以下、本開示の実施形態に係る配線基板の構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基材」は、基板、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
以下、図1乃至図5を参照して、本開示の一実施形態について説明する。
(配線基板)
まず、本実施の形態に係る配線基板10について説明する。図1及び図2はそれぞれ、配線基板10を示す平面図及び断面図である。図2に示す断面図は、図1の配線基板10を線II-IIに沿って切断した場合の図である。
配線基板10は、基材20、絶縁層30、第1配線521および第2配線522を備える。以下、配線基板10の各構成要素について説明する。
〔基材〕
基材20は、伸縮性を有するよう構成された部材である。基材20は、第1配線521および第2配線522側に位置する第1面21と、第1面21の反対側に位置する第2面22と、を含む。基材20の厚みは、例えば10μm以上10mm以下であり、より好ましくは20μm以上3mm以下である。基材20の厚みを10μm以上にすることにより、基材20の耐久性を確保することができる。また、基材20の厚みを10mm以下にすることにより、配線基板10の装着快適性を確保することができる。なお、基材20の厚みを小さくしすぎると、基材20の伸縮性が損なわれる場合がある。
なお、基材20の伸縮性とは、基材20が伸び縮みすることができる性質、すなわち、常態である非伸長状態から伸長することができ、この伸長状態から解放したときに復元することができる性質をいう。非伸長状態とは、引張応力が加えられていない時の基材20の状態である。本実施形態において、伸縮可能な基材は、好ましくは、破壊されることなく非伸長状態から1%以上伸長することができ、より好ましくは20%以上伸長することができ、更に好ましくは75%以上伸長することができる。このような能力を有する基材20を用いることにより、配線基板10が全体に伸縮性を有することができる。さらに、人の腕などの身体の一部に取り付けるという、高い伸縮が必要な製品や用途において、配線基板10を使用することができる。一般に、人の脇の下に取り付ける製品には、垂直方向において72%、水平方向において27%の伸縮性が必要であると言われている。また、人の膝、肘、臀部、足首、脇部に取り付ける製品には、垂直方向において26%以上42%以下の伸縮性が必要であると言われている。また、人のその他の部位に取り付ける製品には、20%未満の伸縮性が必要であると言われている。
また、非伸長状態にある基材20の形状と、非伸長状態から伸長された後に再び非伸長状態に戻ったときの基材20の形状との差が小さいことが好ましい。この差のことを、以下の説明において形状変化とも称する。基材20の形状変化は、例えば面積比で20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。形状変化の小さい基材20を用いることにより、後述する蛇腹形状部の形成が容易になる。
基材20の伸縮性を表すパラメータの例として、基材20の弾性係数を挙げることができる。基材20の弾性係数は、例えば10MPa以下であり、より好ましくは1MPa以下である。このような弾性係数を有する基材20を用いることにより、配線基板10全体に伸縮性を持たせることができる。基材20の弾性係数は、1kPa以上であってもよい。
基材20の弾性係数を算出する方法としては、基材20のサンプルを用いて、JIS K6251に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。また、基材20のサンプルの弾性係数を、ISO14577に準拠してナノインデンテーション法によって測定するという方法を採用することもできる。ナノインデンテーション法において用いる測定器としては、ナノインデンターを用いることができる。基材20のサンプルを準備する方法としては、配線基板10から基材20の一部をサンプルとして取り出す方法や、配線基板10を構成する前の基材20の一部をサンプルとして取り出す方法が考えられる。その他にも、基材20の第1の弾性係数を算出する方法として、基材20を構成する材料を分析し、材料の既存のデータベースに基づいて基材20の弾性係数を算出するという方法を採用することもできる。なお、本願における弾性係数は、25℃の環境下における弾性係数である。
基材20の伸縮性を表すパラメータのその他の例として、基材20の曲げ剛性を挙げることができる。曲げ剛性は、対象となる部材の断面二次モーメントと、対象となる部材を構成する材料の弾性係数との積であり、単位はN・m2又はPa・m4である。基材20の断面二次モーメントは、配線基板10の伸縮方向に直交する平面によって、基材20のうち第2配線522と重なっている部分を切断した場合の断面に基づいて算出される。
基材20を構成する材料の例としては、例えば、エラストマーを挙げることができる。また、基材20の材料として、例えば、織物、編物、不織布などの布を用いることもできる。エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、具体的には、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ニトリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、1,2-BR系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリスチレンブタジエン、ポリクロロプレン等を用いることができる。機械的強度や耐磨耗性を考慮すると、ウレタン系エラストマーを用いることが好ましい。また、基材20がシリコーンを含んでいてもよい。シリコーンは、耐熱性・耐薬品性・難燃性に優れており、基材20の材料として好ましい。
〔配線〕
第1配線521および第2配線522は、基材20の第1面21側に位置する、導電性を有する部材である。第1配線521および第2配線522は、例えば、図示しない電子部品に電気的に接続され、電子部品に対する信号の入出力や電源供給などに用いられる。図1に示すように、第2配線522は、平面視において第1配線521に交差する。以下、平面視において第1配線521と第2配線522とが交差する箇所のことを、交差部52Cとも呼ぶ。
図3は、図2に示す配線基板10を拡大して示す断面図である。図3に示すように、第2配線522は、第1面21の面内方向の1つである第1方向D1に沿って並ぶ複数の山部53及び谷部55を含む蛇腹形状部57を有する。第1方向D1とは、蛇腹形状部57の山部53及び谷部55が繰り返し現れる方向のことである。
配線基板10の製造工程において、第1配線521は、引張応力によって第1方向D1に伸長した状態の基材20に、第1方向D1に直交する方向に沿って設けられる。一方、第2配線522は、引張応力によって第1方向D1に伸長した状態の基材20に、第1方向D1に沿って設けられる。この場合、基材20から引張応力が取り除かれて基材20が収縮するとき、第2配線522は、図3に示すように、蛇腹状に変形して蛇腹形状部57を有するようになる。
蛇腹形状部57は、基材20の第1面21の法線方向における山部及び谷部を含む。図3において、符号53は、第2配線522の表面に現れる山部を表し、符号54は、第2配線522の裏面に現れる山部を表す。また、符号55は、第2配線522の表面に現れる谷部を表し、符号56は、第2配線522の裏面に現れる谷部を表す。表面とは、第2配線522の面のうち基材20から遠い側に位置する面であり、裏面とは、第2配線522の面のうち基材20に近い側に位置する面である。また、図3において、符号26及び27は、基材20の第1面21に現れる山部及び谷部を表す。第1面21に山部26及び谷部27が現れるように基材20が変形することにより、第2配線522が蛇腹状に変形して蛇腹形状部57を有するようになる。基材20の第1面21の山部26が、第2配線522の蛇腹形状部57の山部53,54に対応し、基材20の第1面21の谷部27が、第2配線522の蛇腹形状部57の谷部55,56に対応している。
図3に示す例において、第2配線522は、第1方向D1に平行に延びている。また、基材20は、第1方向D1に平行な長辺を含む長方形の形状を有している。なお、図3においては、蛇腹形状部57の複数の山部及び谷部が一定の周期で並ぶ例が示されているが、これに限られることはない。図示はしないが、蛇腹形状部57の複数の山部及び谷部は、第1方向D1に沿って不規則に並んでいてもよい。例えば、第1方向D1において隣り合う2つの山部の間の間隔が一定でなくてもよい。
図3において、符号S1は、第2配線522の表面における蛇腹形状部57の、基材20の法線方向における振幅を表す。振幅S1は、例えば1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。振幅S1を10μm以上とすることにより、基材20の伸張に追従して第2配線522が変形し易くなる。また、振幅S1は、例えば500μm以下であってもよい。
振幅S1は、例えば、第2配線522の長さ方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部53と谷部55との間の、第1面21の法線方向における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。「第2配線522の長さ方向における一定の範囲」は、例えば10mmである。隣り合う山部53と谷部55との間の距離を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡などを用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、断面写真などの画像に基づいて、隣り合う山部53と谷部55との間の距離を測定してもよい。後述する振幅S2、S3、S4の算出方法も同様である。
図3において、符号S2は、第2配線522の裏面における蛇腹形状部57の振幅を表す。振幅S2は、振幅S1と同様に、例えば1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。また、振幅S2は、例えば500μm以下であってもよい。また、図3において、符号S3は、蛇腹形状部57に重なる部分において基材20の第1面21に現れる山部26及び谷部27の振幅を表す。図3に示すように第2配線522の裏面が基材20の第1面21上に位置している場合、基材20の第1面21の山部26及び谷部27の振幅S3は、第2配線522の裏面における蛇腹形状部57の振幅S2に等しい。
なお、図3においては、基材20の第2面22には蛇腹形状部が現れない例を示したが、これに限られることはない。図4に示すように、基材20の第2面22にも蛇腹形状部が現れていてもよい。図4において、符号28及び29は、配線領域24において基材20の第2面22に現れる山部及び谷部を表す。図4に示す例において、第2面22の山部28は、第1面21の谷部27に重なる位置に現れ、第2面22の谷部29は、第1面21の山部26に重なる位置に現れている。なお、図示はしないが、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の位置は、第1面21の谷部27及び山部26に重なっていなくてもよい。また、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の数又は周期は、第1面21の山部26及び谷部27の数又は周期と同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の周期が、第1面21の山部26及び谷部27の周期よりも大きくてもよい。この場合、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の周期は、第1面21の山部26及び谷部27の周期の1.1倍以上であってもよく、1.2倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、2.0倍以上であってもよい。なお、「基材20の第2面22の山部28及び谷部29の周期が、第1面21の山部26及び谷部27の周期よりも大きい」とは、基材20の第2面22に山部及び谷部が現れない場合を含む概念である。
図4において、符号S4は、蛇腹形状部57に重なる部分において基材20の第2面22に現れる山部28及び谷部29の振幅を表す。第2面22の振幅S4は、第1面21の振幅S3と同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、第2面22の振幅S4が、第1面21の振幅S3よりも小さくてもよい。例えば、第2面22の振幅S4が、第1面21の振幅S3の0.9倍以下であってもよく、0.8倍以下であってもよく、0.6倍以下であってもよい。また、第2面22の振幅S4は、第1面21の振幅S3の0.1倍以上であってもよく、0.2倍以上であってもよい。基材20の厚みが小さい場合、第1面21の振幅S3に対する第2面22の振幅S4の比率が大きくなり易い。なお、「基材20の第2面22の山部28及び谷部29の振幅が、第1面21の山部26及び谷部27の振幅よりも小さい」とは、基材20の第2面22に山部及び谷部が現れない場合を含む概念である。
また、図4においては、第2面22の山部28及び谷部29の位置が、第1面21の谷部27及び山部26の位置に一致する例を示したが、これに限られることはない。例えば、第2面22の山部28及び谷部29の位置は、第1面21の谷部27及び山部26の位置から第1方向D1にずれていてもよい。この場合、ずれ量は、例えば0.1×F1以上であり、0.2×F1以上であってもよい。
第2配線522の材料としては、蛇腹形状部57の解消及び生成を利用して基材20の伸張及び収縮に追従することができる材料であればよい。第1配線521の材料は、第2配線522の材料と同じであってもよい。第2配線522の材料は、それ自体が伸縮性を有していてもよく、伸縮性を有していなくてもよい。第2配線522に用いられ得る、それ自体は伸縮性を有さない材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。第2配線522の材料自体が伸縮性を有さない場合、第2配線522としては、金属膜を用いることができる。第2配線522に用いられる材料自体が伸縮性を有する場合、材料の伸縮性は、例えば、基材20の伸縮性と同様である。第2配線522に用いられ得る、それ自体が伸縮性を有する材料としては、例えば、導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物が挙げられる。導電性粒子としては、配線に使用できるものであればよく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子が挙げられる。中でも、銀粒子が好ましく用いられる。
好ましくは、第2配線522は、変形に対する耐性を有する構造を備える。例えば、第2配線522は、ベース材と、ベース材の中に分散された複数の導電性粒子とを有する。この場合、ベース材として、樹脂などの変形可能な材料を用いることにより、基材20の伸縮に応じて第2配線522も変形することができる。また、変形が生じた場合であっても複数の導電性粒子の間の接触が維持されるように導電性粒子の分布や形状を設定することにより、第2配線522の導電性を維持することができる。
第2配線522のベース材を構成する材料としては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等を用いることができる。中でも、ウレタン系、シリコーン系構造を含む樹脂やゴムが、その伸縮性や耐久性などの面から好ましく用いられる。また、第2配線522の導電性粒子を構成する材料としては、例えば銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子を用いることができる。中でも、銀粒子が好ましく用いられる。
第2配線522の厚みは、基材20の伸縮に耐え得る厚みであればよく、第2配線522の材料等に応じて適宜選択される。例えば、第2配線522の材料が伸縮性を有さない場合、第2配線522の厚みは、25nm以上50μm以下の範囲内とすることができ、50nm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、100nm以上5μm以下の範囲内であることがより好ましい。また、第2配線522の材料が伸縮性を有する場合、第2配線522の厚みは、5μm以上60μm以下の範囲内とすることができ、10μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、20μm以上40μm以下の範囲内であることがより好ましい。第2配線522の幅は、例えば50μm以上且つ10mm以下である。
第2配線522の形成方法は、材料等に応じて適宜選択される。例えば、基材20上または図12において後述する支持基板40上に蒸着法やスパッタリング法やメッキ法等により金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により金属膜をパターニングする方法が挙げられる。また、第2配線522の材料自体が伸縮性を有する場合、例えば、基材20上または支持基板40上に一般的な印刷法により上記の導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物をパターン状に印刷する方法が挙げられる。これらの方法のうち、材料効率がよく安価に製作できる印刷法が好ましく用いられ得る。
蛇腹形状部57が第2配線522に形成されていることの利点について説明する。上述のように、基材20は、10MPa以下の弾性係数を有する。このため、配線基板10に引張応力を加えた場合、基材20は、弾性変形によって伸長することができる。ここで、仮に第2配線522も同様に弾性変形によって伸長すると、第2配線522の全長が増加し、第2配線522の断面積が減少するので、第2配線522の抵抗値が増加してしまう。また、第2配線522の弾性変形に起因して第2配線522にクラックなどの破損が生じてしまうことも考えられる。
これに対して、本実施の形態においては、第2配線522が蛇腹形状部57を有している。このため、基材20が伸張する際、第2配線522は、蛇腹形状部57の起伏を低減するように変形することによって、すなわち蛇腹形状を解消することによって、基材20の伸張に追従することができる。このため、基材20の伸張に伴って第2配線522の全長が増加することや、第2配線522の断面積が減少することを抑制することができる。このことにより、配線基板10の伸張に起因して第2配線522の抵抗値が増加することを抑制することができる。また、第2配線522にクラックなどの破損が生じてしまうことを抑制することができる。
〔絶縁層〕
絶縁層30は、第1配線521と第2配線522とを絶縁するために配線基板10に設けられた層である。絶縁層30は、第1配線521と第2配線522との交差部52Cにおいて第1配線521と第2配線522との間に位置し、第1配線521と第2配線522とを電気的に絶縁する。絶縁層30は、面内方向のうちの第1方向D1および第1方向D1に直交する方向の寸法が、配線521、522の線幅よりも大きい。図1および図2に示される例において、第1方向D1における絶縁層30の寸法は、第1方向D1における第1配線521の寸法の3倍以上である。また、図1~図4に示す例では、交差部52Cにおいて、第2配線522が絶縁層30上に位置し、絶縁層30が第1配線521上に位置する。
絶縁層30は、第1配線521と第2配線522とを絶縁するために必要な厚みを有する。絶縁層30の厚みは、0.2μm以上1000μm以下の範囲内とすることができ、1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、5μm以上10μm以下の範囲内であることがより好ましい。
絶縁層30は、基材20の弾性係数よりも大きい弾性係数を有してもよい。絶縁層30の弾性係数は、1GPa以上であることが好ましい。絶縁層30の弾性係数が柔らかすぎると、絶縁層30上の金属配線522が外部応力などで断線してしまう場合がある。絶縁層30の弾性係数を算出する方法は、絶縁層30の形態に応じて適宜定められる。例えば、絶縁層30の弾性係数を算出する方法は、上述の基材20の弾性係数を算出する方法と同様であってもよく、異なっていてもよい。後述する支持基板40の弾性係数も同様である。例えば、絶縁層30又は支持基板40の弾性係数を算出する方法として、絶縁層30又は支持基板40のサンプルを用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。
絶縁層30を構成する材料としては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレンが挙げられる。
絶縁層30の特性を、弾性係数に替えて曲げ剛性によって表してもよい。絶縁層30の断面二次モーメントは、配線基板10の伸縮方向に直交する平面によって絶縁層30を切断した場合の断面に基づいて算出される。絶縁層30の曲げ剛性は、基材20の曲げ剛性の1倍以上であってもよく、より好ましくは2倍以上であり、更に好ましくは10倍以上である。
絶縁層30の形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィ法によって樹脂材料をパターニングする方法や、スクリーン印刷等の印刷法によって樹脂材料を印刷する方法が挙げられる。
絶縁層30は、蛇腹形状部57に隣接する位置において所定の厚み、第1方向D1の寸法および剛性を有するため、蛇腹形状部57の周期に影響を与え得る。もし、絶縁層30の第1方向D1の寸法が、蛇腹形状部57の周期F1の2倍より大きい場合、蛇腹形状部57の周期F1がばらつくことで、第2配線522に折れなどの破損が生じるおそれがある。
これに対して、本実施形態における絶縁層30の第1方向D1の寸法Aは、蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下である。これにより、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制することができる。蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制することで、第2配線522に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
絶縁層30の第1方向D1の寸法Aは、蛇腹形状部57の周期F1の0.01倍以上2倍以下であることがより好ましく、0.2倍以上1.0倍以下であることが更に好ましい。絶縁層30の寸法Aが小さすぎると、絶縁層30を適切に形成することが困難となる。
なお、蛇腹形状部57の周期F1は、例えば、第2配線522の長さ方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部53間の第1方向D1における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。周期F1は、交差部52Cに近い側から数えて少なくとも3つ分の山部53間の第1方向D1の距離の平均であってもよい。隣り合う山部53間の距離を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡などを用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、光学顕微鏡で撮影された蛇腹形状部57の平面写真や断面写真などの画像をコンピュータで解析することによって隣り合う山部53間の距離を測定してもよい。
(配線基板の製造方法)
以下、図5(a)~(e)を参照して、配線基板10の製造方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、伸縮性を有する基材20を準備する基材準備工程を実施する。続いて、図5(b)に示すように、基材20に引張応力Tを加えて基材20を伸長させる伸長工程を実施する。
伸長工程を実施した後、図5(b)に示すように、引張応力Tによって伸長した状態の基材20の第1面21に、第1配線521を設ける第1配線工程を実施する。
第1配線工程を実施した後、図5(c)に示すように、第1配線521上における後述する第2配線522との交差部52Cの形成予定位置に、第1配線521と第2配線522とを絶縁する絶縁層30を設ける絶縁工程を実施する。絶縁工程は、交差部52Cにおいて第1配線521と第2配線522との間に位置するように絶縁層30を設ける工程である。絶縁工程においては、絶縁層30の第1方向D1の寸法Aを、後述する収縮工程で形成される蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下に形成する。蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となる絶縁層30の第1方向D1の寸法Aは、シミュレーションや実験によって予め取得しておくことができる。
絶縁工程を実施した後、図5(d)に示すように、基材20の第1面21に、平面視において第1配線521に交差するように第2配線522を設ける第2配線工程を実施する。
第2配線工程を実施した後、図5(e)に示すように、基材20から引張応力を取り除く収縮工程を実施する。これにより、図5(e)において矢印Cで示すように、基材20が収縮し、基材20に設けられている第2配線522にも変形が生じる。これにより、第2配線522に、絶縁層30の第1方向D1の寸法Aの1/2以上の周期F1を有する蛇腹形状部57が形成される。
なお、図6(a)に示すように、絶縁層30は、絶縁工程において、厳密には平坦なドーム状態に形成されることで、第1方向D1の端部側における絶縁層30の厚みが、第1方向D1の中央側における絶縁層30の厚みよりも薄くなることがある。この場合、図6(b)に示すように、引張応力Tを除去して基板20が収縮した際に、蛇腹形状部57の波に合わせて第1方向D1の端部側で絶縁層30が変形することがある。この場合、絶縁層30の第1方向D1の寸法Aは、基板20が収縮した際に殆ど変形しない第1方向D1の中央側における絶縁層30の寸法Aとして定義すればよい。このような第1方向D1の中央側における絶縁層30の寸法Aは、第1方向D1の全範囲における絶縁層30の寸法に対して、第1方向D1の中央側における50%~100%の寸法となる。絶縁層30が剛直であるほど、基板20の収縮時に絶縁層30は変形しにくいので、寸法Aは100%に近づく。一方、絶縁層30の硬度が図11で説明する応力制御層7と同程度の場合には、寸法Aは50%となる。
このように、本実施形態においては、絶縁層30の第1方向D1の寸法Aが、蛇腹形状部57の周期F1以下となっている。これにより、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制して第2配線522に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
配線基板10の用途としては、ヘルスケア分野、医療分野、介護分野、エレクトロニクス分野、スポーツ・フィットネス分野、美容分野、モビリティ分野、畜産・ペット分野、アミューズメント分野、ファッション・アパレル分野、セキュリティ分野、ミリタリー分野、流通分野、教育分野、建材・家具・装飾分野、環境エネルギー分野、農林水産分野、ロボット分野などを挙げることができる。例えば、人の腕などの身体の一部に取り付ける製品を、本実施の形態による配線基板10を用いて構成する。配線基板10は伸張することができるので、例えば配線基板10を伸長させた状態で身体に取り付けることにより、配線基板10を身体の一部により密着させることができる。このため、良好な着用感を実現することができる。また、配線基板10が伸張した場合に第2配線522の抵抗値が低下することを抑制することができるので、配線基板10の良好な電気特性を実現することができる。他にも配線基板10は伸長することができるので、人などの生体に限らず曲面や立体形状に沿わせて設置や組込むことが可能である。それらの製品の一例としては、バイタルセンサ、マスク、補聴器、歯ブラシ、絆創膏、湿布、コンタクトレンズ、義手、義足、義眼、カテーテル、ガーゼ、薬液パック、包帯、ディスポーザブル生体電極、おむつ、家電製品、スポーツウェア、リストバンド、はちまき、手袋、水着、サポーター、ボール、ラケット、薬液浸透美容マスク、電気刺激ダイエット用品、懐炉、自動車内装、シート、インパネ、ベビーカー、ドローン、車椅子、タイヤ、首輪、リード、ハプティクスデバイス、ランチョンマット、帽子、服、メガネ、靴、インソール、靴下、ストッキング、インナーウェア、マフラー、耳あて、鞄、アクセサリー、指輪、付け爪、時計、個人ID認識デバイス、ヘルメット、パッケージ、ICタグ、ペットボトル、文具、書籍、カーペット、ソファ、寝具、照明、ドアノブ、花瓶、ベッド、マットレス、座布団、ワイヤレス給電アンテナ、電池、ビニールハウス、ロボットハンド、ロボット外装を挙げることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(第1の変形例)
まず、図7を参照して、交差部52Cにおける第1配線521と第2配線522との上下関係が逆転した第1の変形例について説明する。図7は、配線基板10の第1の変形例を示す断面図である。
図1~図5(a)~(e)では、交差部52Cにおいて第2配線522が絶縁層30上に位置し、絶縁層30が第1配線521上に位置する配線基板10の例について説明した。
これに対して、第1の変形例における配線基板10は、図7に示すように、交差部52Cにおいて、第1配線521が絶縁層30上に位置し、絶縁層30が第2配線522上に位置している。
図1~図5(a)~(e)に示す例と同様に、第1の変形例においても、絶縁層30の第1方向D1の寸法Aが、蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となっている。これにより、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制して第2配線522に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
(第2の変形例)
次に、図8を参照して、絶縁層30の第1方向D1の側面が傾斜した第2の変形例について説明する。図8は、配線基板10の第2の変形例を示す断面図である。
図3に示した例において、絶縁層30の第1方向D1の側面30aは、第1面21の法線方向に平行である。
これに対して、第2の変形例における配線基板10は、図8に示すように、絶縁層30の第1方向D1の側面30aが、少なくとも部分的に第1面21の法線方向に対して蛇腹形状部57から離れる方向に傾斜している。より詳しくは、絶縁層30は、第1面21の法線方向に沿って突出したドーム形状を有しており、側面30aは、蛇腹形状部57から離れる方向に傾斜した傾斜曲面である。
第2の変形例によれば、絶縁層30を90°以下の尖鋭な角部を有しない滑らかな形状に形成することができる。これにより、絶縁層30を覆う第2配線522の形状を滑らかにすることができるので、局所的に大きな応力が作用することによる第2配線522の破損を効果的に抑制することができる。
(第3の変形例)
次に、図9および図10を参照して、第1配線521が蛇腹形状部を有する第3の変形例について説明する。図9は、配線基板10の第3の変形例を示す平面図である。図10は、図9の配線基板10を線X-Xに沿って切断した場合を示す断面図である。
これまでは、第2配線522のみが蛇腹形状部57を有する例について説明した。これに対して、第3の変形例における配線基板10は、図10に示すように、第1配線521も蛇腹形状部572を有している。
図9に示す例において、第1配線521は、交差部52Cを経由して第1方向D1に直交する方向に延伸した第1部分521aと、第1部分521aに連続し、第1方向D1に延伸した第2部分521bとを有する。図10に示すように、蛇腹形状部572は、第1配線521のうちの第2部分521bに設けられている。第2配線522の蛇腹形状部57と同様に、第1配線521の蛇腹形状部572は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の山部53及び谷部55を含む。蛇腹形状部572の詳細な構成は、既に説明した蛇腹形状部57と同様である。蛇腹形状部572は、図5(a)~(e)に示した工程にしたがって第2配線522の蛇腹形状部57と同時に形成することができる。
(第4の変形例)
次に、図11を参照して、応力制御層を備える第4の変形例について説明する。図11は、配線基板10の第4の変形例を示す断面図である。
図11に示すように、第4の変形例における配線基板10は、図3に示す構成に加えて、更に、応力制御層7を備える。
応力制御層7は、第2配線522上に位置し、第2配線522に作用する応力を制御する層である。応力制御層7は、蛇腹形状部57の曲率半径を制御することで第2配線522に作用する応力を制御してもよい。応力制御層7は、基材20および第2配線522の蛇腹形状に倣った蛇腹形状を有している。応力制御層7は、第2配線522と同一の材料を用いて第2配線522と同様の形成方法で形成することができる。
第4の変形例によれば、応力制御層7によって第2配線522に作用する応力を抑制することで、第2配線522の破損を効果的に抑制することができる。
(第5の変形例)
次に、図12を参照して、支持基板を備える第5の変形例について説明する。図12は、配線基板10の第5の変形例を示す断面図である。図12に示すように、第5の変形例における配線基板10は、図2の配線基板10の構成に加えて、更に、支持基板40を備える。支持基板40は、基材20よりも低い伸縮性を有するよう構成された板状の部材である。支持基板40は、第1面21と配線521,522との間に位置し、配線521,522を支持する。支持基板40は、基材20側に位置する第2面42と、第2面42の反対側に位置する第1面41と、を含む。図12に示す例において、支持基板40は、その第1面41側において配線521,522を支持している。また、支持基板40は、その第2面42側において基材20の第1面21に接合されている。例えば、図12に示すように、基材20と支持基板40との間に、接着剤を含む接着層60が設けられていてもよい。接着層60を構成する材料としては、例えばアクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等を用いることができる。接着層60の厚みは、例えば5μm以上且つ200μm以下である。また、図示はしないが、非接着表面を分子修飾させて、分子接着結合させる方法によって支持基板40の第2面42が基材20の第1面21に接合されていてもよい。この場合、基材20と支持基板40との間に接着層が設けられていなくてもよい。
支持基板40の厚みは、例えば500nm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下である。支持基板40の厚みが小さすぎると、支持基板40の製造工程や、支持基板40上の部材を形成する工程における、支持基板40のハンドリングが難しくなる。支持基板40の厚みが大きすぎると、弛緩時の基材20の復元が難しくなり、目標の基材20の伸縮が得られなくなる。
支持基板40を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等を用いることができる。その中でも、耐久性や耐熱性がよいポリエチレンナフタレートかポリイミドが好ましく用いられ得る。
図5(a)~(e)に示す例においては、引張応力Tによって伸長した状態の基材20上に、第1配線521、絶縁層30および第2配線522を設ける。これに対して、第5の変形例によれば、非伸長状態の支持基板40上に第1配線521、絶縁層30および第2配線522を設けた後に、引張応力Tによって伸長した状態の基材20上に、第1配線521、絶縁層30および第2配線522が設けられた支持基板40を接合し、その後、引張応力Tを取り除くことで、蛇腹形状部57を有する配線基板10を得ることができる。
第5の変形例によれば、非伸長状態の支持基板40上に配線521,522および絶縁層30を安定的に搭載することができるので、蛇腹形状部57を有する配線基板10の製造の容易性を向上させることができる。
(第6の変形例)
次に、図13~図15Dを参照して、第6の変形例として、絶縁層30の平面形状の複数の変形例について説明する。
これまでは、第1方向D1および第1方向D1に直交する方向に一定の広がりを有する平面矩形状の絶縁層30の例について説明した。これに対して、図13および図14に示すように、絶縁層30は、平面視において線状を有するように第1配線521上に設けられていてもよい。図13に示される例において、第1方向D1における絶縁層30の寸法は、第1方向D1における第1配線521の寸法の2倍以下である。また、絶縁層30は、図15Aに示すように、平面視において円形状を有していてもよく、また、図15Bに示すように、平面視において三角形状を有していてもよく、また、図15Cに示すように、平面視において角が丸められた矩形状を有していてもよい。また、図15Dに示すように、絶縁層30の第1方向D1の側面30aは、平面視において蛇腹形状部27に沿った形状を有していてもよい。なお、図15Dでは、絶縁層30の近傍の蛇腹形状部57の山部および谷部の頂部の平面形状を一点鎖線によって模式的に示している。図15Dに示す例において、絶縁層30の近傍の蛇腹形状部57は、平面視において絶縁層30側に向かって凸の略円弧形状を有しており、絶縁層30の第1方向D1の側面30aは、この蛇腹形状部57の形状に沿った略円弧形状を有している。
図15Dのように、絶縁層30の側面30aを蛇腹形状部57に沿った形状にすることで、絶縁層30の近傍において第2配線522に局所的に大きな応力が作用することを抑制することができる。これにより、第2配線522の破損を効果的に抑制することができる。
(第7の変形例)
次に、図16を参照して、電子部品の接続部の一端と他端との間の寸法を蛇腹形状部の周期の2倍以下とした第7の変形例について説明する。図16は、配線基板10の第7の変形例を示す断面図である。
図16に示すように、第7の変形例における配線基板10は、伸縮性を有する基材20と、基材20の第1面21に位置する配線52と、第1面21側に位置し、配線52に接続された電子部品51とを備える。配線52は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の山部53及び谷部55を含む蛇腹形状部57を有する。配線52および蛇腹形状部57の構成は、上述した第2配線522および第2配線522の蛇腹形状部57の構成と同様であるので、詳しい説明は省略する。
電子部品51は、導電性の接続部51aを介して配線52に電気的に接続されている。接続部51aは、はんだや導電性接着剤などであってもよい。また、図16に示すように、接続部51aは、第1方向D1に間隔を空けて設けられた2つの配線52、52のそれぞれを電子部品51に接続し得るように2つ存在していていもよい。電子部品51は、能動部品であってもよく、受動部品であってもよく、機構部品であってもよい。
電子部品51の例としては、トランジスタ、LSI(Large-Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、リレー、LED、OLED、LCDなどの発光素子、センサ、ブザー等の発音部品、振動を発する振動部品、冷却発熱をコントロールするペルチェ素子や電熱線などの冷発熱部品、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、スイッチ、コネクタなどを挙げることができる。電子部品51の上述の例のうち、センサが好ましく用いられる。センサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、生体センサ、レーザーセンサ、マイクロ波センサ、湿度センサ、歪みセンサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、変位センサ、磁気センサ、ガスセンサ、GPSセンサ、超音波センサ、臭いセンサ、脳波センサ、電流センサ、振動センサ、脈波センサ、心電センサ、光度センサ等を挙げることができる。これらのセンサのうち、生体センサが特に好ましい。生体センサは、心拍や脈拍、心電、血圧、体温、血中酸素濃度等の生体情報を測定することができる。
電子部品51は、蛇腹形状部57に隣接する位置において所定の厚み、第1方向D1の寸法および剛性を有するため、蛇腹形状部57の周期に影響を与え得る。もし、接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法が、蛇腹形状部57の周期F1の2倍より大きい場合、蛇腹形状部57の周期F1がばらつくことで、配線52に折れなどの破損が生じるおそれがある。
これに対して、第7の変形例における接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下である。図16に示される例において、寸法Bは、複数の接続部51aのうち、左方側に位置する第1の接続部51aの左端部と、複数の接続部51aのうち、右方側に位置する第2の接続部51aの右端部との間の寸法Bである。このように、寸法Bを蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下にすることで、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制することができる。蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制することで、配線52に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、蛇腹形状部57の周期F1の0.01倍以上2倍以下であることがより好ましく、0.2倍以上1.0倍以下であることが更に好ましい。
以下、図17(a)~(d)を参照して、第7の変形例における配線基板10の製造方法について説明する。
まず、図17(a)に示すように、伸縮性を有する基材20を準備する基材準備工程を実施する。続いて、図17(b)に示すように、基材20に引張応力Tを加えて基材20を伸長させる伸長工程を実施する。
伸長工程を実施した後、図17(b)に示すように、引張応力Tによって伸長した状態の基材20の第1面21に、配線52を設ける配線工程を実施する。
配線工程を実施した後、図17(c)に示すように、接続部51aを介して配線52に電子部品51を接続する部品接続工程を実施する。部品接続工程においては、第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bが後述する収縮工程で形成される蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となる接続部51aを介して電子部品51を接続する。蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となる接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、シミュレーションや実験によって予め取得しておくことができる。
部品接続工程を実施した後、図17(d)に示すように、基材20から引張応力を取り除く収縮工程を実施する。これにより、図17(d)において矢印Cで示すように、基材20が収縮し、基材20に設けられている配線52にも変形が生じる。これにより、配線52に、接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bの1/2以上の周期F1を有する蛇腹形状部57が形成される。
第7の変形例においては、接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bが、蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となっている。これにより、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制して配線52に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
(第8の変形例)
次に、図18を参照して、電子部品を封止する封止材の一端と他端との間の寸法を蛇腹形状部の周期の2倍以下とした第8の変形例について説明する。図18は、配線基板10の第8の変形例を示す断面図である。
図18に示すように、第8の変形例における配線基板10は、図16の構成に加えて、更に、封止材の一例であるポッティング材8を備える。ポッティング材8は、電子部品51上または配線52上に位置し、電子部品51を封止する。図18に示すように、ポッティング材8は、第1方向D1において電子部品51よりも外側に広がった状態で電子部品51上に設けられている。図18に示される例において、ポッティング材8は、ドーム形状を有する。ポッティング材8としては、例えば、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の樹脂を採用してもよい。
ポッティング材8は、蛇腹形状部57に隣接する位置において所定の厚み、第1方向D1の寸法および剛性を有するため、蛇腹形状部57の周期に影響を与え得る。もし、ポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法が、蛇腹形状部57の周期F1の2倍より大きい場合、蛇腹形状部57の周期F1がばらつくことで、配線52に折れなどの破損が生じるおそれがある。
これに対して、第8の変形例におけるポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下である。このように、寸法Bを蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下にすることで、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制することができる。蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制することで、配線52に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
ポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、蛇腹形状部57の周期F1の0.01倍以上2倍以下であることがより好ましく、0.2倍以上1.0倍以下であることが更に好ましい。
なお、図6(a)および図6(b)に示した絶縁層30と同様に、引張応力Tを除去して基板20が収縮した際に、蛇腹形状部57の波に合わせて第1方向D1の端部側でポッティング材8が変形する場合、ポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、基板20が収縮した際に殆ど変形しない第1方向D1の中央側におけるポッティング材8の寸法Bとして定義すればよい。このような第1方向D1の中央側におけるポッティング材8の寸法Bは、第1方向D1の全範囲におけるポッティング材8の寸法に対して、第1方向D1の中央側における50%~100%の寸法となる。
以下、図19(a)~(e)を参照して、第8の変形例における配線基板10の製造方法について説明する。
まず、図19(a)に示すように、伸縮性を有する基材20を準備する基材準備工程を実施する。続いて、図19(b)に示すように、基材20に引張応力Tを加えて基材20を伸長させる伸長工程を実施する。伸長工程を実施した後、図19(b)に示すように、引張応力Tによって伸長した状態の基材20の第1面21に、配線52を設ける配線工程を実施する。配線工程を実施した後、図19(c)に示すように、接続部51aを介して配線52に電子部品51を接続する部品接続工程を実施する。
部品接続工程を実施した後、図19(d)に示すように、ポッティングによって電子部品51を封止する封止工程を実施する。封止工程においては、第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bが後述する収縮工程で形成される蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となるポッティング材8を電子部品51上に形成することで電子部品51を封止する。蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となるポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bは、シミュレーションや実験によって予め取得しておくことができる。
封止工程を実施した後、図19(e)に示すように、基材20から引張応力を取り除く収縮工程を実施する。これにより、図19(e)において矢印Cで示すように、基材20が収縮し、基材20に設けられている配線52にも変形が生じる。これにより、配線52に、ポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bの1/2以上の周期F1を有する蛇腹形状部57が形成される。
第8の変形例においては、ポッティング材8の第1方向D1における一端と他端との間の寸法Bが、蛇腹形状部57の周期F1の2倍以下となっている。これにより、蛇腹形状部57の周期F1のばらつきを抑制して配線52に折れなどの破損が生じることを抑制することができる。
(第9の変形例)
次に、図20を参照して、第1方向に沿った蛇腹形状部と、第1方向に直交する方向に沿った蛇腹形状部とを有する第9の変形例について説明する。
これまでは、第1方向D1に沿った蛇腹形状部57を有する第2配線522を備えた配線基板10の例について説明した。これに対して、第9の変形例における配線基板10は、図20に示すように、第2配線522が蛇腹形状部57を有することに加えて、第1配線521が、第1方向D1に直交する方向に沿った蛇腹形状部573を有する。図20においては、蛇腹形状部57、573の山部および谷部の頂部を一点鎖線によって示している。このような配線基板10は、図5(b)に示した伸長工程に、基材20に第1方向D1に直交する方向への引張応力を加える工程を含ませ、また、図5(e)に示した収縮工程に、第1方向D1に直交する方向への引張応力を除去する工程を含ませることで形成することができる。
また、上述した以外にも、配線上に形成される交差部52Cまたは小型の電子部品51は、周期的に配置してもよい。周期的に配置することで、配線全域にわたって蛇腹形状部57の周期が乱れないようにすることができるので、伸縮耐久性を向上させることができる。
次に、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(第1の実施例)
図21に示すように、第1の実施例においては、順に、基材20、接着層60、支持基板40、第1配線521、絶縁層30、第2配線522および第2絶縁層9を備える配線基板10を作製した。以下、配線基板10の作製方法について説明する。
≪基材及び接着層の準備≫
接着層60として粘着シート8146(3M社製)を用い、その粘着シート上で2液付加縮合のポリジメチルシロキサン(PDMS)を厚さ1.5mmになるよう塗布し、PDMSを硬化させ、接着層60及び基材20の積層体を準備した。続いて、積層体の一部分をサンプルとして取り出し、基材20の弾性係数を、JIS K6251に準拠した引張試験により測定した。結果、基材20の弾性係数は0.05MPaであった。
≪支持基板、配線、絶縁層の準備≫
支持基板40として厚さ1μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用い、PENフィルムからなる支持基板40上に、蒸着法によって厚さ1μmのCu膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によってCu膜をパターニングすることで、配線幅200μmの第1配線521を形成した。続いて、第1配線521上の交差部52Cが形成される位置に、スクリーン印刷によって厚さ20μmのドーム状の熱硬化性絶縁ポリマーを形成し、熱硬化性絶縁ポリマーを加熱して硬化することで、第1方向D1の寸法が300μmの絶縁層30を形成した。続いて、絶縁層30上または支持基板40上に、蒸着法によって厚さ1μmのCu膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によってCu膜をパターニングすることで、配線幅200μmの第2配線522を形成した。続いて、支持基板40上に、スクリーン印刷によって厚さ10μmの熱硬化性絶縁ポリマーを全面的に形成し、熱硬化性絶縁ポリマーを加熱して硬化することで、第2絶縁層9を形成した。
≪配線基板の作製≫
上記にて準備した接着層60及び基材20の積層体を第1方向D1に沿って1軸に50%伸長させた状態で、接着層60に上記にて準備した支持基板40を貼合させた。次いで、伸長を開放することで接着層60及び基材20の積層体を収縮させた。これにより、支持基板40の表面に、第1方向D1に沿って凹凸形状が生じて収縮した。この際、凹凸形状すなわち蛇腹形状部の周期の平均は500μmであった。
このようにして作製された第1の実施例における配線基板10は、30%の伸長を10万回行っても第1配線521および第2配線522に断線が生じなかった。
(第2の実施例)
第2の実施例は、第1の実施例に対して、第1方向D1における絶縁層30の寸法を500μmに形成した点のみが異なる。第2の実施例における配線基板10は、30%の伸長を10万回行っても第1配線521および第2配線522に断線が生じなかった。
(第3の実施例)
第3の実施例は、第1の実施例に対して、第1方向D1における絶縁層30の寸法を600μmに形成した点のみが異なる。第3の実施例における配線基板10は、30%の伸長を10万回行っても第1配線521および第2配線522に断線が生じなかった。
(第1の比較例)
第1の比較例は、第1の実施例に対して、第1方向D1における絶縁層30の寸法を800μmに形成した点のみが異なる。第1の比較例における配線基板10は、30%の伸長を6万回行った場合に第1配線521および第2配線522に断線が生じた。
(第4の実施例)
図22に示すように、第4の実施例においては、順に、基材20、接着層60、支持基板40、配線52、絶縁層11および電子部品51を備える配線基板10を作製した。以下、第4の実施例における配線基板10の作製方法について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
第4の実施例においては、支持基板40として、厚さ1μm、弾性係数2.2Gpaのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用い、PENフィルムからなる支持基板40上に、蒸着法によって厚さ1μmのCu膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によってCu膜をパターニングすることで、配線幅200μm、配線間隔400μmの6本の配線52を形成した。続いて、配線52上に、スクリーン印刷によって配線52の端部が露出するように厚さ10μmの熱硬化性絶縁ポリマーを形成し、熱硬化性絶縁ポリマーを加熱して硬化することで、絶縁層11を形成した。続いて、スクリーン印刷によって、絶縁層11から露出した配線52の端部上に、接続部51aとして導電性接着材(化研テック社製のCL-3160)を形成した。続いて、マウンターによって、導電性接着材からなる接続部51a上に、電子部品51を搭載した。電子部品51のサイズは、第1方向D1で200μm、第1方向D1に直交する方向で400μmであった。なお、第1方向D1における電子部品51の寸法は、図22において符号Bで示されるように、接続部51aの第1方向D1における一端と他端との間の寸法であった。
そして、第1の実施例と同様の手法で準備された接着層60及び基材20の積層体を第1方向D1に沿って1軸に50%伸長させた状態で、接着層60に上記にて準備した支持基板40を貼合させた。次いで、伸長を開放することで接着層60及び基材20の積層体を収縮させた。これにより、支持基板40の表面に、第1方向D1に沿って凹凸形状が生じて収縮した。この際、凹凸形状すなわち蛇腹形状部の周期の平均は500μmであった。
このようにして作製された第4の実施例における配線基板10は、30%の伸長を10万回行っても配線52に断線が生じなかった。
(第5の実施例)
第5の実施例は、第4の実施例に対して、第1方向D1における電子部品51の寸法Bが400μm、第1方向D1に直交する方向おける電子部品51の寸法が200μmである点のみが異なる。第4の実施例における配線基板10は、30%の伸長を10万回行っても配線52に断線が生じなかった。
(第6の実施例)
第6の実施例は、第4の実施例に対して、第1方向D1における電子部品51の寸法Bが500μm、第1方向D1に直交する方向おける電子部品51の寸法が1000μmである点のみが異なる。第6の実施例における配線基板10は、30%の伸長を10万回行っても配線52に断線が生じなかった。
(第2の比較例)
第2の比較例は、第4の実施例に対して、第1方向D1における電子部品51の寸法Bが800μm、第1方向D1に直交する方向おける電子部品51の寸法が400μmである点のみが異なる。第2の比較例における配線基板10は、30%の伸長を6万回行った場合に配線52に断線が生じた。
なお、上述した実施形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。