JP6062183B2 - カチオン可染性を有するポリエステル繊維およびポリウレタン繊維からなる生地 - Google Patents

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Description

本発明は、伸縮性に優れ、かつ特に低温かつ常圧下におけるカチオン染料への染色性や染色堅牢度特性に優れた生地や、該生地を染色した布地に関する。
ポリエステル繊維とポリウレタン繊維とからなる生地は、伸縮性を有し、かつ力学特性や取り扱い性にも優れており、スポーツ衣料、メディカル製品、インナー用途に使用されている。しかしながら、ポリウレタン繊維は分散染料に対する染色堅牢度が悪く、染料移行の問題を有している。例えば、ポリエステル繊維は通常分散染料で染色するが、その際、ポリウレタン繊維も同一生地に混在している場合、ポリウレタン繊維も分散染料で染色される。その生地をプリント加工やエンボス加工等の熱処理を行う際に、分散染料が移行昇華して作業環境中に飛散し好ましくないという問題を有している。
前記の問題点を解決するために、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸をジカルボン酸の第2成分とし、エチレングリコール、テレフタル酸と共に共重合したカチオン染料に易染性を有するポリエステル繊維が開示され(特許文献1)、前記カチオン染料易染性ポリエステル繊維とポリウレタン繊維とを生地に共存させることが提案されているが、常圧環境下での染色性や染色時の生産性が不十分であった。
また、従来、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミドのフィラメントからなる織物、編物、不織布等の繊維構造物は、その構成フィラメントの単繊維繊度や断面形状が単調であるため、綿、麻等の天然繊維に比較して風合いや光沢が単調で冷たく、繊維構造物としても品位は低いものであった。また、ポリエステル系繊維は疎水性であるため、繊維自体の吸水性、吸湿性に劣るという欠点がある。これらの欠点を改良するために、従来、種々の検討がなされている。その中で例えば、ポリエステル等の疎水性ポリマーと水酸基を有するポリマーとを複合紡糸する事により、疎水性繊維に親水性等の性能を付与させる試みがなされている。具体的には、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなどの疎水性熱可塑性樹脂との複合繊維が開示されている(特許文献2)。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の耐熱水性は100℃程度と低く、通常のポリエステルの染色温度である120〜130℃には耐えられないため、特許文献2においては、ポリエステル成分と、エチレン−ビニルアルコール系共重合体成分とからなる複合繊維を使用した生地を着色する場合は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の水酸基と水酸基をつなぐ架橋処理をして耐熱水性を向上させて、ポリエステル成分を染色する方法が開示されているが、特にカチオン染料での十分な染色を行うことが難しいという問題がある。
特開2000−355831号公報 特開平3−174015号公報
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、常圧環境下でカチオン染料に対して濃色性を示し、堅牢度特性が良好であって伸縮性に優れ、更には熱伝導性や吸湿性を付加した生地や、該生地がカチオン染料によって染色され審美性に優れた布地、加えて染色かつ熱処理加工がなされた加工布を提供するものである。
すなわち本発明の第1の形態は、共重合体ポリエステル(B)からなる繊維とポリウレタン繊維とから構成される生地であって、該共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)である生地である。
Figure 0006062183
[上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは、金属イオン、4級ホスホニウムイオン塩又は4級アンモニウムイオン塩を表す。]
また本発明の第2の形態は、複合繊維とポリウレタン繊維とからなる生地であって、該複合繊維が共重合体ポリエステル(B)とエチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とからなり、共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)であり、かつ該複合繊維の表面の少なくとも一部にエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が露出している生地である。
さらに本発明の第3の形態は、第1の形態の生地を70〜105℃の処理温度にてカチオン染料で染色してなる布地であり、本発明の第4の形態は、第2の形態の生地を70〜105℃の処理温度にてカチオン染料で染色してなる布地である。
加えて本発明の第5の形態は、第4の形態の布地を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)を更に架橋処理してなる布地である。
また、本発明の第6の形態は、第1〜第2の形態の生地または第3〜第5の形態の布地にプリント加工またはエンボス加工を施した加工布も包含する。
本発明によれば、低温、常圧条件においてカチオン可染性を有し、伸縮性があってかつカチオン染料への染色性が良好で堅牢度特性が良好な生地が得ることができる。さらにカチオン染料で染色された布地に対して作業環境を損なうことなく、プリント加工やエンボス加工を施すことが可能であって、ファッション性、制御された伸縮性等の機能性を有する加工布が得られる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、以下に記載する共重合体ポリエステル(B)からなる繊維とポリウレタン繊維とからなることを特徴とする生地に関する。
また本発明は、以下に記載する複合繊維とポリウレタン繊維とからなることを特徴とする生地に関する。
本発明の生地を構成する共重合ポリエステル(B)は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、ジカルボン酸成分のうち、その繰り返し単位の75モル%以上がテレフタル酸成分であり、テレフタル酸成分の他に少なくとも3種以上の共重合成分からなる。共重合体ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分のうちテレフタル酸成分の他に下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)及び脂肪族ジカルボン酸成分(c)の3種が共重合されていることが重要である。原因は明確ではないが、これら3種のジカルボン酸成分の存在によって常圧下での優れた染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度を確保することが可能となる。
Figure 0006062183
[上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは、金属イオン、4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]
共重合体ポリエステル(B)は、カチオン染料可染性を得るために、ジカルボン酸成分のうち、共重合成分として上記化学式(I)で表される化合物由来の成分(a)を1.0モル%〜3.5モル%含有する。
上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸アルカリ金属塩基を有するジカルボン酸成分;5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−エチルトリブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの5−テトラアルキルホスホニウムスルホイソフタル酸成分などを挙げることができる。上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)は1種類のみをポリエステル中に共重合させても、また2種以上を共重合させてもよい。上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)を共重合させることにより、ポリエステル内部構造に非晶部分を保有させることができる。その結果、分散染料及びカチオン染料に対して常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
ジカルボン酸成分のうち上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量が1.0モル%未満の場合、カチオン染料で染色したときに鮮明で良好な色調になるカチオン染料可染性ポリエステルを得ることができない。一方、上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量が3.5モル%を超えると、ポリエステルの増粘が著しくなって紡糸が困難になる。しかもカチオン染料の染着座席の増加により繊維に対するカチオン染料の染着量が過剰になって、色調の鮮明性がむしろ失われる。染色物の鮮明性及び紡糸性等の点から、上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量は1.2〜3.0モル%であるのが好ましく、1.5〜2.5モル%であるのがより好ましい。
また、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)をポリエチレンテレフタレートに共重合した場合、結晶構造の乱れが小さい特徴を有しているため、高い染着率を確保しながら、耐光堅牢性にも優れた繊維を得ることができる。
ここで、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)は、シクロヘキサンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を共重合させることによってポリエステルに導入することができる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)を共重合することによって、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向は低下する。そのため、カチオン染料及び分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、カチオン染料及び分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。更に、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)は他の脂肪族ジカルボン酸成分に比べ結晶構造の乱れが小さいことから、耐光堅牢性にも優れたものとなる。
共重合体ポリエステル(B)において、ジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が2.0〜10.0モル%であり、好ましくは5.0〜10.0モル%である。ジカルボン酸成分のうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が2.0モル%未満の場合、ポリエステル内の非晶部位の配向度が高くなるため、常圧環境下での染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分のうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が10.0モル%を超えた場合、染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度など、染色性に関しては良好な品質を確保できる。しかし、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合、樹脂のガラス転移温度が低いことと繊維内部における非晶部位の配向度が低いことによって、高速捲取中に自発伸長の発生により安定な高速曳糸性を得ることができず、安定な繊維物性が得られない。
シクロヘキサンジカルボン酸には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の3種類の位置異性体がある。本発明の効果が得られる点からはどの位置異性体が共重合されていても構わないし、また複数の位置異性体が共重合されていても構わない。また、それぞれの位置異性体にはシス/トランスの異性体があるが、いずれの立体異性体が共重合されていても構わないし、シス/トランス双方の異性体が共重合されていても構わない。シクロヘキサンジカルボン酸誘導体についても同様である。
脂肪族ジカルボン酸成分(c)についてもシクロヘキンジカルボン酸成分(b)と同様に、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向が低下するため、カチオン染料及び分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、常圧可染性を向上させることが可能となる。ここで、脂肪族ジカルボン酸成分(c)は、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を共重合させることによってポリエステルに導入することができる。
具体的には、脂肪族ジカルボン酸成分(c)をポリエチレンテレフタレートに2.0〜8.0モル%共重合すると、低温セット性にも効果がある。そのため本発明により得られる繊維を織編物にしてから形態安定化のために熱セットする場合、熱セット温度を低くすることが可能となる。ニット用途において低温セット性は好ましい物性であり、生地中のポリウレタン繊維の物性が低下しない程度に熱セット温度を抑えることが可能となる。
共重合体ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分のうち脂肪族ジカルボン酸成分(c)の共重合量が2.0〜8.0モル%であり、好ましくは2.5〜7.0モル%であり、より好ましくは3.0〜6.0モル%である。ジカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(c)の共重合量が2.0モル%未満では、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(c)特にアジピン酸成分の共重合量が8.0モル%を超えた場合、染着率は高くなるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合にはポリエステル内部における非晶部位の配向度が低くなる。そのため高速捲取中での顕著な自発伸長により安定な高速紡糸性を得ることができずポリエステル繊維の物性が不安定となる。
脂肪族ジカルボン酸成分(c)として好ましく用いられるものとしては、アジピン酸成分、セバシン酸成分、デカンジカルボン酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分が例示できる。これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
ポリエステル繊維の常圧可染性や品位を落とすことのない範囲であれば、共重合体ポリエステル(B)として、テレフタル酸成分、シクロヘキサンジカルボン酸成分、及び脂肪族ジカルボン酸成分以外の他のジカルボン酸成分を共重合しても良い。
具体的には、イソフタル酸成分やナフタレンジカルボン酸成分等の芳香族ジカルボン酸成分を単独であるいは複数種、合計10.0モル%以下の範囲で共重合してもよい。
しかし、これらの成分を共重合することでエステル交換反応、重縮合反応が煩雑になるばかりでなく、共重合量が適正範囲を超えると洗濯堅牢性を低下させることがある。具体的には、イソフタル酸成分をジカルボン酸成分に対して10モル%を越えて共重合すると、本発明の構成要件を満足させたとしても、洗濯堅牢特性を低下させる恐れがあり、5モル%以下での使用が望ましく、0モル%であること(共重合しないこと)がより望ましい。
更に、共重合体ポリエステルからなる繊維には、それぞれ、酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛などの艶消剤、リン酸、亜リン酸などの熱安定剤、あるいは光安定剤、酸化防止剤、酸化ケイ素などの表面処理剤などが添加剤として含まれていてもよい。酸化ケイ素を用いることで、得られる繊維は、減量加工後に繊維表面に微細な凹凸を付与することができ、後に織編物にした場合に濃色化が実現される。更に、熱安定剤を用いることで加熱溶融時やその後の熱処理における熱分解を抑制できる。また、光安定剤を用いることで繊維の使用時の耐光性を高めることができ、表面処理剤を用いることで染色性を高めることも可能である。
これら添加剤は、共重合体ポリエステルを重合によって得る際に、重合系内にあらかじめ加えておいても良い。ただし、一般に酸化防止剤などは重合末期に添加するほうが好ましく、特に重合系に悪影響を与える場合や、重合条件下で添加剤が失活する場合はそうすることが好ましい。一方、艶消剤、熱安定剤などは重合時に添加するほうが均一に樹脂重合物内に分散しやすいため好ましい。
ポリエステル繊維の太さは特に限定されず、任意の太さにすることができるが、発色性、光沢感、風合いに優れた繊維を得るためにはポリエステル繊維の単繊維繊度を0.3〜11dtex程度にしておくのが好ましい。
さらにポリエステル繊維のフィラメント数については6〜150フィラメントであることが、総繊度については、30〜350dtexが、ポリエステル繊維の紡糸性や強度特性を考慮すると好ましい。
またポリエステル繊維が長繊維である場合は、生糸(十分に延伸された糸であって捲縮処理されていない糸)であってもよいが、捲縮やふくらみを付与した仮撚加工糸やエア加工糸であってもよい。
本発明の生地を構成する複合繊維については、エチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、上述した共重合体ポリエステル(B)とからなることを特徴とする。すなわち、共重合体ポリエステル(B)と、エチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とからなる複合繊維であって、共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)であり、かつ該複合繊維の表面の少なくとも一部にエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が露出していることを特徴とする複合繊維である。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化することにより得られるが、鹸化度は95%以上の高鹸化度のものが好ましい。エチレン含有量が25〜60モル%であること、すなわち、ビニルアルコール成分(未鹸化酢酸ビニル成分を含む)が約40〜75モル%であることが重要である。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中のビニルアルコールの割合が低くなれば、水酸基の減少のために親水性などの特性が低下し、目的とする良好な親水性を有する天然繊維に似た風合いが得られないおそれがある。逆にビニルアルコール成分の割合が多くなりすぎると、溶融成形性が低下すると共に共重合体ポリエステル(B)と複合紡糸する際に、曳糸性が不良となり、紡糸時又は延伸時の単糸切れ、断糸が多くなるおそれがある。したがって、高鹸化度でエチレン含有量が25〜60%のものが複合繊維の生産性や品位を確保し、さらには生地とした場合の吸水性や風合いを確保する上で重要である。
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、耐湿熱特性が低く例えばポリエチレンテレフタレート樹脂とエチレン−ビニルアルコール系共重合体とからなる複合繊維を染色する場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂の染色温度にあわせて130℃前後で染色処理をするため、アセタール化等の架橋処理によって水酸基を封鎖して耐熱性を付与しておくことが好ましいのであるが、本発明においては後述するように、複合繊維を構成する共重合体ポリエステル(B)が100℃以下でのカチオン染料による染色が可能なため、架橋処理を行わないエチレン−ビニルアルコール系共重合体であっても、複合繊維の染色性を十分発揮し、染色が工業的により安定して行うことが可能となるため好ましい。従って、本発明の生地に用いられる複合繊維を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体は架橋処理されていないことが好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体と複合される共重合体ポリエステル(B)として高融点ポリマーを用いる場合、長時間安定に連続して紡糸するには、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶融成形時の耐熱性を向上させる事が好ましい。そのための手段としてエチレンの共重合割合を適切な範囲に設定することと、さらにエチレン−ビニルアルコール系共重合体中の金属イオン含有量を所定量以下にすることも効果がある。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の熱分解機構としては大きく分けてポリマー主鎖間での橋かけ反応が起こり、ゲル化物が発生していく場合と、主鎖切断、側鎖脱離などの分解が進んでいく機構が混在化して発生すると考えられている。エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の金属イオンを除去することにより、溶融紡糸時の熱安定性が飛躍的に向上する。特にNa、Kイオンなどの第I族のアルカリ金属イオンと、Ca2+、Mg2+イオンなどの第II族のアルカリ土類金属イオンをそれぞれ100ppm以下とすることにより顕著な効果がある。特に、長時間連続して高温条件で溶融紡糸をする際、エチレン−ビニルアルコール系共重合体中にゲル化物が発生してくると紡糸フィルター上にゲル化物が徐々に詰まって堆積する。その結果紡糸パック圧力が急上昇してノズル寿命が短くなるとともに紡糸時の単糸切れ、断糸が頻発する。ゲル化物の堆積がさらに進行するとポリマー配管が詰まりトラブル発生の原因となり好ましくない。エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の第I族アルカリ金属イオン、第II族アルカリ土類金属イオンを除去することにより高温での溶融紡糸、特に、250℃以上での溶融紡糸時に長時間連続運転してもゲル化物発生によるトラブルが起こりにくい。これら金属イオンの含有量は、それぞれ50ppm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10ppm以下である。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法として、一例を説明すると、メタノールなどの重合溶媒中でエチレンと酢酸ビニルとをラジカル重合触媒下でラジカル重合させる。次いで未反応モノマーを追い出し、苛性ソーダにより鹸化反応を起こさせ、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とした後、水中でペレット化した後、水洗して乾燥する。従って工程上どうしてもアルカリ金属やアルカリ土類金属がポリマー中に含有されやすく、通常は数百ppm以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属が混入している。
アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン含有量をできるだけ低下させる方法としては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体製造工程中、鹸化処理後ペレット化した後、湿潤状態のペレットを酢酸を含む純水溶液で大量にペレットを洗浄した後、さらに大過剰の純水のみで大量にペレットを洗浄する。またエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体を苛性ソーダにより鹸化して製造されるが、前述したようにこの時の鹸化度を95%以上にすることが好ましい。鹸化度が低くなると、ポリマーの結晶性が低下し、強度等の繊維物性が低下してくるのみならず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が軟化しやすくなり加工工程でトラブルが発生してくるとともに得られた繊維構造物の風合いも悪くなり好ましくない。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と共重合体ポリエステル(B)の複合比率は、複合形態や繊維断面形状により適宜設定可能であるが90:10〜10:90(質量比率)であることが好ましく、70:30〜30:70がより好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の複合比率が10質量%未満の場合は水酸基の減少のため繊維のひとつの特徴である親水性等の特性が失われる。一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の複合比率が90質量%を越える複合繊維は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の特徴が発揮され、親水性、光沢感は十分に満足されるが、繊維物性や染色物の発色性が劣り好ましくない。
また複合繊維の断面形状はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が繊維表面全体を覆っていなくてもよいが、鮮やかな発色性を有するには、繊維表面の80%以上が屈折率の低いエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。100%であること、すなわち、複合繊維の表面全体をエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が完全に覆っていて、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が鞘側、共重合体ポリエステル(B)が芯側である、芯鞘型の断面形状を形成していることが最も好ましい。
特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と共重合体ポリエステル(B)とが同心円状の断面形状であることが鮮やかな発色性、繊維強度等の点で好ましい。
上記した複合繊維においては、繊維の太さは特に限定されず、任意の太さにすることができるが、発色性、光沢感、風合いに優れた繊維を得るためには複合繊維の単繊維繊度を0.3〜11dtex程度にしておくのが好ましい。
さらに複合繊維の総繊度については、30〜350dtexが、フィラメント数については6〜150フィラメントであることが、複合繊維の紡糸性や強度特性を考慮すると好ましい。
また複合繊維が長繊維である場合は、生糸(十分に延伸された糸であって捲縮処理されていない糸)であってもよいが、捲縮やふくらみを付与した仮撚加工糸やエア加工糸であってもよい。
本発明の生地を構成するポリウレタン繊維は汎用のポリウレタン繊維を用いることができ、エーテル系ポリウレタンからなるポリウレタン繊維であっても、エステル系ポリウレタンからなるポリウレタン繊維であってもよい。例えば、ロイカ(登録商標)、ライクラ(登録商標)、モビロン(登録商標)等の商品名で販売されているポリウレタン繊維を用いてもよい。
本発明に用いるポリウレタン繊維は、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれでも用いることができる。また単繊維の断面形状は丸断面であってもよく、あるいは三角断面、扁平断面、星断面等の異形断面であってもよい。
なお、ポリウレタン繊維について生地にする際にはベアの状態であってもよいが、仮撚加工糸、捲縮加工糸、甘撚り、強撚り等の撚糸、カバーリング糸、エア加工糸などの方法で他の繊維との複合糸とした上で、生地化させてもよい。
複合糸とした場合の、ポリウレタン繊維とそれ以外の繊維との比率は複合糸の弾性特性を考慮すると、ポリウレタン繊維が30%以上含まれていることが好ましく、50%以上含まれていることがより好ましい。
ポリウレタン繊維またはポリウレタン繊維を含む複合糸の繊度については、特に制約はないが、伸縮性と強度特性さらには生地製造時の生産性も考慮すると、10〜330dtexであることが好ましい。
本発明の生地は、本発明の効果を阻害しない限り、上述したポリエステル繊維、複合繊維、ポリウレタン繊維以外の繊維(以下、第3の繊維と称する場合がある。)が1種類あるいは複数種類配合されていてもよい。例えば、第3の繊維として、ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨンなどの化学繊維、コットン、リネン、シルク、ウールなどの天然繊維が配合されていてもよい。なお審美性の点からは、ポリウレタン繊維に第3の繊維がカバーリングされた状態や、逆に第3の繊維にポリウレタン繊維がカバーリングされた状態とした上で生地化することが好ましく、ポリエステル繊維または複合繊維とポリウレタン繊維との2種類の繊維で生地化することが更に好ましい。
生地における共重合体ポリエステル(B)からなる繊維の割合は、特に限定はないが、生地が風合、審美性、適度な伸縮性、強度等を兼ね備えるためには、生地全体の重量に対して30〜98重量%であることが好ましい。
また、生地におけるポリウレタン繊維の割合は、生地の伸縮性や形状保持性、生地を染色して得られる布地の審美性、さらには熱処理加工時の加工安定性を考慮すると、生地全体の重量に対して2〜20重量%であることが好ましい。2重量%未満の場合は、伸び特性がやや少ない布地となる。一方、20重量%を越えると、生地をカチオン染料で染色して得られる布地の濃色性が劣ったり、布地で染色されていない部分が目立ったりすることになり、好ましくない。
生地の種類については特に制約はない。織物であっても、編物であってもよい。編物もトリコットやラッセルなどの経編でも、横編や丸編などの緯編でもよい。
本発明の布地は本発明の生地をカチオン染料で染色してなることが特徴であり、得られた生地は染色堅牢度に優れる特徴を有する。さらに生地を構成するポリエステル繊維または複合繊維を構成する共重合体ポリエステル(B)が上記組成を有するために、従来よりも低温での染色が可能となる。カチオン染料による生地の染色温度は100℃以上であってもよいが、複合繊維の1成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体が軟化や膠着が生じずに、かつ染色された生地が必要な濃色性を有し、さらに染色効率が良好であるためには、染色温度が70〜105℃であることが好ましく、80〜100℃であることがより好ましい。
本発明の生地や布地が複合繊維を含有する場合は、複合繊維を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体が軟化を開始する140〜150℃程度までは熱的な安定性を有するが、例えばさらに耐熱性が必要な場合には、例えば、ジアルデヒドまたはジアルデヒド誘導体を用いるアセタール化処理によって、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の水酸基と水酸基をつなぐ架橋処理を実施することによって、耐熱性を向上させてもよい。
アセタール化処理に用いる架橋剤としては、グルタルアルデヒド、グリオキザール、1,9−ノナンジアール、1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン、1,1,9,9−ビスプロピレンジオキシノナン、1,1,9,9−テトラエトキシノナン等の試薬が好ましく、架橋後の風合いが良好等の理由で、1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナンがより好ましく用いられる。架橋処理は酸性雰囲気下で行われ、酸性度の調整は酢酸、ギ酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸等の有機酸や塩酸、硫酸等の無機酸により行われるが、設備の耐腐食性を加味して有機酸が好ましく、中でもマレイン酸がより好ましい。
架橋処理方法としては、例えば浴中処理法、パディング法、コーティング法、スプレー法、気流処理法などの方法から選択してもよい。
上記条件により架橋処理されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体は160〜180℃程度の耐熱性を有し、処理された生地や布地も同等の耐熱性を有することとなるため、架橋処理された生地や布地は、より高温下での生地の加熱処理が可能となり、例えば、150〜160℃のキュア温度が必要な撥水加工、柔軟加工等の樹脂加工が可能となる。
なお、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を架橋化させる場合、すなわち生地や布地に架橋処理を行う場合には、架橋化させる前にカチオン染料で生地を染色することが、特に生地を構成する複合繊維の染色性を高める上で好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体を架橋化させた後に、カチオン染料で生地を染色させようとすると複合繊維の染色性が劣る問題が発生する。
そして、架橋処理された生地に、150〜160℃のキュアリングを行った後、さらに120〜160℃にてプリント加工やエンボス加工を行って加工布を得てもよいが、その際に生地が分散染料で染色されているならば、ポリウレタン繊維が分散染料を吸着しており、熱処理の際、分散染料が作業環境に拡散され好ましくない。つまり、この工程に関して、生地が分散染料以外、例えば、カチオン染料、酸性染料、反応染料等で染色されている必要がある。そして、鞘成分にエチレン−ビニルアルコール系共重合体を配した繊維が必要な生地の場合、芯成分に70〜105℃にてカチオン染料で可染するポリエステル共重合体を用いる必要がある理由でもある。
プリント加工については、従来既知の方法を採用することができるが、染料を使用する方法と染料以外を使用する方法で手法が異なる。本件の場合、染料を使用する場合の染料は分散染料、カチオン染料に限られ、柄の描かれた紗を用いて捺染したり、細いノズルから柄にそって生地に直接噴霧したりして生地に柄を描く。その後、染料を生地に固着するために加熱するがこのとき、共重合体ポリエステル(B)から構成される生地の場合は、カチオン染料を使用した場合、80℃以上で固着できるが、分散染料の場合は110℃〜130℃の染色温度が必要となる。エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる複合繊維から構成される生地の場合は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の硬化を防ぐため、カチオン染料しか用いることができず、かつ染色温度も70℃〜105℃、好ましくは80℃〜100℃としなくてはならない。
さらに、紗を用いた捺染等の場合、染料に糊剤を含んだものを使用するため、染料を固着した後、糊抜きのため、洗いと乾燥の工程が必要であり、その際もエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる複合繊維から構成される生地または布地の場合は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の硬化を防ぐため、洗浄温度を80〜100℃程度で、乾燥温度を140℃以下でとして処理を行うことが好ましい。
染料以外の薬剤では、顔料を用いる方法があり、顔料には必ず接着剤にあたる樹脂が必要となる。接着剤はウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂から用途によって選択され使用される。また、これらの樹脂は顔料を併用されず単独で使用される場合もある。さらには、粘度をさげるため有機溶剤を使用する場合もある。これらの樹脂を柄の描かれた紗を用いて捺染したりして、生地に柄を描き、通常、熱処理を得て仕上げる。その熱処理温度は用いる樹脂によって異なるが、ウレタン系樹脂を顔料として用いた場合の熱処理温度は120℃〜140℃が適当である。
エンボス加工についても、従来既知の方法を採用することができる。通常、柄が彫られた金属ロールとフラットな金属ロールの間を加熱、加圧しながら生地または布地を通すが、加熱温度も加工布の染色性や染色堅牢度、素材の軟化点を考慮して決められる。加工布の使用用途にもよるが、審美性による柄付与が目的であれば、共重合体ポリエステル(B)からなる繊維とポリウレタン繊維とから構成される生地をカチオン染料で染色した布地の場合は、120℃〜150℃の加熱温度が適当であり、複合繊維とポリウレタン繊維とから構成される生地をカチオン染料で染色した布地の場合は、110℃〜140℃の加熱温度が適当である。
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。
実施例、比較例文中の染料の耐移行性はJIS L0850 ホットプレッシングに対する染色堅ろう度試験方法(A3号 乾燥)に準拠して測定した。
<染色方法>
試料に対して、以下の条件でカチオン染料又は分散染料で染色したのち、下記条件にて還元洗浄を行い、布地を得た。
(カチオン染料による染色)
染料:Cathilon Red CD-FGLH 3.0%omf
助剤:Na2SO4 10.0%、CH3COONa 0.5%、CH3COOH(50%)
浴比1:50
染色温度×時間:90℃または125℃×40分
(分散染料による染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/L、ULTRA MT−N2:1.0cc/L
浴比:1/50
染色温度×時間:125℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
<架橋処理方法>
架橋剤:
1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン:5.0g/L
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.5g/L
(マレイン酸等によりpH調整)
浴比:1/50
架橋処理温度×時間:115℃×40分
参考例1
ジカルボン酸成分のうち88.3モル%がテレフタル酸であり、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.7モル%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を5.0モル%、アジピン酸を5.0モル%、それぞれ含んだ全カルボン酸成分と、エチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、表1に示される組成のポリエステル樹脂重合物を得た。この原料を基に、孔数24個(孔径0.20mmφ)の口金を用いて紡糸温度260℃、単孔吐出量=1.57g/分で紡出した。次いで、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.5m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした。次いで、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド径8mm、出口ガイド径10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した。次いで、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して4500m/分の速度で捲取り、84デシテックス24フィラメントのポリエステル繊維を得た。
参考例2
(1)重合溶媒としてメタノールを用い、60℃下でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合させ、エチレン含有量が44モル%のランダム共重合体を作成した。次いで苛性ソーダによりケン化処理を行い、ケン化度99%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とした。次いで湿潤状態のポリマーを酢酸が少量添加されている大過剰の純水で洗浄を繰り返した後、さらに大過剰の純水による洗浄を繰り返し、ポリマー中のK、Na、Mg、Caイオンの含有量をそれぞれ約10ppm以下にした。次いで脱水機によりポリマーから水を分離した後、更に100℃以下で真空乾燥を十分に実施してエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)を得た。
(2)一方、ジカルボン酸成分のうち88.3モル%がテレフタル酸成分であり、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.7モル%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を5.0モル%、アジピン酸成分を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び縮重合反応を行い、共重合ポリエステル(B)を得た。
(3)鞘成分にエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)、芯成分に共重合ポリエステル(B)になるように、複合比率(質量比率)50:50の条件で孔数24個のノズルを用いて紡糸温度240℃で紡出し、84デシテックス24フィラメントの複合繊維を得た。
参考例1で得られたポリエステル繊維84デシテックス24フィラメントとウレタン繊維33デシテックス(旭化成せんい株式会社製「ロイカ」)を28ゲージトリコットにて編立した。このとき得られた生地の組成は、参考例1で得られたポリエステル繊維91重量%、ウレタン繊維9重量%であった。この生地をカチオン染料にて黒色に90℃の温度で染色し、140℃の温度で乾燥、セットをした。得られた布地は良好な染色性を示し、染料の耐移行性は5級であった。
参考例2で得られた複合繊維84デシテックス24フィラメントとウレタン繊維33デシテックス(旭化成せんい株式会社製「ロイカ」)を28ゲージトリコットにて編立した。このとき得られた生地の組成は、参考例2で得られた複合繊維91重量%、ウレタン繊維9重量%であった。この生地をカチオン染料にて黒色に90℃の温度で染色し、140℃の温度で乾燥、セットをした。得られた布地は良好な染色性を示し、染料の耐移行性は5級であった。
比較例1
レギュラーポリエステル繊維84デシテックス24フィラメントとウレタン繊維33デシテックス(旭化成せんい株式会社製「ロイカ」)を28ゲージトリコットにて編立した。このとき得られた生地の組成は、レギュラーポリエステル繊維91重量%、ウレタン繊維9重量%であった。この生地にカチオン染料にて黒色に125℃の温度で染色し、140℃の温度で乾燥、セットをして布地を得たが、得られた布地に色は着色されなかった。
比較例2
比較例1で得られた生地を分散染料にて黒色に125℃の温度で染色し、140℃の温度で乾燥、セットをし、布地を得た。得られた布地に色は着色されたものの、布地の染料耐移行性は1−2級であった。
実施例2で得られた布地に架橋処理を実施した。架橋処理後の布地のセット温度を160℃で行ったが硬化はせず、染色性も良好なままであった。また布地の染料耐移行性は5級であった。
実施例3で得られた布地を用い、布地表面へ白色顔料とウレタン樹脂とメチルエチルケトンとの混合物を紗を通して捺染し、140℃で熱処理した。この熱処理でメチルエチルケトンは蒸発し、白色顔料とウレタン樹脂が布地に固着し加工布を得た。布地の染料がウレタン樹脂に移行することなく、得られた加工布の染色性は良好のままであった。また作業中に染料の飛散は確認されなかった。
比較例3
比較例2で得られた布地を用い、実施例4と同様にして布地表面へ捺染し、加工布を得た。布地からウレタン樹脂への染料移行が発生し、またプリント加工作業中に染料の飛散が確認された。
参考例2で得られた複合繊維84デシテックス24フィラメントとウレタン繊維33デシテックス(旭化成せんい株式会社製「ロイカ」)をエア加工糸であわせ、300回/mの撚糸を実施した。この複合糸を26ゲージ丸編地で編立し生地を得た。この生地の組成は、参考例2で得られた複合繊維89重量%、ウレタン繊維11重量%であった。この生地をカチオン染料にて黒色に90℃の温度で染色し、140℃の温度で乾燥、セットをし、布地を得た。得られた布地の染色性は良好であり、また布地の染料耐移行性は5級であった。
ウレタン繊維33デシテックス(旭化成せんい株式会社製「ロイカ」)とレギュラーポリエステル33デシテックスをエア加工糸であわせ、500回/mの撚糸を実施した。この複合糸と参考例2で得られた複合繊維84デシテックス24フィラメントウレタン繊維を用いて26ゲージ丸編地で編立し生地を得た。得られた生地の組成は、参考例2で得られた複合繊維70重量%、レギュラーポリエステル繊維19重量%、ウレタン繊維11重量%であった。この生地をカチオン染料にて黒色に90℃の温度で染色し、140℃の温度で乾燥、セットをし、布地を得た。得られた布地の染色性は良好であり、また布地の染料耐移行性は5級であった。
実施例6で得られた布地を、130℃に過熱した凸部が円形である柄を彫った金属ロールと、加熱していないフラットロールの間を、5N/cmの線圧で通しエンボス加工を行ない、加工布を得た。エンボス加工時において、染料に移行や染料の飛散は確認されず、得られた加工布の染色性も良好であった。
本発明の生地、布地、および加工布は、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有効に利用することができる。更に、資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有効に利用することができる。

Claims (7)

  1. 共重合体ポリエステル(B)からなる繊維とポリウレタン繊維とから構成される生地であって、該共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)であり、前記テレフタル酸成分、前記下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)、前記シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)、及び前記脂肪族ジカルボン酸成分(c)以外のジカルボン酸成分の共重合量が合計10.0モル%以下であり、イソフタル酸がジカルボン酸成分に対して10モル%以下を共重合してなり、前記ジカルボン酸成分の共重合量が合計100モル%である生地。
    Figure 0006062183
    [上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは、金属イオン、4級ホスホニウムイオン塩又は4級アンモニウムイオン塩を表す。]
  2. 複合繊維とポリウレタン繊維とからなる生地であって、該複合繊維が共重合体ポリエステル(B)とエチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とからなり、共重合体ポリエステル(B)がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分のうち、75モル%以上がテレフタル酸成分であり、1.0モル%〜3.5モル%が上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)であり、2.0モル%〜10.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)であり、2.0モル%〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分(c)であり、前記テレフタル酸成分、前記上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)、前記シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)、及び前記脂肪族ジカルボン酸成分(c)以外のジカルボン酸成分の共重合量が合計10.0モル%以下であり、イソフタル酸がジカルボン酸成分に対して10モル%以下を共重合してなり、前記ジカルボン酸成分の共重合量が合計100モル%であり、かつ該複合繊維の表面の少なくとも一部にエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が露出している生地。
  3. 請求項1記載の生地を70〜105℃の処理温度にてカチオン染料で染色する、布地の製造方法
  4. 請求項2記載の生地を70〜105℃の処理温度にてカチオン染料で染色する、布地の製造方法
  5. 請求項4記載の製造方法で製造された布地を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)を更に架橋処理する、布地の製造方法
  6. 請求項1もしくは2記載の生地または請求項3〜5いずれかに記載の製造方法で製造された布地にプリント加工を施す、加工布の製造方法
  7. 請求項1もしくは2記載の生地または請求項3〜5いずれかに記載の製造方法で製造された布地にエンボス加工を施す、加工布の製造方法
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