本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2018年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/754388号の米国法典第35編第120条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
ここで、その例が添付図面に示されている、ガラス物品を強化する方法および強化されたガラス物品の実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、同じまたは同様の部分を指すために、図面に亘り、同じ参照番号が使用される。本開示は、ガラス物品を強化する方法およびそれにより製造された強化されたガラス物品に関する。図1を参照すると、ここに開示された方法により強化されたガラス物品10が、概略示されている。ガラス物品10は、第一面14、第二面16、および第一面14と第二面16との間で測定された厚さtを有するガラス12を含む。ガラス12は、第一面14、第二面16、またはその両方から圧縮深さ(DOC)まで延在し、圧縮応力下にある1つ以上の圧縮領域20、およびDOCから内側に延在し、中央張力下にある中央領域を備える。圧縮領域20の各々は、第一面14および/または第二面16に隣接した表面領域22、および表面領域22からDOCまで延在する内部圧縮領域24を含む。この強化する方法は、ガラス12の表面領域22にカリウムイオンを導入する工程、そのカリウムイオンの少なくとも一部をガラス12中に、DOCを生じるのに十分なガラス内の深さまで拡散させるのに十分な温度で、十分な時間に亘りガラス12を熱処理する工程、および次いで、ガラス12の表面領域22に、400メガパスカル(MPa)以上であることのある圧縮応力を導入する工程を含む三段階強化過程である。ガラス物品10を強化する方法は、外部源からの損傷に抵抗するための機械的強度を提供するのに十分な圧縮応力およびDOCを有しつつ、ガラス12の中央領域30中に延在するひびが、ガラス12を通って自己伝搬(物品の破壊をもたらすことがある)しないほど十分に低い中央張力を有するガラス物品10を生じるであろう。
以下の記載において、同様の参照文字は、図面に示されたいくつかの図を通じて、同様のまたは対応する部分を示す。特に明記のない限り、「上部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と解釈されるべきではないことも理解されよう。それに加え、群が、複数の要素およびその組合せの群の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別に、または互いとの組合せで、のいずれかで、列挙をされたそれらの要素のいくつを含んでも、から実質的になっても、またはからなってもよいことが理解されよう。同様に、群が、複数の要素およびその組合せの群の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、個別に、または互いとの組合せで、のいずれかで、列挙をされたそれらの要素のいくつからなってもよいことが理解されよう。特に明記のない限り、値の範囲は、列挙された場合、その範囲の上限と下限の両方、並びにそれらの間の任意の範囲を含む。ここに用いられているように、名詞は、特に明記のない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。
ここに用いられているように、「ガラス物品」は、例えば、ガラス容器など、ガラスから作られた物品を称することがある。
ここに用いられているように、「圧縮深さ」(DOCと省略される)は、ガラス中の応力が圧縮層中の圧縮応力から中央領域中の引張応力に移行するガラス内の深さを称することがある。DOCは、強化過程中にカリウムまたは他のイオンが拡散するガラス中の深さに関連する。
ここに用いられているように、「層の深さ」(DOLと省略される)は、カリウムイオンの濃度が、ガラス中のカリウムイオンのバルク濃度に減少するガラス内の深さを称することがある。DOCは、DOLに比例し、DOLより大きさがわずかに小さいであろう。
ここに用いられているように、「閾値中央張力」は、それより上だと、中央領域中に延在する中央張力ひびが、第一面から第二面までガラスの厚さを通り、ガラスの横方向に亘り自己伝搬する、ガラスの中央領域内の中央張力の値を称することがある。
ここに用いられているように、「ホウケイ酸ガラス」および「ホウケイ酸ガラス組成物」という用語は、ガラス組成物の1質量%を超える濃度でホウ素を含むガラス組成物を称することがある。
広く図面を、特に図1を参照すると、説明は、特定の実施の形態を記載する目的のためであり、本開示または付随の特許請求の範囲をそれに限定する意図はないことが理解されよう。図面は、必ずしも、一定の縮尺ではなく、図面の特定の特徴および特定の視野は、明瞭さおよび簡潔さのために、縮尺または図式で誇張されて示されることがある。
ガラスは、光学的透明度、密封性、および化学的不活性を含む、いくつかの理由のために、医薬品包装のための好ましい材料である。しかしながら、ガラスパッケージは、その内容物の密封性または無菌性を損ない得る厚さ貫通亀裂を示し、それでもまだ内容物を効果的に収容することが可能である。厚さ貫通亀裂を防ぐために、ガラスは、ガラスの機械的強度および外部損傷源により生じるひびに抵抗する能力を改善するように強化されることがある。そのガラスは、圧縮応力の導入により強化されることがある。ガラス中に生じた圧縮応力は、ガラスの中央領域中に、またはガラスの厚さを完全に貫通して、延在するひびを生じるために克服されなければならない。そのような圧縮応力は、例えば、熱強化、イオン交換による化学強化、異なる弾性率および/または熱膨張係数(CTE)を有するガラスまたはガラスとプラスチック(例えば、ガラス/ガラスまたはガラス/プラスチック/ガラス積層)の積層、および/またはガラスのものと異なる弾性率および/またはCTEを有する材料のコーティングにより、導入されることがある。
図2を参照すると、ガラスを強化するための従来の過程50は、一段階イオン交換過程を含む。従来の過程50は、ガラスをガラス物品に転換する工程52、ガラスに一段階イオン交換過程を施す工程54、ガラスからイオン交換試薬を濯ぐ工程56、およびガラスを洗浄する工程58を含む。この一段階イオン交換過程54は、ガラスを、例えば、硝酸カリウム(KNO3)または硝酸ナトリウム(NaNO3)などのアルカリ金属塩を含むイオン交換浴中に浸す工程を含むことがある。このイオン交換浴は、少なくとも300℃の温度に維持されることがある。このイオン交換浴からの、カリウムイオンなどのより大きいアルカリ金属イオンは、ガラス中に拡散し、リチウムおよび/またはナトリウムなどのより小さいイオンを置換する。ガラス中のより小さいイオンの、より大きいアルカリ金属イオンによる置換によって、ガラス中に圧縮応力が生じる。このガラスは、より大きいアルカリ金属イオン(例えば、カリウム)がガラス中に、所定のDOCを生じるのに十分なガラス中の深さまで拡散するのに十分な期間に亘り、イオン交換浴と接触した状態に維持されることがある。
圧縮応力を導入した結果の1つは、容器などのガラス物品の反対の領域に引張応力が相補的に蓄積することである。物理的力平衡が維持されるためには、圧縮領域20中(圧縮)および中央領域30中(引張)の貯蔵弾性エネルギー(SEE)の量が等しくなければならない。ほとんどの場合、ガラス表面は大きい圧縮応力を経験し、内部はそれより大きさが小さい引張応力を経験する。したがって、ガラスの表面での大きい圧縮応力は、浅い深さに集中し、一方で、より小さい引張応力は、ガラスの厚さの大半に亘り分布される。
圧縮領域20(例えば、第1の圧縮層および第2の圧縮層)中の圧縮応力は、DOCから内側に延在する、ここではガラスの中央領域中の「中央張力」または「CT」とも称される、引張応力により釣り合わされる。一段階イオン交換過程を使用して強化されたガラスについて、全圧縮応力(例えば、第1の圧縮領域および第2の圧縮領域中の圧縮応力の合計)は、全中央張力と等しい。以下の式1は、従来のイオン交換により強化されたガラスにおける圧縮応力(CS)および中央張力(CT)の間の関係に関する式を与える:
式1において、Lはガラスの厚さであり、DOCはガラスの第一面からの圧縮深さであり、(L-DOC)はガラスの第二面からの圧縮深さである。CS(x)は、深さxの関数としての圧縮応力であり、CT(x)は、深さxの関数としての引張応力である。
従来の一段階イオン交換過程について、圧縮応力は、誤差関数プロファイルCS(x)=CS*ERFC(x)にしたがうことがある。それに加え、中央張力分布CT(x)は、中央張力領域内の実際の中央張力分布の密接近似(close approximation)として一定と考えられるであろう。それゆえ、一段階イオン交換過程のCSとCTとの間の関係は、以下の式2によりモデル化できる:
式2のある積分において、式3におけるCSと中央張力CTとの間の以下の関係が得られる:
式3において、DOCFSMは、下記に記載されたFSM法にしたがって測定された、ミリメートルで表される圧縮深さであり、tはガラスの厚さであり、αは1.37と等しい定数である。特に明記のない限り、中央張力CTerfcおよび圧縮応力CSは、ここではメガパスカル(MPa)で表されるのに対し、厚さtおよび圧縮深さDOCFSMはミリメートルで表される。式2および式3において先に示されたように、CTは、CSおよびDOCから決定される。一段階イオン交換過程について、CT、CS、およびDOCは全て相互に依存している。例えば、1.0mmの厚さ、400MPaのCS、および40マイクロメートル(μm)のDOCを有するガラスについて、式2から計算されたCTは、約17MPaであろう。それゆえ、一段階イオン交換について、CSまたはDOCのいずれかが変化すると、CTが変化する。
市販のホウケイ酸ガラス組成物は、従来の医薬品包装用途に使用されてきた。しかしながら、市販のホウケイ酸ガラス組成物のイオン交換は、難しく、他のタイプのガラスと比べて、ガラスの機械的強度を改善するのに十分な圧縮応力を生じるのに、より高い温度およびより長いイオン交換時間を要する。例えば、KNO3を含むイオン交換浴中の市販のホウケイ酸ガラスのイオン交換は、少なくとも300MPaの圧縮応力および30μmのDOCを生じるのに、少なくとも470℃のイオン交換温度および少なくとも20時間のイオン交換時間を要するであろう。
アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、イオン交換されると、ホウケイ酸ガラス組成物と比べて、ずっと大きい程度まで圧縮応力および圧縮深さを増加させるであろう。例えば、450℃の温度で、2時間以上(例えば、2時間から10時間)に亘るKNO3の浴中のアルミノケイ酸塩ガラスの一段階イオン交換により、ガラスの表面で、400MPa超、またさらには500MPa超の圧縮応力、および30μm超のDOCが生じることがある。先に述べたように、一段階イオン交換過程において、CS、DOC、およびCTは、CS、DOC、またはその両方を増加させて、中央張力(CT)を対応して増加させるように、相関している。それゆえ、1.0mm厚のアルミノケイ酸塩ガラスのCSおよびDOCを、それぞれ、400MPaおよび40μmに増加させると、ガラスのCTは17MPaに増加するであろう。
約13MPaを超える中央張力が、ガラスの中央領域中に貫通するひびが、ガラスの厚さを通り、ガラスの横方向に亘り自己伝搬するのに十分であることが分かった。13MPaを超える中央張力を有するガラスにおけるひびの自己伝搬が、その全ての内容がここに引用される、2018年8月23日に出願された同時係属出願第16/111160号明細書に述べられている。約13MPaを超える中央張力では、第一面から第二面までガラスの厚さを通り、ガラスの横方向に亘るひびの自己伝搬は、自発的に進行することがあり、医薬品容器(例えば、バイアル、アンプル、カートリッジ、注射器、広口瓶など)などのガラス物品を本来の目的に使用できなくすることがある。言い換えると、ガラスを通るひびの自己伝搬は、ガラス物品を完全に破損させることがある。CTが13MPaを超える場合、ひびの自己伝搬は、直ちに、または24時間未満、10時間未満、またさらには1時間未満の短い時間で、ガラス物品の完全な破壊/破損をもたらすであろう。いくつかの用途において、ひびの自己伝搬から生じるガラス物品の完全な破損は、貫通亀裂が容器の無菌性を損ない、その内容物を雰囲気にさらす欠陥のある医薬品容器の特定など、欠陥のあるガラス物品の兆候を与えることがある。これらの用途において、ガラス物品への損傷は、人の目に容易に見え、よって、内容物が患者に投与される前に、そのような欠陥のあるまたは損傷した物品は、在庫から除去することができる。ある場合には、ガラス物品(例えば、容器)の完全な破壊は、内容物の完全な損失をもたらすであろう。
しかしながら、いくつかの用途において、ガラス物品を本来の目的に使用できなくするひびの自己伝搬は、望ましくない。例えば、救急医療反応の分野において、ひび損傷に応じたガラス製医薬品容器の完全な破損は、内容物の完全な損失をもたらすことがあり、このため、重要な医薬組成物が、生死に関わる状況などの緊急事態に利用できなくなることがある。これらの状況下で、ガラス容器の内容物の利用可能性は、密封性または無菌性の損失から生じる内容物の汚染よりも重要であるであろう。それゆえ、特定の状況において、高い圧縮応力およびDOCを有し、中央張力が閾値中央張力より低い、ガラス物品が、外部損傷源により生じるひび損傷に抵抗するための高い機械的強度および改善された鋭い損傷応答(すなわち、遅れ破壊の虞を低下させるひびの減少した自己伝搬)を提供することによって、より適切であろう。それゆえ、高いCSとDOCおよび低いCTを有する、ガラス製医薬品容器などのガラス物品は、ひび損傷に対して耐性であることがあり、ガラスに生じる貫通亀裂の場合でさえも、内容物を収容する能力を維持するであろう。
ガラス物品を強化するための一段階イオン交換過程は、CS、DOC、およびCTの相互依存性のために、高いCSおよびDOCを有し、低いCTが閾値中央張力未満であるガラス物品を製造する能力に限りがあるであろう。先に述べたように、一段階イオン交換過程について、CS、DOC、およびCTは、CSおよび/またはDOCを変えることによって、CTが変わるように、相互依存性である。したがって、CSおよびDOCを増加させて、ガラスの機械的強度を改善するために、一段階イオン交換過程を使用して、ガラスがイオン交換される場合、中央張力も増加してしまう。CSおよびDOCを、ガラスの機械的強度を改善するのに十分な程度まで増加させると、中央張力を、閾値中央張力を超えて増加させるであろう。これにより、ひびが自己伝搬し、遅れ破壊の虞が増加してしまう。したがって、ガラス物品を強化して、高いCS、高いDOCおよびひびの自己伝搬を最小にし、ガラス物品の破損率を減少させるための減少したCTを有するガラス物品を製造する、ガラス物品を強化する方法が、継続して必要とされている。
応力プロファイルを操作して、ガラスの中央領域におけるCTを減少させるために、二段階イオン交換過程が提案されてきた。これらの二段階イオン交換過程において、第一段階は、ガラスを汚染された(poisoned)イオン交換浴中に浸漬して、DOCまで延在する低いCSを有する応力プロファイルを生じる工程を含む。ここに用いられているように、「汚染されたイオン交換浴」という用語は、イオン交換浴のアルカリ金属イオンではない他のイオンを相当な濃度で有するイオン交換浴を称することがあり、他のイオンは、ガラスをイオン交換するためのイオン交換浴の有効性を低下させる。例えば、典型的な汚染されたイオン交換浴は、より大きいカリウムイオンにより置換されるより小さいナトリウムまたはリチウムイオンをある濃度で含むことがある、または例えば、イオン交換浴の有効性を低下させる、カルシウムイオンなどの他のイオンを含むことがある。汚染されたイオン交換浴は、そのイオン交換浴中のイオンの20%超の汚染レベルを有することがある。第二段階において、そのガラスは、新鮮なイオン交換浴中に浸漬されて、ガラスの表面にカリウムイオンを加えて(spike)、表面でのCSを増加させる。所望のDOCおよびCTレベルを得るために、塩汚染レベルは、イオン交換浴に異物塩(すなわち、ガラス中に交換されることが意図されているイオンを含まない塩)を添加して、汚染レベルを所望のレベルに増加させることによる添加などによって、制御されなければならない。それゆえ、二段階イオン交換過程は、2つの別個のイオン交換浴を必要とする。
本開示のガラス物品を強化する方法は、高いCS、高いDOC、および閾値CTより低いCTを有する強化されたガラス物品を製造できるように、CS、DOC、およびCTの相互依存性をなくすように設計されている。図3を参照すると、本開示のガラス物品を強化する方法200を説明する流れ図が示されている。ガラス物品を強化する方法200は、第一面、第二面、および第一面から第二面まで測定された厚さtを有するガラスから作られたガラス物品を提供する工程202を含むことがある、三段階過程である。方法200は、ガラスの表面領域中にカリウムイオンを導入する工程204、そのカリウムイオンの少なくとも一部をガラス中に層の深さまで拡散させるのに十分な温度で、十分な時間に亘りガラスを熱処理する工程208、および次いで、400メガパスカル(MPa)以上であることがある圧縮応力をガラス12の表面領域22に導入する工程210を含む。圧縮応力を表面領域に導入した後のカリウムイオンのDOLは、少なくとも30μmのDOCを生じるのに十分であることがある。いくつかの実施の形態において、方法200は、必要に応じて、工程204の後であって、工程208の前に、ガラス物品を濯ぐ工程206を含むことがある。それに加え、いくつかの実施の形態において、方法200は、必要に応じて、表面領域に400MPaの圧縮応力を導入する工程の後、ガラスを濯ぐ工程212および/またはガラス物品を洗浄する工程214を含むことがある。
先に述べたように、CS、DOC、およびCTの相互依存性をなくすことにより、CS、DOC、およびCTのいずれか1つを独立して制御することが可能になるであろう。例えば、本開示のガラス物品を強化する方法は、それより上では、ひびが自己伝搬を示す、13MPaの閾値中央張力より低くCTを維持しつつ、400MPa超の第一面および/または第二面での圧縮応力および30μm以上のDOCを達成するためにガラスの強化を可能にする。このように、CTは、DOCおよびCSとは独立して制御
することができる。本開示のガラス物品を強化する方法は、外部源からの損傷に抵抗するのに十分な機械的強度、並びに改善された鋭い損傷応答(すなわち、ひびの自己伝搬により生じる遅れ破壊の低下した恐れ)を示す強化されたガラス物品を製造することができる。例えば、ガラスの表面でのより近いCSは、ガラス12の第一面14および/または第二面16においてひびを作るのに必要な損傷力(insult force)を増加させることがあり、圧縮領域20中に生じるひびが、ガラス12中にさらに伝搬するのを低下させるおよび/または防ぐことがある。より大きいDOCは、ひびが、引張下で中央領域30に到達するためにガラス12中に伝搬しなければならない深さを増加させることがある。このように、より高いCSおよびより大きいDOCは、ひびがDOCを通って中央領域30まで伝搬するのをより難しくする。しかしながら、ひびが中央領域中に伝搬したとしても、減少したCTは、ガラス物品が完全には破壊されないように、ひびの伝搬を低下させることによって、強化されたガラス物品が液体および固体を収容する能力を維持するであろう。それに加え、ここに開示された強化する方法は、1つのイオン交換浴で行うことができ、別の汚染されたイオン交換浴中の汚染レベルの制御を必要としない。ここで、ガラス物品を強化する方法の各工程をさらに詳しく説明する。
先に記載されたガラス物品を製造する方法は、厚さにより隔てられた第一面と第二面を有するガラスを提供する工程を含むことがある。このガラスは、この中に先に述べられた組成物から作られることがあり、以下に限られないが、スロットドロー法および/またはフュージョンドロー法を含むダウンドロー法、フロート法、注型法、以下に限られないが、Vello法、Danner法、およびブロー成形などの成形法等の、当該技術分野で公知の方法により成形されることがある。ガラス物品を強化する方法は、その物品の最終形状に既に転換されたガラス物品に行われる。ガラス物品を提供する工程202は、ある長さのガラス管、ガラスのシート、または他のガラスなどのガラス片をガラス物品に加工する工程を含むことがある。そのガラスは、ガラスが加熱され、次いで、機械的に変形されて、例えば、容器などの所望のガラス物品にガラスを成形する、1つ以上の熱転換工程により加工されることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス物品は、バイアル、カートリッジ、アンプル、注射器、広口瓶、または他の容器などのガラス容器(すなわち、ガラスから作られた容器)であることがある。医薬品容器の文脈で記載されているが、ガラス物品を強化する方法は、例えば、食品のためのボトルまたは他の容器、携帯型電子機器のためのカバーガラス、もしくは自動車または航空宇宙用途のためのガラスなどのガラス物品を強化する他の方法にも適用されるであろう。
図3における方法200の工程204においてガラス物品にカリウムイオンを導入する工程は、ガラス物品に初期イオン交換過程を施す工程を含むことがある。初期イオン交換過程中、ガラスは、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属硫酸塩、または他のアルカリ金属塩などのアルカリ金属塩を含むことがある初期イオン交換浴中に浸漬されることがある。初期イオン交換中、その初期イオン交換浴からのより大きいアルカリ金属イオンが、ガラスの表面領域中に拡散して、リチウムまたはナトリウムイオンのような、より小さいアルカリ金属イオンなどのより小さい金属イオンを置換することがある。この初期イオン交換過程は、ガラスの第一面に近接した表面領域およびガラスの第二面に近接した表面領域など、ガラスの表面領域中に前記量のカリウムイオンを導入する。
いくつかの実施の形態において、初期イオン交換浴のアルカリ金属塩は、硝酸カリウムであることがある。いくつかの実施の形態において、初期イオン交換浴は、新鮮なイオン交換浴または汚染されたイオン交換浴であることがある。カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンは、イオン交換に新鮮なイオン交換浴が使用される場合、ガラス中により速く拡散し、汚染されたイオン交換浴中の浸漬と比べて、減少したイオン交換時間をもたらす。初期イオン交換は、汚染されたイオン交換浴を使用して行われることがあるが、初期イオン交換に要する時間は、新鮮なイオン交換浴と比べて、長くなるであろう。それに加え、初期イオン交換中に新鮮なイオン交換浴中にガラスを浸漬することにより、初期イオン交換過程および最終イオン交換過程、並びに他の一段階イオン交換過程に、同じ浴を使用することが可能になるであろう。
初期イオン交換浴は、300℃以上、350℃以上、400℃以上、またさらには450℃以上の初期イオン交換温度に維持されることがある。初期イオン交換浴の初期イオン交換温度は、550℃以下、500℃以下、またさらには450℃以下であることがある。いくつかの実施の形態において、初期イオン交換浴は、300℃から550℃、または350℃から500℃、350℃から450℃、またさらには400℃から550℃の初期イオン交換温度に維持されることがある。いくつかの実施の形態において、初期イオン交換浴は、375℃から425℃の初期イオン交換温度に維持されることがある。約550℃を超える温度では、ガラス中の熱緩和がより著しくなることがあり、これにより、表面領域へのカリウムイオンの導入から生じる表面領域における圧縮応力が低下するであろう。初期イオン交換過程の温度上限は、初期イオン交換浴の化学的性質および成分との副反応によりさらに制限されることがある。例えば、硝酸カリウムは、約550℃より高い温度では、熱分解する、または初期イオン交換浴の他の成分と反応することがある。
ガラス物品のガラスは、初期イオン交換温度でガラスの表面領域中に前記量のカリウムイオンを導入するのに十分な初期イオン交換時間に亘り、初期イオン交換浴中に浸漬されることがある。いくつかの実施の形態において、初期イオン交換時間は、0.1時間以上、0.3時間以上、またさらには0.5時間以上であることがある。いくつかの実施の形態において、初期イオン交換時間は、0.9時間以下、またさらには0.8時間以下など、1時間以下であることがある。例えば、いくつかの実施の形態において、初期イオン交換時間は、0.1時間から1時間、0.1時間から0.9時間、0.1時間から0.8時間、0.3時間から1時間、0.3時間から0.9時間、またさらには0.3時間から0.8時間であることがある。約1時間を超える初期イオン交換時間では、長期間に亘る初期イオン交換温度へのガラスの暴露により生じるガラスの熱緩和により、より大きいアルカリ金属イオンの導入により生じた表面領域における圧縮応力が低下するであろう。初期イオン交換時間を1時間以下に維持すると、ガラス中の熱緩和が最小になり、それによって、カリウムイオンの導入により生じた圧縮応力が維持されるであろう。高温での初期イオン交換時間は、初期イオン交換浴の化学的性質および初期イオン交換浴の成分との副反応によっても、制限されることがある。
いくつかの実施の形態において、ガラスの表面領域中にカリウムイオンを導入する工程は、熱処理および最終イオン交換過程後に、30μm超のDOCおよび13MPa未満の中央張力を達成するのに十分にガラスの表面領域に前記量のカリウムイオンを導入するのに十分に長い初期イオン交換時間に亘り400℃以上の初期イオン交換温度でガラスに初期イオン交換を施す工程を含むことがある。いくつかの実施の形態において、ガラスの初期イオン交換は、400℃から550℃の初期イオン交換温度で、0.1時間から1.0時間の初期イオン交換時間に亘り行われることがある。
初期イオン交換過程によってガラスの表面領域に導入されるカリウムイオンの量は、DOCおよびCTの目標値に基づいて決定されることがある。そのカリウムイオンの量は、ガラスの圧縮領域における圧縮応力を維持しながら、熱処理工程中に目標DOCを生じるのに十分なガラス中の深さまでカリウムイオンをガラス中に拡散させられるのに十分であることがある。言い換えると、カリウムイオンをガラス中にさらに拡散させるために行われる熱処理工程中に、圧縮応力が、要求されるレベル未満に低下するのを防ぐために、初期イオン交換中に十分なカリウムが表面領域中に堆積されることがある。
ガラス中にDOCおよびCTの目標値を生じるために最初のイオン交換中にガラスの表面領域に導入されるカリウムイオンの量は、先に述べた式2および/または式3を使用して、一段階イオン交換過程として初期イオン交換過程をモデル化することによって推測することができる。表面領域に導入されるカリウムイオンの量は、初期イオン交換温度、初期イオン交換時間、またはその両方を調節することによって、さらに微調整されるであろう。いくつかの実施の形態において、ガラス物品を強化する方法は、ガラス物品に初期イオン交換過程を施す工程、ガラスの表面領域に導入されるカリウムイオンの量を決定する工程、および初期イオン交換過程の初期イオン交換温度、初期イオン交換時間、またはその両方を調節して、ガラスの表面領域の各々の中に、決定された量のカリウムイオンを導入する工程を含むことがある。
イオン交換時間の終わりに、ガラスから作られたガラス物品は、初期イオン交換浴から取り出すことができる。いくつかの実施の形態において、ガラス物品のガラスは、濯がれて、ガラスの表面(例えば、第一面および第二面)から、初期イオン交換浴からの試薬を除去することがある。
再び図3を参照すると、ガラス物品を強化する方法は、ガラス物品に初期イオン交換過程を施した後など、ガラスの表面領域にカリウムイオンを導入した後、ガラス物品を熱処理する工程(工程208)を含む。表面領域にカリウムイオンを導入した後にガラス物品を熱処理すると、ガラスの表面領域中のカリウムイオンが、DOLまで(すなわち、ガラスの中心に向かって)さらにガラス中に拡散するであろう。熱処理中にカリウムイオンが拡散されるDOLは、ガラス中に目標DOCを生じるのに十分であることがある。さらにガラス中にカリウムイオンが拡散すると、ガラスの内部圧縮領域(その各々は、表面領域の一方からDOCまで延在する)中に圧縮応力が生じることがある。DOLまでさらにガラス中にカリウムイオンが拡散すると、DOCが増加することがあり、これにより、ガラスの深いひび領域の耐荷重性能が改善されるであろう。言い換えると、DOCが増加すると、ひびが、引張応力下にある、ガラスの中央領域に到達するのにガラス中に貫通しなければならない深さが増加するであろう。このガラスの耐荷重性能は、ガラスの機械的強度に関連し、ガラスの破損または壊滅的破壊を生じるのに要する、ガラスに印加される力の量を称する。ガラスの耐荷重性能は、ここに提示された実施例に関してさらに詳しく述べられる。
ガラス物品のガラスを熱処理する工程は、カリウムイオンの少なくとも一部を、表面領域から、30μm以上のDOCを生じるのに十分なDOLまで拡散させるのに十分な熱処理時間に亘り、十分な熱処理温度にガラスを曝す工程を含むことがある。熱は、熱処理時間の終わりにガラス物品から除去されるであろう。いくつかの実施の形態において、ガラス物品のガラスは、ガラス物品を、熱処理温度に維持されたオーブンまたは他の加熱装置内に配置し、熱処理時間の終わりにガラス物品をオーブンから取り出すことによって、熱処理されることがある。その熱処理温度は、350℃以上、400℃以上、またさらには450℃以上であることがある。いくつかの実施の形態において、熱処理温度は、600℃以下、550℃以下、またさらには500℃以下であることがある。いくつかの実施の形態において、熱処理温度は、350℃から550℃、400℃から550℃、またさらには400℃から500℃など、350℃から600℃であることがある。この熱処理温度のプロセスウィンドウは、熱処理から塩浴の化学的性質の制限がなくなるために、最初のイオン交換過程の最初のイオン交換温度のプロセスウィンドウよりも大きいであろう。どの特定の理論で束縛する意図もないが、熱処理中、ガラスは、イオン浴中で経験する高い表面応力などの高い表面応力に曝されないと考えられる。ガラス中の熱緩和は、温度、時間、および応力により決定されるので、ガラスが経験する表面応力の低下により、初期イオン交換に適した温度および時間の範囲と比べて、実質的な熱緩和を経験せずに、ガラスが、より高い熱処理温度およびより長い熱処理時間に耐えられるであろう。
熱処理時間は、ガラスの表面領域中のカリウムイオンの少なくとも一部をDOLまで拡散させるのに十分であることがあり、カリウムイオンを導入し、そのカリウムイオンをDOLまで拡散させることによって生じる圧縮領域中の圧縮応力を維持するためにガラスの熱緩和を最小にするのに十分に短いことがある。例えば、いくつかの実施の形態において、熱処理時間は、表面領域からのカリウムイオンをガラス中に、ガラスにおいて少なくとも30μmのDOCを生じるのに十分であるDOLまで拡散させるのにその熱処理温度で十分であることがある。いくつかの実施の形態において、その熱処理時間は、1時間以上、2時間以上、またさらには3時間以上であることがある。いくつかの実施の形態において、熱処理時間は、24時間以下、20時間以下、10時間以下、またさらには5時間以下であることがある。いくつかの実施の形態において、熱処理時間は、1時間から24時間、1時間から10時間、1時間から5時間、2時間から24時間、2時間から10時間、または2時間から5時間であることがある。
特定のDOCを達成する熱処理時間は、熱処理温度に依存するであろう。例えば、熱処理温度が上昇するにつれて、特定のDOCを達成するための熱処理時間が減少する。同様に、熱処理温度が低下するにつれて、特定のDOCを達成するための熱処理時間が増加する。したがって、熱処理温度を上昇させると、特定のDOCを達成する熱処理時間が減少するであろうし、これにより、サイクル時間が減少し、ガラス物品の生産速度が増加するであろう。しかしながら、熱処理温度を上昇させると、ガラス内の熱緩和が増加するであろうし、これにより、ガラスに導入され、DOLまで拡散されたカリウムイオンにより生じる圧縮応力が減少し得る。熱緩和により生じる圧縮領域中の圧縮応力が減少すると、ガラスの機械的強度が低下し、ガラスの耐荷重性能および損傷抵抗が低下するであろう。したがって、熱処理温度および熱処理時間は、生産速度と熱緩和とのバランスをとるように変えられるであろう。
ガラスを熱処理する工程は、熱処理中に熱処理温度を変化させる工程を含むことがある。いくつかの実施の形態において、ガラスを熱処理する工程は、熱処理時間中ずっと熱処理温度を連続的に上昇または低下させる工程を含むことがある。他の実施の形態において、ガラスを熱処理する工程は、ガラスを、熱処理時間中に複数の熱処理温度に曝す工程を含むことがある。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラスは、第1の熱処理時間に亘り第1の熱処理温度で第1の熱処理に、第2の熱処理時間に亘り第2の熱処理温度で第1の熱処理に施されることがある。ガラスは、熱処理中に2、3、4、5、または5より多い異なる熱処理温度に曝されることがある。
いくつかの実施の形態において、ガラスは濯がれて、初期イオン交換過程の後であって、ガラスを熱処理する工程の前に、表面(例えば、第一面および第二面)からイオン交換材料を除去することがある(図3、工程206)。しかしながら、熱処理前にガラス表面を濯がないまたは洗浄しないことには、ガラスの最終応力プロファイルおよび耐荷重性能にごくわずかしか影響がないことが分かった。ガラス物品を濯ぐ工程(工程206)は、浸漬濯ぎ(すなわち、ガラス物品のガラスを水または他の有機溶媒などの溶媒中に浸漬して、イオン交換試薬を濯ぎ落とす工程)を含むことがある。
図3に示されるように、ガラスの熱処理(工程208)後、前記方法は、第一面に近接した表面領域および第二面に近接した表面領域など、ガラスの表面領域に400MPa以上の圧縮応力を導入する工程を含むことがある。いくつかの実施の形態において、ガラスの表面領域に圧縮応力を導入する工程は、ガラスを最終イオン交換過程に施して、ガラスの第一面および/または第二面で測定して、400MPa以上の圧縮応力を生じる工程を含むことがある。言い換えると、最終イオン交換過程は、ガラスの表面領域に、カリウムイオンなどのより大きいアルカリ金属イオンを高濃度で「加えて(spike)」、ガラスの表面領域中の圧縮応力を増加させるために使用されることがある。
その最終イオン交換過程は、ガラス物品のガラスを最終イオン交換温度に維持された最終イオン交換浴中に浸漬する工程を含むことがある。その最終イオン交換浴は、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属硫酸塩、または他のアルカリ金属塩などのアルカリ金属塩を含むことがある。そのアルカリ金属塩のアルカリ金属は、ガラス組成物の他の金属イオン(例えば、ナトリウムおよびリチウムイオンなど、他のより小さいアルカリ金属イオン)よりもサイズが大きいことがある。最終イオン交換中、最終イオン交換浴からのより大きいアルカリ金属イオンは、ガラスの表面領域中に拡散して、リチウムまたはナトリウムイオンのようなより小さいアルカリ金属イオンなど、より小さい金属イオンを置換することがある。その最終イオン交換過程は、追加の量のカリウムイオンまたは他のより大きいアルカリ金属イオンをガラスの表面領域中に導入する。いくつかの実施の形態において、その最終イオン交換浴は、硝酸カリウムを含むことがある。いくつかの実施の形態において、最終イオン交換浴は、新鮮なイオン交換浴またはわずかに汚染されたイオン交換浴であることがある。ここに用いられているように、「わずかに汚染されたイオン交換浴」は、20質量%超の汚染レベルを有する「汚染されたイオン交換浴」と比べて、約5質量%未満の低い汚染レベルを有するイオン交換浴を称する。その浴のわずかな汚染は、浴の連続使用から生じることがあり、それにより、イオン交換中に置換される、ガラスからの少濃度のより小さいアルカリ金属イオンが蓄積されるであろう。
その最終イオン交換浴は、400℃以下、375℃以下、またさらには350℃以下など、450℃以下の最終イオン交換温度に維持されることがある。最終イオン交換浴を450℃以下の最終イオン交換温度に維持すると、最終イオン交換中に圧縮領域で生じる熱緩和の程度が最小になることがある。いくつかの実施の形態において、最終イオン交換中にガラスの熱緩和を低下させると、表面領域とDOCとの間の内部圧縮領域中の圧縮応力の減少が低下するまたは防がれることがある。いくつかの実施の形態において、最終イオン交換温度は、300℃以上、325℃以上、またさらには350℃以上であることがある。いくつかの実施の形態において、最終イオン交換浴は、300℃から450℃、または325℃から450℃、300℃から400℃、またさらには350℃から400℃の最終イオン交換温度に維持されることがある。
ガラス物品のガラスは、第一面、第二面、またはその両方に少なくとも400MPaの圧縮応力を生じるのに十分な最終イオン交換時間に亘り最終イオン交換浴中に浸漬されることがある。いくつかの実施の形態において、最終イオン交換時間は、0.1時間以上、0.3時間以上、またさらには0.5時間以上であることがある。いくつかの実施の形態において、最終イオン交換時間は、0.9時間以下、またさらには0.8時間以下など、1時間以下であることがある。例えば、いくつかの実施の形態において、最終イオン交換時間は、0.1時間から1時間、0.1時間から0.9時間、0.1時間から0.8時間、0.3時間から1時間、0.3時間から0.9時間、またさらには0.3時間から0.8時間であることがある。約1時間を超える最終イオン交換時間では、長期間に亘る最終イオン交換温度へのガラスの暴露により生じるガラスの熱緩和により、圧縮領域、特に、表面領域とDOCとの間の内部圧縮領域における圧縮応力が低下し、それによって、ガラス物品の深いひび領域の耐荷重性能が低下することがある。最終イオン交換時間を1時間以下に維持すると、ガラス中の熱緩和が最小になり、それによって、内部圧縮領域における圧縮応力が維持されるであろう。ガラス物品のガラスは、最終イオン交換時間の終わりに最終イオン交換浴から取り出すことができる。
いくつかの実施の形態において、前記方法は、最終イオン交換過程後に、ガラス物品に最終濯ぎ(工程212)および/または最終洗浄を行って、ガラスの表面から過剰のアルカリ金属塩および他の試薬を除去する工程を含むことがある。この最終濯ぎは、ガラス物品を浸漬濯ぎする工程を含むことがある。
再び図1を参照すると、この強化する方法により、外部源からの損傷に抵抗する改善された機械的強度を有し、ガラス12の中央領域30中に延在するひびの自己伝搬により生じる遅れ破壊を低下させるための低下した中央張力を有するガラス物品10が製造されることがある。ガラス物品10は、第一面14、第二面16、および第一面14と第二面16との間の距離として測定される厚さtを有するガラス12から作られる。ガラス12は、第一面14、第二面16、またはその両方からDOCまで延在する圧縮領域20を有する。圧縮領域20は、圧縮応力下にある。このガラスは、第一面14から第1のDOCまで延在する第1の圧縮層および第二面16から第2のDOCまで延在する第2の圧縮層を有することがある。圧縮領域20が、第一面14に近接した第1の圧縮層および第二面16に近接した第2の圧縮層のいずれかまたは両方を示すことが意図されている。ガラス12は、中央張力(CT)下にあり、DOCから内側に延在し、圧縮領域20間(すなわち、第1の圧縮層と第2の圧縮層との間)に配置された中央領域30をさらに含む。
ガラス12の厚さtは、ガラス容器などの容器を形成するのに十分であることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス12の厚さtは、0.5mm以上、0.7mm以上、またさらには0.9mm以上など、0.3mm以上であることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス12の厚さtは、医薬品容器の基準に準拠するのに十分であることがある。ガラス12の厚さtは、4.0mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下、1.5mm以下、またさらには1.1mm以下など、6.0mm以下であることがある。いくつかの実施の形態において、そのガラスの厚さtは、0.3mmから2.0mm、0.5mmから6.0mm、0.8mmから2.0mm、0.9mmから1.7mm、または0.5mmから1.1mmなど、0.3mmから6.0mmであることがある。バイアル、カートリッジ、およびボトルなどの複雑な包装形状は、容器の全体に亘り様々な壁厚を有してもよいことが理解されよう。
DOC(例えば、第1のDOCおよび/または第2のDOC)は、ひびが、引張応力下にある、中央領域30に到達するのにガラス中に延在しなければならない深さを増加させるのに十分であることがある。圧縮領域20中に延在するひびは、圧縮領域20中の圧縮応力により抑えることができる。圧縮領域20のDOCが増加するにつれて、ひびが延在し、中央領域30に到達するのに圧縮領域20を貫通しなければならない深さが増加する。それゆえ、圧縮領域20のDOCを増加させると、ひびが圧縮領域20を通って中央領域30中に延在する確率を低下させることによって、ガラスの損傷抵抗が増加するであろう。いくつかの実施の形態において、ガラス12のDOC(例えば、第1のDOCおよび/または第2のDOC)は、40μm以上、またさらには50μm以上など、30μm以上であることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス12のDOC(例えば、第1のDOCおよび/または第2のDOC)は、30μmから80μm、40μmから70μm、またさらには30μmから50μmなど、30μmから100μmであることがある。いくつかの実施の形態において、各DOCは、ガラス12の厚さtの15%から25%であることがある。
圧縮領域20は、ガラスに、取扱い、保管、輸送など、外部損傷源からの損傷に抵抗する機械的強度を与えるのに十分な圧縮応力を有することがある。圧縮領域20における圧縮応力を増加させると、ガラス12の第一面14および/または第二面16にひびが生じるのに必要な損傷力が増加する。圧縮領域20における圧縮応力を増加させると、圧縮領域20におけるひびが、ガラス12の中央領域30など、ガラス12中にさらに伝搬するのを低下させるおよび/または防ぐこともある。いくつかの実施の形態において、ガラス12の圧縮領域20は、第一面14および/または第二面16で測定して、400MPa以上、450MPa以上、またさらには500MPa以上の圧縮応力を有することがある。いくつかの実施の形態において、圧縮領域20は、第一面14および/または第二面16で測定して、1000MPa以下、800MPa以下、750MPa以下、またさらには700MPa以下の圧縮応力を有することがある。いくつかの実施の形態において、ガラス12の圧縮領域20は、ガラス12の第一面14および/または第二面16で測定して、450MPaから700MPaなど、400MPaから750MPaの圧縮応力を有することがある。
まだ図1を参照すると、各圧縮領域20は、表面領域22および内部圧縮領域24を含むことがある。表面領域22は、第一面14および/または第二面16などの表面に近接していることがあり、ガラス12の表面から内側にガラス12の中心に向かって延在することがある。表面領域22は、最終イオン交換過程からのカリウムイオンがガラス中に貫通する、ガラス12中への距離により規定されることがある。表面領域22は、DOCより小さい表面領域厚さを有することがある。各内部圧縮領域24は、対応する表面領域22から対応するDOCまで延在することがある。各内部圧縮領域24は、初期イオン交換過程中に導入され、熱処理中にガラス12中に拡散したカリウムイオンを含むことがある。初期イオン交換過程から生じた表面領域22中のカリウムイオンの少なくとも一部は、最終イオン交換過程中に内部圧縮領域24中にさらに拡散することがある。表面領域22は、内部圧縮領域24中のカリウムイオン濃度および圧縮応力と比べて、より大きい濃度のカリウムイオンおよびより大きい圧縮応力を有することがある。
それに加え、表面領域22におけるガラス中の深さの関数としてのカリウムイオン濃度の勾配の大きさは、内部圧縮領域24における深さの関数としてのカリウムイオン濃度の勾配の大きさよりも大きいことがある。図4を参照すると、一段階イオン交換が施されたアルミノケイ酸塩ガラス(402)、一段階イオン交換過程が施されたホウケイ酸ガラス(404)、およびここに開示されたガラスを強化する三段階方法が施されたアルミノケイ酸塩ガラス(406)に関する、ガラス中の深さの関数としてのカリウムイオン濃度がグラフ表示されている。一段階イオン交換が施されたアルミノケイ酸塩ガラス(402)について、カリウムイオン濃度は、深さの増加と共に、着実に減少する。同様に、一段階イオン交換が施されたホウケイ酸ガラス(404)についても、カリウムイオン濃度は、深さの増加と共に、着実に減少する。ここに開示された三段階強化過程が施されたアルミノケイ酸塩ガラス(406)に関して、カリウムイオン濃度は、表面(深さ=0μm)から表面領域の深さ(すなわち、深さの関数としてのカリウムイオン濃度の勾配が変化する深さ)まで、表面領域(曲線406の第1の領域410により示される)中のより大きい平均勾配により示されるように、表面領域において急激に減少する。図4において、表面領域の深さは約15μmであるが、この深さは、最初のイオン交換過程、熱処理および/または最終イオン交換過程に選択される条件に応じて変化するであろう。曲線406の第2の領域412により示される、このガラスの内部圧縮領域において、カリウムイオン濃度は、表面領域である、曲線406の第1の領域410と比べて、より小さい割合で、深さの増加と共に減少する。このように、図4は、ここに開示された三段階強化過程により、ガラスの圧縮領域内に2つの別個の領域を有するアルミノケイ酸塩ガラスが製造されることを示す。
まだ図4を参照すると、本開示の三段階強化過程が行われたアルミノケイ酸塩ガラスについて、表面でのカリウムイオン濃度は、一段階イオン交換が施されたアルミノケイ酸塩ガラスの表面でのカリウムイオン濃度より小さいことがある。しかしながら、この三段階強化過程を使用して製造されたアルミノケイ酸塩ガラスは、最終イオン交換中のより少ない熱緩和のために、一段階イオン交換により製造されたガラスと比べて、表面でより大きい圧縮応力を示すことがある。一段階イオン交換のより長いイオン交換時間中に、450℃を超える温度のイオン交換浴に曝されると、熱緩和が生じることがあり、これにより、一段階イオン交換により強化されたガラスの表面での圧縮応力が減少する。図4は、ここに開示された三段階強化過程により製造されたアルミノケイ酸塩ガラスが、一段階イオン交換により強化されたホウケイ酸ガラスと比べて、より大きいDOCおよび表面でのより大きい圧縮応力(表面でのより大きいカリウムイオン濃度により示されるように)を示すことがあることも示す。
再び図1を参照すると、そのガラスの中央領域30は、それより上では、中央領域30中に貫通するひびが、ガラスの厚さを通って自己伝搬する、閾値CTより低いCTを有することがある。閾値中央張力より上では、中央領域30中に貫通するひびは、ガラスを横方向に通るひびの自己伝搬を示すことがある。ガラス12の中央領域30中に貫通するひびの自己伝搬により、ひびの導入後に直ちに、またはある期間内で、ガラス12が完全に破壊されることがある。ガラス12の中央領域30中に延在するひびの自己伝搬挙動に対する中央張力の影響が、その両方がここに全て引用される、2013年2月27日に出願された米国特許第9850162号、および2018年8月23日に出願された同時係属の米国特許出願第16/111160号の各明細書にさらに記載されている。中央領域30中のひびの自己伝搬により生じる破壊は、ガラス容器などのガラス物品を、目的の用途にとって役に立たなくしてしまうであろう。
この中に先に述べたように、いくつかの用途において、ガラス物品の完全な破壊をもたらすひびの自己伝搬は、望ましくない。例えば、いくつかの用途において、ガラス物品が完全に破壊/破損せずに貫通亀裂を維持できる、ガラス容器などのガラス物品が、より望ましいことがある。ここに開示されたガラスを強化する方法により製造されるガラス物品10は、それより低いと、中央領域30中に延在するひびが、ガラス12の厚さを通り、ガラス12を横方向に通るひびの自己伝搬を経験しない、閾値CTより小さい、中央領域30における中央張力を有することがある。それゆえ、ここに開示されたガラスを強化する方法が施されたガラス物品10は、容器などのガラス物品10の完全な破壊をもたらすひびの自己伝搬なく、ガラス12の中央領域30中に延在するひび損傷を維持することがある。いくつかの実施の形態において、ガラス12の中央領域30中の中央張力は、12MPa以下、またさらには10MPa以下など、13MPa未満であることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス12は、8MPaから12MPaの中央領域30中の中央張力を有することがある。
先に述べたように、ここに記載された三段階強化過程は、CSおよびDOCに対するCTの依存性をなくし、CT、CS、およびDOCの独立した制御を可能にすることがある。例えば、DOCは、熱処理工程の熱処理温度および/または熱処理時間を増加または減少させることによって、増加または減少することがある。CTは、初期イオン交換の初期イオン交換時間を増加または減少させることによって、増加または減少することがある。DOCに対するCT依存性を変えるために、イオン交換時間の増加または減少が、熱処理温度および/または熱処理時間における対応する変化を伴うことがある。例えば、CTを増加させるために、初期イオン交換時間を増加させて、初期イオン交換において表面領域22に導入されるカリウムイオンの量を増加させることがある。この増加した初期イオン交換時間によりガラス中により多くのカリウムイオンが貫通することを相殺するために、熱処理の熱処理温度および/または熱処理時間を減少させて、増加したCTと共に同じ目標DOCを達成することがある。CSは、最終イオン交換時間および/または最終イオン交換温度を増加または減少させることによって、増加または減少させることができる。CSを増加または減少させることに、同じDOCおよびCTを維持するための熱処理に対する変更が伴うことがある。それゆえ、CT、DOC、およびCSの各々は、独立して制御することができる。
DOCおよびCSに対するCTのこの独立した制御により、ガラスを強化して、中央領域30中に貫通するひびが、厚さを通り、ガラスに横方向に亘るひびの自己伝搬を示す閾値より高くCTを増加させずに、損傷に抵抗する増加した機械的強度を与えることができる。
いくつかの実施の形態において、物品はガラスから作られている。そのガラスは、第一面および第二面を有することがある。そのガラスは、第一面、第二面、またはその両方からDOCまで延在する圧縮領域であって、圧縮応力下にある圧縮領域、および引張応力下にある中央領域であって、DOCから内側に延在する中央領域をさらに含むことがある。第一面、第二面、またはその両方で測定される圧縮応力は、400メガパスカル(MPa)以上であることがあり、DOCは、少なくとも30マイクロメートル(30μm)であることがあり、中央張力は、それより上では、中央領域中の貯蔵弾性エネルギーが、中央領域中に延在するひびを、第一面から第二面までガラスの厚さを通り、ガラスの横方向に通り自己伝搬させるのに十分である、閾値中央張力より低い。いくつかの実施の形態において、中央張力は、13MPa未満であることがある。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、第一面に近接した第1の圧縮領域および第二面に近接した第2の圧縮領域を含むことがある。
医薬品、血清、ワクチンなどのための容器として典型的に使用される市販のホウケイ酸ガラス(ASTM E438-92(実験室の装置におけるガラスの標準仕様)タイプ1、クラスAガラス-3.3ppm/K、タイプ1、クラスBガラス-5.1ppm/K)は、典型的に使用される期間に亘り、イオン交換されたときに、200MPaから300MPaの範囲の圧縮応力を達成するためだけに強化されることがある。300MPa以上の圧縮応力を得るために、そのようなホウケイ酸ガラスは、470℃より高い温度で少なくとも20時間に亘りイオン交換されなければならず、これにより、強化されたホウケイ酸ガラスを製造するための加工時間が大幅に増加する。それゆえ、これらの市販のホウケイ酸ガラスは、高い圧縮応力を達成するために容易にイオン交換されないであろう。それゆえ、そのようなガラスは、300MPaを超える圧縮応力を有する強化ガラスと比べて、外部損傷源からの損傷にそれほど耐性がない。その結果として、取扱い、輸送および他の外部損傷源により生じる損傷によるホウケイ酸ガラス容器の破損率は、より大きいであろう。対照的に、ここに開示された三段階強化過程により強化されるガラスは、それより高いと、中央領域30中に延在するひびの自己伝搬によりガラスが破壊される、閾値CTより低くCTを維持しつつ、実用的な時間で300MPa超、またさらには400MPa超の圧縮応力を達成することがある。
いくつかの実施の形態において、ガラスから作られた容器などのガラス物品は、少なくとも1種類のアルミノケイ酸塩ガラスを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含むことがある。いくつかの実施の形態において、容器などのガラス物品は、ASTM基準タイプ1bのガラス組成物に入るガラス組成物を含むことがある。
いくつかの実施の形態において、容器などのガラス物品は、2011年10月25日に出願され、同じ名称を有する米国仮特許出願第61/551133号からの優先権を主張する、「Alkaline Earth Alumino-Silicate Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題する、Melinda Drake等による2012年10月25日に出願された米国特許出願第13/660141号明細書に記載されたものなどの化学的に耐久性のあるガラスから作られることがある。その両方の出願の内容が、ここに全て引用される。この例示のガラス組成物は、概して、SiO2、Al2O3、少なくとも1種類のアルカリ土類酸化物、および少なくともNa2OおよびK2Oを含むアルカリ酸化物を含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、ホウ素およびホウ素を含有する化合物を含まないこともある。これらの成分の組合せは、化学分解に耐性があり、イオン交換による化学強化にも適しているガラス組成物を可能にする。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、清澄剤として、および/またはガラス組成物の化学的耐久性をさらに高めるために、添加されることのある、例えば、SnO2、ZrO2、ZnOなどの1種類以上の追加の酸化物を少量、さらに含むことがある。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、約67モル%から約75モル%のSiO2、約6モル%から約10モル%のAl2O3、約5モル%から約12モル%のアルカリ酸化物、および約9モル%から約15モル%のアルカリ土類酸化物を含有する。このアルカリ酸化物は少なくともNa2OおよびK2Oを含む。他の実施の形態において、ここに記載されたガラスは、約67モル%から約75モル%のSiO2、約6モル%から約10モル%のAl2O3、約5モル%から約12モル%のアルカリ酸化物、および約9モル%から約15モル%のアルカリ土類酸化物を含む。このアルカリ土類酸化物は、SrOおよびBaOの少なくとも一方を含む。
いくつかの実施の形態において、容器などのガラス物品は、2011年10月25日に出願され、同じ名称を有する米国仮特許出願第61/551163号からの優先権を主張する、「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題する、Paul S. Danielson等による、2012年10月25日に出願された米国特許出願第13/660450号明細書に記載されたものなどの化学的に耐久性のあるガラスから作られることがある。その両方の出願の内容が、ここに全て引用される。このアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、概して、SiO2、Al2O3、少なくとも1種類のアルカリ土類酸化物、およびNa2Oおよび/またはK2Oなどの1種類以上のアルカリ酸化物を含み、ホウ素およびホウ素を含有する化合物を含まない。そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物は、リンおよびリンを含有する化合物を含まないこともある。これらの成分の組合せは、化学分解に耐性があり、イオン交換による化学強化にも適しているガラス組成物を可能にする。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、清澄剤として、および/またはガラス組成物の化学的耐久性をさらに高めるために、添加されることのある、例えば、SnO2、ZrO2、ZnO、TiO2、As2O3などの1種類以上の追加の酸化物を少量、さらに含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのようなガラスは、約67モル%から約78モル%のSiO2、約3モル%から約13モル%のアルカリ土類酸化物、Xモル%のAl2O3、およびYモル%のアルカリ酸化物を含むことがある。そのアルカリ酸化物は、8モル%より多い量でNa2Oを含み、1を超えるY:Xの比を有することがある。他の実施の形態において、そのようなガラスは、約67モル%から約78モル%のSiO2、約3モル%から約13モル%のアルカリ土類酸化物であって、0.1モル%以上かつ1.0モル%以下の量のCaOを含むことのあるアルカリ土類酸化物、2モル%以上かつ10モル%以下のXモル%のAl2O3、およびYモル%のアルカリ酸化物を含むことがあり、Y:Xの比は1より大きい。米国仮特許出願第61/551163号および同第61/551133号の各明細書に記載されたガラス組成物は、ホウ素およびホウ素の化合物を含まず、イオン交換可能であり、それによって、機械的耐久性を改善するためにガラスの化学強化を促進する。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約64モル%から約68モル%のSiO2、約12モル%から約16モル%のNa2O、約8モル%から約12モル%のAl2O3、0モル%から約3モル%のB2O3、約2モル%から約5モル%のK2O、約4モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約5モル%のCaOを含むことがあり、ここで、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)-Al2O3≧2モル%、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である。このガラスは、その内容がここに全て引用される、2007年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/930808号に優先権を主張する、2007年7月27日に出願された、「Down-Drawable, Chemically Strengthened Glass for Cover Plate」と題する、Adam J. Ellison等による米国特許第7666511号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、アルミナの内の少なくとも1つ、およびアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類酸化物の少なくとも一方を含むことがあり、-15モル%≦(R2O+R’O-Al2O3-ZrO2)-B2O3≦4モル%、式中、Rは、Li、Na、K、Rb、およびCsの内の1つであり、R’は、Mg、Ca、Sr、およびBaの内の1つである。いくつかの実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約62モル%から約70モル%のSiO2、0モル%から約18モル%のAl2O3、0モル%から約10モル%のB2O3、0モル%から約15モル%のLi2O、0モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約18モル%のK2O、0モル%から約17モル%のMgO、0モル%から約18モル%のCaO、および0モル%から約5モル%のZrO2を含むことがある。このガラスは、その内容がここに全て引用される、2008年11月29日に出願された米国仮特許出願第61/004677号に優先権を主張する、2008年11月25日に出願された、「Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許第8158543号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約60モル%から約70モル%のSiO2、約6モル%から約14モル%のAl2O3、0モル%から約15モル%のB2O3、0モル%から約15モル%のLi2O、0モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約10モル%のK2O、0モル%から約8モル%のMgO、0モル%から約10モル%のCaO、0モル%から約5モル%のZrO2、0モル%から約1モル%のSnO2、0モル%から約1モル%のCeO2、約50ppm未満のAs2O3、および約50ppm未満のSb2O3を含むことがあり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。このガラスは、その内容がここに全て引用される、2008年2月26日に出願された米国仮特許出61/067130号に優先権を主張する、2009年2月25日に出願された、「Fining Agents for Silicate Glasses」と題する、Sinue Gomez等による、米国特許出願第12/392577号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO2およびNa2Oを含むことがあり、ここで、このガラスは、ガラスが35キロポアズの粘度を有する温度T35kpを有し、ジルコンが分解して、ZrO2およびSiO2を形成する温度T分解は、T35kpより高い。いくつかの実施の形態において、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約61モル%から約75モル%のSiO2、約7モル%から約15モル%のAl2O3、0モル%から約12モル%のB2O3、約9モル%から約21モル%のNa2O、0モル%から約4モル%のK2O、0モル%から約7モル%のMgO、および0モル%から約3モル%のCaOを含むことがある。このガラスは、その内容がここに全て引用される、2009年8月29日に出願された米国仮特許出61/235762号に優先権を主張する、2010年8月10日に出願された、「Zircon Compatible Glasses for Down Draw」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/856840号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも50モル%のSiO2と、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の改質剤とを含むことがあり、ここで、[(Al2O3(モル%)+B2O3(モル%))/(Σアルカリ金属改質剤(モル%))]>1である。いくつかの実施の形態において、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約50モル%から約72モル%のSiO2、約9モル%から約17モル%のAl2O3、約2モル%から約12モル%のB2O3、約8モル%から約16モル%のNa2O、および0モル%から約4モル%のK2Oを含むことがある。そのガラスは、その内容がここに全て引用される、2009年8月21日に出願された米国仮特許出61/235767号に優先権を主張する、2010年8月18日に出願された、「Crack And Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」と題する、Kristen L. Barefoot等による、米国特許出願第12/858490号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO2、Al2O3、P2O5、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物(R2O)を含むことがあり、ここで、0.75≦[(P2O5(モル%)+R2O(モル%))/M2O3(モル%)]≦1.2、式中、M2O3=Al2O3+B2O3である。いくつかの実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約40モル%から約70モル%のSiO2、0モル%から約28モル%のB2O3、0モル%から約28モル%のAl2O3、約1モル%から約14モル%のP2O5、および約12モル%から約16モル%のR2Oを含むことがあり、特定の実施の形態において、約40から約64モル%のSiO2、0モル%から約8モル%のB2O3、約16モル%から約28モル%のAl2O3、約2モル%から約12モル%のP2O5、および約12モル%から約16モル%のR2Oを含むことがある。そのガラスは、その内容がここに全て引用される、2010年11月30日に出願された米国仮特許出61/417941号に優先権を主張する、2011年11月28日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold」と題する、Dana C. Bookbinder等による、米国特許出願第13/305271号明細書に記載されている。
さらに他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約4モル%のP2O5を含むことがあり、ここで、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1、式中、M2O3=Al2O3+B2O3、およびRxOは、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価と二価の陽イオン酸化物の合計である。いくつかの実施の形態において、その一価と二価の陽イオン酸化物は、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、およびZnOからなる群より選択される。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、0モル%のB2O3を含むことがある。そのガラスは、その内容がここに全て引用される、2011年11月16日に出願された米国仮特許出61/560434号に優先権を主張する、2012年11月15日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する、Timothy M. Grossによる米国特許出願第13/678013号明細書に記載されている。
さらに他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2および少なくとも約11モル%のNa2Oを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、Al2O3と、B2O3、K2O、MgOおよびZnOの内の少なくとも1つとをさらに含み、ここで、-340+27.1・Al2O3-28.7・B2O3+15.6・Na2O-61.4・K2O+8.1・(MgO+ZnO)≧0モル%である。特別な実施の形態において、そのガラスは、約7モル%から約26モル%のAl2O3、0モル%から約9モル%のB2O3、約11モル%から約25モル%のNa2O、0モル%から約2.5モル%のK2O、0モル%から約8.5モル%のMgO、および0モル%から約1.5モル%のCaOを含むことがある。そのガラスは、その内容がここに全て引用される、2011年7月1日に出願された米国仮特許出61/503734号に優先権を主張する、2012年6月26日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Compressive Stress」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第13/533296号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、先に記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、イオン交換可能であり、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2Oであって、Na2Oを含むR2O、Al2O3であって、Al2O3(モル%)<R2O(モル%)であるAl2O3、およびB2O3を含むことがあり、ここで、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%である。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2、約9モル%から約22モル%のAl2O3、約3モル%から約10モル%のB2O3、約9モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約5モル%のK2O、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、またはその組合せ、および必要に応じて、CaO、BaO、およびSrOの内の少なくとも1つを含み、ここで、0≦MgO≦6モル%および0≦ZnO≦6モル%、0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%である。これらのガラスは、その内容がここに全て引用される、「Zircon Compatible, Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等により、2012年5月31日に出願された、米国仮特許出願第61/653489号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、先に記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、イオン交換可能であり、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2Oであって、Na2Oを含むR2O、Al2O3であって、-0.5モル%≦Al2O3(モル%)-R2O(モル%)≦2モル%であるAl2O3、およびB2O3を含むことがあり、ここで、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧4.5モル%である。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2、約12モル%から約22モル%のAl2O3、約4.5モル%から約10モル%のB2O3、約10モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約5モル%のK2O、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、またはその組合せ、および必要に応じて、CaO、BaO、およびSrOの内の少なくとも1つを含み、ここで、0モル%≦MgO≦6モル%および0≦ZnO≦6モル%、0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%である。これらのガラスは、その内容がここに全て引用される、「Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等により、2012年5月31日に出願された、米国仮特許出願第61/653485号明細書に記載されている。
いくつかの実施の形態において、先に記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、リチウム、ホウ素、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、アンチモン、およびヒ素の内の少なくとも1つを実質的に含まない(すなわち、その含有量が0モル%である)ことがある。
いくつかの実施の形態において、ガラスを強化するためのここに開示された三段階方法は、イオン交換により容易に強化されない、既存の市販のホウケイ酸ガラスと比べて、より容易にイオン交換されるであろう組成を有するイオン交換可能なホウケイ酸ガラスに行われることがある。いくつかの実施の形態において、ガラスを強化する三段階方法は、イオン交換可能なホウケイ酸ガラスに施されることがある。いくつかの実施の形態において、そのイオン交換可能なホウケイ酸ガラスは、72モル%以上かつ82モル%以下のSiO2、1モル%以上かつ6モル%以下のAl2O3、3モル%以上かつ16モル%以下のB2O3、5モル%以上かつ12モル%以下のNa2O、0.30モル%以上かつ1.5モル%以下のK2O、0.10モル%以上かつ6.00モル%以下のMgO、および0.50モル%以上かつ4.0モル%以下のCaOを含むことがある。このイオン交換可能なホウケイ酸ガラスは、イオン交換により強化されることができ、厚さtを有することがある。このイオン交換可能なホウケイ酸ガラスの構成成分の濃度は、13≦0.0308543*(188.5+((23.84*Al2O3)+(-16.97*B2O3)+(69.10*Na2O)+(-213.3*K2O))+((Na2O-7.274)2*(-7.3628)+(Al2O3-2.863)*(K2O-0.520)*(321.5)+(B2O3-9.668)*(K2O-0.520)*(-39.74)))/tとなるようなものであることがある。これらのガラスは、その内容がここに全て引用される、「Ion Exchangeable Borosilicate Glass Compositions and Glass Articles Formed from the Same」と題する、Robert Anthony Schaut等により、2018年8月13日に出願された、米国仮特許出願第62/718213号明細書に記載されている。
いくつかの実施の形態において、先に記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、スロットドロー法、フュージョンドロー法、リドロー法など、当該技術分野で公知の過程によってダウンドロー可能であることがあり、少なくとも130キロポアズの液相粘度を有することがある。いくつかの実施の形態において、先に記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、チューブドロー法および管などからの再成形に適していることがあり、少なくとも10キロポアズ、いくつかの実施の形態において、少なくとも約40キロポアズの液相粘度を有することがある。
ここに開示された方法により強化されるガラス物品は、外部損傷に抵抗するための機械的強度を有する、医薬品容器などのガラス容器に使用されることがあるが、中央領域に貫通する、またはガラスの厚さを全て通るひびに応答してガラス物品の破壊を経験しない。貫通亀裂は、医薬組成物などの組成物を雰囲気に暴露することがあり、これにより、組成物の完全性が破られることがあるが、その容器は、完全なままであり、その組成物を収容することができるであろう。それゆえ、その内容物は、貫通亀裂にもかかわらず、ガラス容器内に保持され、その内容物を、必要なときに利用可能にできるであろう。ここに用いられているように、「容器」および「入れ物」などの用語は、貯蔵のために固体または流体を保持するように適合された任意の物品を称する。その容器は、いくつかの実施の形態において、密封可能であることがある。そのガラス物品は、ワクチン、生物製剤、薬剤、食品、溶液などの無菌物質を保持するためのバイアルなどの、容器または入れ物に使用されることがある。そのような容器の非限定例としては、ガラスバイアル、ボトル、食品の広口瓶、カートリッジ、注射器、アンプルなどが挙げられる。ここに開示された方法によって強化されるガラス物品は、例えば、家電製品用のカバーガラス、もしくは航空宇宙または自動車用途の強化ガラスなど、他の物品に使用されることもある。
試験方法
圧縮応力およびDOC
圧縮応力およびDOCは、当該技術分野で公知の手段を使用して測定することができる。そのような手段としては、以下に限られないが、株式会社ルケオ(日本国、東京都)により製造されているFSM-6000などの市販の機器を使用した表面応力の測定(FSM)が挙げられ、圧縮応力および圧縮深さを測定する方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題するASTM 1422C-99、および「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat-Strengthened, and Fully-Tempered Flat Glass」と題するASTM 1279.19779に記載されており、その内容が、ここに全て引用される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関係する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。次いで、SOCは、その両方とも、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM標準C770-98(2008)に記載されている、ファイバおよび四点曲げ法、並びにバルクシリンダ法など、当該技術分野で公知の方法によって測定される。
カリウム濃度プロファイル
ガラスの組成、特に、ガラス内の深さの関数としてのガラス中のカリウムイオンの濃度プロファイルは、電子プローブマイクロアナライザを使用する電子プローブ微量分析(EPMA)を使用して決定することができる。
表面加水分解抵抗(SHR)
ガラスの化学的耐久性は、当該技術分野で公知の加水分解試験方法にしたがい、ここに全て引用される、米国薬局方(USP)標準品600に記載されている、表面加水分解抵抗(SHR)を行うことによって決定できる。USP 600の下での表面加水分解抵抗試験の結果は、容器中の水の体積を滴定するのに必要な塩酸(HCl)消費量として報告されており、100ミリリットル(mL)の水当たりの0.01モル濃度(M)のHClのミリリットル(mL)の単位で与えられている。
コーン破壊試験
医薬組成物用のカートリッジなどのガラス物品の機械的強度は、コーン破壊試験を行うことによって、評価されることがある。図5を参照すると、ガラスカートリッジ100の機械的強度を評価するためのコーン破壊試験が示されている。ガラスカートリッジ100は、側壁102、首部104、フランジ106、および首部104とフランジ106の反対にある開放端108を備えている。このコーン破壊試験は、円錐形または円錐台形のストッパー110をカートリッジ100の開放端108中に配置する工程、およびこのカートリッジの中心軸Aと平行な方向(すなわち、図5の座標軸の-Z方向)にカートリッジ100から突出するストッパー110の端部112に力Fを印加する工程を含む。この力Fは、カートリッジ100が開放端108で破損するまで増加させられ、破損を生じるのに要した力Fが記録される。力Fを印加し、測定するために、標準機器を利用できる。コーン破壊試験は、カートリッジ、注射器、または他の開放端を有する物品など、開放端を備えたどの容器または物品にも行うことができる。
水平圧縮試験
医薬組成物用のカートリッジなどのガラス物品の機械的強度は、水平圧縮試験を行うことによって、評価されることもある。図6を参照すると、水平圧縮試験は、第1のプレート120と第2のプレート122との間にカートリッジ100を配置する工程、およびカートリッジ100のフランジ106と開放端108との間の中点で第1のプレート120と第2のプレート122に対抗する力Fを印加する工程を含むことがある。力Fは、側壁102に垂直な方向(すなわち、図6の座標軸の±Xまたは±Yであって、中心軸Aに対して垂直な方向)に印加される。力Fは、カートリッジ100が破損するまで増加させられ、破損を生じるのに要した力Fが記録される。力Fを印加し、測定するために、標準機器を利用できる。水平圧縮試験は、カートリッジ、バイアル、注射器、アンプル、広口瓶、容器、または他の物品に行うことができる。
片持ちカートリッジ試験
カートリッジ100などのガラス物品の機械的強度は、片持ちカートリッジ試験を行うことによって、評価されることもある。図7を参照すると、片持ちカートリッジ試験は、カートリッジ100の側壁102と接触して、第1のプレート120と第2のプレート122との間の定位置にカートリッジ100を固定する工程を含むことがある。第3のプレート130がフランジ106に対して配置され、力Fが、フランジ106の外面に垂直な方向(すなわち、図7の座標軸の±Xまたは±Yであって、中心軸Aに対して垂直な方向)に印加される。力Fは、カートリッジ100が首部104で破損するまで増加させられ、破損を生じるのに要した力Fが記録される。力Fを印加し、測定するために、標準機器を利用できる。片持ちカートリッジ試験は、カートリッジ、並びにバイアルおよび一端に首部とフランジ構造を有する他の物品に行うことができる。
バレル破壊試験
カートリッジ100などのガラス物品の機械的強度は、バレル破壊試験を行うことによって、評価されることもある。図8を参照すると、バレル破壊試験は、カートリッジ100または他の容器を、首部104とフランジ106に近接した第1の支持プレート140および第1の支持プレート140とカートリッジ100の同じ側であって、カートリッジ100の開放端108に近接して配置された第2の支持プレート142により支持する工程を含むことがある。第3のプレート150が、カートリッジ100の開放端108に近接した、第2の支持プレート142と反対の側壁102に対して配置される。次いで、力Fが、側壁102の外面に垂直であって、第2の支持プレート142に垂直な方向(すなわち、図8の座標軸の±Xであって、中心軸Aに対して垂直な方向)に印加される。力Fは、開放端108に近接するカートリッジ100のバレルが破損するまで増加させられ、破損を生じるのに要した力Fが記録される。力Fを印加し、測定するために、標準機器を利用できる。バレル破壊試験は、カートリッジ、並びにバイアルおよび一端に首部とフランジ構造を有する他の物品に行うことができる。
以下の実施例は、ここに記載されたガラスの特徴および利点を示し、本開示または付随の特許請求の範囲を限定する意図は決してない。
実施例1:三段階強化方法により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ
実施例1において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を、本開示の三段階強化方法によって強化した。そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、0.85mmの側壁ガラス厚を有する10.95mmのカートリッジであった。このガラスカートリッジを、1時間の初期イオン交換時間に亘り、400℃の初期イオン交換温度に維持された、硝酸カリウム(KNO3)を含有する初期イオン交換浴中に浸漬した。そのガラスカートリッジを初期イオン交換浴から取り出し、浸漬濯ぎし、オーブンに入れた。その中で、ガラスカートリッジは、20時間の熱処理時間に亘り、400℃の熱処理温度に曝された。そのガラスカートリッジをオーブンから取り出し、1時間の最終イオン交換時間に亘り、400℃の最終イオン交換温度に維持された、KNO3を含む最終イオン交換浴中に浸漬した。最終イオン交換過程から取り出した後、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジを浸漬濯ぎし、洗浄して、カートリッジの表面から残留するイオン交換試薬を除去した。
比較例2:一段階イオン交換過程により強化された市販のホウケイ酸ガラスカートリッジ
比較例2において、実施例1の強化されたカートリッジと比較するために、市販のホウケイ酸ガラスカートリッジを得た。比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジは、0.85mmの側壁でのガラス厚を有する10.95mmのカートリッジであった。比較例2の市販のホウケイ酸ガラスカートリッジを、カリウムイオンをホウケイ酸ガラス中に層の深さまで導入する一段階イオン交換過程により強化した。
比較例3:一段階イオン交換過程により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス
比較例3において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジを、従来の一段階イオン交換過程により強化した。比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、0.85mmの側壁でのガラス厚を有する10.95mmのカートリッジであった。比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジを、5.5時間の時間に亘り、470℃のイオン交換温度に維持された、KNO3を含む単一イオン交換浴中にガラスカートリッジを浸漬することによって強化した。このアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジを単一イオン交換浴から取り出し、次いで、浸漬濯ぎし、洗浄して、カートリッジの表面からイオン交換試薬を除去した。
比較例2の市販のホウケイ酸ガラスカートリッジおよび比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに対する、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの比較
実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ、比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジ、および比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに関するカリウムイオン濃度プロファイルをEPMAによって決定した。図4を参照すると、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ(406)、比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジ(404)、および比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ(402)に関する、ガラス中の深さ(深さは表面で0と等しい)の関数としてのカリウムイオン濃度が示されている。図4に示されるように、比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジ(404)、および比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ(402)に関して、ガラス中のカリウムイオンの濃度は、一定の割合で、増加する深さと共に減少する。対照的に、実施例1のアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに関するカリウムイオン濃度プロファイルは、圧縮層内で2つの別個の領域を示す。第1の領域410は、ガラスの表面領域に対応し、深さの関数としてのカリウムイオンの平均勾配のより大きい大きさにより特徴付けられる。第2の領域412は、その表面領域とDOL(すなわち、カリウムイオンの濃度がガラス中のカリウムイオンのバルク濃度まで減少する濃度)との間の内部圧縮領域に対応する。第2の領域412において、ガラス中の深さの関数としてのカリウムイオン濃度の平均勾配の大きさは、第1の領域410における平均勾配の大きさより小さい。
図4は、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの表面でのカリウムイオンの濃度は、比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの表面でのカリウムイオンの濃度より小さいことも示す。圧縮応力とカリウムイオンの濃度との間の関係のために、比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジが、より大きいカリウムイオン濃度のために、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジと比べて、表面でより大きい圧縮応力を有すると予測されるであろう。しかしながら、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの表面で測定されたCSは、比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの表面で測定されたCSより大きいことが分かった。どの特定の理論により束縛する意図もないが、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジのより大きいCSは、ガラス中の減少した熱緩和の結果であろうと考えられる。実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの最終イオン交換過程は、400℃の温度で行われ、これにより、より長い期間に亘るより高い温度でイオン交換された、比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジと比べて小さい熱緩和がもたらされた。比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジにおけるより大きい熱緩和は、ガラスの表面でのCSの低下をもたらしたのであろう。これは、最終イオン交換過程が400℃未満の温度で行われる、ここに開示された三段階強化過程は、従来の一段階イオン交換により強化されたガラス物品と比べて、より小さい熱緩和およびより大きいCSをもたらすであろうことを証明している。
実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの表面でのCSおよびカリウムイオン濃度は両方とも、比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジの表面でのCSおよびカリウムイオン濃度より実質的に大きかった。実施例1のアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジおよび比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジに関して決定されたCS、DOL、およびCTが、下記の表1に与えられている。
実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジのDOL(図4の407)は、比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジのDOL(図4の403)よりも小さかった。しかしながら、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジのDOLは、30μmより大きく、少なくとも30μmのDOCを生じるのに十分であった。実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジのDOL(それゆえ、DOC)は、また、比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジのDOL(図4の405)より大きかった。それゆえ、比較例2のものなど、市販のホウケイ酸ガラスカートリッジと比べると、ここに開示された三段階強化過程により強化された実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、より大きいCSおよびより大きいDOCを示す。ホウケイ酸ガラス物品のDOCは、イオン交換時間を増加させることによって増加させることができるが、ホウケイ酸ガラスのCSは、ガラス組成を実質的に変化させずに、増加させることはできない。
実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ、比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジ、および比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの機械的強度を、ここに記載されたように、これらのカートリッジに、コーン破壊試験、水平圧縮試験、片持ちカートリッジ試験、およびバレル破壊試験を行うことによって、評価した。これらの機械的強度試験の結果が、キログラム重(kg-f)で表された破壊荷重のワイブル分布プロットである、図9~12に示されている。比較例2のホウケイ酸ガラスカートリッジは、図9のデータ系列502、図10のデータ系列602、図11のデータ系列702、および図12のデータ系列802により示されている。比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、図9のデータ系列504、図10のデータ系列604、図11のデータ系列704、および図12のデータ系列804により示されている。実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、図9のデータ系列506、図10のデータ系列606、図11のデータ系列706、および図12のデータ系列806により示されている。
図9~12に示されるように、ここに開示された三段階方法により強化された実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、コーン破壊試験、水平圧縮試験、片持ちカートリッジ試験、およびバレル破壊試験の各々において、比較例2の市販のホウケイ酸ガラスカートリッジと比べて、大幅に大きい機械的強度を示した。また、実施例1のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、一段階イオン交換過程により強化された、比較例3のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに匹敵し、さらにはわずかにそれを上回る機械的強度を示した。このように、図9~12は、初期イオン交換、熱処理、および最終イオン交換を含む三段階強化過程は、一段階イオン交換過程により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品と比べて、同等かまたさらには優れた機械強度であって、市販のホウケイ酸ガラス物品の機械的強度より大幅に優れた機械的強度を有するガラス物品を製造できることを証明している。
実施例4:ガラスにおけるカリウム濃度プロファイルおよびガラスカートリッジの機械的性能に対する熱処理条件の影響
実施例4において、ガラスにおけるカリウムイオン濃度プロファイルおよびガラスカートリッジの機械的性能に対する熱処理条件の影響を調査した。実施例4について、0.85mmの側壁でのガラス厚を有する10.95mmのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに、本開示の三段階強化過程を施した。初期イオン交換過程および最終イオン交換過程は、一定に維持し、熱処理時間および熱処理温度を変えた。実施例4A、4B、4C、および4Dに関する熱処理時間および熱処理温度が、下記に表2に与えられている。
実施例4A、4B、4C、および4Dの各々に関して、カリウムイオン濃度プロファイルを、EPMAを使用して決定し、その結果が図13に示されている。図13に示されるように、実施例4A、4B、4C、および4Dのカリウムイオン濃度プロファイルは、全て似ており、40μmから45μm辺りでの層の深さも似ている。図13は、熱処理温度と熱処理時間との間に関係を示し、したがって、熱処理時間を変えることによって、異なる熱処理温度で、同じ層の深さを有する同じカリウムイオン濃度プロファイルを得ることができることを示す。このように、熱処理温度および熱処理時間は、減少する熱緩和と処理時間のバランスをとるために、変えることができる。
実施例4A、4B、4C、および4Dのカートリッジにコーン破壊試験も行って、ガラスカートリッジの機械的強度に対する熱処理条件の影響を評価した。コーン破壊試験の結果が、図14に示されており、これは、実施例4A、4B、4C、および4Dの各々に関する、キログラム重で表された破壊荷重のワイブルプロットである。図14に示されるように、実施例4A、4B、4C、および4Dの各々のカートリッジは、コーン破壊試験により評価されるように、類似の機械的強度性能を示した。この試験は、熱処理条件自体は、本開示の三段階強化過程により強化されたガラス物品の機械的強度に大きく影響しないであろうことを示す。このように、開示の方法により製造されたガラス物品の機械的強度は、熱処理条件の変化に極めて敏感ではないであろう。
比較例5:未強化のホウケイ酸ガラスカートリッジ
比較例5について、市販の未強化のホウケイ酸ガラスカートリッジを得た。比較例5の未強化のホウケイ酸ガラスカートリッジは、10.95mmのホウケイ酸ガラスカートリッジであった。比較例5の未強化のホウケイ酸ガラスカートリッジに強化過程は行わなかった。
比較例6:一段階イオン交換過程により強化されたホウケイ酸ガラスカートリッジ
比較例6において、比較例5の市販の未強化のホウケイ酸ガラスカートリッジの内の一群に、一段階イオン交換過程を施して、強化されたホウケイ酸ガラスカートリッジを製造した。詳しくは、比較例6のホウケイ酸ガラスカートリッジの内のその一群を、470℃の温度に維持された、KNO3を含むイオン交換浴中に浸漬した。このホウケイ酸ガラスカートリッジを、20時間のイオン交換時間に亘りそのイオン交換浴中に浸漬した。20時間後、比較例6の強化されたホウケイ酸ガラスカートリッジを取り出し、濯いで、過剰のイオン交換試薬を除去した。
実施例7:ガラス物品を強化する開示の方法にしたがって強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの機械的強度に対する初期イオン交換および最終イオン交換のイオン交換条件の影響
実施例7において、ここに開示された強化の三段階方法が施されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの機械的強度に対する初期イオン交換および最終イオン交換のイオン交換条件の影響を評価した。実施例7において、0.85mmのガラス厚を有する10.95mmのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに、ここに開示されたガラス物品を強化する三段階方法を施した。熱処理工程中の熱処理時間および熱処理温度は、実施例7A、7B、7C、7D、7E、7F、および7Gの各々でずっと一定に維持した。
実施例7A、7B、7C、および7Dについて、最終イオン交換温度は、400℃で一定であり、最終イオン交換時間は0.333時間(20分)で一定であった。実施例7A、7B、7C、および7Dに関する初期イオン交換過程の初期イオン交換温度および初期イオン交換時間が、下記に表3に与えられている。実施例7E、7F、および7Gについて、初期イオン交換温度および初期イオン交換時間は、それぞれ、400℃および1時間(60分)で一定であった。実施例7E、7F、および7Gに関する最終イオン交換過程の最終イオン交換温度および最終イオン交換時間が、下記に表3に与えられている。
実施例7Aから7G、比較例5、および比較例6のカートリッジに水平圧縮試験およびコーン破壊試験を行って、ガラスカートリッジの機械的強度に対する初期イオン交換過程および最終イオン交換過程におけるイオン交換条件の影響を評価した。水平圧縮試験の結果が、図15に与えられており、これは、実施例7Aから7G、比較例5、および比較例6の各々に関する、キログラム重で表された破壊荷重のワイブルプロットである。コーン破壊試験の結果が、図16に与えられており、これは、実施例7Aから7G、比較例5、および比較例6の各々に関する、キログラム重で表された破壊荷重のワイブルプロットである。
図15および16に示されるように、開示された三段階強化方法により強化された、実施例7Aから7Gのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、比較例5の未強化のホウケイ酸ガラスカートリッジおよび比較例6の強化されたガラスカートリッジと比べて、優れた機械的強度を示した。
図15および16は、初期イオン交換時間の減少により、開示された方法により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの機械的強度の変動性が増加することも示す。最終イオン交換時間における変化に応答する、開示された方法により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの機械的強度における変動性の程度は、初期イオン交換時間の変化から生じる変動性よりも小さい。
実施例8:三段階強化方法により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ
実施例8において、加水分解試験のために、強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジを調製した。試料8A、8B、8C、8D、および8E(8A~8E)について、カートリッジに強化の三段階方法を施すことによって、10.95mmのカートリッジを強化した。試料8F、8G、8H、8I、および8J(8F~8J)について、11.6mmのカートリッジを、強化の三段階方法にしたがって強化した。熱処理は、試料8A~8Jの各々について、一定に維持した。試料8A~8Jの各々について、初期イオン交換温度、初期イオン交換時間、最終イオン交換温度、および最終イオン交換時間が、下記に表4に与えられている。
比較例9:一段階イオン交換により強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジ
比較例9において、一段階イオン交換過程によりカートリッジを強化することによって、加水分解試験のために、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジを調製した。試料CE9A、CE9B、およびCE9Cについて、10.95mmのカートリッジを強化し、試料CE9D、CE9E、およびCE9Fについて、11.6mmのカートリッジを強化した。一段階イオン交換過程のイオン交換温度は470℃であり、イオン交換条件時間は、試料CE9AおよびCE9Dについては1時間であり、試料CE9BおよびCE9Eについては4時間であり、試料CE9CおよびCE9Fについては7時間であった。
実施例10:実施例8および比較例9のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジの表面加水分解抵抗(SHR)
実施例10において、実施例8(試料8A~8J)および比較例9(試料CE9A~CE9F)のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジに加水分解試験を行って、ガラスを強化する三段階方法により、クラス1Bガラスの化学的感度基準に準拠するガラス物品が製造されることを実証した。USP<600>に記載され、ここに言及された方法にしたがって、表面加水分解抵抗性試験を行った。図17を参照すると、ここに開示された三段階強化方法により強化された実施例8のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジは、医薬品容器のためのタイプ1ガラスの制限(図17の線1702)を遙かに下回り、一段階イオン交換過程により強化された比較例9のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスカートリッジにより示されたSHRに匹敵するSHR値を示した。それゆえ、ここに開示されたガラス物品を強化する開示の方法は、ガラス組成物の化学的耐久性を低下させず、医薬品容器のためのタイプ1ガラスのSHR基準への準拠を維持しつつ、ガラス物品を強化することができる。
説明目的のために典型的な実施の形態を述べてきたが、先の説明は、本開示の範囲または付随の特許請求の範囲に対する制限と考えるべきではない。したがって、本開示の精神および範囲または付随の特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な改変、変更、および代替が当業者に想起されるであろう。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ガラス物品を強化する方法において、
前記ガラス物品のガラスの表面領域中にカリウムイオンを導入する工程であって、該ガラスは、第一面、第二面、および該第一面から該第二面までの厚さを有し、該表面領域は、該第一面、該第二面、またはその両方から該ガラス中に延在する工程、
前記ガラスの表面領域中に前記カリウムイオンを導入した後、該カリウムイオンの少なくとも一部を、前記表面領域から該ガラス中に30マイクロメートル(μm)以上の圧縮深さ(DOC)を生じる該ガラス中の深さまで拡散させるのに十分な熱処理温度で、十分な熱処理時間に亘り該ガラスを熱処理する工程、および
前記ガラスを熱処理した後、該ガラス中の中央張力を13MPa未満に維持するのに十分な条件下で該ガラスに最終イオン交換過程を施すことによって、該ガラスの表面領域に400メガパスカル(MPa)以上の圧縮応力を導入する工程、
を有してなる方法。
実施形態2
前記ガラスの表面領域中にカリウムイオンを導入する工程が、該ガラスを熱処理する工程、および前記圧縮応力を導入する工程の後に30μm以上のDOCおよび13MPa未満の中央張力を生じる量のカリウムイオンを導入するのに十分な初期イオン交換時間に亘り400℃以上の初期イオン交換温度で該ガラスに初期イオン交換を施す工程を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記初期イオン交換温度が400℃から550℃であり、前記初期イオン交換時間が0.1時間から1.0時間である、実施形態2に記載の方法。
実施形態4
前記ガラスの表面領域に導入する前記カリウムイオンの量を決定する工程、および
前記初期イオン交換温度、前記初期イオン交換時間、またはその両方を調節して、決定された前記量のカリウムイオンを前記ガラスの表面領域中に導入する工程、
をさらに含む、実施形態2または3に記載の方法。
実施形態5
前記熱処理温度が350℃から600℃である、実施形態1に記載の方法。
実施形態6
前記熱処理時間が1時間から24時間である、実施形態1または5に記載の方法。
実施形態7
前記圧縮応力を導入する工程が、前記ガラスに最終イオン交換過程を施す工程を含む、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態8
前記最終イオン交換過程の最終イオン交換温度が450℃以下である、実施形態7に記載の方法。
実施形態9
前記最終イオン交換温度が300℃から450℃である、実施形態8に記載の方法。
実施形態10
前記最終イオン交換過程の最終イオン交換時間が0.1時間から1.0時間である、実施形態7から9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11
前記ガラスの表面領域が、前記DOCより小さい表面領域厚を有する、実施形態1に記載の方法。
実施形態12
前記DOCが、前記ガラスの厚さの15%から25%である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13
前記ガラスの厚さが6mm以下である、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14
前記ガラスの厚さが0.3mmから2.0mmである、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記ガラス物品が、医薬品、ワクチン、生物製剤、食品、または溶液を保持するために適合された容器である、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16
ガラスから作られた物品において、該ガラスは、
第一面と第二面、
前記第一面、前記第二面、またはその両方から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮領域であって、圧縮応力下にあり、表面圧縮領域、および該表面圧縮応力と前記DOCとの間にあり、該表面圧縮領域と異なる圧縮応力プロファイルを有する内部圧縮領域を含む圧縮領域、および
中央張力下にある中央領域であって、前記DOCから内側に延在する中央領域、
を有し、
前記第一面、前記第二面、またはその両方で測定される前記圧縮応力は、400メガパスカル(MPa)以上であり、
前記DOCは、少なくとも30マイクロメートル(30μm)であり、
前記中央張力は、それより上だと、前記中央領域中の貯蔵弾性エネルギーが、該中央領域中に延在するひびを、前記第一面から前記第二面まで前記ガラスの厚さを通り、該ガラスを横方向に通るように自己伝搬させるのに十分である閾値中央張力より低い、物品。
実施形態17
前記中央張力が13MPa未満である、実施形態16に記載の物品。
実施形態18
前記中央張力が8MPaから12MPaである、実施形態16または17に記載の物品。
実施形態19
前記中央張力が、それより低いと、前記中央領域中に延在するひびが、前記ガラスの厚さを通り、該ガラスを横方向に通るひびの自己伝搬を経験しない該閾値中央張力より低い、実施形態16または18に記載の物品。
実施形態20
前記圧縮応力が400MPaから750MPaである、実施形態19に記載の物品。
実施形態21
前記DOCが30μmから50μmである、実施形態16から20のいずれか1つに記載の物品。
実施形態22
前記DOCが前記厚さの15%から25%である、実施形態16に記載の物品。
実施形態23
前記厚さが6mm以下である、実施形態16から22のいずれか1つに記載の物品。
実施形態24
前記厚さが0.3mmから2.0mmである、実施形態23に記載の物品。
実施形態25
前記ガラス物品が、医薬品、ワクチン、生物製剤、食品、または溶液を保持するために適合された容器である、実施形態16から24のいずれか1つに記載の物品。
実施形態26
前記物品が医薬品容器を含む、実施形態16から25のいずれか1つに記載の物品。
実施形態27
前記圧縮領域が、
前記表面領域における前記ガラス中の深さの関数としての前記圧縮応力の平均勾配が、前記内部圧縮領域における該ガラス中の深さの関数としての該圧縮応力の平均勾配より大きいことを含む、実施形態16から26のいずれか1つに記載の物品。