JP7261128B2 - 競技用義足のソール - Google Patents

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Description

本発明は競技用義足のソールに関する。
従来から、湾曲しつつ爪先側へ延びる板ばね状の足部を有する競技用の義足(以下、単に「競技用義足」と記載する。)が知られている。競技用義足の足部における接地域の底面には、接地面と当接するソールが取り付けられる。特許文献1には、この種の競技用義足のソールが開示されている。特許文献1では、ジョギングやランニング等の競技種目に応じたソールが例示されている。
特開2016-150189号公報
本発明者は、鋭意検討した結果、競技用義足のソールについて走行時の防滑性及び耐摩耗性について改善の余地があることを認識するに至った。
本発明は、走行時の防滑性と耐摩耗性とを両立可能な競技用義足のソールを提供することを目的とする。
本発明の第1の態様としての競技用義足のソールは、競技用義足の接地域に装着される、競技用義足のソールであって、底面には、ソール幅方向の外縁から少なくとも前記ソール幅方向の中央位置まで延在する開放溝が設けられ、前記底面は、前記開放溝により、ソール前後方向の前側の爪先領域と、前記ソール前後方向の後側の本体領域と、に区画されており、前記爪先領域には、最小溝幅が前記開放溝の最大溝幅よりも広い溝、及び、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で外縁まで延在する溝、は設けられておらず、前記本体領域には、最小溝幅が前記開放溝の最大溝幅よりも広い溝が設けられている。
上記構成により、走行時の防滑性と耐摩耗性とを両立できる。
本発明の1つの実施形態として、前記開放溝は、前記ソール幅方向の一方の外縁から他方の外縁まで延在している。
上記構成により、ソール幅方向の一部において偏摩耗が生じることを抑制できる。
本発明の1つの実施形態として、前記開放溝の溝壁は、前記本体領域側に向かって突出する複数の凸壁部を備える。
上記構成により、防滑性をより高めることができる。
本発明の1つの実施形態として、前記爪先領域には、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で、外縁まで延在せずに前記爪先領域内で終端する複数の終端溝が設けられており、前記開放溝の溝壁は、前記爪先領域側に向かって窪む複数の凹壁部を備え、前記複数の終端溝は前記ソール前後方向に延在しており、前記複数の終端溝のうち前記ソール前後方向において前記開放溝に最も近い終端溝の前記本体領域側の端部と、前記凹壁部と、は前記ソール幅方向において異なる位置に設けられている。
上記構成により、ソール幅方向における剛性のばらつきを抑制し、偏摩耗の発生を抑制できる。
本発明の1つの実施形態として、前記開放溝は、前記ソール幅方向に向かって、前記ソール前後方向に凹凸を繰り返すようにジグザグ状に延在している。
上記構成により、複数の凸壁部及び複数の凹壁部を容易に形成することができる。
本発明の1つの実施形態として、前記終端溝は、前記ソール前後方向に対して傾斜して延在しており、前記開放溝は、前記ソール前後方向に対して、前記終端溝よりも大きい角度で傾斜して延在する傾斜延在部を備える。
上記構成により、競技用義足の形状に対するソールの追従性を高めることができる。
本発明の第2の態様としての競技用義足のソールは、競技用義足の接地域に装着される、競技用義足のソールであって、底面には、ソール幅方向の外縁から少なくとも前記ソール幅方向の中央位置まで延在する開放溝が設けられ、前記底面は、前記開放溝により、ソール前後方向の前側の爪先領域と、前記ソール前後方向の後側の本体領域と、に区画されており、前記爪先領域には、最小溝幅が前記開放溝の最大溝幅よりも広い溝、及び、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で外縁まで延在する溝、は設けられておらず、底面凹凸の凹部の比率をネガティブ比とした場合に、前記本体領域の前記ネガティブ比は、前記爪先領域の前記ネガティブ比よりも大きい。
上記構成により、走行時の防滑性と耐摩耗性とを両立できる。
本発明の1つの実施形態として、前記開放溝は、前記ソール幅方向の一方の外縁から他方の外縁まで延在している。
上記構成により、ソール幅方向の一部において偏摩耗が生じることを抑制できる。
本発明の1つの実施形態として、前記開放溝の溝壁は、前記本体領域側に向かって突出する複数の凸壁部を備える。
上記構成により、防滑性をより高めることができる。
本発明の1つの実施形態として、前記爪先領域には、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で、外縁まで延在せずに前記爪先領域内で終端する複数の終端溝が設けられており、前記開放溝の溝壁は、前記爪先領域側に向かって窪む複数の凹壁部を備え、前記複数の終端溝は前記ソール前後方向に延在しており、前記複数の終端溝のうち前記ソール前後方向において前記開放溝に最も近い終端溝の前記本体領域側の端部と、前記凹壁部と、は前記ソール幅方向において異なる位置に設けられている。
上記構成により、ソール幅方向における剛性のばらつきを抑制し、偏摩耗の発生を抑制できる。
本発明の1つの実施形態として、前記開放溝は、前記ソール幅方向に向かって、前記ソール前後方向に凹凸を繰り返すようにジグザグ状に延在している。
上記構成により、複数の凸壁部及び複数の凹壁部を容易に形成することができる。
本発明の1つの実施形態として、前記終端溝は、前記ソール前後方向に対して傾斜して延在しており、前記開放溝は、前記ソール前後方向に対して、前記終端溝よりも大きい角度で傾斜して延在する傾斜延在部を備える。
上記構成により、競技用義足の形状に対するソールの追従性を高めることができる。
本発明によれば、走行時の防滑性と耐摩耗性とを両立可能な競技用義足のソールを提供することができる。
本発明の一実施形態としてのソール、が装着されている競技用義足の側面図である。 図1に示す接地域近傍を拡大した拡大図である。 図2に示すソールの底面の展開図である。 図3の一部を拡大した拡大図である。 図4に示す開放溝の一部を拡大した拡大図である。
以下、本発明に係る競技用義足のソールの実施形態について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
まず、本発明に係る競技用義足のソールが装着されている競技用義足の一例について概要を説明する。図1は、本発明に係るソールを装着可能な競技用義足の一例としての競技用義足1を示す側面図である。図1に示す競技用義足1は、板バネ状の湾曲部2と、湾曲部2の一端部に設けられている取付部3と、を備える。湾曲部2の他端部は、接地面Gに接地する接地部5である。つまり、本実施形態の競技用義足1の接地域4は、湾曲部2の接地部5により構成されている。この湾曲部2の接地部5には、本発明の一実施形態としてのソール10が装着されている。取付部3には、例えば膝継手が取り付けられる。着用者は、例えば、膝継手に取り付けられるソケットに大腿部分を装着することで、競技用義足1を装着することができる。但し、図1に示す競技用義足1は、本発明に係るソールを装着可能な一例であって、その構成は特に限定されない。図1に示す競技用義足1は、着用者の切断レベルが膝関節離断の場合に使用可能な構成であるが、例えば、下腿切断、大腿切断などの異なる切断レベルの着用者に使用可能な競技用義足であってもよい。
図1は、競技用義足1の着用者が水平な接地面G上で直立している状態での競技用義足1の側面を示している。以下、説明の便宜上、図1に示す競技用義足1の状態を「基準状態」と記載する。競技用義足1において、湾曲部2の取付部3が設けられている一端側を「装着側」と記載し、湾曲部2の取付部3が設けられていない他端側を「接地側」と記載する。また、競技用義足1の爪先Tとは、接地域4の先端を意味する。具体的に、本実施形態の競技用義足1の爪先Tは、装着側から接地側に延びて終端する最先の位置を意味する。更に、競技用義足1の踵とは、接地域4の基端を意味する。ソール10は、少なくとも競技用義足1の爪先Tから踵までを覆うように、競技用義足1に装着される。
以下、ソール10について、競技用義足1に装着される際に爪先T側となる一端側を「前側」と記載し、踵側となる他端側を「後側」と記載する。また、ソール10の前側から後側に向かう方向、及び、ソール10の後側から前側に向かう方向、を併せて「ソール前後方向A」と記載する。更に、ソール前後方向Aに直交するソールの幅方向を単に「ソール幅方向B」と記載する。
競技用義足1によれば、接地面Gからの反力を受けて板バネ状の湾曲部2を撓ませることで反発力を生じさせることができる。着用者は、この反発力を利用することで推進力を得ることができる。湾曲部2は、強度及び軽量化の観点から、炭素繊維強化プラスチック等を用いることが好適である。図1に示すように、接地面Gに接地する競技用義足1の接地域4としての接地部5の下面には、ソール10が装着されている。
図2は、図1に示す接地域4近傍を拡大した拡大図である。図1、図2に示すように、ソール10は、接地域4としての接地部5の延在形状に従う形状を有している。図2に示すように、接地域4としての接地部5は、側面視で、接地面Gに向かって凸となるように湾曲する湾曲板部により構成されている。ソール10は、接地部5の接地面Gに向かって凸となる下面に沿って装着されている。
より具体的には、図2に示すように、接地域4としての接地部5は、側面視で、曲率半径の異なる複数の円弧部が連続することで形成されている。具体的に、本実施形態の接地部5は、爪先T側の第1湾曲板部5aと、踵側の第2湾曲板部5bと、で構成されている。図2に示す側面視において、第1湾曲板部5aの曲率半径は、第2湾曲板部5bの曲率半径よりも大きい。ソール10は、第1湾曲板部5aの下面及び第2湾曲板部5bの下面に跨って装着されている。
次に、ソール10の接地面Gに当接する底面11の詳細について説明する。図3は、ソール10の底面11の展開図である。図4は、図3の一部を拡大した拡大図である。
ソール10の底面11の前側は、着用者の蹴り出し動作時に大きな負荷を受けるため、摩耗し易い。その一方で、ソール10の底面の後側は、着用者が踏み込み動作から蹴り出し動作に移行する際に滑らないようにするための高い防滑性が求められる。この知見に基づき、図3、図4に示すソール10の底面11では、前側に耐摩耗性を高めた領域を配置し、後側に防滑性を高めた領域を配置している。
図3、図4に示す底面11は、ソール前後方向Aの後側の防滑性を高めた領域として、ソール幅方向Bに延在する複数の溝23を設けた領域を備える。詳細は後述するが、この領域が本実施形態における本体領域Q2に該当する。本体領域Q2は、ソール幅方向B全域に亘って延在し、ソール前後方向Aに間隔を隔てて配置されている複数の陸部22と、これら複数の陸部22の間に区画されるソール幅方向B全域に亘って延在する複数の溝23と、で構成されている。換言すれば、本実施形態の溝23とは、陸部22の接地頂面50により構成される仮想面を基準にして、この仮想面よりも窪んだ部分を意味している。詳細は後述するが、溝23の最小溝幅は、後述する開放溝21の最大溝幅よりも広い。このような溝23を設けることで、排水性を向上させ、防滑性を高めることができる。なお、開放溝21及び溝23の溝幅とは、各溝の延在方向に対して直交する方向の長さ意味する。詳細は後述するが、本実施形態の開放溝21及び溝23はジグザグ状に延在している。このようなジグザグ状に延在する溝の場合は、ソール前後方向Aの中心位置を繋ぐジグザグ線を溝の延在方向と定義し、この延在方向に対して直交する方向の長さを溝幅とする。また、本実施形態の溝23の溝壁には段差が設けられており、接地面G(図1等参照)側を向く段差面51が形成されているが、溝23の溝幅方向に沿う断面形状はこの形状に限られない。例えば、溝壁にこのような段差が設けられていない、溝幅方向に沿う断面形状が矩形状の溝としてもよい。
また、本体領域Q2の陸部22は、ソール幅方向Bに向かって、ソール前後方向Aに凹凸を繰り返すようにジグザグ状に延在している。このようにすることで、直線状の陸部にする場合と比較して、陸部22のエッジ成分を確保することができる。これにより、踏み込み時に接地面G上の水膜を切る水きり性能を向上させ、防滑性を高めることができる。
より具体的に、陸部22は、第1傾斜部22aと、第2傾斜部22bと、前側凸部22cと、後側凸部22dと、を備える。
第1傾斜部22aは、ソール前後方向Aに対して一方側に傾斜して延在している。第2傾斜部22bは、ソール前後方向Aに対して他方側に傾斜して延在している。第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bそれぞれの陸部幅は略一定である。第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bの陸部幅とは、第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bの延在方向に直交する方向の長さを意味する。第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bの延在方向は、ソール前後方向Aの中心位置を繋ぐ線で定義される。本実施形態の第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bそれぞれの陸部幅は略一定であるが、この構成に限られず、陸部幅が延在方向の位置によって変動する構成であってもよい。
前側凸部22cは、第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bが交差する位置で前側に突出している。後側凸部22dは、第1傾斜部22a及び第2傾斜部22bが交差する位置で後側に突出している。陸部22が、前側凸部22c及び後側凸部22dを備えることで、陸部22のエッジ成分を更に増加させることができ、接地面G上の水膜を切る水きり性能を、より高めることができる。これにより、本体領域Q2の防滑性を、より高めることができる。
各陸部22は、第1傾斜部22a、前側凸部22c、第2傾斜部22b、後側凸部22d、の順に連なる部位を単位パターンとし、この単位パターンをソール幅方向Bに繰り返し連続させることで形成されている。
また、ソール前後方向Aにおいて間隔を隔てて配置されている複数の陸部22の位置関係として、第1傾斜部22a、前側凸部22c、第2傾斜部22b、後側凸部22dそれぞれのソール幅方向Bの位置は同じである。つまり、複数の陸部22の第1傾斜部22a、前側凸部22c、第2傾斜部22b及び後側凸部22dそれぞれの位置は、ソール前後方向Aに一列に並ぶように、ソール幅方向Bの位置が揃っている。このようにすることで、ソール前後方向Aにおいて隣接する2つの陸部22の間に区画される溝23についても、陸部22と同様、ソール幅方向Bに向かって、ソール前後方向Aに凹凸を繰り返すようにジグザグ状に延在している。
更に、ソール前後方向Aにおいて隣接する2つの陸部22において、後側の陸部22の前側凸部22cと、前側の陸部22の後側凸部22dと、はソール前後方向Aにおいて同位置にある。換言すれば、後側の陸部22の前側凸部22cと、前側の陸部22の後側凸部22dと、はソール幅方向Bの位置は異なるが、ソール前後方向Aにおいてオーバーラップしている。このようにすることで、隣接する陸部がソール前後方向においてオーバーラップしない構成と比較して、ソール前後方向Aにおいて配置する陸部22の数を増加させ、陸部22のエッジ成分を増やすことができる。これにより、水きり性能を向上させて、防滑性を高めることができる。
本実施形態の複数の陸部22はいずれも一様な形状であるが、このような構成に限られない。ソール前後方向Aの位置に応じて陸部22の陸部幅を異ならせてもよい。また、本実施形態の複数の溝23はいずれも一様な形状であるが、このような構成に限られない。ソール前後方向Aの位置に応じて溝23の溝幅を異ならせてもよい。更に、本実施形態の溝23の両端は、ソール幅方向Bの両側の外縁まで延在しているが、この構成に限られない。溝23の両端が底面11内で終端していてもよく、いずれか一方のみが外縁まで延在していてもよい。
また、図3、図4に示す底面11は、ソール前後方向Aの前側の耐摩耗性を高めた領域として、上述の溝23のような広幅な溝を有さない領域を備える。詳細は後述するが、この領域が本実施形態における爪先領域Q1に該当する。
本実施形態の爪先領域Q1には、底面11の外縁まで延在せずに爪先領域Q1内で終端する複数の終端溝24が設けられている。本実施形態の爪先領域Q1には、複数の終端溝24のみが設けられ、他の溝は設けられていない。詳細は後述するが、終端溝24の最大溝幅は、開放溝21の最大溝幅以下である。終端溝24の溝幅は、上述した開放溝21及び溝23の溝幅と同様、終端溝24の延在方向に対して直交する方向の長さ意味する。
終端溝24は、着用者が走行時に接地する際に閉じて、溝壁同士が当接して支え合う細溝である。このような細溝は「サイプ」と呼ばれる。このようなサイプは、最大溝幅がソール厚み方向の溝深さの1/2以下の溝、として定義される。本実施形態の終端溝24の最大溝幅は、1mm以下に設定されている。これに対して、上述した本体領域Q2の溝23は、着用者が走行時に接地する際に閉じず、溝壁同士が離間したままの太溝である。このような太溝は、最小溝幅がソール厚み方向の溝深さの1/2より広い溝、として定義される。本実施形態の溝23の最小溝幅は、1mmより広幅に設定されている。
このように、本実施形態のソール10の底面11は、前側に位置する耐摩耗性を高めた領域と、後側に位置する防滑性を高めた領域と、を含む。このようにすることで、爪先T側での摩耗を抑制して耐久性の高いソール10を実現できる。また、踵側での防滑性を高めて、着用者が走行時にスリップし難い安全性に優れたソール10を実現できる。
本発明者は、更に鋭意検討を重ねた結果、上述の前側の耐摩耗性の高い領域と上述の後側の防滑性の高い領域との間に剛性段差が生じ易く、その位置に偏摩耗が生じ易いという更なる課題を認識にするに至った。
これに対して、図3、図4に示すソール10の底面11では、上述の耐摩耗性の高い領域と防滑性の高い領域との間に、開放溝21が設けられている。換言すれば、底面11は、この開放溝21により、ソール前後方向Aの前側の爪先領域Q1と、ソール前後方向Aの後側の本体領域Q2と、に区画されている。この開放溝21は、ソール幅方向Bの外縁から少なくともソール幅方向Bの中央位置CLまで延在している。ソール幅方向Bの中央位置CLとは、ソール前後方向Aの各位置におけるソール幅方向Bの中点の集合により定義される。そして、爪先領域Q1及び本体領域Q2は、少なくとも以下の3つの要件を充足する領域である。
(1)爪先領域Q1には、最小溝幅が開放溝21の最大溝幅よりも広い溝は設けられていない。
(2)爪先領域Q1には、最大溝幅が開放溝21の最大溝幅以下で外縁まで延在する溝は設けられていない。
(3)本体領域Q2には最小溝幅が開放溝21の最大溝幅よりも広い溝が設けられている、又は、本体領域Q2のネガティブ比は爪先領域Q1のネガティブ比よりも大きい。
図3、図4に示す爪先領域Q1には、最大溝幅が開放溝21の最大溝幅以下の終端溝24のみが設けられている。つまり、爪先領域Q1には、最小溝幅が開放溝21の最大溝幅よりも広い溝は設けられていない。したがって、図3、図4に示す爪先領域Q1は上記(1)の要件を充足する。
また、終端溝24は、底面11の外縁まで延在せず、開放溝21にも開放しておらず、底面11内で終端している。本実施形態の開放溝21は、終端溝24と同様、上述のサイプにより構成されている。つまり、爪先領域Q1には、最大溝幅が開放溝21の最大溝幅以下の終端溝24が設けられている。しかしながら、上述したように、終端溝24は底面11の外縁まで延在する溝ではない。したがって、爪先領域Q1には、最大溝幅が開放溝21の最大溝幅以下で外縁まで延在する溝は設けられていない。すなわち、図3、図4に示す爪先領域Q1は上記(2)の要件についても充足する。
更に、図3、図4に示す本体領域Q2には、溝23が設けられている。上述したように溝23はサイプではなく、溝23の最小溝幅が開放溝21の最大溝幅よりも広い。つまり、本体領域Q2には、最小溝幅が開放溝21の最大溝幅よりも広い溝が設けられている。したがって、図3、図4に示す本体領域Q2は上記(3)の要件についても充足する。
なお、図3、図4に示す本体領域Q2については、上記(3)の要件における「本体領域Q2のネガティブ比は爪先領域Q1のネガティブ比よりも大きい」についても充足している。「ネガティブ比」とは、底面凹凸の凹部の比率を意味する。具体的に、本実施形態の爪先領域Q1のネガティブ比とは、図3に示す爪先領域Q1の全面積に対する、図3に示す全ての終端溝24が占める面積の比を意味する。また、本実施形態の本体領域Q2のネガティブ比とは、図3に示す本体領域Q2の全面積に対する、図3に示す全ての溝23が占める面積の比を意味する。
以上のように、本実施形態のソール10の底面11は、上記(1)、(2)、(3)の要件すべてを充足する爪先領域Q1及び本体領域Q2を備えている。耐摩耗性の高い領域としての爪先領域Q1と、防滑性の高い領域としての本体領域Q2と、の間にソール幅方向Bの所定範囲に延在する開放溝21が設けられることで、爪先領域Q1及び本体領域Q2の間の剛性段差を軽減できる。特に、爪先領域Q1及び本体領域Q2では、溝23のような太溝の有無で相違するため、剛性段差が大きくなり易い。そのため、開放溝21を外縁まで延在する構成とすることで、溝23よりも狭幅の開放溝21を設ける構成としても変形性能を確保でき、上記剛性段差を緩和できる。これにより、耐摩耗性の高い領域と防滑性の高い領域との間の位置に偏摩耗が生じることを抑制できる。更に、開放溝21を設けることで、上記剛性段差を緩和する所望の剛性を保ちつつ、開放溝21のエッジ成分による水きり性能を得ることができる。
なお、本実施形態の爪先領域Q1には底面視(図3等参照)で直線状に延在する終端溝24が設けられているが、まったく溝が設けられていない構成であってもよい。
次に、本実施形態のソール10の底面11の更なる詳細について説明する。
上述したように、開放溝21は、ソール幅方向Bの外縁から少なくともソール幅方向Bの中央位置CLまで延在する構成とされるが、本実施形態のように、ソール幅方向Bの一方の外縁から他方の外縁まで延在している開放溝21とすることが好ましい。このようにすることで、ソール幅方向Bでの剛性のばらつきを抑制し、ソール幅方向Bにおいて剛性段差が生じることを抑制できる。これにより、ソール幅方向Bの一部において偏摩耗が生じることを抑制できる。また、ソール幅方向Bでの水きり性能のばらつきについても抑制できる。
更に、図4に示すように、本実施形態の開放溝21は、ソール前後方向に凹凸を繰り返すようにソール幅方向Bに向かってジグザグ状に延在している。このような形状の開放溝21とすることにより、開放溝21の溝壁には、凸壁部21a及び凹壁部21bが形成される。図5は、図4に示す開放溝21の一部を更に拡大した図である。図5に示すように、凸壁部21aは、開放溝21の前側に位置する溝壁において、本体領域Q2側(図5では下側)である後側に向かって突出する部分である。また、図5に示すように、凹壁部21bは、開放溝21の前側に位置する溝壁において、爪先領域Q1側(図5では上側)に向かって窪む部分である。
本実施形態の開放溝21の溝壁には、上述の凸壁部21aが複数設けられている。また、本実施形態の開放溝21の溝壁には、上述の凹壁部21bが複数設けられている。凸壁部21a及び凹壁部21bは、ソール幅方向Bにおいて交互に配置されている。より具体的に、本実施形態の凹壁部21bは、ソール幅方向Bにおいて隣接する2つの凸壁部21aにより、その間の位置に区画されている。なお、凸壁部21a及び凹壁部21bの数、形状は本実施形態の数、形状に限定されない。
開放溝21の溝壁が上述の凸壁部21aを備えることで、走行時に接地面G(図1参照)上の水膜を凸壁部21aの頂部で切り裂くような水きり効果を得ることができる。これにより、防滑性をより高めることができる。
また、図4に示すように、開放溝21の溝壁は上述の凹壁部21bを備える。上述したように、本実施形態の爪先領域Q1には複数の終端溝24が設けられている。各終端溝24は、ソール前後方向Aに延在している。ここで、図4に示すように、複数の終端溝24のうちソール前後方向Aにおいて開放溝21と最も近い終端溝24の本体領域Q2側の端部40と、凹壁部21bの凹底21b1と、はソール幅方向Bにおいて異なる位置に設けられている。換言すれば、複数の終端溝24のうちソール前後方向Aにおいて開放溝21と最も近い終端溝24の本体領域Q2側の端部40の位置と、凹壁部21bの凹底21b1の位置とは、ソール幅方向Bの異なる位置に形成されている。より具体的に、本実施形態の複数の終端溝24のうちソール前後方向Aにおいて開放溝21と最も近い終端溝24の本体領域Q2側の端部40は、ソール幅方向Bにおいて、隣接する2つの凹壁部21bの間に位置する。このように、終端溝24の本体領域Q2側の端部40のソール幅方向Bの位置を、凹壁部21bの凹底21b1のソール幅方向Bの位置と異ならせることで、両者のソール幅方向Bの位置を同じにする構成と比較して、終端溝24と開放溝21とのソール前後方向Aでの距離が、ソール幅方向Bの位置によってばらつくことを抑制できる。これにより、ソール幅方向Bにおける剛性のばらつきを抑制し、偏摩耗の発生を抑制できる。
なお、本実施形態の開放溝21と、本体領域Q2において最も前側の溝23との間に区画される陸部形状は、本体領域Q2の陸部22と同様であるが、この構成に限られない。但し、開放溝21と本体領域Q2において最も前側の溝23との間に区画される陸部の最大陸部幅は、陸部22の最大陸部幅以下とすることが好ましい。このようにすることで、開放溝21の後側に隣接する位置で、剛性が過度に大きくなることを抑制できる。また、開放溝21の後側に隣接する位置の排水性が過度に低下することを抑制できる。
また、図4に示すように、本実施形態の開放溝21及び終端溝24は、ソール前後方向Aにおいて全くオーバーラップしておらず、ソール幅方向Bにおいて一列に並ぶ部分はない。本実施形態の爪先領域Q1には、図4に示すように、ソール前後方向Aの開放溝21及び終端溝24の間の位置に、ソール幅方向Bに直線状に延在する、溝が全く設けられていない領域を有する。このようにすることで、開放溝21の影響で、爪先領域Q1における剛性が低下することを抑制できる。
本実施形態では、開放溝21をジグザグ状に構成することで、上述の凸壁部21a及び凹壁部21bを形成しているが、開放溝21の形状はジグザグ状に限られない。したがって、開放溝21の凸壁部21a及び凹壁部21bは、別の形状の開放溝21の溝壁に形成されていてもよい。但し、本実施形態のように、ジグザグ状の開放溝21とすれば、複数の凸壁部21a及び複数の凹壁部21bを容易に形成することができる。
更に、本実施形態の終端溝24は、底面視(図4等参照)において、ソール前後方向Aに対して傾斜して延在している。具体的に、本実施形態の終端溝24は、ソール前後方向Aに対して角度θ1で傾斜している。また、本実施形態の開放溝21は、底面視(図4等参照)において、ソール前後方向Aに対して、終端溝24よりも大きい角度θ2で傾斜して延在する傾斜延在部30を備える。本実施形態の傾斜延在部30は、底面視(図4等参照)において、直線状に延在している。終端溝24の角度θ1と、開放溝21の傾斜延在部30の角度θ2と、の角度関係を上記関係とすることで、爪先領域Q1に終端溝24が設けられる構成としても、爪先領域Q1の位置よりも開放溝21の位置で、面外に曲げ変形し易い構成とすることができる。つまり、上記角度関係とすることで、爪先領域Q1の終端溝24の有無によらず、競技用義足1の接地部5の形状に対するソール10の追従性を確保することができる。
なお、上述したように、本実施形態の爪先領域Q1には複数の終端溝24が設けられている。複数の終端溝24は、ソール前後方向Aの前側に向かうにつれてソール幅方向Bの一方側に傾くように延在する第1終端溝24aと、ソール前後方向Aの前側に向かうにつれてソール幅方向Bの他方側に傾くように延在する第2終端溝24bと、を含む。第1終端溝24a及び第2終端溝24bは、図4の底面視で、ソール前後方向Aに延びる対称軸線に対して線対称な形状である。第1終端溝24a及び第2終端溝24bは、ソール幅方向Bにおいて交互に配置されている。本実施形態の爪先領域Q1では、第1終端溝24a及び第2終端溝24bがソール幅方向Bに交互に配置された幅方向列が、ソール前後方向Aの異なる位置に、2つ設けられている。2つの幅方向列の一方の幅方向列における第1終端溝24aは、ソール前後方向Aにおいて、他方の幅方向列における第2終端溝24bに隣接している。また、2つの幅方向列の一方の幅方向列における第2終端溝24bは、ソール前後方向Aにおいて、他方の幅方向列における第1終端溝24aに隣接している。
また、本実施形態のソール10は略一様な厚みで構成されている。具体的に、本実施形態のソール10では、爪先領域Q1での厚みが、本体領域Q2での厚みと略等しい。なお、本実施形態において、ソール10の爪先領域Q1での厚みとは、終端溝24が設けられていない位置での厚みを意味する。また、本実施形態において、ソール10の本体領域Q2での厚みとは、陸部22の接地頂面50(図3、図4参照)の位置での厚みを意味する。
次に、競技用義足1に装着された状態のソール10の詳細について説明する。図2に示すように、ソール10は、競技用義足1の接地域4としての接地部5に装着される。ソール10は、湾曲部2の接地部5の接地面G側の下面を覆うようにして、接地部5の上面側に巻き付けて固定することで、接地部5に対して装着される。なお、図1~図5では、ソール10における接地部5に巻き付ける部分は、省略されている。
上述したように、本実施形態の接地部5は、側面視(図2参照)で、曲率半径の異なる第1湾曲板部5a及び踵側の第2湾曲板部5bで構成されている。上述したように、図2に示す側面視において、第1湾曲板部5aの曲率半径は、第2湾曲板部5bの曲率半径よりも大きい。但し、第1湾曲板部5aの曲率半径を、第2湾曲板部5bの曲率半径以下としてもよい。第1湾曲板部5a及び第2湾曲板部5bの曲率半径が異なる場合、第1湾曲板部5aと第2湾曲板部5bとの境界線BLは、図3に示すように、ソール10の底面11の開放溝21と重なる位置に配置される。このようにすることで、接地部5に曲率半径が変化する境界線BLがあっても、ソール10を接地部5に対して追従させ易い。
本発明に係る競技用義足のソールは、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。上述した実施形態では、ソール10の底面11における本体領域Q2に溝23を設けているが、本体領域Q2のネガティブ比が爪先領域Q1のネガティブ比よりも大きい構成であれば、ディンプルなどの溝以外の凹部を採用してもよい。凹部としては、底面11の外縁まで貫通する構成であってもよく、底面11の外縁まで貫通しない構成であってもよい。但し、本実施形態のように、凹部として溝23を採用し、底面11の外縁まで貫通する構成とすることが好ましい、このようにすれば、底面11の本体領域Q2の排水性を、より高めることができ、本体領域Q2の防滑性を、より高めることができる。なお、本体領域Q2のネガティブ比が爪先領域Q1のネガティブ比よりも大きい構成であれば、複数の凸部が配置された本体領域Q2としてもよい。かかる場合には、本体領域Q2において凸部が設けられていない位置が、本体領域Q2における凹部となる。
本発明は競技用義足のソールに関する。
1:競技用義足、 2:湾曲部、 3:取付部、 4:接地域、 5:接地部、 5a:第1湾曲板部、 5b:第2湾曲板部、 10:ソール、 11:底面、 21:開放溝、 21a:凸壁部、 21b:凹壁部、 21b1:凹底、 22:陸部、 22a:第1傾斜部、 22b:第2傾斜部、 22c:前側凸部、 22d:後側凸部、 23:溝、 24:終端溝、 24a:第1終端溝、 24b:第2終端溝、 30:傾斜延在部、50:接地頂面、 51:段差面、 A:ソール前後方向、 B:ソール幅方向、 BL:境界線、 CL:中央位置、 G:接地面、 Q1:爪先領域、 Q2:本体領域、 T:爪先、 θ1:終端溝のソール前後方向に対する角度、 θ2:開放溝の傾斜延在部のソール前後方向に対する角度

Claims (12)

  1. 競技用義足の接地域に装着される、競技用義足のソールであって、
    底面には、ソール幅方向の外縁から少なくとも前記ソール幅方向の中央位置まで延在する開放溝が設けられ、
    前記底面は、前記開放溝により、ソール前後方向の前側の爪先領域と、前記ソール前後方向の後側の本体領域と、に区画されており、
    前記爪先領域には、最小溝幅が前記開放溝の最大溝幅よりも広い溝、及び、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で外縁まで延在する溝、は設けられておらず、
    前記本体領域には、最小溝幅が前記開放溝の最大溝幅よりも広い溝が設けられている、競技用義足のソール。
  2. 前記開放溝は、前記ソール幅方向の一方の外縁から他方の外縁まで延在している、請求項1に記載の競技用義足のソール。
  3. 前記開放溝の溝壁は、前記本体領域側に向かって突出する複数の凸壁部を備える、請求項1又は2に記載の競技用義足のソール。
  4. 前記爪先領域には、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で、外縁まで延在せずに前記爪先領域内で終端する複数の終端溝が設けられており、
    前記開放溝の溝壁は、前記爪先領域側に向かって窪む複数の凹壁部を備え、
    前記複数の終端溝は前記ソール前後方向に延在しており、前記複数の終端溝のうち前記ソール前後方向において前記開放溝に最も近い終端溝の前記本体領域側の端部と、前記凹壁部と、は前記ソール幅方向において異なる位置に設けられている、請求項3に記載の競技用義足のソール。
  5. 前記開放溝は、前記ソール幅方向に向かって、前記ソール前後方向に凹凸を繰り返すようにジグザグ状に延在している、請求項4に記載の競技用義足のソール。
  6. 前記終端溝は、前記ソール前後方向に対して傾斜して延在しており、
    前記開放溝は、前記ソール前後方向に対して、前記終端溝よりも大きい角度で傾斜して延在する傾斜延在部を備える、請求項4又は5に記載の競技用義足のソール。
  7. 競技用義足の接地域に装着される、競技用義足のソールであって、
    底面には、ソール幅方向の外縁から少なくとも前記ソール幅方向の中央位置まで延在する開放溝が設けられ、
    前記底面は、前記開放溝により、ソール前後方向の前側の爪先領域と、前記ソール前後方向の後側の本体領域と、に区画されており、
    前記爪先領域には、最小溝幅が前記開放溝の最大溝幅よりも広い溝、及び、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で外縁まで延在する溝、は設けられておらず、
    底面凹凸の凹部の比率をネガティブ比とした場合に、前記本体領域の前記ネガティブ比は、前記爪先領域の前記ネガティブ比よりも大きい、競技用義足のソール。
  8. 前記開放溝は、前記ソール幅方向の一方の外縁から他方の外縁まで延在している、請求項7に記載の競技用義足のソール。
  9. 前記開放溝の溝壁は、前記本体領域側に向かって突出する複数の凸壁部を備える、請求項7又は8に記載の競技用義足のソール。
  10. 前記爪先領域には、最大溝幅が前記開放溝の最大溝幅以下で、外縁まで延在せずに前記爪先領域内で終端する複数の終端溝が設けられており、
    前記開放溝の溝壁は、前記爪先領域側に向かって窪む複数の凹壁部を備え、
    前記複数の終端溝は前記ソール前後方向に延在しており、前記複数の終端溝のうち前記ソール前後方向において前記開放溝に最も近い終端溝の前記本体領域側の端部と、前記凹壁部と、は前記ソール幅方向において異なる位置に設けられている、請求項9に記載の競技用義足のソール。
  11. 前記開放溝は、前記ソール幅方向に向かって、前記ソール前後方向に凹凸を繰り返すようにジグザグ状に延在している、請求項10に記載の競技用義足のソール。
  12. 前記終端溝は、前記ソール前後方向に対して傾斜して延在しており、
    前記開放溝は、前記ソール前後方向に対して、前記終端溝よりも大きい角度で傾斜して延在する傾斜延在部を備える、請求項10又は11に記載の競技用義足のソール。

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