を留去し、メタノール(20mL)を加え、50℃に昇温した。25%水酸化ナトリウム水溶液(4.6mL)を精製水(20mL)で希釈し、この溶液を50~60℃で反応溶液に滴下し、50℃にて1時間撹拌後、反応溶液を室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、メタノール(20mL)と精製水(40mL)の混合溶媒で洗浄を行い、60℃にて送風乾燥し、標題化合物(5.92g)を白色固体として得た(88.4%通算収率、>99.8% UPLC純度)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.10-1.19 (1H, m), 1.26-1.53 (6H, m), 1.62-1.83 (3H, m), 2.07 (1H, dt, J = 3.3 Hz, J = 12.0 Hz), 2.33-2.45 (2H, m), 2.58 (1H, dd, J = 5.7 Hz, J = 18.3 Hz), 2.78-2.81 (1H, m), 2.98 (1H, d, J = 18.3 Hz), 6.69 (1H, dd, J = 2.7 Hz, J = 8.4 Hz), 6.80 (1H, d, J = 2.7 Hz), 7.03 (1H, d, J = 8.4 Hz).
実施例4
]メチル メタンスルホネートを用いた合成
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(10.0g)をDMF(60mL)に懸濁させ、10℃に冷却後、ナトリウムtert-ブトキシド(4.87g)を加えた。0℃に再度冷却後、[]メチル メタンスルホネート(3.0g)を加え、0~10℃で3時間撹拌した。トルエン(60mL)、精製水(80mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(60mL)で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた油状化合物をそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物に炭酸水素ナトリウム(0.41g)、[]メチル メタンスルホネート(3.28g)、アセトニトリル(40mL)を加え、10時間還流した。さらに炭酸水素ナトリウム(0.41g)と精製水(20mL)を加え、80℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、目的物をジアステレオマー混合物の溶液としてそのまま次工程に用いた。得られた生成物を含有する未精製溶液に対し、5%Pd-C(0.5g)を加え、水素雰囲気下室温に16時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、メタノール(20mL)と精製水(20mL)にて洗浄後、減圧下大部分の有機溶媒を留去した。得られた溶液にトルエン(40mL)、精製水(30mL)、25%水酸化ナトリウム水溶液(4.56mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(40mL)で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、標題化合物(6.58g)を白色~微黄色固体として得た(98.2%通算収率、87.1% UPLC純度)。
実施例5
]メチル ベンゼンスルホネートを用いた合成
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(10g)をDMF(60mL)に懸濁させ、ナトリウムtert-ブトキシド(4.87g)を加えた。0℃に冷却後、[]メチル ベンゼンスルホネート(4.67g)を加え、0℃で2時間撹拌した。トルエン(50mL)、精製水(60mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(60mL)で2回洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた油状化合物をそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物にヨウ化ナトリウム(0.36g)、炭酸水素ナトリウム(0.61g)、[]メチル ベンゼンスルホネート(5.10g)、アセトニトリル(40mL)を加え、オートクレーブ反応容器にて、85℃にて4時間撹拌した。室温に冷却後、窒素置換を行い、精製水(20mL)を加え、85℃にて2時間撹拌した。室温に冷却後、再度窒素置換を行い、目的物をジアステレオマー混合物の溶液としてそのまま次工程に用いた。得られた生成物を含有する未精製溶液に対し、10%Pd-C(0.3g)を加え、水素雰囲気下50℃で3時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、メタノール(10mL)と精製水(10mL)にて洗浄した。得られた溶液は減圧下大部分の有機溶媒を留去し、メタノール(20mL)を加え、60℃に昇温した。25%水酸化ナトリウム水溶液(5.0mL)を精製水(40mL)で希釈し、この溶液を50~60℃で反応溶液に滴下し、60℃にて30分撹拌後、反応溶液を室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、メタノール(4mL)、精製水(16mL)の混合液で洗浄を行い、50℃にて送風乾燥し、標題化合物(6.20g)を白色固体として得た(92.6%通算収率、>98% UPLC純度)。
実施例6
]メチル 4-メチルベンゼンスルホネートを用いた合成
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(20g)をDMF(120mL)に懸濁させ、ナトリウムtert-ブトキシド(9.74g)を加えた。0℃に冷却後、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネートのトルエン溶液(10.83g、92.7%含量)を加え、0℃で4時間撹拌した。トルエン(100mL)、精製水(120mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(120mL)で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた油状化合物をそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物にヨウ化ナトリウム(0.72g)、炭酸水素ナトリウム(0.81g)、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネートのトルエン溶液(11.81g、92.7%含量)、アセトニトリル(60mL)を加え、オートクレーブ反応容器にて、85℃にて4時間撹拌した。室温に冷却後、窒素置換を行い、精製水(20mL)を加え、85℃にて2時間撹拌した。室温に冷却後、再度窒素置換を行い、目的物をジアステレオマー混合物の溶液としてそのまま次工程に用いた。得られた生成物を含有する未精製溶液に対し、10%Pd-C(0.6g)を加え、水素雰囲気下50℃で5時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、アセトニトリル(20mL)と精製水(20mL)にて洗浄した。得られた溶液は減圧下大部分の有機溶媒を留去し、メタノール(20mL)を加え、50℃に昇温した。25%水酸化ナトリウム水溶液(8.9mL)を精製水(40mL)で希釈し、この溶液を50~60℃で反応溶液に滴下し、50℃にて1時間撹拌後、反応溶液を室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、メタノール(20mL)、精製水(40mL)の混合液で洗浄を行い、60℃にて送風乾燥し、標題化合物(13.24g)を白色固体として得た(98.9%通算収率、>99.8% UPLC純度)。
実施例7
]メチル 2-ニトロベンゼンスルホネートを用いた合成
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(20g)をDMF(120mL)に懸濁させ、ナトリウムtert-ブトキシド(9.74g)を加えた。-10℃に冷却後、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(12.75g)を加え、-10℃で1時間撹拌した。さらに、ナトリウムtert-ブトキシド(1.62g)を加え、同温度で1時間撹拌した。トルエン(120mL)、精製水(120mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(120mL)で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた油状化合物をそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物に炭酸水素ナトリウム(0.81g)、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(11.69g)、アセトニトリル(40mL)を加え、オートクレーブ反応容器にて、60℃にて3時間撹拌した。室温に冷却後、精製水(40mL)を加え、80℃にて3時間撹拌した。室温に冷却後、目的物をジアステレオマー混合物の溶液としてそのまま次工程に用いた。得られた生成物を含有する未精製溶液に対し、10%Pd-C(0.6g)を加え、水素雰囲気下室温にて2.5時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、アセトニトリル(40mL)にて洗浄後、減圧下大部分の有機溶媒を留去した。得られた溶液にトルエン(80mL)、精製水(70mL)、25%水酸化ナトリウム水溶液(10mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(80mL)で3回洗浄した。得られた有機層に対し、減圧下溶媒を留去し、メタノール(20mL)を加え、60℃に昇温した。精製水(180mL)を加え、さらに80℃にて30分撹拌後、室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、メタノール(10mL)、精製水(90mL)の混合液で洗浄を行い、50℃にて送風乾燥し、標題化合物(12.94g)を白色固体として得た(96.6%通算収率、>99.8% UPLC純度)。
実施例8
]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネートを用いた合成
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(8.0g)をDMF(48mL)に懸濁させ、ナトリウムtert-ブトキシド(3.90g)を加えた。0℃に冷却後、[]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネート(4.68g)を加え、0℃で2時間撹拌した。トルエン(40mL)、精製水(48mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(48mL)で2回洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた油状化合物をそのまま次工程に用いた。得られた粗生成物にヨウ化ナトリウム(0.29g)、炭酸水素ナトリウム(0.49g)、[]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネート(5.10g)、アセトニトリル(32mL)を加え、オートクレーブ反応容器にて、85℃にて4時間撹拌した。室温に冷却後、窒素置換を行い、精製水(16mL)を加え、85℃にて1時間撹拌した。室温に冷却後、再度窒素置換を行い、目的物をジアステレオマー混合物の溶液としてそのまま次工程に用いた。得られた生成物を含有する未精製溶液に対し、10%Pd-C(0.24g)を加え、水素雰囲気下50℃で3時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、メタノール(8mL)と精製水(8mL)にて洗浄した。得られた溶液は減圧下大部分の有機溶媒を留去し、メタノール(20mL)を加え、60℃に昇温した。25%水酸化ナトリウム水溶液(4.0mL)を精製水(40mL)で希釈し、この溶液を50~60℃で反応溶液に滴下し、60℃にて1時間撹拌後、反応溶液を室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、メタノール(8mL)、精製水(32mL)の混合液で洗浄を行い、60℃にて送風乾燥し、標題化合物(4.98g)を白色固体として得た(93.0%通算収率、>98% UPLC純度)。
実施例9
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナンの合成
Figure 0007266022000012
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(30.0g)と炭酸ナトリウム(8.44g)をメタノール(200mL)に懸濁させ1時間還流した。この懸濁液に60℃の精製水(300mL)を4~5分割して加え、さらに1時間還流を行った後室温に冷却した。得られた固体を濾過し、30%メタノール水溶液(v/v、150mL)にて洗浄を行い、50℃にて送風乾燥し、標題化合物(23.6g)を白色固体として得た(99.2%収率、>99% UPLC純度)。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ: 1.02-1.18 (1H, m), 1.20-1.40 (5H, m), 1.43-1.53 (1H, m), 1.56-1.78 (2H, m), 1.80-1.90 (1H, m), 2.12 (1H, dt, J = 3.0 Hz, J = 12.0 Hz), 2.20-2.30 (1H, m), 2.40-2.50 (1H, m), 2.59 (1H, dd, J = 5.7 Hz, J = 18.0 Hz), 2.85 (1H, dd, J = 2.7 Hz, J = 5.7 Hz), 2.98 (1H, d, J = 18.0 Hz), 3.61 (1H, d, J = 13.2 Hz), 3.72 (1H, d, J = 13.2 Hz), 5.30 (1H, br), 6.61 (1H, dd, J = 2.7 Hz, J = 8.1 Hz), 6.70 (1H, d, J = 2.7 Hz), 6.99 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.22-7.37 (5H, m).
実施例10
(9S,13S,14S)-3-[ ]メトキシ-17-[17,17,17- ]メチルモルフィナンの合成
Figure 0007266022000013
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン(10.0g)、[]メチル 4-メチルベンゼンスルホネートのトルエン溶液(13.45g、92.7%含量)および炭酸水素ナトリウム(0.50g)を、アセトニトリル(25mL)に懸濁させ4時間還流した。反応終了後、この溶液を0℃に冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液(3.0g)を加え、0℃にて16時間撹拌、さらに80℃にて4時間撹拌後、室温まで冷却した。得られた溶液に対し、10%Pd-C(0.6g)を加え、水素雰囲気下室温にて19時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、アセトニトリル(10mL)と精製水(10mL)にて洗浄後、減圧下大部分の有機溶媒を留去した。得られた残渣にトルエン(40mL)、精製水(30mL)、25%水酸化ナトリウム水溶液(5.5mL)を加え、有機層を分離、有機層を精製水(30mL)で洗浄した。得られた有機層に対し、減圧下溶媒を留去し、メタノール(20mL)を加え、60℃に昇温後、精製水(40mL)を加え、さらに60℃にて30分撹拌後、室温まで冷却した。得られた固体を濾過し、メタノール(10mL)、精製水(40mL)の混合液で洗浄を行い、50℃にて送風乾燥し、標題化合物(7.97g)を白色固体として得た(95.8%通算収率、>99.8% UPLC純度)。
本発明は、ピペリジン誘導体のピペリジン窒素を、重水素低級アルキルでジアルキル化した副生成物を生成することなく、重水素低級アルキルでモノアルキル化する有用な方法を提供する。具体的には、デキストロメトルファンの3位、または3位及び17位のメチルを(d-メチル)に置換した異性体を、高品質で、安価に製造することを可能とする。

Claims (6)

  1. ピペリジン誘導体のピペリジン窒素を重水素メチルでモノメチル化する方法であって、ピペリジン窒素をアラルキル保護基で保護し、中性または塩基性条件下重水素メチル化剤でピペリジン窒素をメチル化し、次いでアラルキル保護基を脱保護することを含む方法であって、
    ピペリジン誘導体がモルフィナン、3-メトキシモルフィナン、3-メチルモルフィナン、3-ヒドロキシモルフィナン、ドロテバノールのN-デスメチル体、またはシノメニンのN-デスメチル体であり、
    重水素メチル化剤が[ ]メチル メタンスルホネート、[ ]メチル ベンゼンスルホネート、[ ]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート、[ ]メチル 2-ニトロベンゼンスルホネート、[ ]メチル 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジ[ ]メチル硫酸、炭酸ジ[ ]メチル、または[ ]メチル トリフルオロメタンスルホネートであり、
    アラルキル保護基がベンジル基、4-ニトロベンジル基、4-メトキシベンジル基、2-ニトロベンジル基、4-クロロベンジル基、2,6-ジクロロベンジル基、4-メチルベンジル基、または2,4,6-トリメチルベンジル基である、
    方法
  2. ピペリジン誘導体がモルフィナン、3-メトキシモルフィナン、3-メチルモルフィナン、または3-ヒドロキシモルフィナンである、請求項1の方法。
  3. ピペリジン誘導体が3-メトキシモルフィナンである、請求項1または2の方法。
  4. 脱保護が水素添加によるアラルキル保護基の脱保護である、請求項1~3のいずれかの方法。
  5. 塩基性条件下が炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルキルリチウム(例えば、ノルマルブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ノルマルヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウム ジイソプロピルアミド、リチウム ヘキサメチルジシラジド)、ナトリウムメトキシド、またはtert-アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)による塩基性条件である、請求項1~のいずれかの方法。
  6. 3-(メトキシ-d)-17-(メチル-d)-モルフィナンの製造方法であって、請求項1~5のいずれかの方法において、ピペリジン窒素をアラルキル保護基で保護した後、モルフィナンの3位のメトキシ基を酸性条件下またはルイス酸存在下ヒドロキシ基にしてから、重水素メチル化、次いで脱保護を行う方法。
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