本発明の一実施の形態に係る車両用エンジンは、エンジン本体の上部に配置されたシリンダヘッドと連通する冷却水通路を形成する筒状の冷却水通路部と、排気ガスが通過するEGR通路を形成するEGR通路部とを有し、シリンダヘッドの側面に連結されるハウジングと、ハウジングに取付けられ、EGR通路を通過する排気ガスの量を調整するEGRバルブと、を備える車両用エンジンであって、ハウジングにおけるシリンダヘッドの側面に連結される第1の端部に冷却水通路の一端が開口し、ハウジングにおける第1の端部と対向する第2の端部に冷却水通路の他端が開口し、冷却水通路部の外周部に、シリンダヘッドに締結される複数のボス部が形成され、EGR通路部は、第1の端部から第2の端部側に離れた位置で冷却水通路部の下面に連結され、冷却水通路部と交差する方向に延びるようにEGR通路を形成する上流側EGR通路部と、第1の端部から第2の端部側に離れた位置で冷却水通路部の側面に連結され、上流側EGR通路部の下流側端部に連通し、冷却水通路部と交差するように上方向へ延びるようにEGR通路を形成する下流側EGR通路部とを有し、下流側EGR通路部の上端は、シリンダヘッドの上端よりも上側に延び、下流側EGR通路部の上端に、EGRバルブを取付けるEGRバルブ取付フランジ部が形成され、EGRバルブ取付フランジ部は、EGRバルブが取付けられる取付面の端部が冷却水通路部の上方の位置に延び、ハウジングは、冷却水通路部と交差する平面に沿って上下方向に延び、かつ、EGRバルブ取付フランジ部と冷却水通路部の上面とを連結するリブを有し、冷却水通路部の内壁面に、冷却水通路内へ突出しサーモスタットを位置決めする突部が設けられ、突部は、冷却水通路部の内壁面における周方向でリブおよび下流側EGR通路部と隣接する部位に配置されていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用エンジンは、シリンダヘッドに連通する冷却水通路とEGR通路とを有し、EGRバルブが取付けられるハウジングをシリンダヘッドの側面に取付ける際、EGR通路およびEGRバルブがシリンダヘッドの側方に離れた位置に配置されていてもEGRバルブの振動を抑制できる。
以下、本発明の一実施例に係る車両用エンジンについて、図面を用いて説明する。図1から図10は、本発明の一実施例に係る車両用エンジンを示す図である。図1から図10において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用エンジンの上下前後左右方向とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用エンジンの高さ方向が上下方向である。
まず、構成を説明する。図1、図10において、車両用エンジン1は、エンジン本体10と、このエンジン本体10に装着される各種の補機や部品等から構成されている。エンジン本体10は、シリンダヘッド12と、シリンダヘッドカバー13と、シリンダブロック11(図10参照)とを備えている。また、エンジン本体10は、潤滑用のオイルが貯留される図示しないオイルパンを備えている。
シリンダブロック11には図示しない複数の気筒が設けられている。複数の気筒は左右方向に並べて配置されている。本実施例の車両用エンジン1は、3つの気筒を有する3気筒エンジンから構成されているが、3気筒エンジンに限定されるものではない。
気筒には図示しないピストンが収納されており、ピストンは、気筒に対して上下方向に往復運動する。ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介して図示しないクランク軸に連結されており、ピストンの往復運動は、コネクティングロッドを介してクランク軸の回転運動に変換される。
図2において、シリンダヘッド12の気筒列方向の右端部にはチェーンケース15が締結されている。チェーンケース15は、シリンダヘッド12およびシリンダブロック11(図10参照)に配置された図示しないタイミングチェーンを覆っている。
ここで、車両用エンジン1の気筒列方向は、左右方向、すなわち車幅方向となっている。したがって、車両用エンジン1は、図示しない車両にいわゆる横置きで配置されている。
図1から図4において、エンジン本体10の上方には、エアクリーナ入口配管21と、レゾネータ22と、エアクリーナ23と、エアクリーナ出口配管24とが設けられている。エアクリーナ入口配管21は、エンジン本体10の左右方向中央部の上方に配置されており、後方に向かった後に左前方に向かうように湾曲している。エアクリーナ入口配管21は、エアクリーナ23に連結されており、前方から取り込んだ空気をエアクリーナ23に供給する。レゾネータ22はエアクリーナ入口配管21の後方に配置されており、エアクリーナ入口配管21の途中に連結されている。レゾネータ22は、エアクリーナ入口配管21を空気が通過する際に発生するノイズを、気柱共鳴作用によって打ち消している。エアクリーナ23は、エンジン本体10の左側の部分の上方から左方にはみ出して配置されている。エアクリーナ23は、その内部に設けられた図示しないエアクリーナエレメントによって空気を濾過している。エアクリーナ出口配管24は、エアクリーナ23の左端部と後述するスロットルボディ25とに連結されており、エアクリーナ23で濾過された空気をスロットルボディ25に供給している。
図1、図3において、車両用エンジン1はスロットルボディ25を有しており、スロットルボディ25は、吸気マニホールド26に流入する空気の量を調整する。スロットルボディ25はエアクリーナ23の後方に配置されている。
図1、図3において、シリンダヘッド12の後面には吸気マニホールド26が設けられており、吸気マニホールド26は、吸入空気を、シリンダヘッド12に形成された図示しない各吸気ポートを通して各気筒に導入する。
シリンダヘッド12の内部には図示しない排気マニホールドが形成されている。排気マニホールドは、各気筒に連通される図示しない複数の排気ポートを有し、気筒から排出される排気(排出ガスまたは排気ガスともいう)を集合する。つまり、シリンダヘッド12の内部には、排気ポートと一体型の排気マニホールドが形成されている。排気マニホールドは、図示しない共通の集合排気出口を有する。集合排気出口は、気筒列方向の中央部においてシリンダヘッド12の前面に開口している。気筒から排出される排気は、排気マニホールドで集合された後、集合排気出口からシリンダヘッド12の外部に排出される。
図1、図2、図3において、シリンダヘッド12の前面側には、排気浄化装置31が配置されており、排気浄化装置31は、エンジン本体10の前面に沿って下方に延びている。排気浄化装置31の内部には図示しない三元触媒およびパティキュレートフィルタが収容されている。三元触媒は、排気中に含まれるHC、CO、NOxを酸化還元反応により同時に浄化処理する。
パティキュレートフィルタは、三元触媒の下流側に設置されており、排気中の粒子状物質であるPM(パティキュレートマター)として、黒鉛、燃料の燃え残り(SOF:可燃性有機成分)、エンジンオイルの燃え滓(オイルアッシュ)などを捕集する。
排気浄化装置31の下端には図示しない排気管が連結されている。排気浄化装置31を通過して浄化された排気ガスは、排気管を介して車外に放出される。
図1、図7において、車両用エンジン1はEGR装置40を有している。EGR装置40は、EGR通路を構成するEGR上流配管41およびEGR下流配管42を備えている。EGR上流配管41は、排気浄化装置31の下端と後述するハウジング60(図7参照)とに接続されている。EGR下流配管42はハウジング60と吸気経路とに接続されている。EGR上流配管41およびEGR下流配管42は、排気浄化装置31を通過した排気ガスの一部を吸気経路に還流している。EGR上流配管41の途中にはEGRクーラ43が設けられており、このEGRクーラ43は、冷却水との熱交換によって排気ガスを冷却する。EGR上流配管41およびEGR下流配管42を通過する排気ガスは、ハウジング60に流通する冷却水との熱交換によって冷却される。
図1、図2、図3において、エアクリーナ23は、エンジン本体10の上方の位置からハウジング60の上方の位置に延びるように配置されている。車両用エンジン1は、エアクリーナ23をハウジング60に支持させるブラケット51(図4参照)を備えている。ブラケット51は、板状の金属等をZ字状に曲げたものからなり、エアクリーナ23とハウジング60とに固定されている。また、エアクリーナ23の後部は図示しない支持部により吸気マニホールド26に支持される。吸気マニホールド26は、ブラケット52によってシリンダヘッドカバー13に支持される。エアクリーナ23の下部には、下方に突出する脚部23Aが設けられており、脚部23Aはシリンダヘッドカバー13の上面に固定されている。このように、エアクリーナ23は、脚部23Aおよびブラケット51、図示しない支持部によってエンジン本体10に支持されている。
図2、図3、図4、図5、図10において、車両用エンジン1はハウジング60を有しており、このハウジング60は、シリンダヘッド12の左の側面12Aに連結されている。ハウジング60の内部には冷却水の流通量を調整するサーモスタット46が収容されている。本実施例では、シリンダヘッド12の側面12Aとは、シリンダヘッド12の4つの側面のうち、気筒列方向における図示しないトランスミッション側の端部の面であるが、他の側面であってもよい。
図6、図10において、ハウジング60は、冷却水通路61Aを形成する筒状の冷却水通路部61を有しており、この冷却水通路部61は、エンジン本体10の上部に配置されたシリンダヘッド12と連通している。また、ハウジング60は、排気ガスが通過するEGR通路62Aを形成するEGR通路部62を有している。ハウジング60の上部には、EGR通路62Aを通過する排気ガスの量を調整するEGRバルブ47が取付けられている。
図4において、ハウジング60は、シリンダヘッド12の側面12Aに連結される第1の端部60A(右端部)と、第1の端部60Aと対向する第2の端部60B(左端部)とを有している。
第1の端部60Aには冷却水通路61A(図5参照)の一端(右端)が開口し、第2の端部60Bには冷却水通路61Aの他端(左端)が開口している。図3において、第2の端部60Bには、円筒状のキャップ45がボルト50D、50Eによって固定されている。
図5、図6、図9において、冷却水通路部61の外周部には、シリンダヘッド12に締結される複数のボス部67A、67B、67Cが形成されている。ボス部67Aは冷却水通路61Aの中心よりも上側に配置されている。ボス部67B、67Cは冷却水通路61Aの中心より下側に配置されている。ボス部67A、67B、67Cは、本発明における第1のボス部、第2のボス部、第3のボス部を構成している。ボス部67A、67B、67Cには、図3に示すように、ボルト50A、50B、50Cが締結される。また、図3において、キャップ45はボルト50D、50Eによってハウジング60に締結されている。
図6において、ボス部67Aは、EGRバルブ取付フランジ部65と冷却水通路部61の上面との間に配置されている。ボス部67Bは、上流側EGR通路部63の上側に配置されている。ボス部67Cは、下流側EGR通路部64に対して冷却水通路61Aと反対側の縁部に配置されている。また、ボス部67Aの中心と第2のボス部67Bの中心とを結ぶ仮想線LはEGRバルブ取付フランジ部65の中央部を通過している。
図5、図6、図10において、EGR通路部62は、上流側EGR通路部63と、下流側EGR通路部64とを有している。上流側EGR通路部63は、第1の端部60Aから第2の端部60B側に離れた位置で冷却水通路部61の下面に連結されており、冷却水通路部61と交差する方向(前後方向)に延びるようにEGR通路62Aを形成している。下流側EGR通路部64は、第1の端部60Aから第2の端部60B側に離れた位置で冷却水通路部61の後側の側面に連結されており、上流側EGR通路部63の下流側端部に連通し、冷却水通路部61と交差するように上方向へ延びるようにEGR通路62Aを形成している。
ここで、上流側EGR通路部63および下流側EGR通路部64の内部のEGR通路62Aは、円形断面に形成されている。そして、上流側EGR通路部63および下流側EGR通路部64は、円形断面のEGR通路62Aを囲うように筒状に形成されている。
図5において、下流側EGR通路部64の上端64Bは、シリンダヘッド12の上端12Bよりも上側に延びている。下流側EGR通路部64の上端64Bには、EGRバルブ47を取付けるEGRバルブ取付フランジ部65が形成されている。図9において、ブラケット51は、EGRバルブ取付フランジ部65の一部である第2締結部65Bに固定されている。
図4において、EGR通路部62は、第1の端部60Aよりも第2の端部60Bに近接するようにハウジング60に配置されている。
図6において、EGRバルブ取付フランジ部65は、第1締結部65Aと第2締結部65Bとを有している。第1締結部65Aと第2締結部65Bとは、下流側EGR通路部64の中心64Cに対して互いに反対側に配置されている。なお、下流側EGR通路部64の中心64Cと上流側EGR通路部63の中心63Cは直角に交差している。
図5、図10において、ハウジング60は、平面形状のリブ66を有しており、このリブ66は、冷却水通路部61と交差する平面に沿って上下方向に延びている。リブ66は、EGRバルブ取付フランジ部65と冷却水通路部61の上面とを連結している。
図9において、第1締結部65Aと第2締結部65Bのうち一方(本実施例では第1締結部65A)の下部は、上下方向に延びるリブ66によって冷却水通路部61の上面に連結されている。第1締結部65Aと第2締結部65Bのうち他方(本実施例では第2締結部65B)の上部にはブラケット51が取付けられている。
図6、図9において、EGRバルブ取付フランジ部65は、EGRバルブ47が取付けられる取付面65Cを有しており、この取付面65Cの第1締結部65A側の端部は冷却水通路部61の上方の位置に延びている。
図6、図9において、冷却水通路部61の内壁面には、冷却水通路61A内へ突出しサーモスタット46を位置決めする2つの突部61Bが設けられている。突部61Bは、冷却水通路部61の内壁面における周方向でリブ66および下流側EGR通路部64と隣接する部位に配置されている。
図5、図6、図10において、上流側EGR通路部63は、排気ガスを取入れるEGR上流配管41が締結される上流側フランジ部68を有している。上流側フランジ部68は、冷却水通路61Aに対して下流側EGR通路部64と反対側に配置され、かつ、冷却水通路部61の側方の位置に連結されている。
図5、図8において、下流側EGR通路部64は、排気ガスを排出するEGR下流配管42(図8参照)が締結される下流側フランジ部69を有している。下流側フランジ部69の取付面は、第2の端部60Bに沿う平面と平行に配置されている。下流側フランジ部69の締結部69Aは、EGRバルブ取付フランジ部65よりも下方、かつ、冷却水通路部61よりも上方に配置されている。
図10において、シリンダヘッド12の左の側面12Aにはカム角センサ53が設けられており、このカム角センサ53は、シリンダヘッド12の内部に設けられた図示しないカムシャフトの回転角度を検出する。
ここで、カム角センサ53は、カムシャフトに対応する位置に配置する必要があることから、その設置位置を自由に選択することは困難である。そこで、本実施例では、カム角センサ53と位置が干渉しないように、ハウジング60およびEGRバルブ47を配置している。詳しくは、カム角センサ53がハウジング60の前側の上部に位置するように、ハウジング60が配置されている。これにより、カム角センサ53とハウジングとが干渉することを防止している。また、ハウジング60の後側の上部にEGRバルブ47を配置することにより、カム角センサ53とEGRバルブ47とが干渉することを防止している。また、カム角センサ53の左方の位置にリブ66が配置していることにより、カム角センサ53を異物等の衝突から保護している。
以上説明したように、本実施例の車両用エンジン1において、EGRバルブ取付フランジ部65は、EGRバルブ47が取付けられる取付面の端部が冷却水通路部61の上方の位置に延びており、ハウジング60は、冷却水通路部61と交差する平面に沿って上下方向に延び、かつ、EGRバルブ取付フランジ部65と冷却水通路部61の上面とを連結するリブ66を有している。このため、冷却水通路部61と交差する平面に沿って延びるようにリブ66を形成したことにより、リブ66の大きさおよび肉厚を必要最小限の形状にした場合であっても、リブ66によってその平面方向に作用する荷重を効果的に受け持たせることができる。したがって、リブ66を小さくしつつEGRバルブ取付フランジ部65と冷却水通路部61の上面との結合剛性を高めることができ、EGRバルブ取付フランジ部65の振動を抑制できる。
また、冷却水通路部61の内壁面に、冷却水通路61A内へ突出しサーモスタット46を位置決めする突部61Bが設けられており、突部61Bは、冷却水通路部61の内壁面における周方向でリブ66および下流側EGR通路部64と隣接する部位に配置されているので、突部61Bによって冷却水通路部61と下流側EGR通路部64との結合剛性を高めることができる。
従って、リブ66の形状と突部61Bの配置とによって、ハウジング60の重量増加を回避しつつEGRバルブ47の振動を抑制することができる。
この結果、シリンダヘッド12に連通する冷却水通路61AとEGR通路62Aとを有し、EGRバルブ47が取付けられるハウジング60をシリンダヘッド12の側面12Aに取付ける際、EGR通路62AおよびEGRバルブ47がシリンダヘッド12の側方に離れた位置に配置されていてもEGRバルブ47の振動を抑制できる。
また、本実施例の車両用エンジン1において、ボス部67A、67B、67Cは、冷却水通路61Aの中心よりも上側に配置されるボス部67Aと、冷却水通路61Aの中心より下側に配置されるボス部67Bおよびボス部67Cとを有している。そして、ボス部67Aは、EGRバルブ取付フランジ部65と冷却水通路部61の上面との間に配置されている。
これにより、下流側EGR通路部64に沿って突部61Bとボス部67Aとが配置されるので、突部61Bとボス部67Aとによって下流側EGR通路部64を補強することができ、下流側EGR通路部64の振動を抑制できる。
また、本実施例の車両用エンジン1において、ボス部67Bは、上流側EGR通路部63の上側に配置され、ボス部67Cは、下流側EGR通路部64に対して冷却水通路61Aと反対側の縁部に配置され、ボス部67Aの中心と第2のボス部67Bの中心とを結ぶ仮想線LがEGRバルブ取付フランジ部65の中央部を通過している。
これにより、EGRバルブ取付フランジ部65がシリンダヘッド12の側面12Aと交差する方向に振動することを防止できる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。