JP7259985B2 - 質量分析方法及び質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析方法及び質量分析装置に関する。
生体に生じる疾病の要因を特定することなどを目的として代謝物の構造解析が行われている。有機酸やアミノ酸といった低分子化合物(低分子代謝物)の網羅的な構造解析はメタボローム解析(あるいはメタボロミクス)と呼ばれる。ヒトの場合、メタボローム解析の対象となる代謝物は3000種類以上存在し、それらが誘導体化したものや代謝経路における中間体などを含めるとさらに多くの代謝物が存在する。
メタボローム解析では、液体クロマトグラフと質量分析装置を組み合わせてなる液体クロマトグラフ質量分析装置を用いたLC-MS/MS分析が行われることが多い。LC-MS/MS分析では、液体クロマトグラフのカラムに液体試料を導入して解析対象の試料成分を他の成分から分離し、質量分析装置に導入する。質量分析装置では、該試料成分をイオン化し、生成されたイオンの中から特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する。続いて、そのプリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成する。そして、生成したプロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離して検出することによりプロダクトイオンスペクトルのデータを取得する。
LC-MS/MSにおいてイオンを解離させる代表的な方法として、プリカーサイオンと窒素ガス等の不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させる、衝突誘起解離(CID: Collision-Induced Dissociation)法が知られている。CID法では、通常、プリカーサイオンに運動エネルギーを付与して加速し不活性ガス分子に衝突させる。CID法では不活性ガス分子との衝突のエネルギーによってイオンを解離させるため、様々な部位でプリカーサイオンを解離させることができる。
国際公開第2015/133259号
Luciano H. Di Stefano, Dimitris Papanastasiou, and Roman A. Zubarev, "Size-Dependent Hydrogen Atom Attachment to Gas-Phase Hydrogen-Deficient Polypeptide Radical Cations", J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 2, 531-533 Wolf, S., Schmidt, S., Muller-Hannemann, M., & Neumann, S., "In silico fragmentation for computer assisted identification of metabolite mass spectra", BMC Bioinformatics, 11, (2010), 148. Hidenori Takahashi, Sadanori Sekiya, Takashi Nishikaze, Kei Kodera, Shinichi Iwamoto, Motoi Wada, Koichi Tanaka, "Hydrogen Attachment/Abstraction Dissociation (HAD) of Gas-Phase Peptide Ions for Tandem Mass Spectrometry.", Anal. Chem. 2016, 88 (7), pp 3810-3816
CID法では様々な部位でプリカーサイオンが解離し、解離部位の選択性が低い。メタボローム解析の対象となる代謝物は一般に有機化合物であり、その多くは環状部を有する。そのため、LC-MS/MS分析で検出されたプロダクトイオンがプリカーサイオンの環状部の解離(環開裂)と鎖状部の解離(鎖状部の切断)のいずれにより生じたものであるかは構造解析に有用な情報となるが、CID法ではそのような情報を得ることが難しいという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、有機化合物である試料成分由来のプリカーサイオンの解離によって生成したプロダクトイオンが、プリカーサイオンの環状部と鎖状部のいずれの解離により生じたものであるかについての情報を得ることができる技術を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析方法は、
試料成分由来のプリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、該プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
前記プリカーサイオンと水素ラジカルの反応により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、該プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
前記第1プロダクトイオンスペクトルデータと前記第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量電荷比の差を有するプロダクトイオンの組を抽出する。
上記課題を解決するために成された本発明の別の一態様に係る質量分析装置は、
試料成分由来のプリカーサイオンが導入される反応室と、
前記反応室に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部と、
前記反応室に水素ラジカルを導入する水素ラジカル導入部と、
前記反応室から出射するイオンを質量電荷比に応じて分離して検出するイオン検出部と、
前記不活性ガス導入部及び前記イオン検出部を制御する制御部であって、前記プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、前記イオン検出部で検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得する第1測定制御部と、
前記水素ラジカル導入部及び前記イオン検出部を制御する制御部であって、前記プリカーサイオンと水素ラジカルの反応により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、前記イオン検出部で検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得する第2測定制御部と、
同一のプリカーサイオンについて得られた前記第1プロダクトイオンスペクトルデータと前記第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量差を有するプロダクトイオンの組を抽出するプロダクトイオン組抽出部と
を備える。
本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置は、主として有機化合物である試料成分の分析に用いられるものであり、そうした試料成分由来のプリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突によりプリカーサイオンを解離させるCID法により生成したプロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得する。また、試料成分由来のプリカーサイオンと水素ラジカルの反応によりプリカーサイオンを解離させる水素付着解離(HAD: Hydrogen-Attached Dissociation)法で生成したプロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得する。発明者が行った測定によれば、鎖状部でプリカーサイオンが解離して生成されたプロダクトイオンではCIDによる解離とHADによる解離でプロダクトイオンの質量電荷比に差がない一方、環状部でプリカーサイオンが解離して生成されたプロダクトイオンでは、CIDによる解離とHADによる解離で、プロダクトイオンに特定の(典型的には2Da)の質量電荷比の差が生じることが分かった。本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置はこの知見に基づくものであり、同一のプリカーサイオンについて得られた第1プロダクトイオンスペクトルデータと第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量電荷比の差を有するプロダクトイオンの組を抽出する。これにより、抽出された組のプロダクトイオンが環状部におけるプリカーサイオンの解離により生じたものであることを推定することができる。
本発明に係る質量分析装置の一実施例の要部構成図。 本実施例の質量分析装置のラジカル生成・照射部の構成を説明する図。 本実施例の質量分析装置を用いてケルセチンを測定した結果を説明する図。 本実施例の質量分析装置を用いてモデル試料を同定した結果を説明する図。 変形例の質量分析装置の要部構成図。
本発明に係るイオン分析装置の実施例について、以下、図面を参照して説明する。実施例のイオン分析装置は、イオントラップ-飛行時間型(IT-TOF型)質量分析装置である。
図1に実施例のイオントラップ-飛行時間型質量分析装置(以下、単に「質量分析装置」とも呼ぶ。)の概略構成を示す。実施例の質量分析装置は、所定の真空雰囲気に維持される図示しない真空チャンバの内部に、試料中の成分をイオン化するイオン源1と、イオン源1で生成されたイオンを高周波電場の作用により捕捉するイオントラップ2と、イオントラップ2から出射されたイオンを質量電荷比に応じて分離する飛行時間型質量分離部3と、分離されたイオンを検出するイオン検出器4とを備える。本実施例のイオントラップ質量分析装置はさらに、イオントラップ2内に水素ラジカルを導入するためのラジカル生成・照射部5と、イオントラップ2内に不活性ガスを導入する不活性ガス供給部6と、トラップ電圧発生部71と、機器制御部72と、制御・処理部9とを備える。
本実施例の質量分析装置のイオン源1には、ESI源やMALDIイオン源など、試料成分のイオン化に適した適宜のイオン源が用いられる。本実施例のイオントラップ2は、円環状のリング電極21と、該リング電極21を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極(入口側エンドキャップ電極22、出口側エンドキャップ電極24)とを含む三次元イオントラップである。リング電極21にはラジカル導入口26とラジカル排出口27が形成されている。また、入口側エンドキャップ電極22にはイオン導入孔23が形成されている。さらに、出口側エンドキャップ電極24にはイオン出射孔25が形成されている。
飛行時間型質量分離部3は複数の電極を含み、イオントラップ2から出射するイオンをイオン検出器4に入射させる。トラップ電圧発生部71は、機器制御部72からの指示に応じて、リング電極21、入口側エンドキャップ電極22、及び出口側エンドキャップ電極24、並びに飛行時間型質量分離部3を構成する電極のそれぞれに対して所定のタイミングで高周波電圧と直流電圧のいずれか一方又はそれらを合成した電圧を印加する。
ラジカル生成・照射部5は、内部にラジカル生成室52を有するノズル54と、ラジカル生成室52を排気する真空ポンプ(真空排気部)57と、ラジカル生成室52内で真空放電を生じさせるためのマイクロ波を供給する誘導結合型の高周波プラズマ源53とを備えている。また、ラジカル生成・照射部5は、ラジカルの原料となる水素ガスを供給する水素ガス供給源51を備えている。水素ガス供給源51からラジカル生成室52に原料ガスを供給する流路には、水素ガスの流量を調整するためのバルブ56が設けられている。ノズル54の噴出口の前方にはスキマー55が設けられており、このスキマー55によってガス分子が除去されるとともに水素ラジカルが細径のビーム状に成形される。本実施例では水素ガスを原料として水素ラジカルを生成するが、水蒸気等の他の種類のガスを原料ガスとして水素ラジカルを生成することもできる。
図2に示すように、高周波プラズマ源53は、マイクロ波供給源531とスリースタブチューナー532を備えている。ノズル54は外周部を構成する接地電極541、その内側にトーチ542を備えており、該トーチ542の内部がラジカル生成室52となる。ラジカル生成室52の内部では、コネクタ544を介して高周波プラズマ源53と接続されたニードル電極543がラジカル生成室52の長手方向に貫通している。トーチ542には電気絶縁性を有するもの、例えばガラス製のものを用いることができ、その一例としてパイレックス(登録商標)ガラスが挙げられる。
不活性ガス供給部6は、ヘリウムガス、窒素ガス、あるいはアルゴンガスといった不活性ガスを供給する不活性ガス供給源61と、該不活性ガス供給源から供給される不活性ガスをイオントラップ2内に導入するガス流路63とを備えている。イオントラップ2に供給される不活性ガスの量は、バルブ62により調整される。
制御・処理部9は、記憶部91のほかに、機能ブロックとして測定制御部92、スペクトル作成部93、プロダクトイオン組抽出部94、化合物推定部95、及び判定部96を備えている。記憶部91には、複数の既知の化合物のそれぞれについて、名称、プロダクトイオンスペクトルデータ、及びそのデータ取得に係る測定条件などを対応付けた情報を収録した化合物データベース(化合物DB)911が保存されている。本実施例の化合物データベースには、各化合物について衝突誘起解離(CID: Collision-Induced Dissociation)法で取得されたプロダクトイオンスペクトルデータと、水素付着解離(HAD: Hydrogen-Attached Dissociation)法で取得されたプロダクトイオンスペクトルデータの両方が収録されている。また、飛行時間型質量分離部3におけるイオンの飛行時間とイオンの質量電荷比を対応付けた飛行時間-質量電荷比変換情報も保存されている。測定制御部92は、第1測定制御部921と第2測定制御部922を有している。制御・処理部9の実体は一般的なコンピュータであり、予めインストールされた質量分析用プログラムをプロセッサで実行することにより上記の各機能ブロックが具現化される。また、制御・処理部9には入力部98と表示部99が接続されている。
次に、実施例の質量分析装置における分析動作を説明する。使用者が測定開始を指示すると、第1測定制御部921が質量分析装置の各部を以下のように動作させる。
はじめに、真空ポンプ(図示略)により真空チャンバ内を所定の真空度まで排気する。続いて、イオン源1において試料成分をイオン化し、生成したイオンをパケット状にイオン源1から出射させる。イオン源1から出射したイオンは、入口側エンドキャップ電極22に形成されているイオン導入孔23を経てイオントラップ2の内部に導入される。イオントラップ2内に導入されたイオンは、トラップ電圧発生部71からリング電極21等に印加される電圧によってイオントラップ2内に形成される高周波電場で捕捉される。そのあと、トラップ電圧発生部71からリング電極21等に所定の電圧が印加され、それによって目的とする特定の質量電荷比を有するイオン以外の質量電荷比範囲に含まれるイオンは励振され、イオントラップ2から排除される。これにより、イオントラップ2内に、特定の質量電荷比を有するイオン(典型的には1価のプロトン付加分子イオン[M+H]+)を選択的に捕捉する。
続いて、不活性ガス供給部6のバルブ62を開放し、不活性ガス供給源61からイオントラップ2内に窒素ガスなどの不活性ガスを一定の流量で導入する。これによりプリカーサイオンがクーリングされ、イオントラップ2の中心付近に収束される。その後、トラップ電圧発生部71からイオントラップ2を構成するリング電極21、入口側エンドキャップ電極22、及び出口側エンドキャップ電極24のそれぞれに所定の高周波電圧を印加し、イオントラップ2内に高周波電場を形成してプリカーサイオンが振動させる。振動により運動エネルギーを付与されたプリカーサイオンは、イオントラップ2内に導入された不活性ガスとの衝突により解離してプロダクトイオンを生成する。プリカーサイオンは所定時間励振され、その間、不活性ガスとの衝突によりプリカーサイオンが解離してプロダクトイオンが生成される。バルブ62の開度やプリカーサイオンを励振する時間は、予備実験の結果等に基づき事前に決めておくことができる。
生成されたプロダクトイオンは、一旦イオントラップ2内に捕捉される。その後、トラップ電圧発生部71から入口側エンドキャップ電極22と出口側エンドキャップ電極24に直流電圧を印加してイオントラップ2内に電位勾配を形成する。これにより、イオントラップ2内に捕捉されたプロダクトイオンに一定の加速エネルギーが付与され、イオン出射孔25から一斉に出射する。
一定の加速エネルギーを持ったプロダクトイオンは、飛行時間型質量分離部3の飛行空間に導入され、飛行空間を飛行する間に質量電荷比に応じて分離される。イオン検出器4は分離されたイオンを順次検出する。イオン検出器4からの出力信号は順次、記憶部91に保存される。
第1測定制御部921による測定を完了すると、第2測定制御部922が質量分析装置の各部を以下のように動作させる。
はじめに、真空ポンプ(図示略)により真空チャンバ内を所定の真空度まで排気し、また、真空ポンプ57によりラジカル生成室52内を所定の真空度まで排気する。また、ラジカル生成・照射部5のバルブ56を開放し、ラジカル生成室52に水素ガス供給源51から水素ガスが供給する。さらに、マイクロ波供給源531からマイクロ波を供給し、ラジカル生成室52内で水素ラジカルを生成する。
続いて、イオン源1において試料成分をイオン化し、生成したイオンをパケット状にイオン源1から出射させる。イオン源1から出射したイオンは、入口側エンドキャップ電極22に形成されているイオン導入孔23を経てイオントラップ2の内部に導入される。イオントラップ2内に導入されたイオンは、トラップ電圧発生部71からリング電極21等に印加される電圧によってイオントラップ2内に形成される高周波電場で捕捉される。そのあと、トラップ電圧発生部71からリング電極21等に所定の電圧が印加され、それによって目的とする特定の質量電荷比を有するイオン以外の質量電荷比範囲に含まれるイオンは励振され、イオントラップ2から排除される。これにより、イオントラップ2内に、特定の質量電荷比を有するイオン(典型的には1価のプロトン付加分子イオン[M+H]+)を選択的に捕捉する。
その後、ラジカル生成・照射部5のラジカル生成室52内で生成された水素ラジカルを含むガスをノズル54から噴出させる。ノズル54から噴出した水素ラジカルは、スキマー55を通過してイオントラップ2に導入される。
このときにイオンに照射されるラジカルの流量が所定の流量になるように、バルブ56の開度等は適宜に調整される。また、プリカーサイオンへのラジカルの照射時間も適宜に設定される。バルブ56の開度やラジカルの照射時間は、予備実験の結果等に基づき事前に決めておくことができる。イオントラップ2に導入されたラジカルはプリカーサイオンに付着し、該プリカーサイオンに不対電子誘導型の解離を生じさせる。これによりプロダクトイオンが生成される。
生成されたプロダクトイオンは、一旦イオントラップ2内に捕捉される。その後、トラップ電圧発生部71から入口側エンドキャップ電極22と出口側エンドキャップ電極24に直流電圧を印加してイオントラップ2内に電位勾配を形成する。これにより、イオントラップ2内に捕捉されたプロダクトイオンに一定の加速エネルギーが付与され、イオン出射孔25から一斉に出射する。
一定の加速エネルギーを持ったプロダクトイオンは、飛行時間型質量分離部3の飛行空間に導入され、飛行空間を飛行する間に質量電荷比に応じて分離される。イオン検出器4は分離されたイオンを順次検出する。イオン検出器4からの出力信号は順次、記憶部91に保存される。
第2測定制御部922による測定を完了すると、スペクトル作成部93は、イオントラップ2からのイオンの出射時点を時刻ゼロとする飛行時間スペクトルを作成する。そして、記憶部91に保存されている飛行時間-質量電荷比変換情報に基づいて飛行時間を質量電荷比に換算することにより、第1測定(CID法)のプロダクトイオンスペクトルデータと、第2測定(HAD法)のプロダクトイオンスペクトルデータを作成する。
第1測定のプロダクトイオンスペクトルデータと、第2測定のプロダクトイオンスペクトルデータが作成されると、プロダクトイオン組抽出部94は、これらのプロダクトイオンスペクトルデータに含まれるピークの質量電荷比を相互に比較する。そして、所定の質量電荷比差を有するプロダクトイオンの組を抽出する。
ここで、CID法によるプリカーサイオンの解離とHAD法によるプリカーサイオンの解離について本発明者は以下のように推察した。
CID法によりプリカーサイオンを解離した場合、解離直後のプロダクトイオンとプリカーサイオンの残存部分(プリカーサイオンからプロダクトイオンが脱離した残りの部分)の双方が不安定なラジカル種になることがある。プリカーサイオンの環状部の開裂によってプロダクトイオンが生成される場合、2か所で環が切断されなければ、プリカーサイオンはプロダクトイオンとプリカーサイオンの残存部分に分離されない。そのため、1か所の環開裂が生じた時点では開裂部位が相互に近接した状態にあり、これらの間で水素ラジカルが受け渡される。これと同時に(あるいは多少遅れて)同じ環の別の箇所で環開裂が生じると、プロダクトイオンとプリカーサイオンの残存部分が分離されて離間する。プリカーサイオンが環状部で解離する過程でプロダクトイオンからプリカーサイオンの残存部分に対して水素ラジカルが受け渡されることにより、プロダクトイオンは非ラジカル種のイオンとなって安定化し、また、プリカーサイオンの残存部分も非ラジカル種の中性分子となって安定化する。逆に、プロダクトイオンに対してプリカーサイオンの残存部分から水素ラジカルが受け渡されることにより、プロダクトイオンは非ラジカル種のイオンとなって安定化し、また、プリカーサイオンの残存部分も非ラジカル種の中性分子となって安定化することもある(例えば非特許文献1)。
つまり、CID法では、プリカーサイオンが環状部で解離する際にラジカル種のプロダクトイオンから水素ラジカルが離脱して、又はラジカル種のプロダクトイオンに水素ラジカルが付着することによって非ラジカル種のプロダクトイオンとなるため、検出される非ラジカル種のプロダクトイオンの質量が、生成された時点のラジカル種のプロダクトイオンから±1Da変化することになる。プリカーサイオンが鎖状部で解離した場合には、プロダクトイオンとプリカーサイオンの残存部分がすぐに離間するため、上記のような水素ラジカルの受け渡しは起こりにくい。
一方、HAD法によりプリカーサイオンを解離した場合にも、解離直後には、プロダクトイオンとプリカーサイオンの残存部分(プリカーサイオンからプロダクトイオンが脱離した残りの部分)の双方が不安定なラジカル種になることがある。しかし、HAD法ではイオントラップ2内に大量の水素ラジカルが導入されるため、ラジカル種であるプロダクトイオンとラジカル種であるプリカーサイオンの残存部分の双方に水素ラジカルが付着し、プロダクトイオンは非ラジカル種のイオンとなって安定化し、また、プリカーサイオンの残存部分も非ラジカル種の中性分子となって安定化する。つまり、HAD法では、プロダクトイオンに水素ラジカルが付着するため、プロダクトイオンの質量が+1Da変化する。
CID法ではプリカーサイオンの環状部の解離により生じるプロダクトイオンの質量が±1Da変化し、HAD法ではプリカーサイオンの環状部の解離により生じるプロダクトイオンの質量が+1Da変化することから、プリカーサイオンの環状部の解離により生じるプロダクトイオンには2Daの差が生じうる。従って、これら2つの手法で取得されたプロダクトイオンスペクトルデータから、質量差が2Daであるプロダクトイオンの組を抽出することにより、該組のプロダクトイオンがプリカーサイオンの環状部の解離により生じたものであると推定することができる。
上記の質量差は解離部位ごとに生じうることから、プリカーサイオンが環状部の複数の位置で解離した場合にはさらに2Da以上の質量差が生じることになる。従って、上記所定の質量差には2Daだけでなく、4Daあるいは6Daも含めておくことができる。
プロダクトイオン組抽出部94により、上記所定の質量差を有するプロダクトイオンの組が抽出されると、化合物推定部95は、第1測定のプロダクトイオンスペクトルデータを化合物データベース911に収録されているCID法のプロダクトイオンスペクトルデータと照合する。そして、プロダクトイオンスペクトルデータに含まれるピークの位置(プロダクトイオンの質量電荷比)や強度の一致度からスコアを求め、スコアが高い順に所定数の化合物を化合物候補として選択する。スコアの算出はプロダクトイオンの組の抽出よりも先に行ってもよく、並行して行ってもよい。
次に、判定部96は、プロダクトイオン組抽出部94により抽出されたプロダクトイオン組のうち、CID法により生成されたプロダクトイオンの質量電荷比が、化合物候補由来の所定のプリカーサイオン(通常、1価のプロトン付加分子イオン)の環状部の解離により生じうる(即ち、環状部の解離によってその質量電荷比を有するプロダクトイオンが生成されうる)場合に、当該化合物候補のスコアに所定のスコアを加算する。加算するスコアの大きさは適宜に決めればよく、例えば、環状部の数や構造に特徴を有する化合物を同定しようとする場合には加算するスコアを大きくするとよい。これらの処理を行った後、化合物推定部95はスコアが大きい順に所定数の化合物候補について、化合物の名称、及びCID法で取得されたマススペクトルを、第1測定のプロダクトイオンスペクトルとともに表示部99に表示する。ここでは判定部96による判定結果に基づいてスコアを加算するものとしたが、環状部の解離によって上記プロダクトイオンが生成されうるもののみを化合物候補として残すようにしてもよい。
ここでは、第1測定(CID法)のプロダクトイオンスペクトルデータを用いて化合物候補を選択する場合を例に説明したが、第2測定(HAD法)のプロダクトイオンスペクトルデータを用いて上記同様の処理を行うこともできる。その場合には、化合物データベース911に収録されている、HAD法で取得されたプロダクトイオンスペクトルデータを用いたスペクトルマッチングによりスコアを求めればよい。
また、化合物データベース911に収録されているプロダクトイオンスペクトルデータと実際の測定により得られたプロダクトイオンスペクトルデータのスペクトルマッチングを行って化合物候補を選択する代わりに、試料成分として推定される化学式と実際の測定により得られたマススペクトルデータに含まれるピークの位置(質量電荷比)及び強度の情報に基づいてコンピュータを用いたプリカーサイオンの解離シミュレーションを行って化合物候補を求めるようにしてもよい。そのようなソフトウェアとして、例えばMetFrag(非特許文献2参照)を用いることができる。
次に、上記実施例の質量分析装置を用いた実際の測定例を説明する。図3はケセチンの測定結果である。上段は第1測定(CID法)で得られたプロダクトイオンスペクトル、下段は第2測定(HAD法)で得られたプロダクトイオンスペクトルである。
図3に示すとおり、第1測定で得られたプロダクトイオンスペクトルには、質量電荷比が135.01, 195.03, 257.01, 274.02である4つのピークが存在している。一方、第2測定で得られたプロダクトイオンスペクトルには、質量電荷比が137.01, 195.03, 259.04, 276.05である4つのピークが存在している。つまり、2Daの質量差を有するプロダクトイオンが3組(第1測定/第2測定:135.01/137.01, 257.01/259.04, 274.02/276.05)存在している。また、同じ質量(195.03)のプロダクトイオンが1組存在している。図3の左上に示す位置でそれぞれ示すように、2Daの質量差を有するプロダクトイオンの組はいずれも、環状部の解離により生じており、同じ質量のプロダクトイオンの組は鎖状部の解離により生じていることが分かる。なお、図3の左上に示す分子構造には、第2測定(HAD法)で生成されるプロダクトイオンの質量を記載している。
次に、上記実施例の質量分析装置を用いたモデル試料(cAMP, CAS_ID 60-92-4)の同定例を説明する。図4の下部に示す測定結果のうち、上段は第2測定(HAD法)で得られたプロダクトイオンスペクトル、下段は第1測定(CID法)で得られたプロダクトイオンスペクトルである。図4の上段は、第2測定(HAD法)で得られたプロダクトイオンスペクトルをin silico(コンピュータによるシミュレーション)フラグメント解析ツールであるMetFrag(非特許文献2参照)に入力して得られた上位5位までの化合物候補を、スコアが高い順に並べたものである。この時点では5つの化合物が候補として存在している。これらのうち、#2が正しい化合物であるが、それよりもスコアが高い化合物(#1)が存在している。
しかし、#1の化合物では環状部の解離により121.05Daのプロダクトイオンが生成されないため、本実施例では判定部96により化合物候補から除外する(あるいは化合物候補のランクを下げる)ことができる。また、#4及び#5の化合物では、鎖状部の解離によって250.098Daのプロダクトイオンが生成されることから、これらも候補から除外する(あるいは化合物候補のランクを下げる)ことができる。こうしてモデル化合物の候補を#2と#3に絞り込むことができ、正解である#2の化合物が最も上位の候補となる。
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。上記実施例は三次元イオントラップを備えた質量分析装置としたが、リニアイオントラップ(コリジョンセル)を備えた質量分析装置とすることもできる。
図5に変形例の質量分析装置の概略構成図を示す。上記実施例と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、ラジカル生成・照射部、不活性ガス供給部6、及び制御・処理部9の構成は上記実施例と同じであるため詳細な構成要素の図示を省略する。
変形例の質量分析装置は、略大気圧であるイオン化室80と真空ポンプ(図示なし)により真空排気された高真空の分析室83との間に、段階的に真空度が高められた第1中間真空室81及び第2中間真空室82を備えた多段差動排気系の構成を有している。イオン化室80には、例えばESIプローブ801が設置される。イオンを収束させつつ後段へ輸送するために、第1中間真空室81にはイオンガイド811が、第2中間真空室82にはイオンガイド821が、それぞれ設置されている。分析室83には、イオンを質量電荷比に応じて分離する前段四重極マスフィルタ831、多重極イオンガイド833が内部に設置されたコリジョンセル832、イオンを質量電荷比に応じて分離する後段四重極マスフィルタ834、及びイオン検出器835が設置されている。
ラジカル生成・照射部5は、上記実施例と同様の構成を有している(図5では、ラジカル生成・照射部5のうち、ラジカル生成室52、ノズル54、及び輸送管58のみ図示)。輸送管58は、その先端部分がコリジョンセル832の壁面に沿うように配設されている。輸送管58のうち、コリジョンセル832の壁面に沿って配設された部分には、5つのヘッド部が設けられており、各ヘッド部からイオンの飛行方向(イオン光軸C。イオンの飛行経路の中心軸)と交差する方向にラジカルが噴射される。変形例の質量分析装置では、イオン化室80で生成されたイオンの中から前段四重極マスフィルタ831によってプリカーサイオンが選別され、コリジョンセル832に導入される。そして、第2測定制御部922によって、ラジカル生成・照射部5から水素ラジカルがコリジョンセル832の内部に導入され、HAD法によりプリカーサイオンを解離してプロダクトイオンを生成する。
不活性ガス供給部6も、上記実施例と同様の構成を有している(図5ではバルブ62の図示を省略)。そして、第1測定制御部921によって不活性ガス供給部6から不活性ガスをコリジョンセル832の内部に導入し、CID法によりプリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成する。
また、上記実施例では、飛行時間型質量分離部をリニア型としたが、リフレクトロン型やマルチターン型等の飛行時間型質量分離部を用いてもよい。また、飛行時間型質量分離部以外に、例えばイオントラップ2自体のイオン分離機能を利用して質量分離を行うものやオービトラップなど、他の形態の質量分離部を用いることもできる。
上記実施例ではラジカル生成・照射部5として、誘導結合型の高周波プラズマ源53を用いたが、熱解離型の水素ラジカル源(特許文献1、非特許文献3参照)を用いることもできる。熱解離型の水素ラジカル源を備えたラジカル生成・照射部は、水素ガスを供給する原料ガス供給源と、該水素ガスが導入されるキャピラリと、該キャピラリを加熱する加熱部と、該キャピラリに導入する水素ガスの流量を調整するバルブとを備えており、加熱されたキャピラリ内で水素ガスを熱解離させることにより水素ラジカルを生成し、イオントラップに導入する。
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)
本発明の一態様に係る質量分析方法は、
試料成分由来のプリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、該プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
前記プリカーサイオンと水素ラジカルの反応により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、該プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
前記第1プロダクトイオンスペクトルデータと前記第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量電荷比の差を有するプロダクトイオンの組を抽出する。
(第7項)
本発明の別の一態様に係る質量分析装置は、
試料成分由来のプリカーサイオンが導入される反応室と、
前記反応室に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部と、
前記反応室に水素ラジカルを導入する水素ラジカル導入部と、
前記反応室から出射するイオンを質量電荷比に応じて分離して検出するイオン検出部と、
前記不活性ガス導入部及び前記イオン検出部を制御する制御部であって、前記プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、前記イオン検出部で検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得する第1測定制御部と、
前記水素ラジカル導入部及び前記イオン検出部を制御する制御部であって、前記プリカーサイオンと水素ラジカルの反応により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、前記イオン検出部で検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得する第2測定制御部と、
同一のプリカーサイオンについて得られた前記第1プロダクトイオンスペクトルデータと前記第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量差を有するプロダクトイオンの組を抽出するプロダクトイオン組抽出部と
を備える。
第1項に記載の質量分析方法及び第7項に記載の質量分析装置は、特に有機化合物である試料成分の分析に用いられるものであり、そうした試料成分由来のプリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突によりプリカーサイオンを解離させるCID法で生成したプロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得する。また、試料成分由来のプリカーサイオンと水素ラジカルの反応によりプリカーサイオンを解離させるHAD法で生成したプロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得する。発明者が行った測定によれば、鎖状部でプリカーサイオンが解離して生成されたプロダクトイオンではCID法によるプリカーサイオンの解離とHAD法によるプリカーサイオンの解離で生成されるプロダクトイオンの質量電荷比に差がない一方、環状部でプリカーサイオンが解離して生成されたプロダクトイオンではプロダクトイオンに特定の質量差(典型的には2Da)が生じることが分かった。第1項に記載の質量分析方法及び第7項に記載の質量分析装置はこの知見に基づくものであり、同一のプリカーサイオンについて得られた第1プロダクトイオンスペクトルデータと第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量電荷比の差を有するプロダクトイオンの組を抽出する。これにより、抽出された組のプロダクトイオンが環状部におけるプリカーサイオンの解離により生じたものであることを推定することができる。
(第2項)
第1項に記載の質量分析方法において、
前記所定の質量差が2Daである。
(第8項)
第7項に記載の質量分析装置において、
前記所定の質量差が2Daである。
第2項に記載の質量分析方法及び第8項に記載の質量分析装置では、CID法によるプリカーサイオンの環状部の解離により生成されるプロダクトイオンと、HAD法によるプリカーサイオンの環状部の解離により生成されるプロダクトイオンの組うち、最も一般的な組である、質量差が2Daであるものを抽出することができる。
(第3項)
第1項又は第2項に記載の質量分析方法において、
前記抽出したプロダクトイオンの組が前記プリカーサイオンの環状部の解離により生成されるか否かを判定する。
(第9項)
第7項又は第8項のいずれかに記載の質量分析装置において、さらに、
前記プロダクトイオン組抽出部により抽出された組のプロダクトイオンが前記化合物候補由来のプリカーサイオンの環状部の解離により生成されるか否かを判定する判定部
を備える。
第3項に記載の質量分析方法及び第9項に記載の質量分析装置では、プロダクトイオン組抽出部により抽出された組のプロダクトイオンが化合物候補由来のプリカーサイオンの環状部の解離により生成されるか否かを判定することにより、化合物の推定の精度を高めることができる。
(第4項)
第1項から第3項のいずれかに記載の質量分析方法において、さらに、
既知の化合物について、プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータ、及び/又はプリカーサイオンと水素ラジカルの反応により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータを収録した化合物データベースを用いて、前記第1プロダクトイオンスペクトルデータ及び/又は前記第2プロダクトイオンスペクトルデータを前記化合物データベースに収録されているプロダクトイオンスペクトルデータと照合することにより前記試料成分に対する化合物候補を推定する。
(第10項)
第7項から第9項のいずれかに記載の質量分析装置において、さらに、
既知の化合物について、プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータ、及び/又はプリカーサイオンと水素ラジカルの反応により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータを収録した化合物データベースと、
前記第1プロダクトイオンスペクトルデータ及び/又は前記第2プロダクトイオンスペクトルデータを前記化合物データベースに収録されているプロダクトイオンスペクトルデータと照合することにより前記試料成分に対する化合物候補を推定する化合物推定部と
を備える。
第4項に記載の質量分析方法及び第10項に記載の質量分析装置では、使用者自らがプロダクトイオンスペクトルデータを照合することなく、簡便に試料成分に対する化合物候補を推定することができる。
(第5項)
第4項に記載の質量分析方法において、さらに、
前記化合物候補について前記照合におけるプロダクトイオンスペクトルデータの一致度に基づくスコアを求める。
(第11項)
第10項に記載の質量分析装置において、
前記化合物推定部が、前記化合物候補について前記照合におけるスペクトルデータの一致度に基づくスコアを求める。
第5項に記載の質量分析方法及び第11項に記載の質量分析装置では、化合物候補の確からしさを定量的に評価することができる。
(第6項)
第3項に記載の判定を行う、第5項に記載の質量分析方法において、さらに、
前記判定の結果に基づいて前記スコアに所定の値を加算する。
(第12項)
第9項に記載の判定部を備えた、第11項に記載の質量分析装置において、さらに、
前記化合物推定部が、前記判定部による判定結果に基づいて前記スコアに所定の値を加算する。
第6項に記載の質量分析方法及び第12項に記載の質量分析装置では、環状部の数や構造に特徴を有する化合物を同定しようとする場合には加算するスコアを大きくする等により定量的かつ高精度に試料成分を同定することができる。
1…イオン源
2…イオントラップ
21…リング電極
22…入口側エンドキャップ電極
23…イオン導入孔
24…出口側エンドキャップ電極
25…イオン出射孔
26…ラジカル導入口
27…ラジカル排出口
3…飛行時間型質量分離部
4…イオン検出器
5…ラジカル生成・照射部
51…水素ガス供給源
52…ラジカル生成室
52…水素ガス供給源
53…高周波プラズマ源
531…マイクロ波供給源
532…スリースタブチューナー
54…ノズル
541…接地電極
542…トーチ
543…ニードル電極
544…コネクタ
55…スキマー
56…バルブ
58…輸送管
6…不活性ガス供給部
61…不活性ガス供給源
62…バルブ
63…ガス流路
71…トラップ電圧発生部
72…機器制御部
80…イオン化室
801…ESIプローブ
81…第1中間真空室
811…イオンガイド
82…第2中間真空室
821…イオンガイド
83…分析室
831…前段四重極マスフィルタ
832…コリジョンセル
833…多重極イオンガイド
834…後段四重極マスフィルタ
835…イオン検出器
9…制御・処理部
91…記憶部
911…化合物データベース
92…測定制御部
921…第1測定制御部
922…第2測定制御部
93…スペクトル作成部
94…プロダクトイオン組抽出部
95…化合物推定部
98…入力部
99…表示部
C…イオン光軸

Claims (12)

  1. 試料成分由来のプリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、該プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
    前記プリカーサイオンと水素ラジカルの反応により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、該プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離し検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
    前記第1プロダクトイオンスペクトルデータと前記第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量差を有するプロダクトイオンの組を抽出する質量分析方法。
  2. 前記所定の質量差が2Daである、請求項1に記載の質量分析方法。
  3. さらに、
    前記抽出したプロダクトイオンの組が前記プリカーサイオンの環状部の解離により生成されるか否かを判定する、
    請求項1に記載の質量分析方法。
  4. さらに、
    既知の化合物について、プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータ、及び/又はプリカーサイオンと水素ラジカルの反応により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータを収録した化合物データベースを用いて、前記第1プロダクトイオンスペクトルデータ及び/又は前記第2プロダクトイオンスペクトルデータを前記化合物データベースに収録されているプロダクトイオンスペクトルデータと照合することにより前記試料成分に対する化合物候補を推定する、請求項3に記載の質量分析方法。
  5. さらに、
    前記化合物候補について前記照合におけるプロダクトイオンスペクトルデータの一致度に基づくスコアを求める、請求項4に記載の質量分析方法。
  6. さらに、
    前記判定の結果に基づいて前記スコアに所定の値を加算する、請求項5に記載の質量分析方法。
  7. 試料成分由来のプリカーサイオンが導入される反応室と、
    前記反応室に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部と、
    前記反応室に水素ラジカルを導入する水素ラジカル導入部と、
    前記反応室から出射するイオンを質量電荷比に応じて分離して検出するイオン検出部と、
    前記不活性ガス導入部及び前記イオン検出部を制御する制御部であって、前記プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、前記イオン検出部で検出することにより第1プロダクトイオンスペクトルデータを取得する第1測定制御部と、
    前記水素ラジカル導入部及び前記イオン検出部を制御する制御部であって、前記プリカーサイオンと水素ラジカルの反応により該プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成し、前記イオン検出部で検出することにより第2プロダクトイオンスペクトルデータを取得する第2測定制御部と、
    同一のプリカーサイオンについて得られた前記第1プロダクトイオンスペクトルデータと前記第2プロダクトイオンスペクトルデータにおいて、所定の質量差を有するプロダクトイオンの組を抽出するプロダクトイオン組抽出部と
    を備える質量分析装置。
  8. 前記所定の質量差が2Daである、請求項7に記載の質量分析装置。
  9. さらに、
    前記プロダクトイオン組抽出部により抽出された前記プロダクトイオンの組が前記プリカーサイオンの環状部の解離により生成されるか否かを判定する判定部
    を備える、請求項7に記載の質量分析装置。
  10. さらに、
    既知の化合物について、プリカーサイオンと不活性ガス分子の衝突により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータ、及び/又はプリカーサイオンと水素ラジカルの反応により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータを収録した化合物データベースと、
    前記第1プロダクトイオンスペクトルデータ及び/又は前記第2プロダクトイオンスペクトルデータを前記化合物データベースに収録されているプロダクトイオンスペクトルデータと照合することにより前記試料成分に対する化合物候補を推定する化合物推定部と
    を備える、請求項に記載の質量分析装置。
  11. 前記化合物推定部が、前記化合物候補について前記照合におけるスペクトルデータの一致度に基づくスコアを求める、請求項10に記載の質量分析装置。
  12. 前記化合物推定部が、前記判定部による判定結果に基づいて前記スコアに所定の値を加算する、請求項11に記載の質量分析装置。
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