JP7261395B2 - 電波吸収シート及び通信装置 - Google Patents

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Description

本開示の実施形態は、電波吸収シート及び通信装置に関する。
電子機器が電波の影響を受けることを抑制するため、例えば特許文献1に開示されているように、電波を吸収する電波吸収シートが利用されている。
特許第6063631号公報
従来の電波吸収体においては、厚みの下限が、電波の波長に起因する制限を受けやすい。例えば特許文献1は、6.4GHzの電波を吸収するための電波吸収体の厚みを1005μm~1300μmにすることを提案している。
本開示の実施形態は、このような点を考慮してなされたものであり、薄型化を実現しやすい電波吸収シートを提供することを目的とする。
本開示の一実施形態は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む第1誘電体層と、
前記第1面に位置し、第1方向に並ぶ複数の第1導電体層と、
前記第2面に位置する第2導電体層と、を備え、
前記第1面における前記第1導電体層の占有率が0.85以下である、電波吸収シートである。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1方向における前記第1導電体層の寸法は、5.0mm未満であってもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1誘電体層の厚みは、300μm以下であってもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1誘電体層の比誘電率は、20未満であってもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1誘電体層の誘電正接は、0.2以下であってもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記電波吸収シートの厚みは、350μm以下であってもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートは、20GHz以上110GHz以下の範囲内に位置する共振周波数frを有していてもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1導電体層は、平面視において、半径rを有する円形であり、
前記共振周波数frは、下記の式(A1)、(A2)に基づいて算出されてもよい。
Figure 0007261395000001
cは光速であり、εrは前記第1誘電体層の比誘電率であり、hは前記第1誘電体層の厚みである。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、120πに対するNRの比率が0.8以上1.2以下であり、
及びRは、下記の式(A3)、(A4)に基づいて算出されてもよい。
Figure 0007261395000002
Pはユニットセルの面積であり、Kは定数であり、tanδは前記第1誘電体層の誘電正接である。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1導電体層は、平面視において、長さL及び幅Wを有する長方形であり、幅Wは長さL以下であり、
前記共振周波数frは、下記の式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)に基づいて算出されてもよい。
Figure 0007261395000003
cは光速であり、εrは前記第1誘電体層の比誘電率であり、hは前記第1誘電体層の厚みである。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、120πに対するNRの比率が0.8以上1.2以下であり、
及びRは、下記の式(B5)、(B6)に基づいて算出されてもよい。
Figure 0007261395000004
Pはユニットセルの面積であり、Kは定数であり、tanδは前記第1誘電体層の誘電正接である。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記第1導電体層は、複数の開口を含んでいてもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、前記複数の第1導電体層は、複数の第1形状層と、平面視において前記第1形状層とは異なる形状を有する複数の第2形状層と、を含んでいてもよい。
本開示の一実施形態による電波吸収シートにおいて、第3面及び前記第3面の反対側に位置する第4面を含む第2誘電体層と、
前記第4面に位置する第3導電体層と、を備え、
前記第2導電体層は、前記第1誘電体層の前記第2面と前記第2誘電体層の前記第3面との間に位置し、
前記第2面における前記第2導電体層の占有率が0.85以下であってもよい。
本開示の一実施形態は、
電波を送信又は受信する通信機構と、
上記記載の電波吸収シートと、を備える、通信装置である。
本開示の実施形態によれば、薄型化を実現しやすい電波吸収シートを提供することができる。
電波吸収シートの一実施形態を示す平面図である。 図1の電波吸収シートをII-II方向から見た場合を示す断面図である。 図1の電波吸収シートを構成するユニットセルを示す図である。 電波吸収シートの等価回路を示す図である。 電波吸収シートの製造方法の一例を示す断面図である。 電波吸収シートの製造方法の一例を示す断面図である。 図6Aの第1導電体層の断面形状の一例を示す図である。 図6Aの第1導電体層の断面形状の一例を示す図である。 電波吸収シートを備える通信装置の一例を示す断面図である。 電波吸収シートの一実施形態を示す平面図である。 図8の電波吸収シートを構成するユニットセルを示す図である。 電波吸収シートの一実施形態を示す平面図である。 電波吸収シートの一実施形態を示す平面図である。 電波吸収シートの一実施形態を示す平面図である。 図12の電波吸収シートをXIII-XIII方向から見た場合を示す断面図である。 電波吸収シートの一実施形態を示す平面図である。 図14の電波吸収シートをXV-XV方向から見た場合を示す断面図である。 例1Aの電波吸収シートの吸収特性を示す図である。 例1A~1Gの電波吸収シートの吸収特性を示す図である。 例2の電波吸収シートの吸収特性を示す図である。 例3の電波吸収シートの吸収特性を示す図である。
以下、本開示の一実施形態に係る電波吸収シート10の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基板」や「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
以下、本開示の実施の形態について説明する。まず、背景について説明する。
近年、ミリ波と呼ばれる、およそ30GHz以上300GHz以下の周波数帯の電波が、様々な分野で活用され始めている。分野の例は、第5世代移動通信システムやモバイル、自動車用の衝突防止システムのレーダ、医療の生体センシングなどである。一方で、電波の活用が増えるにつれ、電子機器の誤作動、通信環境の悪化などの不具合が発生することが懸念されている。
それらの不具合を解消する製品の1つとして、電波吸収シートが知られている。
電波吸収シートは、電子機器から出るノイズや不要電波を吸収できる。電波吸収シートを用いることにより、電子機器の誤作動の防止、通信環境の改善などの効果が期待できる。
一方、従来の電波吸収シートの厚みは大きい。例えば上述の特許文献1で提案されている電波吸収シートは、1mm以上の厚みを有する。このため、小型化、薄型化が要求される電子機器に電波吸収シートを設置することは容易ではなかった。また特許文献1では6.4GHz以下の周波数帯が想定されており、ミリ波帯の周波数帯には対応していない。
このような背景を考慮し、本実施の形態においては、薄型化を実現しやすく、且つミリ波帯の周波数帯に対応できる電波吸収シートを提案する。
図1は、電波吸収シート10の一実施形態を示す平面図である。図2は、図1の電波吸収シート10をII-II方向から見た場合を示す断面図である。電波吸収シート10は、第1面21及び第1面21の反対側に位置する第2面22を含む第1誘電体層20と、第1面21に位置する複数の第1導電体層30と、第2面22に位置する第2導電体層40と、を備える。
電波吸収シート10は、第1面21側から電波吸収シート10に入射する電波を、共振を利用して吸収する。共振を利用することにより、従来の電波吸収体に比べて、電波吸収シート10の厚みを小さくできる。
電波吸収シート10が対象とする電波の周波数は、例えば20GHz以上である。電波吸収シート10が対象とする電波の周波数は、例えば110GHz以下であり、80GHz以下であってもよい。このような電波は、第5世代移動通信システム、自動車用のレーダ装置などで利用される。
電波吸収シート10の各構成要素について説明する。
第1誘電体層20は、絶縁性を有する材料を含む。絶縁性を有する材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよく、両者の組み合わせであってもよい。
無機材料としては、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコンカーバイト(SiC)、窒化シリコンカーバイト(SiCN)、炭素添加シリコンオキサイド(SiCO)、ホウ珪酸ガラス、石英ガラスなどを用いることができる。
有機材料としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、シアネート樹脂、アラミド樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、BTレジン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルポリサルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。また、これらの有機材料の層の中に、繊維、フィラーなどが包含されていてもよい。繊維、フィラーの材料は、ガラス、タルク、マイカ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の絶縁性を有する材料であってもよく、カーボン、金属などの導電性を有する材料であってもよい。
第1誘電体層20の材料として、有機材料及び無機材料の両方を含む化合物又は混合物が用いられてもよい。例は、シリコーン樹脂、FR-4、FR-5などである。
第1誘電体層20は、150℃程度の耐熱性を有していてもよい。例えば、第1誘電体層20の材料のガラス転移点あるいは荷重たわみ温度が150℃以上であってもよい。これにより、150℃程度まで温度が上昇する部品を備える電子機器に電波吸収シート10が設置される場合に、電波吸収シート10が適切に機能できる。
第1誘電体層20の比誘電率εは、20.0未満であってもよく、15.0以下であってもよく、10.0以下であってもよく、5.0以下であってもよい。共振を利用することにより、第1誘電体層20の比誘電率εが従来の電波吸収体に比べて低い場合であっても、電波を吸収できる。第1誘電体層20の比誘電率εは、2.0以上であってもよく、3.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
第1誘電体層20の誘電正接tanδは、0.20以下であってもよく、0.15以下であってもよく、0.10以下であってもよく、0.05以下であってもよい。
一般的に、誘電体層の比誘電率及び誘電正接は、導電性を有するフィラーを誘電体層が高い密度で含むことによって、増加する。一方、フィラーの密度が高くなると、誘電体層が脆くなるという課題などが生じ得る。また、フィラーの密度が高くなると、フィラーの分布が不均一になることによって、誘電体層にボイドが発生したり、誘電体層の特性にばらつきが生じたりすることもある。
本実施の形態においては、共振を利用するので、上記のように第1誘電体層20の比誘電率ε及び誘電正接tanδが制限されている場合であっても、良好な電波吸収性能を発現することができる。このため、フィラーの密度が高くなることによって生じる課題を回避できる。
厚みhは、例えば300μm以下であり、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。共振を利用することにより、第1誘電体層20の厚みhが従来の電波吸収体に比べて小さい場合であっても、電波を吸収できる。
第1誘電体層20は、単一の層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
第1誘電体層20の比誘電率ε及び誘電正接tanδを測定する方法としては、開放型共振器法を利用できる。開放型共振器法を実行する測定システムは、ネットワークアナライザ、ミリ波てい倍器、ミリ波検波器、ファブリペロー共振器を含む。ファブリペロー共振器としては、キーコム株式会社のFPR-40、FPR-50、FPR-60、FPR-75、PFR-90、FPR-110などを、周波数に応じて用いることができる。第1誘電体層20の厚みを測定する測定器としては、測長機を利用でき、例えばニコン社製デジマイクロを用いることができる。測長機によっては厚みを測定できない場合、電波吸収シート10のサンプルの断面の画像に基づいて第1誘電体層20の厚みを算出してもよい。画像を測定する測定器としては、走査電子顕微鏡を用いることができる。
図示はしないが、第1誘電体層20の第1面21と第1導電体層30との間には、接着層などの絶縁層が存在していてもよい。同様に、第1誘電体層20の第2面22と第2導電体層40との間には、接着層などの絶縁層が存在していてもよい。
図示はしないが、第1誘電体層20の第1面21と第1導電体層30との間の界面は粗面処理されていてもよい。例えば、第1面21が凹凸を含んでいてもよい。これにより、第1面21と第1導電体層30との間の密着性を高めることができる。粗面処理は、ウェットエッチング、ブラスト、研磨、めっきなどである。粗面処理同様に、第1誘電体層20の第2面22と第2導電体層40との間の界面は粗面処理されていてもよい。例えば、第2面22が凹凸を含んでいてもよい。
第1導電体層30について説明する。第1導電体層30は、導電性を有する材料を含む。例えば、第1導電体層30は、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等の金属又はこれらを用いた合金などを含む。第1導電体層30は、導電性ポリマーなどの有機導電体、カーボンナノチューブ(CNT)などの導電繊維などを含んでいてもよい。
第1導電体層30の厚みT1は、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。第1導電体層30の厚みは、50μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
次に、第1導電体層30の形状及び配置について説明する。図1に示す例において、第1導電体層30は、平面視において、半径rを有する円形である。「平面視」とは、第1誘電体層20の面内方向に直交する方向に沿って電波吸収シート10を見ることを意味する。
図1に示すように、複数の第1導電体層30は、第1誘電体層20の面内方向に並んでいてもよい。例えば、複数の第1導電体層30は、第1周期P1で第1方向D1に並んでいてもよい。複数の第1導電体層30は、第2周期P2で第2方向D2に並んでいてもよい。第2方向D2は、第1方向D1とは異なる方向であり、例えば、第1方向D1に直交する方向である。第1周期P1は、第1方向D1において隣り合う2つの第1導電体層30の中心点C0の間の距離である。第2周期P2は、第2方向D2において隣り合う2つの第1導電体層30の中心点C0の間の距離である。第1周期P1と第2周期P2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。周期P1、P2は、例えば1.5mmよりも大きく、2.0mm以上であってもよく、2.5mm以上であってもよい。
複数の第1導電体層30の構成は、対象とする電波の周波数において共振が生じるように決定されている。例えば、第1面21における第1導電体層30の占有率が0.85以下になるよう、第1導電体層30の半径r、周期P1、P2などが決定されている。占有率は、0.75以下であってもよく、0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよく、0.30以下であってもよい。占有率は、0.05以上であってもよく、0.10以上であってもよい。
占有率は、複数の第1導電体層30の面積の合計を、第1導電体層30が分布している領域の面積で割ることによって算出されてもよい。第1導電体層30が分布している領域の面積は、例えば図1において符号35で示すように、複数の第1導電体層30を囲う四角形35の面積であってもよい。
複数の第1導電体層30が周期的に並んでいる場合、占有率は、1つの第1導電体層30の面積を、ユニットセル12の面積で割ることによって算出されてもよい。図3は、ユニットセル12を示す斜視図である。ユニットセル12は、1つの第1導電体層30と、第1誘電体層20と、第2導電体層40とを含み、1つの第1導電体層30に対応する面積を有する。例えば、ユニットセル12は、平面視において、第1方向D1に延びる一対の第1辺と、第2方向D2に延びる一対の第2辺とを含む四角形である。第1辺の長さは第1周期P1に等しく、第2辺の長さは第2周期P2に等しい。図3に示す例において、ユニットセル12の面積は、P1×P2である。第1誘電体層20の面積は、πrである。従って、占有率はπr/(P1×P2)である。
図1において、符号S1は、第1方向D1における第1導電体層30の寸法を表す。寸法S1は、例えば5.0mm未満であり、4.0mm以下であってもよく、3.0mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよく、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。符号S2は、第2方向D2における第1導電体層30の寸法を表す。寸法S2は、例えば5.0mm未満であり、4.0mm以下であってもよく、3.0mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよく、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。図1に示す例において、寸法S1、S2は、第1導電体層30の直径である。
これらの寸法の範囲に関する条件は、寸法S1及び寸法S2の両方で満たされていてもよく、若しくは、いずれか一方のみで満たされていてもよい。例えば、寸法S1は5.0mm未満であるが、寸法S2は5.0mm以上であってもよい。上述の周期P1及び周期P2の範囲に関する条件も同様に、周期P1及び周期P2の両方で満たされていてもよく、若しくは、いずれか一方のみで満たされていてもよい。
次に、第2導電体層40について説明する。第2導電体層40は、導電性を有する材料を含む。第2導電体層40の材料としては、第1導電体層30で例示した材料を用いることができる。第2導電体層40の材料は、第1導電体層30の材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第2導電体層40の厚みT2は、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。第2導電体層40の厚みは、50μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
第2導電体層40は、第1誘電体層20の厚み方向において第1導電体層30に対向している。これにより、第1導電体層30と第2導電体層40との間に電界を生じさせることができる。
第2導電体層40は、平面視において、複数の第1導電体層30と重なるように広がっていてもよい。例えば、第2導電体層40は、第1誘電体層20の第2面22の全域に位置していてもよい。図示はしないが、第2導電体層40に開口、スリットなどが形成されていてもよい。
電波吸収シート10全体の厚みは、例えば350μm以下であり、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。第1誘電体層20の厚みhが小さいので、電波吸収シート10の全体の厚みも小さくなる。電波吸収シート10全体の厚みは、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。
電波吸収シート10全体の厚みを小さくすることにより、電波吸収シート10の設置場所の制約を少なくすることができる。すなわち、電波吸収シート10のレイアウトの自由度が高くなる。また、厚み方向における電波吸収シート10の熱抵抗を低減できる。このため、電子機器に電波吸収シート10が設置される場合に、電波吸収シート10に起因する電子部品の温度上昇を抑制できる。これにより、例えば、150℃程度まで温度が上昇する部品を備える電子機器に電波吸収シート10を設置できる。
次に、電波吸収シート10の作用について説明する。図4は、電波吸収シート10の等価回路を示す図である。等価回路は、一次回路14と、二次回路15と、一次回路14と二次回路15とを結合する変成器16と、を含む。
一次回路14は、大気中を伝搬する電波を表している。一次回路14は、大気の誘電率に基づく特性インピーダンスを有する。二次回路15は、第1誘電体層20、第1導電体層30及び第2導電体層40によって構成される共振回路を表している。共振回路は、例えば、並列に接続された抵抗、コンデンサ及びコイルを含む。変成器16は、複数の第1導電体層30によって構成される。
共振回路について説明する。上述のように、第1導電体層30は、平面視において、半径rを有する円形である。この場合、共振回路の共振周波数frは、下記の式(A1)、(A2)に基づいて算出される。
Figure 0007261395000005
cは、光速である。reffは、第1導電体層30の端部におけるフリンジング効果を考慮した場合の、第1導電体層30の実効半径である。
上述のように、電波吸収シート10が対象とする電波の周波数は、20GHz以上110GHz以下である。この場合、電波吸収シート10は、共振周波数frが20GHz以上110GHz以下になるよう構成される。例えば、電波吸収シート10が対象とする電波の周波数が79GHzである場合、共振周波数frが、79GHzと同一になる、又は近似するよう、第1誘電体層20の厚みh及び比誘電率ε並びに第1導電体層30の半径rが決定される。第1誘電体層20の厚みh及び比誘電率εが予め定められている場合、共振周波数frが所望の値になるように第1導電体層30の半径rが決定される。これにより、対象とする電波を、共振を利用して吸収することができる。
次に、変成器16について説明する。電波吸収シート10が電波を効果的に吸収するためには、二次回路15の特性インピーダンスが一次回路14の特性インピーダンスと同一である、又は近似していることが好ましい。二次回路15の共振回路が共振条件を満たしている場合、二次回路15の特性インピーダンスはNRである。Nは、変成器16の巻数比である。Rは、二次回路15の共振抵抗である。
及びRは、下記の式(A3)、(A4)に基づいて算出される。
Figure 0007261395000006
Pは、ユニットセル12の面積である。Kは定数である。式(A3)のπr/Pは、第1面21における第1導電体層30の占有率を表す。式(A3)は、第1導電体層30の占有率とNが比例関係にあることを意味する。
大気中の特性インピーダンスが真空中の特性インピーダンスと同一であると仮定すると、一次回路14のインピーダンスは120πである。電波吸収シート10は、好ましくは、NRが120πと同一になる、又は近似するよう構成される。例えば、120πに対するNRの比率が0.8以上1.2以下になるよう、第1誘電体層20の誘電正接tanδ、第1導電体層30の半径r及びユニットセル12の面積Pが決定される。第1誘電体層20の誘電正接tanδ及び第1導電体層30の半径rが既に決定されている場合、120πに対するNRの比率が所望の値になるようにユニットセル12の面積Pが調整される。例えば、第1導電体層30の第1周期P1及び第2周期P2が調整される。これにより、電波吸収シート10が電波を効果的に吸収できる。120πに対するNRの比率は、0.9以上1.1以下であってもよく、0.95以上1.05以下であってもよい。
次に、電波吸収シート10の製造方法について説明する。図5~図6Bは、電波吸収シート10の製造工程の一例を示す図である。
まず、第1誘電体層20を準備する。第1誘電体層20は、柔軟性を有する部材であってもよく、剛性を有する部材であってもよい。続いて、第1誘電体層20の第1面21に第1導電体層30を形成する。また、第1誘電体層20の第2面22に第2導電体層40を形成する。第1導電体層30及び第2導電体層40の形成方法は、特には限られない。例えば、めっき法、蒸着法、スパッタリング法などによって、第1導電体層30及び第2導電体層40を形成してもよい。金属箔を第1誘電体層20に貼ることによって、第1導電体層30及び第2導電体層40を形成してもよい。導電ペーストを第1誘電体層20に印刷することによって、第1導電体層30及び第2導電体層40を形成してもよい。第1導電体層30の形成方法と第2導電体層40の形成方法は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
続いて、第1導電体層30を加工して上述の複数の第1導電体層30に分断するパターニング工程を実施する。例えば、図5に示すように、第1導電体層30の上に複数のレジスト層37を形成する。複数のレジスト層37の位置はそれぞれ、図1及び図2に示す複数の第1導電体層30の位置に対応している。続いて、レジスト層37をマスクとしてウェットエッチングによって第1導電体層30を加工する。これにより、図6Aに示すように、第1面21の面内方向に並ぶ複数の第1導電体層30を得ることができる。
図6B及び図6Cはそれぞれ、図6Aの第1導電体層30及びレジスト層37の断面形状の一例である。図6Bに示すように、第1導電体層30は、第1面21に向かうにつれて寸法が減少する部分を含んでいてもよい。図6Cに示すように、第1導電体層30は、第1面21に向かうにつれて寸法が増加する部分を含んでいてもよい。図示はしないが、第1導電体層30の寸法は、第1面21からの距離に依らず一定であってもよい。いずれの場合であっても、第1面21に最も近接する位置での第1導電体層30の寸法が、電波吸収シート10の吸収特性に影響を及ぼす。従って、上述の寸法S1は、第1面21に最も近接する位置で測定する。
その後、レジスト層37を除去する。このようにして、第1誘電体層20、複数の第1導電体層30、及び第2導電体層40を備える電波吸収シート10を作製できる。
本実施の形態によれば、共振を利用して電波を吸収するので、従来の電波吸収体に比べて第1誘電体層20の厚みを小さくできる。このため、電波吸収シート10全体の厚みも小さくできる。これにより、電波吸収シート10が軽くなる。
図7は、電波吸収シート10を備える通信装置100の一例を示す図である。通信装置100は、筐体110と、筐体110の内部に位置し、電波を送信又は受信する通信機構120と、筐体110の内部に位置し、通信機構120を制御する制御機構130と、を備える。通信機構120は、電波吸収シート10が対象とする上述の周波数の電波Eを送信又は受信する。
図7において、符号10A~10Fが付された点線はそれぞれ、電波吸収シート10の配置の例を示している。例えば、符号10Aで示すように、電波吸収シート10は、通信機構120と制御機構130との間に配置されていてもよい。符号10Bで示すように、電波吸収シート10は、筐体110の前面111と通信機構120との間に配置されていてもよい。符号10Cで示すように、電波吸収シート10は、筐体110の前面111に取り付けられていてもよい。符号10Dで示すように、電波吸収シート10は、筐体110の後面112と通信機構120との間に配置されていてもよい。符号10Eで示すように、電波吸収シート10は、筐体110の後面112に取り付けられていてもよい。符号10Fで示すように、電波吸収シート10は、筐体110の側面113に取り付けられていてもよい。
本実施の形態によれば、電波吸収シート10の厚みが小さいので、筐体110の内部における電波吸収シート10の配置の自由度が高い。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述の実施の形態と同様に構成され得る部分について、第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述の実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(第1変形例)
図8は、第1変形例に係る電波吸収シート10を示す平面図である。図8に示すように、第1導電体層30は、平面視において、長さL及び幅Wを有する長方形であってもよい。幅Wは、長さLと同一であってもよく、長さLよりも小さくてもよい。
図8に示す例において、長さLを有する第1導電体層30の辺は、第1方向D1に延びており、幅Wを有する第1導電体層30の辺は、第2方向D2に延びている。図示はしないが、長さLを有する第1導電体層30の辺は、第1方向D1とは異なる方向に延びていてもよい。
図9は、本変形例におけるユニットセル12を示す斜視図である。ユニットセル12は、長方形の1つの第1導電体層30を含む。上述の実施の形態の場合と同様に、電波吸収シート10によって実現される共振回路の特性は、ユニットセル12の構成に基づいて決定される。
本変形例において、共振周波数frは、下記の式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)に基づいて算出される。
Figure 0007261395000007
式(B2)のεre(L)は、式(B3)のxにLを代入することによって算出される。式(B2)のεre(W)は、式(B3)のxにWを代入することによって算出される。Lは、第1導電体層30の端部におけるフリンジング効果を考慮した場合の、第1導電体層30の実効長さである。
本変形例においても、電波吸収シート10が対象とする電波の周波数は、20GHz以上110GHz以下である。この場合、電波吸収シート10は、共振周波数frが20GHz以上110GHz以下になるよう構成される。例えば、電波吸収シート10が対象とする電波の周波数が79GHzである場合、共振周波数frが、79GHzと同一になる、又は近似するよう、第1誘電体層20の厚みh及び比誘電率ε並びに第1導電体層30の長さL及び幅Wが決定される。第1誘電体層20の厚みh及び比誘電率εが予め定められている場合、共振周波数frが所望の値になるように第1導電体層30の長さL及び幅Wが決定される。これにより、対象とする電波を、共振を利用して吸収することができる。
本変形例において、N及びRは、下記の式(B5)、(B6)に基づいて算出される。
Figure 0007261395000008
Kは定数である。式(B5)のLW/Pは、第1面21における第1導電体層30の占有率を表す。式(B5)は、第1導電体層30の占有率とNが比例関係にあることを意味する。
本変形例の電波吸収シート10も、好ましくは、NRが120πと同一になる、又は近似するよう構成される。例えば、120πに対するNRの比率が0.8以上1.2以下になるよう、第1誘電体層20の誘電正接tanδ、第1導電体層30の長さL、幅W及びユニットセル12の面積Pが決定される。第1誘電体層20の誘電正接tanδ及び第1導電体層30の長さL、幅Wが既に決定されている場合、120πに対するNRの比率が所望の値になるようにユニットセル12の面積Pが調整される。例えば、第1導電体層30の第1周期P1及び第2周期P2が調整される。これにより、電波吸収シート10が電波を効果的に吸収できる。
(第2変形例)
図10は、第2変形例に係る電波吸収シート10を示す平面図である。図10に示すように、第1導電体層30は、複数の開口33を含んでいてもよい。これにより、電波吸収シート10が軽くなる。また、可視光の一部が第1導電体層30を透過できる。
開口33を含む第1導電体層30の具体的な構成は任意である。例えば、第1導電体層30は、複数の線状の層を組み合わせることにより構成される、いわゆるメッシュの形態であってもよい。
図示はしないが、第2導電体層40も複数の開口を含んでいてもよい。これにより、可視光の一部が第1導電体層30を透過できる。第1誘電体層20が透明である場合、可視光の一部は、電波吸収シート10を透過できる。これにより、電波吸収シート10が目立つことを抑制できる。
(第3変形例)
図11は、第3変形例に係る電波吸収シート10を示す平面図である。図11に示すように、複数の第1導電体層30の形状は異なっていてもよい。例えば、複数の第1導電体層30は、複数の第1形状層31と、平面視において第1形状層31とは異なる形状を有する複数の第2形状層32と、を含んでいてもよい。第1形状層31は、第1方向D1において寸法S11を有し、第2方向D2において寸法S12を有する。第2形状層32は、第1方向D1において寸法S21を有し、第2方向D2において寸法S22を有する。図10に示す例において、寸法S21は寸法S11よりも大きく、寸法S22は寸法S12よりも大きい。
第1形状層31を含むユニットセル12は、第1の共振周波数fr1を有する共振回路を構成する。第2形状層32を含むユニットセル12は、第2の共振周波数fr2を有する共振回路を構成する。第2の共振周波数fr2は、第1の共振周波数fr1とは異なる。本変形例によれば、電波吸収シート10が2つの共振周波数を有するので、電波吸収シート10が2つの吸収ピークを有することができる。
(第4変形例)
図12は、第4変形例に係る電波吸収シート10を示す平面図である。図13は、図12の電波吸収シートをXIII-XIII方向から見た場合を示す断面図である。電波吸収シート10は、第3面51及び第3面51の反対側に位置する第4面52を含む第2誘電体層50と、第4面52に位置する第3導電体層60と、を備えていてもよい。第2誘電体層50は、第2導電体層40が第1誘電体層20の第2面22と第2誘電体層50の第3面51との間に位置するよう、第1誘電体層20に積層されている。第2誘電体層50の第3面51は、第2導電体層40に接していてもよい。第3導電体層60は、第1誘電体層20の厚み方向において第1導電体層30及び第2導電体層40に対向している。
図12に示すように、第2導電体層40は、第1誘電体層20の第2面22において複数に分断されていてもよい。言い換えると、電波吸収シート10は、第1誘電体層20の第2面22に位置する複数の第2導電体層40を含んでいてもよい。この場合、図12に示すように、第2導電体層40は、第1誘電体層20の厚み方向において第1導電体層30に対向していなくてもよい。第2面22における第2導電体層40の占有率は、第1導電体層30の場合と同様に、例えば0.85以下であり、0.75以下であってもよく、0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよく、0.30以下であってもよい。占有率は、0.05以上であってもよく、0.10以上であってもよい。第2面22における第2導電体層40の占有率は、第1面21における第1導電体層30の占有率よりも大きくてもよい。
第2誘電体層50は、絶縁性を有する材料を含む。第2誘電体層50の材料としては、第1誘電体層20で例示した材料を用いることができる。第2誘電体層50の材料は、第1誘電体層20の材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第2誘電体層50の厚みh2は、例えば300μm以下であり、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。厚みh2は、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。
第3導電体層60は、導電性を有する材料を含む。第3導電体層60の材料としては、第1導電体層30で例示した材料を用いることができる。第3導電体層60の材料は、第1導電体層30の材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第3導電体層60の厚みT3は、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。第3導電体層60の厚みは、50μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
第1誘電体層20及び第2誘電体層50を挟んで対向する第1導電体層30及び第3導電体層60は、第1の共振周波数を有する第1の共振回路を構成する。また、第2誘電体層50を挟んで対向する第2導電体層40及び第3導電体層60は、第2の共振周波数を有する第1の共振回路を構成する。本変形例においても、電波吸収シート10が2つの共振周波数を有するので、電波吸収シート10が2つの吸収ピークを有することができる。
(第5変形例)
図14は、第5変形例に係る電波吸収シート10を示す平面図である。図15は、図14の電波吸収シートをXV-XV方向から見た場合を示す断面図である。
図12及び図13においては、第1導電体層30と第2導電体層40とが第1誘電体層20の厚み方向において重ならない例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図14及び図15に示すように、第1導電体層30と第2導電体層40とが第1誘電体層20の厚み方向において重なっていてもよい。
第1導電体層30は、第1方向D1において寸法S1を有し、第2方向D2において寸法S2を有する。第2導電体層40は、第1方向D1において寸法S3を有し、第2方向D2において寸法S4を有する。寸法S1は、寸法S3よりも大きくてもよい。寸法S2は、寸法S4よりも大きくてもよい。図14に示すように、第2導電体層40は、平面視において第1導電体層30を囲う輪郭を有していてもよい。
第1誘電体層20を挟んで対向する第1導電体層30及び第2導電体層40は、第1の共振周波数を有する第1の共振回路を構成する。また、第2誘電体層50を挟んで対向する第2導電体層40及び第3導電体層60は、第2の共振周波数を有する第2の共振回路を構成する。本変形例においても、電波吸収シート10が2つの共振周波数を有するので、電波吸収シート10が2つの吸収ピークを有することができる。
次に、本開示の形態を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(例1)
まず、ガラスエポキシ基材の両面に銅箔が設けられた積層板を準備した。ガラスエポキシ基材の厚みは100μmであり、銅箔の厚みはいずれも12μmであった。ガラスエポキシ基材は、上述の第1誘電体層20として機能する。銅箔は、上述の第1導電体層30及び第2導電体層40として機能する。ガラスエポキシ基材の比誘電率は4.2であり、誘電正接は0.02であった。
続いて、一方の銅箔の上に上述の複数のレジスト層37を形成した。続いて、レジスト層37をマスクとしてウェットエッチングによって銅箔を加工した。このようにして、第1誘電体層20と、第1面21に位置する複数の第1導電体層30と、第2面22に位置する第2導電体層40と、を備える電波吸収シート10を作製した。平面視における第1導電体層30の形状及び配置は下記のとおりである。
・第1導電体層30の形状:半径0.506mmの円形
・第1周期P1:2.712mm
・第2周期P2:2.712mm
第1導電体層30の占有率は、0.109である。二次回路15の特性インピーダンスNRは、計算上は120πである。
続いて、電波吸収シート10の吸収特性を評価した。具体的には、電波吸収シート10における電波の反射減衰量を、フリースペース法によって測定した。測定器としては、Keysight製のベクトルネットワークアナライザ PNA N5222B及びVirginia Diodes製の周波数マルチプライヤ WR12を用いた。WR12は、PNA N5222Bの周波数範囲を拡張するための装置である。
また、シミュレーションに基づいて電波吸収シート10の反射減衰量を算出した。シミュレーションソフトとしては、ANSYS社のHFSSを用いた。フリースペース法による測定結果と、シミュレーションによる算出結果は同等であった。シミュレーションの結果を図16に示す。図16のグラフにおいて、横軸は周波数fを示し、縦軸は反射減衰量dを示す。BW1は、反射減衰量が-15dBになる位置における吸収ピークの幅である。幅BW1は0.56GHzであった。吸収ピークの深さHは57.6dBであった。
(例1B~例1G)
例1Aの第1導電体層30の周期P1,P2を変更した条件において、シミュレーションに基づいて電波吸収シート10の吸収特性を評価した。例1B、1C、1D、1E、1F及び1Gにおける周期P1,P2は、2.1mm、2.3mm、2.5mm、2.7mm、2.9mm及び3.1mmである。第1導電体層30の形状は例1Aの場合と同一である。従って、二次回路15の共振回路の共振周波数frは、例1Aの場合と同様に79.4GHzである。一方、二次回路15の特性インピーダンスNRは、例1Aの場合とは異なる。このため、例1B~例1Gの例では、二次回路15の特性インピーダンスNRが、一次回路14の特性インピーダンスである120πに一致していない。
例1A~例1Gシミュレーション結果をまとめて図17に示す。二次回路15の特性インピーダンスNRが、一次回路14の特性インピーダンスである120πに一致していない場合であっても、吸収ピークが生じていた。二次回路15の特性インピーダンスNRと120πとの間のずれが大きいほど、吸収ピークの深さが小さくなった。
(例2)
下記の条件で構成された電波吸収シート10の吸収特性を、シミュレーションに基づいて評価した。第1誘電体層20、第1導電体層30及び第2導電体層40の材料は、例1の場合と同様に、ガラスエポキシ、銅及び銅が想定されている。第1導電体層30の占有率は、0.403である。二次回路15の特性インピーダンスNRは、計算上は120πである。
・第1導電体層30の厚み:12μm
・第1導電体層30の形状:半径1.49mmの円形
・第1周期P1:4.16mm
・第2周期P2:4.16mm
・第2導電体層40の厚み:12μm
・第1誘電体層20の厚み:100μm
・第1誘電体層20の比誘電率:4.2
・第1誘電体層20の誘電正接:0.02
シミュレーション結果を図18に示す。共振周波数frは28.2GHzであった。吸収ピークの深さHは40.4dBであり、幅BW1は0.22GHzであった。
(例3)
下記の条件で構成された電波吸収シート10の吸収特性を、シミュレーションに基づいて評価した。第1誘電体層20、第1導電体層30及び第2導電体層40の材料は、例1の場合と同様に、ガラスエポキシ、銅及び銅が想定されている。第1導電体層30の占有率は、0.102である。二次回路15の特性インピーダンスNRは、計算上は120πである。
・第1導電体層30の厚み:12μm
・第1導電体層30の形状:一辺の長さが0.85mmの正方形
・第1周期P1:2.66mm
・第2周期P2:2.66mm
・第2導電体層40の厚み:12μm
・第1誘電体層20の厚み:100μm
・第1誘電体層20の比誘電率:4.2
・第1誘電体層20の誘電正接:0.02
シミュレーション結果を図19に示す。共振周波数frは79.35GHzであった。吸収ピークの深さHは44.09dBであり、幅BW1は0.6GHzであった。
10 電波吸収シート
12 ユニットセル
14 一次回路
15 二次回路
16 変成器
20 第1誘電体層
21 第1面
22 第2面
30 第1導電体層
31 第1形状層
32 第2形状層
33 開口
35 分布領域
37 レジスト層
40 第2導電体層
50 第2誘電体層
51 第3面
52 第4面
60 第3導電体層
100 通信装置
110 筐体
120 通信機構
130 制御機構
D1 第1方向
D2 第2方向
P1 第1周期
P2 第2周期

Claims (17)

  1. 電波吸収シートであって、
    第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む第1誘電体層と、
    前記第1面に位置し、互いに接しないように第1方向に並ぶ複数の第1導電体層と、
    前記第2面に位置する第2導電体層と、を備え、
    前記第1導電体層は、金属又は合金を含み、1μm以上の厚みを有する層であり、
    前記第1面における前記第1導電体層の占有率が0.05以上0.85以下であり、
    前記第1誘電体層の誘電正接は、0.2以下であり、
    前記電波吸収シートの厚みは、350μm以下であり、
    前記電波吸収シートは、20GHz以上110GHz以下の範囲内に位置する共振周波数frを有する、電波吸収シート。
  2. 前記第1導電体層は、銅、金、銀又はアルミニウム若しくはこれらの合金を含み、1μm以上の厚みを有する層である、請求項1に記載の電波吸収シート。
  3. 前記第1方向における前記第1導電体層の寸法は、5.0mm未満である、請求項1又は2に記載の電波吸収シート。
  4. 前記第1誘電体層の厚みは、300μm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  5. 前記第1誘電体層の比誘電率は、20未満である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  6. 前記第1導電体層は、平面視において、半径rを有する円形であり、
    前記共振周波数frは、下記の式(A1)、(A2)に基づいて算出され、
    Figure 0007261395000009
    cは光速であり、εrは前記第1誘電体層の比誘電率であり、hは前記第1誘電体層の厚みである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  7. 電波吸収シートであって、
    第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む第1誘電体層と、
    前記第1面に位置し、第1方向に並ぶ複数の第1導電体層と、
    前記第2面に位置する第2導電体層と、を備え、
    前記第1面における前記第1導電体層の占有率が0.85以下であり、
    前記電波吸収シートの厚みは、350μm以下であり、
    前記電波吸収シートは、20GHz以上110GHz以下の範囲内に位置する共振周波数frを有し、
    前記第1導電体層は、平面視において、半径rを有する円形であり、
    前記共振周波数frは、下記の式(A1)、(A2)に基づいて算出され、
    Figure 0007261395000010
    cは光速であり、εrは前記第1誘電体層の比誘電率であり、hは前記第1誘電体層の厚みである、電波吸収シート。
  8. 120πに対するNRの比率が0.8以上1.2以下であり、
    及びRは、下記の式(A3)、(A4)に基づいて算出され、
    Figure 0007261395000011
    Pはユニットセルの面積であり、Kは定数であり、tanδは前記第1誘電体層の誘電正接である、請求項又はに記載の電波吸収シート。
  9. 前記第1導電体層は、平面視において、長さL及び幅Wを有する長方形であり、幅Wは長さL以下であり、
    前記共振周波数frは、下記の式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)に基づいて算出され、
    Figure 0007261395000012
    cは光速であり、εrは前記第1誘電体層の比誘電率であり、hは前記第1誘電体層の厚みである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  10. 電波吸収シートであって、
    第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む第1誘電体層と、
    前記第1面に位置し、第1方向に並ぶ複数の第1導電体層と、
    前記第2面に位置する第2導電体層と、を備え、
    前記第1面における前記第1導電体層の占有率が0.85以下であり、
    前記電波吸収シートの厚みは、350μm以下であり、
    前記電波吸収シートは、20GHz以上110GHz以下の範囲内に位置する共振周波数frを有し、
    前記第1導電体層は、平面視において、長さL及び幅Wを有する長方形であり、幅Wは長さL以下であり、
    前記共振周波数frは、下記の式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)に基づいて算出され、
    Figure 0007261395000013
    cは光速であり、εrは前記第1誘電体層の比誘電率であり、hは前記第1誘電体層の厚みである、電波吸収シート。
  11. 120πに対するNRの比率が0.8以上1.2以下であり、
    及びRは、下記の式(B5)、(B6)に基づいて算出され、
    Figure 0007261395000014
    Pはユニットセルの面積であり、Kは定数であり、tanδは前記第1誘電体層の誘電正接である、請求項又は10に記載の電波吸収シート。
  12. 前記第1導電体層は、複数の開口を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  13. 前記複数の第1導電体層は、複数の第1形状層と、平面視において前記第1形状層とは異なる形状を有する複数の第2形状層と、を含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  14. 電波吸収シートであって、
    第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む第1誘電体層と、
    前記第1面に位置し、第1方向に並ぶ複数の第1導電体層と、
    前記第2面に位置する第2導電体層と、を備え、
    前記第1面における前記第1導電体層の占有率が0.85以下であり、
    前記電波吸収シートの厚みは、350μm以下であり、
    前記複数の第1導電体層は、複数の第1形状層と、平面視において前記第1形状層とは異なる形状を有する複数の第2形状層と、を含み、
    前記電波吸収シートは、20GHz以上110GHz以下の範囲内に位置する共振周波数frを有する、電波吸収シート。
  15. 第3面及び前記第3面の反対側に位置する第4面を含む第2誘電体層と、
    前記第4面に位置する第3導電体層と、を備え、
    前記第2導電体層は、前記第1誘電体層の前記第2面と前記第2誘電体層の前記第3面との間に位置し、
    前記第2面における前記第2導電体層の占有率が0.85以下である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電波吸収シート。
  16. 電波吸収シートであって、
    第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む第1誘電体層と、
    前記第1面に位置し、第1方向に並ぶ複数の第1導電体層と、
    前記第2面に位置する第2導電体層と、
    第3面及び前記第3面の反対側に位置する第4面を含む第2誘電体層と、
    前記第4面に位置する第3導電体層と、を備え、
    前記第1面における前記第1導電体層の占有率が0.85以下であり、
    前記電波吸収シートの厚みは、350μm以下であり、
    前記第2導電体層は、前記第1誘電体層の前記第2面と前記第2誘電体層の前記第3面との間に位置し、
    前記第2面における前記第2導電体層の占有率が0.85以下であり、
    前記電波吸収シートは、20GHz以上110GHz以下の範囲内に位置する共振周波数frを有する、電波吸収シート。
  17. 電波を送信又は受信する通信機構と、
    請求項1乃至16のいずれか一項に記載の電波吸収シートと、を備える、通信装置。
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