JP7257805B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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(A)塩化ビニル系樹脂と、
(B)アクリル系ブロック共重合体と、
を含んでなり、
前記成分(B)が、メチルメタアクリレートブロックからなるハードセグメント、およびアルキルアクリレートブロックからなるソフトセグメントを含むブロック共重合体であることを特徴とするものである。
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物に使用される(A)塩化ビニル系樹脂は、-CH2-CHCl-で表される基を有する全ての重合体を指し、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニル-エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;後塩素化ビニル共重合体等の塩化ビニル単独重合体や塩化ビニル系共重合体を改質したもの;さらには塩素化ポリエチレン等の構造上塩化ビニル樹脂と類似の塩素化ポリオレフィンを包含するが、これらに限定されない。
塩化ビニル系樹脂に添加される(B)アクリル系ブロック共重合体は、メチルメタアクリレートブロックからなるハードセグメント、およびアルキルアクリレートブロックからなるソフトセグメントを含むブロック共重合体である。本発明においては、上記した特定のアクリル系ブロック共重合体を塩化ビニル系樹脂に添加することにより、従来の溶出や移行の問題が懸念されるフタル酸エステル等の可塑剤を使用することなく、成形性や耐候性を維持しながら、軟質用途に求められる十分な柔らかさを有する塩化ビニル系組成物を実現できる。その理由はハードセグメントのメチルメタアクリレートブロックが塩化ビニル系樹脂に相溶するため溶出がなく、ソフトセグメントのアルキルアクリレートブロックが樹脂組成物を軟化させ、成形性に寄与しているためであると考えられる。
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、加工性、特に押出加工性を考慮して、さらに(C)アクリル系加工助剤を含んでいてもよい。(C)アクリル系加工助剤としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルを主成分としたポリマーが挙げられる。
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、加工性、特に押出加工性を考慮して、さらに(D)滑剤を含んでいてもよい。(D)滑剤としては、内部滑剤ないし外部滑剤が挙げられる。内部滑剤とは、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を低下させ摩擦発熱を防止する目的で使用されるものであり、具体的には例えばブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の併用でもよい。外部滑剤とは、成形加工時の溶融樹脂と金型、バレルなどの金属面との滑り効果を上げる目的で使用されるものであり、具体的には例えばパラフィンワックス、ポリオレフィン系ワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の併用でもよい。
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、本発明の目的に反しない限度において、所望により、上記以外の熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤(例えば、ステアリン酸およびシリコンオイル等)、着色剤、無機充填剤、発泡剤、および難燃剤などをさらに含んでいてもよい。
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー、リボンブレンダー等の装置を用いてブレンドし、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー等の装置を用いて140~180℃の温度で混練することにより得ることができる。得られた塩化ビニル系樹脂コンパウンドは、適宜ペレット製造装置等を用いてペレット化することが好ましい。また、得られた塩化ビニル系樹脂コンパウンドを定法に従って溶融成形することにより所望の成形体を得ることができる。成形物の使用用途に応じて、射出成形、押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形、ブロー成形等の成形方法を適宜選択することができる。
硬度は、JIS K6253(2012)に準拠した測定により、デュロメータ硬さ(タイプA、15秒値)により評価した。試験片は、6mm厚にプレスしたシートを用いた。
引張強度(100%モジュラス(伸び100%時の引張応力を示す);MPa)は、JIS K6723に準拠して測定した。試験片は厚さ1mmのプレスシートを室温に12時間以上放置した後に、長さ115mm、幅25mmの2号形ダンベル試験片を採取した。試験はチャック間80±5mm、標線間25±1mmとし、23±2℃の室内で行い、試験速度は200mm/minとした。
非移行性は、恒温槽を使用し、温度70℃、時間72hr、荷重1kgfの条件下にて、移行板としてPS板およびABS板を用いて、試験片から移行版への非移行性を評価した。試験片は35mm×35mm×1mm厚のプレスシートを用い、ガラス板、移行板、試験片、移行板、ガラス板の順に重ね、最後に荷重を乗せ、以下の基準で評価した。
○:PS板およびABS板の何れにも痕跡が残らない。
△:PS板またはABS板の何れかに痕跡が残る。
×:PS板およびABS板の何れも若干浸食される。
××:PS板およびABS板の何れも著しく浸食される。
耐候性は、JIS B7753に準拠してサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(スガ試験機株式会社製、型式:S80HBBR)を用いて評価試験を行った。試験条件はブラックパネル温度63±3℃、照射条件120分中18分降雨、照射時間1000hrの条件下にて行った。試験片は30mm×60mm×1mm厚のプレスシートを用い、照射時間1000hr後のサンプルの外観から、以下の基準で評価した。
○:色調およびグロス共に変化なし。
△:色調およびグロス共に差が確認できる。
×:色調およびグロス共に差が確認でき、クラックが発生している。
単軸押出機(L/D=28)と平板型のダイスを使用し、ダイ出口樹脂温度180℃の条件で、一時混錬した熱可塑性樹脂組成物を、幅20mm、厚み1.0mmのテープの押出成形を行い、得られたテープの外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:得られたテープ表面には荒れやブツがなく、外観は良好である。
△:テープ表面に荒れを認める。またブツ不良を少数(長さ10cmのテープ中にブツが5個未満)認める。
×:テープ表面に荒れを認める。またブツ不良を多数(長さ10cmのテープ中にブツが5個以上)認める。
13mm×16mm×1mm厚のプレスシートを、恒温恒湿槽を使用し、温度50℃、湿度90%RHの条件下で10日間放置した後、表面を目視観察および触覚で、以下の基準で評価した。
○:目視および触覚でブリードが確認できない。
△:目視においてブリードは確認できないが、触覚においてブリードが確認できる。
×:目視および触覚でブリードが確認できる。
××:目視において顕著なブリードが確認できる。
成分(A)
(A-1)EVA・塩化ビニルグラフトコポリマー:TG-130(大洋塩ビ株式会社)
(A-2)PVCストレートポリマー:TK-1000(信越化学工業株式会社)
(B-1)MAM:LA-3320(クラリティ(登録商標)シリーズ、株式会社クラレ、PMMA比:15%、分子量(Mw):124,000)
(B-2)MAM:LA-2250(クラリティ(登録商標)シリーズ、株式会社クラレ、PMMA比:32%、分子量(Mw):68,000)
(B-3)MAM:LA-2270(クラリティ(登録商標)シリーズ、株式会社クラレ、PMMA比:40%、分子量(Mw):68,000)
(B-4)MAM:LK-9243(クラリティ(登録商標)シリーズ、株式会社クラレ、PMMA比:15%、分子量(Mw):10,000)
(C)アクリル系加工助剤:P-530A(メタブレン(登録商標)シリーズ、三菱ケミカル株式会社)
(D)滑剤:220MP(ハイワックスシリーズ、三井化学株式会社)
(E-1)熱可塑性エラストマー(TEEE):ハイトレルSB654(東レ株式会社)
(E-2)熱可塑性エラストマー(TPU):パンデックスT-5275(DIC株式会社)
(E-3)汎用可塑剤(DINP):フタル酸ジイソノニル(三菱ケミカル株式会社)
(E-4)耐久性可塑剤(TOTM):トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)(三菱ケミカル株式会社)
上記(A-1)5質量部、上記(B-1)95質量部、および安定剤(Ca/Zn系粉末安定剤)3質量部からなる配合物を用い、容量20Lの加圧ニーダーを使用し、排出時樹脂温度185℃の条件で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
上記で得た熱可塑性樹脂組成物を用い、サイズ8インチの2本ロールを使用して、分出しシートを作製した。次いで、得られた分出しシートを用い、熱プレス装置を使用して、温度180℃で2分間予熱し、続いて温度180℃、圧力100kg/cm2の条件で2分間加圧した後、冷却プレス装置を使用して、温度25℃、圧力20kg/cm2の条件で2分間冷却プレスし、所定厚み(1mm、2mm、または6mm)のプレスシートを作製した。
用いる塩化ビニル系樹脂組成物の各成分の配合を、表1~表3に示すように変更したこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表1~表3に示す。
用いる塩化ビニル系樹脂組成物の各成分の配合を、表4および表5に示すように変更したこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表4および表5に示す。
Claims (9)
- (A)塩化ビニル系樹脂と、
(B)アクリル系ブロック共重合体と、
を含んでなり、
前記成分(A)が、塩化ビニル-エチレン・酢酸ビニル共重合体であり、
前記成分(B)が、メチルメタアクリレートブロックからなるハードセグメント、およびアルキルアクリレートブロックからなるソフトセグメントを含むブロック共重合体であり、
前記成分(A)の含有量は、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して、10~40質量部であり、
前記成分(B)の含有量は、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して、60~90質量部である、塩化ビニル系樹脂組成物。 - 前記ブロック共重合体が、メチルメタアクリレートブロック-アルキルアクリレートブロックからなるジブロック構造、または、メチルメタアクリレートブロック-アルキルアクリレートブロック-メチルメタアクリレートブロックからなるトリブロック構造を有する、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ブロック共重合体において、前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの質量比が、3:97~40:60の範囲である、請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ブロック共重合体において、前記アルキルアクリレートブロックがブチルアクリレート単位および2-エチルヘキシルアクリレート単位からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記成分(B)の重量平均分子量が、20,000~700,000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記成分(A)および前記成分(B)の合計100質量部に対し、0.1~10質量部の(C)アクリル系加工助剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記(C)アクリル系加工助剤が、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー単位からなる単独重合体またはランダム共重合体である、請求項6に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記成分(A)および前記成分(B)の合計100質量部に対し、0.1~5質量部の(D)滑剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- JIS K6253(2012)に準拠したデュロメータ硬さ(タイプA)が30~85である、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
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