JP7260362B2 - 海島型複合繊維およびそれからなる多孔中空繊維 - Google Patents
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Description
そこで合成繊維の上記のような欠点を改良するために、合成繊維の横断面形状を異形化したり、繊維を中空化することが広く行われている。通常、異形紡糸ノズルまたは中空紡糸ノズルを用いて製造される異形断面繊維や中空繊維は、紡出後、固化するまでの間に溶融状態にある樹脂の表面張力や紡糸時の引き取り張力等によって異形断面が崩れたり、中空部が潰れやすいという課題があり、特に多孔中空形状を発現させようとすると、紡出直後は繊維に多孔状の中空構造が付与されても、多孔状中空部が潰れて消滅したり、該中空部の割合が減少し易く、かかる手法で多孔状の中空部を有する繊維を得ることは実質的に不可能であった。
1.海島型複合繊維において、海成分に難溶解性ポリマーとして公定水分率3%以上であるポリマーを用い、島成分に易溶解性ポリマーとしてポリエチレングリコール系化合物と5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルからなる易溶解性ポリマーを用いた海島型複合繊維であって、複合繊維の断面において、海成分中に複数の島成分が配置された海島領域と、海成分のみで形成され、海島領域によってはさまれている、互いに交差する3以上の海成分領域を有し、前記海成分領域の幅(H)が、前記海島領域内に存在しかつ隣接する島成分同士の距離(W)の最大値よりも大きく、海島型複合繊維の島成分直径をrとすると、海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔Dが0.2r~1.0rの関係を満たし、ウースター斑の平均偏差率(U%)が1.0%未満となる海島型複合繊維、
2.海成分領域(H)で囲われた領域において島成分数が10島以上、100島未満である前記1記載の海島型複合繊維、である。
また、島径は好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.2~1μmである。島径が0.1μm未満の場合には繊維構造が不安定で物性や繊維形態が不安定で好ましくなく、一方5μmを超える場合には海島型複合繊維を減量加工しても十分なソフトな風合いや吸水性が得られない。
さらに、染色斑を小さくするために、ウースター斑の平均偏差率(U%)が1.0%未満となることが必要である。ウースター斑の平均偏差率(U%)が1.0%以上の場合、染め斑が発生しやすくなる。
定した。
(1) 公定水分率
JIS L 0105:2006に従い、通常の状態で繊維が有する繊維質量と絶乾時の繊維質量の差を通常の状態で繊維が有する繊維質量で割った値から算出した。
(2) 剛軟度
海島型複合繊維の繊度を50~100dtexになるように束ね、その後度目50~80となるように丸編みを作成し、その後減量加工することで多孔中空繊維束からなる布帛を作製した。またこの布帛をJIS L1096:2010 8.21 A法(45°カンチレバー法)に従い、測定行った。
(3) 吸水速度
上記と同様に布帛を作製し、その後減量加工することで多孔中空繊維束からなる布帛を作製した。またこの布帛をJIS L1907:2010 7.1.1滴下法により吸水速度を測定し、1秒以下であれば良好であると判断した。
(4) 中空孔孔径、海島型複合繊維の島径(r)
海島型複合繊維をアルカリ溶液で減量加工した後に得られた多孔中空繊維を繊維長方向と垂直の方向に繊維断面を切断し、繊維断面を30,000倍でTEM観察により、1本の複合繊維内の中空孔直径を測定し、その30点平均から島成分径を測定した。
(5) ウースター斑(U%)
ツェルベガーウースター社製 ウースターテスターUT-5を用い、ハーフInertモードで、海島型複合繊維の平均偏差率(U%)を測定した。
給糸速度:400m/分
測定糸長:2000m
U%の値が1.0未満であれば、糸斑の少ない海島型複合繊維であると判断した。
(6) 海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔(D)
海島型複合繊維を繊維長方向と垂直の方向に繊維断面を切断し、繊維断面を30,000倍でTEM観察により、1本の複合繊維内の繊維外周と最外層島成分の間隔を測定し、その30点平均から島成分径を測定した。この時Dが0.2r~1.0rとなる場合が良好であると判断した。
(7) 海島型複合繊維断面における海成分領域の幅(H)および島成分同士の距離(W)
海島型複合繊維を繊維長方向と垂直の方向に繊維断面を切断し、繊維断面を30,000倍でTEM観察により、海成分領域の幅(H)および島成分同士の距離(W)を測定し、その30点平均から島成分径を測定した。この時H>Wとなる場合が良好とした。
(8) 多孔中空繊維束の形成
中空潰れが発生する場合、海島型複合繊維単糸の中空部の島の溶解除去が不十分である場合、島部連結や中空部の破れが生じている場合、海島型複合繊維の紡糸断糸が多かったり、曵糸性不足で複合繊維が得られなかった場合を×、問題がなかった場合を〇として表現した。
海成分に公定水分率4.5%、Tg47℃のポリアミド6(Ny6)を用い、島成分に平均分子量4000のポリエチレングリコール(PEG)を3質量%、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SIP)を9mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET1)を用いて、島数90/1フィラメント、24フィラメントとなる海島合流部の形態が図1に示すものである海島型紡糸口金を用いて溶融紡糸し、1000m/minで巻取行い3倍に延伸行って、単糸繊度4.0dtexなる海島型複合繊維を得た。この時、島成分と海成分ポリマーの質量吐出比は50:50であった。また得られた海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔は0.56μm、海成分領域の幅(H)および島成分同士の距離(W)はそれぞれH=1.20μm、W=0.80μmであった。加えてU%は0.6%であり染色斑がすくなかった。その後3.5質量%、80℃の水酸化ナトリウム水溶液へ40分間浸漬し、島成分ポリマーを溶解した。得られた多孔中空繊維は図3に示す多孔中空断面を呈しており、中空孔の直径は1.4μm、孔数90、中空率44%であった。海島型複合繊維の島成分直径をr(1.4μm)、海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔D(0.56μm)としたとき、D=0.4rであった。他結果は表1に示す。
島成分に5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SIP)を9mol%のみを共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製し、減量加工行った。結果、海ポリマーの粘度が高く海島形成ができなかった。他結果は表1に示す。
海成分に公定水分率が0.4%のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製した。アルカリ減量を行った結果、溶解除去できない島成分が中心部分に残っており、均一な多孔中空繊維を形成することはできなかった。他結果は表1に示す。
海島型複合繊維の口金は特開2002-161438号公報の図1に記載のものを参考に海島複合繊維において均一に島成分が分布するように図4記載の口金4を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製し、減量加工行った。結果、アルカリ減量行ったが中心部分は減量できず均一な多孔中空繊維を作ることはできなかった。加えて、形成された中空部もすぐにつぶれてしまった。他結果は表1に示す。
海島型複合繊維の口金を図5に記載の口金5を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島型複合繊維を作製し、減量加工行った。結果、アルカリ減量行ったが中心部分は減量できたものの、梁となる海成分が変形し、形成された中空部がつぶれてしまい、楕円に近い繊維外形断面となった。他結果は表1に示す。
海島型複合繊維の口金を、島数80/1フィラメント、24フィラメントとなる海島合流部の形態が図2に示すものである海島型紡糸口金を用いて溶融紡糸し、1000m/minで巻取行い3倍に延伸行って、単糸繊度4.0dtexなる海島型複合繊維を得た。この時、島成分と海成分ポリマーの質量吐出比は50:50であった。また得られた海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔は0.40μm、海成分領域の幅(H)および島成分同士の距離(W)はそれぞれH=1.40μm、W=0.90μmであった。加えてU%は0.6%であり染色斑がすくなかった。その後3.5質量%、80℃の水酸化ナトリウム水溶液へ40分間浸漬し、島成分ポリマーを溶解した。得られた多孔中空繊維の中空孔の直径は1.5μm、孔数80、中空率44%であった。海島型複合繊維の島成分直径をr(1.5μm)、海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔D(0.40μm)としたとき、D=0.3rであった。他結果は表1に示す通り、多孔中空繊維形成性、品質ともに良好な結果を得た。
繊維外周と最外層島成分の間隔Dを1.7μmとなるような口金1のタイプの口金を用いた以外は、実施例1と同様の要領で実施した。海島型複合繊維の島直径はr(1.4μm)であり、D=1.2rの関係となった。島成分のアルカリ水溶液による溶解除去性は問題なく、中央部分まで完全な多孔中空を形成したが、海繊維表面から一番近い中空部までの厚みが大きいために繊維が硬くなり、剛軟度が高く、風合いの硬い方向となった。他の結果を含めて、結果は表1に示す通りであった。
海領域Hに覆われた部分の島数が90であるような口金2のタイプの口金を用いた以外は、実施例2と同様の要領で実施した。海島型複合繊維の総島数は720、島直径rは0.17μmであり、Dは0.4μmであって、D=0.4rの関係となった。島成分のアルカリ水溶液による溶解除去性は問題なく、中央部分まで完全な多孔中空を形成し、複合繊維形成性、風合い、吸水性ともに良好なものが得られた。結果は表1に示す通りであった。
海成分ポリマーと島成分ポリマーの吐出量比を変更して、島成分比率を70質量%に変更した以外は実施例1と同様の要領で実施した。島成分のアルカリ水溶液による溶解除去性は問題なく、中央部分まで完全な多孔中空を形成し、複合繊維形成性、風合い、吸水性ともに良好なものが得られた。結果は表1に示す通りであった。
海成分ポリマーと島成分ポリマーの吐出量比を変更して、島成分比率を30質量%に変更した以外は実施例1と同様の要領で実施した。島成分のアルカリ水溶液による溶解除去性は問題なく、中央部分まで完全な多孔中空を形成し、複合繊維形成性、風合い、吸水性ともに問題のないものが得られた。結果は表1に示す通りであった。
海成分ポリマーと島成分ポリマーの吐出量比を変更して、島成分比率を20質量%に変更した以外は実施例1と同様の要領で実施した。島成分のアルカリ水溶液による溶解除去性は問題なく、中央部分まで完全な多孔中空を形成したが、総中空率が小さいためか、風合いと吸水性にやや劣るものとなった。結果は表1に示す通りであった。
海成分ポリマーと島成分ポリマーの吐出量比を変更して、島成分比率を80質量%に変更した以外は実施例3と同様の要領で実施した。島成分のアルカリ水溶液による溶解除去性は問題なく、中央部分まで完全な多孔中空を形成し、複合繊維形成性、風合い、吸水性ともに優れたものが得られた。結果は表1に示す通りであった。
海成分ポリマーと島成分ポリマーの吐出量比を変更して、島成分比率を85質量%に変更した以外は実施例1と同様の要領で実施した。島成分比率が多すぎるため、島同士が密着し、吐出不良発生により原糸を得ることができなかった。結果は表1に示す通りであった。
D:海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔
W:海島領域内に存在しかつ隣接する島成分同士の距離
H:海成分領域の幅
Claims (2)
- 海島型複合繊維において、海成分に難溶解性ポリマーとして公定水分率3%以上であるポリマーを用い、島成分に易溶解性ポリマーとしてポリエチレングリコール系化合物と5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルからなる易溶解性ポリマーを用いた海島型複合繊維であって、複合繊維の断面において、海成分中に複数の島成分が配置された複数の海島領域と、海成分のみで形成され、海島領域によってはさまれている、互いに交差する3以上の海成分領域を有し、前記海成分領域の幅(H)が、前記海島領域内に存在しかつ隣接する島成分同士の距離(W)の最大値よりも大きく、海島型複合繊維の島成分直径をrとすると、海島型複合繊維の外周と最外層の島成分の間隔Dが0.2r~1.0rの関係を満たし、ウースター斑の平均偏差率(U%)が1.0%未満となる海島型複合繊維。
- 海成分領域(H)で囲われた領域において島成分数が10島以上、100島未満である請求項1記載の海島型複合繊維。
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