JP2014040683A - カチオン可染分割型複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】常温でも十分な着色効果を発現し、かつ風合いが良好で且つ、該繊維の割繊化により表面積の大きい扁平な単繊維が得られる分割型複合繊維を提供する。
【解決手段】高分子重合体(A)2と共重合体ポリエステル(B)3が繊維断面において交互に配置された分割型複合繊維1であって、共重合体ポリエステル(B)のジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸であり、1.0〜3.5モル%が下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、特定量のシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)及び脂肪族ジカルボン酸成分(c)を含み、且つ該複合繊維の表面に(A)及び(B)が交互に露出している。
Figure 2014040683

[上記式(I)中、Rは水素、アルキル基等を表し、Xは金属イオン、4級ホスホニウムイオン塩等を表す。]
【選択図】図1

Description

本発明は風合いが良好でソフト感に優れ、且つ低温、常圧環境下にて染色する際に、濃色性と堅牢性にきわめて優れた特性を示す分割型複合繊維と、この分割型複合繊維(以下、単に複合繊維と称する場合もある。)を割繊して得られる、天然繊維に似た風合いを有し、ソフト感に富んだ特徴を有する単繊維に関する。
ポリエステルやポリアミド等の合成繊維は、その単糸繊度や断面形状が単調であるために、織物、編物、不織布等の繊維構造物とした場合に、綿や麻等の天然繊維からなる繊維構造物に対して風合い、光沢などが単調で冷たく、品位の低い製品になりがちであった。また溶融紡糸による合成繊維は、特有の鏡面光沢があり、染色した場合も羊毛、絹などの天然繊維に比べて鮮やかさや色の深みが得られにくいなどの欠点があった。
近年、合成繊維におけるそのような風合いの欠点を改良するために、繊維横断面の異型化、捲縮加工、複合繊維の形成やその多種々の方法が試みられており、従来技術の具体例として、割繊化できることを特徴とした接合型複合繊維にする方法(特許文献1)等が検討されてきた。またポリエステル系繊維は疎水性であるため、繊維自体の吸水性、吸湿性に劣るという欠点がある。これらの欠点を改良するために、従来、種々の検討がなされており、その中で例えば、ポリエステル等の疎水性ポリマーと水酸基を有するポリマーとを複合紡糸することにより、疎水性繊維に親水性などの性能を付与させる試みがなされている。具体的には、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等の疎水性熱可塑性樹脂との複合繊維が開示されている(特許文献2および3)。
しかし、一般的にポリエステル繊維はその緻密な繊維構造から染色性に劣っており、特許文献1〜3に記載の複合繊維をカチオン染料または分散染料で染色しようとすると130℃の高温高圧化、或いは有機溶剤のキャリア剤を使用しなければ、良好な発色性、堅牢性を得ることは困難である。
一方で、ポリエステル繊維をウール、綿、アクリル、ポリウレタンなど、ポリエステル以外の素材と交編、交織し、複雑な工程を介さずに良好な染色特性を有するポリエステル混製品を製造する技術が求められているが、この場合、ポリエステル繊維に十分な染色特性を付与するために、130℃前後の高温高圧下での染色加工が必要となる。しかし、その環境下においてはポリエステル繊維と交編、交織した素材が劣化してしまうため、例えば常圧環境下、より具体的には100℃以下においても良好な染色特性を有するポリエステル繊維の発現が必要とされてきた。
そのため、常圧でカチオン染料及び分散染料に易染性のポリエステル繊維を製造する方法が数多く提案されている(特許文献4〜7)。具体的には共重合ポリエステルを繊維化することで、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることが出来るとされている。そしてその結果、分散染料及びカチオン染料を用いた常圧染色が可能で、且つ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることができるとされているが、常圧下の染色性としては不十分であった。
このように、上記したいずれの方法も、合成繊維に天然繊維に似た風合いを付与し、しかも100℃以下においても良好な染色特性を有するポリエステル繊維の発現には至らなかった。
特開2001−140129号公報 特開平3−174015号公報 特開平10−158926号公報 特開平6−184820号公報 特開2000−355831号公報 特開2003−301328号公報 特開平11−93020号公報
したがって本発明の目的は、天然繊維に似た良好な風合いならびに吸湿性及び吸水性を保持しつつ、低温、常圧環境下でカチオン染料及び分散染料に対して濃色性を示し、洗濯堅牢性及び耐光堅牢性に優れる特徴を有する分割型複合繊維を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記特徴を有する繊維を提供することによって解決されることを見出した。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)が繊維断面において交互に配置された分割型複合繊維であって、共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)であり、且つ該複合繊維の表面に熱可塑性樹脂(A)および共重合体ポリエステル(B)のいずれもが露出している分割型複合繊維である。
Figure 2014040683
[上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は、2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは金属イオン、4級ホスホニウムイオン塩又は、4級アンモニウムイオンを表す。]
また、本発明は該熱可塑性樹脂(A)が、エチレン含有量が25モル%〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体であってもよい。
さらに、該熱可塑性樹脂(A)と該共重合体ポリエステル(B)との質量比が、90/10〜10/90の範囲であってもよい。
加えて、複合繊維断面における長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.1以上で、該熱可塑性樹脂(A)と該共重合体ポリエステル(B)とが短径方向に沿って多層に接合されていてもよい。
また本発明は上記の分割型複合繊維を分割して得られ、繊度が0.05〜1.7デシテックスである単繊維をも包含する。
本発明によれば、低温、常圧下でカチオン染料及び分散染料による染色が可能であって、且つ洗濯堅牢性及び耐光堅牢性に極めて優れた分割型複合繊維を得ることができる。さらに該繊維を割繊化することにより扁平な単糸を得ることができ、天然繊維に似た良好な風合いの糸を得ることができる。
本発明の複合繊維の繊維断面図の一態様である。 複合繊維を分割処理して得られる熱可塑性樹脂(A)からなる単繊維の繊維断面図の一態様である。 複合繊維を分割処理して得られる共重合体ポリエステル(B)からなる単繊維の繊維断面図の一態様である。
本発明は、ポリエステル樹脂からなる繊維に関する。そして、当該ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体ポリエステル(B)である。本発明におけるポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、ジカルボン酸成分のうち、その繰り返し単位の75モル%以上がテレフタル酸成分であり、テレフタル酸成分の他に少なくとも3種以上の共重合成分からなる。
本発明におけるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分のうちテレフタル酸成分の他に下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)及び脂肪族ジカルボン酸成分(c)の3種が共重合されていることが重要である。原因は明確ではないが、これら3種のジカルボン酸成分の存在によって常圧下での優れた染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度を確保することができる。
Figure 2014040683
[上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は、2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは金属イオン、4級ホスホニウムイオン塩又は、4級アンモニウムイオンを表す。]
まず本発明におけるポリエステル樹脂は、カチオン染料可染性を得るために、ジカルボン酸成分のうち、共重合成分として上記化学式(I)で表される化合物由来の成分(a)を1.0モル%〜3.5モル%含有する。
上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸アルカリ金属塩基を有するジカルボン酸成分:5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸成分などを挙げることができる。上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)は1種類のみをポリエステル中に共重合させても、また2種類以上を共重合させてもよい。上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)を共重合させることにより、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることができる。その結果、分散染料及びカチオン染料に対して常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることが出来る。
ジカルボン酸成分のうち上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量が1.0モル%未満の場合、カチオン染料で染色したときに鮮明で良好な色調になるカチオン染料可染性ポリエステルを得ることができない。一方、上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量が3.5モル%を超えると、ポリエステルの増粘が著しくなって紡糸が困難になる。しかもカチオン染料染着座席の増加により繊維に対するカチオン染料の染着量が過剰になって、色調の鮮明性がむしろ失われる。染色物の染色性及び紡糸性等の点から、上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量は1.2〜3.0モル%であるのが好ましく、1.5〜2.5モル%であるのがより好ましい。
また、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)をポリエチレンテレフタレートに共重合した場合、結晶構造の乱れが小さい特徴を有しているため、高い染着率を確保しながら、耐光堅牢性に優れた繊維を得ることができる。ここで、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)は、シクロヘキサンジカルボン酸又は、そのエステル形成性誘導体を共重合させることによってポリエステルに導入することができる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)を共重合することによって、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向は低下する。そのため、カチオン染料及び分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、カチオン染料及び分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。更に、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)は他の脂肪族ジカルボン酸成分に比べ結晶構造の乱れが小さいことから、耐光堅牢性にも優れたものとなる。
本発明のポリエステル樹脂において、ジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が2.0〜10.0モル%であり、好ましくは5.0〜10.0モル%である。ジカルボン酸成分のうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が2.0モル%未満の場合、繊維内部における非晶部位の配向度が高くなるため、常圧環境下での染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分のうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が10.0モル%を超えた場合、染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度など、染色性に関しては良好な品質を確保できる。しかし、樹脂のガラス転移温度が低いことと繊維内部における非晶部位の配向度が低いことによって、該ポリマーをノズルから紡糸した後、自発伸張の発生により安定な繊維物性が得られない。
本発明に用いられるシクロヘキサンジカルボン酸には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の3種類の位置異性体がある。本発明の効果が得られる点からはどの位置異性体が共重合されていてもかまわないし、また複数の位置異性体が共重合されていてもかまわない。また、それぞれの位置異性体にはシス/トランスの異性体があるが、いずれの立体異性体が共重合されていてもかまわないし、シス/トランス双方の異性体が共重合されていてもかまわない。シクロヘキサンジカルボン酸誘導体についても同様である。
脂肪族ジカルボン酸成分(c)についてもシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)と同様に、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向が低下するため、カチオン染料及び分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、常圧可染性を向上させることが可能となる。ここで、脂肪族ジカルボン酸成分(c)は、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を共重合させることによってポリエステルに導入することができる。
具体的には、脂肪族ジカルボン酸成分(c)をポリエチレンテレフタレートに2.0〜8.0モル%共重合すると、低温セット性にも効果がある。そのため本発明により得られる繊維を織編物にしてから形態安定化のために熱セットする場合、熱セット温度を低くすることが可能になる。ニット用途において低温セット性は好ましい物性であり、本発明のポリエステル繊維をウール、綿、アクリル、ポリウレタン等のポリエステル以外の素材と混合する場合、熱セットに必要な温度をポリエステル以外の素材の物性が低下しない程度に抑えることが可能となる。また、ポリエステル繊維の単独使いにおいても、一般的な現行ニット用設備に対応が可能となり用途拡大が期待できる。
本発明におけるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分のうち脂肪族ジカルボン酸成分(c)の共重合量が2.0〜8.0モル%であり、好ましくは2.5〜7.0モル%であり、より好ましくは3.0〜6.0モル%である。ジカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(c)の共重合量が2.0モル%未満では、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足する。また、ジカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(c)特にアジピン酸性分の共重合量が8.0モル%を超えた場合、染着率は高くなるものの、該ポリマーをノズルから紡糸した後、自発伸張の発生により安定な繊維物性が得られない。
脂肪族ジカルボン酸性分(c)として好ましく用いられるものとしては、アジピン酸成分、セバシン酸成分、デカンジカルボン酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分が例示できる。これらは単独又は2種類以上を併用することも出来る。
本発明における複合繊維の常圧可染性や品位を低下させることの無い範囲であれば、テレフタル酸成分、シクロヘキサンジカルボン酸成分、及び脂肪族ジカルボン酸成分以外の他のジカルボン酸成分を共重合しても良い。具体的には、イソフタル酸成分やナフタレンジカルボン酸成分等の芳香族ジカルボン酸成分を単独であるいは複数種、合計10.0モル%以下の範囲で共重合してもよい。
しかし、これらの成分を共重合することでエステル交換反応、重縮合反応が煩雑になるばかりでなく、共重合量が適正範囲を超えると洗濯堅牢性を低下させることがある。具体的には、イソフタル酸成分をジカルボン酸成分に対して10モル%を越えて共重合すると、本発明の構成要件を満足させたとしても、洗濯堅牢特性を低下させる恐れがあり、5モル%以下での使用が望ましく、0モル%であること(共重合しないこと)がより好ましい。
更に、共重合体ポリエステル(B)中に、それぞれ酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛などの艶消剤、リン酸、亜リン酸などの熱安定剤、あるいは光安定剤、酸化防止剤、酸化ケイ素などの表面処理剤などが添加剤として含まれていてもよい。酸化ケイ素を用いることで、得られる繊維は、減量加工後に繊維表面に微細な凹凸を付与することが出来、後に織編物にした場合に濃色化が実現される。更に、熱安定剤を用いることで加熱溶融時やその後の熱処理における熱分解を抑制できる。また、光安定剤を用いることで繊維の使用時の耐光性を高めることができ、表面処理剤を用いることで染色性を高めることも可能である。
これらの添加剤は、共重合体ポリエステル(B)を重合によって得る際に、重合系内にあらかじめ加えておいてもよい。ただし、一般に酸化防止剤などは重合末期に添加するほうが好ましく、特に重合系に悪影響を与える場合や、重合条件下で添加剤が失活する場合はそうすることが望ましい。一方、艶消剤、熱安定剤などは重合時に添加するほうが均一に樹脂重合物内に分散しやすいため好ましい。
本発明における共重合体ポリエステル(B)は、固有粘度が0.45〜0.70であることが好ましく、より好ましくは0.48〜0.68であり、さらに好ましくは0.50〜0.65である。固有粘度が0.70を超える場合、繊維化時の紡糸性が著しく悪くなる。また紡糸が可能となり、目標の染着率が得られた場合でも、染色された複合繊維において染色斑や筋が発生したり、風合いが劣ったりするなど、得られた染色品の表面品位が低下し、衣料用として好ましくない。また固有粘度が0.45未満の場合、紡糸中に断糸しやすく生産性が低下するばかりでなく、得られた繊維の強度も低くなる。更に紡糸が可能となり、目標の染着率が得られた場合でも、染色された複合繊維で染色斑や筋が発生したり、風合いが劣ったりするなど、得られた染色品の表面品位が低下し、衣料用として好ましくない。
次に熱可塑性樹脂(A)についてであるが、本発明の複合繊維の効果を阻害しないのであれば、限定されるものではないが、目的、用途に応じて、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合体、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系重合体、その他ポリスチレン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、エチレンービニルアルコール系共重合体などを好ましい例として挙げることができる。なかでも、親水性やソフト感やアイスタッチ感等の触感性に優れる等の点でエチレン−ビニルアルコール系共重合体であることがより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂(A)としては上記に挙げた重合体成分を2種類以上使用してもよく、また上記の重合体成分を変性させた重合体成分を使用してもよい。
エチレンービニルアルコール系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化することにより得られるが、エチレン含有量が25〜60モル%のもの、すなわちビニルアルコール成分(未鹸化酢酸ビニル成分を含む)が約40〜75モル%のものが好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体中のビニルアルコール成分の割合が低くなれば、水酸基の減少のため親水性などの特性が低下し、目的とする良好な親水性を有する天然繊維に似た風合いが得られない恐れがある。逆にビニルアルコール成分の割合が多くなりすぎると、溶融成形性が低下すると共に共重合体ポリエステル(B)と複合紡糸する際に、曳糸性が不良となり、紡糸時又は延伸時の単糸切れ、断糸が多くなる恐れがある。さらに、鹸化度は95%以上の高鹸化度のものが好ましい。したがって、高鹸化度でエチレン含有量が25〜60%のものが本発明の目的の繊維を得るためには適している。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体と複合される共重合体ポリエステル(B)として高融点ポリマーを用いる場合、長時間安定に連続して紡糸するには、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶融成形時の耐熱性を向上させることが好ましい。そのための手段として、エチレン含有量を適正な範囲に設定することに加えて、エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の金属イオン含有量を所定量以下にすることも効果がある。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の熱分解機構としては大きく分けてポリマー主鎖間での橋かけ反応が起こり、ゲル化物が発生していく場合と、主鎖切断、側鎖脱離などの分解が進んでいく機構が混在化して発生すると考えられている。エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の金属イオンを除去することにより、溶融紡糸時の熱安定性が飛躍的に向上する。特にNa、Kイオンなどの第I族のアルカリ金属イオンと、Ca2+、Mg2+イオンなどの第II族のアルカリ土類金属イオンをそれぞれ100ppm以下とすることにより顕著な効果がある。特に、長時間連続して高温条件で溶融紡糸をする際、エチレン−ビニルアルコール系共重合体中にゲル化物が発生してくると紡糸フィルター上にゲル化物が徐々に詰まって堆積する。その結果紡糸パック圧力が急上昇してノズル寿命が短くなるとともに紡糸時の単糸切れ、断糸が頻発する。ゲル化物の堆積が更に進行するとポリマー配管が詰まりトラブル発生の原因となり好ましくない。エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の第I族アルカリ金属イオン、第II類アルカリ土類金属イオンを除去することにより高温での溶融紡糸、特に250℃以上での溶融紡糸時に長時間連続してもゲル化物発生によるトラブルが起こりにくい。これら金属イオンの含有量は、それぞれ50ppm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10ppm以下である。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法として、一例を説明すると、メタノールなどの重合溶媒中でエチレンと酢酸ビニルとをラジカル重合触媒下でラジカル重合させる。ついで未反応モノマーを追い出し、苛性ソーダにより鹸化反応を起こさせ、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とした後、水中でペレット化した後、水洗して乾燥する。従って工程上どうしてもアルカリ金属やアルカリ土類金属がポリマー中に含有されやすく、通常は数百ppm以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属が混入している。
アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン含有量を出来るだけ低下させる方法としては、エチレン−ビニルアルコール系重合体製造工程中、鹸化処理後ペレット化した後、湿潤状態のペレットを酢酸が含まれる純水溶液で大量にペレットを洗浄した後、さらに大過剰の純水のみで大量にペレットを洗浄する。またエチレン−ビニルアルコール系重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体を苛性ソーダにより鹸化して製造されるが、前述したようにこのときの鹸化度を95%以上にすることが好ましい。鹸化度が低くなると、ポリマーの結晶性が低下し、強度等の繊維物性が低下してくるのみならず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が軟化しやすくなり加工工程でトラブルが発生してくるとともに得られた繊維構造物の風合いも悪くなり好ましくない。
本発明の分割型複合繊維において、熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)の質量比は90/10〜10/90とする必要があり、85/15〜15/85とすることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)との質量比が90/10を越える場合には、紡糸パック内で分配不良が発生し、複合繊維の断面形状において共重合体ポリエステル(B)成分の扁平形状が得られない等の問題が発生し好ましくない。また10/90未満の場合には、逆に熱可塑性樹脂(A)の量が少ないために、熱可塑性樹脂(A)成分の扁平形状が得られない等の問題が生じ、好ましくない。
本発明の分割型複合繊維の繊維断面構造としては、用途、性能に応じて多層型、中空多層型、花弁型、中空花弁型にすることができる。また、丸型断面に限らず異型断面繊維であっても差し支えない。
上記の中でも割繊性や割繊処理により得られる単繊維の形状等を考慮すると、複合繊維の長径(L)と短径(D)との長さの比が1.1以上であって、熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)とが短径方向に沿って多層に接合されていることが、複合繊維を割繊して単繊維化する際に容易である点で好ましい。また、長径(L)と短径(D)との長さの比は、10以下であることが複合繊維の生産性や繊度の均一性、さらには複合繊維に接合されている熱可塑性樹脂(A)や共重合体ポリエステル(B)の形状安定性、すなわち割繊後の単繊維の品位再現性を考慮すると好ましい。
熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)との接合数は特に限定されないが、複合繊維が紡糸安定性を有し、かつ割繊後に得られる単繊維の繊度が極細性を有するためには、接合数が7〜20であることが好ましい。ここで接合数とは複合繊維を構成する熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)との層の合計数を示し、例えば図1の複合繊維であれば、接合数は11である。
さらには、複合繊維断面の熱可塑性樹脂(A)層の長径(L)と短径(D)との比率や共重合体ポリエステル(B)層の長径(L)と短径(D)との比率についてもL/D≧2、L/D≧2であることが割繊後に得られる単繊維が扁平性を有することが容易となるため好ましい。ここで、Dとは複合繊維断面の熱可塑性樹脂(A)層の重心を通り、熱可塑性樹脂(A)層の末端間で直線を引いた場合に最短距離となる場合の長さを示し、Lとは複合繊維断面の熱可塑性樹脂(A)層の重心を通り、前記Dに対して垂直な直線を引いた場合の熱可塑性樹脂(A)層の末端間の距離を示す。同様に、Dとは複合繊維断面の共重合体ポリエステル(B)層の重心を通り、共重合体ポリエステル(B)層の末端間で直線を引いた場合に最短距離となる場合の長さを示し、Lとは複合繊維断面の共重合体ポリエステル(B)層の重心を通り、前記Dに対して垂直な直線を引いた場合の共重合体ポリエステル(B)層の末端間の距離を示す。
本発明の分割型複合繊維の製造方法においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に代表される熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)とをそれぞれ別々の溶融押出機で溶融し、これを常法により交互に配列させた状態で紡糸口金に導き吐出させる方法を採用してもよい。
紡糸口金から吐出された後は、従来公知の複合紡糸繊維の製造技術により、延伸、捲縮、乾燥、カットなどの工程を経て本発明の複合ステープル繊維とすることができる。
本発明の分割型複合繊維は、割繊前の状態で繊度が1〜10デシテックスであることが、紡糸時やその後の染色時さらには割繊時の工程通過性が良好であって、かつ割繊後に得られる単繊維の繊度を以下に記載の繊度とすることが容易な点で好ましい。
また、本発明の分割型複合繊維は、割繊処理により単繊維の繊度が0.05〜1.7デシテックスの極細扁平繊維となることが好ましく、0.08〜1.1デシテックスであることがより好ましい。分割処理により形成される単繊維の繊度が0.05デシテックス未満の場合には単繊維の強度が弱くなり過ぎて繊維が切断される問題が生じやすくなる。一方、単繊維の繊度が1.7デシテックスを超えると十分なソフト感が得られにくい。
さらに、割繊後の断面形状として、熱可塑性樹脂(A)からなる単繊維の短径(D)及び共重合体ポリエステル(B)からなる単繊維の短径(D)がそれぞれ3μm以下であり、熱可塑性樹脂(A)からなる単繊維の長径(L)と短径(D)との比(L/D)や、共重合体ポリエステル(B)からなる単繊維の長径(L)と短径(D)との比(L/D)がそれぞれ2以上の特徴を有することが好ましい。前記条件を満足する場合、従来の円形断面の極細繊維ではソフト感はあるもののヌメリ感が大きいという問題があったが、扁平断面にすることによりヌメリ感を減少させることが可能となる。
分割処理方法は通常用いられる方法でよく、本発明の分割型複合繊維を割繊させる場合、仮撚捲縮加工、インターレース等のエアー加工、スチームジェット加工、ニードルパンチ加工等が挙げられる。このとき割繊性を向上させるため、熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)間の接触面積は少ない方がよく、接触面積が大きいと、物理的な外力による割繊が難しくなる。そのため分割型複合繊維の断面形状において、熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)とが長径方向に沿って接合されているのではなく、短径方向に沿って多層に接合されていることが好ましい。
さらに本発明の複合繊維は、常法に従って例えば、フィラメント加工糸、紡績糸、織物、編物、不織布等各種の繊維構造体とすることができる。そして、繊維構造体とした後、前記の分割処理を施すことによって、複合繊維から分割された単繊維からなる繊維構造体を形成することが可能となる。
複合繊維や複合繊維から分割された単繊維、更には該複合繊維や該単繊維からなる繊維構造体は、分散染料及びカチオン染料にて染色処理したときのクベルカムンクの式によって求められる深色度(K/S値)が10以上、好ましくは12以上であり、従来の合成繊維の極細繊維では得られなかった色の深みと鮮やかさが発現した極めて良好な発色性を有し、かつ吸放湿性にも優れている特徴を有する。
本発明の複合繊維は、カチオン染料および分散染料に対して良好な染色性を示していることが特徴である。複合繊維の染色条件については、100℃を越える、常圧以上の圧力の雰囲気下でも染色は可能であるが、特に100℃以下の低温かつ常圧の雰囲気下においても良好な染色性を示す。染色温度については、70℃〜105℃が好ましく、さらに好ましくは80℃〜100℃である。また、カチオン染料で染色する場合も分散染料で染色する場合も、既知の染料や助剤を用いて染色を行うことができる。さらに染料や助剤の濃度や染色時間についても一般的な方法で濃度や時間を選択することにより、染色された繊維の濃色性を制御することが可能である。
本発明の複合繊維は、複合繊維が得られ、繊維集合体を形成する前に染色を行っても、染色によって複合繊維の部分剥離や割繊が生じることがなく、染色された複合繊維によって繊維集合体を形成することやできる点で好ましい。また複合繊維から繊維集合体を形成後、割繊する前に染色をする工程を選択してもよい。さらには割繊を行った後で、染色を行う工程を選択してもよい。
以下、実施例において本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、ジカルボン酸成分及びグリコール成分の共重合量、繊維の染着方法、染着率、染着濃度(K/S)、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、紡糸性の評価は以下の方法に従った。
[ジカルボン酸成分及びグリコール成分の共重合量]
共重合量は、該ポリエステル繊維を重トリフロロ酢酸溶媒中に0.5g/Lの濃度で溶解し、50℃で500MHz H−NMR(日本電子製核磁気共鳴装置LA−500)装置を用いて測定した。
[染色方法]
得られた複合繊維を巻き取ってかせ状とした上で、以下の条件でカチオン染料にて染色した。
(カチオン染色)
染料 : Cathilon Red CD-FGLH 3.0%omf
助剤 : Na2SO4 10.0%、CH3COONa 0.5%、CH3COOH(50%)
浴比 1:50
染色温度×時間 : 90℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム : 1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム : 1.0g/L
アミラジンD : 1.0g/L
浴比 : 1/50
還元洗浄温度×時間 : 80℃×20分
[染着率]
上記染色方法において、染色前の原液及び染色後の残液をそれぞれアセトン水(アセトン/水=1/1混合溶液)で任意の同一倍率に希釈し、各々の吸光度を測定した後に、以下に示す式から染着率を求めた。
吸光度測定器 : 分光光度計 HITACHI
HITACHI Model 100-40
Spectrophotometer
染着率=(A−B)/A×100(%)
ここで上記式中のA及びBはそれぞれ以下を示す。
A:原液(アセトン水希釈溶液)吸光度
B:染色残液(アセトン水希釈溶液)吸光度
[染着濃度(K/S)]
染着濃度(K/S)は、上記染色後のかせ状の複合繊維の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelca−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器 : 分光光度計 HITACHI
C-2000S Color Analyzer
K/S=(1−R)/2R
[洗濯堅牢度]
上記染色後のかせ状の複合繊維を用いて、JIS L0844の測定方法に準拠して測定した。
[耐光堅牢度]
上記染色後のかせ状の複合繊維を用いて、JIS L0842の測定方法に準拠して測定した。
[紡糸性・断面形状]
以下の基準に従って、紡糸性評価を行った。
A : 8時間の連続紡糸を行い、運転開始時及び終了時の断面形状観察において各成分が良好な扁平形状を有し、また紡糸時の断糸が何ら発生せず、紡糸性が極めて良好である。
B : 8時間の連続紡糸を行い、運転開始時及び終了時の断面形状観察において各成分の扁平形状が維持され、また紡糸時の断糸が2回以下の頻度で発生し、紡糸性がほぼ良好である。
C : 8時間の連続紡糸を行い、運転開始時及び終了時の断面形状観察において各成分の扁平形状が崩れているものの消失はしていない、また紡糸時の断糸が2回を超え8回以下の頻度で発生し、紡糸性が不良である。
D : 8時間の連続紡糸を行い、運転開始時及び終了時の断面形状観察において各成分の形状が保たれていない(消失している)、また紡糸時の断糸が8回を超えて発生し、紡糸性が極めて不良である。
[繊度の測定方法]
30mmにカットした単糸30本のサンプルを5set準備し、各サンプル(5set)の重量をそれぞれ計2回測定し、その平均値を測定値とした。
繊度(dtex)={重量(g)/(本数30本×繊維長30mm)}×10000m
[繊維断面観察(扁平度)]
厚さ1mm以下、直径1mm以下の孔の開いた銅板の孔部に複合繊維を通し、両端部をカミソリで切断、マイクロスコープを使い450〜2000倍の倍率で拡大し、複合繊維ならびに複合繊維を構成する熱可塑性樹脂(A)および共重合体ポリエステル(B)の断面形状の観察を行い、熱可塑性樹脂(A)の扁平度(L/D)、および共重合体ポリエステル(B)の扁平度(L/D)をそれぞれ測定、評価した。
マイクロスコープ : KEYENCE VH-7000
[風合い評価]
上記条件で染色したかせ状の複合繊維を10人のパネラーにより手で触れた上で、以下の評価基準で官能評価した。
A : しっとり感・ソフト感に非常に優れている。
B : しっとり感・ソフト感に優れている。
C : しっとり感・ソフト感がやや不足している。
D : しっとり感・ソフト感がない。
[実施例1]
(1)重合溶媒としてメタノールを用い、60℃下でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合させ、エチレンの共重合割合が44モル%のランダム共重合体を作成した。次いで苛性ソーダによりケン化処理を行い、ケン化度99%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とした。次いで湿潤状態のポリマーを酢酸が少量添加されている大過剰の純水で洗浄を繰り返した後、さらに大過剰の純水による洗浄を繰り返し、ポリマー中のK、Na、Mg、Caイオンの含有量をそれぞれ約10ppm以下にした。次いで脱水機によりポリマーから水を分離した後、更に100℃以下で真空乾燥を十分に実施し、熱可塑性樹脂(A)としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。
(2)一方、ジカルボン酸成分のうち88.3モル%がテレフタル酸成分であり、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.7モル%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を5.0モル%、アジピン酸成分を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び縮重合反応を行い、共重合体ポリエステル(B)を得た。
(3)共重合体ポリエステル(B)及び熱可塑性樹脂(A)として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とを別々の押出機を使って溶融し、孔数=654(孔径0.40)の接合型の紡糸ノズルを使い、単孔吐出量=0.80g/分、ノズル温度=300℃、冷却風温度=25℃(風速=0.5m/分)、捲取速度=800m/分の条件で紡糸後、湿熱延伸設備(延伸倍率=200%)を使い繊維化を行い、熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)との質量比が60:40であって、繊維断面形状が図1である、分割型複合繊維を得た。なお分割型複合繊維の紡糸性や得られた複合繊維を構成する熱可塑性樹脂(A)や共重合体ポリエステル(B)の扁平度(L/D、L/D)は良好であり、複合繊維の風合いも良好であった。
(4)さらに分割型複合繊維を前述の染色条件において染色された複合繊維に関して上記評価を行ったところ、表1に示すようにいずれの染色特性についても良好な結果が得られた。
[実施例2〜6]
共重合体ポリエステル(B)の組成を表1記載の配合比とした以外は、実施例1と同様にして、分割型複合繊維および該複合繊維を染色した繊維を得た。結果は実施例3および実施例4の複合繊維の紡糸性が実施例2、5、6の複合繊維の紡糸性より若干劣っていたものの、実施例2〜6の複合繊維のいずれも風合い、構成する成分の扁平度、染色された複合繊維の染色特性について優れた結果などの評価において優れた特性を示していた。
[実施例7〜8]
エチレンビニルアルコール系共重合体と共重合体ポリエステル(B)の複合比率を変更した以外は実施例1と同様にして、複合繊維を得た。複合繊維は得られたものの、複合繊維の紡糸性が実施例1、2、5および6の複合繊維と比較するとやや低下する傾向にあった。また、複合繊維断面におけるエチレンビニルアルコール系共重合体や共重合体ポリエステル(B)の断面形状が実施例1〜6の複合繊維における断面形状と比較すると若干扁平性を欠く結果となり、複合繊維の風合いも実施例1〜6の複合繊維と比較すると若干低下した。さらにエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の複合比率を増加させた条件(実施例8の複合繊維)では、染色品の洗濯堅牢度が若干悪化した。
[比較例1]
実施例1において、共重合体ポリエステルの代わりに、ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用した分割型複合繊維では、紡糸性は良好であったが染色性が劣った結果となり、また風合いも低い評価となった。
[比較例2]
共重合体ポリエステル中のテレフタル酸含有量を85モル%に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸量を5モル%に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を作成したところ、複合繊維の断面形状及び紡糸性が大きく劣る結果となった。
[比較例3]
共重合体ポリエステル中のテレフタル酸含有量を78.3モル%に、シクロヘキサンジカルボン酸含有量を15モル%に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を作成したところ、複合繊維の断面形状及び紡糸性が大きく劣る結果となった。
[比較例4]
共重合体ポリエステル中のテレフタル酸含有量を74.3モル%に、シクロヘキサンジカルボン酸含有量を12モル%に、アジピン酸含有量を12モル%に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を作成しようとしたが、紡糸性が大きく損なわれ、複合繊維を得ることができなかった。
[比較例5]
共重合体ポリエステル中のテレフタル酸含有量を81.3モル%に、アジピン酸含有量を12モル%に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を作成したところ、複合繊維の断面形状及び紡糸性が大きく劣る結果となった。
Figure 2014040683
本発明によれば、常温においても染色可能な着色性に優れ、且つ風合いが良好な分割型複合ステープル繊維を得ることができ、さらに該繊維を割繊化することにより扁平な単糸を得ることができる、そして該繊維を含む織物、編物、不織布等にした場合には表面積の大きな極細繊維構造体を得ることができ、優れた効果を得ることができる。
1 分割型複合繊維
2 熱可塑性樹脂(A)
3 共重合体ポリエステル(B)
4 熱可塑性樹脂(A)からなる単繊維
5 共重合体ポリエステル(B)からなる単繊維
L 複合繊維の長径
D 複合繊維の短径
A 熱可塑性樹脂(A)からなる単繊維の長径
A 熱可塑性樹脂(A)からなる単繊維の短径
B共重合体ポリエステル(B)からなる単繊維の長径
B共重合体ポリエステル(B)からなる単繊維の短径

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂(A)と共重合体ポリエステル(B)が繊維断面において交互に配置された分割型複合繊維であって、共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)であり、且つ該分割型複合繊維の表面に熱可塑性樹脂(A)および共重合体ポリエステル(B)が交互に露出している分割型複合繊維。
    Figure 2014040683
    [上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は、2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは金属イオン、4級ホスホニウムイオン塩又は、4級アンモニウムイオンを表す。]
  2. 該熱可塑性樹脂(A)が、エチレン含有量が25モル%〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体である請求項1記載の分割型複合繊維。
  3. 該熱可塑性樹脂(A)と該共重合体ポリエステル(B)との質量比が、90/10〜10/90の範囲である請求項1または2記載の分割型複合繊維。
  4. 複合繊維断面における長径(L)と短径(D)との比(L/D)が1.1以上で、該熱可塑性樹脂(A)と該共重合体ポリエステル(B)とが短径方向に沿って多層に接合されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の分割型複合繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の分割型複合繊維を分割して得られる単繊維であって、繊度が0.05〜1.7デシテックスである単繊維。
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