JP7247611B2 - キャリア箔付電解アルミニウム箔 - Google Patents
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Description
キャリア箔付電解銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の一例を挙げると、まず、キャリア箔付電解銅箔の電解銅箔層部を、プリント配線板と張り合わせ、次いでキャリア箔を除去する。その後エッチングにより、電極や回路等を形成する工程を有している。ここで、プリント配線板とは、主として、ガラス-エポキシ基板、フェノール基板、ポリイミド基板等の高分子絶縁材料基板などの、絶縁性を有する基板である。さらに、基板の中や表面などに電極や回路等が形成されている。
また、キャリア箔付電解銅箔の別の利用形態として、接合界面層をエッチングバリアとして、キャリア箔付電解銅箔の電解銅箔部にあらかじめエッチングにより回路パターンを形成しておき、次いで高分子絶縁材料基板に転写し、その後キャリア箔を除去する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
一方、従来より、電極や回路等の素材としてアルミニウムも知られている。アルミニウムは、銅に比べて低い硬さと低い耐力を有することにより、基板他の構成部品に応力がかかりにくいこと、銅では困難な超音波接合が比較的容易に行えるといった利点が期待される。
しかし、アルミニウムをプリント基板の電極や回路等として使用するのは一般的ではない。これは、アルミニウムが銅に比べて低い硬さと耐力を有するためハンドリングが困難であったり、極薄のアルミニウム箔の製造自体が困難であるといった点も影響しているものと推測される。
すなわち本発明は、キャリア箔の表面に、接合界面層を介して電解析出した電解アルミニウム箔層を有し、前記接合界面層は、硫黄、炭素、塩素、水素を含み、且つ、前記接合界面層において炭素や硫黄の濃化が認められるキャリア箔付電解アルミニウム箔である。
まず、本発明においては、キャリア箔を必須とする。キャリア箔は析出させる電解アルミニウムの析出基体となる。析出基体となるためにはキャリア箔の少なくとも表面には導電性があることが必要である。
また、キャリア箔は、例えば高分子絶縁材料基板側への転写により、電解アルミニウム箔層が分離されるまで、電解アルミニウム箔層を補強し保護する機能を有することが望ましく、そのために必要な強度を有することが望ましい。
キャリア箔としては、典型的には、200μm以下の板厚を有する金属箔が好ましく、強度の面からは、3μm以上の厚さを有するステンレス箔、銅箔、アルミニウム箔等を適用することができる。
接合界面層としては、電解アルミニウム箔層とキャリア箔とを、引き剥がしにより分離するピーラブルタイプにするか、エッチャブルタイプとして、エッチングバリア性を付与するかで適宜選択することができる。
本発明者等の検討によれば、特許文献4のように非水系の溶媒を使用した場合には、キャリア箔と電解アルミニウム箔層との界面をピーラブルタイプの接合界面層として利用できることを確認している。これは、キャリア箔と電解アルミニウム箔層との界面に非水系の溶媒の微少分解物等が残留していることで、引き剥がし可能な接合界面層になったため、と推測している。また、使用するキャリア箔の材質によっては、キャリア箔の表面の酸化層なども接合界面層として有用である可能性がある。他にも、ピーラブルタイプの接合界面層としては、アルミニウム箔層を電解析出可能な有機系剤等の接合界面層を用いることも可能と考えられる。
なお、キャリア箔を銅箔として、接合界面層を上述した非水系の溶媒の微少分解物の残留した層とすれば、エッチングバリア性も保つことができるため、ピーラブルかつエッチャブルなキャリア箔付電解アルミニウム箔が期待できる。
なお、あまりに薄いと電解アルミニウム箔層の緻密性を確保するのが難しく、厚すぎるとわざわざキャリア箔を有する必要性が乏しくなる。そのため、より好ましい膜厚は、2μmないし10μm程度である。
また、電解アルミニウム箔層の表面は、適度に粗面であることが好ましい。電解アルミニウム箔層の表面が粗面であることで、基板と張り合わせる時に、アンカー効果により高い密着性を確保できると考えられる。電解アルミニウム箔層の析出条件によって、電解アルミニウム箔層の表面の粗さを制御できる。典型的には、例えば算術平均面粗さRaにおいて、約0.06~0.5μmである。
このようにして得られた本発明のキャリア箔付電解アルミニウム箔1を図1に示す。本発明のキャリア箔付電解アルミニウム箔1は、キャリア箔2と、接合界面層3と、電解アルミニウム箔層4と、を有する。
まず、キャリア箔を準備する。キャリア箔には、表面に水分の吸着、油分の付着、厚い酸化層が存在している場合があるため、洗浄、脱脂、エッチング等により、キャリア箔の表面を調整する工程を付与することが品質の安定化に有効である。キャリア箔の素材としては、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などの金属、あるいは、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの樹脂を基材として、その表面にそれら金属を膜状に固定させたものが挙げられる。
なお、メッキ液は、吸湿性があるため、メッキ槽内の水分管理が特に重要である。槽内の水分量が多くなるとメッキ液と水分が反応して、メッキ液が劣化するだけでなく、例えば塩酸などの腐食性の高いガスも発生する可能性もある。これらは、キャリア箔の表面に損傷を与えることによって、接合界面層の形成に影響を及ぼすと考えられる。そのため、電解アルミニウム箔層の剥離性を阻害する一因となる。このような不具合を防止するため、槽内の露点は-40℃以下とすることが望ましい。
次に、ジメチルスルホン、塩化アルミニウム、塩化アンモニウムから成るメッキ液を用意した。メッキ液はモル比で、ジメチルスルホン:塩化アルミニウム:塩化アンモニウム=10:3.8:0.2の組成比で調合したものを用いた。
用意したSUS箔を円筒形ドラムに巻き付け、SUS箔をカソード、純度99%のアルミニウムをアノードとし、調合したメッキ液を満たしたメッキ槽中で、95~100℃の液温を維持しながら、両電極間に100mA/cm2の電流密度で1分間通電して、電解アルミニウム箔層を析出させた。
得られた箔を、通電終了後にメッキ槽から引き揚げた。その後、得られた箔を流水で洗浄し、エアブローで乾燥させ、キャリア箔付電解アルミニウム箔を得た。
(形態観察)
得られたキャリア箔付電解アルミニウム箔の断面について、ミクロ組織観察を行った。観察には、キーエンス社製の走査型電子顕微鏡(VE-7800)を用いた。結果を図2に示す。図2に示すとおり、キャリア箔上に電解アルミニウム箔層が2μmの厚さで形成された形態を有していることが確認できた。
得られたキャリア箔付電解アルミニウム箔のアルミニウム面からキャリア箔側に向かって、堀場製作所社製のグロー放電発光分析装置(GD-PROFILER2)を用いて、組成分布の分析を行った。測定条件は、グロー放電のアノード径をφ4mmとし、スパッタ速度は3nm/s、ガス圧力600Pa、出力40W、パルスモードとした。その結果を図3に示す。図3に示すように、キャリア箔2と電解アルミニウム箔層4の界面に炭素や硫黄の濃化が認められ、接合界面層3が形成されていることが確認された。
得られたキャリア箔付電解アルミニウム箔の表面粗さを測定した。測定には、キーエンス社製のレーザー顕微鏡(VKX-150)を用い、50倍の倍率で1mm角の視野を測定した。その結果、算術平均粗さはRa=0.28μmであった。
得られたキャリア箔付電解アルミニウム箔のアルミニウム面を、接着剤を塗布した塩ビ(PVC)板上に、貼り付けた。その後、接着剤が乾燥するのを待ってから、キャリア箔の部分を持ち上げて、電解アルミニウム箔の部分を剥離して、転写させた。その結果、電解アルミニウム箔がキャリア箔側に残留していないことと、電解アルミニウム箔が塩ビ板側へ転写されていることと、を確認した。
2 キャリア箔
3 接合界面層
4 電解アルミニウム箔層
Claims (1)
- キャリア箔の表面に、接合界面層を介して電解析出した電解アルミニウム箔層を有し、
前記接合界面層は、硫黄、炭素、塩素、水素を含み、且つ、前記接合界面層において炭素や硫黄の濃化が認められるキャリア箔付電解アルミニウム箔。
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