JP7262372B2 - NiCuZn系フェライトおよびNiCuZn系フェライト用造粒粉 - Google Patents
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Description
特許文献1では、Sn酸化物をSnO2に換算して1.5重量部~3.0重量部、Co酸化物をCo3O4に換算して0.02重量部~0.20重量部、Bi酸化物をBi2O3に換算して0.45重量部以下を含有させる方法が提案されている。しかし、初透磁率については、特許文献1の実施例によれば、いずれも130以下と低いものしか得られていない。
1.基本成分、副成分および不可避的不純物からなるNiCuZn系フェライトであって、
前記基本成分がFe酸化物、Zn酸化物、Ni酸化物およびCu酸化物からなり、
基本成分中の組成比で、
Fe酸化物:Fe2O3換算で48.2~50.0mol%、
Zn酸化物:ZnO換算で23.0~34.0mol%、
Ni酸化物:NiO換算で11.0~22.0mol%、および
Cu酸化物:CuO換算で3.0~7.0mol%
であり、
前記副成分がLi酸化物からなり、
Li酸化物:Li2O換算で、前記NiCuZn系フェライトの総質量に対して150~1250質量ppmであるNiCuZn系フェライト。
Fe化合物、Zn化合物、Ni化合物およびCu化合物を、
前記NiCuZn系フェライトの基本成分中組成比が、
Fe化合物:Fe2O3換算で48.2~50.0mol%、
Zn化合物:ZnO換算で23.0~34.0mol%、
Ni化合物:NiO換算で11.0~22.0mol%、
Cu化合物:CuO換算で3.0~7.0mol%
となる範囲でそれぞれ含有し、
Li化合物を、
Li化合物:Li2O換算で、前記NiCuZn系フェライトの総質量に対して150~1250質量ppmとなる範囲で含有し、残部が不可避的不純物であるNiCuZn系フェライト用造粒粉。
本発明のNiCuZn系フェライトは、前述の通り、Fe、Zn、NiおよびCuの酸化物を基本成分とする。なお、以下のmol%は基本成分中の組成比である。
ここで、CuOが3.0mol%より少ないと、キュリー温度は高くなるものの、焼結性が悪くなるため焼結密度が低下し、初透磁率が低下すると伴に相対損失係数が大きくなる。また、焼結密度が下がるので飽和磁束密度が低下する。一方、CuOが7.0mol%よりも多い場合は、焼結が進んで粒成長するため、比抵抗が低下する。非磁性のCuOが増えるので、初透磁率は低下し相対損失係数が大きくなる。また、飽和磁束密度が低下し、キュリー温度が低くなるので適当でない。
また、好ましいCuO含有量は、CuO換算で4.0~6.5mol%である。
なお、フェライトに含まれるPの含有量は100質量ppm以下が好ましく、より好ましくは70質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下である。また、より一層の磁気特性の改善を目標とする場合、Pの含有量は15質量ppm以下、さらには10質量ppm以下に抑制することが望ましい。一方、Pの含有量の下限に特に規定はなく、0質量ppmで良い。
よって、本発明の温度特性に優れたフェライトを製造するためには、Pの含有量が少ない高純度酸化鉄の使用が望ましい。
本発明の造粒粉は、Fe化合物、Zn化合物、Ni化合物およびCu化合物、並びにLi化合物を含有する。さらに、残部は、造粒粉中に存在しているがNiCuZn系フェライトには含まれない揮発成分、およびNiCuZn系フェライトにも含まれる不可避的不純物である。
さらに、前述の通り、本発明の造粒粉を製造するためには、Pの含有量が少ない高純度酸化鉄を用いることが望ましい。
まず、基本成分となるFe、Ni、ZnおよびCuの化合物を所定量秤量し、アトライターやボールミルを用い混合して混合粉を得る。その際の混合方法は、乾式法または湿式法のいずれでも構わない。ついで、上記混合粉を800~1000℃の範囲の温度で仮焼して仮焼粉を得る。さらに、得られた仮焼粉を、アトライターやボールミルを用いて粉砕を行い、粉砕後の粒径が0.8~1.6μm程度になるまで粉砕して粉砕粉とするが、その粉砕の工程中に、副成分となるLiを含む化合物を添加する。Liを含む化合物としては、前述したようにLi2Oや、Li2CO3などを用いることができる。
その後、上記造粒粉を所定の形状の金型に充填して、プレス成型を行い、成形体を得る。かくして得られた成形体を1000~1250℃の範囲の温度で1~5時間程度焼成することにより、本発明に従うNiCuZn系フェライトコアが得られる。
なお、本発明で用いられる成形方法については、プレス成形に限定されるものではなく、射出成形法、フェライトペースト印刷法、グリーンシート法など、公知の成形技術であればいずれも好適に適用することができる。
・試料作製手順
まず、基本成分となるFe2O3、ZnO、NiOおよびCuOを表1に示す組成比になるように秤量し、ボールミルで30分間乾式混合した後、大気中900℃で仮焼した。次いで、得られた仮焼粉にLiを含む化合物を添加し、アトライターを用いて湿式で2時間粉砕してスラリーとした。用いたLi化合物の種類と添加量は表1の通りである。
続いて、得られたスラリーにバインダーとしてPVAを添加して、スプレードライヤーにより乾燥、造粒を行い、NiCuZn系フェライトの原料となる造粒粉を得た。さらに、かかる造粒粉をリング形状に成形した後、電気炉を用いて、大気中1100℃にて2時間焼成し、リング状の焼結コア(寸法:外径31mm、内径19mm、高さ6mm)を得た。得られた焼結コアを用いて、以下の通りに、電磁気特性をそれぞれ測定した。
得られた焼結コアに、銅線を10ターン巻き、プレシジョンLCR メータ(Keysight Technologies社製4980A)を用いて室温、10kHzの条件で測定した。
恒温槽を使用して焼結コアの温度を変えながら初透磁率μiを測定し、磁性がなくなる温度をキュリー温度Tcとして求めた。
初透磁率の温度特性の比較には、10kHzにおける初透磁率の相対温度係数を用いた。初透磁率の相対温度係数αμirは、以下のような計算式を用いて求めることができる。
αμir =[(μi2 -μi1)/μi12]/(T2-T1)
T1およびT2:測定温度
μi1:温度T1における初透磁率
μi2:温度T2における初透磁率
なお、αμirがマイナスを示す場合があるが、これはμi1>μi2の場合に起こる。このような場合、温度変化の大きさを比べるには絶対値で比較すればよい。
上記フェライト造粒粉を400℃で1時間熱処理して、PVAを分解し揮発させた後、蛍光X線分析装置を用いて分析を行った。
また、ZnOが23.0mol%より小さくかつNiOが22.0mol%より大きい場合(比較例8、9)にはμiが500未満であり、相対温度係数の改善効果が小さくなっている。
Fe2O3が50.0mol%を超える場合(比較例10)には、発明例1より、μiが低下し、相対損失係数tanδ/μiが著しく大きくなることがわかる。
Fe2O3が48.2mol%未満の場合(比較例11)も、発明例1より、μiが低下し、相対損失係数が大きくなることがわかる。
なお、フェライト分野では、通常、初透磁率μiのレベル(例:μi=400、800、1100、1700など)が異なる複数の材質を品揃えしている。これは、組成(例えば、CuOの含有量)を変える事で、特性の異なる材質を品揃えしている。よって、比較例10,11の組成は実施例1とほぼ同じ組成なので、これらの間で特性を比較する必要がある。
ZnOが24.0mol%より大きくかつNiOが11.0mol%より少ない場合(比較例12)には、キュリー温度Tcが低く、実用的ではないことがわかる。
焼結コアに、銅線を一次側に80ターン、二次側に20ターン巻き、直流磁化特性試験装置(メトロン技研社製 SK110)を用いて、磁場±2400A/mを印加して飽和磁束密度Bmを求めた。
アルキメデス法に従って求めた。
実施例1と同様の方法で求めた。
より精密にキュリー温度を求めるため、室温(23℃)、50℃、80℃、100℃、120℃の各温度で飽和磁束密度Bmを求め、温度と飽和磁束密度の2乗(Bm 2)の関係からキュリー温度を求めた。
Advantest製の超高抵抗計R8340Aを用いて焼結コアの抵抗を測定し、コアの寸法を用いて比抵抗に換算した。
CuOが3.0mol%より少ない場合、CuOが7.0mol%よりも多い場合には、比抵抗が低くなる。CuOは3.0~7.0mol%の範囲が適正範囲であると言える。CuO含有量が少ない場合(2.0mol%の場合)は、発明例(Liを含有)と比較例(Li無添加)の比抵抗度の差異は小さいが、CuO含有量が多くなると、発明例と比較例の差異が大きくなっている。比抵抗についても、CuO含有量が多いほどLiの添加効果をより強く受けて、実施例と比較例に差異が生じていることが考えられる。
なお、前記したように特性の比較は組成がほぼ同等のものの間で行う必要がある。
この結果から、同じLi2CO3添加量であっても、P含有量の増加に伴い、20~60℃における初透磁率の温度特性の傾きが大きくなることがわかる。また、フェライト粉に含まれるP濃度が100質量ppm以下であれば、比較的平坦な温度特性が得られることがわかる。
Claims (5)
- 基本成分、副成分および不可避的不純物からなるNiCuZn系フェライトであって、
前記基本成分がFe酸化物、Zn酸化物、Ni酸化物およびCu酸化物からなり、
基本成分中の組成比で、
Fe酸化物:Fe2O3換算で48.2~50.0mol%、
Zn酸化物:ZnO換算で23.0~34.0mol%、
Ni酸化物:NiO換算で11.0~22.0mol%、および
Cu酸化物:CuO換算で3.0~6.9mol%
であり、
前記副成分がLi酸化物からなり、
Li酸化物:Li2O換算で、前記NiCuZn系フェライトの総質量に対して150~1250質量ppmであるNiCuZn系フェライト。 - 前記不可避的不純物のPの含有量が前記NiCuZn系フェライトの総質量に対して100質量ppm以下である請求項1に記載のNiCuZn系フェライト。
- 基本成分、副成分および不可避的不純物からなるNiCuZn系フェライト用の造粒粉であって、
Fe化合物、Zn化合物、Ni化合物およびCu化合物を、
前記NiCuZn系フェライトの基本成分中組成比が、
Fe化合物:Fe2O3換算で48.2~50.0mol%、
Zn化合物:ZnO換算で23.0~34.0mol%、
Ni化合物:NiO換算で11.0~22.0mol%、および
Cu化合物:CuO換算で3.0~6.9mol%
となる範囲でそれぞれ含有し、
Li化合物を、
Li化合物:Li2O換算で、前記NiCuZn系フェライトの総質量に対して150~1250質量ppmとなる範囲で含有し、残部が不可避的不純物であるNiCuZn系フェライト用造粒粉。 - 前記残部の不可避的不純物のPの含有量を、前記NiCuZn系フェライトの総質量に対して100質量ppm以下とする請求項3に記載のNiCuZn系フェライト用造粒粉。
- 前記NiCuZn系フェライト用造粒粉が請求項1または2に記載のNiCuZn系フェライト用の造粒粉である、請求項3または4に記載のNiCuZn系フェライト用造粒粉。
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