JP7253334B2 - ポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
本発明はより優れた摺動性を有するポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形体を得ることを目的とする。
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[2]前記ポリカーボネート系樹脂(S)が、前記ポリカーボネートブロック(A-1)からなるポリカーボネート系樹脂(A’)を1質量%以上99質量%以下含む、上記[1]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[3]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上45質量%以下である、上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[4]前記ポリカーボネート系樹脂(S)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[6]前記ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量が9,000以上50,000以下である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[7]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ay)における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の鎖長が30以上500以下である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[8]前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が20以上500以下である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[9]前記離型剤(B)が、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルである、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明の樹脂組成物を構成するポリカーボネート系樹脂(S)は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)を1質量%以上100質量%以下含む。
R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示す。以下、明細書中同様である。)、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位として前記アルキル基を有するものが挙げられる。
中でも、aおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1~8のアルキレン基であるもの、またはaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基、特にイソプロピリデン基であるものが好適である。
R3及びR4はいずれも好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
R3~R6としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基である。
一般式(II-I)、(II-II)及び/または(II-III)中のR3~R6がいずれもメチル基であることが好ましい。
(式中cは正の整数を示し、通常1~6の整数である)
R7、Ar1及びAr2が表すアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基などの環形成炭素数6~14のアリーレン基が挙げられる。これらアリーレン基は、アルコキシ基、アルキル基等の任意の置換基を有していてもよい。
R10が示す直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基は、R7と同様である。
なお、式(II-II)中のp及びqについては、p=qであることが好ましい。
βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基またはジカルボン酸またはジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示し、例えば、以下の一般式(iii)~(vii)で表される2価の基が挙げられる。
PC-POS共重合体(Ax)と、PC-POS共重合体(Ay)とは、それぞれ鎖長範囲の点で異なり、その他の構造等はPC-POS共重合体(A)について上述した通りである。鎖長範囲の異なるPC-POS共重合体(Ax)及び(Ay)の2種を含むことにより、樹脂組成物中に離型剤を含む際に、優れた摺動特性を得ることを可能にする。
PC-POS共重合体(Ay)の平均鎖長は、PC-POS共重合体(Ax)の平均鎖長よりも、好ましくは15以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、よりさらに好ましくは45以上である。
一実施形態において、PC-POS共重合体(Ay)の平均鎖長範囲は、例えば30以上500以下である。PC-POS共重合体(Ay)の平均鎖長は、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましく55以上、さらにより好ましくは75以上であり、特に好ましくは80以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下、さらにより好ましくは95以下である。
PC-POS共重合体(Ax)及びPC-POS共重合体(Ay)を上記の割合で含有することで、より優れた耐衝撃性及び透明性と、優れた摺動特性を得ることができる。
PC-POS共重合体(A)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは35質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは8質量%以下である。
PC-POS共重合体(A)を構成するPC-POS共重合体(Ax)及びPC-POS共重合体(Ay)それぞれについては、共重合体(Ax)及び(Ay)それぞれに含まれるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)含有率の合計が上記範囲内に入る。
PC-POS共重合体(A)の粘度平均分子量は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは25,000以下、よりさらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは20,000以下である。PC-POS共重合体(A)を構成するPC-POS共重合体(Ax)及びPC-POS共重合体(Ay)のMvは、上記範囲と同様である。
Zは、水素またはハロゲン原子を示し、複数のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
例えば、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとしては、以下の一般式(1-1)~(1-11)の化合物が挙げられる。
これらの中でも、重合の容易さの観点においては、上記一般式(1-1)で表されるフェノール変性ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、入手の容易さの観点においては、上記一般式(1-2)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、上記一般式(1-3)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
その他、ポリオルガノシロキサン原料として以下の一般式(4)を有するものを用いてもよい。
式中、R3及びR4は上述したものと同様である。一般式(4)で示されるポリオルガノシロキサンブロックの平均鎖長は(r×m)となり、(r×m)の範囲は上記nと同一である。
上記(4)をポリオルガノシロキサン原料として用いた場合には、ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は下記一般式(II-IV)で表わされる単位を有することが好ましい。
[式中、R18~R21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~13のアルキル基である。R22は炭素数1~6のアルキル基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~14のアリール基である。Q2は炭素数1~10の2価の脂肪族基である。nは平均鎖長を示し、上記の通りである。]
上記の中でも、R22が水素原子、又は炭素数1~6のアルコキシ基を示すことが好ましく、より好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を、さらに好ましくは水素原子を示す。
[式中、R18~R22、Q2、及びn-1は上記した通りである。]
[式中、n-1は上記した通りである。]
二価フェノールとしては、下記一般式(viii)で表される二価フェノールを用いることが好ましい。
式中、R1、R2、a、b及びXは上述した通りである。
これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。二価フェノールとしてビスフェノールAを用いた場合、上記一般式(i)において、Xがイソプロピリデン基であり、且つa=b=0のPC-POS共重合体となる。
ポリカーボネート系樹脂(A’)はPC-POS共重合体(A)以外のポリカーボネート系樹脂であり、ポリカーボネートブロック(A-1)からなる。上記ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限はなく種々の公知のポリカーボネート系樹脂を使用できる。
二価フェノール系化合物としては、下記一般式(III’)で表されるものが挙げられる。
上記ポリカーボネート系樹脂(A’)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリカーボネート系樹脂(A’)は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)と異なり、式(II)で表されるようなポリオルガノシロキサンブロックを有さない。例えば、ポリカーボネート系樹脂(A’)はホモポリカーボネート樹脂であってもよく、好ましくは芳香族ポリカーボネート系樹脂である。
ポリカーボネート系樹脂(S)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは9.0質量%以下、さらにより好ましくは8.0質量%以下、よりさらに好ましくは7.0質量%以下、よりさらに好ましくは6.0質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.5質量%以下である。
ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。
ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは25,000以下、よりさらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは20,000以下である。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、離型剤(B)を上記ポリカーボネート系樹脂(S)100質量部に対し、0.05質量部以上0.5質量部以下含むことを要する。離型剤(B)の量が0.05質量部未満では優れた摺動特性を得ることが難しい。離型剤(B)の量が0.5質量部を超えると、樹脂組成物の成形時の金型付着や、成形体の長期耐熱性の低下を引き起こす可能性があるため好ましくない。
ポリカーボネート系樹脂(S)に対する離型剤(B)の量は、好ましくは0.10質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上、さらに好ましくは0.20質量部以上、さらにより好ましくは0.25質量部以上であり、好ましくは0.45質量部以下、より好ましくは0.40質量部以下、さらに好ましくは0.35質量部以下、よりさらに好ましくは0.30質量部以下である。
脂肪族カルボン酸は、各種の植物性油脂や動物性油脂から製造されるものを用いることができる。これら油脂類は成分として各種の脂肪酸を含むエステル化合物である。そのため、例えば上記植物性油脂や動物性油脂から製造されたステアリン酸は通常パルミチン酸などの他の脂肪酸成分を多量に含んでいる。本発明では、このような植物性油脂や動物性油脂より製造される複数の脂肪酸を含む混合脂肪酸を用いたものであってもよいし、精製分離された脂肪酸であってもよい。
炭素数12~30の脂肪族カルボン酸の中でも炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸の中でも飽和脂肪酸を用いることが好ましく、特に炭素数12~22の飽和脂肪酸を用いることが更に好ましい。炭素数12~22の飽和脂肪酸の中でもステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸が好ましい。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の添加剤を配合することができる。その他成分として、例えば耐加水分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、補強材、充填剤及び耐衝撃性改良用のエラストマー、染料等を挙げることができる。いくつかの成分について詳述する。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、さらに酸化防止剤を含むことが好ましい。ポリカーボネート系樹脂組成物に酸化防止剤を配合することにより、ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融時における酸化劣化を抑制することができ、酸化劣化による着色等を抑制することができる。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤等が好適に用いられる。
これら酸化防止剤の中では、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のペンタエリスリトールジホスファイト構造を持つものやトリフェニルホスフィンが好ましい。
本発明の一態様において、成分(S)及び成分(B)の合計含有量は、ポリカーボネート系樹脂組成物の全量100質量%基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは95~100質量%、さらに好ましくは97~100質量%、よりさらに好ましくは98~100質量%、特に好ましくは99~100質量%である。
本発明の他の態様において、成分(S)及び成分(B)、並びに上記その他成分の合計含有量は、ポリカーボネート系樹脂組成物の全量100質量%基準で、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、さらに好ましくは97~100質量%、よりさらに好ましくは98~100質量%、特に好ましくは99~100質量%である。
上記の溶融混練した本発明のポリカーボネート系樹脂組成物、または得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。特に、溶融混練により得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形体の製造に好適に用いることができる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形品は、例えば、テレビ、ラジオ、カメラ、ビデオカメラ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、スマートフォン、トランシーバー、ディスプレイ、コンピュータ、タブレット端末、携帯ゲーム機器、据置ゲーム機器、装着型電子機器、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ、通信基地局、バッテリー、ロボット等の電気・電子機器用部品の外装及び内部部品等、並びに自動車、鉄道、船舶、航空機、宇宙産業用機器、医療機器の外装及び内部部品並びに建材の部品として好適に用いることができる。
NMR測定によって、ポリジメチルシロキサンのメチル基の積分値比により算出した。なお、本明細書においては、ポリジメチルシロキサンをPDMSと略記することがある。
<ポリジメチルシロキサンの鎖長の定量方法>
1H-NMR測定条件
NMR装置:(株)JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
積算回数:256回
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.50~2.75付近に観測されるアリルフェノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
オイゲノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.40~2.70付近に観測されるオイゲノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンを共重合したPTBP末端ポリカーボネート中のポリジメチルシロキサン共重合量の定量方法
NMR装置:(株)JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
積算回数:256回
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
A:δ1.5~1.9付近に観測されるBPA部のメチル基の積分値
B:δ-0.02~0.3付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
C:δ1.2~1.4付近に観測されるp-tert-ブチルフェニル部のブチル基の積分値
a=A/6
b=B/6
c=C/9
T=a+b+c
f=a/T×100
g=b/T×100
h=c/T×100
TW=f×254+g×74.1+h×149
PDMS(wt%)=g×74.1/TW×100
摺動特性評価のため、リングオンリング(Ring on Ring)試験機を用いJIS K 7218-1986:A法に従って評価を行った。摺動性評価としては、動摩擦係数の変動幅の測定を行った。
試験機名称:摩擦摩耗試験機(株式会社オリエンテック製,EMF-III-F)
測定を開始した後、2分から3分の1分間における動摩擦係数のうち、最大値と最小値の差を測定した。
リングオンリング試験リング試験片形状:外径25.6mm,内径20.0mm,高さ15.0mm
相手材:同一材(共材),外径25.6mm,外径20.0mm,高さ15.0mm
速度V:0.3m/S
加圧荷重P:2.0kgf(面圧P1:1.0kgf/cm2),2.5kgf(面圧P2:1.25kgf/cm2)の2条件
試験時間:5分
常温,無潤滑
上記式中、μは動摩擦係数、Pは加圧荷重(kgf)、Fは動摩擦力(kgf)、Rは摩擦摩耗試験機とリング試験片の中心との距離、rはリング試験片の平均半径を示す。Rは10.04cm、rは1.14cmであるため、動摩擦力F(kgf)を加圧荷重Pで除した値に8.81を乗じた解が動摩擦係数となる。
図1に実施例1で測定した動摩擦力のデータを示す。t0は測定開始時間(0分)を示し、t1~t5はそれぞれ測定開始からの時間(1~5分)を示す。動摩擦係数の変動幅として、測定開始から2分~3分(t2~t3)の間の1分間の動摩擦力から動摩擦係数を計算してその変動幅を求めた。この動摩擦係数の変動幅が小さいほど、摺動性に優れることを示す。
5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、ビスフェノールA(BPA)(後から溶解する)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加えた。これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、及びホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液を、後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8L/hr、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を0.07L/hr、水を17L/hr、1質量%のトリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度341g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に、上記製造例1で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン10.1L、ポリジメチルシロキサンの平均鎖長nが37であるo-アリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)407g及びトリエチルアミン8.4mLを仕込み、攪拌下でここに水酸化ナトリウム85gを純水980mLに溶かした水酸化ナトリウム水溶液1065gを加え、20分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP70.4gを塩化メチレン1.0Lに溶解したもの)、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム618gと亜二チオン酸ナトリウム2.1gを純水9.0Lに溶解した水溶液にビスフェノールA1093gを溶解させたもの)を添加し、40分間重合反応を行った。
希釈のため塩化メチレン13Lを加え20分間攪拌した後、ポリカーボネート-ポリジメチルシロキサン共重合体(PC-PDMS共重合体)を含む有機相と過剰のビスフェノールA及び水酸化ナトリウムを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたPC-PDMS共重合体の塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.2モル/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が5μS/cm以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたPC-PDMS共重合体の塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥し、PC-PDMS共重合体(Ax)を製造した。
得られたPC-PDMS共重合体(Ax)のNMRにより求めたPDMSブロック部分の含有量は6.0質量%、粘度平均分子量Mvは17,700であった。
ポリジメチルシロキサンの平均鎖長nが88であるo-アリルフェノール末端変性PDMSを用いたこと以外は、上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ax)と同様にして、PC-PDMS共重合体(A2)を製造した。
得られたPC-PDMS共重合体(A2)の核磁気共鳴(NMR)により求めたPDMSブロック部分の含有量は6.0質量%、粘度平均分子量Mvは17,700であった。
芳香族ホモポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製,タフロンFN1700(商品名),粘度平均分子量=17,700]
<離型剤(B)>
ペンタエリスリトールステアリン酸フルエステルとペンタエリスリトールパルミチン酸フルエステルと混合物(混合比は、C16:C18=1:1.1)[理研ビタミン株式会社製,EW440A]
酸化防止剤:「IRGAFOS168(商品名)」[トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、BASFジャパン株式会社製]
上記PC-POS共重合体(Ax)及び/又は(Ay)、離型剤(B)並びに酸化防止剤を表1に示す配合割合で混合し、ベント式二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hr、樹脂温度280℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。この評価用ペレットサンプルを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械株式会社製、EC40N)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形して動摩擦係数の測定を行うためのリング試験片(外径25.6mm,内径20.0mm,高さ15.0mm)を作成した。
Claims (12)
- 下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)を70質量%以上100質量%以下含むポリカーボネート系樹脂(S)、及び前記ポリカーボネート系樹脂(S)100質量部に対し、離型剤(B)を0.05質量部以上0.5質量部以下含み、
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)として、ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が20以上65以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ax)と、前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ax)の平均鎖長よりも10以上長いポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ay)とを含み、
前記離型剤(B)が、ペンタエリスリトールパルミチン酸フルエステルとペンタエリスルトールステアリン酸フルエステルとの混合比が5:5~3:7である混合物である、ポリカーボネート系樹脂組成物。
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。] - 前記ポリカーボネート系樹脂組成物はポリエーテル誘導体を含まない、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート系樹脂(S)100質量部に対し、前記離型剤(B)を0.10質量部以上0.45質量部以下含む、請求項1又は2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート系樹脂(S)が、前記ポリカーボネートブロック(A-1)からなるポリカーボネート系樹脂(A’)を0質量%以上30質量%以下含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が3質量%以上10質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート系樹脂(S)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が2.0質量%以上10質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の粘度平均分子量が9,000以上50,000以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量が9,000以上50,000以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ay)における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の鎖長が30以上500以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が30以上500以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ax)及びポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ay)の合計100質量%に占めるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(Ax)の含有量が、10質量%以上95質量%以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 請求項1~11のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形体。
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