JP7261598B2 - パイ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、パイ生地でクリーム・餡・肉製品などのフィリングを包み込んでオーブンで焼き上げたパイ菓子及びその製造方法に係り、特にみたらしタレのような液状のタレが内部に充填された餅をパイ生地で包み込んで焼成してなるパイ及びその製造方法に関する。
最近では、製パン業界において、パン生地の内部にクリーム・餡・肉製品などのフィリングを包み込んで焼き上げたパイが種々提供されている。パイ生地の内部に充填されるフィリングには、カスタードクリーム、パンプキン、栗ペースト、スィートポテトペースト、サワークリーム、グラタン、ミート、餡などといったものが存在し、特許文献1に記載のようなパイおよびパイの製造方法が提案されている。
特開2003-259792号公報
特許文献1に記載のパイは、クリーム、肉製品、あんなどのフィリングをパイ生地で被包し、内部にフィリングが充填されたパイ生地を焼成して製造されるパイであって、フィリングをスポンジ生地で被包し、さらにこれをパイ生地で被包して焼成し、内部中心に充填されるフィリングと、焼成され、表面に形成されたパイ層の間にスポンジ生地を焼成して形成されるスポンジ層を備えたものである。
しかしながら、みたらしタレのような液状のタレがスポンジ層の内部に充填された場合、液状のタレ自体がスポンジ層を浸透し、さらにはパイ生地側にも浸透し、サクサクとしたパイ特有の食感を損なうという問題があった。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、みたらしタレのような液状のタレが内部に充填してある場合でも、パイ特有のサクサクとした食感を得ることのできるパイ及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るパイの第1の特徴は、液体状のタレを餅皮の内部に備えたタレ中みたらし団子と、前記タレ中みたらし団子の外側を覆うように設けられたフィリング層と、前記フィリング層の外側を覆うように設けられたパイ層とから構成されることにある。
これは、略中央に配置されたタレ中みたらし団子をフィリング層で包み込み、それをさらにパイ層で包み込んで焼成することによって製造されるパイである。タレ中みたらし団子とパイ層との間にフィリング層が設けられることによって、パイ層焼成時の熱がフィリング層を介してタレ中みたらし団子の外皮である餅に到達するようになるので、その外皮となる餅の部分が焼けただれて溶融することもなくなり、餅の内部に充填されていた液体状のタレの水分が蒸発することも餅から噴出してしまいということもなくなり、パイを製品化することができるようになる。なお、フィリング層には、カスタードクリーム、パンプキンペースト、栗ペースト、芋(スィートポテト)ペースト、サワークリーム、グラタン、ミート、餡などといったものが含まれる。なお、パイ層焼成時の焼成時間は10~20分、焼成温度は230~280度が好ましい。
本発明に係るパイの第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のパイにおいて、前記フィリング層が芋ペースト層又は栗ペースト層で構成されていることにある。
これは、フィリング層を芋ペースト層又は栗ペースト層とすることによって、焼成時におけるパイ層からの熱がタレ中みたらし団子側に伝達するのを極力抑えることができ、製品化されたパイに含まれるタレ中みたらし団子の餅及びタレと、芋ペースト又は栗ペーストとの相性がよくなり、うま味がさらに増すという相乗効果がある。
本発明に係るパイの第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載のパイにおいて、前記パイ層が256層に折られて形成されていることにある。
これは、通常パイ製品を作成するときは、64層~128層で折っているが、この発明ではパイ層を通常の約2倍の256層とすることで、焼成時の熱がタレ中みたらし団子側に伝達するのを抑制することができる。
本発明に係るパイ製造方法の第1の特徴は、所定の大きさの複数層パイ生地シートの略中央にフィリング材を絞り配置し、前記フィリング材の上にタレ中みたらし団子を配置し、前記タレ中みたらし団子の上に前記フィリング材を絞り、前記タレ中みたらし団子全体を前記フィリング材で包み込み、さらに前記フィリング材の外周を前記複数層パイ生地シートで包み込んだものを焼成することによってパイを製造することにある。
これは、前記第1の特徴に対応するパイを製造するパイ製造方法の発明であり、パイ生地シートの略中央にフィリング材を配置し、フィリング材の上にタレ中みたらし団子を配置し、タレ中みたらし団子全体をフィリング材で包み込み、フィリング材の外周をパイ生地シートで包み込んで、それを焼成することによってパイを製造するようにしたものである。なお、パイ層焼成時の焼成時間は10~20分、焼成温度は230~280度が最も好ましい。
本発明に係るパイ製造方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のパイ製造方法において、前記フィリング材を芋ペースト又は栗ペーストで構成したことにある。
これは、前記パイの第2の特徴に対応するパイを製造するパイ製造方法の発明である。
本発明に係るパイ製造方法の第3の特徴は、前記第1の特徴に記載のパイ製造方法において、前記複数層パイ生地シートを256層に折って形成したことにある。
これは、前記パイの第3の特徴に対応するパイを製造するパイ製造方法の発明である。
本発明に係るパイ製造方法の第4の特徴は、前記第1の特徴に記載のパイ製造方法において、前記フィリング材の外周を前記複数層パイ生地シートで包み込んだものを冷却又は冷凍し、その後に焼成することにある。
これは、タレ中みたらし団子をフィリング材で包み、それをパイ生地シートで包み込み、焼成前のパイ全体を冷却又は冷凍し、その後に焼成するようにしたものである。冷凍したパイ製品を解凍しないで、釜に入れて、短時間で焼成することによって、焼成中に餅の内部に熱が入るのを阻止して、充填されていた液体状のたれの水分が蒸発することを有効に防止することができる。また、タレが餅から噴出してしまうことも防止できるので、パイの製品化が容易となる。焼成中、パイ層焼成時の焼成時間は10~20分、焼成温度は230~280度が好ましい。これによって、焼成時に、タレ中みたらし団子内の液体状のタレが蒸発し、さらには噴出することもなくなり、タレ中みたらし団子の形を保持しつつ、パイを焼成することが可能となる。タレ中みたらし団子内のタレは完全に冷凍状態となっていなくても、ある程度まで冷却してあればよい。これによって、焼成中はタレ中みたらし団子内のタレにはできるだけ熱が長時間入らないようにすることができるので、製品化されたパイ内のみたらし団子のタレが液体状のまま存在することとなるので、タレ中みたらし団子の餅及び液体状タレと、フィリング層となる芋ぺースト又は栗ペースト、餡などとの相性がよくなり、さらにうま味を増すことができるという効果がある。
本発明に係るパイ製造方法の第5の特徴は、前記第1の特徴に記載のパイ製造方法において、前記フィリング材の上に前記タレ中みたらし団子を配置する場合に、前記タレ中みたらし団子を予め冷却又は冷凍しておき、冷却又は冷凍後のタレ中みたらし団子を前記フィリング材の上に配置することにある。
これは、タレ中みたらし団子を予め冷却又は冷凍しておき、冷却又は冷凍されたタレ中みたらし団子を用いてパイを製造するようにしたものである。これによって、焼成時に、タレ中みたらし団子内の液体状のタレが蒸発し、さらには噴出することもなくなり、タレ中みたらし団子の形を保持しつつ、パイを焼成することができるようになる。タレ中みたらし団子内のタレは完全に冷凍状態となっていなくても、ある程度まで冷却してあればよい。
本発明に係るパイ製造方法の第6の特徴は、前記第1、第2、第3、第4又は第5の特徴に記載のパイ製造方法において、焼成時間10~20分、焼成温度230~280度で焼成することにある。
これは、パイの焼成時間を通常の焼成時間の約半分の10~20分とし、パイの焼成温度を通常の焼成温度よりも50~70度高い230~280度とし、高温かつ短時間で焼成するようにしたものである。これによって、タレ中みたらし団子内の液体状のタレが蒸発し、さらには噴出することもなくなり、タレ中みたらし団子の形を保持しつつ、パイを焼成することができるようになる。
本発明のパイによれば、みたらしタレのような液状のタレが内部に充填してある場合でも、パイ特有のサクサクとした食感を得ることのできるという効果がある。
本発明のパイ製造方法によれば、みたらしタレのような液状のタレが内部に充填してある場合でも、パイ特有のサクサクとした食感を備えたパイを製造することができるという効果がある。
本発明に係るパイ製造方法を示すフローチャート図である。 図1のパイ製造方法の過程におけるパイの構成を示す図である。 図1のパイ製造方法によって完成したパイの外観及びそれを模式的に表した図である。
以下添付図面に従って本発明に係るパイ製造方法の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るパイ製造方法を示すフローチャート図である。図2は、図1のパイ製造方法の過程における内容物とパイ生地との関係を示す図である。以下、図1のフローチャートに従ってパイ製造方法を説明する。
ステップS1では、タレ中みたらし団子を作る。一般的に世間で呼ばれている「みたらし団子」は団子の上に「タレ」を掛けてあるので、団子を食べる時に口元や洋服が汚れるおそれがある。そこで、出願人は、みたらし団子の「タレ」を団子の中に入れた「みたらし小餅(登録商標)」と呼ばれる団子を発明出願し、特許登録第2931877号を取得していた。以下、「みたらし小餅(登録商標)」を本明細書中で「タレ中みたらし団子」とする。
ステップS1のタレ中みたらし団子の製造方法は、公知であるが、その概略を以下説明する。第1に、上新粉、白玉粉、ぬるま湯の原料を蒸しながら捏ねて、それを石臼で突いて、みたらし団子(餅)の生地を作る。第2に、醤油、砂糖、片栗粉、みりん少々を水を煮込んで、みたらし団子の液体状のタレを作る。第3に、みたらし団子(餅)の生地をちぎって、その餅の中にみたらし団子の液体状のタレを充填し、蒸気のせいろで蒸す。このような工程によって、タレ中みたらし団子を作る。
ステップS2では、パイ生地シートを作る。麦粉、砂糖、卵、牛乳、角切無塩バター、塩少々を混ぜてパイローラーで伸ばして、その中にバターをブロックにして置き、伸ばした小麦粉で包んで又パイローラーで薄く伸ばして何層にも折っていく。通常のパイシートの倍の256層にも折っていく。256層にも折ったパイ生地をパイローラーで厚さが1~2[mm]程度になるまで伸ばしてパイ生地シートを作る。
ステップS3では、パイ生地シートを所定の大きさに切断する。ステップS2で作成した256層のパイ生地シートを巾8~15cm角に切断する。切断されたパイ生地シートの大きさは、好みの大きさでよく、タレ中みたらし団子を包み込むのに十分な大きさであればよく、巾10~12cmが最も好ましい大きさである。切断されたパイ生地シートの形状は、正方形、長方形でもよいし、円形でもよい。なお、四角形の方がパイ生地シートを無駄なく使用することができる。
ステップS4では、切断されたパイ生地(約10cm角)の生地の略中央に芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材を少し絞り、配置する。この様子が図2(A)に示されている。図2(A)では、4枚のパイ生地のそれぞれの略中央に芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材が絞り込まれて配置されている。
ステップS5では、芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材の上にステップS1で作成したタレ中みたらし団子を配置する。この様子が図2(B)に示されている。図2(B)では、4枚のパイ生地のそれぞれの略中央に配置された芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材の上にタレ中みたらし団子がそれぞれ配置されている。
ステップS6では、芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材の上に配置されているタレ中みたらし団子の上にさらに芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材を絞り込み、タレ中みたらし団子を全体的に芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材で包み込む。この様子が図2(C)に示されている。図2(C)では、芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材によってタレ中みたらし団子の餅の外皮部分が全て覆われるようになっている。
ステップS7では、タレ中みたらし団子と芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材をパイ生地で包み込む。
ステップS8では、包み込んだパイ生地の上に黄身を塗り込む。
ステップS9では、黄身を塗り込んで出来上がった焼成前のパイを冷凍庫に入れて、タレ中みたらし団子内のタレを冷却又は冷凍させる。焼成前にパイ全体を冷却又は冷凍することによって、焼成時に、タレ中みたらし団子内の液体状のタレが蒸発し、さらには噴出することもなくなり、タレ中みたらし団子の形を保持しつつ、パイを焼成することができるようになる。タレ中みたらし団子内のタレが完全に冷凍しなくてもある程度まで冷却するだけでもよい。
ステップS10では、パイ生地によって全体を覆われたタレ中みたらし団子と芋ペースト又は栗ペーストのフィリング材を直径約7[cm]、深さ約2~3[cm]の焼成部を複数備えた金型に入れて、それを窯で短時間焼成する。この様子が図2(D)に示されている。図2(D)では、金型の右下の焼成部にパイ生地によって全体を覆われたタレ中みたらし団子が配置されている。このような液体状のタレを内部に充填された餅を窯で焼成する時に、その焼成温度と焼成時間を最適なものにしないと、製品化が困難となる。例えば、通常のパイ焼成時のように、焼成温度(180~210度)、焼成時間(30~60分)でパイを焼成すると、パイ生地によって包み込まれたタレ中みたらし団子の外皮となる餅の部分が焼けただれて溶融し、餅の内部に充填されていた液体状のタレの水分が蒸発すると共に餅から噴出してしまい、製品化できないおそれがある。
そこで、出願人は、焼成時間と焼成温度を種々組み合わせて実験をした結果、パイの焼成時間を通常の焼成時間の約半分と、より短い時間10~20分とし、パイの焼成温度を通常の焼成温度よりも50~70度高い230~280度とし、高温で短時間焼成するようにした。これによって、タレ中みたらし団子内の液体状のタレが蒸発し、さらには噴出することもなくなり、タレ中みたらし団子の形を保持しつつ、パイを焼成することができるようになる。また、ステップS9で、タレ中みたらし団子内のタレが冷凍するまで冷凍庫に入れることによって、この効果は一層発揮される。なお、タレが完全に冷凍しなくてもある程度まで冷却することでその効果を十分に発揮することができる。
パイの中に栗やジャムやクリーム等を入れて焼いたパイ製品が数多く存在するが、本実施の形態のように、パイの中に液体状のタレを含んだ餅が入ったパイは新規である。本実施の形態に係るパイは、餅の中のタレが食べるまで外に流れ出ないので、パイ特有のサクサクとした食感を得ることのできるのが特徴である。
図3は、図1のパイ製造方法によって完成したパイの外観及びそれを模式的に表した図である。図3(A)は、本実施の形態によって製造された、タレ中みたらし団子を内部に含むパイを切断した際の外観を示す図であり、図3(B)は図3(A)の実際のパイを模式的に表したものである。
図3(B)において、パイ生地層10の内側に芋ペースト又は栗ペーストのフィリング層20が存在し、この芋ペースト又は栗ペーストのフィリング層20の内部にタレ中みたらし団子の外皮である餅層30の内側に液体状のタレ31が存在する。すなわち、図3のパイは、餅層30とタレ31からなるみたらし小餅(登録商標)と、これを覆うように設けられた芋ペースト又は栗ペーストのフィリング層20と、これらを覆い包むように設けられたパイ生地層10とから構成される。
なお、芋ペースト又は栗ペーストのフィリング層20は、焼成時の熱がパイからタレ中みたらし団子の外皮である餅層30に直接作用するのを防止するためのバッファー層として機能するものであり、芋ペースト又は栗ペーストのフィリング層以外のもので同様の機能を発揮するものであれば、それを用いることができる。また、ステップS9の冷却又は冷凍の処理は省略することも可能である。また、ステップS9の冷却又は冷凍を省略した場合、予め冷却又は冷凍しておいたタレ中みたらし団子をパイ生地及び芋ペーストのフィリング材で包み込み、焼成しても同様の効果を得ることができる。
10…パイ層
20…芋ペースト又は栗ペーストのフィリング層
30…餅層
31…タレ

Claims (9)

  1. 液体状のタレを餅皮の内部に備えたタレ中みたらし団子と、
    前記タレ中みたらし団子の外側を覆うように設けられたフィリング層と、
    前記フィリング層の外側を覆うように設けられたパイ層とから構成されることを特徴とするパイ。
  2. 請求1に記載のパイにおいて、前記フィリング層が芋ペースト層又は栗ペースト層で構成されていることを特徴とするパイ。
  3. 請求項1又は2に記載のパイにおいて、前記パイ層が256層に折られて形成されていることを特徴とするパイ。
  4. 所定の大きさの複数層パイ生地シートの略中央にフィリング材を絞り配置し、
    前記フィリング材の上にタレ中みたらし団子を配置し、
    前記タレ中みたらし団子の上に前記フィリング材を絞り、前記タレ中みたらし団子全体を前記フィリング材で包み込み、
    さらに前記フィリング材の外周を前記複数層パイ生地シートで包み込んだものを焼成することによってパイを製造することを特徴とするパイ製造方法。
  5. 請求4に記載のパイ製造方法において、前記フィリング材を芋ペースト又は栗ペーストで構成したことを特徴とするパイ製造方法。
  6. 請求項4に記載のパイ製造方法において、前記複数層パイ生地シートを256層に折って形成したことを特徴とするパイ製造方法。
  7. 請求4に記載のパイ製造方法において、前記フィリング材の外周を前記複数層パイ生地シートで包み込んだものを冷却又は冷凍し、その後に焼成することを特徴とするパイ製造方法。
  8. 請求4に記載のパイ製造方法において、前記フィリング材の上に前記タレ中みたらし団子を配置する場合に、前記タレ中みたらし団子を予め冷却又は冷凍しておき、冷却又は冷凍後のタレ中みたらし団子を前記フィリング材の上に配置することを特徴とするパイ製造方法。
  9. 請求項4、5、6,7又は8に記載のパイ製造方法において、
    焼成時間10~20分、焼成温度230~280度で焼成することを特徴とするパイ製造方法。
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