JP7243371B2 - エンジンの診断装置 - Google Patents

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Description

この発明は、エンジンの診断装置に関する。
一般に、エンジンで生じる排気ガスを浄化するために、触媒を備えた排気浄化装置が備えられている。この触媒は、エンジンにおいて酸素と燃料とが過不足なく反応する理論空燃比(ストイキオメトリ)に近い条件で燃焼されている際に、有効に機能するように設計される。エンジン内で実際に燃焼される酸素と燃料との比である空燃比を理論空燃比に近づけるように制御するため、エンジンの排気通路の排気浄化装置より上流に第一空燃比センサ(リニア空燃比センサ/Linear Air Fuel Ratio Sensor)を設け、この空燃比センサの値を目標とする空燃比に一致させるように、エンジンへの燃料供給量を制御するメインフィードバック制御を実施している。
ただし、排気浄化装置より上流にある第一空燃比センサは、得られる値の変動が激しい。これを是正するため、排気浄化装置より下流に設けた第二空燃比センサの値に基づいて、メインフィードバック制御が行う制御の値を補完するサブフィードバック制御も行われている。
フィードバック制御により実空燃比が目標空燃比に近づくように調節しているにも拘わらず、実空燃比が目標空燃比から大きくかけ離れた値となる場合には、燃料系に何らかの故障が発生している可能性が高い。また、燃料系に故障が生じていなくても、個々のエンジンごとに個体差があり、経年劣化による影響もある。さらにはエンジン開始の度に微妙な差異を生じることもある。これら様々な影響により目標空燃比からのずれが生じるが、そのずれ量を学習し補正することで、上記の影響を抑制することが行われている。
例えば実空燃比と目標空燃比との差の積算値と、積算値の定常成分である学習値とを算出し、この積算値と学習値に基づいて故障の発生を診断する診断装置が特許文献1に提案されている。
長期的なずれを補正する長期学習値と、短期的なずれを補正するリアルタイム燃料補正量とを組み合わせることで、そのときどきの実空燃比のずれを把握して適切に補正し、また、その組み合わせた値が閾値以上であれば燃料系の故障であると判定することができる。
特開2017-210944号公報
空燃比を補正する長期学習値を学習する際には、まず自動車の購入直後やバッテリーリセット実施後などの初期状態では、データが空白の状態であるため、速やかに初期学習期間を確保して車両個体差やエンジンの癖などを踏まえた運用を実現する。また、初期学習期間は十分な長さを確保するため、初期不良なども検知しやすい。
だが、初期学習が終わった後は、定期的に通常学習を行うものの、この通常学習を行う学習期間は初期学習期間に比べて短くして運用される。燃料タンク内に残存する燃料蒸散ガスは炭化水素の含有量が高いためそのまま大気開放することはできず、一旦活性炭に吸着させる。その後、エンジンの負圧を利用して活性炭から脱離させて消費すること(パージ導入)が行われている。この負圧による脱離を行う際には、検出する空燃比は燃料蒸散ガスの影響も含んでおり学習補正すべき量を演算することができないため、学習を行っている間はこのパージ導入を停止しなければならない。ゆえに、燃料蒸散ガスの処理を進めるためには、長期間の学習期間を確保することは難しい。
しかしながら、通常学習を行う学習期間が短いことで、目標空燃比からのずれを検知することが難しくなるという問題がある。すると、長期学習値を参照して故障か否かを判定しようとしても、故障の影響が長期学習値に十分に反映されるまでに期間がかかりすぎてしまった。
そこでこの発明は、空燃比故障が発生したときに、長期学習値に基づいて行う故障の判定が確定できるまでの期間を短縮することを目的とする。
この発明は、上記の課題を解決するために、
車両に搭載されたエンジンから引き出された排気通路に設けられ、前記排気通路内の実空燃比を検出する第一空燃比検出手段と、
前記第一空燃比検出手段で得られた情報に基づいて、前記実空燃比が予め設定された目標空燃比となるように前記エンジンへの燃料の噴射量をフィードバック制御するメインフィードバック制御手段と、
第1間隔で前記実空燃比と前記目標空燃比とのズレを補正するリアルタイム燃料補正量と、前記第1間隔より長い第2間隔で前記リアルタイム燃料補正量に基づいて前記実空燃比と前記目標空燃比とのズレを補正する長期学習値と、を合わせた合計補正量に従って、前記目標空燃比を修正する目標値制御手段と、
前記車両の起動後、初回の学習の際は第一期間に設定された初期学習期間に亘って前記リアルタイム燃料補正量に応じて前記長期学習値を補正する初期学習手段と、
前記初回の学習が完了した後に、インターバルを空けて行う二回目以降の学習の際には前記第一期間より短い第二期間に設定された通常学習期間に亘って前記リアルタイム燃料補正量に応じて前記長期学習値を補正する通常学習手段と、
前記長期学習値、又は前記合計補正量の値に基づいて故障判定を行う故障判定手段と、
前記リアルタイム燃料補正量、前記長期学習値、及び前記合計補正量の内、少なくとも1つが、リッチ側又はリーン側の所定の判定開始値を超えてリッチ又はリーンである期間が連続する所定の判定確認期間に亘って超えたとき、割込学習を行って前記長期学習値を補正する割込学習手段と、を備える、
エンジンの診断装置を採用した。
所定の判定開始値を超えて、燃料系の故障が疑われる状況になったら、通常学習手段による故障の検知に先んじて割込学習を行うことで、長期学習値を適切に修正する。これにより、通常学習の完了を待たずして故障を検知することができるようになる。
ここで、前記割込学習を行う期間である割込学習期間が、前記初期学習期間よりも長い構成を採用することができる。割込学習期間を十分に長く確保することで、十分なデータを集めることができれば、中途半端な学習を繰り返すよりも結果的に早く故障を検知することができる場合がある。このため、故障が疑われるタイミングで発動する割込学習を実行する期間は、初期学習期間よりも長く確保し、確実に故障を捉えられるようにすることが望ましい。なお、割込学習中に運転状況が変化したら、期間のカウントを一時停止し、定常状態に戻ったら途中から割込学習を再開するとよい。
また、前記割込学習を一度行った場合、前記割込学習の実行に繋がる要素を停止し、前記割込学習の後には前記インターバルを空けて前記通常学習手段を実行する構成を採用することができる。一度割込学習を行ったら、故障に到達しているか否かの判定は高い精度で終わるので、その後はインターバルを設けて、通常学習を定期的に行えば多くの状況変化に適切に対応できる。インターバルは特に限定されないが、10~30分ほどが考えられる。
さらに、前記長期学習値が、リッチ側又はリーン側に設定された限界値に到達していた場合、前記割込学習の実行に繋がる要素を停止する構成を採用できる。限界値に到達した段階で故障である可能性が高く、それ以上の学習は限界値に張り付いたままであるため、割込学習をそれ以上繰り返す意味がほとんどなくなってしまう。このため、燃料蒸散ガスの処理のために、割込学習をそれ以上行わないようにすると良い。
この発明にかかる診断装置でエンジンを診断することで、故障確定に至るまでの車両運転期間を短縮することができる。
この発明の一の実施形態例を示すエンジンの診断装置を模式的に示す全体図 診断内容の概略を示すフローチャート 具体的な診断情報の関係を示す遷移図
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1はこの発明のエンジン1の診断装置の構成を示す全体図である。
車両に搭載されたエンジン1は自動車用の四気筒エンジンである。図1に示すように、シリンダ2を4つ並列に備えており、それぞれのシリンダ2内に混合気を送り込む吸気ポート(図示せず)に通じる吸気通路4、排気ポート(図示せず)から引き出された排気通路5、筒内噴射装置10等を備えている。
なお、図1では、エンジン1近傍及びこれらに関係する選択した部材、手段のみを示し、他の部材等については図示省略している。また、図面では、4つのシリンダ2を備えた例を示しているが、エンジンは、2気筒であってもよいし、気筒の配置は一列でなくてもよい。
吸気通路4の分岐する前の上流には、流路面積を調整するスロットルバルブ3が設けられ、吸気量を調整可能としている。
個々の排気通路5が合流した箇所に、実空燃比を検出する第一空燃比検出手段(Oセンサ)12が取り付けられている。合流した排気通路11の先には、下流側へ向かって、排気中の窒素酸化物等を除去する触媒等を備えた排気浄化部13、さらにその下流側にマフラ15等が設けられる。
スロットルバルブ3、及び筒内噴射装置10を含むエンジンの動作に必要な機器は、それぞれこのエンジン1を搭載する車両が備える電子制御ユニット(Electronic Control Unit)30によって制御される。また、第一空燃比検出手段12等からの各種情報は、電子制御ユニット30に伝達される。
電子制御ユニット30は、スロットルバルブ3を制御して吸気通路4の吸気量を調整する。また、筒内噴射装置10からシリンダ2に噴射する燃料の量を制御する。これらの調整により、実空燃比を理論空燃比であるストイキオメトリに向けて調整したり、燃料の多いリッチ側に調整したり、燃料の少ないリーン側に調整したりする制御を実現する。
噴射された燃料は吸気通路4からの吸入空気と混合され、シリンダ2内に混合気が形成される。シリンダ2内に設けられた点火プラグ(図示せず)を点火させることで混合気が燃焼し、エンジントルクを発生させる。個々のシリンダ2の排気は排気通路5へ排出され、排気通路11へ合流した後、排気浄化部13で浄化された後、マフラ15を通じて排出される。
電子制御ユニット30は、車両の運転状況に応じて、第一空燃比検出手段12の情報に基づいて、実空燃比が目標空燃比となるようにメインフィードバック制御を行う。この制御は、電子制御ユニット30が備えるメインフィードバック制御手段31が、筒内噴射装置10による燃料の噴射量を調整することにより行う。
電子制御ユニット30は、リアルタイム燃料補正量と長期学習値とを合わせた合計補正量に従って、前記目標空燃比を調整する目標値制御手段32を実行する。前記リアルタイム燃料補正量は前記実空燃比と前記目標空燃比との短期的なズレ(第1間隔でのズレ)を補正するものである。一方、前記長期学習値は、前記リアルタイム燃料補正量を元に前記実空燃比と前記目標空燃比との長期的なズレ(前記第1間隔より長い第2間隔)を補正するものである。リアルタイム燃料補正量がリッチ側に偏り続けていたら、その偏りを長期学習値に移し替えておき、リアルタイム燃料補正量が対応すべき短期的な挙動への自由度を上げる。長期学習値にはリアルタイム燃料補正量の偏りが蓄積されることになる。
電子制御ユニット30は、車両の起動後に、前記長期学習値の初回の学習として、前記リアルタイム燃料補正量に応じて補正する初期学習を行うため、初期学習手段33を実行する。ここで初回とは、基本的にはその車両を最初に運転し始める初期状態であり車両を起動状態としてからの最初を意味する。ただし、バッテリーリセットを実施した後はその車両で過去に初期学習を行っていても、必要な値が保存されていない状態なので再度初期学習を行う。この初期学習により、主に車両の個体差などを学習し、適切な空燃比での運転を可能にする。また、バッテリーリセット後の実施では、経年劣化による影響も反映される。
電子制御ユニット30は、前記初期学習が完了した後に、インターバルを空けて通常学習を行う通常学習手段34を実行する。通常学習では、初期学習と同様にリアルタイム燃料補正量に応じて前記長期学習値を補正する。ただし、初期学習が終わった後の二回目以降の学習であり、これを行う通常学習期間は、比較的短期間となる。この通常学習は運転が継続している間、インターバルを空けつつ繰り返す。長期的な運転状況の変化に対応させるためである。このインターバルの長さは、特に限定されないが、15分以上30分以下程度が望ましい。また、固定値である必要はなく、運転状況に応じてインターバルが変化してもよい。
ここで、前記の初期学習期間は通常学習期間よりも長い。個体差などを十分に反映させるためには、ある程度の長期間である第一期間が必要となるからである。一方、普段は通常学習で学習する要素は第一期間より短い第二期間の学習で済むため、比較的短期間で済む。それぞれの期間の長さは特に限定されないが、例えば前期第一期間を1分以上3分以下で確保する場合、前期第一期間より短い前期第二期間は10秒以上30秒以下であるという構成が採用できる。
さらに、電子制御ユニット30は、前記長期学習値、又は前記合計補正量の値に基づいて故障判定を行う故障判定手段35を適宜実行する。これらの値がリッチ側又はリーン側に定めた限界値に到達していたら、燃料系になんらかの故障が生じているものと判断できるためである。なお、瞬間的に限界値に到達した時点で故障と判断してもよいが、ある程度の期間にわたって限界値が続く「張り付き」となった段階で故障と判断するようにすると、瞬間的な変動を故障と誤認する可能性を抑制できる。
さらにまた、電子制御ユニット30は、前記初期学習及び前記通常学習とは別に、割込学習を行って前記長期学習値を補正する割込学習手段36を実行する。この割込学習を行うタイミングは、前記リアルタイム燃料補正量、前記長期学習値、及び前記合計補正量の内、少なくとも1つが、リッチ側又はリーン側の所定の判定開始値を超えてリッチ又はリーンである期間が連続する所定の判定確認期間に亘って超えたときである。いずれの場合も、故障の可能性があると考えられる値を判定開始値として設定するとよい。この中でも、長期学習値を判断材料に含めることが望ましいため、長期学習値か合計補正量かのいずれかを用いて判定するとよい。
前記の割込学習を行う期間である割込学習期間は、前記の通常学習期間及び初期学習期間よりも長いことが望ましい。故障があるか否かを判定するためには、インターバルを介して短期間の学習を繰り返すよりも、必要な期間を確保して判断する方が、高い精度での判断ができると考えられる。ここで、割込学習の期間としては特に限定されるものではないが、2分以上4分以下であるという構成が採用できる。
なお、前記の割込学習を一度行った場合、割込学習の実行に繋がる要素を停止し、割込学習の後には前記インターバルを空けて前記の通常学習手段を実行するとよい。割込学習は長期間の学習を必要とする代わりに、複数回行うメリットに乏しく、割込学習を経ても故障と判定されない場合には、以後は通常学習を定期的に実行することで多くの状況に対応できることが多い。ここで、割込学習の実行に繋がる要素としては、割込学習の要求を出すか否かを判定するためのタイマである判定確認タイマやその他のフラグが挙げられる。これらのタイマやフラグを、実行されない値に設定しておく。
上記の初期学習、通常学習、割込学習にあたっては、運転が定常状態ではない期間に亘っては学習を一時停止し、定常状態である期間において一時停止を解除して学習を途中から再開するとよい。運転状況が変化したタイミングでは故障が発生していなくても様々な要因によりリアルタイム燃料補正量は変動しているため、その時点でのリアルタイム燃料補正量を長期学習値に反映させると、実態を反映しない学習となってしまう可能性が高いからである。ただし、運転状況が変化するたびに学習をリセットしていたのでは容易に学習が終わらないため、学習は一時停止とし、定常状態に戻った段階で学習を途中から再開するとよい。
上記の初期学習、通常学習、割込学習にあたっては、長期学習値への値の反映を、リアルタイム燃料補正量がリッチ側であるかリーン側であるかの二択として、どちらかであれば期間あたり補正量を固定して長期学習値を補正する実施形態が考えられる。また、リアルタイム燃料補正量がリッチ側又はリーン側にどの程度寄っているかに応じて、多段階的に、又は無段階的に長期学習値への補正の係数を変更させる実施形態でもよい。
また、学習の途中でも学習の完了時であっても、長期学習値が、リッチ側又はリーン側に設定された限界値に到達していた場合、前記割込学習の実行に繋がる要素を停止するとよい。その段階で故障と判定することができるためである。なお、到達していた、とは瞬間的に限界値に到達した状況を含めてもよいが、ある程度の期間にわたって到達した状況を続けた、いわゆる限界値への「張り付き」が起きていることを条件とするのが望ましい。
この長期学習値は、電子制御ユニット30が有する記憶装置に記憶しておき、運転が終了してエンジンが一旦オフになっても保持し続けることが望ましい。車両の個体差や経年劣化等を反映している値であり、運転開始の度に測定し続けることは負担が大きくなるだけでメリットに乏しいからである。具体的には、バッテリー駆動でメモリの内容を保持し続けるとよい。一方、リアルタイム燃料補正量はエンジンを一旦オフにした段階でリセットするのが好ましい。
この発明にかかる診断装置として動作させる電子制御ユニット30のフロー例を、図2を用いて説明する。以下の動作は電子制御ユニット30による。車両の運用を開始すると(S101)、運転開始とともに初期学習を開始する(S102)。その時点におけるリアルタイム燃料補正量がリッチ側であれば長期学習値をリッチ側に、リアルタイム燃料補正量がリーン側であれば長期学習値をリーン側へと補正する(S103)。この初期学習は予め定めた初期学習期間に亘って継続している状況で行うのが望ましいが、途中で運転状況が変化した場合には(S104→No)、一時停止の後(S105)、定常状態に戻った段階で学習を再開する。定常状態での学習期間の合計が初期学習期間に到達した段階で、初期学習は完了する(S106)。
初期学習完了の段階で、合計補正量が予め定められた割込学習を行うか否かの判定目標値に到達していなければ(S111→No)、割込学習を行わず、通常の状況としてインターバルを空ける(S131)。インターバル後、定常状態が続いたタイミングで(S132→Yes)、通常学習を開始する(S133)。補正によって、長期学習値がリッチ側上限又はリーン側下限に張り付いてしまった場合は(S134→Yes)、故障であると判定する(S141)。そうでない場合は、通常学習期間に亘って学習を継続し、運転状況が変化した場合は一時停止を挟みつつ(S135→No→S136→S134)、通常学習を完了させる(S135→Yes→S137)。その後は、合計補正量が判定目標値に到達しない限り(S111→No)、インターバルを挟みながら(S131)通常学習を繰り返す。
一方、初期学習や通常学習の結果として、またはフロー中図示しないが常に変動させているリアルタイム燃料補正量の変更の結果として、合計補正量が判定目標値に到達したら(S111→Yes)、割込学習実施要求を発する(S112)。これはインターバルとは関係なく、割り込む形で発生する。ただし、この割込学習実施要求は、判定確認タイマの値が経過するまでの間に亘って条件が続いた段階で(S113→Yes)、割込学習を実行に移す。この判定確認タイマが、前記の割込学習の実行に繋がる要素、に相当する。合計補正量が判定目標値に瞬間的に到達しただけで割込学習を作動させると、運行の妨げになる可能性が高いためである。
前記割込学習を開始して、長期学習値を補正し始め(S114)、リッチ側上限又はリーン側下限に張り付いてしまった場合は(S115→Yes)、故障であると判定する(S121)。そうでない場合は、割込学習期間に亘って学習を継続し、運転状況が変化した場合は一時停止を挟みつつ(S116→No→S117→S115)、割込学習を完了させる(S116→Yes→S118)。この割込学習を行う割込学習期間は、通常学習を行う通常学習期間よりも長く、故障判定(S121)が得られる可能性が高くなっている。これにより、インターバルを挟んで通常学習を繰り返すよりも、速やかに故障を確認することができるようになる。
なお、割込学習が完了した段階で(S118)、以降の割込学習は不要となる。このため、上記の判定確認タイマを0で固定しておき、割込学習実施要求があっても以降は確認の処理をスキップして(図示しないがS112→S131)、通常学習へのインターバルへと移る。
この発明にかかる診断装置を実行させた際の各種値の変遷例を、図3を用いて説明する。
まず、運転開始とともに初期学習を行う(T01→T02)。この間にリアルタイム燃料補正量を参照して、このリアルタイム燃料補正量がリッチ側になっていることに応じて、長期学習値を徐々にリッチ側へと変更させていく。これを初期学習期間に亘って学習が完了するまで(T02)行う。学習期間のカウントは更新積算タイマの加算により行う。学習を開始してから、定常状態におけるカウントがそれぞれの学習期間に到達するまでをカウントし、到達したらそこでその学習は完了とする。
初期学習が終わったら(T02)、次の通常学習までインターバルを挟む(T02→T07)。この間は学習が行われず、長期学習値は変化しないままである。インターバルが終わったら更新積算タイマを0に戻し、通常学習を開始する(T07)。このとき、リアルタイム燃料補正量はリッチ側であるため、長期学習値は徐々にリッチ側へと学習されていく(T07→T08)。そのまま通常学習期間に到達するT09まで定常状態が続けばそこで通常学習は終了する。ただし、通常学習の途中で運転状況が変化したら(T08)、そこで更新積算タイマを一時停止し、学習も停止する。その後、定常状態に戻ったら(T12)学習を再開する。T13で更新積算タイマは通常学習期間に到達し、以後はインターバルを挟んで(T13→T15)、再び更新積算タイマを0にして通常学習を行う(T15~)。なお、インターバルの幅が図の表記上変わっているが、実際には各インターバルは同じとする。
この手順であると、長期学習値がリッチ側上限に到達し、故障であるとの張り付き判定が成立するまでT01からT13までの期間がかかる。これにより、故障判定に至るまで期間がかかっている。そこで、この発明にかかる診断装置は先んじて割込学習を行えるようにする。
割込学習を行えるようにするため、まずスタート時点で判定確認タイマをスタート値まで引き上げる(T00→T01)。上記と同様に初期学習を終えた後(T01→T02)、リアルタイム燃料補正量と長期学習値とを合わせた合計補正量が劣化判定の目標値を超えていたら、判定確認タイマの減算を開始する(T03)。この判定確認タイマがゼロになるまで合計補正量の値が劣化判定の目標値を超えていたら(T03→T04)、割込学習のための処理を実行する。具体的には、インターバルの最中であるがそれを無視して更新積算タイマを0にし(図中(1))、更新積算タイマの次の到達目標値を割込学習期間の値に引き上げる(図中(2))。合わせて、割込学習の実施要求フラグを成立させる(上から二番目のグラフ)。ただし、このフラグが立っただけでは割込学習は開始しない。定常状態になったことを確認した上で、割込学習を開始する(T05~)。この段階で合計補正量はリッチ側であるため、長期学習値をリッチ側へと補正していく(T05→T06)。この例ではT06で長期学習値はリッチ側の上限に到達し、張り付き判定が成立するため、ここで故障と判定する。なお、リッチ側の上限までまだ到達しなかった場合には、更新積算タイマの二点破線で示す線のように、割込学習期間に到達するまで学習を行うこととなる(T05→T08)。その後は通常と同様にインターバルを挟んだ後(T08→T11)、更新積算タイマを0にして、以降は通常学習を行う。また、判定確認タイマは一度0に到達すると以後はその値を戻すことなくそのままとする。
いずれのケースでも、以上の診断装置の処置によって故障判定がされた時点で燃料系に対して噴射量を制限したりして、故障の状況が拡大しないように燃料系の動作を変更するとよい。また、故障判定の場合はリアルタイム燃料補正量の値を保存して、常時リッチ側に値を張り付かせておくことで、出来るだけ理論空燃比に近づけるように処置してもよい。
なお、運転状況に応じてリアルタイム燃料補正量をリセット(中央値から再開)する場合があるが、前記の故障判定がされた後は、このリセットをせず前回フィードバック終了時までにリアルタイム燃料補正量をフィルタリングした(なました)値から再開することで、早く理論空燃比に近づけるようにしてもよい。
1 エンジン
2 シリンダ
3 スロットルバルブ
4 吸気通路
5 排気通路
10 筒内噴射装置
11 排気通路
12 第一空燃比検出手段
13 排気浄化部
15 マフラ
30 電子制御ユニット
31 メインフィードバック制御手段
32 目標値制御手段
33 初期学習手段
34 通常学習手段
35 故障判定手段
36 割込学習手段

Claims (4)

  1. 車両に搭載されたエンジンから引き出された排気通路に設けられ、前記排気通路内の実空燃比を検出する第一空燃比検出手段と、
    前記第一空燃比検出手段で得られた情報に基づいて、前記実空燃比が予め設定された目標空燃比となるように前記エンジンへの燃料の噴射量をフィードバック制御するメインフィードバック制御手段と、
    第1間隔で前記実空燃比と前記目標空燃比とのズレを補正するリアルタイム燃料補正量と、前記第1間隔より長い第2間隔で前記リアルタイム燃料補正量に基づいて前記実空燃比と前記目標空燃比とのズレを補正する長期学習値と、を合わせた合計補正量に従って、前記目標空燃比を修正する目標値制御手段と、
    前記車両の起動後、初回の学習の際は第一期間に設定された初期学習期間に亘って前記リアルタイム燃料補正量に応じて前記長期学習値を補正する初期学習手段と、
    前記初回の学習が完了した後に、インターバルを空けて行う二回目以降の学習の際には前記第一期間より短い第二期間に設定された通常学習期間に亘って前記リアルタイム燃料補正量に応じて前記長期学習値を補正する通常学習手段と、
    前記長期学習値、又は前記合計補正量の値に基づいて故障判定を行う故障判定手段と、
    前記リアルタイム燃料補正量、前記長期学習値、及び前記合計補正量の内、少なくとも1つが、リッチ側又はリーン側の所定の判定開始値を超えてリッチ又はリーンである期間が連続する所定の判定確認期間に亘って超えたとき、割込学習を行って前記長期学習値を補正する割込学習手段と、を備える、
    エンジンの診断装置。
  2. 前記割込学習を行う期間である割込学習期間が、前記初期学習期間よりも長い、請求項1に記載のエンジンの診断装置。
  3. 前記割込学習を一度行った場合、前記割込学習の実行に繋がる要素を停止し、
    前記割込学習の後には前記インターバルを空けて前記通常学習手段を実行する、請求項1又は2に記載のエンジンの診断装置。
  4. 前記長期学習値が、リッチ側又はリーン側に設定された限界値に到達していた場合、前記割込学習の実行に繋がる要素を停止する、請求項1乃至3のいずれかに記載のエンジンの診断装置。
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