JP7435812B2 - 質量分析方法及び質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析方法及び質量分析装置に関する。
高分子化合物である試料分子を同定したりその構造を解析したりするために、試料分子由来のイオンから特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別し、それを解離させてプロダクトイオン(フラグメントイオンとも呼ばれる。)を生成し、それらを質量電荷比に応じて分離し検出する質量分析法が広く利用されている。質量分析においてイオンを解離させる代表的な方法として、窒素ガス等の不活性ガス分子にプリカーサイオンを衝突させてそのエネルギーによって該プリカーサイオンを解離させる、衝突誘起解離(CID: Collision-Induced Dissociation)法が知られている。
CID法では不活性ガス分子との衝突エネルギーによってイオンを解離させるため、化学結合の種類などを問わず様々な種類のイオンを解離させることができる。例えば、試料分子由来のプリカーサイオンを解離させてそれよりも分子量が小さい複数種類のプロダクトイオンを生成し、各プロダクトイオンの質量電荷比から部分構造を推定することによって、全体の構造を推定することができる。その一方、CID法では、プリカーサイオンを解離させる部位の化学結合の種類の選択性が低い。例えば、タンパク質はペプチド結合を介して複数のアミノ酸が連なったものであり、ペプチド結合の位置で特異的に解離を生じさせることにより効率よく構造解析を行うことができるが、CID法ではそのような解離を生じさせることが難しい。また、試料分子が不飽和結合部位を有する炭化水素鎖を含む化合物である場合には、不飽和結合の位置で特異的に解離を生じさせることによって炭化水素鎖に含まれる不飽和結合の位置を特定することができるが、CID法ではそのような解離を生じさせることが難しい。
特許文献1及び2には、タンパク質由来のプリカーサイオンに水素ラジカル、酸素ラジカル等のラジカルを付着して不対電子誘導型の解離を生じさせることにより、プリカーサイオンをペプチド結合の位置で解離させることが記載されている。水素ラジカルを照射してプリカーサイオンを解離させる手法は水素付着解離(HAD: Hydrogen Attachment/Abstraction Dissociation)法、酸素ラジカルを照射してプリカーサイオンを解離させる手法は酸素付着解離(OAD: Oxygen Attachment/Abstraction Dissociation)法と呼ばれる。
また、特許文献3には、脂肪酸等の化合物由来のプリカーサイオンに対して酸素ラジカルやヒドロキシルラジカルを照射することにより、炭素原子の二重結合の位置でプリカーサイオンを解離させることが記載されている。
国際公開第2015/133259号 国際公開第2018/186286号 国際公開第2019/155725号
HAD法やOAD法といったラジカル照射による解離手法では試料分子由来のプリカーサイオンを特定の化学結合部位で解離させることができる一方、そうした化学結合部位以外の構造情報を得ることが難しい。例えば、リン脂質は、ヘッドグループと呼ばれる構造に脂肪酸が結合したものであり、ヘッドグループの構造に応じてホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)などと呼ばれるクラスに分類される。HAD法やOAD法を用いてリン脂質由来のプリカーサイオンを解離させると脂肪酸の構造解析に有用なプロダクトイオンが得られる一方、ヘッドグループの構造を特定可能なプロダクトイオンは生成されにくい。このように、従来、化合物の種類によっては構造の解析に十分な情報を得ることが難しい場合があった。
本発明が解決しようとする課題は、化合物の構造解析に有用な情報をより多く得ることができる質量分析方法及び質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析方法は、
試料分子由来のプリカーサイオンを衝突誘起解離及びラジカル付着解離させることによりプロダクトイオンを生成し、
前記プロダクトイオンを質量分離して検出することによりプロダクトイオンスペクトルデータを取得する
ものである。
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、
試料分子由来のプリカーサイオンが導入される反応室と、
前記反応室に衝突ガスを供給する衝突ガス供給部と、
前記反応室に水素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、及びヒドロキシルラジカルのうちのいずれかを供給するラジカル供給部と、
前記衝突ガス供給部及び前記ラジカル供給部の動作を制御することにより、前記反応室の内部で、前記プリカーサイオンを衝突誘起解離及びラジカル付着解離させてプロダクトイオンを生成する解離操作制御部と、
前記反応室から放出されるイオンを質量分離して検出するイオン検出部と、
前記イオン検出部による検出結果に基づいてスペクトルデータを生成するスペクトルデータ生成部と
を備える。
本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置では、試料分子由来のプリカーサイオンに対して、衝突(コリジョン)ガス分子との衝突により解離させる衝突誘起解離と、ラジカルの付着により解離させるラジカル付着解離の両方を実行する。衝突誘起解離とラジカル付着解離は、同時に行ってもよく、あるいは順番に行ってもよい。ラジカル付着解離では、目的とする解離の態様に応じて、例えば水素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、及びヒドロキルラジカルのうちのいずれかをプリカーサイオンに付着させる。ラジカル付着解離において使用するラジカル種は1種類に限らず、複数種類であってもよい。例えば原料ガスとして水蒸気を用いると酸素ラジカルとヒドロキルラジカルの両方を同時に生成してプリカーサイオンに付着させることができる。
本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置では、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されるプロダクトイオンとプリカーサイオンのラジカル付着解離により生成されるプロダクトイオンの両方が検出される。例えば、試料分子がリン脂質である場合、前者のプロダクトイオンからはヘッドグループの構造の推定に有用な情報が得られ、後者のプロダクトイオンからは脂肪酸の構造の推定に有用な情報が得られる。このように、本発明では、衝突誘起解離とラジカル付着解離の両方を行うため、一度の質量分析で化合物の構造解析に有用な情報をより多く得ることができる。
また、本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置では、上記のプロダクトイオンに加えて、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオンがさらにラジカル付着解離して生成されるプロダクトイオン、及び/又はプリカーサイオンのラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンがさらに衝突誘起解離して生成されるプロダクトイオンも検出されうる。これらのプロダクトイオンはいずれも、プリカーサイオンが2回解離して生成されるプロダクトイオンである。例えば、三連四重極型質量分析装置のように反応室としてコリジョンセルを使用する質量分析装置では、従来、プリカーサイオンを一度解離させてプロダクトイオンを生成して検出するMS/MS(MS2)分析のみが実行可能とされていたが、本発明を用いることにより、疑似的にMS3分析を実行することが可能になる。
本発明に係る質量分析装置の一実施例である実施例1の質量分析装置の概略構成図。 実施例1の質量分析装置におけるラジカル供給部の概略構成図。 実施例1の質量分析装置によりリン脂質由来のプリカーサイオンを解離することにより取得したプロダクトイオンスペクトル。 実施例1のシミュレーション解析モードにおいてリン脂質由来のプリカーサイオンを解離することにより取得したプロダクトイオンスペクトルの部分拡大図。 実施例1のシミュレーション解析モードにおいて作成される候補構造。 実施例1のシミュレーション解析モードにおける候補構造1について作成されたシミュレーションプロダクトイオンスペクトル。 実施例1のシミュレーション解析モードにおける候補構造2について作成されたシミュレーションプロダクトイオンスペクトル。 実施例1のスペクトル比較解析モードにおいてシガトキシン由来のプリカーサイオンを衝突誘起解離することにより取得したプロダクトイオンスペクトル。 実施例1のスペクトル比較解析モードにおいてシガトキシン由来のプリカーサイオンを水素ラジカル付着解離することにより取得したプロダクトイオンスペクトル。 実施例1のスペクトル比較解析モードにおいて衝突誘起解離とラジカル付着解離の割合が異なる複数の条件で得られるプロダクトイオンについて説明する図。 本発明に係る質量分析装置の一実施例である実施例2の質量分析装置の概略構成図。
本発明に係るイオン分析装置の実施例である、実施例1の質量分析装置1及び実施例2の質量分析装置2について、以下、図面を参照して説明する。
図1に実施例1の質量分析装置1の概略構成を示す。この質量分析装置1は、大別して質量分析装置本体と制御・処理部6で構成されている。
質量分析装置本体は、略大気圧であるイオン化室10と真空ポンプ(図示なし)により真空排気された高真空の分析室14との間に、段階的に真空度が高められた第1中間真空室11、第2中間真空室12、及び第3中間真空室13を備えた多段差動排気系の構成を有している。イオン化室10には、液体試料に電荷を付与して噴霧するエレクトロスプレイイオン化用プローブ(ESIプローブ)101が設置されている。ESIプローブ101には、液体試料を直接注入してもよく、液体クロマトグラフのカラムで液体試料に含まれる他の成分から分離した試料成分を導入してもよい。
イオン化室10と第1中間真空室11は細径の加熱キャピラリ102を通して連通している。第1中間真空室11には径が異なる複数のリング状の電極で構成されたイオンレンズ111が配置されている。第1中間真空室11と第2中間真空室12は頂部に小孔を有するスキマー112で隔てられている。第2中間真空室12には、イオン光軸Cを取り囲むように配置された複数のロッド電極で構成されたイオンガイド121が配置されている。
第3中間真空室13には、イオンを質量電荷比に応じて分離する四重極マスフィルタ131、多重極イオンガイド133を内部に備えたコリジョンセル132、及びコリジョンセル132から放出されたイオンを輸送するためのイオンガイド134が配置されている。イオンガイド134は同一径の複数のリング状の電極で構成されている。
コリジョンセル132には衝突ガス供給部4が接続されている。衝突ガス供給部4は、衝突ガス源41、該衝突ガス源41からコリジョンセル132にガスを導入するガス導入流路42、及び該ガス導入流路42を開閉するバルブ43を有している。衝突ガスには、例えば窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガスが用いられる。あるいは、後述する原料ガスを衝突ガスとして用いることもできる。原料ガスを衝突ガスとしても用いる場合には、原料ガス源56を衝突ガス源41としても使用すればよく、これらを個別に設ける必要はない。
また、コリジョンセル132には、ラジカル供給部5も接続されている。図2に示すように、ラジカル供給部5は、内部にラジカル生成室51が形成されたノズル54と、ラジカル生成室51を排気する真空ポンプ57と、ラジカル生成室51内で真空放電を生じさせるためのマイクロ波を供給する高周波電源53と、ラジカル生成室51内に原料ガスを供給する原料ガス源56と、該原料ガス源56からラジカル生成室51に至る流路を開閉するバルブ561とを備えている。
原料ガスには、目的とするプリカーサイオンの解離の形態に応じたラジカルを生成可能なものが用いられる。原料ガスは、例えば、水素ガス、酸素ガス、水蒸気、過酸化水素ガス、窒素ガス、あるいは空気が用いられる。水素ガスからは水素ラジカルが生成される。酸素ガスやオゾンガスからは酸素ラジカルが生成される。水蒸気からは酸素ラジカル及びヒドロキシルラジカルが生成される。過酸化水素ガスからは、酸素ラジカル、ヒドロキシラジカル、及び水素ラジカルが生成される。窒素ガスからは窒素ラジカルが生成される。空気からは、酸素ラジカル、ヒドロキシラジカル、窒素ラジカル、及び水素ラジカルが生成される。
ノズル54は、外周部を構成する接地電極541と、その内側に位置するトーチ542を備えており、該トーチ542の内部がラジカル生成室51となる。トーチ542には、例えばパイレックス(登録商標)ガラス製のものを用いることができる。ラジカル生成室51の内部では、コネクタ544を介して高周波電源53と接続されたニードル電極543がラジカル生成室51の長手方向に貫通している。図2では容量結合放電を利用したラジカル源としたが、誘導結合放電を利用したラジカル源を用いることもできる。
ノズル54の出口端には、ラジカル生成室51内で生成されたラジカルをコリジョンセル132に輸送するための輸送管58が接続されている。輸送管58は絶縁管であり、例えば石英ガラス管やホウケイ酸ガラス管を用いることができる。
輸送管58のうち、コリジョンセル132の壁面に沿って配設された部分には、複数のヘッド部581が設けられている。各ヘッド部581には傾斜したコーン状の照射口が設けられており、イオンの飛行方向の中心軸(イオン光軸C)と交差する方向にラジカルが照射される。これにより、コリジョンセル132の内部を飛行するイオンに対してまんべんなくラジカルを照射することができる。
また、別の実施形態では、コリジョンセル132の出口電極にイオンと逆極性の電圧を印加し、イオンを該出口電極の周辺に蓄積する。この場合は、該出口電極の周辺にラジカルを集中的に照射することにより、プリカーサイオンとラジカルの反応効率を高め、より多くのプロダクトイオンを生成し、検出強度を増加させることができる。あるいは、その逆にイオンをコリジョンセル132の入口電極の周辺に蓄積して、該入口電極の周辺にラジカルを照射することもできる。
上記のように、コリジョンセル132の出口電極の周辺にイオンを蓄積する場合には、コリジョンセル132の内部を飛行する間に衝突誘起解離(CID)したプロダクトイオンが出口電極の周辺に到達し、さらにそこでラジカル付着解離して、MS3相当(衝突誘起解離→ラジカル付着解離)のスペクトルが得られやすくなる。また、コリジョンセル132の入口電極の周辺でイオンを蓄積する場合には、該入口電極の周辺でラジカル付着解離したプロダクトイオンが、コリジョンセル132の内部を飛行する間にさらに衝突誘起解離(CID)して、MS3相当(ラジカル付着解離→衝突誘起解離)のスペクトルが得られやすくなる。このように、それぞれ特徴が異なるMS3相当スペクトルを相補的に構造解析に利用するために、コリジョンセル132の入口電極の周辺と出口電極の周辺にイオンを都度蓄積できるように、入口電極と出口電極にそれぞれイオンを蓄積する電場を適宜に切り替え可能に、またラジカルを照射するヘッド部581を選択(例えば各ヘッド部581を開閉)可能に構成することが好ましい。
分析室14には、第3中間真空室13から入射したイオンを直交加速部に輸送するためのイオン輸送電極141、イオンの入射光軸(直交加速領域)を挟んで対向配置された1組の電極1421、1422からなる直交加速電極142、該直交加速電極142により飛行空間に送出されるイオンを加速する加速電極143、飛行空間においてイオンの折り返し軌道を形成するリフレクトロン電極144、イオン検出器145、及び飛行空間の外縁を規定するフライトチューブ146を備えている。
制御・処理部6は、各部の動作を制御するとともに、イオン検出器145で得られたデータを保存及び解析する機能を有する。制御・処理部6の実体は、入力部7及び表示部8が接続された一般的なパーソナルコンピュータであり、その記憶部61には、測定条件を記載したメソッドファイルや化合物データベースなどが保存されている。
制御・処理部6は、また、機能ブロックとして、分析モード選択部62、解離操作制御部63、スペクトルデータ生成部64、候補構造作成部65、衝突誘起解離プロダクトイオン推定部66、ラジカル付着解離プロダクトイオン推定部67、構造推定部68、及びマスピーク強度比較部69を備えている。これらの機能ブロックは、予めパーソナルコンピュータにインストールされた質量分析プログラムを実行することにより具現化される。
次に、実施例1の質量分析装置1の動作を説明する。
使用者が分析対象試料をセットして分析開始を指示すると、分析モード選択部62は、「シミュレーション解析モード」と「スペクトル比較解析モード」の2つの分析モードを表示部8の画面に表示し、使用者に選択を促す。
まず、使用者が「シミュレーション解析モード」を選択した場合の分析の流れを説明する。ここでは、リン脂質(PC16:0/20:4)由来のプリカーサイオンを衝突ガスの分子との衝突により衝突誘起解離させるとともに酸素ラジカルを付着させることによりラジカル付着解離させてプロダクトイオンを生成する場合を例に説明する。なお、分析前の段階では、試料成分がリン脂質であることが分かっているものの、そのクラスや具体的な構造が不明である。そこで、リン脂質に含まれる炭化水素鎖の二重結合を選択的に解離させることが可能な酸素ラジカルによりラジカル付着解離を生じさせる。
シミュレーション解析モードが選択されると、解離操作制御部63は、以下のような手順でauto-MS/MS分析を実行する。
まず、真空ポンプ(図示略)を動作させ、第1中間真空室11、第2中間真空室12、第3中間真空室13、及び分析室14をそれぞれ質量分析のための所定の真空度まで排気する。また、真空ポンプ57を動作させてラジカル生成室51の内部をラジカル生成のための所定の真空度まで排気する。
次に、液体試料をESIプローブ101に導入してイオン化する。イオン化室10内で試料成分から生成されたイオンは、イオン化室10と第1中間真空室11の圧力差により該第1中間真空室11に引き込まれ、イオンレンズ111によりイオン光軸C上に収束される。イオン光軸C上に収束されたイオンは、続いて第1中間真空室11と第2中間真空室12の圧力差により該第2中間真空室12に引き込まれ、イオンガイド121によってさらに収束され、第3中間真空室13に引き込まれる。
最初の測定時には、四重極マスフィルタ131による質量分離、コリジョンセル132内での衝突誘起解離及びラジカル付着解離のいずれも行わず、液体試料から生成されたイオンをそのまま分析室14に導入する。
分析室14に進入したイオンは、直交加速電極142によって飛行方向が変更され、加速電極143により加速されて飛行空間に送出される。加速電極143で加速されたイオンは、その質量電荷比に応じた時間で折り返し軌道を飛行し、イオン検出器145で検出される。イオン検出器145による検出信号は順次、制御・処理部6に出力されて記憶部61に保存される。
スペクトルデータ生成部64は、イオン検出器145からの出力信号に基づいてスペクトルデータを生成する。ここでは試料成分から生成されたイオンを解離せず質量分離して検出したため、マススペクトル(MS1スペクトル)データが生成される。
MS1スペクトルデータが得られると、解離操作制御部63は、予め決められた条件に基づいて、MS/MS分析におけるプリカーサイオンを決定する。予め決められた条件とは、例えばマススペクトルデータにおいて最も強度が高いマスピークに対応するイオンであることである。本実施例のようにESIプローブ101により液体試料をイオン化すると、多くの場合、試料分子にプロトンが付加したイオンが最も高い強度で検出される。
MS/MS分析におけるプリカーサイオンが決定すると、再び液体試料をESIプローブ101に導入してイオン化する(最初の測定時から継続してESIプローブ101に液体試料を導入し続けてもよい)。液体クロマトグラフのカラムで成分分離した試料成分を測定する場合には、該カラムからの溶出時間(保持時間)の間にauto-MS/MS分析を実行する。イオン化室で生成されたイオンは上記同様に第1中間真空室11及び第2中間真空室12で収束され、第3中間真空室13に引き込まれる。
液体試料の導入と並行して、バルブ561を開放することによりラジカル生成室51にガス供給源52から原料ガス(酸素ラジカルを生成可能な種類のガス。例えば酸素ガス)を供給し、マイクロ波供給源531からマイクロ波を供給することによりラジカル生成室51の内部でラジカル(酸素ラジカル)を生成する。ラジカル生成室51で生成されたラジカルは輸送管58を通過し、ヘッド部581を通じてコリジョンセル132内に供給される。
また、解離操作制御部63は、バルブ43を開放し、衝突ガス源41から衝突ガス(例えば窒素ガス)をコリジョンセル132に導入する。
第3中間真空室13では、解離操作制御部63によって決定されたプリカーサイオンのみが四重極マスフィルタ131を通過する。四重極マスフィルタ131の出口端とコリジョンセル132の間にはプリカーサイオンを加速して衝突ガスに衝突させるエネルギー(CE: Collision Energy)を付与する所定の電位勾配が形成される。こうしてプリカーサイオンには加速エネルギーが付与されてコリジョンセル132に進入する。プリカーサイオンに付与されるエネルギーの大きさは、例えば1eV以上、好ましくは5eV以上、更に好ましくは10eV以上であって、典型的には100eV以下、最も高い場合でも30keV以下である。
コリジョンセル132では、プリカーサイオンと衝突ガス分子が衝突し、衝突誘起解離によってプロダクトイオンが生成される。また、これと並行して、プリカーサイオンに酸素ラジカルが付着して解離しプロダクトイオンが生成される。その結果、コリジョンセル132の内部では、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオンとラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンが混在した状態となる。所定時間経過後、2種類の解離によってプリカーサイオンから生成されたプロダクトイオンはコリジョンセル132から放出され、分析室14内の飛行空間において各イオンの質量電荷比に応じた飛行時間で分離されたあとイオン検出器145で検出される。
イオン検出器145の検出信号は、順次、制御・処理部6に出力され、記憶部61に保存される。スペクトルデータ生成部64は、記憶部61に保存されたイオン検出器145の検出信号に基づいてプロダクトイオンスペクトル(MS2スペクトル)データを生成し、そのスペクトルを表示部8の画面に表示する。図3に実際の測定で得られたプロダクトイオンスペクトルを示す。
図3に示すプロダクトイオンスペクトルでは、プリカーサイオンが解離せずそのまま検出されたマスピークと、CIDにより生成されたプロダクトイオンに由来するもう1本の別のマスピークが高強度で現れている。そして、これらのマスピークの間には、図4に拡大して示すような低強度のマスピークが多数、現れている。この解析モードでは、従来CIDとOADの両方を個別に実行しなければ得られなかったプロダクトイオンのマスピークが一度の測定で得られる。その一方、複雑なプロダクトイオンスペクトルのマスピークをそのまま解析し、各マスピークに対応する構造を同定して試料分子の構造を推定することは難しい。
プロダクトイオンスペクトルが作成されると、候補構造作成部65は、マススペクトル(MS1スペクトル)データからプリカーサイオン(典型的にはプロトン付加イオン)の精密質量(この例では782.569431Da)を求める。ここで、精密質量とは、その誤差が50ppm以下であることをいう。飛行時間型質量分離部を用いることにより、このような精密質量でイオンを測定することができる。そして、このような精密質量を用いることにより、該精密質量から組成式を絞り込むことが可能となる。
上記の通り、この分析例では、試料成分がリン脂質であることが分かっている。リン脂質は、グリセロールに2種の脂肪酸と、リン酸を含む極性基(ヘッドグループ)とが結合した基本構造を有する。また、極性基は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)など、複数種類の既知の構造のうちの1つであることが知られている。
候補構造作成部65は、プリカーサイオンの精密質量(782.569431Da)と上記リン脂質の基本構造の条件に基づいて試料成分であるリン脂質が採りうる構造を推定し、それぞれに対応する候補構造を作成する。以下、説明を容易にするために2つの候補構造のみについて説明する。図5に候補構造1(PC16:0/20:4)と候補構造2(PC14:0/22:4)の構造式を示す。以下に説明する手順は3つ以上の候補構造が作成される場合についても同様である。
候補構造が作成されると、衝突誘起解離プロダクトイオン推定部66は、各候補構造について衝突誘起解離によって生じうるプロダクトイオンを推定する。リン脂質の場合、衝突誘起解離によってsn-2位に結合している脂肪酸が脱離しやすいことが知られている(脱離側と残存側のいずれが検出されるかは極性基の種類によって異なる)。上記例では、極性基がいずれもフォスファチジルコリン(PC)であり、PCでは残存側が1価の正イオンとして検出されることが知られている。そこで、2つの候補構造のそれぞれについて、当該箇所の解離によって生成されるプロダクトイオンの質量電荷比を算出する。
また、ラジカル付着解離プロダクトイオン推定部67は、各候補構造についてラジカル誘起解離によって生じうるプロダクトイオンを推定する。この分析例では酸素ラジカルの付着によりプリカーサイオンを解離させている。特許文献3に記載の通り、酸素ラジカルは炭化水素鎖に含まれる炭素原子間の二重結合の位置でプリカーサイオンを特異的に解離させることが分かっている。そこで、上記2つの候補構造について、それぞれ炭化水素鎖の炭素原子間の二重結合の位置でプリカーサイオンを解離することにより生成されるプロダクトイオンの質量電荷比を算出する。
図6は候補構造1(PC16:0/20:4)について得られた衝突誘起解離プロダクトイオン(上段)とラジカル付着解離プロダクトイオン(下段)の質量電荷比に基づいて作成したシミュレーションプロダクトイオンスペクトルである。また、図7は候補構造2(PC14:0/22:4)について得られた衝突誘起解離プロダクトイオン(上段)とラジカル付着解離プロダクトイオン(下段)の質量電荷比に基づいて作成したシミュレーションプロダクトイオンスペクトルである。
全ての候補構造についてシミュレーションプロダクトイオンスペクトルが作成されると、構造推定部68は、測定により得られたプロダクトイオンスペクトルを各シミュレーションプロダクトイオンスペクトルと比較する。そして、マスピークの一致度に基づいて、いずれの候補構造のシミュレーションプロダクトイオンスペクトルが実測のプロダクトイオンスペクトルを再現しているかを判定する。その結果、構造推定部68は、図3及び図4の実測プロダクトイオンスペクトルと、図6(候補構造1)及び図7(候補構造2)のシミュレーションプロダクトイオンスペクトルのマスピークの位置(質量電荷比)の比較により、試料成分が候補構造1(PC16:0/20:4)であると推定する。
なお、図3及び図4に示した実測のプロダクトイオンスペクトルには、シミュレーションプロダクトイオンスペクトルにはないマスピークが含まれている。これらの中には、コリジョンセル132の内部でプリカーサイオンが衝突誘起解離し、続けて酸素ラジカル付着解離することにより生成されたプロダクトイオン、又はプリカーサイオンが酸素ラジカル付着解離し、続けて衝突誘起解離することにより生成したプロダクトイオンに由来するマスピークが含まれうる。コリジョンセル132においてプリカーサイオンを解離させる質量分析装置1では、従来、プリカーサイオンの解離により生成されるプロダクトイオン(MS2プロダクトイオン)しか測定することができなかったが、本実施例の質量分析装置1を用いることにより、MS2プロダクトイオンが更に解離して生成されるMS3プロダクトイオン相当のイオンを測定することが可能である。
次に、使用者が「スペクトル比較解析モード」を選択した場合の流れを説明する。ここでは、衝突誘起解離及び/又は水素ラジカル付着解離(HAD)によりシガトキシン由来のプリカーサイオンからプロダクトイオンを生成して分析する場合を例に説明する。
スペクトル比較解析モードが選択されると、さらに、単一解離操作の種別を使用者に選択させる画面を表示する。ここでは衝突誘起解離とラジカル付着解離のいずれかを選択することができる。
解離操作の種別が選択されると、まず、解離操作制御部63は上記同様の手順で各部を動作させてauto-MS/MS分析を実行する。解離操作制御部63による処理の流れは上記同様である。即ち、試料成分のマススペクトル(MS1スペクトル)データを取得し、予め決められた条件に基づいてMS/MS分析におけるプリカーサイオンを決定する。続いて、コリジョンセル132に衝突ガスを導入するとともに、ラジカル生成室51内に原料ガスを導入してラジカルを生成し、コリジョンセル132に導入する。衝突ガスとしては、衝突誘起解離ガスとして一般的に用いられる窒素ガス等の不活性ガスのほか、ラジカルを生成する原料ガスとなる水素ガスや水蒸気を用いる(即ち衝突ガスと原料ガスに同一のガスを用いる)こともできる。なお、上記の例と異なり、ここでは原料ガスとして水素ガスを使用して水素ラジカルを生成する。プリカーサイオンに付与するエネルギーの大きさも上記分析例と同様であり、例えば1eV以上、好ましくは5eV以上、更に好ましくは10eV以上であって、通常は100eV以下、最も高い場合でも30keV以下である。
解離操作制御部63によりMS/MSスペクトルデータが得られると、次に、使用者により選択された単一解離操作のみ(衝突誘起解離又はラジカル付着解離)を行ってMS/MSスペクトルデータを取得する。
図8に、単一解離操作として衝突誘起解離を選択した場合に得られるプロダクトイオンスペクトルを示す。図8に示すプロダクトイオンスペクトルから分かるように、衝突誘起解離では2種類のプロダクトイオンが高強度で生成されている。
図9に、単一解離操作として水素ラジカル付着解離を選択した場合に得られるプロダクトイオンスペクトルを示す。水素ラジカル付着解離では、分子内に多く含まれるエーテル結合の位置で解離が生じ、多数の種類のプロダクトイオンが生成されていることが分かる。
解離操作制御部6により得られるプロダクトイオンスペクトルには、図8に示すマスピークと図9に示すマスピークの両方が含まれることになるが、両者が混在した状態で各マスピークに対応するプロダクトイオンがいずれの解離によって生成されたものであるかを特定することは困難である。
スペクトル比較解析モードでは、マスピーク強度比較部69が、衝突誘起解離とラジカル付着解離の両方により生成されたプロダクトイオンのマスピークと、衝突誘起解離とラジカル付着解離のうちの一方のみにより生成されたプロダクトイオンのマスピークとを比較する。
使用者が単一解離操作として衝突誘起解離を選択した場合、図8に示すプロダクトイオンスペクトルが得られることになる。このプロダクトイオンスペクトルにおけるマスピークは衝突誘起解離により生成したプロダクトイオンのマスピークである。一方、衝突誘起解離と水素ラジカル付着解離の両方により生成されたプロダクトイオンのスペクトルには、水素ラジカル付着解離により生成されるプロダクトイオンのマスピークも現れる。つまり、これらのスペクトルの比較によって、前者に現れず後者に現れるマスピークは水素ラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンのマスピークであることが分かる。
このように、「スペクトル比較解析モード」では、衝突誘起解離とラジカル付着解離の両方により生成されたプロダクトイオンのスペクトルのマスピークと、衝突誘起解離とラジカル付着解離の一方のみにより生成されたプロダクトイオンのスペクトルのマスピークの情報から、衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオン対応するマスピークとラジカル付着解離により生成されたマスピークとを分離し、それぞれから試料分子の部分構造に関する情報を得ることができる。
また、「スペクトル比較解析モード」では、衝突誘起解離とラジカル付着解離の割合を変更した複数の条件でそれぞれプロダクトイオンスペクトルデータを取得し、両者を比較することもできる。例えば、コリジョンセル132内に導入する衝突ガスの量を増減したり、プリカーサイオンに付与する衝突エネルギーの大きさを増減したりすることによってラジカル付着解離に対する衝突誘起解離の割合を変更することができる。実施例1のようにコリジョンセル132を備えた質量分析装置では、四重極マスフィルタ131とコリジョンセル132の間の電位差を増減することにより衝突エネルギーの大きさを増減し、後述のイオントラップを備えた質量分析装置ではプリカーサイオンを励振させる大きさを増減することにより衝突エネルギーの大きさを増減することができる。また、コリジョンセル132(実施例1)やイオントラップ22(実施例2)に供給するラジカル量を変更して、衝突誘起解離に対するラジカル付着解離の割合を変更することもできる。
分析例として、衝突誘起解離(CID)と水素ラジカル付着解離(HAD)の割合を、10:0(条件1、CIDのみ)、5:5(条件2、併用)、0:10(条件3、HADのみ)の3通りに変化させてプロダクトイオンスペクトルを取得する例について説明する。説明を容易にするためにここでは3つの条件を使用する場合の例を説明するが、2つであってもよく、あるいは4つ以上であってもよい。なお、一方の解離手法のみを用いる(即ち一方の解離の割合が0である)条件を含むことは必須ではない。
条件1~3により得られるプロダクトイオンスペクトルの一例を図10に模式的に示す。条件1ではCIDプロダクトイオンのマスピークのみが現れ、条件3ではHADプロダクトイオンのマスピークのみが現れるため、これらに基づいて条件2のプロダクトイオンスペクトルのマスピークをCIDプロダクトイオンとHADプロダクトイオンのいずれかに帰属させることができる。
条件2のプロダクトイオンスペクトルには、条件1のプロダクトイオンスペクトルと条件3のプロダクトイオンスペクトルのいずれにも存在しないマスピークが現れる可能性がある。これは、プリカーサイオンが衝突誘起解離することにより生成されたプロダクトイオンが、更に水素ラジカル付着解離して生成されたプロダクトイオン、又は、プリカーサイオンが水素ラジカル付着解離することにより生成されたプロダクトイオンが、更に衝突誘起解離して生成されたプロダクトイオンであると考えられる。つまり、図3及び図4のプロダクトイオンスペクトルと同様に、スペクトル比較解析モードにおいても、MS2プロダクトイオンが更に解離して生成されるMS3プロダクトイオン相当のイオンを測定することが可能となる。
このように、実施例1の質量分析装置1では、シミュレーション解析モード、及びスペクトル比較解析モードによって、従来に比べて化合物の構造解析に有用な情報をより多く得ることができる。
実施例1ではコリジョンセル132においてプリカーサイオンを解離させる構成の質量分析装置1を使用したが、イオントラップを有する質量分析装置を用いることもできる。図11にイオントラップを備えた、実施例2の質量分析装置2の概略構成を示す。図1の質量分析装置1と共通する構成要素には同一の符号を付して適宜、説明を省略する。
実施例2の質量分析装置2は、真空雰囲気に維持される図示しない真空チャンバの内部に、試料中の成分をイオン化するイオン源201と、イオン源201で生成されたイオンを高周波電場の作用により捕捉するイオントラップ22と、イオントラップ22から射出されたイオンを質量電荷比に応じて分離する飛行時間型質量分離部24と、分離されたイオンを検出するイオン検出器245とを備えている。実施例2の質量分析装置2はさらに、イオントラップ22内に捕捉されているイオンを解離させるべく、イオントラップ22内に所定の種類の衝突ガスを供給する衝突ガス供給部4と、イオントラップ22内に捕捉されたプリカーサイオンにラジカルを照射するためのラジカル供給部5と、制御・処理部6を備えている。制御・処理部6の構成は質量分析装置1と同じであるため図示及び説明を省略する。
イオン源201には、実施例1と同様にESIプローブを用いることができる。また、実施例1と同様に、液体クロマトグラフのカラムで成分分離された試料成分を導入する構成を採ることもできる。あるいは、MALDIイオン源を用いることもできる。
イオントラップ22は、円環状のリング電極221と、該リング電極221を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極(入口側エンドキャップ電極222、出口側エンドキャップ電極224)とを含む三次元イオントラップである。リング電極221にはラジカル導入口226とラジカル排出口227が、入口側エンドキャップ電極222にはイオン導入孔223が、出口側エンドキャップ電極224にはイオン射出孔225が、それぞれ形成されている。リング電極221、入口側エンドキャップ電極222、及び出口側エンドキャップ電極224には、所定のタイミングで高周波電圧と直流電圧のいずれか一方又はそれらを合成した電圧が印加される。
ラジカル供給部5は、実施例1の質量分析装置1におけるラジカル供給部5と同様の構成を有している。ただし、質量分析装置2では、輸送管58を使用せず、スキマーコーン55を介してノズル54から直接ラジカルをイオントラップ22内に供給する。
衝突ガス供給部4は、実施例1の質量分析装置1における衝突ガス供給部4と同様の構成を有している。
実施例2の質量分析装置2においても、実施例1の質量分析装置1と同様のシミュレーション解析モード及びスペクトル比較解析モードを実行することができる。実施例2の質量分析装置2では、さらに実施例1と異なる手順でスペクトル比較解析モードの測定を実行することが可能である。この手順について、以下、説明する。
シミュレーション解析モードにおいて、使用者が単一解離操作の種別を選択すると、解離操作制御部63は各部を動作させてauto-MS/MS分析を実行する。ここでは、単一解離操作として衝突誘起解離が選択された場合を説明する。
解離操作制御部63は、イオン源201で生成されたイオンをイオントラップ22に捕捉し、捕捉したイオンの一部を放出して飛行時間型質量分離部24で質量分離したあとイオン検出器245で検出する。イオン検出器245による検出信号は順次、制御・処理部6に出力されて記憶部61に保存される。スペクトルデータ生成部64は、イオン検出器245からの出力信号に基づいてマススペクトル(MS1スペクトル)データを生成する。
MSスペクトルデータが得られると、解離操作制御部63は、予め決められた条件に基づいて、MS/MS分析におけるプリカーサイオンを決定する。ここでは、例えばマススペクトルデータにおいて最も強度が高いマスピークに対応するイオンをプリカーサイオンに決定する。
MS/MS分析におけるプリカーサイオンが決定すると、イオントラップ22の各電極に所定の直流電圧及び高周波電圧を印加してプリカーサイオン以外のイオンをイオントラップ22の外部に放出する。これにより、イオントラップ22の内部にプリカーサイオンのみを捕捉する。
プリカーサイオンの選別が完了すると、解離操作制御部63はバルブ43を開放し、衝突ガス源41から衝突ガス(例えば窒素ガス)をイオントラップ22内に導入する。そして、イオントラップ22の各電極に所定の直流電圧及び高周波電圧を印加してプリカーサイオンを励振する。この励振によりプリカーサイオンに衝突エネルギーが付与される。衝突エネルギーの大きさは、実施例1の質量分析装置1と同様に、例えば1eV以上、好ましくは5eV以上、更に好ましくは10eV以上であって、通常は100eV以下、最も高い場合でも30keV以下である。
イオントラップ22の内部で励振されたプリカーサイオンは衝突ガスとの衝突により衝突誘起解離し、それによりプロダクトイオンが生成される。所定時間、プリカーサイオンを励振して衝突誘起解離を生じさせた後、生成されたプリカーサイオンの一部をイオントラップ22から飛行時間型質量分離部24に放出し、質量分離してイオン検出器245で検出する。イオン検出器245による検出信号は順次、制御・処理部6に出力されて記憶部61に保存される。スペクトルデータ生成部64は、イオン検出器245からの出力信号に基づいてプロダクトイオンスペクトル(MS2スペクトル)データを生成する。
イオントラップ22で生成されたプロダクトイオンの一部を放出したあと、解離操作制御部63は、バルブ561を開放することによりラジカル生成室51にガス供給源52から原料ガスを供給し、マイクロ波供給源531からマイクロ波を供給することによりラジカル生成室51の内部でラジカルを生成する。ラジカル生成室51で生成されたラジカルはスキマーコーン55を通過してイオントラップ22内に供給される。
このとき、イオントラップ22内には、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオンが捕捉されている。イオントラップ22に供給されたラジカルは、これらのプロダクトイオンに付着して更なる解離(ラジカル付着解離)を生じさせる。これにより、MS3相当のプロダクトイオンが生成される。
イオントラップ22に所定時間、ラジカルを供給すると、解離操作制御部6は、イオントラップ22内のイオン(未解離のプリカーサイオン、衝突誘起解離したMS2プロダクトイオン、及び衝突誘起解離及びラジカル付着解離したMS3相当のプロダクトイオン)を放出し、飛行時間型質量分離部24において質量分離し、イオン検出器245で検出する。イオン検出器245による検出信号は順次、制御・処理部6に出力されて記憶部61に保存される。スペクトルデータ生成部64は、イオン検出器245からの出力信号に基づいてプロダクトイオンスペクトル(MS3スペクトル)データを生成する。
上記一連の処理により、MS2スペクトルデータとMS3スペクトルデータが得られる。これらのスペクトルデータからは、例えば図10の上段に示したマススペクトルと中段に示したマススペクトルを得ることができる。従って、実施例1の質量分析装置1と同様に、これらのスペクトルに現れたマスピークの比較により試料成分の分子構造に関する情報を得ることができる。
実施例1の質量分析装置1では、MS1スペクトルデータ、MS2スペクトルデータ、及びMS3スペクトルデータを取得するために、それぞれ液体試料を導入し、個別に質量分析を行う必要があったのに対し、実施例2の質量分析装置2では、一連の測定でこれら3種のマススペクトルデータを得ることができる。
上記の実施例1及び実施例2はいずれも一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。上記実施例1及び2では、シミュレーション解析モードとスペクトル比較解析モードの両方を実行可能とするために、イオンの精密質量を測定することが可能な質量分離部を使用したが、スペクトル比較解析モードのみを行う場合は精密質量を測定する必要がない。従って、例えば三連四重極型の質量分析装置や、イオントラップのみを質量分離部として使用する質量分析装置を用いることができる。また、イオンの精密質量を測定可能な質量分析装置としては、上記実施例1及び2に記載のもののほか、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FT-ICR)や電場型フーリエ変換質量分析計(Orbitrap)などを用いることもできる。
また、上記実施例では水素ラジカルや酸素ラジカルによりラジカル付着解離を生じさせる場合を説明したが、目的とする解離の形態に応じて他の種類のラジカル(例えばヒドロキシラジカルや窒素ラジカル)を用いてラジカル付着解離を生じさせることもできる。
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)
一態様に係る質量分析方法は、
試料分子由来のプリカーサイオンを衝突誘起解離及びラジカル付着解離させることによりプロダクトイオンを生成し、
前記プロダクトイオンを質量分離して検出することによりプロダクトイオンスペクトルデータを取得する
ものである。
(第2項)
また、別の一態様に係る質量分析装置は、
試料分子由来のプリカーサイオンが導入される反応室と、
前記反応室に衝突ガスを供給する衝突ガス供給部と、
前記反応室に水素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、及びヒドロキシルラジカルのうちのいずれかを供給するラジカル供給部と、
前記衝突ガス供給部及び前記ラジカル供給部の動作を制御することにより、前記反応室の内部で、前記プリカーサイオンを衝突誘起解離及びラジカル付着解離させてプロダクトイオンを生成する解離操作制御部と、
前記反応室から放出されるイオンを質量分離して検出するイオン検出部と、
前記イオン検出部による検出結果に基づいてスペクトルデータを生成するスペクトルデータ生成部と
を備える。
第1項に記載の質量分析方法及び第2項に記載の質量分析装置では、試料分子由来のプリカーサイオンに対して、衝突ガス分子との衝突により解離させる衝突誘起解離と、ラジカルの付着により解離させるラジカル付着解離の両方を実行する。ラジカル付着解離では、目的とする解離の態様に応じて、例えば水素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、及びヒドロキルラジカルのうちのいずれかをプリカーサイオンに付着させる。ラジカル付着解離において使用するラジカル種は1種類に限らず、複数種類であってもよい。例えば原料ガスとして水蒸気を用いると酸素ラジカルとヒドロキルラジカルの両方を同時に生成してプリカーサイオンに付着させることができる。第1項に記載の質量分析方法及び第2項に記載の質量分析装置では、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されるプロダクトイオンとプリカーサイオンのラジカル付着解離により生成されるプロダクトイオンの両方が検出される。例えば、試料分子がリン脂質である場合、前者のプロダクトイオンからはヘッドグループの構造の推定に有用な情報が得られ、後者のプロダクトイオンからは脂肪酸の構造の推定に有用な情報が得られる。このように、第1項に記載の質量分析方法及び第2項に記載の質量分析装置では、衝突誘起解離とラジカル付着解離の両方を行うため、一度の質量分析で化合物の構造解析に有用な情報をより多く得ることができる。
また、第1項に記載の質量分析方法及び第2項に記載の質量分析装置では、上記のプロダクトイオンに加えて、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオンがさらにラジカル付着解離して生成されるプロダクトイオン、及びプリカーサイオンのラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンがさらに衝突誘起解離して生成されるプロダクトイオンも検出されうる。これらのプロダクトイオンはいずれも、プリカーサイオンが2回解離して生成されるプロダクトイオンである。例えば、三連四重極型質量分析装置のように反応室としてコリジョンセルを使用する質量分析装置では、従来、プリカーサイオンを一度解離させてプロダクトイオンを生成し検出するMS/MS分析のみが実行可能とされていたが、第1項に記載の質量分析方法又は第2項に記載の質量分析装置を用いることにより、疑似的にMS3分析を実行することが可能になる。
(第3項)
第2項に記載の質量分析装置において、
前記ラジカル供給部が、水素ガス、酸素ガス、水蒸気、過酸化水素ガス、窒素ガス、及び空気のいずれかからラジカルを生成する。
第3項に記載の質量分析装置では、入手が容易な原料ガスを用いて簡便にラジカルを生成することができる。
(第4項)
第2項又は第3項に記載の質量分析装置において、
前記イオン検出部がイオンの質量を50ppm以上の精度で測定するものであり、
前記解離操作制御部が、前記試料分子から生成されたイオンを開裂させることなく前記イオン検出で検出した強度に基づいてプリカーサイオンを決定し、
さらに、
前記プリカーサイオンの質量に基づいて、前記試料分子の組成式を推定し、該組成式に基づいて前記試料分子の候補構造を作成する候補構造作成部と、
前記候補構造の衝突誘起解離により生じるプロダクトイオンを推定する衝突誘起解離プロダクトイオン推定部と、
前記候補構造のラジカル付着解離により生じるプロダクトイオンを推定するラジカル付着解離プロダクトイオン推定部と、
前記衝突誘起解離プロダクトイオン推定部により推定されたプロダクトイオンの質量電荷比及び前記ラジカル付着解離プロダクトイオン推定部により推定されたプロダクトイオンの質量電荷比を前記プロダクトイオンスペクトルデータに含まれるマスピークの質量電荷比と比較することにより、前記試料分子の構造を推定する構造推定部と
を備える。
第4項に記載の質量分析装置では、50ppm以上の高い精度でプリカーサイオンの質量を求めることにより試料分子の組成式を絞り込む。そして、該組成式に対応する候補構造について衝突誘起解離とラジカル付着解離のそれぞれにより生じうるプロダクトイオンを推定する。そして、実際の測定で取得したプロダクトイオンのマスピークと、シミュレーションにより作成した各候補構造に対応するプロダクトイオンスペクトルのマスピークを比較することにより、試料成分が候補構造のいずれであるかを推定することができる。
(第5項)
第2項又は第3項に記載の質量分析装置において、
前記解離操作制御部が、さらに、前記反応室の内部で、前記衝突誘起解離と前記ラジカル付着解離のうちの一方の解離操作のみにより前記プリカーサイオンを解離させてプロダクトイオンを生成するものであり、
さらに、
前記一方の解離操作により生成されたプロダクトイオンの検出結果に基づいて作成されたプロダクトイオンスペクトルデータに含まれるマスピークの強度と、前記衝突誘起解離及びラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンの検出結果に基づいて作成されたプロダクトイオンスペクトルデータに含まれるマスピークの強度とを比較するマスピーク強度比較部
を備える。
第5項に記載の質量分析装置では、衝突誘起解離とラジカル付着解離のうちの一方の解離操作のみにより生成したプロダクトイオンのスペクトルデータと、衝突誘起解離とラジカル付着解離の両方により生成したプロダクトイオンのスペクトルデータを比較することで、後者のプロダクトイオンのスペクトルに現れるマスピークがいずれの解離に起因するものであるかを推定することができる。
(第6項)
第2項から第5項のいずれかに記載の質量分析装置において、
前記解離操作制御部が、前記衝突誘起解離と前記ラジカル付着解離を同時に実行する。
第6項に記載の質量分析装置では、プリカーサイオンの衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオンが更にラジカル付着解離して生成されたプロダクトイオン、あるいは、プリカーサイオンのラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンが更に衝突誘起解離して生成されたプロダクトイオンを測定することができる。つまり、一度の質量分析によりMS3相当のプロダクトイオンを測定することができる。
(第7項)
第6項に記載の質量分析装置において、
前記反応室がコリジョンセルである。
第6項に記載の質量分析装置を、反応室としてコリジョンセルを使用する第7項に記載の質量分析装置とすることで、従来得られなかったようなMS3相当のプロダクトイオンスペクトルを取得することができる。
(第8項)
第2項から第5項のいずれかに記載の質量分析装置において、
前記解離操作制御部が、前記衝突誘起解離と前記ラジカル付着解離のうちの一方を実行し、続いて他方を実行することにより前記プリカーサイオンを衝突誘起解離及びラジカル付着解離させる。
第8項に記載の質量分析装置では、衝突誘起解離とラジカル付着解離のうちの一方を実行し、続いて他方を実行する。それぞれの解離操作を行った時点でプロダクトイオンの強度を測定することにより、衝突誘起解離とラジカル付着解離に起因するマスピークを簡便に帰属させることができる。
(第9項)
第2項から第5項のいずれかに記載の質量分析装置において、
前記解離操作制御部が、前記衝突誘起解離と前記ラジカル付着解離の相対的な強度が異なる複数の条件で前記プリカーサイオンからプロダクトイオンを生成し、
前記スペクトルデータ生成部が、前記複数の条件のそれぞれについてプロダクトイオンスペクトルデータを生成する。
第9項に記載の質量分析装置では、前記衝突誘起解離と前記ラジカル付着解離の相対的な強度が異なる複数の条件で取得したプロダクトイオンスペクトルのマスピークの強度を比較することで、衝突誘起解離により生成されたプロダクトイオンに対応するマスピーク、ラジカル付着解離により生成されたプロダクトイオンに対応するマスピーク、及び衝突誘起解離とラジカル付着解離の2段階の解離により生成されたプロダクトイオンに対応するマスピークをそれぞれ同定することができる。
(第10項)
第2項から第6項、第8項、及び第9項のいずれかに記載の質量分析装置において、
前記反応室がイオントラップである。
第9項に記載の構成は、第10項に記載のように、イオントラップを反応室として備えた質量分析装置において実施することができる。
1、2…質量分析装置
10…イオン化室
101…ESIプローブ
11…第1中間真空室
111…イオンレンズ
12…第2中間真空室
121…イオンガイド
13…第3中間真空室
131…四重極マスフィルタ
132…コリジョンセル
133…多重極イオンガイド
134…イオンガイド
14…分析室
141…イオン輸送電極
142…直交加速電極
143…加速電極
144…リフレクトロン電極
145…イオン検出器
146…フライトチューブ
201…イオン源
22…イオントラップ
221…リング電極
222…入口側エンドキャップ電極
224…出口側エンドキャップ電極
24…飛行時間型質量分離部
245…イオン検出器
4…衝突ガス供給部
41…衝突ガス源
42…ガス導入流路
43…バルブ
5…ラジカル供給部
51…ラジカル生成室
52…ガス供給源
53…高周波電源
54…ノズル
55…スキマーコーン
56…原料ガス源
561…バルブ
57…真空ポンプ
58…輸送管
581…ヘッド部
6…制御・処理部
61…記憶部
62…分析モード選択部
63…解離操作制御部
4…スペクトルデータ生成部
65…候補構造作成部
66…衝突誘起解離プロダクトイオン推定部
67…ラジカル付着解離プロダクトイオン推定部
68…構造推定
69…マスピーク強度比較部
7…入力部
8…表示部

Claims (6)

  1. 試料分子由来のプリカーサイオンに対する衝突誘起解離操作とラジカル付着解離操作を同時に実行してプロダクトイオンを生成する第1操作と、前記プリカーサイオンに対する前記衝突誘起解離操作のみを実行して衝突誘起解離-MS プロダクトイオンを生成する第2操作と、前記プリカーサイオンに対する前記ラジカル付着解離操作のみを実行してラジカル付着解離-MS プロダクトイオンを生成する第3操作とを実行し、該第1操作、該第2操作、及び該第3操作のそれぞれの実行中に前記プロダクトイオンを質量分離して検出することによりそれぞれのプロダクトイオンスペクトルデータを取得し、
    前記第1操作により得られたプロダクトイオンスペクトルデータに含まれるマスピークのうち、前記第2操作により得られたスペクトルデータにも共通して現れるマスピークを衝突誘起解離-MS プロダクトイオンに帰属させ、前記第3操作により得られたプロダクトイオンスペクトルデータにも共通して現れるマスピークをラジカル付着解離-MS プロダクトイオンに帰属させ、前記第2操作により得られたプロダクトイオンスペクトルデータと前記第3操作により得られたプロダクトイオンスペクトルデータのいずれにも現れないマスピークを衝突誘起解離及びラジカル付着解離-MS プロダクトイオンに帰属させる
    ものである、質量分析方法。
  2. 試料分子由来のプリカーサイオンが導入される反応室と、
    前記反応室に衝突ガスを供給する衝突ガス供給部と、
    前記反応室に水素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、及びヒドロキシルラジカルのうちのいずれかを供給するラジカル供給部と、
    前記衝突ガス供給部及び前記ラジカル供給部の動作を制御することにより、前記反応室の内部で、前記プリカーサイオンに対する衝突誘起解離操作とラジカル付着解離操作を同時に実行してプロダクトイオンを生成する第1操作と、前記プリカーサイオンに対する前記衝突誘起解離操作のみを実行して衝突誘起解離-MS プロダクトイオンを生成する第2操作と、前記プリカーサイオンに対する前記ラジカル付着解離操作のみを実行してラジカル付着解離-MS プロダクトイオンを生成する第3操作とを実行する解離操作制御部と、
    前記第1操作、前記第2操作、及び前記第3操作のそれぞれの実行中に前記反応室から放出されるイオンを質量分離して検出するイオン検出部と、
    前記第1操作、前記第2操作、及び前記第3操作のそれぞれについて、前記イオン検出部による検出結果に基づいてスペクトルデータを生成するスペクトルデータ生成部と
    前記第1操作により得られたスペクトルデータに含まれるマスピークのうち、前記第2操作により得られたスペクトルデータにも共通して現れるマスピークを衝突誘起解離-MS プロダクトイオンに帰属させ、前記第3操作により得られたスペクトルデータにも共通して現れるマスピークをラジカル付着解離-MS プロダクトイオンに帰属させ、前記第2操作により得られたスペクトルデータと前記第3操作により得られたスペクトルデータのいずれにも現れないマスピークを衝突誘起解離及びラジカル付着解離-MS プロダクトイオンに帰属させるマスピーク比較部と
    を備える質量分析装置。
  3. 前記ラジカル供給部が、水素ガス、酸素ガス、水蒸気、過酸化水素ガス、窒素ガス、及び空気のいずれかからラジカルを生成する、請求項2に記載の質量分析装置。
  4. 前記反応室がコリジョンセルである、請求項2に記載の質量分析装置。
  5. 前記解離操作制御部が、前記衝突誘起解離と前記ラジカル付着解離の相対的な強度が異なる複数の条件で前記プリカーサイオンからプロダクトイオンを生成し、
    前記スペクトルデータ生成部が、前記複数の条件のそれぞれについてプロダクトイオンスペクトルデータを生成する、請求項2に記載の質量分析装置。
  6. 前記反応室がイオントラップである、請求項2に記載の質量分析装置。
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