JP7243944B1 - 圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7243944B1
JP7243944B1 JP2022574353A JP2022574353A JP7243944B1 JP 7243944 B1 JP7243944 B1 JP 7243944B1 JP 2022574353 A JP2022574353 A JP 2022574353A JP 2022574353 A JP2022574353 A JP 2022574353A JP 7243944 B1 JP7243944 B1 JP 7243944B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
roll
rolling
evaluated
rolls
metal strip
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2022574353A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2023079850A1 (ja
JPWO2023079850A5 (ja
Inventor
渉 馬場
佑馬 下司
利行 坂元
由紀雄 高嶋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority claimed from PCT/JP2022/034960 external-priority patent/WO2023079850A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7243944B1 publication Critical patent/JP7243944B1/ja
Publication of JPWO2023079850A1 publication Critical patent/JPWO2023079850A1/ja
Publication of JPWO2023079850A5 publication Critical patent/JPWO2023079850A5/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Control Of Metal Rolling (AREA)

Abstract

圧延中に生じる評価対象ロールの多角形摩耗の状態をオンラインで推定し、軽度のチャタマークを防止することができる、圧延ロールの適合判定方法等を提供する。圧延ロールの適合判定方法は、評価対象ロールのあるスタンド(F1~F5)の圧延荷重の操業データを取得する圧延荷重データ取得ステップ(ステップS3)と、評価対象ロールの周速度の操業データを取得する周速度データ取得ステップ(ステップS4)と、スタンド(F1~F5)の圧延荷重の操業データを用いてスタンド(F1~F5)の振動挙動を解析する振動解析ステップ(ステップS5)と、スタンド(F1~F5)の振動挙動の解析結果と評価対象ロールの周速度の操業データとから評価対象ロールの表面形状を金属帯の圧延中に推定する表面形状推定ステップ(ステップS6)と、評価対象ロールの表面形状に基づいて評価対象ロールの適合判定を行う適合判定ステップ(ステップS7)とを含む。

Description

本発明は、圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法に関する。
自動車や飲料缶等に使用される鋼板等の金属帯は、連続鋳造工程、熱間圧延工程、及び冷間圧延工程が施された後、焼鈍工程やめっき工程を経て製品となる。この中で、冷間圧延工程は、製品としての金属帯の厚みを決定する最終工程である。近年はめっき厚みを従来よりも薄くする場合があり、めっき工程前の金属帯の表面性状がめっき工程後の製品の表面性状に影響を与えやすいことから、表面欠陥の発生を防止する必要性が増している。
冷間圧延工程で発生する表面欠陥の一つとしてチャタマークが挙げられる。これは、金属帯の幅方向に現れる線状のマークであって、このような線状のマークが金属帯の長手方向に周期的に現れる表面欠陥である。チャタマークは、圧延機の振動(以降、チャタリングと称す)により発生するとされている。ここで、非常に軽度のチャタマークは、冷間圧延工程後の目視検査や板厚測定等では判明せず、めっき工程後に初めて認識されることがある。このため、その間にも大量の表面欠陥が発生していることに気づかず、結果として製品の歩留まりを低下させ、生産性を大きく阻害する要因となる。また、缶用鋼板や電磁鋼板等の薄物材料では、チャタリングによる金属帯の厚みや張力の急激な変動により、金属帯が破断する等の生産トラブルが発生し、生産性を阻害する場合もある。
このような背景から、従来、例えば、特許文献1乃至3や非特許文献1に示すようなチャタリングの発生を抑制する方法が提案されている。
特許文献1に示す圧延機のチャタリング検出方法は、圧延機各部の1個以上に振動検出器を設置して運転中の圧延機各部の振動を検出し、各部の検出した振動からの圧延機のチャタリングを検出するものである。そして、この圧延機のチャタリング検出方法においては、ミル固有振動数、ギヤの噛み合い不良、ベアリング不良、スピンドルとロールのカップリングのガタ、ロール疵より発生する固有の振動数をそれぞれ計算してチャタマーク発生原因毎の基本周波数とする。そして、前記各部の振動変位、振動速度または振動加速度を検出し、検出した各部の振動変位、振動速度または振動加速度の周波数分析を行う。また、張力、圧延トルク、圧延速度、圧延荷重、板厚変動の圧延パラメータの周波数分析を行う。そして、振動と圧延パラメータの実測値の周波数分析を行った結果が、チャタマーク発生原因毎の基本周波数の整数倍の周波数において設定値を超えたとき、チャタリング発生と判定し、その発生原因を前述の基本周波数から特定するものである。
また、特許文献2に示す冷間圧延または調質圧延における振動異常検出方法は、振動信号収集ステップと、FFT周波数解析ステップと、振動異常判定ステップと、を有する。振動信号収集ステップでは、冷間圧延機の各スタンド間または冷間圧延機入出側の小径ロールの内、少なくとも1つの小径ロールで検出した振動信号を収集する。また、FFT周波数解析ステップでは、収集した振動信号の高速フーリエ変換方式の周波数解析を行い、振動信号に含まれる周波数成分とそのスペクトル値を得る。また、振動異常判定ステップでは、FFT周波数解析の実行ステップで得た周波数成分の内、所定式で演算される鋼板の複数の振動モードにおける弦振動の周波数と同じ周波数成分の複数のスペクトル値の少なくとも1つが予め設定した閾値を超過した場合に振動異常が生じていると判定する。
また、特許文献3に示す鋼板のチャタマーク防止方法は、熱間圧延および酸洗を行った後の降伏強度が450MPa以下の鋼板を冷間圧延するに際して、冷間圧延機の固有振動数と、所定式に示す、冷間圧延機の最終スタンドと冷間圧延機出側で鋼板に最初に接触する小径ロールとの間を弦長とする、鋼板の弦振動の周波数とが一致しないようにする。また、所定式に示す鋼板表面に生じる曲げ歪みを、鋼板が塑性変形しない大きさとなるようにする。
更に、非特許文献1には、極薄鋼板の冷間圧延における「チャタリング」現象の解析が記載されている。非特許文献1には、冷間総圧下率が93~94%におよぶ極薄冷延鋼板の圧延中に発生するチャタリング現象に関し、実機ミル調査や圧延挙動の理論解析を行い、チャタリングの防止対策を検討した研究結果が示されている。
特許第2964887号公報 特許第6296046号公報 特許第6102835号公報
極薄鋼板の冷間圧延における「チャタリング」現象の解析、川崎製鉄技報、Vol.8、No.1、1976、P.60-79
ところで、これら特許文献1乃至3や非特許文献1などに示す従来の技術においては、圧延機の複数個所に振動計(加速度計等)を設置して、圧延中の振動挙動をモニタリングすることにより、チャタリングを早期に検出することが行われている。
しかしながら、チャタマークの中には、圧延機の振動計測のみでは検出が難しい軽度のチャタマークが生じる場合がある。軽度のチャタマークは、金属帯の表面に0.1~5μm程度の振幅の凹凸が形成されている場合をいい、前述したように、冷間圧延工程後の目視検査や板厚測定等では判明せず、めっき工程後に初めて認識されることがある。このため、その間にも大量の表面欠陥が発生していることに気づかず、結果として製品の歩留まりを低下させ、生産性を大きく阻害する要因となる。
一方、この軽度のチャタマークを含むチャタマークは、圧延中に生じる圧延ロールの表面の周方向のプロフィルが多角形化する多角形摩耗により生じることが知見されている。多角形摩耗とは、金属帯の圧延過程で、圧延ロールの表面に微小な凹凸が生じ、特定のピッチの凹凸が成長することにより、圧延ロールの表面形状が多角形化することを意味する。
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、圧延中に生じる評価対象ロールの多角形摩耗の状態をオンラインで推定し、多角形摩耗による生じる軽度のチャタマークを防止することができる、圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る圧延ロールの適合判定方法は、各々が複数の圧延ロールを有する1又は複数のスタンドを備える圧延機における、任意の前記スタンドの前記複数の圧延ロールから任意に選定された圧延ロールである評価対象ロールの適合判定を行う圧延ロールの適合判定方法であって、前記評価対象ロールのあるスタンドの圧延荷重の操業データを取得する圧延荷重データ取得ステップと、前記評価対象ロールの周速度の操業データを取得する周速度データ取得ステップと、前記圧延荷重データ取得ステップで取得した前記評価対象ロールのあるスタンドの圧延荷重の操業データを用いて当該スタンドの振動挙動を解析する振動解析ステップと、該振動解析ステップによる前記評価対象ロールのあるスタンドの振動挙動の解析結果と前記周速度データ取得ステップで取得した前記評価対象ロールの周速度の操業データとから前記評価対象ロールの表面形状を金属帯の圧延中に推定する表面形状推定ステップと、該表面形状推定ステップにより推定した前記評価対象ロールの表面形状に基づいて前記評価対象ロールの適合判定を行う適合判定ステップと、を含むことを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る金属帯の圧延方法は、前述の圧延ロールの適合判定方法を用いて金属帯の圧延中に前記評価対象ロールの適合判定を行い、適合判定の結果が不適合である場合に、前記評価対象ロールを新たな圧延ロールに組み替えて前記金属帯の圧延を行うことを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る冷延鋼板の製造方法は、前述の金属帯の圧延方法を用いて冷延鋼板を製造することを要旨とする。
本発明に係る圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法によれば、圧延中に生じる評価対象ロールの多角形摩耗の状態をオンラインで推定し、多角形摩耗により生じる軽度のチャタマークを防止することができる。
本発明の一実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法が適用される圧延機の概略構成図である。 圧延ロールの具体的形状を示すものであり、(a)は圧延ロールの断面形状が真円であると仮定した場合の参照円(破線)とともに、圧延ロールの断面形状(実線)をプロットした説明図、(b)は圧延ロールの円周方向の位置(角度)と、圧延ロールの直径により表される真円からの、断面形状の半径方向の偏差量との関係の一例を示すグラフである。 圧延ロールの表面の凹凸ピッチとスペクトル値との関係の一例を示すグラフである。 圧延ロールをロール研削機に設置して、圧延ロールの表面形状を測定する様子を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法が適用される適合判定装置をスタンドの各々に設けた圧延機の概略構成図である。但し、図5においては、圧延ロールの適合判定装置が1番目のスタンドF1のみに設けられた状態が示されている。 図5に示す圧延機の上位計算機及び適合判定装置における処理の流れを説明するためのフローチャートである。 4段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを説明するための図である。 4段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側のワークロールを評価対象ロールとして選定した場合において、上側のバックアップロールとの結合を仮想的に開放して周波数応答を算出する例を説明するための図である。 4段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側のワークロールを評価対象ロールとして選定した場合において、下側のワークロールとの結合を仮想的に開放して周波数応答を算出する例を説明するための図である。 6段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを説明するための図である。 6段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側の中間ロールを評価対象ロールとして選定した場合の周波数応答を算出する例を説明するための図である。 6段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側の中間ロールを評価対象ロールとして選定した場合の周波数応答を算出する例を説明するための図である。 図5に示す圧延機を用いて金属帯の連続圧延を行う際の、圧延ロールの周速度の変化及び評価対象ロールの適合判定タイミングを示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。ここで、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
先ず、図1において、金属帯Sの圧延中に生じる圧延機aの各スタンドF1~F5の異常振動をチャタリングと呼び、チャタリングによって金属帯Sの表面に形成される周期的な模様をチャタマークと呼ぶ。本実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法が適用される適合判定装置30(図5参照)では、金属帯Sの表面に0.1~5μm程度の振幅の凹凸が形成されているチャタマーク、いわゆる軽度のチャタマークを対象として評価対象ロール(のちに詳細に説明する)の適合判定を行う。この軽度のチャタマークは金属帯Sの厚みが変動しているために生じることが多い。微小な凹凸が形成される軽度のチャタマークは、圧延機aの出側に設置された板厚計7では検出することが難しい場合が多い。また、圧延後の金属帯Sの表面を目視で観察しても判定しにくい。軽度のチャタマークは、めっき処理等の表面処理を行った後に検出されるか、金属帯Sのプレス成形後に初めて検出される場合も多い。
チャタマークの発生原因となるチャタリングは、圧延機を構成するベアリング、ギアのかみ合い、カップリング等のがたつきに起因する場合が多いとされている。この場合、チャタリングは、従来においては、圧延機aの各スタンドF1~F5に設置した振動計5から取得される振動データを解析し、特定の周波数帯における振動の大きさが予め設定された閾値を超えた場合に検出できるとされていた。しかしながら、本発明の発明者らは、軽度のチャタマークとして、圧延機aの各スタンドF1~F5またはその周辺設備に設置した振動計5では検出が難しいものもあることを知見した。さらに、金属帯Sの圧延過程で、圧延ロールの表面に微小な凹凸が発生し、特定のピッチの凹凸が成長することにより、圧延ロールの表面形状が多角形化する(多角形摩耗を生じる)場合があることを知見した。上側及び下側のワークロール1、上側及び下側のバックアップロール2、及び上側及び下側の中間ロール3をそれぞれ圧延ロール1,2,3と呼ぶ。この場合に、金属帯Sの圧延中に圧延機aの各スタンドF1~F5の振動が徐々に増加してチャタリングに至ることになる。このため、評価対象ロールの表面形状の変化を推定することが重要である。
(圧延機)
図1には、本発明の一実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法が適用される圧延機の概略構成が示されている。
図1に示す圧延機aは、冷間圧延機であり、金属帯Sとしての鋼板を冷間圧延する複数のスタンド(本実施形態では通板方向の入側から数えて1番目のスタンドF1から5番目のスタンドF5)を備えるタンデムミルである。なお、圧延機aに付帯する他の装置(例えば、入側の巻戻機、溶接機、ルーパ、出側の切断機、及び巻取機等)については図示を省略している。
ここで、通板方向の入側から数えて1番目のスタンドF1から4番目のスタンドF4までは4段式スタンドであり、入側から数えて5番目のスタンドF5は6段式スタンドとなっている。
4段式の各スタンドF1~F4は、ハウジング4内に、金属帯Sとしての鋼板を圧延する上側及び下側のワークロール1と、これら上側及び下側のワークロール1のそれぞれを支持する上側及び下側のバックアップロール2とを備えている。また、6段式のスタンドF5は、ハウジング4内に、上側及び下側のワークロール1と、上側及び下側のバックアップロール2と、上側の中間ロール3と、下側の中間ロール3とを備えている。上側及び下側のワークロール1は、金属帯Sとしての鋼板を圧延する。上側及び下側のバックアップロール2は、上側及び下側のワークロール1のそれぞれを支持する。上側の中間ロール3は、上側のワークロール1と上側のバックアップロール2との間に配置されている。また、下側の中間ロール3は、下側のワークロール1と下側のバックアップロール2との間に配置されている。
そして、各スタンドF1~F5のハウジング4の上部には、各スタンドF1~F5の振動を計測する振動計5が設置されている。振動計5は、圧電素子型振動センサが好適であるが、その他の方式の振動計であってもよい。
また、各スタンドF1~F5の上側のバックアップロール2の上部には、各スタンドF1~F5の圧延荷重を検出する圧延荷重検出器6が設置されている。圧延荷重検出器6はロードセルで構成される。
また、隣接するスタンドF1~F5の間に設けられたテンションメータロール8には金属帯Sとしての鋼板の張力を検出する張力計が設けられている。また、1番目のスタンドF1及び5番目のスタンドF5のそれぞれの出側には、金属帯Sとしての鋼板の板厚を検出する板厚計7が設置されている。
また、各スタンドF1~F5の上側及び下側のワークロール1には、ワークロール駆動装置9が接続され、ワークロール駆動装置9には、上側及び下側のワークロール1の周速を制御するロール速度制御機11が接続されている。ロール速度制御機11には、上側及び下側のワークロール1の回転速度を検出するロール回転速度検出器(図示せず)が設けられている。また、各スタンドF1~F5の上側及び下側のワークロール1には、上側及び下側のワークロール1間のロールギャップを制御するロールギャップ制御機10が設けられている。ロールギャップ制御機10には、上側及び下側のワークロール1の圧下位置を検出する圧下位置検出器(図示せず)が設けられている。
なお、圧延機aの各スタンドF1~F5には、不図示のロール交換装置が併設される。ロール交換装置には、レール(図示せず)上を圧延ロール1,2,3の軸方向に走行可能な台車(図示せず)が備えられている。台車は、後述する上位計算機14からの指示の下、交換される圧延ロール1,2,3の近傍に移動する。オペレータは、使用後の圧延ロール1,2,3を所定のスタンドF1~F5から抜き出してから、研削後の新たな圧延ロールを所定のスタンドF1~F5に装入する。使用後の圧延ロール1,2,3はロールショップに搬送され、再研削が行われる。
ここで、鉄鋼製品の製造を行うためのシステムは、多数の設備を対象とした生産管理を行うために大規模な階層システムによって構成されている。具体的には、階層システムは、最上位にはLevel3である上位計算機14、連続式冷間圧延機のような製造ライン単位にはLevel2である制御用計算機13、各ラインを構成する設備単位にはLevel1である制御用コントローラ12といった階層で構成されている。上位計算機14はビジネスコピュータ、制御用計算機13はプロセスコンピュータ、制御用コントローラ12はPLCである。
制御用計算機13は、上位計算機14と下位の制御用コントローラ12との間に接続され、上位計算機14で計画された製造計画を受信して製造ラインに金属帯Sとしての鋼板の製造指示を行う。また、制御用計算機13は、制御用コントローラ12から各種実績情報を収集し、それらを運転監視画面に表示したり、理論モデルに基づいた演算を行い、制御に必要な情報を制御用コントローラ12に送信したりすることが主な役割である。一方、制御用コントローラ12は、製造設備を構成するドライブやバルブ、センサ等に対して的確なタイミングで指示を出すこと、機器同士が干渉しないよう動作の調整を行うこと、センサが保持するカウント値を物理的な情報と紐づけて動作させること等が主要な役割である。
本実施形態では、制御用計算機13は、金属帯Sとしての鋼板の溶接点が通過する前に次の鋼板の圧延操業条件を決定する。具体的には、上位計算機14から与えられる母材寸法(母材板厚と板幅)、製品目標板厚等の情報に従ってパススケジュールが設定され、制御用計算機13は、各スタンドF1~F5の圧延荷重と先進率の予測値、及びロールギャップ、ロール周速の設定値を決定する。その際、圧延荷重やロール周速の設定のために、各スタンドF1~F5に使用する圧延ロール1,2,3に関する情報として、研削後(スタンドへの装入前)のロール径等の実測値を含む圧延ロールの諸元情報が上位計算機14から制御用計算機13に送られる。圧延ロールの諸元情報は、ロール径、ロールバレル長、ロール番号、ロール材質、表面粗さの規格区分等である。
制御用コントローラ12は、制御用計算機13から取得したロールギャップ、ロール周速の設定値(指令値)に基づき、各スタンドF1~F5のロール速度制御機11及び各スタンドF1~F5のロールギャップ制御機10を制御するための処理を実行する。また、制御用コントローラ12は、圧延荷重検出器6で検出される各スタンドF1~F5の圧延荷重を各スタンドF1~F5に設置された圧延荷重検出器6から収集する。また、制御用コントローラ12は、上側及び下側のワークロール1の回転速度の実測値をロール速度制御機11の回転速度検出器から収集する。更に、制御用コントローラ12は、テンションメータロール8に設けられた張力計による張力測定値等の圧延データを連続的に収集する。そして、制御用コントローラ12は、これら圧延データを予め設定された周期毎に制御用計算機13に出力する。
(圧延ロールの適合判定装置)
本実施形態においては、各圧延スタンドF1~F5には、図5に示すように、評価対象ロールの適合判定を行う圧延ロールの適合判定装置30が設けられている。図5には、圧延ロールの適合判定装置30が1番目のスタンドF1のみに設けられた状態が示されている。この適合判定装置30は、圧延中に生じる評価対象ロールの表面形状、即ち多角形摩耗の状態をオンラインで推定する。そして、適合判定装置30は、その推定した評価対象ロールの表面形状、即ち多角形摩耗の状態に基づいて評価対象ロールの適合判定を行い、多角形摩耗による生じる軽度のチャタマークを防止するものである。
ここで、評価対象ロールは、スタンドF1~F5のうちの任意のスタンドF1~F5の複数の圧延ロール1,2,3から任意に選定された圧延ロールである。上側及び下側のワークロール1、上側及び下側のバックアップロール2、及び上側及び下側の中間ロール3をそれぞれ圧延ロールと呼ぶ。4段式スタンドF1~F4の場合には、任意のスタンドF1~F4の上側及び下側のワークロール1、及び上側及び下側のバックアップロール2のうちから任意に選定された圧延ロールを評価対象ロールと呼ぶ。6段式スタンドF5の場合には、スタンドF5の上側及び下側のワークロール1、上側及び下側のバックアップロール2、及び上側及び下側の中間ロール3のうちから任意に選定された圧延ロールを評価対象ロールと呼ぶ。
圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状とは、圧延ロール1,2,3の胴部における断面形状を指す。圧延ロール1,2,3の断面形状は概ね円形状であるため、断面形状の真円からのズレ量により表面形状を表す。圧延ロール1,2,3の断面は、胴部の軸方向における任意の断面を対象としてよいが、胴部の中央位置における断面を対象とするのが好ましい。
圧延ロール1,2,3の表面形状の具体例を図2に示す。図2(a)は、圧延ロール1,2,3の断面形状が真円であると仮定した場合の参照円(破線)と共に、圧延ロール1,2,3の断面形状(実線)をプロットしたものである。また、図2(b)は圧延ロール1,2,3の円周方向の位置(角度)を横軸にして、圧延ロール1,2,3の直径により表される真円から、断面形状の半径方向の偏差量(ズレ量)を縦軸として表した図である。本実施形態の推定対象となる圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状は、図2(b)のように圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の周方向位置と表面における凹凸の大きさとの関係により特定される情報である。なお、真円を特定する際に基準となる圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の直径は、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の研削時に測定され、上位計算機14にオペレータにより保存される。
一方、本実施形態で推定対象となる圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状は、図2(a),(b)のような連続的な曲線により特定される情報でなくてもよい。例えば圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面を周方向に等分して対向する位置での外直径を計測し、それらのうちの最大径と最少径をそれぞれDmax、Dminとして、Dmax-Dminを圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状情報としてもよい。周方向に等分する数としては、4~36000等分であり、より好ましくは360等分以上である。
さらに、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状としては、上記に加え、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3に形成される凹凸のピッチと関係づけられた断面形状の情報であることが好ましい。各スタンドF1~F5に組み込まれた圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3には、各圧延スタンドF1~F5の振動に関連して、複数の周波数成分が複合された凹凸形状が形成される場合がある。この場合、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の周方向の位置情報(角度情報)と真円からの偏差量の関係について高速フーリエ変換方式の周波数解析を行う。そして、表面形状に含まれる周波数成分に対応する凹凸のピッチと、そのピッチに対応するスペクトル値との関係を(評価対象ロール)1,2,3の表面形状としてもよい。図3は、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の周方向の位置情報と真円からの偏差量との関係から、高速フーリエ変換方式の周波数解析により得られる圧延ロールの表面の凹凸ピッチとスペクトル値の関係を示す例である。
本実施形態で推定対象となる圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状としては、後述するように、評価対象ロールの表面に形成される凹凸のピッチと関係づけられた振幅情報としている。振幅情報とは、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の断面形状として真円からの偏差量の1ピッチ当たりの最大値と最小値との差である。また、凹凸のピッチと関係づけられた振幅情報とは、予め凹凸のピッチを設定し、そのピッチを1周期とした場合の振幅情報である。例えば、評価対象ロールの周方向の位置(角度)と、断面形状の真円からの偏差量の関係をフーリエ級数展開し、これにより得られるフーリエ係数を、ピッチと関係づけられた振幅情報と定義することもできる。特定のピッチまたは周波数に対応した振幅を代表する指標だからである。
圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状を測定する方法としては、例えばロール研削機を用いた測定が可能である。図4は、ロール研削機に圧延ロールを設置して、表面形状を測定する様子を模式的に示している。圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の表面形状の測定に際し、圧延ロール(評価対象ロール)1,2,3の軸方向の両端近傍をレスト22に支持する。この状態で、圧延ロール1,2,3の軸方向の一端をロール回転装置23のチャック21により固定し、圧延ロール1,2,3の軸方向の他端を芯押し台24により軸方向に押し付ける。また、圧延ロール1,2,3の胴部の表面には、圧延ロール1,2,3の胴部の表面と接し、当該表面の変位を検出する変位計26を設置する。変位計26としては、接触式または非接触式の任意の測定器を用いることができる。この変位計26は、例えば測定精度の比較的高い、接触式のマグネスケールを用いることが好ましい。マグネスケールの測定精度としては、0.1~0.2μm程度で、測定ストロークが1~5mm程度、サンプリング周波数として1kHz程度のものを用いるのが好ましい。そして、圧延ロール1,2,3を、回転軸がモータ25に接続されたロール回転装置23により低速(例えば5~10rpm)で回転させながら、変位計26の出力を計測器ロガー27で収集する。その際、ロール回転装置23から圧延ロール1,2,3の回転速度の情報を取得することにより、変位計26で得られる変位と圧延ロール1,2,3の周方向位置とを対応付けることができる。また、圧延ロール1,2,3を複数回(2~5)回転させ、変位計26により得られる変位の情報の自己相関を取ることによって、1回転分の変位情報を特定して、圧延ロール1,2,3の周方向位置と変位情報を対応付けてもよい。
そして、各スタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30は、図5に示すように、圧延荷重データ取得部32及び周速度データ取得部33を有する操業データ取得部31と、振動解析部34と、初期表面形状取得部35と、表面形状推定部36と、適合判定部37とを備えている。
適合判定装置30は、操業データ取得部31、振動解析部34、初期表面形状取得部35、表面形状推定部36、及び適合判定部37の各機能をプログラムを実行することで実現するため演算処理機能を有するコンピュータシステムである。そして、このコンピュータシステムは、ハードウェアに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムを実行することにより、前述した各機能をソフトウェア上で実現できるようになっている。
操業データ取得部31は、圧延荷重データ取得部32と、周速度データ取得部33とを備えている。圧延荷重データ取得部32は、オペレータが選定した評価対象ロールのあるスタンドF1~Fnの情報を上位計算機14から取得し、その情報に基づき、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データの取得処理を行う。周速度データ取得部33は、オペレータが選定した評価対象ロールのあるスタンドF1~Fnの情報を上位計算機14から取得し、その情報に基づき、評価対象ロールの周速度の操業データの取得処理を行う。オペレータが選定した評価対象ロールあるスタンドF1~Fnの情報は、制御用計算機13に入力され、上位計算機14を経由して操業データ取得部31に送られる。
圧延荷重データ取得部32は、前述の情報に基づき評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データを制御用コントローラ12から取得する。当該スタンドF1~F5の圧延荷重の操業データは、金属帯Sとしての鋼板の圧延中に圧延荷重検出器6が検出した圧延荷重の操業データである。この圧延荷重の操業データは制御用コントローラ12に送られ、圧延荷重データ取得部32は、当該操業データを制御用コントローラ12から取得する。ただし、当該スタンドF1~F5の圧延荷重の操業データは、制御用計算機13が設定する圧延荷重の設定値を圧延荷重の操業データとしてもよい。これは、後述する図13に示すように、金属帯S(A,B,C)の先端部とその金属帯S(A,B,C)に先行する先行金属帯の尾端部との接合部が圧延機aを通過するときのタイミングt1、t2、t3で、制御用計算機13による金属帯A、金属帯B、金属帯Cを圧延する際の圧延荷重が設定されるからである。そして、この圧延荷重の設定値が制御用計算機13から制御用コントローラ12に送られ、圧延荷重データ取得部32は、当該圧延荷重の設定値を制御用コントローラ12から取得する。圧延荷重の操業データは、時系列データとして金属帯Sの圧延中に、随時、振動解析部34に送るようにしてよいが、金属帯Sの圧延を開始する際に1回のみ振動解析部34に送るようにしてよい。
また、周速度データ取得部33は、前述の情報に基づき評価対象ロールの周速度の操業データを制御用コントローラ12から取得する。周速度データ取得部33で取得する評価対象ロールの周速度の操業データは、ロール速度制御機11の回転速度検出器で検出される上側及び下側のワークロール1の回転速度の実測値から、当該ワークロール1と評価対象ロールとのロール径の比を用いて換算することにより求めたものである。具体的には、評価対象ロールの直径Deに対して、ワークロール1の直径Ddとワークロール1の回転速度ωdを用いて、評価対象ロールの回転速度ωeは、ωe=ωd・Dd/Deにより求めることができる。評価対象ロールの周速度についての操業データは時系列データであり、金属帯Sとしての鋼板の圧延中における評価対象ロールの周速度を随時取得する。評価対象ロールの周速度は、0.1~5msの範囲で任意に設定したサンプリング周期の時系列データであることが好ましい。ただし、周速度データ取得部33で取得する評価対象ロールの周速度の操業データは、各スタンドF1~F5に評価対象ロールの回転速度を測定する速度計が設置されている場合には、その測定値を用いることができる。評価対象ロールの周速度についての操業データは、金属帯Sの圧延中に、随時、表面形状推定部36に送られる。
また、操業データ取得部31では、上記の圧延荷重の操業データ及び評価対象ロールの周速度の操業データの他にも、金属帯Sを圧延する際の他の操業データを取得してもよい。例えば、圧延ロール1,2,3の属性に関する操業データとして、圧延ロール1,2,3の表面硬度、ヤング率、ポアソン比などを取得してよい。圧延条件に関する操業データとして、被圧延材の板厚、変形抵抗、圧下率、先進率、摩擦係数などの設定値や実績値を取得してよい。圧延ロール1,2,3の属性情報は、評価対象ロールが他の圧延ロール1,2,3と接触し摩耗が生じる際の摩耗のしやすさに影響し、これにより評価対象ロールの表面形状に影響を与える場合があるからである。また、圧延条件として例示した操業データは、評価対象ロールと接触する他の圧延ロール1,2,3との間の接触圧力や相対すべり速度や相対すべり量に影響を与え、これにより評価対象ロールの表面形状に影響を与える場合があるからである。これらの操業データは、振動解析部34または表面形状推定部36に送られる。
また、振動解析部34は、圧延荷重データ取得部32が取得した評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データを用いて当該スタンドF1~F5の振動挙動を解析する。
ここで、振動解析部34は、評価対象ロールが組み込まれたスタンドF1~F5の振動挙動について、評価対象ロール以外の圧延ロール1,2,3が評価対象ロールの振動挙動に与える影響も考慮した振動解析を実行する。例えば、4段式スタンドF1~F4の上側のバックアップロール2を評価対象ロールとして選定する。この場合に、振動解析部34は、そのスタンドF1~F4を構成する下側のバックアップロール2、上側のワークロール1、及び下側のワークロール1を含めた振動挙動の解析を行い、評価対象ロールである上側のバックアップロール2の振動挙動を求める。
振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析では、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いる。そして、この圧延機振動モデルにおけるバネ定数を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データに応じて更新し、バネ定数を更新した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出する。
以下、評価対象ロールのあるスタンドが4段式スタンドF1~F4である場合の当該スタンドF1~F4をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルについて説明する。
4段式スタンドF1~F4をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルは、図7に示すように、上側及び下側のワークロール1及び上側及び下側のバックアップロール2をそれぞれ質点とした振動モデルであり、必要に応じてダンパー要素を加えることができる。
圧延機振動モデルにおいて、m1は上側のバックアップロール2の質量、m4は下側のバックアップロール2の質量、m2は上側のワークロール1の質量、m3は下側のワークロール1の質量を表す。ハウジングと上側のバックアップロール2との間のバネ41のバネ定数k1及びハウジングと下側のバックアップロール2との間のバネ45のバネ定数k5は、ハウジングの剛性及び上側及び下側のバックアップロール2の軸受変形やロールたわみによるバネ定数を示す。また、上側のバックアップロール2と上側のワークロール1との間のバネ42のバネ定数k2は、上側のバックアップロール2と上側のワークロール1との弾性接触変形による剛性に対応する。下側のバックアップロール2と下側のワークロール1との間のバネ44の バネ定数k4は、下側のバックアップロール2と下側のワークロール1との接触弾性変形による剛性に対応する。一方、上側及び下側のワークロール1間のバネ43のバネ定数k3は、上側及び下側のワークロール1により金属帯Sの圧延を行う際の金属帯Sの変形特性から算出されるバネ定数である。さらに、各スタンドF1~F4のロールギャップ制御機10によりバックアップロール2を昇降する機器として油圧圧下装置が使用される場合など、必要に応じて減衰要素46を設けてもよい。
ここで、上側及び下側のワークロール1間のバネ43のバネ定数k3は、上側及び下側のワークロール1間の隙間(ロールギャップ)の変化量に対する圧延荷重の変化量の比により算出することができる。圧延荷重は、初等解析手法である2次元圧延理論を用いて、上側及び下側のワークロール1の偏平変形(例えばHitchcockのロール偏平式)を考慮した計算を行えばよい。2次元圧延理論としては、Orowan理論、Karman理論、Bland & Fordの式、Hillの近似式など、圧延荷重の計算に広く用いられる手法を適用できる。各スタンドF1~F4のミル剛性Kは、ミル空転時に上側及び下側のワークロール1を接触させ、ロールギャップの変化に対して圧延荷重検出器6により検出される圧延荷重の荷重変化の比から求めることができ、これによりミルストレッチカーブ(弾性特性曲線)を得ることができる。バネ定数k3には、基準となる圧延条件として上側及び下側のワークロール1の直径、入側板厚、入側張力、出側張力、被圧延材の変形抵抗、ロールバイト内の摩擦係数を既知の値として、基準となるロールギャップAを設定した場合に、各スタンドF1~F4の弾性特性曲線との連立解として得られる圧延荷重A’を求める。次に、基準となるロールギャップAをロールギャップBに変更した場合の圧延荷重B’を同様にして求める。こうして得られるロールギャップAからBへの変化量に対する、圧延荷重A’からB’への変化量の比をバネ定数k3とすることができる。
上側のバックアップロール2と上側のワークロール1との間のバネ42のバネ定数k2、および下側のバックアップロール2と下側のワークロール1との間のバネ44のバネ定数k4については、2円筒の弾性接触変形に関するヘルツ接触の理論を適用することにより算出できる。ヘルツ接触の理論は、接触する2つの固体間にすべりや摩擦が生じないと仮定した場合の弾性範囲内での接触変形に関する理論解であり、2つの円柱が接触する場合の接触荷重が与えられた場合に、軸心接近量、接触圧力、接触長を求めることができる。このときの軸心接近量と接触荷重との関係を線形近似した係数をバネ定数とすればよい。
一方、各スタンドF1~F4のミル剛性Kは上側のワークロール1と下側のワークロール1とを接触させた状態で測定しているので、上側のワークロール1と下側のワークロール1との間の弾性接触変形に関するバネ定数k3Eをヘルツ接触の理論を適用して計算する。このとき、圧延機のミル剛性Kは、未知のバネ定数k1、k5と、既知のバネ定数k2、k3E、k4から構成される合成バネに相当する。したがって、バネ定数k1、k5の一方の値を算出することができる場合や、両者のバネ定数の比を推定できる場合には、ミル剛性K、バネ定数k2、k3E、k4から、バネ定数k1、k5を算出することができる。通常は、上側のバックアップロール2と下側のバックアップロール2との直径は等しいため、上側のバックアップロール2及び下側のバックアップロール2の曲げ剛性も等価であると考えて、バネ定数k1とk5とは等しいものと仮定してよい。これにより各バネ定数k1~k5を決定することができる。なお、各々のバネ定数の決定方法は、例えば非特許文献1に記載された方法を用いてもよい。
さらに、圧延機振動モデルに減衰要素46を含む場合の減衰係数は、上側のワークロール1と下側のワークロール1とを接触させた状態で、ハウジング4の上部からハンマリング試験を行い、ハウジング4の振動が減衰する挙動から推定することができる。例えば、振幅の減衰挙動を、時間軸に対して指数関数で近似し、その関数式から減衰係数を求めることができる。減衰係数は、各スタンドF1~F4に固有の値であるため、予め特定した減衰係数を固定値として振動解析部34に記憶させておいてもよい。
ところで、マス・バネモデルを構成するバネ要素のバネ定数k1~k5は、金属帯Sを圧延する際の圧延荷重が影響を与える。すなわち、上記の方法により算出するバネ定数k1~k5は、本来は非線形の特性を有するものであるが、金属帯Sを圧延する際の圧延荷重の近傍で線形近似できるものとして算出するのが通常である。そのため、上記のようにして各スタンドF1~F4をマス・バネモデルにより近似した圧延機振動モデルは、金属帯Sを圧延する際の圧延荷重に応じて振動特性が変化する。したがって、本実施形態の振動解析部34では、圧延荷重データ取得部32が取得する圧延荷重が変化する場合に、圧延荷重の操業データに応じて圧延機振動モデルのバネ定数k1~k5を更新する。つまり、振動解析部34は、評価対象ロールが組み込まれた各スタンドF1~F4をマス・バネモデルにより近似した圧延機振動モデルのバネ定数k1~k5を圧延荷重の操業データに応じて最新の値に再設定する。振動解析部34は、圧延荷重の時系列データを圧延荷重データ取得部32から取得して、随時、圧延機振動モデルのバネ定数k1~k5を更新してもよい。ただし、圧延される金属帯Sの寸法や変形抵抗が大きく変動しなければ、圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k5の変化は実用上無視し得るため、一つの金属帯Sに対して、少なくとも圧延荷重の操業データを1回更新すればよい。すなわち、制御用計算機13が金属帯Sの圧延前に設定計算を行うので、設定計算により得られる圧延荷重の設定値を取得して、その値を用いて上記バネ定数k1~k5を更新するようにしてもよい。
そして、振動解析部34は、バネ定数k1~k5を更新した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出する。
つまり、各スタンドF1~F4をマス・バネモデルにより近似した圧延機振動モデルに対して、評価対象ロールに相当する質点要素とバネ要素により結合した他の質点要素との結合を仮想的に開放する。そして、各スタンドF1~F4の圧延機振動モデルを2分割して、分割された圧延機振動モデルの周波数応答をそれぞれに対して算出する。評価対象ロールに相当する質点要素が他の2つの質点要素と結合されている場合には、ステップ1とステップ2との2つのステップに分けて、それぞれのステップに対応する周波数応答を算出する。ステップ1は、一方の質点要素との結合を仮想的に開放して仮想的な外力を作用させた際の周波数応答を算出するステップである。また、ステップ2は、他方の質点要素との結合を仮想的に開放して仮想的な外力を作用させた際の周波数応答を算出するステップである。
図8及び図9を用いて詳しく説明する。図8は、4段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側のワークロール1を評価対象ロールとして選定した場合において、上側のバックアップロール2との結合を仮想的に開放して周波数応答を算出する(ステップ1)例を説明するための図である。図9は、4段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側のワークロール1を評価対象ロールとして選定した場合において、下側のワークロール1との結合を仮想的に開放して周波数応答を算出する(ステップ2)例を説明するための図である。
図8に示すように、上側のワークロール1を表す質点m2の上側で上側のバックアップロール2を表す質点m1と結合するバネ42(バネ定数k2)を結合部C1とする。そして、結合部C1のバネ42を開放した場合に、2つに分割されるマス・バネモデルのそれぞれに対する周波数応答を算出するのがステップ1である。一方、図9に示すように、上側のワークロール1を表す質点m2の下側で下側のワークロール1を表す質点m3と結合するバネ43(バネ定数k3)を結合部C2とする。そして、結合部C2のバネ要素を開放した場合に、2つに分割されるマス・バネモデルのそれぞれに対する周波数応答を算出するのがステップ2である。
ステップ1の周波数応答の算出方法を説明する。図8に示すように、結合部C1を開放すると、マス・バネモデルは、結合部C1よりも上側の振動系M1-1と、結合部C1よりも下側の振動系M1-2とに分割される。振動系M1-1に対しては、結合部C1の上側にある上側のバックアップロール2を表す質点m1に対して上向きの力(外力)fを入力として作用させた場合に、結合部C1の上側にある質点m1の変位を出力とした周波数応答G1(iω)を求める。同様に、結合部C1で分割された振動系M1-2に対しては、結合部C1の下側にある上側のワークロール1を表す質点m2に対して下向きの力(外力)fを入力として作用させた場合に、結合部C1の下側にある質点m2、m3、m4の変位を出力とした周波数応答G2(iω)を求める。ただし、iは虚数単位、ωは角周波数を示す。伝達関数で表す場合には、G(s)、G(s)とする。周波数応答G1(iω)、G2(iω)や伝達関数G(s)、G(s)は、結合部C1を中心とした各スタンドF1~F4の振動挙動を表すものである。
一方、ステップ2の周波数応答の算出について、図9を用いて説明する。結合部C2を開放すると、マス・バネモデルは、結合部C2よりも上側の振動系M2-1と、結合部C2よりも下側の振動系M2-2とに分割される。振動系M2-1に対しては、結合部C2の上側にある上側のワークロール1を表す質点m2に対して上向きの力(外力)fを入力として作用させた場合に、結合部C2の上側にある質点m2、m1の変位を出力とした周波数応答G3(iω)を求める。同様に、結合部C2で分割された振動系M2-2に対しては、結合部C2の下側にある下側のワークロール1を表す質点m3に対して下向きの力(外力)を入力として作用させた場合に、結合部C2の下側にある質点m3、m4の変位を出力とした周波数応答G4(iω)を求める。伝達関数で表す場合には、G(s)、G(s)とする。周波数応答G3(iω)、G4(iω)や伝達関数G(s)、G(s)は、結合部C2を中心とした圧延機の振動挙動を表すものである。
図8および図9の例に対応した伝達関数G(s)、G(s)、G(s)、G(s)は、具体的には以下(1)式~(4)式のように表すことができる。
Figure 0007243944000001
Figure 0007243944000002
Figure 0007243944000003
Figure 0007243944000004
なお、評価対象ロールに相当する質点要素が、一方の質点要素とは結合されているものの、他方の質点要素とは結合されていない場合には、結合されている方の振動系に対する周波数応答を求めればよい。例えば、図7において評価対象ロールとして上側のバックアップロール2を選択する場合には、上側のバックアップロール2の上方では、他の質点要素とは結合されていない。この場合、バネ41(バネ定数k1)が結合部C1となって、結合部C1よりも上側には質点要素を含む振動系が存在しない。したがって、振動系M1-1の伝達関数は
(s)=0
とすればよい。また、結合部C1に対して下側には質点要素を含む振動系M1-2が存在するものの、結合部C1において上側のバックアップロール2に接触する他のロールが存在しないため、
(s)=0
となる。上側のバックアップロールに上側(結合部C1)で接触して、上バックアップロールを振動させる要素が存在しないからである。したがって、評価対象ロールに相当する質点要素が、下側の質点要素とは結合されているものの、上側の質点要素とは結合されていない場合には、結合されている下側の結合部C2に対する振動系M2-1と振動系2-2の伝達関数G(s)、G(s)を求めればよい。
次に、評価対象ロールのあるスタンドが6段式スタンドF5である場合の当該スタンドF5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルについて説明する。
6段式スタンドF5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルは、図10に示すように、上側及び下側のワークロール1、上側及び下側のバックアップロール2、及び上側及び下側の中間ロール3をそれぞれ質点とした振動モデルであり、必要に応じてダンパー要素を加えることができる。
圧延機振動モデルにおいて、m1は上側のバックアップロール2の質量、m6は下側のバックアップロール2の質量、m2は上側の中間ロール3の質量、m5は下側の中間ロール3の質量、m3は上側のワークロール1の質量、m4は下側のワークロール1の質量を表す。ハウジングと上側のバックアップロール2との間のバネ51のバネ定数k1及びハウジングと下側のバックアップロール2との間のバネ57のバネ定数k7は、ハウジングの剛性及び上側及び下側のバックアップロール2の軸受変形やロールたわみによるバネ定数を示す。また、上側のバックアップロール2と上側の中間ロール3との間のバネ52のバネ定数k2は、上側のバックアップロール2と上側の中間ロール3との弾性接触変形による剛性に対応する。また、下側のバックアップロール2と下側の中間ロール3との間のバネ56のバネ定数k6は、下側のバックアップロール2と下側の中間ロール3との弾性接触変形による剛性に対応する。また、上側の中間ロール3と上側のワークロール1との間のバネ53のバネ定数k3は、上側の中間ロール3と上側のワークロール1との弾性接触変形による剛性に対応する。また、下側の中間ロール3と下側のワークロール1との間のバネ55のバネ定数k5は、下側の中間ロール3と下側のワークロール1との弾性接触変形による剛性に対応する。一方、上側及び下側のワークロール1間のバネ54のバネ定数k4は、上側及び下側のワークロール1により金属帯Sの圧延を行う際の金属帯Sの変形特性から算出されるバネ定数である。さらに、スタンドF5のロールギャップ制御機10によりバックアップロール2を昇降する機器として油圧圧下装置が使用される場合など、必要に応じて減衰要素58を設けてもよい。
そして、振動解析部34では、圧延荷重データ取得部32が取得する圧延荷重が変化する場合に、圧延荷重の操業データに応じて圧延機振動モデルのバネ定数k1~k7を更新する。振動解析部34は、圧延荷重の時系列データを圧延荷重データ取得部32から取得して、随時、圧延機振動モデルのバネ定数k1~k7を更新してもよい。ただし、圧延される金属帯Sの寸法や変形抵抗が大きく変動しなければ、圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k7の変化は実用上無視し得るため、一つの金属帯Sに対して、少なくとも圧延荷重の操業データを1回更新すればよい。すなわち、制御用計算機13が金属帯Sの圧延前に設定計算を行うので、設定計算により得られる圧延荷重の設定値を取得して、その値を用いて上記バネ定数k1~k7を更新するようにしてもよい。
そして、振動解析部34は、バネ定数k1~k7を更新した、評価対象ロールのある6段式スタンドF5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出する。
つまり、スタンドF5をマス・バネモデルにより近似した圧延機振動モデルに対して、評価対象ロールに相当する質点要素とバネ要素により結合した他の質点要素との結合を仮想的に開放し、スタンドF5の圧延機振動モデルを2分割して、分割された圧延機振動モデルの周波数応答をそれぞれに対して算出する。評価対象ロールに相当する質点要素が他の2つの質点要素と結合されている場合には、ステップ1とステップ2との2つのステップに分けて、それぞれのステップに対応する周波数応答を算出する。ステップ1は、一方の質点要素との結合を仮想的に開放して仮想的な外力を作用させた際の周波数応答を算出するステップである。ステップ2は、他方の質点要素との結合を仮想的に開放して仮想的な外力を作用させた際の周波数応答を算出するステップである。
図11及び図12を用いて詳しく説明する。図11は、6段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側の中間ロール3を評価対象ロールとして選定した場合において、上側のバックアップロール2との結合を仮想的に開放して周波数応答を算出する(ステップ1)例を説明するための図である。図12は、6段式スタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルにおいて、上側の中間ロール3を評価対象ロールとして選定した場合において、上側のワークロール1との結合を仮想的に開放して周波数応答を算出する(ステップ2)例を説明するための図である。
図11に示すように、上側の中間ロール3を表す質点m2の上側で上側のバックアップロール2を表す質点m1と結合するバネ52(バネ定数k2)を結合部C3とする。そして、結合部C3のバネ52を開放した場合に、2つに分割されるマス・バネモデルのそれぞれに対する周波数応答を算出するのがステップ1である。一方、図12に示すように、上側の中間ロール3を表す質点m2の下側で上側のワークロール1を表す質点m3と結合するバネ53(バネ定数k3)を結合部C4とする。そして、結合部C4のバネ要素を開放した場合に、2つに分割されるマス・バネモデルのそれぞれに対する周波数応答を算出するのがステップ2である。
ステップ1の周波数応答の算出方法を説明する。図11に示すように、結合部C3を開放すると、マス・バネモデルは、結合部C3よりも上側の振動系M3-1と、結合部C3よりも下側の振動系M3-2とに分割される。振動系M3-1に対しては、結合部C3の上側にある上側のバックアップロール2を表す質点m1に対して上向きの力(外力)fを入力として作用させた場合に、結合部C3の上側にある質点m1の変位を出力とした周波数応答G5(iω)を求める。同様に、結合部C3で分割された振動系M3-2に対しては、結合部C3の下側にある上側の中間ロール3を表す質点m2に対して下向きの力(外力)fを入力として作用させた場合に、結合部C3の下側にある質点m2、m3、m4、m5、m6の変位を出力とした周波数応答G6(iω)を求める。ただし、iは虚数単位、ωは角周波数を示す。伝達関数で表す場合には、G(s)、G(s)とする。周波数応答G5(iω)、G5(iω)や伝達関数G(s)、G(s)は、結合部C3を中心としたスタンドF5の振動挙動を表すものである。
一方、ステップ2の周波数応答の算出について、図12を用いて説明する。結合部C4を開放すると、マス・バネモデルは、結合部C4よりも上側の振動系M4-1と、結合部C4よりも下側の振動系M4-2とに分割される。振動系M4-1に対しては、結合部C4の上側にある上側の中間ロール3を表す質点m2に対して上向きの力(外力)fを入力として作用させた場合に、結合部C4の上側にある質点m2、m1の変位を出力とした周波数応答G7(iω)を求める。同様に、結合部C4で分割された振動系M4-2に対しては、結合部C4の下側にある上側のワークロール1を表す質点m3に対して下向きの力(外力)を入力として作用させた場合に、結合部C4の下側にある質点m3、m4、m5、m6の変位を出力とした周波数応答G8(iω)を求める。伝達関数で表す場合には、G(s)、G(s)とする。周波数応答G7(iω)、G8(iω)や伝達関数G(s)、G(s)は、結合部C4を中心とした圧延機の振動挙動を表すものである。
図11および図12の例に対応した伝達関数G(s)、G(s)、G(s)、G(s)は、具体的には以下(5)式~(8)式のように表すことができる。
Figure 0007243944000005
(s)は、分母が、
(m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k+k)(m+k+k)(m+k)-k (m+k+k)(m+k+k)(m+k)-k (m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k)-k (m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k)-k (m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k+k)+k (m+cs+k+k)+k (m+k+k)+k (m+k)、
分子が、
-(m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k+k)(m+k+k)+k (m+k+k)(m+k+k)+k (m+cs+k+k)(m+k+k)+k (m+cs+k+k)(m+k+k)-k
となる(6)式で表せる。
Figure 0007243944000006
(s)は、分母が、
(m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k+k)(m+k)-k {(m+cs+k+k)(m+k+k)-k }-k (m+k+k)(m+k)-k (m+cs+k+k)(m+k)、
分子が、
-(m+cs+k+k)(m+k+k)(m+k+k)+k (m+k+k)+k (m+cs+k+k)、
となる(8)式で表せる。
なお、評価対象ロールに相当する質点要素が、一方の質点要素とは結合されているものの、他方の質点要素とは結合されていない場合には、結合されている方の振動系に対する周波数応答を求めればよい。
次に、初期表面形状取得部35は、評価対象ロールが評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に組み込まれる前の評価対象ロールの初期表面形状を上位計算機14から取得する。
評価対象ロールの初期表面形状とは、評価対象ロールがスタンドF1~F5に組み込まれる前の評価対象ロールの表面の初期振幅を表し、評価対象ロールをロール研削機により研削した後に特定されるパラメータである。具体的には、オペレータが研削後の評価対象ロールの表面形状を測定し、測定される最大径と最小径との差を初期振幅αとして求めることができる。また、評価対象ロールがスタンドF1~F5に組み込まれる前の評価対象ロールの表面形状情報として、ロール研削後の評価対象ロールの周方向の表面プロフィルをフーリエ級数展開によりピッチpごとに初期振幅μ0(p)を特定したものでもよい。この評価対象ロールの初期表面形状は、オペレータが、選定した評価対象ロールの情報を制御用計算機13に入力する際に、オペレータにより制御用計算機13に入力され、上位計算機14を経由して初期表面形状取得部35に送られる。
また、表面形状推定部36は、振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析結果及び周速度データ取得部33が取得した評価対象ロールの周速度の操業データに加えて、初期表面形状取得部35が取得した評価対象ロールの初期表面形状を用いて、評価対象ロールの表面形状を推定する。
ここで、振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析結果は、次のように算出される周波数応答であり、振動解析部34から表面形状推定部36に送られる。つまり、周波数応答の算出に際し、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いる。そして、この圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k7を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データに応じて更新する。周波数応答は、バネ定数k1~k7を更新した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際に算出される。
また、周速度データ取得部33が取得した評価対象ロールの周速度の操業データは、周速度データ取得部33から表面形状推定部36に送られる。
スタンドF1~F5に組み込まれる評価対象ロールは、金属帯Sの圧延中に接触する他の圧延ロールまたは被圧延材である金属帯Sから、周期的な接触荷重を受ける。この場合の周期的な接触荷重は、複数の周波数の振動が合成された負荷として、評価対象ロールに作用する。このような評価対象ロールに対する負荷は、相互に接触する固体間での摩耗を徐々に進行させ、結果として特定の周期の凹凸を発達させて、評価対象ロールの表面形状を多角形化させる場合がある。具体的には、評価対象ロールが接触する他の固体との間で振動周波数に対応する微小な相対すべりが生じ、これによる微小な摩耗が特定のピッチで成長することにより評価対象ロールの表面形状が多角形化するというものである。
表面形状推定部36は、このような複数の周波数の振動が評価対象ロールに付与された場合に、評価対象ロールが、接触する他の固体から受ける損傷度を代表する指標を用いて、金属帯Sの圧延中に形成する評価対象ロールの表面形状を推定する。
表面形状推定部36は、以下に示す「ピッチ性損傷度」と呼ぶパラメータを用いて評価対象ロールの表面形状を推定するものである。「ピッチ性損傷度」とは、振動解析部34において、圧延機振動モデルを用いて算出された各スタンドF1~F5の周波数応答特性と周速度データ取得部33が取得した評価対象ロールの周速度V(m/sec)の操業データとから、評価対象ロールの表面に形成される凹凸のピッチと関係づけられた損傷度を算出するためのパラメータであり、以下のように定義できる。
先ず、評価対象ロールのある4段式スタンドF1~F4をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いて周波数応答を算出した場合、ステップ1で算出される結合部C1に対するピッチ性損傷度Δλ1(p)は、周波数応答G1(iω)、G2(iω)を用いて、次の(9)式により表される。
Figure 0007243944000007
ただし、pは評価対象ロールの表面形状に形成される凹凸の評価ピッチ(m)である。また、k(N/m)は結合部C1におけるバネ定数、ν(m/N)は結合部C1における摩耗進展係数であり、単位荷重が結合部に作用した際の摩耗速度(m/N)である。さらに、T(sec)は評価対象ロールの回転周期である。なお、ω(rad/sec)は評価ピッチpに対応する角周波数であり、周速度データ取得部33が取得した評価対象ロールの周速度V(m/sec)を用いて、次の(10)式の関係がある。
Figure 0007243944000008
ピッチ性損傷度Δλ1(p)は、結合部C1における振動に起因して評価対象ロールの表面に形成されるピッチ性凹凸の摩耗量(損傷度)と対応付けられ、ピッチ性凹凸の振幅に自然対数を作用させて得られた値の単位時間あたりの変化量に相当する。
同様にして、結合部C2に対するピッチ性損傷度Δλ2(p)は、周波数応答G3(iω)、G4(iω)を用いて、次の(11)式により表される。
Figure 0007243944000009
このとき、評価対象ロールは、上下の接触点から振動を受けて表面の凹凸が形成されるため、評価対象ロールのピッチ性損傷度Δλ(p)は、
Δλ(p)=Δλ1(p)+Δλ2(p)
により表すことができる。そして、評価対象ロールのピッチ性損傷度Δλ(p)は、圧延機の振動と共に累積する特性を有し、累積ピッチ性損傷度λ(p)を次の(12)式のように定義する。
Figure 0007243944000010
ここで、Δtは操業データ取得部で取得する圧延ロールの周速度のサンプリング周期である。なお、ピッチ性損傷度Δλ(p)は圧延条件によっては負になる場合もあるが、その場合にはピッチpに対応する凹凸が徐々に小さくなることを意味する。
このように累積ピッチ性損傷度λ(p)が求められると、金属帯を圧延している過程でのピッチpに対応する振幅情報u(p)は、次の(13)式により算出される。
Figure 0007243944000011
ただし、αは、初期表面形状取得部35から入力される評価対象ロールの初期表面形状、即ち、評価対象ロールがスタンドF1~F4に組み込まれる前の評価対象ロールの表面の初期振幅を表し、評価対象ロールをロール研削機により研削した後に特定されるパラメータである。具体的には、オペレータが研削後の評価対象ロールの表面形状を測定し、測定される最大径と最小径との差を初期振幅αとして求めることができる。また、評価対象ロールがスタンドF1~F4に組み込まれる前の評価対象ロールの表面形状情報として、ロール研削後の評価対象ロールの周方向の表面プロフィルをフーリエ級数展開によりピッチpごとに初期振幅μ0(p)を特定したものでもよい。
ピッチpごとに初期振幅μ0(p)を特定した場合、ピッチpに対応する振幅情報u(p)は、次の(14)式により算出することができる。
Figure 0007243944000012
なお、評価対象ロールのある6段式スタンドF5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いて周波数応答を算出した場合、ピッチpに対応する振幅情報u(p)は、前述と同様の手法により算出することができる。
表面形状推定部36の他の態様としては、各スタンドF1~F5の周波数応答および評価対象ロールの周速度の実績データと、評価対象ロールの表面形状との、過去の操業実績に基づいて評価対象ロールの表面形状を推定するようにしてもよい。例えば、振動解析部34で得られる評価対象ロールに対応した周波数応答G(s)、G(s)、G(s)、G(s)、G(s)、G(s)、G(s)、G(s)の実績データ、評価対象ロールの周速度として平均速度、最高速度などの操業実績データ、および金属帯Sの圧延を終了した後に測定される評価対象ロールの表面形状の測定結果とをデータベースにそれらを対応付けて蓄積しておく。そして、金属帯Sを圧延する際に評価対象ロールを設定し、操業データ取得部31でこれらデータを取得し、表面形状推定部36に送るようにしてもよい。
そして、表面形状推定部36で推定された評価対象ロールの表面形状、即ち、評価対象ロールの表面のピッチpに対応する振幅情報u(p)は、表面形状推定部36に接続された適合判定部37に送出される。
適合判定部37は、表面形状推定部36で推定された評価対象ロールの表面形状に基づいて評価対象ロールの適合判定を行う。つまり、適合判定部37は、表面形状推定部36で算出された評価対象ロールの表面のピッチpに対応する振幅情報u(p)の値を参照する。そして、適合判定部37は、評価対象ロールのピッチpに対応する情報u(p)の値が、予め設定されたピッチpに対応した振幅の上限値未満であれば適合(合格)、上限値以上であれば不適合(不合格)と判定する。
なお、予め設定されたピッチpに対応した振幅の上限値は、過去の操業実績やチャタマークの発生実績から、特定のピッチpでの凹凸が成長しやすいことが判明している場合に、予め評価対象ロールの表面形状として設定した、そのようなピッチpに対応した振幅の上限値である。これにより、圧延ロールの交換タイミングを適切に管理することができ、圧延機aの生産能率や作業率の低下を防止できる。
そして、適合判定部37による判定結果は、適合判定部37に接続された表示装置38に送出される。表示装置38は、結果の出力、すなわち適合判定部37による判定結果を表示する。
(圧延ロールの適合判定方法)
本実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法は、圧延ロールの適合判定装置30を用いて、任意のスタンドF1~F5の複数の圧延ロール1,2,3から任意に選定された圧延ロールである評価対象ロールの適合判定を行う。
この適合判定方法について、図6及び図13を参照して説明する。図6は、図5に示す圧延機aの上位計算機14及び適合判定装置30における処理の流れを説明するためのフローチャートである。図13は、図5に示す圧延機aを用いて金属帯Sの連続圧延を行う際の、圧延ロール1,2,3の周速度の変化及び評価対象ロールの適合判定タイミングを示すグラフである。
通常の圧延機aは、複数の金属帯Sを連続的に圧延するため、図13に示す例では、金属帯A、B、Cの順に圧延するものとする。金属帯Aの先端部とその金属帯Aに先行する先行金属帯の尾端部とは溶接により接合されている。そして、その接合部が圧延機aを通過するときのタイミングt1で図6に示す圧延機aの上位計算機14及び適合判定装置30における処理がなされる。
図6における上位計算機14及び適合判定装置30の処理に先立ち、オペレータは、選定した評価対象ロールの情報及びその評価対象ロールの初期表面形状(評価対象ロールの表面の初期振幅α)を制御用計算機13に入力し、その情報が上位計算機14に入力される。選定した評価対象ロールの情報は、スタンドF1~F5のうちの何れのスタンドにおける複数の圧延ロール1,2,3のうち何れの圧延ロールを評価対象ロールとして選定したかの情報である。
そして、上位計算機14は、ステップS1において、上位計算機14に入力された情報に基づき、評価対象ロールを選定する。そして、上位計算機14は、選定した評価対象ロールの情報を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30の操業データ取得部31に送出する。また、上位計算機14は、評価対象ロールの初期表面形状の情報を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30の初期表面形状取得部35に送出する(評価対象ロール選定ステップ)。
次いで、ステップS2において、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30の初期表面形状取得部35は、評価対象ロールの初期表面形状の情報、即ち、評価対象ロールの表面の初期振幅αを上位計算機14から取得する(初期表面形状取得ステップ)。
なお、初期表面形状取得部35は、評価対象ロールの表面形状情報として、ロール研削後の評価対象ロールの周方向の表面プロフィルをフーリエ級数展開によりピッチpごとに初期振幅μ0(p)を特定したものを取得しても良い。
次いで、ステップS3において、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30の圧延荷重データ取得部32は、上位計算機14からの評価対象ロールの選定情報に基づき、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データを制御用コントローラ12から取得する(圧延荷重データ取得ステップ)。
ここで、当該スタンドF1~F5の圧延荷重の操業データは、金属帯Aと先行金属帯との接合部が当該スタンドF1~F5を通過する際の圧延荷重検出器6が検出した圧延荷重の操業データである。ただし、当該スタンドF1~F5の圧延荷重の操業データは、制御用計算機13が設定する圧延荷重の設定値を圧延荷重の操業データとしてもよい。金属帯Aの先端部とその金属帯Aに先行する先行金属帯の尾端部との接合部が圧延機aを通過するときのタイミングt1で、制御用計算機13による金属帯Aを圧延する際の圧延荷重が設定されるからである。
次いで、ステップS4において、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30の周速度データ取得部33は、上位計算機14からの評価対象ロールの選定情報に基づき、評価対象ロールの周速度の操業データを制御用コントローラ12から取得する(周速度データ取得ステップ)。
ここで、周速度データ取得部33が取得する評価対象ロールの周速度の操業データは、ロール速度制御機11の回転速度検出器で検出される上側及び下側のワークロール1の回転速度の実測値から、当該ワークロール1と評価対象ロールとのロール径の比を用いて換算することにより求めたものである。
次いで、ステップS5において、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に設けられた適合判定装置30の振動解析部34は、ステップS3(圧延荷重取得ステップ)で取得した評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データを用いて当該スタンドF1~F5の振動挙動を解析する(振動解析ステップ)。
この振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析では、前述したように、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いる。そして、この圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k5を、ステップS3において取得した評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データに応じて更新する。そして、バネ定数k1~k5を更新した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出する。
ここで、4段式スタンドF1~F4の図8及び図9の例に対応した周波数応答G1(iω)、G2(iω)、G3(iω)、G4(iω)を表す伝達関数G(s)、G(s)、G(s)、G(s)は、前述した(1)式~(4)式により表せる。
また、6段式スタンドF5の図11及び図12の例に対応した周波数応答G5(iω)、G6(iω)、G7(iω)、G8(iω)を表す伝達関数G(s)、G(s)、G(s)、G(s)は、前述した(5)式~(8)式により表せる。
次いで、ステップS6において、表面形状推定部36は、金属帯Sの圧延中に評価対象ロールの表面形状を推定する(表面形状推定ステップ)。評価対象ロールの表面形状の推定に際し、ステップS5(振動解析ステップ)による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析結果を用いる。また、評価対象ロールの表面形状の推定に際し、ステップS4(周速度データ取得ステップ)で取得した評価対象ロールの周速度の操業データを用いる。更に、評価対象ロールの表面形状の推定に際し、ステップS2(初期表面形状取得ステップ)で取得した評価対象ロールの初期表面形状を用いる。
ここで、ステップS5(振動解析ステップ)による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析結果は、次のように算出される周波数応答であり、振動解析部34から表面形状推定部36に送られる。つまり、周波数応答の算出に際し、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いる。そして、この圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k7を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データに応じて更新する。周波数応答は、バネ定数k1~k7を更新した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際に算出される。
また、ステップS4(周速度データ取得ステップ)で取得した評価対象ロールの周速度の操業データは、周速度データ取得部33から表面形状推定部36に送られる。
スタンドF1~F5に組み込まれる評価対象ロールは、金属帯Sの圧延中に接触する他の圧延ロールまたは被圧延材である金属帯Sから、周期的な接触荷重を受ける。この場合の周期的な接触荷重は、複数の周波数の振動が合成された負荷として、評価対象ロールに作用する。このような評価対象ロールに対する負荷は、相互に接触する固体間での摩耗を徐々に進行させ、結果として特定の周期の凹凸を発達させて、評価対象ロールの表面形状を多角形化させる場合がある。具体的には、評価対象ロールが接触する他の固体との間で振動周波数に対応する微小な相対すべりが生じ、これによる微小な摩耗が特定のピッチで成長することにより評価対象ロールの表面形状が多角形化するというものである。
ステップS6において表面形状推定部36は、このような複数の周波数の振動が評価対象ロールに付与された場合に、評価対象ロールが、接触する他の固体から受ける損傷度を代表する指標を用いて、金属帯Sの圧延中に形成する評価対象ロールの表面形状を推定する。
ステップS6において、表面形状推定部36は、前述した「ピッチ性損傷度」と呼ぶパラメータを用いて評価対象ロールの表面形状を推定するものである。「ピッチ性損傷度」とは、ステップS5(振動解析ステップ)において、圧延機振動モデルを用いて算出された各スタンドF1~F5の周波数応答特性とステップS4(周速度データ取得ステップ)で取得した評価対象ロールの周速度の操業データとから、評価対象ロールの表面に形成される凹凸のピッチと関係づけられた損傷度を算出するためのパラメータである。
先ず、評価対象ロールのある4段式スタンドF1~F4をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いて周波数応答を算出した場合、ステップ1で算出される結合部C1に対するピッチ性損傷度Δλ1(p)は、周波数応答G1(iω)、G2(iω)を用いて、前述の(9)式により表される。
また、結合部C2に対するピッチ性損傷度Δλ2(p)は、周波数応答G3(iω)、G4(iω)を用いて、前述の(11)式により表される。
このとき、評価対象ロールは、上下の接触点から振動を受けて表面の凹凸が形成されるため、評価対象ロールのピッチ性損傷度Δλ(p)は、
Δλ(p)=Δλ1(p)+Δλ2(p)
により表すことができる。そして、評価対象ロールのピッチ性損傷度Δλ(p)は、圧延機の振動と共に累積する特性を有し、累積ピッチ性損傷度λ(p)を前述の(12)式のように定義する。
このように累積ピッチ性損傷度λ(p)が求められると、金属帯を圧延している過程でのピッチpに対応する振幅情報u(p)は、前述の(13)式により算出される。
ここで、αは、ステップS2(初期表面形状取得ステップ)で取得した評価対象ロールの初期表面形状、即ち、評価対象ロールがスタンドF1~F4に組み込まれる前の評価対象ロールの表面の初期振幅を表し、評価対象ロールをロール研削機により研削した後に特定されるパラメータである。具体的には、オペレータが研削後の評価対象ロールの表面形状を測定し、測定される最大径と最小径との差を初期振幅αとして求めることができる。また、評価対象ロールがスタンドF1~F4に組み込まれる前の評価対象ロールの表面形状情報として、ロール研削後の評価対象ロールの周方向の表面プロフィルをフーリエ級数展開によりピッチpごとに初期振幅μ0(p)を特定したものでもよい。
ピッチpごとに初期振幅μ0(p)を特定した場合、ピッチpに対応する振幅情報u(p)は、前述の(14)式により算出することができる。
なお、評価対象ロールのある6段式スタンドF5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いて周波数応答を算出した場合、ピッチpに対応する振幅情報u(p)は、前述と同様の手法により算出することができる。
そして、表面形状推定部36で推定された評価対象ロールの表面形状、即ち、評価対象ロールの表面のピッチpに対応する振幅情報u(p)は、表面形状推定部36に接続された適合判定部37に送出される。
そして、ステップS7において、適合判定部37は、表面形状推定部36で推定された評価対象ロールの表面形状に基づいて評価対象ロールの適合判定を行う(適合判定ステップ)。具体的に、適合判定部37は、表面形状推定部36で算出された評価対象ロールの表面のピッチpに対応する振幅情報u(p)の値を参照する。そして、適合判定部37は、評価対象ロールのピッチpに対応する情報u(p)の値が、予め設定されたピッチpに対応した振幅の上限値未満であれば適合(合格)、上限値以上であれば不適合(不合格)と判定する。
なお、予め設定されたピッチpに対応した振幅の上限値は、過去の操業実績やチャタマークの発生実績から、特定のピッチpでの凹凸が成長しやすいことが判明している場合に、予め評価対象ロールの表面形状として設定した、そのようなピッチpに対応した振幅の上限値である。これにより、圧延ロールの交換タイミングを適切に管理することができ、圧延機aの生産能率や作業率の低下を防止できる。
そして、ステップS8において、表示装置38は、結果の出力、すなわちステップS7の判定結果を表示する(表示ステップ)。圧延作業をするオペレータは、評価対象ロールの適合判定結果を表示装置38において確認することができる。
これにより、金属帯Aの先端部とその金属帯Aに先行する先行金属帯の尾端部との接合部が圧延機aを通過するときのタイミングt1における上位計算機14及び適合判定装置30における処理が終了する。
そして、図13において、金属帯Bの先端部とその金属帯Bに先行する金属帯Aの尾端部との接合部が圧延機aを通過するときのタイミングt2において、図6に示す上位計算機14及び適合判定装置30における処理が繰り返される。また、金属帯Cの先端部とその金属帯Cに先行する金属帯Bの尾端部との接合部が圧延機aを通過するときのタイミングt3においても、図6に示す上位計算機14及び適合判定装置30における処理が繰り返される。
このように、本実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法によれば、各々が複数の圧延ロール1,2,3を有する複数のスタンドF1~F5を備える圧延機aにおける、任意のスタンドF1~F5の複数の圧延ロール1,2,3から任意に選定された圧延ロールである評価対象ロールの適合判定を行う。そして、当該適合判定方法は、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データを取得する圧延荷重データ取得ステップ(ステップS3)を含む。また、当該適合判定方法は、評価対象ロールの周速度の操業データを取得する周速度データ取得ステップ(ステップS4)を含む。また、当該適合判定方法は、圧延荷重データ取得ステップ(ステップS3)で取得した評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データを用いて当該スタンドF1~F5の振動挙動を解析する振動解析ステップ(ステップS5)を含む。また、当該適合判定方法は、振動解析ステップ(ステップS5)による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析結果と周速度データ取得ステップ(ステップS4)で取得した評価対象ロールの周速度の操業データとから評価対象ロールの表面形状を金属帯Sの圧延中に推定する表面形状推定ステップ(ステップS6)を含む。また、当該適合判定方法は、表面形状推定ステップ(ステップS6)により推定した評価対象ロールの表面形状に基づいて評価対象ロールの適合判定を行う適合判定ステップ(ステップS7)を含む。
これにより、オンライン中に評価対象ロールの表面形状を推定することで、圧延中に生じる評価対象ロールの多角形摩耗の状態をオンラインで推定し、その推定した多角形摩耗の状態に基づいて圧延ロールの適合判定を行い、多角形摩耗による生じる軽度のチャタマークを防止することができる。
また、本実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法によれば、評価対象ロールが評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に組み込まれる前の評価対象ロールの初期表面形状を取得する初期表面形状取得ステップ(ステップS2)を含む。そして、表面形状推定ステップ(ステップS6)では、振動解析ステップ(ステップS5)による評価対象ロールのあるスタンドの振動挙動の解析結果及び周速度データ取得ステップ(ステップS4)で取得した評価対象ロールの周速度の操業データに加えて、初期表面形状取得ステップ(ステップS2)で取得した評価対象ロールの初期表面形状を用いて、金属帯Sの圧延中に評価対象ロールの表面形状を推定する。
これにより、評価対象ロールの表面形状をより的確に推定することができる。
また、本実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法によれば、評価対象ロールの表面形状は、評価対象ロールの表面に形成される凹凸のピッチpと対応付けられた振幅情報u(p)である。
これにより、圧延中に生じる評価対象ロールの多角形摩耗の状態を的確に表す評価対象ロールの表面に形成される凹凸のピッチpと対応付けられた振幅情報u(p)を推定することになり、多角形摩耗による生じる軽度のチャタマークを適切に防止することができる。
また、本実施形態に係る圧延ロールの適合判定方法によれば、振動解析ステップ(ステップS5)による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析は、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いる。そして、圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k7を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データに応じて更新する。そして、バネ定数k1~k7が更新された圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出する。
これにより、各スタンドF1~F4をマス・バネモデルにより近似した圧延機振動モデルが圧延荷重に応じて振動特性が変化することに対応して、周波数応答を算出することができ、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動のより適切な解析結果を得ることができる。
(金属帯の圧延方法)
また、本実施形態に係る金属帯の圧延方法は、前述の圧延ロールの適合判定方法を用いて金属帯Sの圧延中に評価対象ロールの適合判定を行い、適合判定の結果が不適合である場合に、評価対象ロールを新たな圧延ロールに組み替えて金属帯Sの圧延を行うものである。
つまり、前述の圧延ロールの適合判定方法によって評価対象ロールが不適合と判定された場合には、一旦圧延機aを停止する。そして、少なくとも不適合とされた評価対象ロールを該当スタンドF1~F5から抜き出して、ロール研削機で研削済の新たな圧延ロールに組み替えた後に、金属帯Sの圧延を再開するようにしてよい。これにより、金属帯Sの表面にチャタマークを発生するのを防止することができ、歩留まりのよい金属帯Sを製造することができる。
(冷延鋼板の製造方法)
そして、前述の金属帯の圧延方法を用いて冷延鋼板を製造することが好ましい。つまり、前述の金属帯Sとして冷延鋼板を対象とすることが好適である。冷延鋼板は表面の外観が均一であることが求められ、軽度のチャタマークであっても表面欠陥と判定されるためである。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、本実施形態においては、圧延機aは、スタンドの数が5つで、スタンドF1~F4を4段圧延機、スタンドF5を6段圧延機としてあるが、スタンドの数は5つに限定されない。また、複数のスタンドのうちいずれのスタンドを4段圧延機あるいは6段圧延機とするかは適宜決定することができる。
また、適合判定装置30は、評価対象ロールが評価対象ロールのあるスタンドF1~F5に組み込まれる前の評価対象ロールの初期表面形状を取得する初期表面形状取得部35を備える必要は必ずしもない。そして、表面形状推定部36は、振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析結果及び周速度データ取得部33で取得した評価対象ロールの周速度の操業データに加えて、初期表面形状取得部35で取得した評価対象ロールの初期表面形状を用いて、評価対象ロールの表面形状を推定する必要は必ずしもない。
また、表面形状推定部36が推定する評価対象ロールの表面形状は、記評価対象ロールの表面に形成される凹凸のピッチpと対応付けられた振幅情報u(p)である必要は必ずしもない。
また、振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の振動挙動の解析は、評価対象ロールのあるスタンドF1~F5をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用い、圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k7を評価対象ロールのあるスタンドF1~F5の圧延荷重の操業データに応じて更新し、バネ定数k1~k7が更新された圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出するものである必要は必ずしもない。
本発明の実施例として、前段3スタンドF1~F3が4段圧延機で、最終スタンドF4が6段圧延機である4スタンドF1~F4の圧延機(タンデム圧延機)aを対象とした例について説明する。
本実施例では評価対象ロールとして、4段式圧延機である3番目のスタンドF3の上側のバックアップロール2を選定した。評価対象ロールの直径は1370mmである。なお、このスタンドF3の上側及び下側のワークロール1は直径480~550mmの範囲であり、複数のワークロール1を随時交換しながら、複数の金属帯Sの圧延を行った。評価対象ロールは鍛鋼性のロールであり、ロール研削機により中心線平均粗さを0.8μmRaに仕上げてからスタンドF3に装入した。なお、ロール研削後に評価対象ロールの周方向における凹凸を測定した結果、最大の振幅が0.1μmであったことから、評価対象ロールの表面の初期振幅αを0.1μmとした。
圧延機aによって圧延される金属帯Sは、極低炭素鋼や高強度鋼板などを含む、シート系冷延鋼板である。圧延速度(最終スタンドF4の上側及び下側のワークロール1の周速度)は最低速度が200m/min、最高速度が1300m/minであり、被圧延材である金属帯Sのサイズ(板厚、板幅、母材長さ)や鋼種に応じて制御用計算機13により設定される最高速度で圧延を行った。ただし、圧延機aへの金属帯Sの供給状況などに応じて、オペレータの判断により金属帯の圧延中に圧延速度は適宜再設定が行われた。
本実施例では、オペレータは、選定した評価対象ロールの情報(3番目のスタンドF3の上側のバックアップロール2を評価対象ロールとした情報)及びその評価対象ロールの初期表面形状(評価対象ロールの表面の初期振幅αが0.1μmである)を制御用計算機13に入力し、その情報が上位計算機14に入力される。
そして、上位計算機14は、ステップS1において、上位計算機14に入力された情報に基づき、評価対象ロールを選定し、選定した評価対象ロールの情報を評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の操業データ取得部31に送出した。また、上位計算機14は、評価対象ロールの初期表面形状の情報を評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の初期表面形状取得部35に送出した。
次いで、評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の初期表面形状取得部35は、ステップS2において、評価対象ロールの初期表面形状の情報、即ち、評価対象ロールの表面の初期振幅α(=0.1μm)を上位計算機14から取得した。
次いで、評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の圧延荷重データ取得部32は、ステップS3において、上位計算機14からの評価対象ロールの選定情報に基づき、評価対象ロールのあるスタンドF3の圧延荷重の操業データを制御用コントローラ12から取得した。
ここで、当該スタンドF3の圧延荷重の操業データは、当該スタンドF3を対象として、先行金属帯と後行金属帯との接合部を有する後行金属帯を連続圧延する際に、後行金属帯の先端部が圧延機aを通過する前に実行される制御用計算機13による設定計算の結果から、圧延荷重の設定値は5000kN~25000kNであった。
次いで、評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の周速度データ取得部33は、ステップS4において、上位計算機14からの評価対象ロールの選定情報に基づき、評価対象ロールの周速度の操業データを制御用コントローラ12から取得した。
ここで、周速度データ取得部33が取得する評価対象ロールの周速度の操業データは、ロール速度制御機11の回転速度検出器で検出される上側及び下側のワークロール1の回転速度の実測値から、当該ワークロール1と評価対象ロールとのロール径の比を用いて換算することにより求めた。
次いで、評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の振動解析部34は、ステップS5において、ステップS3で取得した評価対象ロールのあるスタンドF3の圧延荷重の操業データを用いて当該スタンドF3の振動挙動を解析した。
この振動解析部34による評価対象ロールのあるスタンドF3の振動挙動の解析では、評価対象ロールのあるスタンドF3をマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用いた。そして、この圧延機振動モデルにおけるバネ定数k1~k5を、ステップS3において取得した評価対象ロールのあるスタンドF3の圧延荷重の操業データに応じて更新した。そして、バネ定数k1~k5を更新した圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出した。
ここで、振動解析部34は、評価対象ロールのある3番目のスタンドF3の上側のバックアップロール2を表す質点m1とバネ41,42により結合した他の質点との結合を仮想的に開放し、スタンドF3のマス・バネモデルを2分割して、分割されたマス・バネモデルの周波数応答をそれぞれに対して算出した。上側のバックアップロール2を表す質点m1とバネ41により結合した他の質点については、質点m1の上側には圧延ロールがないため質点が存在していない。また、上側のバックアップロール2を表す質点m1とバネ42により結合した他の質点については、質点m1の下側は上側のワークロール1が存在するため上側のワークロール1を表す質点m2である。
上側のバックアップロール2に対してさらに上方から接触する圧延ロールが存在しないため、周波数応答G1(iω)、G2(iω)、G3(iω)、G4(iω)を表す伝達関数G(s)、G(s)、G(s)、G(s)は、それぞれ以下の(15)式~(18)式で構成された。
(s)=0 ・・・(15)
(s)=0 ・・・(16)
Figure 0007243944000013
Figure 0007243944000014
次いで、評価対象ロールのあるスタンドF3に設けられた適合判定装置30の表面形状推定部36は、ステップS6において、金属帯Sの圧延中に評価対象ロールの表面形状を推定した。評価対象ロールの表面形状の推定に際し、ステップS5による評価対象ロールのあるスタンドF3の振動挙動の解析結果(周波数応答)及びステップS4で取得した評価対象ロールの周速度の操業データを用いた。また、評価対象ロールの表面形状の推定に際し、ステップS2で取得した評価対象ロールの初期表面形状をも用いた。
つまり、表面形状推定部36は、ピッチ性損傷度Δλ1(p)を前述の(9)式により算出し、ピッチ性損傷度Δλ2(p)を前述の(11)式により算出した。また、評価対象ロールのピッチ性損傷度Δλ(p)を、λ(p)=Δλ1(p)+Δλ2(p)により算出し、評価対象ロールの累積ピッチ性損傷度λ(p)を(12)により算出した。さらに、ピッチpに対応する振幅情報u(p)を、初期振幅αを用いて(13)式により算出した。なお、ピッチ性損傷度Δλ1(p)、Δλ2(p)を算出する際の摩耗進展係数νは1.0×10-14m/Nとした。
本実施例では、評価対象ロールの表面形状として、過去に金属帯Sに発生したチャタマークのピッチが25mmであったことから、ピッチpが25mmにおける振幅に着目した。そして、適合判定部37は、表面形状推定部36により随時算出されるピッチpに対応する振幅情報u(p)の値を参照し、評価対象ロールのピッチ25mmにおける振幅が3.0μm未満であれば適合(合格)、3.0μm以上であれば不適合(不合格)と判定するようにした。
適合判定部37による判定結果は表示装置38に表示した。
本実施例では、金属帯Sの圧延総重量が50,000トンになった段階で、評価対象ロールのピッチ25mmにおける振幅が3.0μmになったと推定されたため、適合判定部37は不適合と判定し、その判定結果が表示装置38に表示された。このため、オペレータは、表示装置38に表示された判定結果に基づいて、一旦圧延を中止した。その後、オペレータが3番目のスタンドF3の上側のバックアップロール2を当該スタンドF3から抜き出して表面形状を測定したところ、ピッチ25mmの振幅が3.2μmとなっており、評価対象ロールの不適合を精度よく判定できたことが確認できた。
一方、スタンドF3の上側及び下側のバックアップロール2および上側及び下側のワークロール1を新たに研削したロールに組み替えてから、上記と同様の方法により、金属帯Sの圧延を行った。その際、スタンドF3の上側のバックアップロール2だけでなく、下側のバックアップロール2も評価対象ロールに加えて、適合判定部37ではピッチ25mmの振幅として2.5μmを上限値とする基準を設定した。
そして、上記と同様の金属帯Sを被圧延材として連続圧延を実施し、評価対象ロールとした3番目のスタンドF3の上側のバックアップロール2または下側のバックアップロール2のいずれかの表面形状としてピッチ25mmに対応する振幅が2.5μmを超えた場合にスタンドF3の上側のバックアップロール2および下側のバックアップロール2を研削済の新たな圧延ロールに交換して金属帯Sの圧延を継続した。その結果、予め設定された圧延総重量となった時点でバックアップロールを交換するという従来の操業方法に比べて、金属帯Sのチャタマーク発生率が約70%低減された。
1 ワークロール(圧延ロール)
2 バックアップロール(圧延ロール)
3 中間ロール(圧延ロール)
4 ハウジング
5 振動計
6 圧延荷重検出器
7 板厚計
8 テンションメータロール
9 ワークロール駆動装置
10 ロールギャップ制御機
11 ロール速度制御機
12 制御用コントローラ
13 制御用計算機
14 上位計算機
21 チャック
22 レスト
23 ロール回転装置
24 芯押し台
25 モータ
26 変位計
27 計測器ロガー
30 圧延ロールの適合判定装置
31 操業データ取得部
32 圧延荷重データ取得部
33 周速度データ取得部
34 振動解析部
35 初期表面形状取得部
36 表面形状推定部
37 適合判定部
38 表示装置
41~45 バネ
46 減衰要素
51~57 バネ
58 減衰要素
a 圧延機
F1~F5 スタンド
S 金属帯

Claims (13)

  1. 各々が複数の圧延ロールを有する1又は複数のスタンドを備える圧延機における、任意の前記スタンドの前記複数の圧延ロールから任意に選定された圧延ロールである評価対象ロールの適合判定を行う圧延ロールの適合判定方法であって、
    前記評価対象ロールのあるスタンドの圧延荷重の操業データを取得する圧延荷重データ取得ステップと、
    前記評価対象ロールの周速度の操業データを取得する周速度データ取得ステップと、
    前記圧延荷重データ取得ステップで取得した前記評価対象ロールのあるスタンドの圧延荷重の操業データを用いて当該スタンドの振動挙動を解析する振動解析ステップと、
    該振動解析ステップによる前記評価対象ロールのあるスタンドの振動挙動の解析結果と前記周速度データ取得ステップで取得した前記評価対象ロールの周速度の操業データとから前記評価対象ロールの表面形状を金属帯の圧延中に推定する表面形状推定ステップと、
    該表面形状推定ステップにより推定した前記評価対象ロールの表面形状に基づいて前記評価対象ロールの適合判定を行う適合判定ステップと、
    を含むことを特徴とする圧延ロールの適合判定方法。
  2. 前記評価対象ロールが前記評価対象ロールのあるスタンドに組み込まれる前の前記評価対象ロールの初期表面形状を取得する初期表面形状取得ステップを含み、
    前記表面形状推定ステップでは、前記振動解析ステップによる前記評価対象ロールのあるスタンドの振動挙動の解析結果及び前記周速度データ取得ステップで取得した前記評価対象ロールの周速度の操業データに加えて、前記初期表面形状取得ステップで取得した前記評価対象ロールの初期表面形状を用いて、前記評価対象ロールの表面形状を金属帯の圧延中に推定することを特徴とする請求項1に記載の圧延ロールの適合判定方法。
  3. 前記評価対象ロールの表面形状は、前記評価対象ロールの周方向の位置と、断面形状の真円からの偏差量の関係をフーリエ級数展開して得られるフーリエ係数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延ロールの適合判定方法。
  4. 前記振動解析ステップによる前記評価対象ロールのあるスタンドの振動挙動の解析は、前記評価対象ロールのあるスタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用い、該圧延機振動モデルにおけるバネ定数を前記評価対象ロールのあるスタンドの圧延荷重の操業データに応じて更新し、バネ定数が更新された前記圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延ロールの適合判定方法。
  5. 請求項1又は2に記載の圧延ロールの適合判定方法を用いて金属帯の圧延中に前記評価対象ロールの適合判定を行い、適合判定の結果が不適合である場合に、前記評価対象ロールを新たな圧延ロールに組み替えて前記金属帯の圧延を行うことを特徴とする金属帯の圧延方法。
  6. 請求項5に記載の金属帯の圧延方法を用いて冷延鋼板を製造することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
  7. 前記振動解析ステップによる前記評価対象ロールのあるスタンドの振動挙動の解析は、前記評価対象ロールのあるスタンドをマス・バネ系で近似した圧延機振動モデルを用い、該圧延機振動モデルにおけるバネ定数を前記評価対象ロールのあるスタンドの圧延荷重の操業データに応じて更新し、バネ定数が更新された前記圧延機振動モデルに対して仮想的な外力を与えた際の周波数応答を算出するものであることを特徴とする請求項3に記載の圧延ロールの適合判定方法。
  8. 請求項3に記載の圧延ロールの適合判定方法を用いて金属帯の圧延中に前記評価対象ロールの適合判定を行い、適合判定の結果が不適合である場合に、前記評価対象ロールを新たな圧延ロールに組み替えて前記金属帯の圧延を行うことを特徴とする金属帯の圧延方法。
  9. 請求項4に記載の圧延ロールの適合判定方法を用いて金属帯の圧延中に前記評価対象ロールの適合判定を行い、適合判定の結果が不適合である場合に、前記評価対象ロールを新たな圧延ロールに組み替えて前記金属帯の圧延を行うことを特徴とする金属帯の圧延方法。
  10. 請求項7に記載の圧延ロールの適合判定方法を用いて金属帯の圧延中に前記評価対象ロールの適合判定を行い、適合判定の結果が不適合である場合に、前記評価対象ロールを新たな圧延ロールに組み替えて前記金属帯の圧延を行うことを特徴とする金属帯の圧延方法。
  11. 請求項8に記載の金属帯の圧延方法を用いて冷延鋼板を製造することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
  12. 請求項9に記載の金属帯の圧延方法を用いて冷延鋼板を製造することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
  13. 請求項10に記載の金属帯の圧延方法を用いて冷延鋼板を製造することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
JP2022574353A 2021-11-02 2022-09-20 圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法 Active JP7243944B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021179344 2021-11-02
JP2021179344 2021-11-02
PCT/JP2022/034960 WO2023079850A1 (ja) 2021-11-02 2022-09-20 圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP7243944B1 true JP7243944B1 (ja) 2023-03-22
JPWO2023079850A1 JPWO2023079850A1 (ja) 2023-05-11
JPWO2023079850A5 JPWO2023079850A5 (ja) 2023-10-03

Family

ID=85685011

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022574353A Active JP7243944B1 (ja) 2021-11-02 2022-09-20 圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7243944B1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS50159453A (ja) * 1974-06-14 1975-12-24
JPH05115906A (ja) * 1991-10-28 1993-05-14 Kawasaki Steel Corp 差荷重によるワ−クロ−ル面荒れ検出方法
JPH08132110A (ja) * 1994-11-11 1996-05-28 Sumitomo Metal Ind Ltd 圧延機のチャタリング検出装置
JPH105837A (ja) * 1996-06-14 1998-01-13 Nippon Steel Corp 冷間タンデム圧延方法および冷間タンデム圧延設備

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS50159453A (ja) * 1974-06-14 1975-12-24
JPH05115906A (ja) * 1991-10-28 1993-05-14 Kawasaki Steel Corp 差荷重によるワ−クロ−ル面荒れ検出方法
JPH08132110A (ja) * 1994-11-11 1996-05-28 Sumitomo Metal Ind Ltd 圧延機のチャタリング検出装置
JPH105837A (ja) * 1996-06-14 1998-01-13 Nippon Steel Corp 冷間タンデム圧延方法および冷間タンデム圧延設備

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2023079850A1 (ja) 2023-05-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Yun et al. Review of chatter studies in cold rolling
Jayakumar et al. A review of the application of acoustic emission techniques for monitoring forming and grinding processes
DE102020210967A1 (de) Verfahren und System zur Optimierung eines Produktionsprozesses in einer Produktionsanlage der metallerzeugenden Industrie, der Nicht-Eisen-Industrie oder der Stahlindustrie zur Herstellung von Halbzeugen oder Fertigerzeugnissen, insbesondere zur Überwachung von Produktqualitäten von gewalzten oder geschmiedeten Metallerzeugnissen
JP7131714B2 (ja) 圧延機の振動予測方法、圧延機の異常振動判定方法、金属帯の圧延方法、及び圧延機の振動予測モデルの生成方法
JP7243944B1 (ja) 圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法
CN106960066B (zh) 一种热连轧机组成品机架工作辊表面粗糙度预报方法
WO2023079850A1 (ja) 圧延ロールの適合判定方法、金属帯の圧延方法及び冷延鋼板の製造方法
Ubici et al. Identification and countermeasures to resolve hot strip mill chatter
JP4990747B2 (ja) 調質圧延方法
RU2338609C1 (ru) Способ диагностики резонансной вибрации и управления многоклетьевым станом холодной прокатки полос и устройство для его осуществления
JP6841264B2 (ja) 冷間圧延における異常振動検出方法
JP2755782B2 (ja) 圧延ラインの総合診断システム
KR20240073071A (ko) 압연 롤의 적합 판정 방법, 금속대의 압연 방법 및 냉연 강판의 제조 방법
JP7184223B1 (ja) 圧延機の異常振動検出方法、異常検出装置、圧延方法および金属帯の製造方法
JP7103550B1 (ja) 圧延機の異常振動検出方法、異常検出装置、圧延方法および金属帯の製造方法
JP7092260B2 (ja) 被圧延材の蛇行制御方法
JP7332077B1 (ja) ロール研削機の異常振動予測方法、圧延ロールの研削方法、金属帯の圧延方法、ロール研削機の異常振動予測装置及びロール研削設備
WO2023228483A1 (ja) ロール研削機の異常振動予測方法、圧延ロールの研削方法、金属帯の圧延方法、ロール研削機の異常振動予測装置及びロール研削設備
JP6057774B2 (ja) 圧延機におけるミル伸び式の同定方法
CN114570774B (zh) 一种轧机的轧制力计算方法和装置
Kozhevnikova et al. Cold rolling with vibration of the working rollers
Valíček et al. Method of maintaining the required values of surface roughness and prediction of technological conditions for cold sheet rolling
CN112207136B (zh) 一种基于轧机扭振测试分析的板带恒张力活套控制方法
Dragomir et al. Control process for a cold rolling mill by vibrations and torque
Nikula et al. The effect of steel leveler parameters on vibration features

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221202

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221202

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20221202

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230207

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230220

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7243944

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150