JP7249234B2 - 下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法 - Google Patents
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Description
該収縮力が下地表面に対して角度3~15度で作用するとした際の、下地表面に対して垂直方向のベクトル成分として垂直方向の力を算出する工程と、
該垂直方向の力を下地表面の単位面積当たりに作用する垂直応力に換算する工程と、
該垂直応力と下地表面の単位面積当たりの垂直方向の表面引張強度とを比較し評価する工程と、
から成ることを特徴とする下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法を提供する。
該収縮力が下地表面に対して角度3~15度で作用するとした際の、下地表面に対して垂直方向のベクトル成分として垂直方向の力を算出する工程と、
該垂直方向の力を下地表面の単位面積当たりに作用する垂直応力に換算する工程と、
該垂直応力と下地表面の単位面積当たりの垂直方向の表面引張強度とを比較し評価する工程において、垂直応力>表面引張強度の場合は、塗り床材は下地から剥離する、施工する場合は特許文献3に記載の溝部や目地部を設ける必要があると評価し、垂直応力<表面引張強度の場合は、塗り床材は下地から剥離しない、施工する場合は特許文献3に記載の溝部や目地部を設ける必要が無いと評価するものである。なお垂直応力=表面引張強度の場合は、安全のため、塗り床材は下地から剥離する場合がある、施工する場合は特許文献3に記載の溝部や目地部を設ける必要がある、等と判断すべきと考えられる。
塗り床材は、特に化学反応によって硬化する場合は、該化学反応によって塗膜の厚み方向以外の塗膜が連続している方向(塗膜連続方向)に収縮することがあり、該収縮力は例えば、特許文献2の段落0031~0032に記載のように、塗膜連続方向の収縮量と引張弾性係数とから塗膜の単位断面積当りの収縮応力として求め、これに塗膜厚みを乗じることにより該塗膜厚みの塗り床材の塗膜連続方向の収縮力を算出することが出来る。その他、特許文献1の図2記載のアルミニウムの薄片の片側に塗り床材を塗付して、塗り床材の硬化によって生じるアルミニウムの薄片の湾曲をストレインゲージ等で測定し、アルミニウムの剛性とストレインゲージで測定される歪量から、塗膜連続方向の収縮力を算出することが出来る。本発明の塗り床材の塗膜連続方向の収縮力を算出する方法は、どのような方法であっても構わないが、本明細書作成時の技術としては、上記塗膜連続方向の収縮量と引張弾性係数、及び塗膜厚みから算出する方法が、簡便で正確である。
塗膜連続方向の収縮応力(N/mm2)=E(L/L0)・・・(1)
下地に塗付された塗り床材が、下地より剥離する場合は、例えば、皮スキを塗膜と下地の界面に差し込んで、次にこれを押し込んだ時、パラパラと剥がれていくこと(この際の皮スキと下地コンクリートとの角度は12度程度である)、及び塗り床材に、下地中に含まれた水分による膨れが発生した場合に、その膨れの下地との剥離部分における、塗り床材と下地との角度が5度程度である、ことより、上記塗膜連続方向の収縮力は、下地表面に対して角度3~15度で作用すると判断される。
上記垂直方向の力は、厳密には図1の剥離モデルにおいて、塗り床材と下地が接着している端部の線上Sに塗り床材の単位幅当りの力として働くはずであるが、塗り床材は塗膜厚みが大きいため、実際には塗り床材と下地が接着している端部の一定の面積に対して作用すると考えられる。よって該垂直方向の力の単位を(N/mm)から該一定の面積を考慮して(N/mm2)として垂直応力に換算しても差し支えないと判断出来る。該一定の面積は、例えば、下地に接着している幅1mmの塗り床材を、上記角度3~15度で、上記塗膜連続方向の収縮力と同一の力で引っ張って剥離させ、最初に剥離した下地の表面積を実測することで確認することが出来る。他に有限要素法による解析によっても求めることが出来る。その上で、上記垂直方向の力の単位(N/mm)を垂直応力の単位(N/mm2)に置き換える(換算する)のが本工程である。実験的、経験的には角度3~15度で剥離する際には略1mm幅の下地に垂直応力が作用し、1mm幅あたりの垂直方向の力は略1mm2当たりの垂直応力として下地に作用する。
下地表面の垂直方向の表面引張強度は、例えば2mm×2mmの面積毎に下地表面を引っ張ることで実験的に得ることが出来る。図2は、下地をコンクリートとした場合に、水/セメント(%)が60%で細骨材率46.1%、単位重量(kg/m3)が水:172kg、セメント:172kg、細骨材:829kg、粗骨材:988kg、AE減水剤0.72kg、スランプ20.9cm、空気量4.0%の下地コンクリートを厚さ120mm、直径490mmに打設し、28日間養生後、表面を研磨し清掃した後、厚さ1mmにエポキシ樹脂系塗り床材を塗付し、硬化後、該塗り床材に2mm幅の格子状に切り込みを入れ、該一つの格子毎にアタッチメントを張り付けて垂直状に引っ張った際の、下地コンクリート表面のレイタンス(脆弱層)の割合(レイタンス残留率)と単位面積当たりのコンクリートの表面引張強度を示しているが、このような方法で、塗り床材が塗付される下地の表面引張強度を予め得ておくことが出来る。
実施例1、実施例5、実施例6:垂直応力はレイタンスが100%残っている時の表面引張強度0.7N/mm2(図2より)より大幅に小さく、塗り床材は剥離せず、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要はない等と評価される。
実施例2:垂直応力はレイタンスが100%残っている時の表面引張強度0.7N/mm2とほぼ同等であり、塗り床材は剥離する場合があり、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要があると評価されるが、レイタンスが完全に除去されている場合は、塗り床材は剥離せず、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要はない等と評価される。
実施例3、実施例7:垂直応力はレイタンスが50%残っている時の表面引張強度2.0N/mm2(図2より)と近い値であり、下地コンクリートの表面研磨が不十分でレイタンスが多く残っている場合、塗り床材は剥離することがあり、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要があると評価されるが、レイタンスが十分に除去され、レイタンス残留率が例えば40%以下であれば、塗り床材は剥離せず、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要はない等と評価される。
実施例4:垂直応力はレイタンスが70%程度残っている時の表面引張強度1.4N/mm2(図2より)と近い値であり、下地コンクリートの表面研磨が不十分でレイタンスが多く残っている場合、塗り床材は剥離することがあり、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要があると評価されるが、レイタンス残留率が例えば60%以下であれば、塗り床材は剥離せず、下地コンクリート表面に溝部や目地部を設ける必要はない等と評価される。
実施例1、実施例2、実施例4、実施例5、実施例5、実施例6:垂直応力は、塗り床ハンドブックに規定された表面(引張)強度(1.5N/mm2)より小さく、塗り床材は下地より剥離せず、下地表面に溝部や目地部を設ける必要はない等と評価される。
実施例3、実施例7:垂直応力は、塗り床ハンドブックに規定される表面(引張)強度(1.5N/mm2)より大きく、塗り床材は下地より剥離し、下地表面に溝部や目地部を設ける必要がある等と評価される。
Claims (5)
- 塗り床材の塗膜連続方向の収縮力を算出する工程と、
該収縮力が下地表面に対して角度3~15度で作用するとした際の、下地表面に対して垂直方向のベクトル成分として垂直方向の力を算出する工程と、
該垂直方向の力を下地表面の単位面積当たりに作用する垂直応力に換算する工程と、
該垂直応力と下地表面の単位面積当たりの垂直方向の表面引張強度とを比較し評価する工程と、
から成ることを特徴とする下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法。 - 前記塗膜連続方向の収縮力を算出する工程が、塗膜連続方向の収縮量と引張弾性係数、及び塗膜厚みから算出すること工程であることを特徴とする請求項1記載の下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法。
- 塗膜連続方向の収縮力は、塗膜を50~120℃で加熱後に該塗膜を塗り床材が使用される温度に徐冷した際に生じる収縮力であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法。
- 前記単位面積とは1mm2であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法。
- 下地はコンクリート又はモルタルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された下地に塗付された塗り床材の耐剥離性評価方法。
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