以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
実施の形態1.
<全体構成>
図1は、実施の形態1に従うレーザ光発生装置の構成を示す回路ブロック図である。図1において、このレーザ光発生装置は、複数(この例では3つ)の電源部PS1~PS3、複数のリアクトルL1~L3、複数の直流正母線PL1~PL3、複数の直流負母線NL1~NL3、電流検出器CD1~CD3、複数の電流経路切換回路CS1~CS3、複数のLDモジュールM1~M3、コンバイナ1、パワー検出器2、操作部3、および制御装置4を備える。
電源部PS1~PS3の正電極は、それぞれリアクトルL1~L3の一方端子に接続される。リアクトルL1~L3の他方端子は、それぞれ直流正母線PL1~PL3の一方端に接続される。直流正母線PL1~PL3の他方端は、それぞれLDモジュールM1~M3のアノード端子に接続される。
LDモジュールM1~M3のカソード端子は、接地電圧GNDのラインに接続されるとともに、それぞれ直流負母線NL1~NL3の一方端に接続される。直流負母線NL1~NL3の他方端は、それぞれ電源部PS1~PS3の負電極に接続される。
電源部PS1~PS3は、それぞれ制御装置4から供給される制御信号CNT1~CNT3に同期して動作し、電流I1~I3を出力する。なお、以下では、電源部PS1~PS3を包括的に「電源部PS」と称し、制御信号CNT1~CNT3を包括的に「制御信号CNT」と称し、電流I1~I3を包括的に「電流I」と称する場合がある。
具体的には、電源部PSは、交流電源5からの三相交流電圧を全波整流して直流電圧に変換し、その直流電圧を制御信号CNTのデューティ比に応じた振幅の交流電圧に変換し、その交流電圧を全波整流して電流Iを出力する。
リアクトルL1~L3は、それぞれ電流I1~I3を平滑化する。電流経路切換回路CS1~CS3が非導通状態のとき、電流検出器CD1~CD3は、それぞれ直流正母線PL1~PL3に流れる電流I1~I3を検出し、検出値を示す信号φI1~φI3を制御装置4に出力する。
電流経路切換回路CS1~CS3の一方端子は、それぞれ電流正母線PL1~PL3に接続され、それらの他方端子は、それぞれ電流負母線NL1~NL3に接続される。電流経路切換回路CS1~CS3は、制御装置4からそれぞれビームオン信号B1~B3を受ける。ビームオン信号B1が非活性化レベルの「L」レベルである場合には、電流経路切換回路CS1の端子間が導通状態になる。ビームオン信号B1が活性化レベルの「H」レベルである場合には、電流経路切換回路CS1の端子間が非導通状態になる。電流経路切換回路CS2,CS3についても同様である。
LDモジュールM1~M3の各々は、アノード端子およびカソード端子間に直列接続された少なくとも1つ(この例では3つ)のLDを含む。LDモジュールM1~M3は、それぞれ電流IM1~IM3によって駆動され、それぞれレーザ光α1~α3を出力する。電流経路切換回路CS1の端子間が導通状態である場合には、LDモジュールM1の駆動電流IM1~IM3は0Aとなる。電流経路切換回路CS1の端子間が非導通状態である場合には、LDモジュールM1の駆動電流IM1は電流I1となる。LDモジュールM2,M3の駆動電流IM2,IM3についても同様である。
コンバイナ1は、LDモジュールM1~M3からのレーザ光α1~α3を集め、1つのレーザ光βとして出力する。パワー検出器2は、コンバイナ1の出力レーザ光βのパワーPを検出し、検出値を示す信号φPを出力する。レーザ光βのパワーPは、ワットやジュール等の単位で表されるものである。
操作部3は、たとえば、レーザ光発生装置の使用者によって操作される複数のボタン、種々の情報を表示する表示装置や数値制御装置等を含む。レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、レーザ光βの出力タイミングを示すビームオン信号BONの波形をセットする。ビームオン信号BONは、矩形波信号、三角波、正弦波等の信号である。ビームオン信号BONが「H」レベルである場合にレーザ光βが出力され、ビームオン信号BONが「L」レベルである場合にレーザ光βの出力が停止される。
また、レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、レーザ光βのパワーを示すレーザ出力設定値Pcをセットする。レーザ出力設定値Pcは一定値でもよいし、ビームオン信号BONに同期して変化する値であっても構わない。ビームオン信号BONの波形およびレーザ出力設定値Pcは、操作部3内の記憶部(図示せず)に記憶される。たとえば、レーザ光発生装置の使用者が操作部3に含まれる出力開始ボタンをオンすると、ビームオン信号BONおよびレーザ出力設定値Pcが記憶部(図示せず)から読み出されて制御装置4に出力される。
制御装置4は、電流検出器CD1~CD3からの信号φI1~φI3と、パワー検出器2からの信号φPと、操作部3からのレーザ出力設定値Pcおよびビームオン信号BONとに基づいて、制御信号CNT1~CNT3およびビームオン信号B1~B3を生成する。
ビームオン信号BONが「H」レベルである場合、制御装置4は、ビームオン信号B1~B3を「H」レベルにするとともに、パワー検出器2の出力信号φPがレーザ出力設定値Pcになるように制御信号CNT1~CNT3を生成する。ビームオン信号BONが「L」レベルである場合、制御装置4は、ビームオン信号B1~B3を「L」レベルにするとともに、制御信号CNT1~CNT3の生成を停止する。
制御信号CNTは、たとえばパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号である。この場合、制御信号CNTの周波数(スイッチング周波数)は一定であり、そのデューティ比は制御可能になっている。デューティ比は、制御信号CNTの1周期内で制御信号CNTが「H」レベルにされる時間と1周期との比である。制御信号CNT1のデューティ比は、電流指令値Ic1と電流検出器CD1との検出値の偏差がなくなるように制御される。なお、以下では、電流指令値Ic1~Ic3を包括的に「電流指令値Ic」と称し、電流検出器CD1~CD3を包括的に「電流検出器CD」と称する場合がある。
制御装置4は、制御信号CNT1~CNT3のパルスの位相を60度ずつずらす。これにより、LDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3のリップルの位相が120度ずつずれ、レーザ光α1~α3に含まれるリップルの位相が120度ずつずれる。その結果、レーザ光α1~α3に含まれるリップルが互いに打ち消し合い、レーザ光βに含まれるリップルが低減する。
なお、制御信号CNTは、パルス周波数変調(Pulse Frequency Modulation:PFM)信号であっても構わない。この場合、制御信号CNTのパルス幅(「H」レベルである時間)は一定であり、その周期(すなわち周波数)は制御可能になっている。そのため、制御信号CNTの周期(すなわち周波数)が変化すると、そのデューティ比が変化する。制御信号CNTの周波数は、電流指令値Icと電流検出器CDの検出値の偏差がなくなるように制御される。
また、図1では、電源部PS、リアクトルL、電流検出器CD、電流経路切換回路CS、およびLDモジュールMが3組設けられた場合が示されているが、3組に限るものではなく、2組でもよいし、4組以上でも構わない。また、交流電源5は、たとえば100V~480Vの交流電圧を電源部PS1~PS3に供給する。交流電源5は、三相交流電源でも単相交流電源でも構わない。交流電源5は、商用交流電源でもよいし、自家用発電機でもよい。以下、レーザ光発生装置の各構成要素について詳細に説明する。
<制御装置4>
図2は、制御装置4の構成を示すブロック図である。図2において、制御装置4は、複数の電源部PS1~PS3にそれぞれ対応する複数の制御部11~13を含む。制御部11~13は、通信ケーブルのような通信回線14によって互いに接続されており、互いに情報を授受し、互いに同期して動作する。制御部11~13は、電源部PSの台数Nが3であることを検知し、制御信号CNT1~CNT3のパルスの位相を180/N=60度ずつずらすことを決定する。
制御部11は、電流検出器CD1からの信号φI1、パワー検出器2からの信号φP、操作部3からのレーザ出力設定値Pcおよびビームオン信号BONに基づいて、制御信号CNT1およびビームオン信号B1を生成する。
制御部12は、電流検出器CD2からの信号φI2、パワー検出器2からの信号φP、操作部3からのレーザ出力設定値Pcおよびビームオン信号BONに基づいて、制御信号CNT2およびビームオン信号B2を生成する。制御信号CNT2のパルスの位相は、制御信号CNT1のパルスの位相よりも60度遅れている。
制御部13は、電流検出器CD3からの信号φI3、パワー検出器2からの信号φP、操作部3からのレーザ出力設定値Pcおよびビームオン信号BONに基づいて、制御信号CNT3およびビームオン信号B3を生成する。制御信号CNT3のパルスの位相は、制御信号CNT2のパルスの位相よりも60度遅れている。
制御部11~13の機能は、それぞれ処理回路15~17を用いて実現できる。ここでいう処理回路15~17は、専用処理回路のような専用のハードウェアや、プロセッサおよび記憶装置のことをいう。専用のハードウェアを利用する場合、専用処理回路は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御部11~13の機能を、まとめて1つの処理回路で実現してもよい。
プロセッサおよび記憶装置を利用する場合、上記の各機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組合せにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、記憶装置に記憶される。プロセッサは記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これらのプログラムは、上記の各機能を実現する手順および方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。
記憶装置は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory(登録商標))といった半導体メモリが該当する。半導体メモリは、不揮発性メモリでもよいし揮発性メモリでもよい。また、記憶装置は、半導体メモリ以外にも、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)が該当する。
図3は、制御部11の構成を示すブロック図である。図3において、制御部11は、通信/演算部21、記憶部22、指令部23、電流制御部24を含む。通信/演算部21は、通信回線14を介して他の制御部12,13と通信し、運転する電源部PSの台数Nと、対応する制御信号CNT1の位相角度θ1とを求め、台数Nおよび位相角度θ1をそれぞれ指令部23および電流制御部24に与える。
ここでは、運転する電源部PSの台数Nは3である。また、対応する電源部PSの番号をnとすると、位相角度θnは、θn=180×(n-1)/Nによって算出される。制御部11に対応する電源部PS1の番号nは1であるので、θ1=0度となる。なお、制御信号CNT2の位相角度θ2は60度となり、制御信号CNT3の位相角度θ3は120度となる。
記憶部22には、対応するLDモジュールM1のレーザ出力の分担率SR1が予め格納されている。ここでは、SR1=1/Nである。なお、LDモジュールM2,M3のレーザ出力の分担率SR1,SR3も1/Nである。したがって、本実施の形態1では、LDモジュールM1~M3のレーザ出力の分担率SR1~SR3は、ともに1/N=1/3である。
指令部23は、パワー検出器2の出力信号φPによって示される出力レーザ光βのパワーPに分担率SR1=1/3を乗じて得られる値P/3が、レーザ出力設定値Pcに分担率SR1=1/3を乗じて得られる値Pc/3になるように電流指令値Ic1を生成するとともに、ビームオン信号BONに対して遅延したビームオン信号B1を生成する。ビームオン信号B1は電流経路切換回路CS1に与えられ、電流指令値Ic1は電流制御部24に与えられる。
電流制御部24は、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が電流指令値Ic1になるように、制御信号CNT1を生成する。制御信号CNT1のパルスの位相角度θ1は、上述した通り0度である。制御信号CNT1のデューティ比は、電流I1と電流指令値Ic1の偏差がなくなるように制御される。すなわち、電流制御部24は、I1>Ic1である場合には制御信号CNT1のデューティ比を減少させ、I1<Ic1である場合には制御信号CNT1のデューティ比を増大させる。これにより、電流I1は電流指令値Ic1に制御される。他の制御部12,13の各々の構成は、制御部11の構成と同様である。
なお、パワー検出器2の出力信号φPを用いずに、レーザ出力設定値Pcのみから電流指令値Icを決定してもよい。すなわち、電流指令値Icをレーザ出力設定値Pcのみから決定する場合、LDモジュールM1~M3(以下、包括的に「LDモジュールM」と称する場合がある。)の電流-パワー特性(I-P特性)に基づき、レーザ出力設定値Pcから電流指令値Icを決定する。I-P特性は、データシート等に記載されているものでもよいし、事前に測定したものでもよい。また、I-P特性は、記憶部22に記憶されていてもよい。I-P特性が記憶部22に記憶されることにより、I-P特性から電流指令値Icを決定することができる。
この場合、パワー検出器2や、パワー検出器2の周辺回路が不要となるので、装置の低コスト化を図ることができる。しかしながら、LDモジュールMの劣化やI-P特性のばらつき等により、電流指令値Icと同じ大きさの電流がLDモジュールM1に流れても、レーザ出力設定値Pcと異なるパワーPのレーザ光βが出力される恐れがある。
電流指令値Icをレーザ出力設定値Pcとパワー検出器2の出力信号φPとを用いて決定する場合、現状のLDモジュールMのI-P特性に基づき、レーザ出力設定値Pcから電流指令値Ic1を決定する。ここで、現状のLDモジュールMのI-P特性とは、LDモジュールMを駆動したときのパワー検出器2の出力信号φPと電流検出器CDの検出値、もしくはパワー検出器2の出力信号φPと電流指令値Icから得られる、LDモジュールMの駆動電流IMに対するレーザ出力の特性のことである。
このとき、LDモジュールMの劣化やI-P特性のばらつき等があっても、レーザ出力設定値Pcと同じパワーのレーザ光βを得ることが可能となる。また、現状のI-P特性からLDモジュールMの劣化度合いが分かるため、LDモジュールMの残存寿命を予測することが可能となる。
<電源部PS1~PS3>
図4は、図1に示した電源部PS1の構成を示す回路ブロック図である。図4において、電源部PS1は、交流電源5から供給される交流電圧を整流する整流回路31と、整流回路31の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ32と、整流回路31および平滑コンデンサ32から直流電圧の供給を受けて、交流電圧を出力するフルブリッジ回路33と、1次巻線34aにフルブリッジ回路33から供給される交流電圧を変圧して、2次巻線34bから出力するトランス34と、トランス34から出力される交流電圧を整流する整流回路35とを含む。
フルブリッジ回路33は、4つのスイッチング素子33a~33dを含む。制御信号CNT1が「H」レベルである場合には、スイッチング素子33a,33dがオフするとともに、スイッチング素子33b,33cがオンする。制御信号CNT1が「H」レベルである場合には、スイッチング素子33a,33dがオフするとともに、スイッチング素子33b,33cがオンする。制御信号CNT1が「L」レベルである場合には、スイッチング素子33a,33dがオンするとともに、スイッチング素子33b,33cがオフする。
制御信号CNT1のデューティ比が増大すると、スイッチング素子33b,33cのオン時間が長くなり、トランス34の交流出力電圧の振幅が増大し、整流回路35の直流出力電圧が増大し、電源部PS1から出力される電流I1が増大する。
逆に、制御信号CNT1のデューティ比が減少すると、スイッチング素子33b,33cのオン時間が短くなり、トランス34の交流出力電圧の振幅が減少し、整流回路35の直流出力電圧が減少し、電源部PS1から出力される電流I1が減少する。フルブリッジ回路33およびトランス34は、対応する制御信号CNT1のデューティ比に応じた値の振幅と、対応する制御信号CNT1の周波数に応じた値の周波数を有する交流電圧を出力する交流電圧発生回路を構成する。したがって、電源部PS1は、交流電源5から供給される交流電力によって駆動され、制御部11から供給される制御信号CNT1に応じた値の電流I1を出力する。
なお、フルブリッジ回路33に代えて、一般的なDC-DCコンバータの回路方式であるフォワード回路方式やフライバック回路方式、プッシュプル回路方式、ハーフブリッジ回路方式、チョッパ回路方式等、変換電力量に応じて効率やコストが最適となる回路方式を採用してもよく、また、それらの回路方式の複合形であってもよい。
整流回路31,35は、ダイオードで構成される全波整流回路である。なお、整流回路31,35の構成はこれに限定されるものではない。ダイオードの代わりにスイッチング素子を用いて整流回路31,35を構成してもよい。この場合、低損失化が可能となる。
電源部PSや電流経路切換回路CSで使用するスイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等を用いるとよい。この場合、Si(Silicon)の材料で構成されたスイッチング素子を使用し得るが、SiC(Siliconcarbide)やGaN(Galliumnitride)の材料で構成されたスイッチング素子を用いると、スイッチング損失や、導通損失を抑えることができ、電源部PS1の高効率化、低損失化が可能となる。以下、スイッチング素子としてN型MOSFETが用いられる場合について説明するが、これに限られるものではない。
電源部PS2,PS3の構成は、電源部PS1の構成と同様である。本実施の形態1では、3つのLDモジュールM1~M3に対して、それぞれに電力を供給する3つの電源部PS1~PS3が設けられるので、電源部PS1~PS3の各々の電力容量を小さくすることできる。これにより、安価で汎用的な電力容量の小さいトランス34や、チョッパ回路方式の場合は安価で汎用的な電力容量の小さいリアクトルL1~L3を用いることができる。
<リアクトルL1~L3>
リアクトルL1~L3は、それぞれ、電源部PS1~PS3からLDモジュールM1~M3に供給される電流I1~I3を平滑化することにより、LDモジュールM1~M3の駆動電流に生じる電流リップルの大きさを低減する。これにより、LDモジュールM1~M3の出力レーザ光α1~α3のパワーを安定させることができる。
リアクトルL1~L3の各々に大きな電流が流れる場合、リアクトルL1~L3の各々として、エッジワイズコイルや、全体をモールドしたリアクトルを用いてもよい。ここでいうエッジワイズコイルとは、平角線がエッジワイズ方向に巻回されたコイルのことをいい、巻線が1層構造であるため巻線が丸型で多層構造であるリアクトルと比べて、放熱性を高くできる。
また、全体をモールドしたリアクトルは、モールド部から放熱することができるため、モールドしていないリアクトルと比べて放熱性が高い。そのため、エッジワイズコイルや、全体をモールドしたリアクトルを用いることで、各々のリアクトルの温度上昇を抑えることが可能となる。そのため、リアクトルを放熱するために必要な冷却機構(たとえば放熱フィン、水冷機構等)の小型化、および冷却方式の簡素化(たとえば、強制空冷から自然空冷)が可能となるので、冷却部材を減らすことができる。
また、電流経路切換回路CS1~CS3の各々に並列に平滑コンデンサを備えてもよい。具体的には、直流正母線PL1と直流負母線NL1との間、直流正母線PL2と直流負母線NL2との間、および直流正母線PL3と直流負母線NL3との間の各々に並列に接続される平滑コンデンサを備えてもよい。
このような平滑コンデンサを備えた場合、LDモジュールMの駆動電流の立ち上がりおよび立ち下がりの速度が低下するため、LDモジュールMのレーザ出力の応答速度が低下する恐れがある。また、フルブリッジ回路33のスイッチング動作によって入出力電流に生じる電流リップルを吸収するために、高いリップル耐量を有する平滑コンデンサを備える必要がある。さらに、電流リップルが大きい場合はコンデンサの並列数を増加する必要があり、装置が大型化し高価になる。
しかしながら、電源部PSから出力される電流Iをさらに平滑化できるため、LDモジュールMに供給される電流をさらに平滑化し、LDモジュールMのレーザ出力をより安定化させることができる。そのため、レーザ出力の応答速度の速さを求めない場合は、平滑コンデンサを備えるほうがよい。
<電流検出器CD1~CD3>
電流検出器CDとしては、直列抵抗素子(シャント抵抗素子)やCT(Current Transformer)やホール電流センサ等がよく用いられる。また、電流検出器CDとして、電流検出用のIC(Integrated Circuit)を使用してもよい。汎用的な部品を使うことでコストを低減することが可能である。
<電流経路切換回路CS1~CS3>
図5は、図1に示した電流経路切換回路CS1の構成を示す回路ブロック図である。図5において、電流経路切換回路CS1は、直流正母線PL1および直流負母線NL1間に接続されたスイッチング素子41と、スイッチング素子41を制御する電流切換制御部42とを含む。スイッチング素子41は、たとえばN型MOSFETである。電流切換制御部42は、制御部11(図3)から供給されるビームオン信号B1を、スイッチング素子41をオンおよびオフさせるゲート信号G1に変換する。
次に、電流経路切換回路CS1の動作について説明する。電源部PS1が駆動していて、リアクトルL1に電流が流れている状態において、ビームオン信号B1を電流切換制御部42に供給し、電流切換制御部42によってスイッチング素子41のオンおよびオフを制御することにより、リアクトルL1から出力される電流I1をLDモジュールM1に流すか、スイッチング素子41に流すかを切り換える。
スイッチング素子41がオフのとき、電流I1はLDモジュールM1に流れ、スイッチング素子41がオンのとき、電流I1は電流経路切換回路CS1内のスイッチング素子41に流れる。すなわち、電流経路切換回路CS1では、ビームオン信号B1に応じてLDモジュールM1の駆動電流の立ち上げや立ち下げを行なう。
仮に、電流経路切換回路CS1がない場合、LDモジュールM1の駆動電流を立ち上げるとき、リアクトルL1にエネルギーを蓄える必要があるため、LDモジュールM1の駆動電流の立ち上げに要する時間が長くなる問題がある。また、LDモジュールM1の駆動電流を立ち下げるとき、リアクトルL1に蓄えられたエネルギーにより、LDモジュールM1の駆動電流の立ち下げに要する時間が長くなる問題がある。
一方、電流経路切換回路CS1が備えられる場合、LDモジュールM1の駆動電流を立ち上げるとき、LDモジュールM1の駆動電流を立ち上げる前にスイッチング素子41をオンにしてリアクトルL1に電流を流し、予めリアクトルL1にエネルギーを蓄えておくことにより、LDモジュールM1の駆動電流の立ち上げに要する時間を短縮できる。
また、LDモジュールM1の駆動電流を立ち下げるとき、スイッチング素子41をオンにして、リアクトルL1の出力電流の電流経路を切り換えることで、LDモジュールM1の駆動電流の立ち下げに要する時間を短縮できる。すなわち、電流経路切換回路CS1を備えることにより、LDモジュールM1の駆動電流の立ち上げや立ち下げに要する時間を短縮することができ、レーザ出力のオンおよびオフを瞬時に切り換えることが可能となる。
なお、LDモジュールM1の駆動電流が大きい場合、スイッチング素子41をオフする際に生じるサージ電圧を抑制するために、スイッチング素子41に対して並列にスナバ回路をさらに設けてもよい。スナバ回路としては、たとえば抵抗素子とコンデンサを並列にして、これにダイオードを直列に接続してなるRCDスナバ回路等を使用するとよい。
また、レーザ加工装置のような大型の装置では、電流経路切換回路CS1とLDモジュールM1とが離れている場合が多い。この場合、電流経路切換回路CS1およびLDモジュールM1間の配線が長くなり、配線の寄生インダクタンスによって、LDモジュールM1の駆動電流を好適に制御することが困難になる恐れがある。
電流経路切換回路CS1およびLDモジュールM1間の配線の寄生インダクタンス値を小さくするために、電流経路切換回路CS1およびLDモジュールM1間の配線が短くなるようにLDモジュールM1の近傍に電流経路切換回路CS1を設置してもよい。また、配線の相互インダクタンスの打ち消し効果が大きくなるように、電流経路切換回路CS1およびLDモジュールM1間の配線のループ面積が最小となるように配線してもよい。電流経路切換回路CS2,CS3の各々は、電流経路切換回路CS1と同じである。
<LDモジュールM1~M3>
LDモジュールM1~M3の各々は、少なくとも1つ以上のLDを含む。LDモジュールMが複数のLDを含む場合、複数のLDは、LDモジュールMのアノード端子およびカソード端子間に順方向に直列接続される。また、高出力レーザ装置では、少なくとも1つ以上のLDモジュールMが使用される。
<コンバイナ1>
コンバイナ1は、3つのLDモジュールM1~M3のレーザ光α1~α3を結合させる機能を有する。コンバイナ1としては、光ファイバタイプだけでなく、プリズムやミラーや光結合素子等を用いてもよい。
<パワー検出器2>
図1では、コンバイナ1からパワー検出器2にレーザ光βの一部が入射しているように模式的に記載されている。レーザ光βが空間を伝搬している場合には、たとえばビームスプリッター等を用いて分岐させてレーザ光βの一部を検出する。また、レーザ光βが光ファイバ内を伝搬している場合には、たとえば光分岐器を使用して分岐した光ファイバの終端からの光を検出したり、光ファイバのクラッドから漏れ光を検出したりすることができる。
また、パワー検出器2へのレーザ光α1~α3の入射構造は、図1に示した構造に限定されない。ここでいうパワー検出器2は、レーザ出力の大きさを検出するセンサであり、光電的、熱的、光化学的、および機械的な方法のいずれかで光量を計測するセンサを示す。光電的に計測できるPD(フォトダイオード)は、感度が高く応答速度も速いので、パワー検出器2としてPDを用いるとよい。
<レーザ光発生装置の基本動作>
制御装置4に含まれる3つの制御部11~13(図2)は、それぞれ3つの電源部PS1~PS3(図1)を制御し、それぞれ3つのLDモジュールM1~M3の駆動電流を制御する。ここで、制御部11の指令部23(図3)は、パワー検出器2の出力信号φPによって示されるレーザ光βのパワーPの1/3の値P/3が、レーザ出力設定値Pcの1/3の値Pc/3に一致するように、LDモジュールM1の駆動電流を決定し、電流指令値Ic1として出力する。レーザ出力設定値Pcの1/3のパワーのレーザ光α1をLDモジュールM1から出力させるためである。
また、電流制御部24(図3)は、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が、指令部23から供給される電流指令値Ic1に一致するように、電源部PS1のフルブリッジ回路33(図4)に含まれるスイッチング素子33a~33dをオンおよびオフ制御する。ここで、電源部PS1~PS3のフルブリッジ回路33のスイッチング周波数は互いに等しく、スイッチングの位相は60度ずつずれている。
電源部PS1~PS3の各々では、フルブリッジ回路33が出力する交流電流を、整流回路35(図4)によって全波整流するため、整流後の電流にはスイッチング周波数の2倍の周波数の電流リップルが発生する。したがって、電源部PS1~PS3から出力されてそれぞれリアクトルL1~L3に流れる電流I1~I3に生じる電流リップルの位相差は120度となる。
ここで、電流経路切換回路CS1~CS3のスイッチング素子41がオフのとき、リアクトルL1~L3に流れる電流I1~I3は、LDモジュールM1~M3の駆動電流と等しい。そのため、3つのLDモジュールM1~M3の駆動電流に生じる電流リップルは互いに120度の位相差となり、LDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップルも互いに120度の位相差となるため、コンバイナ1によりLDモジュールM1~M3のレーザ出力を結合して得られるレーザ出力は、レーザ出力のリップルが打ち消しあう効果により、安定したレーザ出力を得ることができる。
図6は、図1~図5に示したレーザ光発生装置の動作を示すタイムチャートである。図6において、(A)~(C)はそれぞれLDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3の波形を示し、(D)はレーザ光βのパワーPの波形を示している。図6から分かるように、LDモジュールM1~M3の駆動電流IM1~IM3に生じる電流リップルの位相は120度ずつずれているので、レーザ光βのパワーPのリップルは低減されている。
比較例.
図7は、実施の形態1の比較例を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図7を参照して、比較例のレーザ光発生装置が図1のレーザ光発生装置と異なる点は、電源部PS2,PS3、リアクトルL2,L3、電流検出器CD2,CD3、電流経路切換回路CS2,CS3、LDモジュールM2,M3、およびコンバイナ1が除去され、LDモジュールM1がLDモジュールM10で置換されている点である。
LDモジュールM10は、直列接続された複数(この例では9個)のLDを含む。LDモジュールM10に含まれるLDの数(9個)は、LDモジュールM1~M3(図1)に含まれるLDの数(3×3=9個)と等しい。パワー検出器2は、LDモジュールM10から出力されるレーザ光α1Aのパワーを検出し、その検出値を示す信号φPを制御装置4に与える。
次に、レーザ光α1Aのリップル率について説明する。図7において、電流経路切換回路CS1のスイッチング素子41がオフされ、リアクトルL1に流れる電流I1と、LDモジュールM10の駆動電流IM10とは同じ値であるものとする。
電源部PS1の出力電圧を、振幅値がVLIで、周波数がfである矩形波電圧とし、リアクトルL1の出力側の電圧をVLO、リアクトルL1のインダクタンス値をLとしたとき、リアクトルL1に流れる電流に重畳する電流リップル(ピークtoピーク)IRは、次式(1)で表される。
IR=(VLI-VLO)/(L×f)×VLO/VLI …(1)
たとえば、VLIを200V、VLOを50V、fを100kHz、Lを100μHとすると、リアクトルL1に流れる電流I1に重畳する電流リップルIRは数式(1)より3.75Aとなる。ここで、電流リップル率RiをRi=IR/I1×100(%)と定義し、電流I1を40Aとすると、Ri=(3.75/2)/40×100=±4.7%となる。
図8は、図7に示したレーザ光発生装置の動作を示すタイムチャートである。図8において、(A)はLDモジュールM10に流れる電流IM10の波形を示し、(B)はLDモジュールM10から出力されるレーザ光α1Aのパワーの波形を示している。
比較例では、LDモジュールM10の駆動電流IM10とレーザ出力Pが比例関係にある。この場合、LDモジュールM10の駆動電流IM10の電流リップルが±4.7%であるとき、LDモジュールM10のレーザ出力Pのリップル率は±4.7%となる。すなわち、比較例に係るレーザ光発生装置のレーザ出力Pのリップル率は±4.7%となる。
(実施の形態1の効果1)
次に、実施の形態1のレーザ光発生装置におけるレーザ出力のリップル率について説明する。実施の形態1のレーザ光発生装置と比較例のレーザ光発生装置とで同じレーザ出力を得るためには、LDモジュールM1~M3に含まれる各LDの端子間電圧を、LDモジュールM10に含まれる各LDの端子間電圧と同じにする必要がある。そのためには、LDモジュールM1~M3の各々に含まれるLDの数が、LDモジュールM10に含まれるLDの数の3分の1であるので、LDモジュールM1~M3の各々の端子間電圧を、LDモジュールM10の端子間電圧の3分の1にする必要がある。
したがって、実施の形態1のレーザ光発生装置におけるリアクトルL1の出力側の電圧VLOを、実施の形態1のレーザ光発生装置におけるリアクトルL1の出力側の電圧VLOの3分の1である50/3Vとする。また、比較例と同様に、VLIを200V、fを100kHz、Lを100μHとすると、リアクトルL1に流れる電流I1に重畳する電流リップルIRは、数式(1)より、1.53Aとなる。ここで、リアクトルL1に流れる電流I1を40Aとすると、リアクトルL1に流れる電流リップル率Riは、Ri=(1.53/2)/40=±1.9%となる。
LDモジュールM1~M3の駆動電流IM1~IM3とレーザ光α1~α3のパワーとが比例関係にある場合、LDモジュールM1~M3の駆動電流IM1~IM3の電流リップル率が±1.9%であるとき、LDモジュールM1~M3の出力レーザ光α1~α3のパワーのリップル率は±1.9%となる。
実施の形態1では、図6(A)~(D)で示したように、LDモジュールM1~M3の駆動電流I1~I3のリップルの位相は120度ずつずれている。したがって、LDモジュールM1~M3の出力レーザ光α1~α3のパワーのリップルの位相も120度ずつずれている。また、LDモジュールM1~M3の出力レーザ光α1~α3をコンバイナ1で結合して出力するため、レーザ光βのパワーのリップル率は、±1.9%÷3=±0.6%となる。
以上のように、本実施の形態1では、比較例よりも安定したレーザ出力を得ることができる。本実施の形態1のレーザ光発生装置をレーザ加工装置として使用し、レーザ光βを照射して対象物を加工すれば、レーザ加工時の加工断面の平坦精度を向上することが可能となる。
(実施の形態1の効果2)
実施の形態1に従うレーザ光発生装置では、LDモジュールM1~M3の端子間電圧を比較例におけるLDモジュールM10の端子間電圧の1/3に低減できるので、電流経路切換回路CSのスイッチング素子41(図5)として低価格な低耐圧品を使用することができる。
また、低価格で低耐圧品のスイッチング素子41はオン抵抗値が低いので、高効率化にも貢献することができる。たとえば、900V耐圧のN型MOSFETのオン抵抗値は0.73Ωであるのに対し、300V耐圧のN型MOSFETのオン抵抗値は0.04Ωであり、オン抵抗値による導通損失を下げることができ、効率の向上を図ることができる。なお、各耐圧のN型MOSFETのオン抵抗値は、現時点で汎用的に使用されている最小オン抵抗値の一例である。
(実施の形態1の効果3)
レーザ出力の安定性を向上させる代わりに、リアクトルL1~L3のインダクタンス値Lを小さくすることも可能である。たとえば、実施の形態1に係るレーザ光発生装置におけるリアクトルL1~L3のインダクタンス値を、比較例に係るレーザ光発生装置のリアクトルL1のインダクタンス値の3分の1にする。この場合、LDモジュールM1~M3の駆動電流の電流リップル率は、実施の形態1の効果1におけるLDモジュールM1の駆動電流の電流リップル率の3倍となる。
しかしながら、実施の形態1では、LDモジュールM1~M3の出力レーザ光α1~α3をコンバイナ1で結合するので、コンバイナ1から得られるレーザ出力のリップル率は、LDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップル率と比べて3分の1に低減し、実施の形態1の効果1におけるレーザ光発生装置のレーザ出力のリップル率と同じ大きさとなる。したがって、レーザ出力の安定性が、比較例に係るレーザ光発生装置と同程度でよい場合には、リアクトルL1~L3のインダクタンス値を小さくすることが可能となる。
リアクトルL1~L3のインダクタンス値を小さくすることで、リアクトルL1~L3の小型化、コスト低減が可能となる。特に、大きなレーザ出力を有するレーザ光発生装置では、リアクトルL1~L3の大型化により実装上での場所が限定される問題や、製造できるメーカーが限られてくるため高コストとなる問題がある。しかしながら、インダクタンス値を小さくすることにより、リアクトルL1~L3を小型化し、実装上での場所が限定される問題を解決し、製造できるメーカーが多くなり価格の安い汎用リアクトルの使用が可能となる。
また、リアクトルL1~L3のインダクタンス値を小さくすることにより、発熱損失の小さい高効率なリアクトルL1~L3を使用することができ、リアクトルL1~L3の放熱に必要な冷却機構(たとえば放熱フィン、水冷機構等)の小型化、および冷却方式の簡素化(たとえば、強制空冷から自然空冷)が可能となるので、冷却部材を減らすことができる。
(実施の形態1の効果4)
実施の形態1に従うレーザ光発生装置では、3つの電源部PS1~PS3および3つのLDモジュールM1~M3を分散して配置することができるので、電源部PS1~PS3およびLDモジュールM1~M3の放熱性を高めることができる。したがって、電源部PS1~PS3およびLDモジュールM1~M3から熱を放散させる絶縁シート等の放熱部材や、水冷或いは空冷のヒートシンク等の冷却部材を小型化し、価格を安くできる。
また、レーザ出力を繰り返し変化させると、LDの温度差に起因した熱的なストレスがLDに繰り返し加わる。LD内の発光素子とボンディングワイヤ、あるいはLD内のリードフレームとボンディングワイヤが、熱膨張係数の異なる金属である場合、熱膨張係数の差により応力が生じて、LD内の発光素子とボンディングワイヤ、あるいはLD内のリードフレームとボンディングワイヤの接合部にクラックが発生し、故障に至る恐れがある。
実施の形態1に従うレーザ光発生装置では、LDモジュールM1~M3を分散して配置することにより、レーザ出力が大きいときのLDの温度とレーザ出力が小さいときのLDの温度との温度差を小さくすることができ、熱的なストレスによるLDの故障を低減でき、寿命を延ばすことができる。
また、レーザ出力が大きいときのLDの温度とレーザ出力が小さいときのLDの温度との温度差が小さくなるので、温度サイクル条件等で高い信頼性を有するLDを使用する必要がなくなる。また、LDの温度上昇が小さくなるので、耐熱温度が低い汎用LDが使用可能となる。そのため、温度サイクル条件等で高い信頼性を有するLDや、耐熱温度の高いLD等の高価なLDから、安価なLDへの置き換えが可能となり、装置の低コスト化を図ることができる。
(実施の形態1の問題点)
図9は、実施の形態1の問題点を説明するためのタイムチャートである。図9において、(A)は電流指令値Ic1(図3)の波形を示し、(B)はゲート信号G1(図5)の波形を示し、(C)はリアクトルL1(図1)の出力電流I1の波形を示し、(D)はLDモジュールM1(図1)に流れる電流IM1の波形を示している。
図9では、電流指令値Ic1を大きな値IH(たとえば40A)から0Aに変更し、その後、値IHよりも小さな値IL(たとえば20A)に変更する場合が示されている。電流指令値Ic1がIH,ILである場合には、ビームオン信号B1(図5)は活性化レベルの「H」レベルにされている。電流指令値Ic1が0Aである場合には、ビームオン信号B1は非活性化レベルの「L」レベルにされている。
時刻t0~t1では、電流指令値Ic1が値IHに設定され、電源部PS1およびリアクトルL1から電流指令値Ic1と同じ値IHの電流I1が出力される。また、ゲート信号G1が「L」レベルにされてスイッチング素子41がオフされる。これにより、リアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1の駆動電流IM1はIHとなり、LDモジュールM1から大パワーのレーザ光α1が出力される。このとき、リアクトルL1には電磁エネルギーが蓄えられる。
時刻t1~t2では、電流指令値Ic1が0Aに設定され、電源部PS1の出力電流は0Aになり、ゲート信号G1が「H」レベルにされてスイッチング素子41がオンされる。リアクトルL1に蓄えられた電磁エネルギーにより、リアクトルL1の他方端子からスイッチング素子41および整流回路35(図4)を介してリアクトルL1の一方端子に電流I1が流れる。
リアクトルL1の出力電流I1は、全てスイッチング素子41に流れるので、LDモジュールM1の駆動電流IM1は0Aになり、LDモジュールM1からのレーザ光α1の出力は停止される。このとき、リアクトルL1の電磁エネルギーは徐々に減少し、リアクトルL1の出力電流I1は徐々に減少する。
時刻t2では、電流指令値Ic1が値ILに設定され、電源部PS1から電流指令値Ic1と同じ値ILの電流が出力される。また、ゲート信号G1が「L」レベルにされてスイッチング素子41がオフされる。これにより、電源部PS1およびリアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1から小パワーのレーザ光α1が出力される。
ここで、スイッチング素子41の内部インピーダンスは小さいので、時刻t1~t2では、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーはほとんど消費されず、リアクトルL1の出力電流I1はIHから少ししか減少しない。
このため、スイッチング素子41がオフされたとき(時刻t2)、電源部PS1の出力電流と、IHから少ししか減少していないリアクトルL1の出力電流I1との和の電流がLDモジュールM1に流れ、瞬時的に電流指令値Ic1=ILよりも大きな駆動電流IM1がLDモジュールM1に流れ、瞬時的に大きなパワーのレーザ光α1がLDモジュールM1から出力される。他のレーザ光α2,α3でも同様であるので、レーザ光α1~α3を集めたレーザ光βは瞬時的に大きなパワーとなる。このレーザ光βを用いてレーザ加工を行なうと、加工不良を起こす恐れがある。以下の変形例1~3では、この問題点の解決が図られる。
変形例1.
図10は、実施の形態1の変形例1を示す回路ブロック図であって、図5と対比される図である。図10を参照して、この変形例1が実施の形態1と異なる点は、電流経路切換回路CS1が電流経路切換回路CS1Aで置換されている点である。電流経路切換回路CS1Aは、電流経路切換回路CS1の電流切換制御部42を電流切換制御部42Aで置換したものである。
電流切換制御部42Aは、ビームオン信号B1に応答してゲート電圧VGを出力する。スイッチング素子41は、たとえばN型MOSFETである。ゲート電圧VGは、スイッチング素子41のゲートおよびソース間に与えられる。ビームオン信号B1が活性化レベルの「H」レベルである場合には、ゲート電圧VGは「L」レベルにされる。ビームオン信号B1が活性化レベルの「H」レベルから非活性化レベルの「L」レベルに立ち下げられた場合には、ゲート電圧VGは設定時間T1だけ設定電圧VMにされた後に「H」レベルにされる。
設定電圧VMは、「L」レベルと「H」レベルとの間の電圧であって、スイッチング素子41を能動領域で駆動させるために必要な電圧に設定されている。能動領域とは、スイッチング素子41のゲートおよびソース間電圧を増加させたときに、ドレイン電流が増加する領域である。ゲート電圧VGを設定電圧VMにすると、スイッチング素子41のオン抵抗値は比較的高い値になり、スイッチング素子41は抵抗素子として動作する。
なお、ゲート電圧VGの「H」レベルは、スイッチング素子41を飽和領域で駆動させるために必要な電圧に設定されている。飽和領域とは、スイッチング素子41のゲートおよびソース間電圧を増加させたときに、ドレイン電流が飽和する領域である。ゲート電圧VGを「H」レベルにすると、スイッチング素子41がオンし、スイッチング素子41のオン抵抗値は最小になる。
また、ゲート電圧VGの「L」レベルは、スイッチング素子41を遮断領域で駆動させるために必要な電圧に設定されている。遮断領域とは、スイッチング素子41のゲートおよびソース間電圧を増加させても、ドレイン電流が流れない領域である。ゲート電圧VGを「L」レベルにすると、スイッチング素子41はオフし、スイッチング素子41の抵抗値は最大になる。
この変形例1では、他の電流経路切換回路CS2,CS3も、電流経路切換回路CS1Aと同じ構成に変更される。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
図11は、変形例1となるレーザ光発生装置の動作を示すタイムチャートであって、図9と対比される図である。図11において、(A)は電流指令値Ic1(図3)の波形を示し、(B)はゲート電圧VG(図10)の波形を示し、(C)はリアクトルL1(図1)の出力電流I1の波形を示し、(D)はLDモジュールM1(図1)に流れる電流IM1の波形を示している。
図11でも、電流指令値Ic1を大きな値IH(たとえば40A)から0Aに変更し、その後、値IHよりも小さな値IL(たとえば20A)に変更する場合が示されている。電流指令値Ic1がIH,ILである場合には、ビームオン信号B1(図5)は活性化レベルの「H」レベルにされている。電流指令値Ic1が0Aである場合には、ビームオン信号B1は非活性化レベルの「L」レベルにされている。
時刻t0~t1では、電流指令値Ic1が値IHに設定され、電源部PS1およびリアクトルL1から電流指令値Ic1と同じ値IHの電流I1が出力される。また、ゲート電圧VGが「L」レベルにされてスイッチング素子41が遮断領域で動作し、スイッチング素子41がオフされる。これにより、リアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1の駆動電流IM1はIHとなり、LDモジュールM1から大パワーのレーザ光α1が出力される。このとき、リアクトルL1には電磁エネルギーが蓄えられる。
時刻t1において、電流指令値Ic1が0Aに設定され、電源部PS1の出力電流は0Aになる。また、時刻t1では、ゲート電圧VGが設定電圧VMにされる。これにより、スイッチング素子41が能動領域で駆動され、スイッチング素子41は抵抗素子として動作する。
電源部PS1の出力電流は0Aになるが、リアクトルL1に蓄えられた電磁エネルギーにより、リアクトルL1の他方端子からスイッチング素子41およびLDモジュールM1の並列接続体と整流回路35(図4)とを介してリアクトルL1の一方端子に電流I1が流れる。
このとき、LDモジュールM1に流れる電流IM1がLDの発振しきい値未満となるように電圧VMを設定することにより、LDモジュールM1からレーザ光α1を出力させずに、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーをLDモジュールM1とスイッチング素子41で消費することができ、リアクトルL1の出力電流I1をIHから急速に減少させることができる。時刻t1~t2の間に、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーは完全に消費され、リアクトルL1の出力電流I1およびLDモジュールM1の駆動電流IM1は0Aとなる。
時刻t2において、ゲート電圧VGが「H」レベルにされてスイッチング素子41は飽和領域で動作し、スイッチング素子41はオン状態にされる。時刻t3では、電流指令値Ic1が値ILに設定され、電源部PS1から電流指令値Ic1と同じ値ILの電流が出力される。また、ゲート電圧VGが「L」レベルにされてスイッチング素子41がオフされる。これにより、電源部PS1およびリアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1から小パワーのレーザ光α1が出力される。
この変形例1では、電流指令値Ic1の立ち上がり時(時刻t3)には、リアクトルL1の電磁エネルギーが完全に消費されているので、図9で示したような大パワーのレーザ光α1がパルス的に出力されることはない。他のレーザ光α2,α3でも同様であるので、レーザ光α1~α3を集めたレーザ光βは瞬時的に大パワーとなることはない。このレーザ光βを用いてレーザ加工を行なうことにより、加工不良を起こすことを防止することができる。
変形例2.
図12は、実施の形態1の他の変形例2を示す回路ブロック図であって、図5と対比される図である。図12を参照して、この変形例2が実施の形態1と異なる点は、電流経路切換回路CS1が電流経路切換回路CS1Bで置換されている点である。電流経路切換回路CS1Bは、電流経路切換回路CS1にエネルギー消費部43を追加するとともに電流切換制御部42を電流切換制御部42Bで置換したものである。
エネルギー消費部43は、直流正母線PL1と直流負母線NL1との間に直列接続された抵抗素子44およびスイッチング素子45を含む。スイッチング素子45は、たとえばN型MOSFETである。
電流切換制御部42Bは、ビームオン信号B1に応答してゲート信号G1,G2を出力する。ゲート信号G1,G2は、それぞれスイッチング素子41,45のゲートに与えられる。ビームオン信号B1が活性化レベルの「H」レベルである場合には、ゲート信号G1,G2はともに「L」レベルにされる。
ビームオン信号B1が活性化レベルの「H」レベルから非活性化レベルの「L」レベルに立ち下げられた場合には、ゲート信号G2が「H」レベルに立ち上げられ、設定時間T1の経過後に、ゲート信号G2が「L」レベルに立ち下げられるとともに、ゲート信号G1が「H」レベルに立ち上げられる。
この変形例2では、他の電流経路切換回路CS2,CS3も、電流経路切換回路CS1Bと同じ構成に変更される。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
図13は、変形例2となるレーザ光発生装置の動作を示すタイムチャートであって、図9と対比される図である。図13において、(A)は電流指令値Ic1(図3)の波形を示し、(B),(C)はそれぞれゲート信号G1,G2(図12)の波形を示し、(D)はリアクトルL1(図1)の出力電流I1の波形を示し、(E)はLDモジュールM1(図1)に流れる電流IM1の波形を示している。
図13では、電流指令値Ic1を大きな値IH(たとえば40A)から0Aに変更し、その後、値IHよりも小さな値IL(たとえば20A)に変更する場合が示されている。電流指令値Ic1がIH,ILである場合には、ビームオン信号B1(図5)は活性化レベルの「H」レベルにされている。電流指令値Ic1が0Aである場合には、ビームオン信号B1は非活性化レベルの「L」レベルにされている。
時刻t0~t1では、電流指令値Ic1が値IHに設定され、電源部PS1およびリアクトルL1から電流指令値Ic1と同じ値IHの電流I1が出力される。また、ゲート信号G1,G2が「L」レベルにされてスイッチング素子41,45がオフされる。これにより、リアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1の駆動電流IM1はIHとなり、LDモジュールM1から大パワーのレーザ光α1が出力される。このとき、リアクトルL1には電磁エネルギーが蓄えられる。
時刻t1において、電流指令値Ic1が0Aに設定され、電源部PS1の出力電流は0Aになる。また、時刻t1では、ゲート信号G2が「H」レベルにされ、スイッチング素子45がオンされる。このとき、電源部PS1の出力電流は0Aになるが、リアクトルL1に蓄えられた電磁エネルギーにより、リアクトルL1の他方端子からエネルギー消費部43およびLDモジュールM1の並列接続体、並びに整流回路35(図4)を介してリアクトルL1の一方端子に電流I1が流れる。
このとき、LDモジュールM1に流れる電流IM1がLDの発振しきい値未満となるように抵抗素子44の抵抗値を設定することにより、LDモジュールM1からレーザ光α1を出力させずに、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーをLDモジュールM1と抵抗素子44で消費することができ、リアクトルL1の出力電流I1をIHから急速に減少させることができる。時刻t1~t2の間に、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーは完全に消費され、リアクトルL1の出力電流I1およびLDモジュールM1の駆動電流IM1は0Aとなる。
時刻t2において、ゲート信号G2が「L」レベルに立ち下げられてスイッチング素子45がオフされるとともに、ゲート信号G1が「H」レベルに立ち上げられてスイッチング素子41がオンされる。
時刻t3では、電流指令値Ic1が値ILに設定され、電源部PS1から電流指令値Ic1と同じ値ILの電流が出力される。また、ゲート信号G1が「L」レベルにされてスイッチング素子41がオフされる。これにより、電源部PS1およびリアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1から小パワーのレーザ光α1が出力される。
この変形例2では、電流指令値Ic1の立ち上がり時(時刻t3)には、リアクトルL1の電磁エネルギーが完全に消費されているので、図9で示したような大パワーのレーザ光α1がパルス的に出力されることはない。他のレーザ光α2,α3でも同様であるので、レーザ光α1~α3を集めたレーザ光βは瞬時的に大パワーとなるはない。このレーザ光βを用いてレーザ加工を行なうことにより、加工不良を起こすことを防止することができる。
また、スイッチング素子45をオンした直後におけるLDモジュールM1の端子間電圧をVO(0)とし、リアクトルL1のインダクタンス値をLとし、抵抗素子44の抵抗値をRとし、スイッチング素子45をオンした時間をt=0[s]とすると、LDモジュールM1の端子間電圧VO(t)は、次式(2)で表わされる。
VO(t)=VO(0)×[1-e^(-Rt/L)] …(2)
上述の通り、実施の形態1では、比較例に比べてリアクトルL2のインダクタンス値Lを3分の1にすることができる。したがって、この変形例2では、VO(t)を所望の電圧値にするために要する時間tを、比較例の3分の1にすることが可能である。これにより、エネルギー消費部43内のスイッチング素子45をオンする時間を3分の1に低減することができ、LDモジュールM1の駆動電流IM1の大きさを大きな値IHから小さな値ILに切り換えるのに要する時間を3分の1に低減することが可能となり、レーザ出力の応答速度を高めることができる。
変形例3.
変形例1,2では、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーを電流経路切換回路CS1A,CS1BおよびLDモジュールM1で消費することにより、瞬時的にILよりも大きな駆動電流がLDモジュールM1に流れる問題を解決した。しかしながら、このような解決方法では、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーを消費するので、効率が低下するという問題がある。この変形例3では、この問題の解決が図られる。
図14は、実施の形態1のさらに他の変形例3を示す回路ブロック図であって、図5と対比される図である。図14を参照して、この変形例3が実施の形態1と異なる点は、電流経路切換回路CS1が電流経路切換回路CS1Cで置換されている点である。電流経路切換回路CS1Cは、電流切換制御部42を電流切換制御部42Cで置換したものである。
電流切換制御部42Cは、ビームオン信号B1、電流指令値Ic1、電流検出器CD1の出力信号φI1に基づいてゲート信号G3を生成する。ゲート信号G3は、スイッチング素子41のゲートに与えられる。ビームオン信号B1が非活性化レベルの「L」レベルである場合には、ゲート信号G3は「L」レベルにされる。
ビームオン信号B1が非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられた場合には、電流検出器CD1の検出値が電流指令値Ic1になるまで、ゲート信号G3はパルス幅変調される。
この変形例3では、他の電流経路切換回路CS2,CS3も、電流経路切換回路CS1Cと同じ構成に変更される。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
図15は、変形例3となるレーザ光発生装置の動作を示すタイムチャートであって、図9と対比される図である。図15において、(A)は電流指令値Ic1(図3)の波形を示し、(B)はゲート信号G3(図14)の波形を示し、(C)はリアクトルL1(図1)の出力電流I1の波形を示し、(D)はLDモジュールM1(図1)に流れる電流IM1の波形を示し、(E)は(D)の時刻t2から時刻t3までの領域の拡大図の一例である。
図15では、電流指令値Ic1を大きな値IH(たとえば40A)から0Aに変更し、その後、値IHよりも小さな値IL(たとえば20A)に変更する場合が示されている。電流指令値Ic1がIH,ILである場合には、ビームオン信号B1(図5)は活性化レベルの「H」レベルにされている。電流指令値Ic1が0Aである場合には、ビームオン信号B1は非活性化レベルの「L」レベルにされている。
時刻t0~t1では、電流指令値Ic1が値IHに設定され、電源部PS1およびリアクトルL1から電流指令値Ic1と同じ値IHの電流I1が出力される。また、ゲート信号G3が「L」レベルにされてスイッチング素子41(図14)がオフされる。これにより、リアクトルL1の出力電流I1が全てLDモジュールM1に流れ、LDモジュールM1の駆動電流IM1はIHとなり、LDモジュールM1から大パワーのレーザ光α1が出力される。このとき、リアクトルL1には電磁エネルギーが蓄えられる。
時刻t1~t2では、電流指令値Ic1が0Aに設定され、電源部PS1の出力電流は0Aになり、ゲート信号G3が「H」レベルにされてスイッチング素子41がオンされる。リアクトルL1に蓄えられた電磁エネルギーにより、リアクトルL1の他方端子からスイッチング素子41および整流回路35を介してリアクトルL1の一方端子に電流I1が流れる。
リアクトルL1の出力電流I1は、全てスイッチング素子41に流れるので、LDモジュールM1の駆動電流IM1は0Aになり、LDモジュールM1からのレーザ光α1の出力は停止される。このとき、リアクトルL1の電磁エネルギーは徐々に減少し、リアクトルL1の出力電流I1は徐々に減少する。
時刻t2では、電流指令値Ic1が値ILに設定され、電源部PS1から電流指令値Ic1と同じ値ILの電流が出力される。時刻t2において、電流切換制御部42Cによってゲート信号G3のパルス幅変調が開始される。時刻t3において、電流検出器CD1の検出値が電流指令値Ic1になると、ゲート信号G3のパルス幅変調が停止され、ゲート信号G3は「L」レベルにされる。これにより、電流指令値Ic1と同じ値ILの電流IM1がLDモジュールM1に流れ、安定したレーザ光α1が出力される。
この変形例3では、図15(B)に示されるように、時刻t2の直後にゲート信号G3がパルス幅変調される。これにより、図15(D),(E)に示されるように、LDモジュールM1の駆動電流IM1がパルス状に変化し、LDモジュールM1から出力されるレーザ光α1のパワーがパルス状に変化する。レーザ光α1のパワーは、パルスがオンのときとオフのときの平均値となるので、図9に示したような高出力にはならない。他のレーザ光α2,α3についてもレーザ光α1と同様であるので、レーザ光α1~α3を集めたレーザ光βは高出力にならない。このレーザ光βを用いてレーザ加工を行なうことにより、加工不良を起こすことを防止することができる。また、リアクトルL1の電磁エネルギーを無駄に消費することがないので、効率の向上を図ることができる。
実施の形態2.
図16は、実施の形態2に従うレーザ光発生装置の要部を示すブロック図であって、図2と対比される図である。図16を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態1と異なる点は、操作部3を用いて制御信号CNT1~CNT3の位相角度θ1~θ3が設定可能になっており、設定された位相角度θ1~θ3がそれぞれ制御部11~13に与えられる点である。
レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、レーザ出力設定値Pcおよびビームオン信号BONの波形に加え、制御信号CNT1~CNT3の位相角度θ1~θ3をセットする。位相角度θ1~θ3の各々は一定値でもよいし、ビームオン信号BONに同期して変化する値であっても構わない。ビームオン信号BONの波形、レーザ出力設定値Pc、および位相角度θ1~θ3は、操作部3内の記憶部(図示せず)に記憶される。
たとえば、レーザ光発生装置の使用者が操作部3に含まれる出力開始ボタンをオンすると、ビームオン信号BON、レーザ出力設定値Pc、および位相角度θ1~θ3が記憶部(図示せず)から読み出されて制御装置4に出力される。
制御部11内の電流制御部24(図3)は、設定された位相角度θ1の制御信号CNT1を生成する。制御部12内の電流制御部24は、設定された位相角度θ2の制御信号CNT2を生成する。制御部13内の電流制御部24は、設定された位相角度θ3の制御信号CNT3を生成する。
位相角度θ1,θ2,θ3がそれぞれ0度、60度、120度である場合は、実施の形態1と同じ結果となり、図6で示したように、3つのLDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップルが効果的に打ち消し合い、出力レーザ光βのリップル率は小さくなる。
図17は、図16に示したレーザ光発生装置の動作の一例を示すタイムチャートであって、図6と対比される図である。図17において、(A)~(C)はそれぞれLDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3の波形を示し、(D)はレーザ光βのパワーPの波形を示している。
図17では、θ1=θ2=θ3=0度の場合が示されている。図17から分かるように、LDモジュールM1~M3の駆動電流IM1~IM3に生じる電流リップルの位相は同じであるので、3つのLDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップルは加算され、出力レーザ光βのリップル率は大きくなる。
また、図18は、図16に示したレーザ光発生装置の他の動作例を示すタイムチャートであって、図6と対比される図である。図18においても、(A)~(C)はそれぞれLDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3の波形を示し、(D)はレーザ光βのパワーPの波形を示している。
図18では、θ1=0度、θ2=θ3=120度の場合が示されている。図18から分かるように、LDモジュールM1,M2の駆動電流IM1,IM2に生じる電流リップルの位相は互いに240度ずれ、LDモジュールM2,M3の駆動電流I2,I3に生じる電流リップルの位相は同じである。LDモジュールM1の出力レーザ光α1に生じるリップルとLDモジュールM2,M3の出力レーザ光α2,α3に生じるリップルとは打ち消し合うが、LDモジュールM2,M3の出力レーザ光α2,α3に生じるリップルは加算される。
したがって、θ1=0度、θ2=θ3=120度の場合におけるレーザ出力のリップル率は、θ1=0度、θ2=60度、θ3=120度の場合におけるレーザ出力のリップル率よりも大きくなり、θ1=θ2=θ3=0度の場合におけるレーザ出力のリップル率よりも小さくなる。
本実施の形態2では、制御信号CNT1~CNT3の位相角度θ1~θ3を所望の大きさに変化させることにより、レーザ出力のリップル率を瞬時に変化させることが可能となる。このレーザ光発生装置をレーザ加工装置として使用した場合、レーザ出力のリップル率の大きさに応じて、加工断面を所望の平坦精度にすることができ、梨地加工面のような模様を高精度に形成したり、平坦な加工断面を形成することが可能となる。また、レーザ光βを出力する加工ヘッドの制御と、レーザ出力に生じるリップルの周波数を同期させることにより、たとえば、リップルにより生じる加工断面の凹凸を一定間隔で形成して模様を作成することができる。
実施の形態3.
図19は、実施の形態3に従うレーザ光発生装置の要部を示すブロック図であって、図16と対比される図である。図19を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態2と異なる点は、操作部3を用いて制御信号CNT1~CNT3の周波数f1~f3が設定可能になっており、設定された周波数f1~f3がそれぞれ制御部11~13に与えられる点である。
レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、レーザ出力設定値Pcおよびビームオン信号BONの波形に加え、制御信号CNT1~CNT3の周波数f1~f3をセットする。周波数f1~f3の各々は一定値でもよいし、ビームオン信号BONに同期して変化する値であっても構わない。ビームオン信号BONの波形、レーザ出力設定値Pc、および周波数f1~f3は、操作部3内の記憶部(図示せず)に記憶される。
たとえば、レーザ光発生装置の使用者が操作部3に含まれる出力開始ボタンをオンすると、ビームオン信号BON、レーザ出力設定値Pc、および周波数f1~f3が記憶部(図示せず)から読み出されて制御装置4に出力される。
制御部11内の電流制御部24(図3)は、設定された周波数f1の制御信号CNT1を生成する。制御部12内の電流制御部24は、設定された周波数f2の制御信号CNT2を生成する。制御部13内の電流制御部24は、設定された周波数f3の制御信号CNT3を生成する。
図20は、図19で説明したレーザ光発生装置の動作の一例を示すタイムチャートである。図20において、(A)~(C)はそれぞれLDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3の波形を示し、(D)はレーザ光βのパワーPの波形を示している。図20では、f1<f2<f3である場合が示されている。
図20から分かるように、制御信号CNT1~CNT3の周波数f1~f3が異なると、LDモジュールM1~M3の駆動電流I1~I3に生じる電流リップルの周波数も互いに異なり、LDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップルの周波数も互いに異なることとなる。したがって、LDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップルのピーク値が重なる確率が小さくなり、出力レーザ光βのリップルが小さくなり、安定したレーザ出力を得ることができる。
なお、制御信号CNT1~CNT3の周波数f1~f3をレーザ光βの出力中に変化させてもよい。電源部PS1~PS3のフルブリッジ回路33(図4)は、それぞれ制御信号CNT1~CNT3に従ってスイッチングされる。フルブリッジ回路33のスイッチング周波数が低い場合、スイッチング損失が小さく、電源部PS1~PS3の温度上昇が小さいが、電流リップルが大きくなる。これに対して、フルブリッジ回路33のスイッチング周波数が高い場合、フルブリッジ回路33で生じるスイッチング損失が大きく、電源部PS1~PS3の温度上昇が大きいが、電流リップルが小さくなる。
電源部PS1~PS3のうち、温度が高い電源部を低い周波数でスイッチングさせ、温度が低い電源部を高い周波数でスイッチングさせることにより、温度が高い電源部の温度上昇を低減し、温度が低い電源部の出力電流に重畳する電流リップルを小さくすることが可能となる。すなわち、制御信号CNT1~CNT3の周波数f1~f3を動作中に変化させることにより、電流リップルを小さくしたり、電源部PSの温度上昇を抑えることが可能となる。
実施の形態4.
図21は、実施の形態4に従うレーザ光発生装置の要部を示すブロック図であって、図2と対比される図である。図21を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態1と異なる点は、操作部3を用いて、LDモジュールM1~M3の残存寿命を予測するモードを設定することが可能となっており、そのモードが設定された場合には操作部3から制御部11~13に信号CM1が与えられる点である。制御部11~13は、信号CM1に応答して、残存寿命予測モードを順次実行する。
信号CM1が与えられた場合、制御部11の指令部23(図3)は、制御部12,13の指令部23よりも先に残存寿命予測モードを実行する。指令部23は、互いに異なる値の複数の電流指令値Ic1を1つずつ順次出力する。電流制御部24は、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が電流指令値Ic1になるように、制御信号CNT1のデューティ比を制御する。これにより、電源部PS1から電流I1が出力され、その電流I1によってLDモジュールM1が駆動され、レーザ光α1が出力される。レーザ光α1のパワーはパワー検出器2(図1)によって検出され、その検出値を示す信号φPが指令部23に与えられる。
指令部23は、電流指令値Ic1の大きさを複数段階で変えて、各電流指令値Ic1毎に、パワー検出器2の出力信号φPによって示されるレーザ光α1のパワーを検出し、LDモジュールM1の電流-パワー特性(I-P特性)を求め、そのI-P特性を記憶部22に格納する。記憶部22には、初期時のI-P特性が格納されている。指令部23は、記憶部22に格納されている初期時のI-P特性と経時劣化後のI-P特性とを比較し、比較結果に基づいて、LDモジュールM1の残存寿命Tr1を予測する。
図22は、記憶部22に格納された初期時のI-P特性と経時劣化後のI-P特性とを示す図である。図22において、初期時のLDモジュールM1は、駆動電流IM1がしきい値電流Ith1以上のときにレーザ光α1を出力する。経時劣化後のLDモジュールM1は、駆動電流IM1がしきい値電流Ith2以上のときにレーザ光α1を出力する。Ith1<Ith2である。
また、初期時のLDモジュールM1のレーザ出力効率E1は、経時劣化後のLDモジュールM1のレーザ出力効率E2よりも大きい。レーザ出力効率とは、しきい値電流Ith以上の領域におけるI-P特性曲線の傾きである。
指令部23は、記憶部22に格納された初期時のI-P特性と経時劣化後のI-P特性から、初期時のしきい値電流Ith1およびレーザ出力効率E1と、経時劣化後のしきい値電流Ith2およびレーザ出力効率E2とを読み取り、読み取ったIth1,E1とIth2,E2とを比較し、比較結果に基づいて経時劣化後のLDモジュールM1の残存寿命Tr1を予測する。
制御部12(図21)は、制御部11の次に、制御部11と同様にして、LDモジュールM2の残存寿命Tr2を予測する。制御部13(図21)は、制御部12の次に、制御部11と同様にして、LDモジュールM3の残存寿命Tr3を予測する。
残存寿命予測モードの終了後、レーザ光βを出力する通常動作を行なう場合、制御部11~13は、残存寿命Trの短いLDモジュールMの分担率SRが小さくなり、残存寿命Trの長いLDモジュールMの分担率SRが大きくなるように、LDモジュールM1~M3のパワーの分担率SR1~SR3を変更する。これにより、残存寿命Trの短いLDモジュールMの駆動電流IMが小さくなり、残存寿命Trの長いLDモジュールMの駆動電流IMが大きくなるように、電流指令値Ic1~Ic3が設定されることとなり、残存寿命Trの短いLDモジュールMを延命することが可能となる。
その結果、レーザ光発生装置のメンテナンス間隔を延ばすことが可能となる。また、LDモジュールM1~M3の残存寿命Tr1~Tr3の差を低減することができ、一度のメンテナンスで多くのLDモジュールMを交換できるので、交換頻度を減らすことが可能となる。
実施の形態5.
図23は、実施の形態5に従うレーザ光発生装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図23を参照して、このレーザ光発生装置が図1のレーザ光発生装置と異なる点は、電圧検出器VD1~VD3が追加され、制御装置4が制御装置4Aで置換されている点である。
電圧検出器VD1は、LDモジュールM1の端子間電圧V1を検出し、その検出値を示す信号φV1を制御装置4Aに出力する。電圧検出器VD2は、LDモジュールM2の端子間電圧V2を検出し、その検出値を示す信号φV2を制御装置4Aに出力する。電圧検出器VD3は、LDモジュールM3の端子間電圧V3を検出し、その検出値を示す信号φV3を制御装置4Aに出力する。
図24は、制御装置4Aの構成を示すブロック図であって、図2と対比される図である。図24を参照して、制御装置4Aが制御装置4と異なる点は、制御部11~13がそれぞれ制御部11A~13Aと置換されている点である。
レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、LDモジュールM1~M3の残存寿命を予測する残存寿命予測モードを設定する。それに応じて操作部3は、残存寿命予測モードの実行を指示する信号CM2を制御部11A~13Aに与える。制御部11A~13Aは、信号CM2に応答して、残存寿命予測モードを実行する。また、電圧検出器VD1~VD3の出力信号φV1~φV3は、それぞれ制御部11A~13Aに与えられる。
図25は、制御部11Aの構成を示すブロック図であって、図3と対比される図である。図25を参照して、制御部11Aが制御部11と異なる点は、指令部23が指令部23Aで置換されている点である。
制御部11Aに信号CM2が与えられた場合、制御部11Aの指令部23Aは、残存寿命予測モードを実行する。指令部23Aは、互いに異なる値の複数の電流指令値Ic1を1つずつ順次出力する。電流制御部24は、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が電流指令値Ic1になるように、制御信号CNT1のデューティ比を制御する。これにより、電源部PS1から電流I1が出力され、その電流I1によってLDモジュールM1が駆動され、レーザ光α1が出力される。
指令部23Aは、電流指令値Ic1の大きさを複数段階で変えて、各電流指令値Ic1毎に、電圧検出器VD1の出力信号φV1によって示されるLDモジュールM1の端子間電圧V1を検出し、LDモジュールM1の電流-電圧特性(I-V特性)を求め、そのI-V特性を記憶部22に格納する。記憶部22には、初期時のI-V特性が格納されている。指令部23Aは、記憶部22に格納されている初期時のI-V特性と経時劣化後のI-V特性とを比較し、比較結果に基づいて、LDモジュールM1の残存寿命を予測する。
図26は、記憶部22に格納された初期時のI-V特性と経時劣化後のI-V特性とを示す図である。図26において、初期時のLDモジュールM1では、端子間電圧V1を0Vから徐々に増大させていくと、V1がしきい値電圧Vth1になった時に電流IM1が流れ始め、その後はV1に比例してIM1が増大する。経時劣化後のLDモジュールM1では、端子間電圧V1を0Vから徐々に増大させていくと、V1がしきい値電圧Vth2になった時に電流IM1が流れ始め、その後はV1に比例してIM1が増大する。Vth1<Vth2である。
指令部23Aは、記憶部22に格納された初期時のI-V特性と経時劣化後のI-V特性から、初期時のしきい値電圧Vth1と、経時劣化後のしきい値電圧Vth2とを読み取り、読み取ったVth1とVth2とを比較し、比較結果に基づいて経時劣化後のLDモジュールM1の残存寿命Tr1を予測する。制御部12A,13A(図24)は制御部11Aと同時に、制御部11Aと同様にして、LDモジュールM2,M3の残存寿命Tr2,Tr3をそれぞれ予測する。
残存寿命予測モードの終了後、レーザ光βを出力する通常動作を行なう場合、制御部11A~13Aは、残存寿命Trの短いLDモジュールMの分担率SRが小さくなり、残存寿命Trの長いLDモジュールMの分担率SRが大きくなるように、LDモジュールM1~M3のパワーの分担率SR1~SR3を変更する。これにより、残存寿命Trの短いLDモジュールMの駆動電流IMが小さくなり、残存寿命Trの長いLDモジュールMの駆動電流IMが大きくなるように、電流指令値Ic1~Ic3を決定することにより、残存寿命Trの短いLDモジュールMを延命する。
その結果、レーザ光発生装置のメンテナンス間隔を延ばすことが可能となる。また、LDモジュールM1~M3の残存寿命Tr1~Tr3の差を低減することができ、一度のメンテナンスで多くのLDモジュールMを交換できるので、交換頻度を減らすことが可能となる。
また、本実施の形態5では、3つの電圧検出器VD1~VD3を設けたので、3つのLDモジュールM1~M3の端子間電圧V1~V3を同時に検出することができ、LDモジュールM1~M3のI-V特性を同時に検出することができる。したがって、LDモジュールM1~M3のI-P特性を1つずつ順次検出する必要がある実施の形態4と比べ、残存寿命予測を短時間で行なうことができる。
また、全てのLDモジュールM1~M3が動作状態でも、LDモジュールM1~M3のI-V特性を計測できるので、たとえば、レーザ光βを使用して被加工物を加工している際中であっても、残存寿命を計測することができる。
実施の形態6.
図27は、実施の形態6に従うレーザ光発生装置の要部を示すブロック図であって、図24と対比される図である。図27を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態5と異なる点は、操作部3を用いて、LDモジュールM1~M3の発光効率EA1~EA3を検出する発光効率検出モードを設定することが可能となっており、そのモードが設定された場合には、操作部3から制御部11A~13Aに信号CM3が与えられる点である。制御部11A~13Aは、信号CM3に応答して、発光効率検出モードを順次実行する。
信号CM3が制御部11Aに与えられた場合、指令部23A(図25)は、制御部12A,13Aよりも先に、発光効率検出モードを実行する。指令部23Aは、設定された電流指令値Ic1を出力する。電流制御部24は、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が電流指令値Ic1になるように、制御信号CNT1のデューティ比を制御する。これにより、電源部PS1から電流I1が出力され、その電流I1によってLDモジュールM1が駆動され、レーザ光α1が出力される。
レーザ光α1のパワーはパワー検出器2によって検出され、その検出値を示す信号φPが指令部23Aに与えられる。また、LDモジュールM1の端子間電圧V1が電圧検出器VD1によって検出され、その検出値を示す信号φV1が指令部23Aに与えられる。
指令部23Aは、信号φPによって示されるレーザ光α1のパワーと、信号φV1によって示されるLDモジュールM1の端子間電圧V1と、電流指令値Ic1によって示されるLDモジュールM1の駆動電流I1とに基づいて、LDモジュールM1の発光効率EA1=P/(V1×I1)を求める。制御部12Aは、制御部11Aの次に、制御部11Aと同様にして、LDモジュールM2の発光効率EA2を検出する。制御部13Aは、制御部12Aの次に、制御部11Aと同様にして、LDモジュールM3の発光効率EA3を検出する。
発光効率検出モードの終了後、レーザ光βを出力する通常動作を行なう場合、制御部11A~13Aは、発光効率EAの低いLDモジュールMの分担率SRが小さくなり、発光効率EAの高いLDモジュールMの分担率SRが大きくなるように、LDモジュールM1~M3のパワーの分担率SR1~SR3を変更する。これにより、発光効率EAの低いLDモジュールMの駆動電流IMを小さくし、発光効率EAの高いLDモジュールMの駆動電流IMを大きくすることとなり、レーザ光発生装置の効率を高めることができる。
実施の形態7.
実施の形態1の比較例となるレーザ光発生装置(図7)では、LDモジュールM10のレーザ出力がオフのときに、発振しきい値電流Ith未満の設定電流をLDモジュールM10に流して、LDモジュールM10の温度を上昇させている。これにより、レーザ出力のオン/オフ動作が繰り返される場合において、レーザ出力がオンの場合とオフの場合とのLDのジャンクションの温度差を小さくしている。これにより、ヒートサイクルに起因する熱的ストレスが、LDに繰り返し加わることを防ぎ、LDを構成するチップとボンディングワイヤやはんだ等の接合部にクラックが発生し、故障に至ることを予防している。
しかしながら、比較例では、LDの特性ばらつきや、ヒートシンク等の冷却部材の配置によって、各LDのジャンクション温度にばらつきが生じる。そのため、一部のLDでは、LDモジュールのレーザ出力がオンの時とオフの時とのジャンクション温度の温度差を小さくできず、ヒートサイクルに起因する熱的ストレスが、LDに繰り返し加わり、早期に故障に至る可能性がある。本実施の形態7では、この問題の解決が図られる。
図28は、実施の形態7に従うレーザ光発生装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図28を参照して、このレーザ光発生装置が図1のレーザ光発生装置と異なる点は、温度検出器TD1~TD3が追加され、制御装置4が制御装置4Bと置換されている点である。
温度検出器TD1は、LDモジュールM1の温度Te1を検出し、その検出値を示す信号φTe1を制御装置4Bに与える。温度検出器TD2は、LDモジュールM2の温度Te2を検出し、その検出値を示す信号φTe2を制御装置4Bに与える。温度検出器TD3は、LDモジュールM3の温度Te3を検出し、その検出値を示す信号φTe3を制御装置4Bに与える。
図29は、制御装置4Bの構成を示す回路ブロック図であって、図2と対比される図である。図29を参照して、この制御装置4Bが図2の制御装置4と異なる点は、制御部11~13がそれぞれ制御部11B~13Bと置換されている点である。
レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、LDモジュールM1~M3のオフ時における温度Te1~Te3を検出する温度検出モードを設定する。それに応じて操作部3は、温度検出モードの実行を指示する信号CM4を制御部11B~13Bに与える。制御部11B~13Bは、信号CM4に応答して、温度検出モードを実行する。
図30は、制御部11Bの構成を示すブロック図であって、図3と対比される図である。図30を参照して、制御部11Bが制御部11と異なる点は、指令部23が指令部23Bで置換されている点である。
信号CM4が制御部11Bに与えられた場合、指令部23Bは、温度検出モードを実行する。指令部23Bは、設定電流を流すための電流指令値Ic1を出力する。電流制御部24は、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が電流指令値Ic1になるように、制御信号CNT1のデューティ比を制御する。これにより、電源部PS1から電流I1が出力され、その電流I1によってLDモジュールM1が発熱し、LDモジュールM1の温度Te1が上昇する。
LDモジュールM1の温度Te1は温度検出器TD1(図28)によって検出され、その検出値を示す信号φTe1が指令部23Bに与えられる。指令部23Bは、LDモジュールM1の温度Te1を検知する。制御部12B,13B(図29)は、制御部11Bと同様にして、LDモジュールM2,M3の温度Te2,Te3をそれぞれ検出する。
温度検出モードの終了後、レーザ光βを出力する通常動作を行なう場合、制御部11B~13Bは、温度Teが高いLDモジュールMには小さな電流が流れ、温度Teが低いLDモジュールMには大きな電流が流れるように、LDモジュールM1~M3の電流指令値Ic1~Ic3を決定する。
これにより、LDの特性ばらつきや、ヒートシンク等の冷却部材の配置の影響があっても、LDのジャンクションの温度差を小さくすることができ、ヒートサイクルに起因する熱的ストレスが、LDに繰り返し加わることを避けて、LDモジュールM1~M3の長寿命化を図ることができる。
なお、LDモジュールM1~M3のI-P特性、I―V特性を測定するとき、温度検出器TD1~TD3によってLDモジュールM1~M3の温度Te1~Te3を同時に測定してもよい。LDモジュールM1~M3のI-P特性、I-V特性、しきい値電流Ith、しきい値電圧Vth、レーザ出力効率E、発光効率EAは、LDモジュールM1~M3の温度Te1~Te3に応じて変化する。したがって、LDモジュールM1~M3の残存寿命を予測するとき、温度検出器TD1~TD3で計測したLDモジュールM1~M3の温度Te1~Te3を考慮することで、LDモジュールM1~M3の残存寿命の予測精度を向上することが可能となる。
実施の形態8.
図31は、実施の形態8に従うレーザ光発生装置の要部を示す回路ブロック図であって、図2と対比される図である。図31を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態1と異なる点は、制御装置4が制御装置4Cで置換されている点である。制御装置4Cは、制御部11~13を制御部11C~13Cで置換したものである。本実施の形態8では、操作部3を用いて、発光させるLDモジュールMの数Nをレーザ出力設定値Pcに応じて変更するモードを設定することが可能となっており、そのモードが設定された場合には、操作部3から制御部11C~13Cに信号CM5が与えられる。
図32は、制御部11Cの構成を示すブロック図であって、図3と対比される図である。図32を参照して、制御部11Cが制御部11と異なる点は、通信/演算部21が通信/演算部21Aで置換されている点である。
通信/演算部21Aは、レーザ出力設定値Pcに応じて、発光させるLDモジュールMの数Nを求める。たとえば、レーザ出力設定値Pcが小さい場合にはN=1となり、レーザ出力設定値Pcが少し大きい場合にはN=2となり、レーザ出力設定値Pcが大きい場合にはN=3となる。求められたNは、指令部23に与えられる。
N=1である場合、制御部11C~13C(図31)のうちの制御部11Cの指令部23のみが電流指令値Ic1を出力する。N=2である場合、制御部11C~13Cのうちの2個の制御部11C,12Cの指令部23が電流指令値Ic1,Ic2を出力する。N=3である場合、全ての制御部11C~13Cの指令部23が電流指令値Ic1~Ic3を出力する。
制御部11Cの指令部23は、パワー検出器2の出力信号φPによって示される出力レーザ光βのパワーPの1/Nの値が、レーザ出力設定値Pcの1/Nの値になるように電流指令値Ic1を生成する。電流制御部24は、電流検出器CD1の検出値が電流指令値Ic1になるように、制御信号CNT1を生成する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
本実施の形態8では、レーザ出力設定値Pcが小さい場合、LDモジュールM1~M3のうちのいずれか1つのLDモジュール(たとえばM1)のみを発光させるので、実施の形態1よりも低パワーのレーザ光βを出力することができる。したがって、レーザ光βを用いて被加工物を加工する場合には、低パワーのレーザ光βを用いて微細で精密な加工を行なうことができる。
図33は、LDモジュールMの駆動電流IM(A)と電流リップル率Ri(%)との関係を示す図である。図33では、VLI=200V、VLO=50V、f=100kHz、L=100μHの条件で測定された結果が示されている。
たとえば、実施の形態1の比較例に係るレーザ光発生装置(図7)において、LDモジュールM10の駆動電流IMを20Aとした場合、LDモジュールM10の駆動電流IMに対する電流リップル率は、±9.4%となる。
一方、本実施の形態8のレーザ光発生装置において、実施の形態1の比較例に係るレーザ光発生装置(図7)と同じ出力を得るために、比較例と比べてLDの数量が3分の1であるLDモジュールM1に3倍の大きさの駆動電流IMである60Aを流した場合、LDモジュールM1の駆動電流IMに対する電流リップル率Riは、±3.1%となる。したがって、本実施の形態8では、低出力動作を行なう場合、LDモジュールM1~M3の駆動電流の電流リップル率Riを低減でき、安定したレーザ出力を得ることができる。
また、本実施の形態8によれば、安定したレーザ出力を得ることができるだけでなく、電力変換効率も向上させることができる。
図34は、レーザ出力と電力変換効率との関係を示す図である。この図34では、実施の形態8に係るレーザ光発生装置の特性を示す曲線(実線)と、実施の形態1の比較例に係るレーザ光発生装置(図7)の特性を示す曲線(点線)とが示されている。
以下、実施の形態8と、実施の形態1の比較例(以下、単に「比較例」と称する。)とを、レーザ出力が0~33%の低出力領域と、レーザ出力が33~66%の中出力領域と、レーザ出力が66~100%の高出力領域とに分けて比較する。
図34を参照して、実施の形態8では、レーザ出力を100%から低下させていくと、高出力領域及び中出力領域において94%程度の高い電力変換効率が得られ、レーザ出力が約20%以下になると電力変換効率が大きく低下する。
これに対して、比較例では、レーザ出力を100%から低下させていくと、高出力領域では94%程度の高い電力変換効率が得られているが、中出力領域になると電力変換効率が徐々に低下し、低出力領域になると電力変換効率が大きく低下する。
これは、比較例では、1つの電源部PS1によってLDモジュールM10を駆動するので、高出力時は電源部PS1の電力変換効率が高いが、低出力時は電源部PS1の電力変換効率が低くなるからである。このため、比較例では、低出力時の電力変換効率が低いという課題がある。
これに対して、実施の形態8では、発光させるLDモジュールMの数Nをレーザ出力設定値Pcに応じて変更するモードを設定することで、低出力時の電力変換効率を向上させることができる。
実施の形態8では、電源部PS1~PS3の各々の電力容量が、比較例に係るレーザ光発生装置(図7)の電源部PS1の電力容量の3分の1程度とされる。そして、低出力領域では、LDモジュールM1~M3のうちのいずれか1つのLDモジュール(たとえばLDモジュールM1)のみを発光させるために、電源部PS1~PS3のうち1つの電源部(たとえば電源部PS1)のみが使用される。また、中出力領域では、LDモジュールM1~M3のうちのいずれか2つのLDモジュール(たとえばLDモジュールM1,M2)のみを発光させるために、電源部PS1~PS3のうち2つの電源部(たとえば電源部PS1,PS2)のみが使用される。さらに、高出力領域では、LDモジュールM1~M3の全てを発光させるために、電源部PS1~PS3の全てが使用される。これにより、本実施の形態8では、低出力領域から高出力領域までの広範囲において、電源部PS1~PS3の電力変換効率を高くすることができる。
実施の形態8のレーザ光発生装置をレーザ加工装置として使用する場合、レーザ出力のリップル率が低減されるため、レーザ出力が小さい場合でも安定した精度のよい加工が可能となる。たとえば板厚が薄い板を加工するときにバリの少ない加工や微細加工が可能となる。また低出力でのレーザマーキングも可能となる。したがって、加工できる条件が大幅に広がる。したがって、レーザ加工精度の信頼性の向上を図ることができる。
また、レーザ出力設定値Pcが小さい場合には、LDモジュールM1~M3を1つずつ順次駆動させてもよい。その場合、電源部PS1、リアクトルL1、およびLDモジュールM1と、電源部PS2、リアクトルL2、およびLDモジュールM2と、電源部PS3、リアクトルL3、およびLDモジュールM3とを順次休止させることができるので、電源部PS1~PS3、リアクトルL1~L3、LDモジュールM1~M3の温度上昇を抑えることが可能となる。
実施の形態9.
図35は、実施の形態9に従うレーザ光発生装置の要部を示す回路ブロック図であって、図2と対比される図である。図35を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態1と異なる点は、制御装置4が制御装置4Dと置換されている点である。制御装置4Dは、制御装置4の制御部11~13をそれぞれ制御部11D~13Dと置換し、報知部50を追加したものである。
レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、LDモジュールM1~M3の故障を検出する故障検出モードを設定する。それに応じて操作部3は、故障検出モードの実行を指示する信号CM6を制御部11D~13Dに与える。制御部11D~13Dは、信号CM6に応答して、故障検出モードを実行する。
制御部11Dは、制御部11と同じ動作を行なう他、信号CM6に応答して、パワー検出器2の出力信号φPによって示されるレーザ光α1のパワーとレーザ出力設定値Pcとの差がなくなるように、電流指令値Ic1を生成してLDモジュールM1を発光させる。そして制御部11Dは、レーザ光α1のパワーが基準値Psよりも小さい場合には、LDモジュールM1の短絡故障が発生したと判別し、信号φS1を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。基準値Psは、LDモジュールMが故障しているか否かを判別する基準の電流値である。
また、制御部11Dは、電源部PS1を駆動させている場合に、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が0Aであるときは、LDモジュールM1の開放故障が発生したと判別し、信号φO1を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。
制御部12Dは、制御部11Dと同様であり、レーザ光α2のパワーが基準値Psよりも小さい場合には、LDモジュールM2の短絡故障が発生したと判別し、信号φS2を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。また、制御部12Dは、電源部PS2を駆動させている場合に、電流検出器CD2の出力信号φI2によって示される電流I2が0Aであるときは、LDモジュールM2の開放故障が発生したと判別し、信号φO2を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。
制御部13Dも、制御部11Dと同様であり、レーザ光α3のパワーが基準値Psよりも小さい場合には、LDモジュールM3の短絡故障が発生したと判別し、信号φS3を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。また、制御部13Dは、電源部PS3を駆動させている場合に、電流検出器CD3の出力信号φI3によって示される電流I3が0Aであるときは、LDモジュールM3の開放故障が発生したと判別し、信号φO3を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。
報知部50は、信号φS1~φS3が活性化レベルの「H」レベルにされた場合には、それぞれLDモジュールM1~M3の短絡故障が発生したことを音、光、画像等によってレーザ光発生装置の使用者に報知する。また、報知部50は、信号φO1~φO3が活性化レベルの「H」レベルにされた場合には、それぞれLDモジュールM1~M3の開放故障が発生したことを音、光、画像等によってレーザ光発生装置の使用者に報知する。
図36は、故障検出モード時における制御装置4Dの動作を示すフローチャートである。図36を参照して、ステップS1において制御装置4Dは、電源部PSを制御して、LDモジュールM1~M3のうちのいずれか1つ(以下では、LDモジュールM1とする。)に駆動電流IM(IM1)を供給する。
ステップS2において制御装置4Dは、LDモジュールM1に対応する電流検出器CD1の出力信号φI1に基づいて、LDモジュールM1に流れる駆動電流IM1が0Aであるか否かを判別し、駆動電流IM1が0Aである場合には、LDモジュールM1の開放故障が発生しているためステップS5に進み、駆動電流IM1が0Aでない場合には、ステップS3に進む。
ステップS3において、制御装置4Dは、駆動させたLDモジュールM1のレーザ出力が基準値Ps未満か否かを判別し、レーザ出力が基準値Ps未満である場合には、LDモジュールM1の短絡故障が発生しているためステップS5に進み、レーザ出力が基準値Ps未満でない場合には、ステップS4に進む。ステップS4において、制御装置4Dは、駆動させたLDモジュールM1は故障していないと判別し、ステップS8に進む。
制御装置4Dは、ステップS5においてLDモジュールM1の故障が発生したと判別し、ステップS6において報知部50を用いて故障が発生したことを報知し、ステップS7において故障しているLDモジュールM1の使用を中止する。具体的には、故障しているLDモジュールM1に対応する電源部PS1への制御信号の供給を停止し、LDモジュールM1への電流の供給を停止する。
ステップS8において、制御装置4Dは、故障の有無を未だ判別していないLDモジュールがあるか否かを判別し、未判別のLDモジュールがない場合には、故障検出モードの実行を終了する。未判別のLDモジュールがある場合には、制御装置4Dは、未判別のLDモジュールのうちのいずれか1つ(たとえばLDモジュールM2)に駆動電流IM(IM2)を供給し、ステップS2に戻る。全てのLDモジュールの故障の有無が判別されるまで、ステップS2~S9が繰り返し実行される。
制御装置4Dは、故障したLDモジュールが修理されるか新品と交換されるまで、レーザ出力設定値Pcによって示されるパワーのレーザ光βを出力するために、残りのLDモジュールMの駆動電流IMを変更する。
本実施の形態9に従うレーザ光発生装置によれば、LDモジュールMの故障の有無を検出し、故障していないLDモジュールを用いてレーザ光βを出力することができる。
また、実施の形態1の比較例に係るレーザ光発生装置(図7)では、1つのLDモジュールM10のみが設けられているので、LDモジュールM10が故障した場合、修理が完了するまで装置を動作させることができず、レーザ加工工程が、全停止してレーザ加工装置を備えた工場にとって、大きなロスが生じる恐れがある。
しかしながら、本実施の形態9では、LDモジュールM1~M3のいずれかが故障しても、他のLDモジュールでレーザ出力を補填して、レーザ加工を行なうことができるので、レーザ加工工程を停止させず、工場のロスを抑えることができる。
また、修理時、LDモジュール内のLDが1つ故障すると、LDモジュール毎交換する必要がある。比較例に係るレーザ光発生装置では、LDモジュールM10の中に、使用する全てのLDが含まれているので、1つのLDが故障すると、全てのLDを交換する必要がある。
一方、本実施の形態9に係るレーザ光発生装置では、LDモジュールM10と同数のLDが3つのLDモジュールM1~M3に分散されているので、1つのLDが故障しても、故障したLDが含まれるLDモジュール内のLDのみを交換するだけで済む。したがって、交換するLDの数を比較例と比べて3分の1に減らすことができ、修理費を低減できる。
なお、本実施の形態9では、短絡故障および開放故障の両方を検出しているが、短絡故障のみを検出してもよいし、開放故障のみを検出してもよい。
実施の形態10.
図37は、実施の形態10に従うレーザ光発生装置の要部を示す回路ブロック図であって、図24と対比される図である。図37を参照して、このレーザ光発生装置が実施の形態5と異なる点は、制御装置4Aが制御装置4Eと置換されている点である。制御装置4Eは、制御装置4Aの制御部11A~13Aをそれぞれ制御部11E~13Eと置換したものである。
レーザ光発生装置の使用者は、操作部3を操作して、LDモジュールM1~M3の故障を検出する故障検出モードを設定する。それに応じて操作部3は、故障検出モードの実行を指示する信号CM7を制御部11E~13Eに与える。制御部11E~13Eは、信号CM7に応答して、故障検出モードを実行する。
制御部11Eは、制御部11Aと同じ動作を行なう他、信号CM7に応答して、パワー検出器2の出力信号φPによって示されるレーザ光βのパワーPの1/3の値P/3と、レーザ出力設定値Pcの1/3の値Pc/3との差がなくなるように、電流指令値Ic1を生成してLDモジュールM1を発光させる。
そして、制御部11Eは、電圧検出器VD1の出力信号φV1によって示されるLDモジュールM1の端子間電圧V1が基準値Vsよりも小さい場合には、LDモジュールM1の短絡故障が発生したと判別し、信号φS1を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。基準値Vsは、LDモジュールMが故障しているか否かを判別する基準の電圧値である。
また、制御部11Eは、電源部PS1を駆動させている場合に、電流検出器CD1の出力信号φI1によって示される電流I1が0Aであるときは、LDモジュールM1の開放故障が発生したと判別し、信号φO1を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。
制御部12Eは、制御部11Eと同様であり、電圧検出器VD2の出力信号φV2によって示されるLDモジュールM2の端子間電圧V2が基準値Vsよりも小さい場合には、LDモジュールM2の短絡故障が発生したと判別し、信号φS2を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。また、制御部12Eは、電源部PS2を駆動させている場合に、電流検出器CD2の出力信号φI2によって示される電流I2が0Aであるときは、LDモジュールM2の開放故障が発生したと判別し、信号φO2を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。
制御部13Eも、制御部11Eと同様であり、電圧検出器VD3の出力信号φV3によって示されるLDモジュールM3の端子間電圧V3が基準値Vsよりも小さい場合には、LDモジュールM3の短絡故障が発生したと判別し、信号φS3を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。また、制御部13Eは、電源部PS3を駆動させている場合に、電流検出器CD3の出力信号φI3によって示される電流I3が0Aであるときは、LDモジュールM3の開放故障が発生したと判別し、信号φO3を非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げる。
図38は、故障検出モード時における制御装置4Eの動作を示すフローチャートであって、図36と対比される図である。図38のフローチャートが図36のフローチャートと異なる点は、ステップS1がステップS1A,S1Bで置換され、ステップS9がステップS9Aで置換されている点である。
図38を参照して、制御装置4Eは、ステップS1Aにおいて、全てのLDモジュールM1~M3にそれぞれ駆動電流IM1~IM3を供給し、ステップS1Bにおいて、LDモジュールM1~M3のうちのいずれか1つを指定する。また、ステップS8において、未判別のLDモジュールがあると判別された場合に、制御装置4Eは、ステップS9Aにおいて、未判別のLDモジュールのうちのいずれか1つを指定してステップS2に戻る。他の構成および動作は、実施の形態5,9と同じであるので、その説明は繰り返さない。
本実施の形態10に従うレーザ光発生装置によっても、LDモジュールMの故障の有無を検出し、故障していないLDモジュールを用いてレーザ光βを出力することができる。
また、実施の形態9では、短絡故障検出時において電源部PS1~PS3を1つずつ駆動させてLDモジュールM1~M3のレーザ出力を1つずつ計測するので、短絡故障の検出時間が長かった。これに対して、本実施の形態10では、短絡故障検出時において電源部PS1~PS3を同時に駆動させてLDモジュールM1~M3の端子間電圧V1~V3を同時に計測するので、短絡故障の検出時間を実施の形態9よりも短縮することができる。
また、LDモジュールM1~M3を1つずつ駆動させる必要がないため、レーザ加工中のように複数のLDモジュールを発光させている状態でも故障を検出できる。そのため、加工中にLDモジュールが故障することによる加工物のダメージを最小限にすることが可能である。
なお、本実施の形態10でも、短絡故障および開放故障の両方を検出しているが、短絡故障のみを検出してもよいし、開放故障のみを検出してもよい。
実施の形態11.
図39は、実施の形態11によるレーザ光発生装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図39を参照して、このレーザ光発生装置が図1のレーザ光発生装置と異なる点は、LDモジュールM1~M3がそれぞれLDモジュールM1A~M3Aで置換されている点である。
LDモジュールM1A~M3Aは、互いに異なる数のLDを有する。この例では、LDモジュールM1Aは直列接続された4個のLDを含み、LDモジュールM2Aは直列接続された3個のLDを含み、LDモジュールM3Aは直列接続された2個のLDを含む場合が示されている。なお、LDの数は、上記の数に限定されるものではない。
制御装置4は、レーザ出力設定値Pcに基づいて、3つのLDモジュールM1~M3のうちの少なくとも1つのLDモジュールを選択し、選択したLDモジュールを発光させる。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
本実施の形態11では、レーザ出力設定値Pcが小さい場合には、LDの直列数が少ないLDモジュールM3Aに駆動電流IM3のみに流すことにより、実施の形態1と比べて、より小さなレーザ出力を得ることができ、より低出力のレーザ光βを用いた加工が可能となる。
また、大きな出力を得るときはLDの直列数が多いLDモジュールM1Aを駆動し、小さな出力を得るときは、LDの直列数が少ないLDモジュールM3Aを駆動することにより、低出力から高出力までのレーザ出力を、階調的に得ることが可能となる。したがって、加工できる対象物の種類を増やすことが可能となる。
また、LDの直列数が多いLDモジュールM1Aからレーザ出力設定値Pcに近い出力のレーザ光α1を出力させ、LDの直列数の少ないLDモジュールM3Aの出力レーザ光α3によってレーザ出力を微調整するような制御をすることにより、レーザ出力の大きさを細かく制御することができる。したがって、高精度な加工をすることが可能となる。
実施の形態12.
図40は、実施の形態12に従うレーザ光発生装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図40を参照して、このレーザ光発生装置が図1のレーザ光発生装置と異なる点は、電源部PS1が副電源部PS1a,PS1bで置換され、電源部PS2が副電源部PS2a,PS2bで置換され、電源部PS3が副電源部PS3a,PS3bで置換されるとともに、リアクトルL1が副リアクトルL1a,L1bで置換され、リアクトルL2が副リアクトルL2a,L2bで置換され、リアクトルL3が副リアクトルL3a,L3bで置換されている点である。
副リアクトルL1a,L1bの一方端子はそれぞれ副電源部PS1a,PS1bの正極に接続され、それらの他方端子はともに直流正母線PL1に接続される。電流検出器CD1は、副リアクトルL1a,L1bの出力電流の和の電流I1を検出し、検出値を示す信号φI1を制御装置4に出力する。副電源部PS1a,PS1bの負極はともに直流負母線NL1に接続される。
副電源部PS1a,PS1bは、それぞれ副制御信号CNT1a,CNT1bによって駆動される。副制御信号CNT1a,CNT1bのパルスの位相は互いに180度ずれており、副電源部PS1a,PS1bはインターリーブ制御される。したがって、副リアクトルL1a,L1bの出力電流に含まれる電流リップルの位相は互いに180度ずれており、副リアクトルL1a,L1bの出力電流に含まれる電流リップルは互いに打ち消し合うので、実施の形態1と比べて、電流I1に含まれる電流リップルは小さくなり、LDモジュールM1から出力されるレーザ光α1のリップル率は小さくなる。
副リアクトルL2a,L2b及び副電源部PS2a,PS2b、並びに副リアクトルL3a,L3b及び副電源部PS3a,PS3bについても、副リアクトルL1a,L1b及び副電源部PS1a,PS1bと同様の構成を有する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
本実施の形態12では、各LDモジュールに対応して2つの副電源部を設け、2つの副電源部をインターリーブ制御するので、各LDモジュールに流れる電流の電流リップルを低減することができる。その結果、実施の形態1と比べて、出力レーザ光βに生じるリップル率をさらに低減することができる。また、電流リップルを平滑化する各リアクトルのインダクタンス値や平滑コンデンサの容量値をさらに小さくできるので、部品コストの低減化にも貢献できる。
図41は、実施の形態12の変形例を示す回路ブロック図であって、図40と対比される図である。図41を参照して、図40と異なる点は、副リアクトルL1a,L1bが磁気結合型リアクトル部U1を構成し、副リアクトルL2a,L2bが磁気結合型リアクトル部U2を構成し、副リアクトルL3a,L3bが磁気結合型リアクトル部U3を構成している点である。リアクトル部U1では、副リアクトルL1a,L1bが同一鉄心に巻回されて磁気結合されている。リアクトル部U2では、副リアクトルL2a,L2bが同一鉄心に巻回されて磁気結合されている。リアクトル部U3では、副リアクトルL3a,L3bが同一鉄心に巻回されて磁気結合されている。この変形例では、各リアクトルの小型化、部品コストの低減化を図ることができる。
実施の形態13.
実施の形態1では、LDモジュールM1~M3の駆動電流IM1~IM3に生じる電流リップルの位相が120度ずつずれるように、制御信号CNT1~CNT3の位相角度θ1~θ3をそれぞれ0度、60度、120度とした。これにより、理想的には、各LDモジュールM1~M3のレーザ出力のリップルが打ち消し合う効果により、レーザ光βのパワーPのリップルが低減される。
しかしながら、実際には、部品のばらつき(たとえば、リアクトルL1~L3のインダクタンス値のばらつき)により、電流IM1~IM3に生じる各電流リップルの大きさは異なる。たとえば、上記の式(1)から、リアクトルのインダクタンス値Lのばらつきが-20%である場合、電流リップルIRは+25%となり、インダクタンス値Lのばらつきが+20%である場合、電流リップルIRは-17%となる。このため、電流IM1~IM3に生じる電流リップルが重畳されて、レーザ光βのパワーPのリップルが増大する場合がある。そこで、本実施の形態13では、LDモジュールM1~M3に流れる各電流リップルの大きさに基づいて電流リップル間の位相差を調整することにより、レーザ光βのリップルを抑制してレーザ出力を安定化する。
なお、以下では、「電流リップル間の位相差」について、あるLDモジュールに流れる電流リップルの位相に対して、他のLDモジュールに流れる電流リップルの位相進み側の位相差と位相遅れ側の位相差とのうち絶対値が小さい方の位相差の大きさを「電流リップル間の位相差」と称することとする。
図42は、本実施の形態13の比較例におけるレーザ光発生装置の動作の一例を示すタイムチャートである。図42において、(A)~(C)はそれぞれLDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3の波形を示し、(D)は電流IM1~IM3を足し合わせたときの波形を示す。電流IM1~IM3を足し合わせた電流値は、レーザ光βのパワーPと比例関係にある。
この比較例では、電流IM1~IM3の電流リップル間の位相差は、互いに120度である。そして、リアクトルL1,L2のインダクタンス値が基準値に対して+20%ばらついており、リアクトルL3のインダクタンス値が基準値に対して-20%ばらついているものとしている。
この比較例では、各電流IM1~IM3の電流リップルは、電流IM1,IM2では約1.4A、電流IM3では約2Aであり、電流IM1~IM3を足し合わせた電流のリップル率は、約±4.0%である。
図43は、本実施の形態13に従うレーザ光発生装置の動作の一例を示すタイムチャートである。図43においても、(A)~(C)はそれぞれLDモジュールM1~M3に流れる電流IM1~IM3の波形を示し、(D)は電流IM1~IM3を足し合わせたときの波形を示す。
本実施の形態13では、各電流IM1~IM3の電流リップルの大きさから、レーザ出力が安定するように(レーザ光βのリップルが抑制されるように)制御信号CNT1~CNT3の位相角度θ1~θ3を制御することによって電流リップル間の位相差が調整される(調整方法については後述)。そして、この例でも、リアクトルL1,L2のインダクタンス値が基準値に対して+20%ばらついており、リアクトルL3のインダクタンス値が基準値に対して-20%ばらついているものとする。
したがって、本実施の形態13でも、各電流IM1~IM3の電流リップルは、電流IM1,IM2では約1.4A、電流IM3では約2Aである。一方、電流IM1~IM3を足し合わせた電流のリップル率は、レーザ出力が安定するように電流リップル間の位相差が調整されることにより、約±1.6%に抑えられている。
図44は、本実施の形態13に従うレーザ光発生装置における制御部11Fの構成を示すブロック図であって、図3と対比される図である。なお、図示しない制御部12F,13Fの構成も制御部11Fと同様であり、この図44では、制御部11Fの構成が代表的に示されている。図44を参照して、制御部11Fが図3の制御部11と異なる点は、通信/演算部21が通信/演算部21Bで置換されている点である。
通信/演算部21Bは、電流検出器CD1の出力信号φI1を受ける。そして、通信/演算部21Bは、図示しない他の制御部12F,13Fへ出力信号φI1を送信する。なお、他の制御部12F,13Fの各々も同様に、対応の電流検出器の出力信号を他の制御部へ出力する。これにより、各制御部において、電流検出器CD1~CD3の出力信号φI1~φI3が共有される。
通信/演算部21Bは、電流検出器CD1~CD3の出力信号φI1~φI3から、LDモジュールM1~M3に流れる各電流リップルの大きさを検出する。そして、通信/演算部21Bは、各電流リップルの大きさと電流リップル間の位相差との対応関係を用いて、検出された各電流リップルの大きさから電流リップル間の位相差を決定する。
各電流リップルの大きさと電流リップル間の位相差との対応関係は、予め作成されて記憶部22に記憶されている。上記対応関係は、種々の手法で作成することができる。たとえば、当該レーザ光発生装置の出荷前に、LDモジュールM1~M3に電流を流し、各電流リップルの位相を種々変化させてレーザ光βのパワーPの検出値を制御装置4にフィードバックする。そして、レーザ出力が最も安定する(レーザ光βのリップルが最小となる)各電流リップルの位相を取得し、各電流リップルの大きさと電流リップル間の位相差との対応関係(テーブル)を作成してもよい。
或いは、当該レーザ光発生装置からのレーザ出力前やキャリブレーション設定時に、LDモジュールM1~M3に電流を流して、上記と同様の手法により各電流リップルの大きさと電流リップル間の位相差との対応関係(テーブル)を作成してもよい。
図43に示した例では、上記のようにして作成された、各電流リップルの大きさと電流リップル間の位相差との対応関係を用いて、検出された各電流リップルの大きさから、電流IM1,IM3の電流リップル間の位相差、及び電流IM2,IM3の電流リップル間の位相差は144度に決定され、電流IM1,IM2の電流リップル間の位相差は72度に決定されている。
なお、本実施の形態13において、以下では、電流IM1の電流リップルと電流IM2の電流リップルとの位相差をΔRp1と称し、電流IM2の電流リップルと電流IM3の電流リップルとの位相差をΔRp2と称し、電流IM3の電流リップルと電流IM1の電流リップルとの位相差をΔRp3と称する。
そして、通信/演算部21Bは、決定された電流リップル間の位相差から、対応する制御信号CNT1の位相角度θ1を求め、電流制御部24に与える。このように、LDモジュールM1~M3に流れる電流リップル間の位相差を異ならせることで、レーザ光βのリップルを低減し、安定したレーザ出力を得ることができる。
このように、本実施の形態13では、LDモジュールM1~M3に流れる各電流リップルの大きさから、レーザ出力が安定するように(レーザ光βのリップルが抑制されるように)電流リップル間の位相差が調整される。すなわち、実施の形態1では、電流リップル間の位相差ΔRp1~ΔRp3が互いに同じ(120度)であったが、本実施の形態13では、位相差ΔRp1~ΔRp3が異なる。位相差ΔRp1~ΔRp3が異なるとは、位相差ΔRp1~ΔRp3のうちの2つが同じで1つが異なっていてもよいし、位相差ΔRp1~ΔRp3が互いに異なっていてもよい。言い換えると、本実施の形態13では、ピークが隣接する電流リップル間の位相差の大きさが均等にならないように、電流リップル間の位相差が調整される。
図45は、電流リップル間の位相差ΔRp1~ΔRp3が互いに同じであるときの電流波形を示した図である。図45を参照して、位相差ΔRp1~ΔRp3は、互いに等しく120度である。このような場合、リアクトルのインダクタンス値にばらつきがあると、図42に示したように、電流IM1~IM3を足し合わせた電流のリップル率(レーザ光βのリップル)が大きくなる可能性がある。
図46は、電流リップル間の位相差ΔRp1~ΔRp3が異なるときの電流波形の一例を示した図である。この例では、位相差ΔRp1~ΔRp3のうちの2つが同じで1つが異なる場合が示されている。
図46を参照して、位相差ΔRp2,ΔRp3は互いに等しく、位相差ΔRp1は位相差ΔRp2,ΔRp3と異なる。たとえば、位相差ΔRp2,ΔRp3は160度であり、位相差ΔRp1は40度である。すなわち、この例では、ピークが隣接する電流リップル間の位相差について、大きさの異なる2つの位相差が生じるように、電流リップル間の位相差が調整されている。
図47は、電流リップル間の位相差ΔRp1~ΔRp3が異なるときの電流波形の他の例を示した図である。この例では、位相差ΔRp1~ΔRp3が互いに異なる場合が示されている。
図47を参照して、位相差ΔRp1~ΔRp3は、たとえば、それぞれ120度、160度、80度である。すなわち、この例では、ピークが隣接する電流リップル間の位相差について、大きさの異なる3つの位相差が生じるように、電流リップル間の位相差が調整されている。
このように、本実施の形態13では、各電流リップルの大きさと電流リップル間の位相差との予め準備された対応関係に従って、各電流リップルの大きさに応じて電流リップル間の位相差ΔRp1~ΔRp3を適宜異ならせることにより、レーザ光βのリップルを抑制してレーザ出力を安定化することができる。
なお、上記では、LDモジュールM1~M3に流れる電流リップルの大きさは、それぞれ電流検出器CD1~CD3の出力信号φI1~φI3から検出するものとしたが、リアクトルL1~L3の温度から推定してもよい。
具体的には、リアクトルのコアには磁性材料が用いられることが多く、磁性材料としてよく使用されているフェライトコアの場合、透磁率がプラスの温度特性を有する。このため、リアクトルの温度が上昇すると、リアクトルのインダクタンス値が上昇する。そして、上記の式(1)を用いて、リアクトルのインダクタンス値(L)から電流リップルの大きさ(IR)を推定することができる。したがって、リアクトルの温度とインダクタンス値との関係を予測することにより、リアクトルの温度から電流リップルの大きさを推定することができる。
たとえば、リアクトルのインダクタンス値Lは、次式によって示すことができる。
L=k×μ×π×a2×n2/b …(3)
ここで、kは長岡係数、μは透磁率、a,b,nはそれぞれリアクトルの半径、長さ、巻数を示す。
上述のように、上記パラメータにおいて、透磁率μは温度により変化する。そこで、透磁率μの温度特性を仕様や評価試験等に基づき事前に取得しておくことにより、式(3)及び式(1)を用いて、リアクトルの温度から電流リップルの大きさを推定することができる。
実施の形態14.
図48は、レーザ光発生装置を備えるレーザ加工装置の構成を示す図である。図48において、レーザ加工装置は、レーザ光発生装置51、光ファイバ52、加工ヘッド53、レンズ54、および位置決め装置55を備える。
レーザ光発生装置51は、上記の各実施の形態及び各変形例のいずれかで説明したものであり、リップルの小さなレーザ光βを出力する。光ファイバ52は、レーザ光発生装置51から出力されたレーザ光βを加工ヘッド53に伝送する。加工ヘッド53は、対象物56の表面にレーザ光βを垂直に照射する。レンズ54は、加工ヘッド53と対象物56の間に設けられ、その焦点は対象物56の表面に合せられている。
対象物56は、位置決め装置55に搭載される。位置決め装置55は、対象物56を水平および垂直方向に移動させ、対象物56の表面の被加工位置をレンズ54の焦点に合せる。レーザ光発生装置51から出射されたレーザ光βは、光ファイバ52、加工ヘッド53、およびレンズ54を介して対象物56の被加工位置に照射され、対象物56を加工する。
本実施の形態14では、上述したレーザ光発生装置が用いられるので、リップルが小さな安定したレーザ光βを対象物56に照射することができ、レーザ加工時の加工断面の平坦精度の向上を図ることができる。
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。