(第1実施形態)
以下、本発明に係る電池システムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電池システム100は、車両に搭載されている。
図1に示すように、電池システム100は、3個の電池モジュールM1~M3と、制御部10と、を備える。各電池モジュールM1~M3は、セルモジュール20と、監視部30と、を備える。
セルモジュール20は、複数の電池セル24の直列接続体を有する組電池22を備える。組電池22付近には、組電池22の温度を検出する3個の温度センサTHA1~THA3が設けられている。各温度センサTHA1~THA3は、組電池22の相互に異なる箇所の温度を検出し、検出した温度に応じた電圧信号を出力する。なお、温度センサTHA1~THA3としては、例えば、感温ダイオード、又はサーミスタを用いることができる。本実施形態において、温度センサTHA1~THA3が「外部部材」に相当する。
監視部30は、組電池22を監視する。監視部30は、検出線32を介して組電池22を構成する各電池セル24の両電極に接続されており、各電池セル24の電圧(端子間電圧)を検出し、各電池セル24に応じた電圧信号であるセル電圧データVDを取得する。
監視部30にはコネクタ34が設けられている。コネクタ34は、温度センサTHA1~THA3に接続可能な4個の端子CH1~CH4を有している。コネクタ34には、温度センサTHA1~THA3から延びる電気配線36が接続され、これにより監視部30と温度センサTHA1~THA3とが電気的に接続される。監視部30は、コネクタ34を介して温度センサTHA1~THA3から入力される電圧信号に基づいて、温度データTDA1~TDA3を取得する。
電気配線36は、コネクタ34の端子CH1~CH4に対して1対1接続される。本実施形態では、コネクタ34の端子CH1~CH4の個数が、温度センサTHA1~THA3の個数よりも1個多い。そのため、コネクタ34では、端子CH1~CH4のうちいずれか1つが、温度センサTHA1~THA3に接続されない空き端子となる。コネクタ34の端子CH1~CH4のうち、いずれの端子を空き端子とするかは、電池モジュールM1~M3の製造時において作業者により、自由に設定することができる。
監視部30は、通信回路38を備えており、取得したセル電圧データVD及び温度データTDA1~TDA3を制御部10に無線送信する。また、監視部30は、通信回路38を介して制御部10からの各種指令を無線受信する。
次に、制御部10について説明する。制御部10は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各電池モジュールM1~M3を個別に制御する。
制御部10は、各電池モジュールM1~M3の監視部30と通信可能に構成されている。具体的には、制御部10は、通信回路12を備え、監視部30が無線送信したセル電圧データVD及び温度データTDA1~TDA3を無線受信する。制御部10は、受信したセル電圧データVD及び温度データTDA1~TDA3を用いて、組電池22を制御する。例えば、制御部10は、受信したセル電圧データVD及び温度データTDA1~TDA3を用いて、組電池22の充電状態(SOC:State Of Charge)を演算する。そして、組電池22が過充電や過放電とならないようにするための指令を、通信回路12を介して監視部30に無線送信する。
ところで、電池システム100では、電池モジュールM1~M3毎に充電状態を監視したり、故障診断を実施したりするため、制御部10が電池モジュールM1~M3を各々識別する必要がある。例えば、各電池モジュールM1~M3において、監視部30に固有の識別情報IDが設定されている場合を検討する。なお、識別情報IDを設定する形態としては、監視部30が有する記憶部に、識別情報IDが記憶される形態を含む。この場合、制御部10は、監視部30との無線通信により監視部30に設定された識別情報IDを取得することで、各電池モジュールM1~M3を識別することができる。
電池システム100では、コスト低減等のために各電池モジュールM1~M3に含まれる監視部30の共通化が望まれている。しかし、上記の場合、監視部30には電池モジュールM1~M3毎に異なる識別情報IDが設定されているため、各電池モジュールM1~M3において、監視部30を共通化することができない問題が生じる。
本実施形態の電池システム100は、上記問題を解決するために、監視部30は、温度センサTHA1~THA3から入力される電圧信号に基づいて、電池モジュールM1~M3毎に異なる識別情報IDを生成する。具体的には、電池モジュールM1~M3毎に、温度センサTHA1~THA3とコネクタ34の端子CH1~CH4との接続パターンが異なり、且つ温度センサTHA1~THA3に接続されない空き端子が異なるように設定されている。そのため、複数の端子CH1~CH4にそれぞれ入力される信号が、電池モジュールM1~M3毎に異なる。
監視部30は、複数の端子CH1~CH4にそれぞれ入力される信号に基づいて、識別情報IDを生成する識別情報生成処理を実施する。監視部30は、温度センサTHA1~THA3から入力される電圧信号に基づいて識別情報IDを生成することができるため、内部に識別情報IDが設定される必要がない。この結果、電池システム100を構成する複数の電池モジュールM1~M3において、監視部30を共通化することができる。
図2に本実施形態の識別処理及び識別情報生成処理のフローチャートを示す。識別処理は、識別情報生成処理により生成された識別情報IDを用いて各電池モジュールM1~M3を識別する処理であり、制御部10により実施される。図2(a)は、制御部10による識別処理を示すフローチャートであり、図2(b)は、監視部30による識別情報生成処理を示すフローチャートである。制御部10及び監視部30は、車両の起動時に、つまり車両のイグニッションスイッチをオン状態へ切り替える際に各処理を実施する。
まず、監視部30による識別情報生成処理について説明する。監視部30は、識別情報生成処理を開始すると、まずステップS30において、制御部10からデータ送信指令を取得したかを判定する。
ステップS30で否定判定すると、ステップS30を繰り返す。一方、ステップS30で肯定判定すると、ステップS32において、セル電圧データVDを取得する。続くステップS34において、温度センサTHA1~THA3から入力される電圧信号に基づいて、温度データTDA1~TDA3を取得するための入力処理を実施する。なお、本実施形態において、ステップS34の処理が「入力処理部」に相当する。
ステップS34では、監視部30は、コネクタ34の複数の端子CH1~CH4のうち、温度センサTHA1~THA3に接続される端子に対して、温度センサTHA1~THA3の電圧信号を所定電圧範囲HV(図4参照)で入力処理する。具体的には、監視部30は、組電池22の温度に応じたアナログ信号である電圧信号を、所定電圧範囲HV内の電圧値を示すデジタル信号である温度データTDA1~TDA3に変換する。所定電圧範囲HVは、例えば0.5Vから4.5Vの電圧範囲である。
一方、コネクタ34の複数の端子CH1~CH4のうち、空き端子には電圧信号が入力さず、空き端子の電圧は、例えば接地電圧などの一定電圧に設定される。監視部30は、空き端子の電圧を、所定電圧範囲HV外の電圧とする。具体的には、監視部30は、空き端子の電圧として、所定電圧範囲HV外の電圧値を示すデジタル信号である範囲外データNDを生成する。範囲外データNDの電圧値は、例えば0Vである。
ステップS36において、識別情報IDを生成する。具体的には、ステップS34で入力処理されたデータを、コネクタ34の端子CH1~CH4の順番に並べた識別情報IDを生成する。そのため、識別情報IDは、3個の温度データTDA1~TDA3と1個の範囲外データNDにより構成される。本実施形態では、空き端子が電池モジュールM1~M3毎に異なるように設定されており、電池モジュールM1~M3毎に温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDの順番が異なる。そのため、電池モジュールM1~M3毎に異なる識別情報IDが生成される。なお、本実施形態において、ステップS36の処理が「生成部」に相当する。
続くステップS38において、セル電圧データVD及び識別情報IDを含むデータを制御部10に送信し、識別情報生成処理を終了する。
次に、制御部10による識別処理について説明する。制御部10は、識別処理を開始すると、まずステップS10において、各電池モジュールM1~M3の監視部30にデータ送信指令を送信する。続くステップS12において、各電池モジュールM1~M3の監視部30からデータを取得したかを判定する。なお、本実施形態において、ステップS12の処理が「識別情報取得部」に相当する。
ステップS12で否定判定すると、ステップS12を繰り返す。一方、ステップS12で肯定判定すると、ステップS14において、ステップS12でデータが取得された電池モジュールM1~M3を識別する。なお、本実施形態において、ステップS14の処理が「識別部」に相当する。
ステップS14では、制御部10は、制御部10の記憶部14(図1参照)に記憶されたマップMP(図3参照)を用いて、ステップS12で取得されたデータに含まれる識別情報IDに基づいて、電池モジュールM1~M3を識別する。なお、記憶部14は、例えば、ROM、書き換え可能な不揮発性メモリ等によって構成されている。
マップMPは、電池モジュールM1~M3と識別情報IDとが対応付けられた対応情報である。マップMPには、電池システム100に含まれる全電池モジュールM1~M3に対する識別情報IDが、電池モジュールM1~M3に対応付けて記憶されている。本実施形態では、マップMPに記憶される識別情報IDは、電池システム100に含まれる電池モジュールM1~M3に対応する識別情報IDに限られる。
続くステップS16において、全電池モジュールM1~M3の監視部30からデータを取得したかを判定する。ステップS16で否定判定すると、ステップS12に戻る。一方、ステップS16で肯定判定すると、ステップS18において、全電池モジュールM1~M3が識別されたかを判定する。
ステップS18で肯定判定すると、識別処理を終了する。一方、ステップS18で否定判定すると、つまり識別されていない非識別モジュールが存在する場合、ステップS20において、非識別モジュールの個数が1個であるかを判定する。なお、非識別モジュールが存在する原因としては、監視部30の不具合により、不正確な識別情報IDが取得されたこととともに、温度センサTHA1~THA3の不具合により、マップMPに記憶された識別情報IDと異なる識別情報IDが取得されたことが含まれる。
ステップS20で否定判定すると、ステップS22において、電池モジュールM1~M3の識別異常の発生を通知し、識別処理を終了する。ここで、識別異常は、全電池モジュールM1~M3を識別できない異常である。識別異常が発生した場合、制御部10が各電池モジュールM1~M3の組電池22の電圧や温度を適切に取得できず、各電池モジュールM1~M3を適切に制御することができない。そのため、識別異常が発生した場合には、車両は正常に起動されない。なお、識別異常の発生の通知方法としては、警告音を発生させる、又はカーナビゲーション装置のディスプレイに異常を表示させる等の方法がある。
一方、ステップS20で肯定すると、ステップS24において、消去法により非識別モジュールを識別する。具体的には、非識別モジュールを、マップMPにおいて電池モジュールM1~M3の識別に用いられていない識別情報IDに対応付けられた電池モジュールM1~M3として識別する。
続くステップS26において、交換要求の発生を通知し、識別処理を終了する。ここで、交換要求は、非識別モジュールの交換を促す要求である。交換要求が発生した場合、非識別モジュールが存在するものの、制御部10は全電池モジュールM1~M3を識別することができ、各電池モジュールM1~M3の組電池22の電圧や温度を適切に取得できる。そのため、交換要求が発生した場合には、車両は正常に起動される。交換要求の発生を通知することで、ドライバに非識別モジュールの交換を促し、識別異常の発生を抑制することができる。
続いて、図3に、マップMPを示す。本実施形態では、図1に示すように、電池モジュールM1では、温度センサTHA1がコネクタ34の端子CH1に接続されており、温度センサTHA2が端子CH2に接続されており、温度センサTHA3が端子CH3に接続されている。そのため、図3に示すように、マップMPでは、温度データTDA1、温度データTDA2、温度データTDA3、及び範囲外データNDがこの順に連続する情報が、電池モジュールM1に対応する識別情報IDとして記憶されている。
同様に、電池モジュールM2では、温度センサTHA1がコネクタ34の端子CH1に接続されており、温度センサTHA2が端子CH2に接続されており、温度センサTHA3が端子CH4に接続されている。そのため、マップMPでは、温度データTDA1、温度データTDA2、範囲外データND、及び温度データTDA3がこの順に連続する情報が、電池モジュールM2に対応する識別情報IDとして記憶されている。
また、電池モジュールM3では、温度センサTHA1がコネクタ34の端子CH1に接続されており、温度センサTHA2が端子CH3に接続されており、温度センサTHA3が端子CH4に接続されている。そのため、マップMPでは、温度データTDA1、範囲外データND、温度データTDA2、及び温度データTDA3がこの順に連続する情報が、電池モジュールM3に対応する識別情報IDとして記憶されている。
そのため、例えば、制御部10がある監視部30からデータを取得した場合に、そのデータに含まれる識別情報IDが、温度データTDA1、温度データTDA2、温度データTDA3、及び範囲外データNDがこの順に連続する情報であるとする。この場合、制御部10は、そのデータが取得された電池モジュールを電池モジュールM1と識別することができる。
具体的には、制御部10は、取得した識別情報IDを、電圧値を示す4個の電圧値データに分割し、各電圧値データが示す電圧値が所定電圧範囲HVに含まれるものであるかを判定する。制御部10は、電圧値データが示す電圧値が所定電圧範囲HVに含まれるものである場合、電圧値データは温度データTDA1~TDA3であると判定する。また、電圧値データが示す電圧値が所定電圧範囲HVに含まれないものである場合、電圧値データは範囲外データNDであると判定する。電圧値データが温度データTDA1~TDA3である場合、組電池22の温度によらず、電圧値データが示す電圧値が所定電圧範囲HVに含まれる。そのため、制御部10は、組電池22の温度によらず、電圧値データが温度データTDA1~TDA3であるかを判定することができる。
電池モジュールM1の識別後、識別情報IDに含まれる温度データTDA1~TDA3は、組電池22の温度を取得するために用いられる。つまり、本実施形態では、温度データTDA1~TDA3は、電池モジュールM1を識別するためのデータと、組電池22の温度を取得するためのデータと、を兼用する。そのため、組電池22の温度を取得するためのデータとは別に、電池モジュールM1を識別するためのデータを生成する必要がない。
図4に、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとの温度特性を示す。電池モジュールM1~M3では、組電池22が動作可能な温度域として所定温度範囲HTが予め定められている。監視部30は、組電池22の温度が所定温度範囲HT内の温度である場合に、温度センサTHA1~THA3の電圧信号を所定電圧範囲HVで入力処理し、所定電圧範囲HV内の電圧値を示す温度データTDA1~TDA3を生成する。具体的には、所定温度範囲HTにおける組電池22の温度変化に対応して、所定電圧範囲HVで電圧が線形変化するように入力処理し、詳細には、温度の上昇に対応して電圧が下降する逆特性の温度特性となるように入力処理する。
所定温度範囲HTは、外気温範囲HGと高温範囲HKとを含む。外気温範囲HGは、外気温に対応する温度範囲であり、一般に車両の起動はこの外気温範囲HGにおいて実施される。また、高温範囲HKは、外気温範囲HGよりも高温側の温度範囲である。本実施形態では、識別処理の入力処理において、温度センサTHA1~THA3の電圧信号が逆特性の温度特性となるように入力処理されるため、所定電圧範囲HVにおいて、外気温範囲HGに対応する電圧が高温範囲HKに対応する電圧よりも高くなる。
本実施形態では、この逆特性の温度特性に対応して、空き端子にて生じる所定電圧範囲HV外の電圧を、所定電圧範囲HVよりも低圧側の電圧とし、所定電圧範囲HVよりも低い電圧値を示す範囲外データNDを生成する。そのため、図4に示すように、外気温範囲HGにおいて、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとの電圧値差を比較的大きくすることができる。この結果、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとの判定が容易となり、識別情報IDを適切に識別することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
・本実施形態では、各電池モジュールM1~M3は、監視部30と、監視部30に電気的に接続される温度センサTHA1~THA3と、を備えており、監視部30は、温度センサTHA1~THA3から入力される電気信号に基づいて、電池モジュールM1~M3毎に異なる識別情報IDを生成する。監視部30は、温度センサTHA1~THA3から入力される電気信号に基づいて識別情報IDを生成することができるため、内部に識別情報IDが設定される必要がない。この結果、電池システム100を構成する複数の電池モジュールM1~M3において、監視部30を共通化することができる。
・本実施形態では、コネクタ34の空き端子が電池モジュールM1~M3毎に異なるように、温度センサTHA1~THA3とコネクタ34の端子CH1~CH4とが接続される。コネクタ34の複数の端子CH1~CH4のうち、温度センサTHA1~THA3に接続される端子と空き端子とでは、入力される信号が異なる。そのため、空き端子が電池モジュールM1~M3毎に異なるように接続されることで、コネクタ34の端子CH1~CH4にそれぞれ入力される信号を、電池モジュールM1~M3毎に異ならせることができ、これらの信号に基づいて識別情報IDを生成することができる。
・本実施形態では、コネクタ34の複数の端子CH1~CH4のうち、温度センサTHA1~THA3に接続される端子に入力される電圧信号は、所定電圧範囲HVで入力処理され、空き端子の電圧は、所定電圧範囲HV外の電圧とされる。そのため、入力処理されたデータから、空き端子を特定することができ、特定した空き端子に関する情報を識別情報IDとして用いて、各電池モジュールM1~M3を識別することができる。
・識別情報IDによる電池モジュールM1~M3の識別精度を向上させるために、識別情報ID自体が適切に識別されることが望まれる。識別情報IDは、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとにより構成されているため、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとが適切に判定される必要がある。一般に車両の起動は外気温範囲HGにおいて実施され、識別情報IDは外気温範囲HGにおいて生成される。そのため、外気温範囲HGにおいて、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとが適切に判定されることが切望されている。
本実施形態では、外気温範囲HGに対応する電圧と高温範囲HKに対応する電圧との大小関係により、所定電圧範囲HV外の電圧、つまり範囲外データNDが示す電圧値を設定する。例えば、所定電圧範囲HVにおいて、外気温範囲HGに対応する電圧が高温範囲HKに対応する電圧よりも高くなる場合、所定電圧範囲HV外の電圧を所定電圧範囲HVよりも低圧側の電圧とする。これにより、外気温範囲HGにおいて、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとが示す電圧値の差を大きくすることができる。この結果、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとを適切に判定することができ、識別情報IDによる電池モジュールM1~M3の識別精度を向上させることができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図5~7を参照しつつ説明する。図5に示すように、本実施形態では、セルモジュール20が、温度センサTHB1を備える点で第1実施形態と異なる。以下、温度センサTHA1~THA3を第1センサTHA1~THA3と呼び、温度センサTHB1を第2センサTHB1と呼ぶ。
第1センサTHA1~THA3と第2センサTHB1とでは、組電池22の温度に応じて出力される電圧信号の電圧レベルが異なる。そのため、これらの電圧信号が入力処理された第1センサTHA1~THA3の第1温度データTDA1~TDA3と、第2センサTHB1の第2温度データTDB1とでは、組電池22の温度が同じ場合でも、温度データが示す電圧値が異なる。
図6に、第1温度データTDA1~TDA3及び第2温度データTDB1の温度特性を示す。図6に示すように、第1温度データTDA1~TDA3と第2温度データTDB1とは、組電池22の温度に対する出力増減の特性、つまり温度データが示す電圧値の増減特性が同じである。
一方、第1温度データTDA1~TDA3が示す電圧値は、第2温度データTDB1が示す電圧値に対して高圧側にオフセットしている。そのため、第2温度データTDB1の電圧範囲である第2電圧範囲HVBは、第1温度データTDA1~TDA3の電圧範囲である第1電圧範囲HVAに対して、高圧側にオフセットしている。第1電圧範囲HVAは、例えば0.5Vから4.0Vの電圧範囲であり、第2電圧範囲HVBは、例えば1.0Vから4.5Vの電圧範囲であり、オフセットは、例えば0.5Vである。
また、本実施形態では、コネクタ34に空き端子が存在しない点で第1実施形態と異なる。本実施形態では、コネクタ34の端子CH1~CH4に対する第1センサTHA1~THA3及び第2センサTHB1の接続パターンが、電池モジュールM1~M3毎に異なるように接続されており、これにより、第2センサTHB1が接続される端子が電池モジュールM1~M3毎に異なるように設定されている。
図7に、本実施形態のマップMPを示す。本実施形態では、図5に示すように、電池モジュールM1では、第1センサTHA1がコネクタ34の端子CH1に接続されており、第1センサTHA2が端子CH2に接続されており、第1センサTHA3が端子CH3に接続されており、第2センサTHB1が端子CH4に接続されている。そのため、図7に示すように、マップMPでは、第1温度データTDA1、第1温度データTDA2、第1温度データTDA3、及び第2温度データTDB1がこの順に連続する情報が、電池モジュールM1に対応する識別情報IDとして記憶されている。
同様に、電池モジュールM2では、第1センサTHA1がコネクタ34の端子CH1に接続されており、第1センサTHA2が端子CH2に接続されており、第2センサTHB1が端子CH3に接続されており、第1センサTHA3が端子CH4に接続されている。そのため、マップMPでは、第1温度データTDA1、第1温度データTDA2、第2温度データTDB1、及び第1温度データTDA3がこの順に連続する情報が、電池モジュールM2に対応する識別情報IDとして記憶されている。
また、電池モジュールM3では、第1センサTHA1がコネクタ34の端子CH1に接続されており、第2センサTHB1が端子CH2に接続されており、第1センサTHA2が端子CH3に接続されており、第1センサTHA3が端子CH4に接続されている。そのため、マップMPでは、第1温度データTDA1、第2温度データTDB1、第1温度データTDA2、及び第1温度データTDA3がこの順に連続する情報が、電池モジュールM3に対応する識別情報IDとして記憶されている。
そのため、例えば、制御部10がある監視部30からデータを取得した場合に、そのデータに含まれる識別情報IDが、第1温度データTDA1、第1温度データTDA2、第1温度データTDA3、及び第2温度データTDB1がこの順に連続する情報であるとする。この場合、制御部10は、そのデータが取得された電池モジュールを電池モジュールM1と識別する。
具体的には、制御部10は、取得した識別情報IDを、電圧値を示す4個の電圧値データに分割し、4個の電圧値データのうち、最も大きい電圧値を示す電圧値データを選択する。制御部10は、選択された電圧値データを第2温度データTDB1と判定し、その他の電圧値データを第1温度データTDA1~TDA3と判定する。これにより、第1温度データTDA1~TDA3と第2温度データTDB1とを判定することができ、これらの温度データTDA1~TDA3,TDB1から構成される識別情報IDを用いて、各電池モジュールM1~M3を識別することができる。
・以上説明した本実施形態によれば、第2センサTHB1が接続される端子が電池モジュールM1~M3毎に異なるように、温度センサTHA1~THA3,THB1とコネクタ34の端子CH1~CH4とが接続される。コネクタ34の複数の端子CH1~CH4のうち、第1センサTHA1~THA3に接続される端子と第2センサTHB1に接続される端子とでは、電圧信号の電圧レベルが異なる。そのため、第2センサTHB1が接続される端子を電気モジュール毎に異なるように電気配線36が接続されることで、コネクタ34の端子CH1~CH4にそれぞれ入力される信号を、電池モジュールM1~M3毎に異ならせることができ、この信号に基づいて識別情報IDを生成することができる。
・本実施形態では、第1温度データTDA1~TDA3と第2温度データTDB1とは、組電池22の温度に対する出力増減の特性が同じであり、組電池22の温度によらず、第1温度データTDA1~TDA3と第2温度データTDB1とが示す電圧値の差、つまりオフセットが一定に維持される。この結果、組電池22の温度によらず、一定精度で温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとを判定することができ、識別情報IDによる電池モジュールM1~M3の識別精度を向上させることができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図8を参照しつつ説明する。図8に示すように、本実施形態では、セルモジュール20が、組電池22の電力を用いて監視部30に電力を供給する電源部26を備える点で第1実施形態と異なる。なお、本実施形態において、電源部26が「外部部材」に相当する。
監視部30には、電源コネクタ40が設けられている。電源コネクタ40は、電源部26に接続可能な3個の電源端子CH11~CH13を有している、電源コネクタ40には、電源部26から延びる電源ライン42が接続され、これにより監視部30に電力が供給される。
電源ライン42は、電源端子CH11~CH13のいずれか1個の電源端子に接続される。本実施形態では、電源ライン42が接続される電源端子CH11~CH13が、電池モジュールM1~M3毎に異なるように設定されている。そのため、電源ライン42が接続される電源端子CH11~CH13を識別情報IDとして用いて、各電池モジュールM1~M3を識別することができる。
・以上説明した本実施形態によれば、各電池モジュールM1~M3は、監視部30と、監視部30に電気的に接続される電源部26と、を備えており、監視部30は、電源部26から供給される電力に基づいて、電池モジュールM1~M3毎に異なる識別情報IDを生成する。監視部30は、電源部26から供給される電力に基づいて識別情報IDを生成することができるため、内部に識別情報IDが設定される必要がない。この結果、電池システム100を構成する複数の電池モジュールM1~M3において、監視部30を共通化することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・電池モジュールの個数は3個に限られず、2個でもよければ、4個以上であってもよい。
・外部部材は、監視部30に接続される抵抗であってもよい。この抵抗は、電池モジュールM1~M3の内部において監視部30に接続される内部抵抗であってもよければ、電池モジュールM1~M3の外部において監視部30に接続される内部抵抗であってもよい。
・第1実施形態及び第2実施形態では、温度データTDA1~TDA3の温度特性が、温度の上昇に対応して電圧が下降する逆特性である例を示したが、これに限られない。温度の上昇に対応して電圧が上昇する正特性であってもよい。
・第1実施形態において、温度データTDA1~TDA3の温度特性が正特性である場合、所定電圧範囲HVにおいて、外気温範囲HGに対応する電圧が高温範囲HKに対応する電圧よりも低くなる。この場合、この正特性の温度特性に対応して、空き端子にて生じる所定電圧範囲HV外の電圧を、所定電圧範囲HVよりも高圧側の電圧とし、所定電圧範囲HVよりも高い電圧値を示す範囲外データNDを生成する。してもよい。所定電圧範囲HVよりも高い電圧値は、例えば5.0Vである。これにより、外気温範囲HGにおいて、温度データTDA1~TDA3と範囲外データNDとの電圧値差を比較的大きくすることができる。
・第1実施形態において、温度センサの数は3個に限られず、コネクタ34の端子数も4個に限られない。そのため、コネクタ34の空き端子数は1個に限られず、2個以上であってもよい。
・第2実施形態において、コネクタ34に空き端子が存在しない例を示したが、例えば第1センサを1個減らすことにより、コネクタ34に空き端子を設けてもよい。この場合、コネクタ34の端子CH1~CH4に対する第1センサTHA1~THA2及び第2センサTHB1の接続パターンが、電池モジュールM1~M3毎に異なるように接続されてもよい。これにより、空き端子と第2センサTHB1が接続される端子との組み合わせが電池モジュールM1~M3毎に異なるように、各電池モジュールM1~M3の接続パターンが設定される。空き端子と第2センサTHB1が接続される端子とを組み合わせて用いることで、コネクタ34の端子数を増やすことなく、多くの電池モジュールを識別することができる。
・上記実施形態では、識別処理及び識別情報生成処理が、車両の起動時に実施される例を示したが、これに限られない。車両組付け時に実施されてもよければ、所定の測定周期毎に実施されてもよい。
・上記実施形態では、組電池の温度変化に対して、温度データTDA1~TDA3が示す電圧が線形変形する例を示したが、これに限られない。当該電圧が非線形変形、例えば温度変化に対して指数関数的に変化してもよい。
・上記実施形態では、制御部10と監視部30とが通信線により接続されておらず、無線通信により制御部10が監視部30から識別情報ID等を取得する例を示したが、これに限られない。制御部10と監視部30とが通信線により接続されており、有線通信により制御部10が監視部30から識別情報ID等を取得してもよい。例えば、制御部10と複数の監視部30とが、通信線により環状に接続されている場合、監視部30の接続の順序に基づいて識別情報IDを生成することができるが、それに代えて外部部材から入力される電気信号に基づいて識別情報IDを生成してもよい。