JP7251122B2 - 銀ナノ粒子を用いた可食性インク及びそれを用いた被印刷物 - Google Patents
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Description
可食性インクが用いられる他の分野としては、同じように経口が伴う錠剤もある。例えば、錠剤やカプセル剤等の固形の医療用錠剤は、種類が多く、大きさ・色調・形状が類似したものがある。このため、識別のために製品名や成分含量等をコード化して個々の錠剤に直接標示することがよく行われている。
一方、意匠性の観点から、近年金属光沢を呈するインクのニーズも高まっている。なかでも、粒径がナノメートルレベルまで微細化された金属ナノ粒子を用いたインクは、金属光沢性の意匠を呈するインクとして優れた適性を有していることが見出されている。これは、金属ナノ粒子を含有する分散液を塗布すると、分散媒の揮発に伴い、金属ナノ粒子が均一に配列し金属光沢を呈するためである。特に、金属ナノ粒子の中でも銀等の貴金属は耐食性に優れるため、応用範囲が広く金属光沢性があるインクとして有用である。
また、シュウ酸銀とアミンを混合して、熱分解することによりシュウ酸銀アミン錯体を経て銀ナノ粒子を製造する方法等も知られている(特許文献4、特許文献5)。この手法は、銀イオンを還元するための還元剤を混合する必要がなく、単純な手法で銀ナノ粒子を製造することが可能である。さらに、アミン錯体の分解の際、アミン分子のアミノ基が銀粒子表面に配位することから、分散剤を添加しなくてもある種の分散媒に分散可能な銀ナノ粒子が得られる。
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態)について詳述するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本実施形態に係る可食性インク(以下、単にインクとも称する)は、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、水を含む分散媒とを有する。用いた材料は経口実績のある物質であるため、インクは経口摂取が可能である。また、本実施形態に係るインクは、経口摂取可能な分散剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに有してもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを有することで、銀ナノ粒子の分散性が向上する。
重量平均分子量は、市販の測定装置で測定することが可能であり、例えば、GCP(ゲル浸透クロマトグラフィー)法での測定が可能である。
なお、GCP法は、ESC(サイズ排除クロマトグラフィー)法とも呼ばれる。
GCP法であれば、測定する物質が高分子であっても、モノマー等が混合している場合(高分子単体の物質ではない場合)、測定時に検量線と併用して、分子量を推測することも可能である。
また、本実施形態に係るインクに用いられる分散剤は、可食性のポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。分散剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することで、銀ナノ粒子の分散性が向上する。この分散性の向上により銀ナノ粒子が凝集しにくくなるため、経時安定性が向上し、印刷時に詰まりが生じない等、印刷性の良いインクとなる。また、分散性が高いほどインクの固形分が高くでき、一度の印刷による印刷濃度が高くなる他、保存安定性も向上する。
脂肪酸の炭素鎖が長く、立体的に大きいポリグリセリン脂肪酸エステルは、銀ナノ粒子同士が近づきすぎるのを防ぐことから、粒子が凝集しにくくなる効果がある。具体的な脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、等の構造を有するものが挙げられる。また、グリセリンの量体数も影響し、量体数が大きいほど立体障害が大きく、親水性の高い分散剤となる。
インクにおける上記分散剤、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル等の添加量は、0.1重量%以上5重量%以下の範囲内であることが好ましい。分散剤の添加量が0.1重量%を下回ると分散安定性が低下し、5重量%を上回ると印刷適性が低下することがある。また、分散剤は、破泡剤として酸化珪素微粉末を含んでいてもよい。さらに、分散剤は、エマルジョン化されていてもよい。
合成食用色素としては、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素等が挙げられる。タール系色素としては、食用赤色2号、食用赤色3号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、食用赤色2号アルミレーキ、食用黄色4号アルミレーキ、食用青色1号アルミレーキ等が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、銅クロロフィル、ノルビキッシンカリウム等が挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビン等が挙げられる。
本実施形態に係るインクは、塗工面に金属光沢を呈する、即ち被印刷物上で金属光沢を示す。これにより、多角度測色を行うと、金属光沢の特徴の一つであるフリップフロップ性がみられる。ここで「フリップフロップ性」とは、メタリック感(金属光沢感)を数値化する方法のひとつであり、視覚の方向性(見る位置)によって明度や色相の差があることをいう。多角度測色は、例えば、多角度測色計(BYK-Gardner社、BYK-mac、25℃、D50/2°)で測定を行うことができる。また、観察角度15°、45°、110°の各明度(L*)の測定値から、下記(1)式によりフロップインデックス(Flop Index)を計算で求めることができる。なお、下記(1)式における「L*15」、「L*45」及び「L*110」は、観察角度15°、45°及び110°における各明度(L*)の測定値をそれぞれ示している。
・・・(1)
なお、上記(1)式は、特開2008-126126号公報に開示されているフロップインデックス計算式を参考にした。
フロップインデックスはフロップ感を数値化したものであり、値が大きいほど金属光沢が強くみえるため、計算値が4以上である場合に金属光沢があると判断する。
本実施形態に係るインクは、印刷方法は問わず、例えば、インクジェットやバーコート、スピンコートといった手法により印刷、塗工が可能である。印刷方法による適正なインク粘度の調節には、例えば、ポリビニルピロリドンを用いてもよい。
ただし、被印刷物が食品及び医薬品である場合、インクジェット法による印刷が好ましい。形状及び性状が種々な物に印刷可能であるうえ、直接触れることなく印刷できるため衛生的である。
図1(a)は、本実施形態に係る被印刷物の構成を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、本実施形態に係る被印刷物を示す図である。
本実施形態に係る被印刷物1は、例えば、食品や医療用錠剤等の薬剤、食品用包装材料、おもちゃ、哺乳用品といったものを含む。
食品としては、例えば、米や卵、野菜、果物といった生鮮食品、菓子類、水産練り製品、肉加工品、乳加工品といった加工食品を始めとする様々な食品の表面に印刷可能である。また、医療用錠剤としては、例えば、OD錠、素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠等の錠剤に印刷可能であり、その成分は問わない。食品用包装材料としては、例えば、汎用プラスチックであるポリエチレンやポリプロピレン、紙等の包装材に印刷可能である。いずれの場合も、表面状態や成分によってインクの組成や印刷方法を適宜選択するのが望ましい。
<実施例1-1>
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で攪拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間加熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、さらに熱水200mL、エタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
水4.0gにポリビニルピロリドンとしてアイフタクトK-30PH(第一工業製薬社)2.4gを添加し水溶液を調製したところに、上述の工程で得たシュウ酸銀0.48gを加え、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。5時間後に灰色の分散液に変化した。放熱したところに水40mLを加え、遠心分離(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm30分間)により灰色固形物0.35gを得た。この灰色固形物が本実施例に係る銀ナノ粒子、即ちポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子である。
なお、アイフタクトK-30PHの重量平均分子量は45,000であった。
上記工程により得られた銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S-4800)を用いてS-TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒径が10~1000nm程度の球状又は平板状粒子が観察された。その結果を図2に示す。より詳しくは、図2は、実施例1-1で得た銀ナノ粒子の水溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
得られた銀ナノ粒子0.1gを10gの水に分散して作製した水分散液の吸光スペクトル(島津製作所社、紫外可視分光光度計 UV-2600、透過モード)を図4に示す。図4から、実施例1-1に係る銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードな第2のピークを有していることがわかった。
水7.0g、グリセリン2.0g、イソプロピルアルコール1.0gを混合した分散媒に対し、上述の工程で得た銀ナノ粒子2.0gを分散させよく攪拌した後、シリンジフィルター(Whatman社、25mm GD/Xシリンジフィルター(GF/B 1.0μm))に通し、インクジェット印刷用のインク、即ちインクジェットインクを調製した。この場合、分散媒の合計量10gに対してグリセリン2gのため、グリセリンの重量%は20%となる。また、分散媒10gに対して銀ナノ粒子2gのため、銀ナノ粒子の重量%は20%となる。以下同様に計算する。
なお、インクジェットインクの粘度は3mPsであった。また、グリセリンの沸点は、290℃であった。
インクの粘度測定は、山一電機社 VM-1G-L/DD-1Aを用いて測定時のインク液温25℃で測定を行った。
上記工程により調整したインクジェットインクを用いて、印刷テストを行った。この印刷テストでは、ノズル数6のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10pLの印刷ドロップ量にてテストパターンを印刷した。印刷内容(印刷画像)には、3mm×3mmの正方形を塗りつぶした画像を用いた。被印刷物として錠剤を用いたところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像(図5)を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
実施例1-1で用いたインクに対し、食用赤色102号(ダイワ化成社)0.1gを新たに添加した以外は実施例1-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例1-2に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。
実施例1-1で用いたインクに対し、食用青色1号(ダイワ化成社)0.1gを新たに添加した以外は実施例1-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例1-3に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。
実施例1-1で用いたインクに対し、食用黄色4号(ダイワ化成社)0.1gを新たに添加した以外は実施例1-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例1-4に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。
実施例1-1~1-4で得られた錠剤(コーティング錠)に対し、分光光度計(米国 X-Rite社製「X-Rite T-530」)を用いて色度(L*a*b*表色系)を測定した。測定結果を表1に示す。
色みはa*、b*で表し、a*、b*ともに0の場合は無彩色となる。a*がプラスの方向になるほど赤みが強くなり、マイナスの方向になるほど緑みが強くなる。また、b*がプラスの方向になるほど黄みが強くなり、マイナスの方向になるほど青みが強くなる。なお、この3つの軸が直交して交わる点は、L*=50、a*=0、b*=0である。
実施例1-1で印刷した画像の代わりに、1mm程度の微小な文字を印刷した以外は実施例1-1と同等に操作したところ、文字は印刷可能であった。また、塗工面は微小な文字となっても金属光沢を示した。その結果を表2に示す。なお、表2では、印刷が可能であった場合には、印刷適性を「○」と評価し、印刷が不可能であった場合には、印刷適性を「×」と評価した。また、表2では、印刷部が金属光沢を示した場合には「〇」と評価し、印刷部が金属光沢を示さなかった場合には「×」と評価した。
実施例1-1で用いた錠剤の代わりに、チョコレートやクッキーといった菓子を被印刷物として用いた以外は実施例1-1と同等に操作したところ、画像は菓子の表面に印刷可能であった。その結果を表2に示す。
実施例1-1で用いた錠剤の代わりに、卵を被印刷物として用いた以外は実施例1-1と同等に操作したところ、画像は卵の殻の表面に印刷可能であった。その結果を表2に示す。
実施例1-1で用いたインクを用いて、クリーンペーパーに#3バーコーターで塗布を行ったところ、銀色の塗膜が得られた。得られた塗膜を用いて多角度測色(BYK-Gardner社、BYK-mac)を行ったところ、角度によってL*の値に変化があり、フロップ性がみられた。結果を表3に示す。また、この時のフロップインデックスは6.45となった。
なお、実施例1-2~1-4で用いたインクを用いても、実施例1-8と同様のフリップフロップ性を示した。
グリセリンを使用せずに、水9.0gとイソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に対し、実施例1-1で得られた銀ナノ粒子2.0gを添加し、銀ナノ粒子が均一に分散したインクを作製した。この時、インクジェットインクの粘度は1mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが詰まってしまい、錠剤に画像を印刷できなかった。これは、グリセリンが含まれないことでインクが乾燥しやすくなったためと考えられる。その結果を表4に示す。なお、表4では、ノズルに目詰まりが生じなかった場合には、「○」と評価し、ノズルに目詰まりが生じた場合には、「×」と評価した。また、表4中の「乾燥防止成分」とは、インクの乾燥防止を目的としてインクに添加した成分(物質)を意味する。
実施例1-1のグリセリンをプロピレングリコールにした以外は実施例1-1と同様にして、実施例1-10に係るインクを作製した。なお、プロピレングリコールの沸点は、188℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、プロピレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表4に示す。
実施例1-1のグリセリンをポリエチレングリコール300にした以外は実施例1-1と同様にして、実施例1-11に係るインクを作製した。なお、ポリエチレングリコール300の沸点は、250℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、ポリエチレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表4に示す。
実施例1-1の分散媒を水8.5g、グリセリン1.0g、イソプロピルアルコール0.5gを混合した分散媒とした以外は実施例1-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は2.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが汚れやすい傾向はみられたものの、画像は印刷可能であった。その結果を表5に示す。なお、表5では印刷可能な場合、「○」と評価し、印刷できない場合、「×」と評価した。
実施例1-1の分散媒を水4.0g、グリセリン4.0g、イソプロピルアルコール2.0gを混合した分散媒とした以外は実施例1-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は6.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、画像は印刷可能であった。その結果を表5に示す。
実施例1-1の遠心分離の条件を変更したところ(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm5分間)、0.1gの銀ナノ粒子を得た。この銀ナノ粒子のメジアン径は150nmであった。得られた銀ナノ粒子を用いて実施例1-1と同様にインクを作製し、印刷テストを行ったところ、画像の濃度が薄く、銀色の光沢はみられなかった。その結果を表6に示す。これは、銀ナノ粒子の粒径が大きく、分散性が低下したことから、シリンジフィルターによって銀ナノ粒子が除かれたためと考えられる。なお、表6では画像の濃度が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。また、表6では金属光沢が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。
<実施例2-1>
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸銀を、第1実施例の場合と同様にして合成した。
即ち、シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で攪拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間加熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、さらに熱水200mL、エタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
銀ナノ粒子を、第1実施例の場合と同様にして合成した。
即ち、水4.0gにポリビニルピロリドンとしてアイフタクトK-30PH(第一工業製薬社)2.4gを添加し水溶液を調製したところに、上述の工程で得たシュウ酸銀0.48gを加え、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。5時間後に灰色の分散液に変化した。放熱したところに水40mLを加え、遠心分離(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm30分間)により灰色固形物0.35gを得た。この灰色固形物が本実施例に係る銀ナノ粒子、即ちポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子である。
なお、アイフタクトK-30PHの重量平均分子量は45,000であった。
銀ナノ粒子を、第1実施例の場合と同様にして観察した。
即ち、上記工程により得られた銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S-4800)を用いてS-TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒径が10~1000nm程度の球状又は平板状粒子が観察された。その結果を図2に示す。より詳しくは、図2は、実施例2-1で得た銀ナノ粒子の水溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
得られた銀ナノ粒子0.1gを10gの水に分散して作製した水分散液の吸光スペクトル(島津製作所社、紫外可視分光光度計 UV-2600、透過モード)を図4に示す。図4から、実施例2-1に係る銀ナノ粒子分散液は、第1実施例の場合と同様に、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードな第2のピークを有していることがわかった。
水7.0g、グリセリン2.0g、イソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に、分散剤であるNIKKOL Decaglyn 1-L(日光ケミカルズ社)0.5gを溶解させた分散媒に対し、上述の工程で得た銀ナノ粒子4.0gを分散させよく攪拌した後、シリンジフィルター(Whatman社、25mm GD/Xシリンジフィルター(GF/B 1.0μm))に通し、インクジェット印刷用のインク、即ちインクジェットインクを調製した。この場合、分散媒の合計量10gに対してグリセリン2gのため、グリセリンの重量%は20%となる。また、分散媒10gに対して銀ナノ粒子4gのため、銀ナノ粒子の重量%は40%となる。以下同様に計算する。
なお、インクジェットインクの粘度は4mPsであった。また、グリセリンの沸点は、290℃であった。
インクの粘度測定は、第1実施例の場合と同様に、山一電機社 VM-1G-L/DD-1Aを用いて測定時のインク液温25℃で測定を行った。
インクジェット印刷は、第1実施例の場合と同様にして行った。
即ち、上記工程により調整したインクジェットインクを用いて、印刷テストを行った。この印刷テストでは、ノズル数6のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10pLの印刷ドロップ量にてテストパターンを印刷した。印刷内容(印刷画像)には、3mm×3mmの正方形を塗りつぶした画像を用いた。被印刷物として錠剤を用いたところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像(図5)を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
得られた錠剤(コーティング錠)に対し、分光光度計(米国 X-Rite社製「X-Rite T-530」)を用いて色度(L*a*b*表色系)を測定した。測定結果を表7に示す。
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-M(日光ケミカルズ社)0.5gを用いた以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2-2に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-SV(日光ケミカルズ社)0.5gを用いた以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2-3に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-OV(日光ケミカルズ社)0.5gを用いた以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2-4に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤であるNIKKOL Decaglyn 1-OV(日光ケミカルズ社)を添加しなかった以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。
実施例2-1で用いたインクを用いて、クリーンペーパーに#3バーコーターで塗布を行ったところ、銀色の塗膜が得られた。得られた塗膜を用いて多角度測色(BYK-Gardner社、BYK-mac)を行ったところ、角度によってL*の値に変化があり、フロップ性がみられた。結果を表9に示す。また、この時のフロップインデックスは9.61となった。
なお、実施例2-2~2-4で用いたインクを用いても、実施例2-5と同様のフリップフロップ性を示した。
グリセリンを使用せずに、水9.0gとイソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に対し、実施例2-1で得られた銀ナノ粒子2.0gを添加し、銀ナノ粒子が均一に分散したインクを作製した。この時、インクジェットインクの粘度は1.2mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが詰まってしまい、錠剤に画像を印刷できなかった。これは、グリセリンが含まれないことでインクが乾燥しやすくなったためと考えられる。その結果を表10に示す。なお、表10では、ノズルに目詰まりが生じなかった場合には、「○」と評価し、ノズルに目詰まりが生じた場合には、「×」と評価した。また、表10中の「乾燥防止成分」とは、インクの乾燥防止を目的としてインクに添加した成分(物質)を意味する。
実施例2-1のグリセリンをプロピレングリコールにした以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-7に係るインクを作製した。なお、プロピレングリコールの沸点は、188℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、プロピレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表10に示す。
実施例2-1のグリセリンをポリエチレングリコール300にした以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-8に係るインクを作製した。なお、ポリエチレングリコール300の沸点は、250℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、ポリエチレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表10に示す。
実施例2-1の分散媒を水9.2g、グリセリン0.8g、イソプロピルアルコール0.5gを混合した分散媒とした以外は実施例2-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は2.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが汚れやすい傾向はみられたものの、画像は印刷可能であった。その結果を表11に示す。なお、表11では印刷可能な場合、「○」と評価し、印刷できない場合、「×」と評価した。
実施例2-1の分散媒を水4.2g、グリセリン3.8g、イソプロピルアルコール2.0gを混合した分散媒とした以外は実施例2-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は6.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、画像は印刷可能であった。その結果を表11に示す。
実施例2-1の遠心分離の条件を変更したところ(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm5分間)、0.1gの銀ナノ粒子を得た。この銀ナノ粒子のメジアン径は150nmであった。合成を4回繰り返し、得られた銀ナノ粒子を用いて実施例2-1と同様にインクを作製し、印刷テストを行ったところ、画像の濃度が薄く、銀色の光沢はみられなかった。その結果を表12に示す。これは、銀ナノ粒子の粒径が大きく、分散性が低下したことから、シリンジフィルターによって銀ナノ粒子が除かれたためと考えられる。なお、表12では画像の濃度が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。また、表12では金属光沢が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。
2 印刷画像
Claims (8)
- 可食性インクであって、
ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、
水を含む分散媒と、を有し、
前記銀ナノ粒子は、メジアン径(D50)が15nm以上150nm以下の範囲内であり、
前記分散媒は、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールの少なくとも1種を合計で1重量%以上50重量%以下の範囲内で含有していることを特徴とする可食性インク。 - 分散剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の可食性インク。
- 前記可食性インクの粘度は、2mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可食性インク。
- 前記銀ナノ粒子が前記分散媒に分散された銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、前記第1のピークよりもブロードな第2のピークを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の可食性インク。
- 前記可食性インクは、被印刷物上で金属光沢を示すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可食性インク。
- 経口摂取する被印刷物であって、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の可食性インクで印刷された印刷部を備えることを特徴とする被印刷物。
- 前記被印刷物は、薬剤及び食品の少なくとも一方であることを特徴とする請求項6に記載の被印刷物。
- 経口接触する被印刷物であって、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の可食性インクで印刷された印刷部を備えることを特徴とする被印刷物。
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