JP6176973B2 - パイル糸用海島繊維 - Google Patents
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この樹脂は水酸基の含有量によっては熱水に可溶なため、特許文献1では、水酸基の含有割合が高いエチレンビニルアルコール共重合体と他の熱可塑性樹脂とを複合して繊維化し、その後、エチレンビニルアルコール共重合体を熱水除去することにより、風合い等の触感が劣化することのない繊維が得られることが記載されている。
また特許文献2および特許文献3には、親水性のエチレンビニルアルコール共重合体と疎水性の他の熱可塑性樹脂を別々に溶融し、鞘部にエチレンビニルアルコール共重合体を配し、芯部に突起部を形成した他の熱可塑性樹脂を配した断面とする複合繊維とすることで、両成分の界面の剥離を防止できることが記載されている。
一方、エチレンビニルアルコール共重合体を用いたパイル用の糸としては、特許文献4に、エチレンビニルアルコール共重合体とポリエステルとを用いた複合繊維を用いることが記載されている。
特許文献2および特許文献3のようなエチレンビニルアルコール共重合体と他の合成樹脂との複合繊維では、熱処理した際に、それぞれの樹脂の収縮差による成分間での応力を分散させることができず、フィラメントに曲がりが生じるため、使用する目的によってはトラブルの原因となる。
また特許文献4記載のパイル糸は、エチレンビニルアルコール共重合体と比べて融点が高いポリエステル樹脂と組合せた繊維であり、紡糸性が不良となるため、生産性の点から問題がある。
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、紡糸性が良好で、フィラメント曲がりが生じない直毛性に優れたパイル用海島繊維を得ることを目的としたものである。
海成分の210℃におけるメルトフローレート(MFR)は、35〜60g/10minが好ましい。すなわち、MFRが小さ過ぎたり、大き過ぎる場合は、紡糸での糸卑性が不良となり、紡糸繊維の巻取りが困難となる傾向がある。また上記の範囲内であると、島部の欠落及び融合が生じにくく、パイル糸として用いた際、フィラメント曲がりのないものを得られ易い傾向がある。なかでも、37〜55g/10minが好ましく、より好ましくは40〜50g/10minである。
ここで、略等間隔とは、繊維にかかる応力が均等に分散されるような等間隔とすればよいが、例えば、島部が配置される円周上に配置される島部の個数だけ等分点を配し、島部中心と等分点の距離が島直径に対して±10%以内であることが好ましい。
準備した海成分と島成分を別々に溶融して、上記断面形状となるように、紡糸口金より吐出し、冷却した後、延伸して、本発明の海島繊維を得ることができる。
前者の混合紡糸法では、互いに均一に混ざり合わない2種類以上の樹脂を紡糸口金から紡出される前の段階で混合され、得られる繊維は長さ方向に2種以上の樹脂が途中で途切れながら互いに接合している。
後者の複合紡糸法において得られる繊維は2種以上の樹脂が繊維の長さ方向に途中で途切れることなく連続した状態で互いに接合している。
本発明においては、複合紡糸法が好ましく用いられる。これは、複合紡糸法では、海成分および島成分が長手方向に連続して得られるものであるため、熱処理後の収縮応力を均一に分散させてフィラメント曲がりを抑制しやすいからである。なお混合紡糸法では長さ方向で樹脂が途切れるために、熱処理後の収縮応力を均一に分散できず、フィラメント曲がりを抑制することは困難となる傾向がある。
示差走査熱量計(DSC)(リガク製 「DSC 8230」)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/minで280℃まで昇温し、吸熱ピークのピークトップを熱可塑性樹脂の融点とした。軟化点は窒素雰囲気下、圧子に0.50Nの力を加え、5℃/minで280℃まで昇温した時の進入前の直線と進入速度が最大時の接線との交点とした。
24時間ごとに糸の断面の確認を行い、島部の融合・欠落の発生状況を確認した。これらの欠点が発生していないものは「良好」とした。
紡糸機による24時間の連続生産を行った際に発生した断糸回数で紡糸性の評価を下記の基準により評価した。
○:24時間で断糸回数が2回未満の場合
×:24時間で断糸回数が2回以上の場合
JIS L1013に準じて測定した。
糸条を85℃の湯浴にて100分間湿熱処理を行った後、糸条を切断し、切断面を電子顕微鏡により500倍で観察し、下記の基準により評価した。
○:剥離箇所が10%未満の場合
×:剥離箇所が10%以上の場合
糸条を85℃の湯浴にて100分間湿熱処理を行った後、糸条の側面を電子顕微鏡により250倍で観察し、下記の測定方法でフィラメントの曲率が5%未満であるものを「直毛性あり」と評価した。すなわち、150μmの線分(A)の両端をフィラメントの側面にあて、その線分(A)から最も離れたフィラメントの側面上の点までの垂線(B)の長さを測定し、線分(A)に対する垂線(B)の長さの比率を求める。10箇所の測定を行い、それぞれの比率を求め、その平均値をフィラメントの曲率とした。
島成分にナイロン6(宇部興産株式会社製「1011FB」、融点227℃)、海成分にEvOH(MFR42g/10min、融点173℃)を用い、海:島の体積比率が5:5となるように供給し、図1のように海部の中心に1個、海部と同心の一重円の円周上に6個、二重円の円周上に12個、三重円の円周上に18個の島部が略均等に配置されるような紡糸用口金を使用し、245℃で口金から紡出し、1000m/minで未延伸糸を巻き取った。次いで、得られた未延伸糸を延伸速度800m/min、延伸倍率2.4倍で延伸し、70dtex/24fの海島繊維を得た。得られた海島繊維を85℃の湯浴で100分間湿熱処理を実施した。得られた海島繊維は、海部と島部の界面での剥離は全く認められず、フィラメントの曲率は2.2%であり、フィラメント曲がりのない直毛性に優れたものだった。
紡糸速度800m/min、延伸倍率2.9倍とする以外は実施例1と同様の方法で海島繊維を作製した。得られた海島繊維は、海部と島部の界面で剥離はなく、フィラメントの曲率は2.5%であり、フィラメント曲がりのない直毛性に優れたものであった。
実施例1で用いた等間隔に37個の島が配置される紡糸用口金の代わりに、通常の芯鞘糸(単芯)となる紡糸用口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で海島繊維を作製した。得られた海島繊維は芯部と鞘部の界面で剥離がみられた。またフィラメントの曲率は7.0%であり、パイル用の繊維として用いると、直毛性が不良でへたり易く、品位が劣っているものであった。
実施例1で用いたナイロン6の代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、表1に示した紡糸温度以外は実施例2と同様の方法で海島繊維を作成した。
島成分にPETを用いているため、紡糸温度が290度とEvOHの分解温度を超えており、断糸が6〜8時間ごとに発生し紡糸性は良好でなかった。また時間の経過とともに島部の融合が発生し、糸品位は劣っているものであった。
2 島部
Claims (5)
- 海成分からなる海部と、島成分からなる島部とからなる海島繊維であって、海成分がエチレンビニルアルコール共重合体からなり、島成分が250℃以下の融点を有するナイロン6、ナイロン10、ナイロン12、およびナイロン6−12の群から選ばれる熱可塑性樹脂からなるパイル糸用海島繊維。
- 島成分の熱可塑性樹脂が、ナイロン6である請求項1記載のパイル用海島繊維。
- 島部は、海部の中心と同心円の円周上に略等間隔に配置された請求項1または2記載のパイル糸用海島繊維。
- 島部は、海部の中心と同心円の円周上に略等間隔に配置され、島部が配置される円が二重円以上である請求項1から3いずれか1項記載のパイル糸用海島繊維。
- 捲縮加工が施されておらず、85℃の湿熱処理後にフィラメントの曲がりが発生しない直毛性を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のパイル糸用海島繊維。
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