JP7251122B2 - 銀ナノ粒子を用いた可食性インク及びそれを用いた被印刷物 - Google Patents

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Description

本発明は、予め設定された印刷内容(例えば、文字、記号又は画像等)を被印刷物に印刷するための可食性インク及びそれを用いた被印刷物に関する。
近年、安全性や品質向上の観点から、食品及び食品用包装材料に生産や品質に関する表示が必要となってきている。一方で、食品及び食品用包装材料に、文字、図形、デザイン等の加工を施すことも、魅力的な商品とするために有用な手段である。食品に直接記録する場合は、可食性の材料で構成されたインクを用いることが必要である。また、その可食性インクを、食品用包装材料等の記録にも用いると安心感が得られることがある。
可食性インクが用いられる他の分野としては、同じように経口が伴う錠剤もある。例えば、錠剤やカプセル剤等の固形の医療用錠剤は、種類が多く、大きさ・色調・形状が類似したものがある。このため、識別のために製品名や成分含量等をコード化して個々の錠剤に直接標示することがよく行われている。
しかし、いずれの場合も、可食性インクを調製する際にはインク材料に制約があり、一般のインクと比較して調製が困難であった。
一方、意匠性の観点から、近年金属光沢を呈するインクのニーズも高まっている。なかでも、粒径がナノメートルレベルまで微細化された金属ナノ粒子を用いたインクは、金属光沢性の意匠を呈するインクとして優れた適性を有していることが見出されている。これは、金属ナノ粒子を含有する分散液を塗布すると、分散媒の揮発に伴い、金属ナノ粒子が均一に配列し金属光沢を呈するためである。特に、金属ナノ粒子の中でも銀等の貴金属は耐食性に優れるため、応用範囲が広く金属光沢性があるインクとして有用である。
このような銀ナノ粒子は、更に、適切な保護剤で表面を覆うことにより低粘度の分散媒中でも沈降することなく分散性を維持するため、低粘度のインクが用いられるインクジェット法等に適したインクを作製可能である。インクジェット法は様々な形状のものに塗工可能であり、被印刷物に接触しないことから、食品や医療用錠剤に対する印刷方法として好ましい。このようなことから、金属光沢性があるインクとして、銀ナノ粒子を含むインクを用いた食品や医療用錠剤に対する印刷が期待されるが、可食性インクとしては安全性の観点から実現困難であった。
銀ナノ粒子を製造する方法としては、一般には硝酸銀や塩化銀等の銀塩を溶解させた水溶液等を用いて、存在する銀イオンを何らかの還元剤により還元して所望の形態の金属塩として析出させることが通常であった(特許文献1~特許文献3)。
また、シュウ酸銀とアミンを混合して、熱分解することによりシュウ酸銀アミン錯体を経て銀ナノ粒子を製造する方法等も知られている(特許文献4、特許文献5)。この手法は、銀イオンを還元するための還元剤を混合する必要がなく、単純な手法で銀ナノ粒子を製造することが可能である。さらに、アミン錯体の分解の際、アミン分子のアミノ基が銀粒子表面に配位することから、分散剤を添加しなくてもある種の分散媒に分散可能な銀ナノ粒子が得られる。
また、シュウ酸銀を熱分解させる際に、粒子の表面に配位する分子としてポリビニルピロリドンを用いて銀ナノ粒子を製造する方法もある(非特許文献1)。熱分解の際に生じる副生成物は二酸化炭素のみであり、遠心分離で洗浄した銀ナノ粒子の構成成分は銀と表面に配位したポリビニルピロリドンだけとなる。この2つはいずれも経口実績のある成分であり、可食性インクに用いることができる。
特開2012-180589号公報 特開2012-140701号公報 特開2002-121437号公報 特開2012-162767号公報 特許第5574761号公報
T. Togashi, S. Ojima, I. Sato, K. Kanaizuka, and M. Kurihara, Chem. Lett., 2016, 45, 646-648
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、経口摂取可能或いは経口接触可能な成分で構成された銀ナノ粒子を材料として含む可食性インク及びそれを用いた被印刷物を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る可食性インクは、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、水を含む分散媒と、を有している。
本発明の一態様によれば、ポリビニルピロリドンと銀という経口摂取可能或いは経口接触可能な成分で構成された銀ナノ粒子を材料として含むインクを提供することができる。このように食品添加物或いは薬事法で認められた材料を用いたインクは、食品及び医療用錠剤等に使用することができる。また、直接食品に印字を行わない場合でも、食品用包装材料等に記録する過程で、このインクによる混入や接触が仮にあっても、経口摂取に問題のない材料であり安全である。
(a)は、本発明の実施形態に係る被印刷物の構成を模式的に示す平面図であり、(b)は、本実施形態に係る被印刷物を示す図である。 本発明の実施例1-1(実施例2-1)で得られた銀ナノ粒子の水分散液を基板に塗布し乾燥させた後、観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の実施例1-1(実施例2-1)で得られた銀ナノ粒子の粒度分布及び累積度数(%)を示す図である。 本発明の実施例1-1(実施例2-1)で得られた銀ナノ粒子分散液の吸光スペクトルを示す図である。 本発明の実施例1-1(実施例2-1)で得られた可食性インクで印刷した画像を示す図である。
(銀ナノ粒子を用いた可食性インク)
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態)について詳述するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本実施形態に係る可食性インク(以下、単にインクとも称する)は、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、水を含む分散媒とを有する。用いた材料は経口実績のある物質であるため、インクは経口摂取が可能である。また、本実施形態に係るインクは、経口摂取可能な分散剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに有してもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを有することで、銀ナノ粒子の分散性が向上する。
本実施形態に係るインクに用いられる銀ナノ粒子を構成する銀の原料としては、加熱分解により容易に金属を生成し、かつ、銀以外の不純物を生じにくい観点からシュウ酸銀が好ましい。シュウ酸銀は、銀含有率が高いとともに、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去される。このために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で、他の原料と比べて有利といえる。
本実施形態では、上記銀化合物をポロビニルピロリドン溶液中で加熱分解して、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子(以下、単に銀ナノ粒子とも称する)を製造する。ポリビニルピロリドンは、銀ナノ粒子の表面を保護する役割を果たすと共に、分散剤としても働く。本実施形態に係る銀ナノ粒子は、例えば、メジアン径(D50)が15nm以上150nm以下の範囲内であり、より好ましくは20nm以上140nm以下の範囲内であり、水やアルコールといった分散媒に分散可能である。なお、銀ナノ粒子のメジアン径(D50)が15nmより小さいと視認性が低下し、150nmより大きいと分散性が低下することがある。また、銀ナノ粒子の形状としては、球状、平板状、多角形状等のいずれか、または複数の形状のものを含む。平板状の銀ナノ粒子は少量であっても視認性がよいことが期待される。また、銀ナノ粒子の形状が、球状であると大きさが均一になりやすく、銀ナノ粒子が隙間無く並ぶことが期待できる。このため、球状の銀ナノ粒子も視認性がよいことが期待される。
銀ナノ粒子分散液の吸光スペクトルは、球状もしくは粒径の小さい銀ナノ粒子由来の400nm付近にピークを有し、アスペクト比の大きい平板状銀ナノ粒子等に由来する600~1300nm領域にブロードなピークを有することもある。換言すると、本実施形態に係る銀ナノ粒子が水を含む分散媒に分散された銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に、球状または粒径の小さい銀ナノ粒子に由来する第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードであり、アスペクト比の大きい平板状の銀ナノ粒子等に由来する第2のピークを有していてもよい。なお、この吸光スペクトルは、例えば、紫外可視分光光度計(島津製作所社、UV-2600、透過モード、25℃で測定)で測定を行うことができる。
インクにおける銀ナノ粒子の添加量は、例えば、1重量%以上50重量%以下の範囲内であればよく、1重量%以上40重量%以下の範囲内であることが好ましい。なお、金属光沢が強くなることから、銀ナノ粒子の添加量は、15重量%以上であることが特に好ましい。銀ナノ粒子の添加量が1重量%を下回ると印刷物としての視認性が低下し、50重量%を上回ると分散性が低下することがある。
銀ナノ粒子の表面を保護するポリビニルピロリドンは、特に、その分子量に制限はないが、分子量1,000,000以下であることが好ましい。ポリビニルピロリドンの分子量が1,000,000より大きいと溶液の粘度が高く扱いづらくなることがある。ポリビニルピロリドンの状態についての制限はなく、粉末製品を用いて溶液を作製しても、液体製品を用いてもよい。本実施形態において使用可能なポリビニルピロリドンとして、具体的には、日本触媒社、ポリビニルドンK-30、ポリビニルドンK-85、ポリビニルドンK-30W、ポリビニルドンK-85W、第一工業製薬社、ピッツコールK-30(分子量45,000)、ピッツコールK-50(分子量250,000)、ピッツコールK-80(分子量900,000)、ピッツコールK-85(分子量1,000,000)等を挙げることができるがこの限りではない。また、安全性の面から、医薬用途のポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。好ましいポリビニルピロリドンとして、具体的には、第一工業製薬社のアイフタクトK-30PH(日本薬局方認可)等が挙げられる。
なお、ポリビニルピロリドンの分子量は、「重量平均分子量」で表記されることが多いため、上記を含め、本実施形態でのポリビニルピロリドンの分子量は特に断りがない限り、重量平均分子量とする。
重量平均分子量は、市販の測定装置で測定することが可能であり、例えば、GCP(ゲル浸透クロマトグラフィー)法での測定が可能である。
なお、GCP法は、ESC(サイズ排除クロマトグラフィー)法とも呼ばれる。
GCP法であれば、測定する物質が高分子であっても、モノマー等が混合している場合(高分子単体の物質ではない場合)、測定時に検量線と併用して、分子量を推測することも可能である。
本実施形態に係るインクは、経口摂取可能な分散剤を含んでもよい。分散剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステルは、少なくとも1種類はデカグリセリンラウレートを主成分とするポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル(PGエステル)、有機モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、キラヤサポニン等が挙げられる。
また、本実施形態に係るインクに用いられる分散剤は、可食性のポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。分散剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することで、銀ナノ粒子の分散性が向上する。この分散性の向上により銀ナノ粒子が凝集しにくくなるため、経時安定性が向上し、印刷時に詰まりが生じない等、印刷性の良いインクとなる。また、分散性が高いほどインクの固形分が高くでき、一度の印刷による印刷濃度が高くなる他、保存安定性も向上する。
可食性のポリグリセリン脂肪酸エステルは、分散性向上の観点から、脂肪酸の炭素鎖が長く、立体的に大きいものが好ましい。また、水系のインキに用いることから、水に溶けやすいものが好ましい。
脂肪酸の炭素鎖が長く、立体的に大きいポリグリセリン脂肪酸エステルは、銀ナノ粒子同士が近づきすぎるのを防ぐことから、粒子が凝集しにくくなる効果がある。具体的な脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、等の構造を有するものが挙げられる。また、グリセリンの量体数も影響し、量体数が大きいほど立体障害が大きく、親水性の高い分散剤となる。
親水性の指標として、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であるHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値がある。HLB値は、最大値である20に近いほど親水性であることを表す。本実施形態で用いる分散剤のHLB値は8以上が好ましく、10以上だと特に好ましい。具体的な分散剤としては、日光ケミカルズ社のNIKKOL Decaglyn 1-L(ラウリン酸ポリグリセリル-10)、NIKKOL Decaglyn 1-M(ミリスチン酸ポリグリセリル-10)、NIKKOL Decaglyn 1-SV(ステアリン酸ポリグリセリル-10)、NIKKOL Decaglyn 1-OV(オレイン酸ポリグリセリル-10)や、坂本薬品工業社のSYグリスターMSW-7S(デカグリセリンモノステアリン酸エステル)、SYグリスターMSW-7S(デカグリセリンモノステアリン酸エステル)、SYグリスターTS-7S(デカグリセリントリステアリン酸エステル)、SYグリスターMO-7S(デカグリセリンモノオレイン酸エステル)、SYグリスターMO-7S(デカグリセリンモノオレイン酸エステル)SYグリスターML-750(デカグリセリンモノラウリン酸エステル)、SYグリスターMM-750(デカグリセリンモノミリスチン酸エステル)、三菱ケミカルフーズ社のリョートーポリグリエステルO-15D、リョートーポリグリエステルSWA10-D、リョートーポリグリエステルM-10D、リョートーポリグリエステルL-10D、等が挙げられる。
なお、本実施形態では、これらの分散剤を単独で、又は複数混合して用いてもよい。また、インクの組成物として用いる以外にも、銀ナノ粒子回収時に、分散剤を添加した分散液を遠心分離等で処理することで、粒子が凝集しにくく、再分散しやすい粒子が得られる。
インクにおける上記分散剤、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル等の添加量は、0.1重量%以上5重量%以下の範囲内であることが好ましい。分散剤の添加量が0.1重量%を下回ると分散安定性が低下し、5重量%を上回ると印刷適性が低下することがある。また、分散剤は、破泡剤として酸化珪素微粉末を含んでいてもよい。さらに、分散剤は、エマルジョン化されていてもよい。
本実施形態に係るインクが有する分散媒としては、例えば、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300(平均分子量300)等の各成分を挙げることができ、狙いとするインクの物性に合わせて上記成分を適宜混合して用いてよい。インクにおける上記成分の配合割合は特に限定するものではないが、インクジェット法ではノズルでのインクの乾燥を防止するために、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300のような沸点180℃以上の多価アルコール1種以上を合計で、インクジェット印刷用インク(以下、単にインクジェットインクとも称する)中に1重量%以上50重量%以下の範囲内で含有していることがより好ましい。インクジェットインク中における上記成分の含有量が1重量%より少ないと、インクの乾燥が起こりやすくなりノズルの目詰まりの原因となることがある。また、インクジェットインク中における上記成分の含有量が50重量%を超えると、錠剤表面における印字表面の乾燥が遅くなりすぎて、印刷した錠剤同士が接触したときに未乾燥のインクがもう一方の錠剤に付着して汚れとなるといった不具合の原因となることがある。また、インクジェットインクの場合、その粘度は室温(25℃)下で2mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内が好ましい。インクジェットインクの粘度が2mPa・sより低いと、インク吐出時に液滴が散ってサテライト(インクの飛び散り)ができやすくなる傾向がある。また、インクジェットインクの粘度が6mPa・sより高いと、吐出速度が遅くなり、印字も遅くなることがある。なお、上記単位「mPa・s」は、「mPs」とも表記される。
本実施形態に係るインクは、インクの色味を調整するため、適宜、経口摂取可能な色素を有してもよい。経口摂取可能な色素としては、例えば食用色素として、公知の合成食用色素及び天然食用色素が適宜選択して用いられる。
合成食用色素としては、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素等が挙げられる。タール系色素としては、食用赤色2号、食用赤色3号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、食用赤色2号アルミレーキ、食用黄色4号アルミレーキ、食用青色1号アルミレーキ等が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、銅クロロフィル、ノルビキッシンカリウム等が挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビン等が挙げられる。
天然食用色素としては、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素としては、例えば、赤キャベツ色素、クランベリー色素、ブドウ果汁色素、プラム色素、ムラサキイモ色素、ラズベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素としては、例えば、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素としては、例えば、コチニール色素、シコン色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素としては、例えば、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素としては、例えば、ビートレッド色素が挙げられる。モナスカス色素としては、例えば、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素等が挙げられる。
また、本実施形態に係るインクは、上記以外に、例えば、着香料、防腐剤、消泡剤、静菌剤等の経口摂取可能な添加剤を有してもよい。
本実施形態に係るインクは、塗工面に金属光沢を呈する、即ち被印刷物上で金属光沢を示す。これにより、多角度測色を行うと、金属光沢の特徴の一つであるフリップフロップ性がみられる。ここで「フリップフロップ性」とは、メタリック感(金属光沢感)を数値化する方法のひとつであり、視覚の方向性(見る位置)によって明度や色相の差があることをいう。多角度測色は、例えば、多角度測色計(BYK-Gardner社、BYK-mac、25℃、D50/2°)で測定を行うことができる。また、観察角度15°、45°、110°の各明度(L*)の測定値から、下記(1)式によりフロップインデックス(Flop Index)を計算で求めることができる。なお、下記(1)式における「L*15」、「L*45」及び「L*110」は、観察角度15°、45°及び110°における各明度(L*)の測定値をそれぞれ示している。
Flop Index=2.69・(L*15-L*1101.11/(L*450.86
・・・(1)
なお、上記(1)式は、特開2008-126126号公報に開示されているフロップインデックス計算式を参考にした。
フロップインデックスはフロップ感を数値化したものであり、値が大きいほど金属光沢が強くみえるため、計算値が4以上である場合に金属光沢があると判断する。
(印刷方法)
本実施形態に係るインクは、印刷方法は問わず、例えば、インクジェットやバーコート、スピンコートといった手法により印刷、塗工が可能である。印刷方法による適正なインク粘度の調節には、例えば、ポリビニルピロリドンを用いてもよい。
ただし、被印刷物が食品及び医薬品である場合、インクジェット法による印刷が好ましい。形状及び性状が種々な物に印刷可能であるうえ、直接触れることなく印刷できるため衛生的である。
(被印刷物)
図1(a)は、本実施形態に係る被印刷物の構成を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、本実施形態に係る被印刷物を示す図である。
本実施形態に係る被印刷物1は、例えば、食品や医療用錠剤等の薬剤、食品用包装材料、おもちゃ、哺乳用品といったものを含む。
食品としては、例えば、米や卵、野菜、果物といった生鮮食品、菓子類、水産練り製品、肉加工品、乳加工品といった加工食品を始めとする様々な食品の表面に印刷可能である。また、医療用錠剤としては、例えば、OD錠、素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠等の錠剤に印刷可能であり、その成分は問わない。食品用包装材料としては、例えば、汎用プラスチックであるポリエチレンやポリプロピレン、紙等の包装材に印刷可能である。いずれの場合も、表面状態や成分によってインクの組成や印刷方法を適宜選択するのが望ましい。
以上のように、本実施例に係る被印刷物1は、経口摂取する被印刷物であって、可食性インクで印刷された印刷部(印刷画像2)を備えていてもよい。また、本実施例に係る被印刷物1は、経口接触する被印刷物であって、可食性インクで印刷された印刷部(印刷画像2)を備えていてもよい。
[第1実施例]
<実施例1-1>
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で攪拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間加熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、さらに熱水200mL、エタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
〔銀ナノ粒子の合成〕
水4.0gにポリビニルピロリドンとしてアイフタクトK-30PH(第一工業製薬社)2.4gを添加し水溶液を調製したところに、上述の工程で得たシュウ酸銀0.48gを加え、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。5時間後に灰色の分散液に変化した。放熱したところに水40mLを加え、遠心分離(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm30分間)により灰色固形物0.35gを得た。この灰色固形物が本実施例に係る銀ナノ粒子、即ちポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子である。
なお、アイフタクトK-30PHの重量平均分子量は45,000であった。
〔銀ナノ粒子の観察〕
上記工程により得られた銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S-4800)を用いてS-TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒径が10~1000nm程度の球状又は平板状粒子が観察された。その結果を図2に示す。より詳しくは、図2は、実施例1-1で得た銀ナノ粒子の水溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
次に、得られた銀ナノ粒子の溶媒への分散性を評価した。その結果、水、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールといったアルコール等に良好に分散した。その水分散液の動的光散乱粒度測定(日機装社、Nanotrac UPA-EX150)により、得られた銀ナノ粒子は平均粒径23nmで良好に分散していることがわかった。その結果を図3に示す。また、図3に示した実線は、累積度数(%)を示している。
得られた銀ナノ粒子0.1gを10gの水に分散して作製した水分散液の吸光スペクトル(島津製作所社、紫外可視分光光度計 UV-2600、透過モード)を図4に示す。図4から、実施例1-1に係る銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードな第2のピークを有していることがわかった。
〔インクジェットインクの調製〕
水7.0g、グリセリン2.0g、イソプロピルアルコール1.0gを混合した分散媒に対し、上述の工程で得た銀ナノ粒子2.0gを分散させよく攪拌した後、シリンジフィルター(Whatman社、25mm GD/Xシリンジフィルター(GF/B 1.0μm))に通し、インクジェット印刷用のインク、即ちインクジェットインクを調製した。この場合、分散媒の合計量10gに対してグリセリン2gのため、グリセリンの重量%は20%となる。また、分散媒10gに対して銀ナノ粒子2gのため、銀ナノ粒子の重量%は20%となる。以下同様に計算する。
なお、インクジェットインクの粘度は3mPsであった。また、グリセリンの沸点は、290℃であった。
インクの粘度測定は、山一電機社 VM-1G-L/DD-1Aを用いて測定時のインク液温25℃で測定を行った。
〔インクジェット印刷〕
上記工程により調整したインクジェットインクを用いて、印刷テストを行った。この印刷テストでは、ノズル数6のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10pLの印刷ドロップ量にてテストパターンを印刷した。印刷内容(印刷画像)には、3mm×3mmの正方形を塗りつぶした画像を用いた。被印刷物として錠剤を用いたところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像(図5)を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
<実施例1-2>
実施例1-1で用いたインクに対し、食用赤色102号(ダイワ化成社)0.1gを新たに添加した以外は実施例1-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例1-2に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。
<実施例1-3>
実施例1-1で用いたインクに対し、食用青色1号(ダイワ化成社)0.1gを新たに添加した以外は実施例1-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例1-3に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。
<実施例1-4>
実施例1-1で用いたインクに対し、食用黄色4号(ダイワ化成社)0.1gを新たに添加した以外は実施例1-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例1-4に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。
実施例1-1~1-4で得られた錠剤(コーティング錠)に対し、分光光度計(米国 X-Rite社製「X-Rite T-530」)を用いて色度(L*a*b*表色系)を測定した。測定結果を表1に示す。
なお、L*a*b*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が推奨した、次の3つの値を使った座標で表した表色系である。L*は明るさを示し、0から100まで数値が大きいほど明るくなる。
色みはa*、b*で表し、a*、b*ともに0の場合は無彩色となる。a*がプラスの方向になるほど赤みが強くなり、マイナスの方向になるほど緑みが強くなる。また、b*がプラスの方向になるほど黄みが強くなり、マイナスの方向になるほど青みが強くなる。なお、この3つの軸が直交して交わる点は、L*=50、a*=0、b*=0である。
Figure 0007251122000001
<実施例1-5>
実施例1-1で印刷した画像の代わりに、1mm程度の微小な文字を印刷した以外は実施例1-1と同等に操作したところ、文字は印刷可能であった。また、塗工面は微小な文字となっても金属光沢を示した。その結果を表2に示す。なお、表2では、印刷が可能であった場合には、印刷適性を「○」と評価し、印刷が不可能であった場合には、印刷適性を「×」と評価した。また、表2では、印刷部が金属光沢を示した場合には「〇」と評価し、印刷部が金属光沢を示さなかった場合には「×」と評価した。
<実施例1-6>
実施例1-1で用いた錠剤の代わりに、チョコレートやクッキーといった菓子を被印刷物として用いた以外は実施例1-1と同等に操作したところ、画像は菓子の表面に印刷可能であった。その結果を表2に示す。
<実施例1-7>
実施例1-1で用いた錠剤の代わりに、卵を被印刷物として用いた以外は実施例1-1と同等に操作したところ、画像は卵の殻の表面に印刷可能であった。その結果を表2に示す。
Figure 0007251122000002
<実施例1-8>
実施例1-1で用いたインクを用いて、クリーンペーパーに#3バーコーターで塗布を行ったところ、銀色の塗膜が得られた。得られた塗膜を用いて多角度測色(BYK-Gardner社、BYK-mac)を行ったところ、角度によってL*の値に変化があり、フロップ性がみられた。結果を表3に示す。また、この時のフロップインデックスは6.45となった。
なお、実施例1-2~1-4で用いたインクを用いても、実施例1-8と同様のフリップフロップ性を示した。
Figure 0007251122000003
<実施例1-9>
グリセリンを使用せずに、水9.0gとイソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に対し、実施例1-1で得られた銀ナノ粒子2.0gを添加し、銀ナノ粒子が均一に分散したインクを作製した。この時、インクジェットインクの粘度は1mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが詰まってしまい、錠剤に画像を印刷できなかった。これは、グリセリンが含まれないことでインクが乾燥しやすくなったためと考えられる。その結果を表4に示す。なお、表4では、ノズルに目詰まりが生じなかった場合には、「○」と評価し、ノズルに目詰まりが生じた場合には、「×」と評価した。また、表4中の「乾燥防止成分」とは、インクの乾燥防止を目的としてインクに添加した成分(物質)を意味する。
<実施例1-10>
実施例1-1のグリセリンをプロピレングリコールにした以外は実施例1-1と同様にして、実施例1-10に係るインクを作製した。なお、プロピレングリコールの沸点は、188℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、プロピレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表4に示す。
<実施例1-11>
実施例1-1のグリセリンをポリエチレングリコール300にした以外は実施例1-1と同様にして、実施例1-11に係るインクを作製した。なお、ポリエチレングリコール300の沸点は、250℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、ポリエチレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表4に示す。
Figure 0007251122000004
<実施例1-12>
実施例1-1の分散媒を水8.5g、グリセリン1.0g、イソプロピルアルコール0.5gを混合した分散媒とした以外は実施例1-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は2.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが汚れやすい傾向はみられたものの、画像は印刷可能であった。その結果を表5に示す。なお、表5では印刷可能な場合、「○」と評価し、印刷できない場合、「×」と評価した。
<実施例1-13>
実施例1-1の分散媒を水4.0g、グリセリン4.0g、イソプロピルアルコール2.0gを混合した分散媒とした以外は実施例1-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は6.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、画像は印刷可能であった。その結果を表5に示す。
Figure 0007251122000005
<実施例1-14>
実施例1-1の遠心分離の条件を変更したところ(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm5分間)、0.1gの銀ナノ粒子を得た。この銀ナノ粒子のメジアン径は150nmであった。得られた銀ナノ粒子を用いて実施例1-1と同様にインクを作製し、印刷テストを行ったところ、画像の濃度が薄く、銀色の光沢はみられなかった。その結果を表6に示す。これは、銀ナノ粒子の粒径が大きく、分散性が低下したことから、シリンジフィルターによって銀ナノ粒子が除かれたためと考えられる。なお、表6では画像の濃度が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。また、表6では金属光沢が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。
Figure 0007251122000006
[第2実施例]
<実施例2-1>
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸銀を、第1実施例の場合と同様にして合成した。
即ち、シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で攪拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間加熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、さらに熱水200mL、エタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
〔銀ナノ粒子の合成〕
銀ナノ粒子を、第1実施例の場合と同様にして合成した。
即ち、水4.0gにポリビニルピロリドンとしてアイフタクトK-30PH(第一工業製薬社)2.4gを添加し水溶液を調製したところに、上述の工程で得たシュウ酸銀0.48gを加え、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。5時間後に灰色の分散液に変化した。放熱したところに水40mLを加え、遠心分離(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm30分間)により灰色固形物0.35gを得た。この灰色固形物が本実施例に係る銀ナノ粒子、即ちポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子である。
なお、アイフタクトK-30PHの重量平均分子量は45,000であった。
〔銀ナノ粒子の観察〕
銀ナノ粒子を、第1実施例の場合と同様にして観察した。
即ち、上記工程により得られた銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S-4800)を用いてS-TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒径が10~1000nm程度の球状又は平板状粒子が観察された。その結果を図2に示す。より詳しくは、図2は、実施例2-1で得た銀ナノ粒子の水溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
次に、得られた銀ナノ粒子の溶媒への分散性を第1実施例の場合と同様にして評価した。その結果、水、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールといったアルコール等に良好に分散した。その水分散液の動的光散乱粒度測定(日機装社、Nanotrac UPA-EX150)により、得られた銀ナノ粒子は平均粒径23nmで良好に分散していることがわかった。その結果を図3に示す。また、図3に示した実線は、累積度数(%)を示している。
得られた銀ナノ粒子0.1gを10gの水に分散して作製した水分散液の吸光スペクトル(島津製作所社、紫外可視分光光度計 UV-2600、透過モード)を図4に示す。図4から、実施例2-1に係る銀ナノ粒子分散液は、第1実施例の場合と同様に、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードな第2のピークを有していることがわかった。
〔インクジェットインクの調製〕
水7.0g、グリセリン2.0g、イソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に、分散剤であるNIKKOL Decaglyn 1-L(日光ケミカルズ社)0.5gを溶解させた分散媒に対し、上述の工程で得た銀ナノ粒子4.0gを分散させよく攪拌した後、シリンジフィルター(Whatman社、25mm GD/Xシリンジフィルター(GF/B 1.0μm))に通し、インクジェット印刷用のインク、即ちインクジェットインクを調製した。この場合、分散媒の合計量10gに対してグリセリン2gのため、グリセリンの重量%は20%となる。また、分散媒10gに対して銀ナノ粒子4gのため、銀ナノ粒子の重量%は40%となる。以下同様に計算する。
なお、インクジェットインクの粘度は4mPsであった。また、グリセリンの沸点は、290℃であった。
インクの粘度測定は、第1実施例の場合と同様に、山一電機社 VM-1G-L/DD-1Aを用いて測定時のインク液温25℃で測定を行った。
〔インクジェット印刷〕
インクジェット印刷は、第1実施例の場合と同様にして行った。
即ち、上記工程により調整したインクジェットインクを用いて、印刷テストを行った。この印刷テストでは、ノズル数6のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10pLの印刷ドロップ量にてテストパターンを印刷した。印刷内容(印刷画像)には、3mm×3mmの正方形を塗りつぶした画像を用いた。被印刷物として錠剤を用いたところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像(図5)を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
得られた錠剤(コーティング錠)に対し、分光光度計(米国 X-Rite社製「X-Rite T-530」)を用いて色度(L*a*b*表色系)を測定した。測定結果を表7に示す。
Figure 0007251122000007
<実施例2-2>
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-M(日光ケミカルズ社)0.5gを用いた以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2-2に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
<実施例2-3>
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-SV(日光ケミカルズ社)0.5gを用いた以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2-3に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
<実施例2-4>
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-OV(日光ケミカルズ社)0.5gを用いた以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2-4に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、素錠、糖衣錠、コーティング錠のいずれに対しても画像を印刷可能であった。また、コーティング錠に印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
<比較例2-1>
実施例2-1で用いたインクに対し、分散剤であるNIKKOL Decaglyn 1-OV(日光ケミカルズ社)を添加しなかった以外は実施例2-1と同様にインクを調製した。
実施例2-1~2-4と比較例2-1で得られたインク1mLを透明なスクリュー管にいれ、1日室温下で放置した。比較例2-1のインクはスクリュー管の底に沈殿が生じたのに対し、分散剤を用いた実施例2-1~2-4のインクは沈殿がみられなかった。その結果を表8に示す。なお、表8では、沈殿が生じた場合「×」と評価し、沈殿が生じなかった場合「○」と評価した。
Figure 0007251122000008
<実施例2-5>
実施例2-1で用いたインクを用いて、クリーンペーパーに#3バーコーターで塗布を行ったところ、銀色の塗膜が得られた。得られた塗膜を用いて多角度測色(BYK-Gardner社、BYK-mac)を行ったところ、角度によってL*の値に変化があり、フロップ性がみられた。結果を表9に示す。また、この時のフロップインデックスは9.61となった。
なお、実施例2-2~2-4で用いたインクを用いても、実施例2-5と同様のフリップフロップ性を示した。
Figure 0007251122000009
<実施例2-6>
グリセリンを使用せずに、水9.0gとイソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に対し、実施例2-1で得られた銀ナノ粒子2.0gを添加し、銀ナノ粒子が均一に分散したインクを作製した。この時、インクジェットインクの粘度は1.2mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが詰まってしまい、錠剤に画像を印刷できなかった。これは、グリセリンが含まれないことでインクが乾燥しやすくなったためと考えられる。その結果を表10に示す。なお、表10では、ノズルに目詰まりが生じなかった場合には、「○」と評価し、ノズルに目詰まりが生じた場合には、「×」と評価した。また、表10中の「乾燥防止成分」とは、インクの乾燥防止を目的としてインクに添加した成分(物質)を意味する。
<実施例2-7>
実施例2-1のグリセリンをプロピレングリコールにした以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-7に係るインクを作製した。なお、プロピレングリコールの沸点は、188℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、プロピレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表10に示す。
<実施例2-8>
実施例2-1のグリセリンをポリエチレングリコール300にした以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-8に係るインクを作製した。なお、ポリエチレングリコール300の沸点は、250℃であった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルは詰まらずに、錠剤に画像を印刷できた。これは、ポリエチレングリコールを含めたことでインクが乾燥しにくくなったためと考えられる。その結果を表10に示す。
Figure 0007251122000010
<実施例2-9>
実施例2-1の分散媒を水9.2g、グリセリン0.8g、イソプロピルアルコール0.5gを混合した分散媒とした以外は実施例2-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は2.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、ノズルが汚れやすい傾向はみられたものの、画像は印刷可能であった。その結果を表11に示す。なお、表11では印刷可能な場合、「○」と評価し、印刷できない場合、「×」と評価した。
<実施例2-10>
実施例2-1の分散媒を水4.2g、グリセリン3.8g、イソプロピルアルコール2.0gを混合した分散媒とした以外は実施例2-1と同様にインクを作製したところ、インクジェットインクの粘度は6.0mPsであった。
作製したインクを用いて印刷テストを行ったところ、画像は印刷可能であった。その結果を表11に示す。
Figure 0007251122000011
<実施例2-11>
実施例2-1の遠心分離の条件を変更したところ(ベックマン・コールター社、AvantiHP-26XP、15,000rpm5分間)、0.1gの銀ナノ粒子を得た。この銀ナノ粒子のメジアン径は150nmであった。合成を4回繰り返し、得られた銀ナノ粒子を用いて実施例2-1と同様にインクを作製し、印刷テストを行ったところ、画像の濃度が薄く、銀色の光沢はみられなかった。その結果を表12に示す。これは、銀ナノ粒子の粒径が大きく、分散性が低下したことから、シリンジフィルターによって銀ナノ粒子が除かれたためと考えられる。なお、表12では画像の濃度が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。また、表12では金属光沢が使用する上で十分な場合、「○」と評価し、使用する上で不十分な場合、「×」と評価した。
Figure 0007251122000012
以上説明したように、本実施形態に係る可食性インクは、経口実績のある成分で構成された銀ナノ粒子を用いた可食性インクであり、食品や医療用錠剤等の薬剤に対し、金属光沢を呈する印刷が可能である。
1 被印刷物
2 印刷画像

Claims (8)

  1. 可食性インクであって、
    ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、
    水を含む分散媒と、を有し、
    前記銀ナノ粒子は、メジアン径(D50)が15nm以上150nm以下の範囲内であり、
    前記分散媒は、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールの少なくとも1種を合計で1重量%以上50重量%以下の範囲内で含有していることを特徴とする可食性インク。
  2. 分散剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の可食性インク。
  3. 前記可食性インクの粘度は、2mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可食性インク。
  4. 前記銀ナノ粒子が前記分散媒に分散された銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、前記第1のピークよりもブロードな第2のピークを有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の可食性インク。
  5. 前記可食性インクは、被印刷物上で金属光沢を示すことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の可食性インク。
  6. 経口摂取する被印刷物であって、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の可食性インクで印刷された印刷部を備えることを特徴とする被印刷物。
  7. 前記被印刷物は、薬剤及び食品の少なくとも一方であることを特徴とする請求項に記載の被印刷物。
  8. 経口接触する被印刷物であって、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の可食性インクで印刷された印刷部を備えることを特徴とする被印刷物。
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