JP3790313B2 - 分割合成繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コア部に対して複数の放射状のフィン部を有する異形度が大きな多葉断面形状を有する異形断面繊維を溶融紡糸し、紡糸後の化学処理(例えば、アルカリ処理等)或いは物理処理(例えば、起毛処理等)によって、コア部とフィン部とを分割する合成繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、円形断面に対して、偏平断面、トライローバル断面、十字葉断面等の多葉異形断面を有し、しかも、その異形度が大きな繊維を溶融紡糸するための吐出孔を持つ紡糸口金として、いろいろな吐出孔形状を有する紡糸口金が提案されてきた。何故なら、このような高異形断面を有する繊維は、衣料用途或いは産業資材用途に使用すると、嵩高で軽くてボリューム感のある繊維素材が得られるからである。このため、異形度が大きな繊維断面が得られる紡糸口金が種々工夫提案されてきたのである。
【0003】
なお、本発明で言う「異形度」は、図4に示すように、溶融紡糸によって得られた繊維の断面の電子顕微鏡写真から外接円と内接円とを求め、外接円の直径を内接円の直径で除した値で表し、この値が大きいほど異形度が大きいと称する。
【0004】
上記のような紡糸口金としては、例えば、特開平7−173708号公報において、紡糸口金の吐出面においてポリマー流路が単連結となる放射状のスリット形状に穿設した、図3-(a)及び(b)に示すような吐出孔を有する紡糸口金が提案されている。
【0005】
しかしながら、このようなポリマー流路が単連結となる吐出孔形状を有する紡糸口金では、ポリマー流路が連結しているため、紡糸口金から出た溶融したポリマーが冷却され、繊維状に細化される所謂「細化過程」において、ポリマーの伸長弾性と表面張力により、フィン部が丸みを帯びてしまい、異形度を大きくすることに限界があった。特に、このような放射状のスリット形状を有する吐出孔においては、スリット長を長くすることで異形度を大きくしようとすると、溶融ポリマーの吐出安定性を損ない、吐出ポリマーの脈動等の紡糸調子の悪化を惹起することがしばしばあった。
【0006】
一方、従来より、異形度が大きい繊維を衣料用途に使用する際において、ソフト感、軽量感等を出すために異形繊維を混繊することが行われているが、この混繊は、異なった断面あるいはデニールを有する繊維を別々に製糸し、これらの繊維を空気ノズル等を使用して混繊する方法である。しかしながら、このような混繊方法では、工程が余分に必要となり、コストが高くなる欠点を有している。
【0007】
また、別々の紡糸口金から異形度が異なる繊維を紡糸し、これを紡糸混繊することも行われている。しかしながら、これらの方法は、あくまでも異形度の異なる吐出孔から別々に吐出された繊維を合わせた後、これらを混繊する方法であるため、ソフト感を与えるべくデニールを細くしていくに従い紡糸が困難となり、仮に紡糸ができても細デニール糸が混繊された状態では、製編織工程などいわゆる後工程において断糸の発生や取り扱い不良等が生じる。
【0008】
このため、アルカリ減量等の化学処理、及び/又は、起毛、バッフィング等の物理処理によって、同一の吐出孔から得られる異形度が同じ繊維のみで、前記の混繊繊維と同効の繊維を容易に得られる方法が切望されてきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた従来法の不利益に徴して、本発明は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の多葉異形断面を有する熱可塑性繊維を溶融紡糸した際に、異形度を大きくできると共に、紡糸後に該繊維を化学処理或いは物理処理することによって、該繊維のフィン部(葉部)と中心部との分割を容易に起こさせる分割合成繊維の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ここに、本発明によれば、先ず請求項1に係る発明として、「コア孔と、該コア孔に対して放射状に穿設された2〜6個のフィン孔とからなり、且つ前記のコア孔と各フィン孔とは、紡糸口金の吐出面においてポリマー流路がそれぞれ分離され、該吐出面において該コア孔と各フィン孔とを分離する最短間隔が0.01mm以上、0.2mm以下である吐出孔が穿設された紡糸口金の前記コア孔と各フィン孔とから吐出されてそれぞれコア部と各フィン部とが形成された繊維を、紡糸後に化学処理或いは物理処理することによって、該繊維のフィン部とコア部とを分割することを特徴とする分割合成繊維の製造方法」が提供される。
【0011】
また、請求項2に係る発明として、前記紡糸口金のポリマー吐出面において、前記吐出孔が前記コア孔の流路断面積をA1、該流路断面のポリマーの濡れ縁周長をL1とし、前記の各フィン孔の流路断面積をA2、該流路断面のポリマーの濡れ縁周長をL2としたとき、1.2≦(A1/L1)/(A2/L2)≦2.5を満足する請求項1記載の分割合成繊維の製造方法が提供される。
【0012】
更に、請求項3に係る発明として、前記のコア孔および各フィン孔の口金吐出面の全周に渡って0.02mm以下、0.001mm以上の面取りを施されている請求項1又は請求項2記載の分割合成繊維の製造方法が提供される。
【0013】
そして、請求項4に係る発明として、前記のコア孔に対して放射状に形成された各フィン孔幅をWとし、その孔長をTとしたとき、1.2≦T/W≦8.0である請求項1〜3の何れかに記載の分割合成繊維の製造方法が提供される。更には、請求項5に係わる発明として、前記化学処理或いは物理処理がアルカリ減量処理又は起毛処理である請求項1〜4の何れかに記載の分割合成繊維の製造方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1-(a)は、本発明の高異形度を有する多葉断面を持った繊維を溶融紡糸するための紡糸口金の実施態様を例示した平面図である。また、図1-(b)は、図1-(a)におけるA−A断面を示したものである。
【0015】
これに対して、図2は、本発明の紡糸口金(図1)に対応する、従来の高異形度を有する多葉断面を持った繊維を紡糸するための紡糸口金、図3は、当業界で慣用されている異形断面繊維の紡糸口金をそれぞれ例示した平面図である。
【0016】
ここで、図1において、1はコア孔、2はフィン孔をそれぞれ表す。なお、図1-(a)においては、4個のフィン孔(2)が各コア孔(1)に対して放射状に穿設されている。なお、コア孔(1)の形状は、円形、楕円、Y型等、特に限定することはないが、紡糸の安定性、工作の容易性等から見て円形形状がより好ましい。
【0017】
以上に述べたようなコア孔(1)とフィン孔(2)を有する吐出孔において、本発明の一大特徴とするところは、従来の吐出孔(図2及び図3参照)のように紡糸口金のポリマー吐出面において、ポリマーの流路が一つに連結し、分離されていない「単連結流路」ではなく、コア孔(1)の流路とフィン孔(2)の流路とが完全に分離されている「多連結流路」を形成させていることにある。なお、このような流路の分離は、ポリマーの吐出面で行われ、吐出面に至るまでの途中の間にコア孔(1)の流路とフィン孔(2)の流路とが分離されず、その一部あるいは全体が合体した流路を含む口金であってもよい。
【0018】
このように、コア孔(1)の流路とフィン孔(2)の流路とをその吐出面において、完全に分離することの最大の利点は、コア孔(1)由来の繊維部とフィン孔(2)由来の繊維部とがそれぞれある程度冷却された後に貼り合わされることと、コア孔(1)のポリマーの吐出線速度(吐出量)と、フィン孔(2)のポリマーの吐出線速度(吐出量)とをそれぞれ独立に設定することができることにある。このように吐出線速度をコア孔(1)とフィン孔(2)とで別々に設定することで、コア孔(1)由来の繊維部とフィン孔(2)由来の繊維部とに細化条件差を容易に生じさせることができる。
【0019】
そして、このように細化条件が異なる、二つの繊維部の貼り合わせ面は、他の箇所と比較して貼り合わせ結合力が弱く、アルカリ減量等の化学処理や起毛等の物理処理によって容易に分割することができるのが最大の利点である。これに対して、従来の紡糸口金は、本発明の紡糸口金のようにフィン部由来の繊維部とコア部由来の繊維部とを化学処理あるいは物理処理によって、容易に分割可能とするという技術思想を欠く点において、全く異なるのである。
【0020】
ここで、従来の紡糸口金(図2及び図3参照)においては、吐出孔がフィン部とコア部とでその流路が分離せず一体となった「単連結流路」を有する吐出孔を形成している。このため、フィン部とコア部とは、ポリマーの吐出線速度(吐出量)をそれぞれ独立に設定するなどということは、全く考慮すらされていないのである。つまり、従来の紡糸口金では、フィン部とコア部との間の接合部で繊維の機械物性を連続的にしか変化させられない点で本発明の紡糸口金とは全く異なるのである。
【0021】
このようにフィン部とコア部とが分離された流路を持たない従来の紡糸口金では、ポリマーの線速度をフィン部とコア部で自由に設定することができないため、細化過程において、紡出されたポリマーの伸長弾性と表面張力によってフィン部由来の繊維部が丸味を帯びてしまい、異形度を大きくすることに限界がある。特に、ドラフト率(ポリマーの吐出線速度と引取速度との比)を大きくするに従って、フィン部の変形が著しくなり、高異形度を有する繊維を得ることは極めて難しかった。このため、図2に示した従来の口金では、フィン部の先端に拡大流路(3)を設け、これによって、コア部を流れるポリマーからの影響を減ずる対策を講じている。
【0022】
しかしながら、このような工夫をしても、従来の紡糸口金では、本発明のようにフィン孔とコア孔とが完全に分離されていないばかりか、流路が互いに連結しているため、コア部を流れるポリマーの影響を排除することができなかった。このため、吐出孔形状をいくら工夫しても、異形度の大きな繊維を得ることができなかった。また、上記の異形度もさることながら、フィン孔由来の繊維部とコア孔由来の繊維部とを化学処理あるいは物理処理によって分割するなどということは、全く考慮されていなかったのは言うまでもない。
【0023】
以上に述べたような従来の紡糸口金と全く異なる技術思想に基づく本発明の紡糸口金については、コア孔(1)とフィン孔(2)との孔配置と孔形状が極めて重要な意味を有しているため、図1-(a)及び(b)を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0024】
該図において、Gは、紡糸口金のポリマー吐出面におけるコア孔(1)とフィン孔(2)との間の最短直線間隔(mm)を表している。この間隔(G)は、コア孔(1)とフィン孔(2)とが別々の孔から吐出され、その後、互いに合流して貼り合わせられる時点を決定する上で、極めて重要である。
【0025】
すなわち、繊維の配向度を決定する細化過程を支配する重要な因子である。なお、Gの値としては、0.01mm≦G≦0.2mmとすることが好ましい。ここで、G<0.01mmとすると、穿孔という工作上及び口金の強度上の問題、およびコア孔と各フィン孔とから吐出されたポリマーの合流貼り合わせが早く起こりすぎ貼り合わせ面で配向差を大きくつけることができず好ましくない。また、G>0.2mmとなると、ポリマーの貼り合わせがうまくいかず、紡糸調子が悪化、もしくは巻き取り不能となり好ましくない。
【0026】
次に、該図において、Dはコア孔(1)の直径である。また、該図において、フィン孔(2)は、スリット状にコア孔に対して放射状に穿設されており、先端部は、直径dを有する拡大流路が設けられており、そのフィン幅をW、フィン長をTでそれぞれ表している。なお、本発明においてはコア孔(1)とフィン孔(2)のポリマー流路の断面積をそれぞれA1及びA2で表すものとする。
【0027】
ここで、フィン孔(2)の数は、この実施態様では4個としているが、2〜6個の範囲でその用途に合わせて適宜使用することができることは、言うまでもない。ただし、その数が6個より多くなると、隣接するフィン孔から吐出されたポリマーが合流し易くなるため、配向度の制御が難しくなると共に異形度も小さくなるため、好ましくない。この場合、各フィン孔(2)は、同一形状とし、吐出孔の中心に対して、点対称に等ピッチで配置することが紡糸の工程調子を安定させる上で好ましい。
【0028】
さらに、本発明の紡糸口金は、コア孔及びフィン孔の吐出面に0.02mm以下の面取り(図1-(b)におけるC1及びC2)を施すことが重要である。何故ならば、通常、ポリマーには、艶消剤として酸化チタン等の無機微粒子が混合されたり、改質剤として抗菌剤が混合される場合が多く、これらは、硬度が極めて大きく紡糸口金の吐出部の磨耗を促進する役割を果たす。これらの磨耗は勿論ポリマー単独でも生じるものであって不可避的なものではある。しかしながら、本発明のようにコア孔と各フィン孔とを分離する間隔(G)が極めて重要である場合には、吐出部の磨耗による経時変化は、糸の品質を維持し、しかも紡糸の安定性を図る上で極めて重要な意味を持つのである。
【0029】
以上に述べたような観点から、ポリマーの吐出面において、吐出孔に施す面取り(C1及び/又はC2)は、0.001mm以上、0.02mm以下が好ましい。ここで、0.001mm未満では、前記のような吐出孔の磨耗が激しくなって好ましくない。また、0.02mmを越えると吐出が不安定になり、紡糸調子が悪化するため好ましくない。
【0030】
なお、本発明者等の実験によると、面取りの大きさは、コア孔の方(C1)をフィン孔の方(C2)よりも大きくしておいた方が好ましかった。これは、本発明者等の実験がフィン孔の方がBarus効果が小さく、吐出を安定させるための面取りがコア孔よりも小さくなる条件で行ったことに起因すると思われる。したがって、紡糸条件に応じて適宜コア孔への面取りとフィン孔への面取りの大きさを決定すればよいことは、言うまでもない。また、必要に応じて、メッキ、コーティング等の耐磨耗性を向上させるための処理を施しても良いことは、言うまでもない。
【0031】
以上に述べたような形状を有するコア孔(1)とフィン孔(2)とを流れるポリマーの流れに吐出線速度差を付けるためには、その吐出量を制御することが必要になる。しかしながら、該吐出量は、ポリマーの溶融粘度等にも左右されるため、これらのポリマーに起因する条件を同一視した場合において、該吐出量は、本質的に、吐出孔の直径に大きく依存することは、Hagen−Poiseuileの式から明らかである。ただし、本発明では、異形断面を有する繊維を紡糸するための吐出孔をその対象としているため、円形断面を有する吐出孔に対する吐出孔直径に相当する相当直径を使用することが好ましい。このため、相当直径を算出するために、紡糸口金のポリマー吐出面における、前記のポリマー流路の濡れ縁周長(L1及びL2)とポリマー流路の断面積(A1及びA2)とを用いることにした。これにより、コア孔(1)及びフィン孔(2)の相当直径は、それぞれ(4×A1/L1)及び(4×A2/L2)と表すことができる。
【0032】
以上に述べた経緯から、本発明においては、コア孔(1)とフィン孔(2)とから吐出されるポリマーの「吐出線速度差の度合」をこれらの「相当直径の比[(A1/L1)/(A2/L2)]」で代表させた。そこで、該「相当直径の比」(以下、記号のRで表す。)を仔細に調べると、1.2≦R≦2.5であることが肝要であることが判った。ここで、R<1.2であると、異形断面繊維を構成するフィン部とコア部とてで配向度差が顕著にならず、貼り合わせ面での分割性が悪い。また、R>2.5であると、紡糸調子が悪化し、場合によっては巻き取り不能となる。
【0033】
最後に、本発明の特徴は、繰り返し述べたように、コア孔(1)と各フィン孔(2)とから吐出されるポリマーの吐出量(吐出線速度)をそれぞれ独立に制御できることにある。このため、得られた繊維のフィン部形状を容易に制御することができ、高異形度の繊維を得ることができるのである。なお、高異形度の繊維を得るためには、フィン孔(1)とコア孔(2)の形状(図1におけるD、d、T、W等)が重要であることはいうまでもない。ここで、フィン孔幅(T)とフィン孔長(W)との関係について述べると、本発明の紡糸口金は、繊維のフィン部とコア部とが、後工程において化学的処理あるいは物理的処理によって容易に分割できることにあるため、この目的を達成することが出来る限り、特に限定する必要はない。
【0034】
しかし、得られた糸を最終的に織編物とした後、繊維のフィン部とコア部とを分割処理し、嵩高、ボリューム感、ソフト感等の風合いを発生させる上において、1.2≦T/W≦8.0とすることが好ましい。もし、T/W<1.2であると、異形度が小さくなって得られる風合いも良くない。また、T/W>8.0になると、本発明の紡糸口金を使用しても、紡糸調子を悪化させることなくある程度のドラフト率で紡糸する際に、異形度を大きくすることが困難となる。なお、ここで、フィン孔幅(W)は、先端部の拡大流路(直径がdの円形流路)を除く、最大孔幅で表すものとする。
【0035】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは、言うまでもない。
なお、以下の実施例及び比較例において、その比較要因として、分割率(S)、紡糸調子、織編物の風合いを下記のように定義する。
【0036】
(1)分割率
アルカリ減量後のフィラメント20本を1000倍で撮影した写真より、明らかに分割が生じていると肉眼で認められるフィン部の数を求め、フィン部の分割率(%)を下記に示す式で算出した。
S=分割しているフィンの数/フィンの全数×100
【0037】
(2)紡糸調子
紡出された繊維を1400m/分で引き取り、巻き取った糸長106m当たりの断糸回数で表した。
【0038】
(3)織編物の風合い
織編物の嵩高性、ソフト感を、極めて良好(◎)、良好(○)、やや不良(△)、不良(X)の4段階で官能判定した。なお、本発明では、極めて良好(◎)及び良好(○)を風合い合格とした。
【0039】
[実施例1]
紡糸口金として、図1-(a)に示した形状を有する吐出孔を24個穿設したものを使用して溶融紡糸した。このときの吐出孔の形状は、コア孔(1)の直径(D)をφ0.3mm、フィン長(T)を0.67mm、フィン幅(W)を0.1mm、フィン先端部の円直径(d)をφ0.14mmとした。そして、コア孔(1)とフィン孔(2)との間の最短間隔(G)を0.05mmとした。また、コア孔(1)の吐出部に0.01mm、フィン孔(2)の吐出部に0.005mmの面取りをそれぞれ施された口金を使用した。このときのフィン孔(2)とコア孔(1)との相当直径の比(R)を計算すると、1.72であった。
【0040】
そして、該紡糸口金によって、固有粘度が0.64であるポリエチレンテレフタレートを285℃で溶融し、28g/分で吐出させ、1400m/分で引取った。次いで、引き取ったフィラメント群を、温度95度の加熱ローラと温度150℃のスリットヒーターを備えた延伸機を用いて、延伸倍率2.4倍に延伸し、75デニール/24フィラメントのマルチフィラメントを得た。
【0041】
続いて、得られたマルチフィラメントを20ゲージの筒編地となし、該筒編地を濃度35g/lの水酸化ナトリウム水溶液中で煮沸処理し、減量率20重量%となるまで減量加工した。この時得られた各フィラメントの異形度、減量後の分割率、紡糸調子及び筒編地の風合いを表1にまとめて示す。
【0042】
【表1】
【0043】
[実施例2〜4、比較例1〜6]
実施例1において、コア孔とフィン孔との間の間隔(G)、コア孔の吐出部の面取り(C1)、フィン孔の吐出部の面取り(C2)、フィン孔(2)とコア孔(1)との相当直径の比(R)、フィン孔長(T)とフィン幅(W)の比(T/W)を、表1のように変える以外は、実施例1とその条件を同一にして同様の評価を行った。このときの結果もあわせて表1に示す。
【0044】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の溶融紡糸口金を使用することにより、合成繊維(特に、ポリエステル繊維)において、多葉の異形断面繊維を得るに際して、ソフト感、嵩高性、軽量性を有する高異形断面を有する繊維を安定に得ることができるという顕著な効果を奏する。さらに、アルカリ減量処理等の化学処理や起毛処理等の物理処理によって、フィン部とコア部が容易に分割することができる繊維を提供することができ、長い間切望されてきた異形繊維の混繊を単一形状の吐出孔のみから紡出された繊維によって極めて安定に得られるという顕著な効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明に使用する紡糸口金に穿設された吐出孔の平面図である。
(B)図1-(a)におけるA−A断面図である。
【図2】従来の高異形断面繊維を得るための吐出孔形状を示した平面図である。
【図3】従来の異形断面繊維を得るための吐出孔形状を示した平面図である。
【図4】異形度の説明図である。
【符号の説明】
1 コア孔
2 フィン孔
C1 面取り(コア孔)
C2 面取り(フィン孔)
d フィン先端部の拡大流路の直径
D コア孔の直径
G コア孔とフィン孔間の最短間隔
T フィン孔長
W フィン孔幅
Claims (5)
- コア孔と、該コア孔に対して放射状に穿設された2〜6個のフィン孔とからなり、且つ前記のコア孔と各フィン孔とは、紡糸口金の吐出面においてポリマー流路がそれぞれ分離され、該吐出面において該コア孔と各フィン孔とを分離する最短間隔が0.01mm以上、0.2mm以下である吐出孔が穿設された紡糸口金の前記コア孔と各フィン孔とから吐出されてそれぞれコア部と各フィン部とが形成された繊維を、紡糸後に化学処理或いは物理処理することによって、該繊維のフィン部とコア部とを分割することを特徴とする分割合成繊維の製造方法。
- 前記紡糸口金のポリマー吐出面において、前記吐出孔が前記コア孔の流路断面積をA1、該流路断面のポリマーの濡れ縁周長をL1とし、前記の各フィン孔の流路断面積をA2、該流路断面のポリマーの濡れ縁周長をL2としたとき、1.2≦(A1/L1)/(A2/L2)≦2.5を満足する請求項1記載の分割合成繊維の製造方法。
- 前記のコア孔および各フィン孔の口金吐出面の全周に渡って0.02mm以下、0.001mm以上の面取りを施されている請求項1又は請求項2記載の分割合成繊維の製造方法。
- 前記のコア孔に対して放射状に形成された各フィン孔幅をWとし、その孔長をTとしたとき、1.2≦T/W≦8.0である請求項1〜3の何れかに記載の分割合成繊維の製造方法。
- 前記化学処理或いは物理処理がアルカリ減量処理又は起毛処理である請求項1〜4の何れかに記載の分割合成繊維の製造方法。
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