ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)チップ放熱システムの構成:
(2)他の実施形態:
(1)チップ放熱システムの構成:
本発明の一実施形態にかかるチップ放熱システム10は、基板とチップと放熱器とを備えている。図1Aは、チップ放熱システム10の一例を示す図であり、基板20に平行な方向からチップ放熱システム10を眺めた状態を示している。本明細書においては、基板20に垂直な方向をz方向、基板20に平行な方向をx方向、y方向として示している。
本実施形態において基板20は多層基板であり、基板20の表面や内部に配線が形成されている。基板20には、パッケージ基板30を介してチップ40が固定される。すなわち、パッケージ基板30は半田バンプを介して基板20に固定され、チップ40は半田バンプを介してパッケージ基板30に固定されている。
パッケージ基板30においても、表面や内部に配線が形成されており、パッケージ基板30の半田バンプとチップ40の半田バンプとが内部の配線を介して接続されている。チップ40は、集積回路を内蔵したチップであり、クロック端子に入力されるクロック信号に同期して駆動し、各種の演算を実行可能である。むろん、パッケージ基板30が利用されず、チップ40が基板20に直接的に固定される構成であっても良い。
チップ40は略直方体であり、半田バンプの反対側には放熱シート50が取り付けられる。また、放熱シート50においては、チップ40と反対側に放熱器として機能する放熱ファン60が取り付けられる。すなわち、チップ40が駆動されると、チップ40が発熱するため、高い熱伝導性の素材で構成された放熱シート50がチップ40と放熱ファン60との間に介在し、効率的にチップ40の熱を放熱ファン60側に伝達するように構成されている。
放熱ファン60は、金属筐体を備えており、回転体の回転によってチップ40側に気体を送ることでチップ40の冷却を促進する装置である。放熱ファン60は、各種の形状とすることができ、各種の固定部で基板20に固定されて良い。本実施形態においては、放熱ファン60から基板20側に延びる柱状の固定部60aによって放熱ファン60が基板20に固定される。なお、本実施形態において放熱ファン60には、放熱ファン60をz方向からみた場合における4隅に固定部60aが設けられている。
固定部60aの一方の端部は放熱ファン60の本体に取り付けられており、他方の端部は基板20に固定される。固定部60aを基板20に固定する手法としては、種々の手法を採用可能であるが、本実施形態においては、固定部60aが延びる方向に形成されたネジ穴と、基板20に形成されたネジ穴とにネジを挿入することによって固定部60aが基板20に固定される。
このような構成のチップを駆動すると、チップから電磁波が放射される。放射される電磁波の特性は、チップ放熱システム10を単純なモデルと見なすことで説明することができる。例えば、放熱ファン60が図1Bに示すような方形マイクロストリップアンテナであると見なし、方形マイクロストリップアンテナのTM10モードによってチップ放熱システム10からの電磁波の放射特性を記述することができる。
すなわち、TM
10モードで動作する方形マイクロストリップアンテナの共振周波数の周辺で、放熱ファン60から放射される電磁波の強度が強くなる。共振周波数は、例えば、電子情報通信学会『知識の森』(http://www.ieice-hbkb.org/)、4群-2編-5章等を参照すると、式(1)のようにして算出することができる。
ここで、f
r0は共振周波数、c
0は真空中の光速、ε
rは誘電体基板の比誘電率である。
また、L
eはフリンジング電界の影響を考慮に入れた場合の等価的な放射素子長(等価素子長)であり、以下の式(2)のようにして算出することができる。
ここで、Lは図1Bに示すような方形マイクロストリップアンテナの放射素子の縦方向(長手方向)の長さであり、Δは以下の式(3)、ε
re(x)は以下の式(4)で与えられる。
なお、式(3)(4)におけるhは、図1Bに示すように、方形マイクロストリップアンテナに設けられた縦方向の長さL、横方向の長さWの放射素子の直下に形成される誘電体基板B
1の高さである(誘電体基板の直下には導体板B
2が形成される)。また、式(4)におけるxはLまたはWのいずれかが代入される。
以上のような式に図1Aに示すチップ放熱システム10のスペックを代入して共振周波数を算出すると、チップ放熱システム10から放射される電磁波の強度が相対的に強くなる周波数帯域を推定することができる。
具体的には、図1Aに示すチップ放熱システム10のスペックを式(3)に代入すると、Δを算出することができる。誘電体基板の比誘電率εrは、チップ放熱システム10において実質的に誘電体として機能する部位の構造に基づいて決定される。図1Aに示すチップ放熱システム10において、誘電体として機能する部位は破線で示す領域である。当該部位はx方向に長さZx、z方向に長さZz、y方向に長さZyである。なお、図1Cにおいては、チップ放熱システム10から放熱ファン60を除いた状態の斜視図を示している。
図1Aおよび図1Cにおいて破線で示された部位において、x-y平面方向には容量成分が並列に接続され、z方向には容量成分が直列に接続されていると見なすことによって当該部位の比誘電率を算出することができる。例えば、放熱シート50、チップ40、パッケージ基板30、基板20が直列に接続された容量成分が形成されていると見なし、各部材の大きさに基づいて合成容量を算出すれば、破線部分の比誘電率を算出することができる。より具体的には、特定の周波数における放熱シート50、チップ40のシリコン部分、パッケージ基板30のガラスエポキシ部分、基板20の半田部分、プリプレグ部分における誘電率および大きさに基づいて合成容量を算出することができる。本実施形態において、合成容量から算出された比誘電率εrは1.73である。
式(3),(4)において誘電体基板B1の高さhには、誘電体として機能する部分の高さZzを代入する。本実施形態において高さZzは1mmである。また、放射素子の長手方向の長さLは、放熱ファン60の長手方向の長さであり、本実施形態において75mmである。また、図1Aに示すチップ放熱システム10のスペックを式(4)に代入すると、εre(L)、εre(W)を算出することができる。放射素子の短手方向の長さWは、放熱ファン60の短手方向の長さであり、本実施形態において55mmである。
以上のようにして、Δ、εre(L)、εre(W)を算出すると、比誘電率εrと放射素子の長手方向の長さLとに基づいて、式(2)によって等価的な放射素子長Leを算出することができる。上述の数値を代入した場合、放射素子長Leは77.121mmとなった。この結果、等価的な放射素子長Leと比誘電率εrが確定した状態になるため、真空中の光速c0に基づいて式(1)によって共振周波数fr0を算出することができる。上述の数値を代入した場合、共振周波数fr0は約1481MHzとなる。
以上のようなモデルは、図2Aに示すような構造であると見なすことができる。すなわち、等価的な放射素子長Leのアンテナの一方の端部とグラウンドとの間にチップ40等で形成される比誘電率εrのコンデンサが接続され、アンテナの他方の端部とグラウンドとの間が絶縁された(従って比誘電率ε=0)構造であると見なすことができる。ただし、このモデルにおいて、アンテナの他方の端部とグラウンドとの間が絶縁された状況であるため、固定部60aと基板20のグラウンド部(基板20内でグラウンド電位とされる銅配線層)とが絶縁されている必要がある。このように絶縁した状態であれば、方形マイクロストリップアンテナの共振周波数が上述の式(1)となる。
しかしながら、従来のチップ放熱システムにおいては、放熱ファン60の電位を基板20のグラウンド電位と合わせるため、ビア等を介して放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間の導通が確保されるような構成が一般的であった。この場合、チップ放熱システムをモデル化した方形マイクロストリップアンテナは、図2Bの上部に示す構造となる。
すなわち、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間が等電位である場合、等価的な放射素子長Leのアンテナの一方の端部とグラウンドとの間にチップ40等で形成される比誘電率εrのコンデンサが接続され、アンテナの他方の端部とグラウンドとの間の比誘電率ε=∞である構造であると見なすことができる。この場合、図2Bの下部に示す等価回路で電気特性を表現することができ、共振周波数fr1は、図2Bに示すようにfr1=c0/(2・2Le(εr)1/2)となる。上述のチップ放熱システム10における数値を代入した場合、共振周波数fr1は約740MHzとなる。
チップ40が使用される種々の環境において、電磁波の放射を抑制すべき周波数帯が存在し得る。例えば、FM電波等が含まれる0~1000MHz帯の電波を抑制すべき場合を想定する。本実施形態にかかるチップ放熱システム10において、従来のように放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間の電位を同電位にすると、共振周波数fr1である約740MHzが0~1000MHz帯に含まれてしまう。チップ放熱システム10から放射される電磁波の周波数は共振周波数fr1の電磁波のみではなく、周囲の周波数の電磁波も含まれるが、多くの場合、共振周波数fr1の周辺で電磁波の強度が強くなる。このため、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間が等電位である場合、許容される強度を超える電磁波が0~1000MHz帯で発生する場合もある。
そこで、本実施形態にかかるチップ放熱システム10においては、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部とが絶縁される。図3A~図3Cは、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部とを絶縁するための構造を示す図である。図3Aは、放熱ファン60の1個の固定部60aと基板20との接点付近の拡大図であり、基板20に垂直な方向から固定部60aを取り外した状態で基板20を眺めた状態を示す図である。図3Bは図3Aに示すA-A線で基板20を切断した断面図、図3Cは図3Aに示すB-B線で基板20を切断した断面図である。
本実施形態において、基板20にはネジ穴20dが形成されており、固定部60aの下部60a1にもネジ穴が形成されている。従って、固定部60aの下部60a1とネジ60a2との間に基板20を挟み、ネジ60a2を基板20のネジ穴20dと固定部60aの下部60a1のネジ穴とに挿入することで、放熱ファン60を基板20に対して固定することができる。
基板20は、多層基板であり、樹脂層と銅配線層が含まれている。また、基板20にはビア20cが形成されている部位があり、図3Aにおいては、黒丸によってビア20cが形成された位置を示している。基板20の銅配線層には、回路配線として機能する層とグラウンド部となる層が含まれる。例えば、図3B、図3Cにおいて、表層から2番目の銅配線層Lgは、ビアを介して複数の層が接続され、グラウンド電位になるように構成された層である。図3B、図3Cにおいて、グラウンドとなる銅配線層Lgの周囲(上下)には、回路配線として機能する層である銅配線層Lcが形成されている。
本実施形態において、以上のようなグラウンドまたは回路配線としての銅配線層を固定部60aから絶縁するための構造が基板20に設けられている。具体的には、基板20においては、基板20のネジ穴20dと同軸であり、外周の径が固定部60aの下部60a1の外周の径よりも大きい円筒状の部位20aが形成されている。また、円筒状の部位20aの内側には、銅配線層20bと銅配線層20b間に位置する樹脂層とが形成されている。銅配線層20bは、ビアを介して複数の層が接続された状態である。また、銅配線層20bは、基板20のz方向の両端にも形成されており、基板20の表層(おもて面および裏面)に露出した状態となる。従って、固定部60aの下部60a1をネジ60a2によって基板20に固定すると、固定部60aの下部60a1とネジ60a2と銅配線層20bとが等電位となる。
しかし、銅配線層20bの外周は円筒状の部位20aに囲まれている。また、円筒状の部位20aの外周の径は、固定部60aの下部60a1の外周の径よりも大きい。そして、円筒状の部位20aは絶縁体である樹脂で構成されている。従って、固定部60aの下部60a1とネジ60a2と銅配線層20bとのいずれもが、銅配線層Lc,Lgと接触しておらず、絶縁された状態となっている。
以上の構成によれば、固定部60aと基板20のグラウンド部とを絶縁することができ、チップ放熱システム10が方形マイクロストリップアンテナであるとみなした場合の共振周波数をfr1ではなく、fr0にすることができる。共振周波数fr0は、共振周波数fr1の2倍であり、上述のように実際のスペックで計算すると約1481MHzである。そして、チップ放熱システム10から放射される電磁波の周波数は共振周波数fr0の電磁波のみではなく、周囲の周波数の電磁波も含まれるが、多くの場合、共振周波数fr0の周辺で電磁波の強度が強くなる。
このため、0~1000MHz帯の電波を抑制すべき場合において、0~1000MHz帯の電波を抑制することが可能である。以上のように、本実施形態によれば、固定部60aと基板20のグラウンド部とを絶縁するという簡易な構成により、放射される電磁波の周波数をシフトすることができ、この結果、抑制すべき電磁波を抑制可能になる。
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、固定部60aを基板20に取り付けるための構成は、上述の実施形態に限定されず、固定部60aの先端に基板20の穴に挿入可能であり、基板20に挿入した後に基板に20に係止される部位が固定部60aの先端に形成されている構成であってもよいし、接合や接着が行われる構成であっても良く、種々の構成が採用されてよい。むろん、放熱ファン60や放熱シート50、チップ40の大きさや形状、数等は上述の実施形態に限定されず、種々の構成が採用されてよい。
基板は、チップが固定される基板であれば良く、各種の配線を含み得る。また、基板の内部に形成される層の数は任意であるが、固定部と基板のグラウンド部との間を絶縁したり、固定部と基板のグラウンド部との間に形成されるコンデンサの比誘電率を調整したりすることができればよい。
チップは、基板に固定される集積回路であれば良く、大きさ、種類、信号周波数等は限定されない。いずれにしても放熱器によって発熱が抑制され、電磁波を放射し得るチップであれば良い。
放熱器は、少なくとも固定部によって基板に固定されるが、他の部分において他の部品に固定されても良い。例えば、チップに取り付けられたヒートシンク等に固定されても良い。また、放熱器は、チップの熱を放熱(冷却)可能な部品であれば良く、アンテナとなり得る部品であればよい。従って、放熱器は放熱ファンであっても良いし、ヒートシンクであっても良いし、放熱ファンとヒートシンクとの組み合わせであっても良い。
さらに、放熱器は、基板と当該放熱器との間に配置されたチップの熱を放熱させることができればよい。すなわち、放熱器と基板との間にチップが挟まれた状態で利用されれば良い。
絶縁は、比誘電率が実質的に0と見なせるような状況で実現されていれば良く、上述の実施形態のように、基板の樹脂によって実現される構成以外にも種々の構成が採用されてよい。また、絶縁を行うための部材の形状や大きさ等も適宜調整可能である。例えば、固定部の大きさや形状等に応じて絶縁を実現する樹脂等の大きさや形状等が変化しても良い。
さらに、上述の実施形態においては、固定部60aと基板20のグラウンド部との間が絶縁されていたが、固定部60aと基板20のグラウンド部との間にコンデンサが形成された構成であっても良い。この構成においては、上述のチップ放熱システム10において、放熱ファン60と基板20との間を絶縁せず、これらをグラウンド電位とせず、これらの間にコンデンサを形成する。この場合、チップ放熱システム10をモデル化した方形マイクロストリップアンテナは、図2Cの上部に示す構造となる。
すなわち、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間に比誘電率εのコンデンサが形成されている場合、等価的な放射素子長Leのアンテナの一方の端部とグラウンドとの間にチップ40等で形成される比誘電率εrのコンデンサが接続され、アンテナの他方の端部とグラウンドとの間に比誘電率εのコンデンサが接続された構造であると見なすことができる。
この場合、図2Cの下部に示す等価回路で電気特性を表現することができる。当該等価回路において、放熱ファン60と基板20との間のコンデンサが比誘電率εchoであると見なすと、このモデルにおける共振周波数frcは、図2Cに示すようにfrc=fr0-fr0・c0/((εcho)1/2+2)となる。なお、fr0は、上述の式(1)に示された、固定部60aと基板20のグラウンド部とが絶縁された場合における共振周波数である。共振周波数frcは、比誘電率εchoを0から∞に変化させることでfr0/2からfr0に変化させることができる。すなわち、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間に形成されるコンデンサの比誘電率を調整することによって共振周波数frcを変化させることができる。
本実施形態においても、FM電波等が含まれる0~1000MHz帯の電波を抑制すべき場合を想定する。上述のように、チップ放熱システム10において、従来のように放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間の電位を同電位にすると、共振周波数fr1である約740MHzが0~1000MHz帯に含まれてしまう。チップ放熱システム10から放射される電磁波の周波数は共振周波数fr1の電磁波のみではなく、周囲の周波数の電磁波も含まれるが、多くの場合、共振周波数fr1の周辺で電磁波の強度が強くなる。このため、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間が等電位である場合、許容される強度を超える電磁波が0~1000MHz帯で発生する場合もある。
そこで、本実施形態にかかるチップ放熱システム10においては、放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間にコンデンサを形成することにより、共振周波数をfr0/2からfr0に変化させることができる。また、上述のように放熱ファン60の固定部60aと基板20のグラウンド部との間の電位を同電位にした場合の共振周波数fr1はfr0/2であり、チップ放熱システム10のスペックから共振周波数fr1を算出すると約740MHzであった。そこで、本実施形態においてコンデンサの比誘電率を調整することで、共振周波数をfr0に近づけると、共振周波数が約1481MHzに近づき、0~1000MHz帯の電波を抑制することが可能になる。
放熱ファンの固定部と基板のグラウンド部との間に接続されたコンデンサの比誘電率を調整するための構成は種々の構成を採用可能である。図4A~図4Cは、放熱ファン60の1個の固定部60aと基板200との接点付近の拡大図であり、放熱ファンの固定部60aと基板のグラウンド部との間にコンデンサを接続するための構造を示す図である。図4Aは、基板200に垂直な方向から固定部60aを取り外した状態で基板200を眺めた状態を示す図である。図4Bは図4Aに示すA-A線で基板200を切断した断面図、図4Cは図4Aに示すB-B線で基板200を切断した断面図である。なお、図4A~図4Cにおいて、図3A~図3Cと同様の構成には同一の符号を付して示している。
本実施形態において、基板200にはネジ穴200dが形成されており、固定部60aの下部60a1にもネジ穴が形成されている。従って、固定部60aの下部60a1とネジ60a2との間に基板200を挟み、ネジ60a2を基板200のネジ穴200dと固定部60aの下部60a1のネジ穴とに挿入することで、放熱ファン60を基板200に対して固定することができる。
基板200は、多層基板であり、樹脂層と銅配線層が含まれている。また、基板200にはビア200cが形成されている部位があり、図4Aにおいては、黒丸によってビア200cが形成された位置を示している。基板200の銅配線層には、回路配線として機能する層とグラウンド部となる層が含まれる。例えば、図4B、図4Cにおいて、ネジ60a2よりもx軸正方向側で、基板200の表層から2番目の銅配線層Lgはグラウンド層であり、ビアを介して複数の層が接続され、複数の層がグラウンド電位になるように構成されている。また、当該銅配線層Lgの周囲(上下)に形成された銅配線層Lcは、回路配線として機能する層である。
図4B、図4Cにおいて、ネジ60a2よりもx軸負方向側の端部では、基板200の表層から1番目および2番目の銅配線層Lgがグラウンド層であり、ビアを介して複数の層が接続され、複数の層がグラウンド電位になるように構成されている。当該銅配線層Lgの間に形成された銅配線層Lcは、回路配線として機能する層である。
本実施形態において、上述の銅配線層Lc,Lgに囲まれた位置にネジ穴200dが設けられており、ネジ60a2で固定部60aの下部60a1が基板200に固定される。当該ネジ穴200dの周囲には、ネジ穴200dの周囲と固定部60aとを等電位にするための構成が設けられている。具体的には、基板200においては、基板200のネジ穴200dと同軸の円筒状の部位200a1にx軸負方向に延びる突出部200a2が結合された形状の樹脂の構造体200aが形成されている。
また、構造体200aの内側には、銅配線層200bと銅配線層200b間に位置する樹脂層とが形成されている。銅配線層200bは、ビアを介して複数の層が接続された状態である。また、銅配線層200bは、基板200のz方向の両端にも形成されており、基板200の表層(おもて面および裏面)に露出した状態となる。従って、固定部60aの下部60a1をネジ60a2によって基板200に固定すると、固定部60aの下部60a1とネジ60a2と銅配線層200bとが等電位となる。
本実施形態においては、z軸正方向の最上位に位置する銅配線層200b、すなわち、固定部60aの下部60a1と接触する銅配線層200bがx軸負方向側に延びており、コンデンサ素子300aに接続されている。また、コンデンサ素子300aには抵抗素子300bが接続され、抵抗素子300bは銅配線層Lgに接続されている。銅配線層Lgは、上述のように基板200でのグラウンド層である。従って、以上の構成によれば、放熱ファン60の固定部60aと基板200のグラウンド部との間にコンデンサ素子300aが接続されている状態となっている。
従って、コンデンサ素子300aの比誘電率を選択することにより、チップ放熱システム10が方形マイクロストリップアンテナであるとみなした場合の共振周波数をfr0/2からfr0に変化させることができる。共振周波数fr0は、共振周波数fr1の2倍であり、上述のように実際のスペックで計算すると、fr0/2からfr0の範囲は約740MHzから約1481MHzの範囲になる。
このため、0~1000MHz帯の電波を抑制すべき場合において、コンデンサ素子の比誘電率を調整することで、共振周波数0~1000MHz帯の範囲にすることができ、0~1000MHz帯での電波を抑制することが可能である。以上のように、本実施形態によれば、固定部60aと基板200のグラウンド部との間に接続されるコンデンサの比誘電率を調整するという簡易な構成により、放射される電磁波の周波数を調整することができ、この結果、抑制すべき電磁波を抑制可能になる。なお、抵抗素子300bは、共振周波数特性の調整等のために設けられているが、省略されても良い。
さらに、固定部60aと基板20のグラウンド部との間に形成されるコンデンサの態様は、上述の実施形態以外にも種々の態様を採用可能である。例えば、多層基板の樹脂層と配線層とを利用してコンデンサが形成されても良い。図5A~図5Cは、基板20内の層によってコンデンサが形成される構成例を示す図である。
図5A~図5Cは、放熱ファン60の固定部60aと基板210のグラウンド部との間にコンデンサを形成するための構造を示す図である。図5Aは、放熱ファン60の1個の固定部60aと基板210との接点付近の拡大図であり、基板210に垂直な方向から固定部60aを取り外した状態で基板210を眺めた状態を示す図である。図5Bは図5Aに示すA-A線で基板210を切断した断面図、図5Cは図5Aに示すB-B線で基板210を切断した断面図である。なお、図5A~図5Cにおいて、図3A~図3Cと同様の構成には同一の符号を付して示している。
図5A~図5Cに示す実施形態においては、基板20に形成され、固定部60aに接続された第1導体(後述する銅配線層210b)と、基板20に形成され、基板20のグラウンド部となる第2導体(後述する銅配線層Lg)と、第1導体と第2導体との間に形成された誘電体(後述する樹脂層210e)とによってコンデンサが形成される。
本実施形態において、基板210にはネジ穴210dが形成されており、固定部60aの下部60a1にもネジ穴が形成されている。従って、固定部60aの下部60a1とネジ60a2との間に基板210を挟み、ネジ60a2を基板210のネジ穴210dと固定部60aの下部60a1のネジ穴とに挿入することで、放熱ファン60を基板210に対して固定することができる。
基板210は、多層基板であり、樹脂層と銅配線層が含まれている。また、基板210にはビア210cが形成されている部位があり、図5Aにおいては、黒丸によってビア210cが形成された位置を示している。基板210の銅配線層には、回路配線として機能する層とグラウンド部となる層が含まれる。例えば、図5Aにおいては、黒丸によってビア210cが形成された位置を示している。基板210の銅配線層には、回路配線として機能する層とグラウンド部となる層が含まれる。例えば、図5B、図5Cにおいて、表層から2番目の銅配線層Lgには、ビアを介して複数の層が接続されている。また、銅配線層Lgはグラウンド電位になるように構成された層である。図5B、図5Cにおいて、グラウンドとなる層の周囲(上下)には、回路配線として機能する層である銅配線層Lcが形成されている。
本実施形態において、以上のようなグラウンドまたは回路配線としての銅配線層を固定部60aから絶縁するための構造が基板210に設けられている。具体的には、基板210においては、基板210のネジ穴210dと同軸であり、外周の径が固定部60aの下部60a1の外周の径よりも大きい円筒状の部位210aが形成されている。
また、円筒状の部位210aの内側には、銅配線層210bと銅配線層210b間に位置する樹脂層とが形成されている。銅配線層210bは、ビアを介して複数の層が接続された状態である。また、銅配線層210bは、基板210のz方向の両端にも形成されており、基板210の表層(おもて面および裏面)に露出した状態となる。従って、固定部60aの下部60a1をネジ60a2によって基板210に固定すると、固定部60aの下部60a1とネジ60a2と銅配線層210bとが等電位となる。
以上のように、銅配線層210bは、固定部60a(固定部60aの下部60a1)に接する導体であるため、上述の第1導体である。なお、本実施形態においては、図5Bおよび図5Cに示すように、ネジ60a2が挿入されるネジ穴210dの内径の大半の部分は樹脂である。すなわち、ネジ60a2が基板20の層の中で接する銅配線層は銅配線層210bのみであり、ネジ60a2の他の部位には樹脂が接している。従って、ネジ60a2や固定部60a(固定部の下部60a1)は第1導体である銅配線層210bと等電位になるが、他の銅配線層とは絶縁された状態である。
以上の構成において、基板210の表層に露出した(z軸方向両端に位置する)銅配線層210bは、ネジ穴201dを除いて円形である。当該銅配線層210bには樹脂層210eが隣接しており、当該樹脂層210eにはグラウンド部となる銅配線層Lgが隣接している。なお、図5B、図5cにおいては、銅配線層Lgがビアによって分断されているように見えるが、ビアは一部に存在するのみであるため、図5Aに示す円形の銅配線層210bの下方には大半の部分において樹脂層210eや銅配線層210bが存在する。
従って、本実施形態においては、固定部60aに接続された銅配線層210bとグラウンド部である銅配線層Lgとの間に樹脂層210eが挟まれた状態になっている。このため、放熱ファン60の固定部60aと基板210のグラウンド部との間にコンデンサが形成された状態になる。
従って、樹脂層210eの厚さや材質を調整したり、放熱ファン60の固定部60aと基板210のグラウンド部との間に存在する樹脂層の形状や構造、層の数等を調整したりすることで、コンデンサの比誘電率を調整することができる。このため、チップ放熱システム10が方形マイクロストリップアンテナであるとみなした場合の共振周波数をfr0/2からfr0に変化させることができる。共振周波数fr0は、共振周波数fr1の2倍であり、上述のように実際のスペックで計算すると、fr0/2からfr0の範囲は約740MHzから約1481MHzの範囲になる。
このため、0~1000MHz帯の電波を抑制すべき場合において、コンデンサ素子の比誘電率を調整することで、共振周波数0~1000MHz帯の範囲にすることができ、0~1000MHz帯での電波を抑制することが可能である。以上のように、本実施形態によれば、固定部60aと基板210のグラウンド部との間に形成されるコンデンサの比誘電率を調整するという簡易な構成により、放射される電磁波の周波数を調整することができ、この結果、抑制すべき電磁波を抑制可能になる。
なお、固定部が接続された第1導体と、グラウンド部となる第2導体と、第1導体と第2導体の間に形成された誘電体と、によってコンデンサが形成されるための構造は、図5A~図5Cに示す構造に限定されない。例えば、第1導体や第2導体、誘電体の構造、数、形状は図5A~図5Cに示す例に限定されない。
図6A~図6Cは、図5A~図5Cに示す構造から第2導体として機能するグラウンド部の数を減らし、また、ネジ60a2の周囲に存在するグラウンド部の面積を小さくした構成を示す図である。すなわち、図6A~図6Cに示す例は、図5A~図5Cに示す構造において、銅配線層210bの間に挟まれ、かつ、ネジ60a2を囲むように円盤状に形成された銅配線層Lgの数を6層から2層に減らし、かつ、面積を小さくした構造である。
この構造においては、銅配線層Lgの数を減らしており、この結果、銅配線層210bと銅配線層Lgとの間の距離が大きくなっている。また、銅配線層Lgの面積を減らすことにより、コンデンサの実効的な大きさを小さくしている。このように、基板210の構造を変化させることにより、コンデンサの容量を調整することが可能である。むろん、この構成は一例であり、銅配線層の面積を大きくする構成等であっても良い。
以上の実施形態において、放熱ファンの固定部と基板のグラウンド部との間に形成されるコンデンサの比誘電率が調整されることによってチップ放熱システムがアンテナとして機能する際の共振周波数が調整される。また、チップ放熱システム10の大きさや構造、材質等によって、上述の式(1)等における比誘電率εrを変化させることでも共振周波数は変化し得る。
そこで、チップ放熱システム10の態様(すなわち、比誘電率εr)に合わせて、放熱ファンの固定部と基板のグラウンド部との間に形成されるコンデンサの容量(比誘電率であってもよい)を変化させることにより、チップ放熱システム10に各種の電磁波放射特性を持たせることができる。
一方、チップ40が使用される種々の環境において、電磁波の放射を抑制すべき周波数帯(電波管理領域)が存在する。例えば、FM電波等が含まれる0~1000MHz帯、GNSS(Global Navigation Satellite System)の電波等が含まれる1452~1626MHz帯、道路交通情報通信システムの電波が含まれる2402~2500MHz帯、電子料金収受システムの電波が含まれる5700~5900MHz帯などは電波の放射が抑制されるべきであり、各領域が電波管理領域となり得る。
そこで、チップ放熱システム10が方形マイクロストリップアンテナと見なされた場合の共振周波数を1000~1452MHzまたは1626~2402MHzまたは2500MHz~5700MHzまたは5900MHz以上にする容量のコンデンサを放熱ファンの固定部と基板のグラウンド部との間に形成すれば、各電波管理領域での電磁波の放射を抑制することが可能になる。