自動車等の車両に搭載される内燃機関においては、排気通路に排気浄化用の触媒が設けられており、同触媒によって排気通路を流れる排気中のNOx、HC、COを浄化するようにしている。また、こうした排気中の三成分を効果的に浄化するため、触媒に酸素ストレージ機能を持たせるとともに、内燃機関の燃焼室内における混合気の空燃比を理論空燃比に制御する理論空燃比制御が行われる。
ここで、触媒の酸素ストレージ機能とは、同触媒を通過する排気中の酸素濃度に応じて、排気中の酸素を触媒に吸蔵したり、同触媒に吸蔵されている酸素を触媒から脱離させて排気中に放出したりする機能のことである。詳しくは、排気中の酸素濃度が燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比とした状態で同混合気を燃焼させたときの値よりも濃い状態、すなわち燃焼室内の混合気を理論空燃比よりもリーンとなる空燃比で燃焼させた状態にあっては、上述した触媒の酸素ストレージ機能により、その触媒を通過する排気中の酸素が同触媒に吸蔵される。一方、排気中の酸素濃度が燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比とした状態で同混合気を燃焼させたときの値よりも薄い状態、すなわち燃焼室内の混合気を理論空燃比よりもリッチな空燃比で燃焼させた状態にあっては、上述した触媒の酸素ストレージ機能により、その触媒に吸蔵されている酸素が同触媒から脱離して排気中に放出される。
また、上記理論空燃比制御では、排気中の酸素濃度が燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比とした状態で同混合気を燃焼させたときの値と一致するよう、排気中の酸素濃度に応じて内燃機関の燃料噴射量が調整される。こうした理論空燃比制御では、特許文献1に示されるように、排気通路における触媒の上流に設けられて排気中の酸素濃度に基づく信号を出力する触媒上流センサと、同排気通路における触媒の下流に設けられて排気中の酸素濃度に基づく信号を出力する触媒下流センサとが用いられる。
詳しくは、触媒上流の排気中の酸素濃度が燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比とした状態で同混合気を燃焼させたときの値と一致するよう、触媒上流センサから出力される信号に応じて内燃機関の燃料噴射量が調整される。これにより、内燃機関の燃焼室内における混合気の空燃比がリッチとリーンとの間で変動しながらも理論空燃比に収束するように制御される。ただし、触媒上流センサから出力される信号に応じた燃料噴射量の調整だけでは、同センサの製品ばらつき等に起因して上述したように理論空燃比に収束するようリッチとリーンとの間で変動する内燃機関の空燃比の変動中心が理論空燃比からずれる可能性がある。こうしたずれを補正するため、上記触媒上流センサからの信号に応じた燃料噴射量の調整によってリッチとリーンとの間で変動する内燃機関の空燃比の変動中心が理論空燃比と一致するよう、触媒下流センサから出力される信号に応じた内燃機関の燃料噴射量の調整も行われる。
以上のように、触媒に酸素ストレージ機能を持たせるとともに理論空燃比制御を行うことにより、排気中におけるNOx、HC、COといった三成分を効果的に浄化することが可能になる。詳しくは、理論空燃比制御の実行中、燃焼室内の混合気の空燃比が変動してリーンになると、触媒を通過する排気中の酸素濃度が燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比とした状態で同混合気を燃焼させたときの値よりも濃い値となるため、触媒を通過する排気中の酸素が触媒に吸蔵されて同排気中のNOxが還元される。一方、理論空燃比制御の実行中、燃焼室内の混合気の空燃比が変動してリッチになると、触媒を通過する排気中の酸素濃度が燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比とした状態で同混合気を燃焼させたときの値よりも薄い値となるため、触媒に吸蔵されている酸素が同触媒から脱離して同排気中のHC、COが酸化される。従って、理論空燃比制御の実行中、燃焼室内の混合気の空燃比が理論空燃比に収束する過程でリッチとリーンとの間で変動する際、上述したように排気中のNOx、HC、COといった三成分が効果的に浄化される。
内燃機関における排気の浄化を適正状態に維持するためには、触媒の劣化が生じたときや触媒下流センサの応答性に異常が生じたとき、それらへの対策を速やかに講じることが重要になる。こうした速やかな対策を実現するため、例えば以下のように、触媒の劣化の有無を判断したり、触媒下流センサの異常の有無を判断したりすることが行われる。
触媒においては、その劣化に伴って酸素ストレージ機能が低下する。このことに対処するため、触媒に吸蔵される酸素の量の最大値(以下、酸素吸蔵量という)を求め、その酸素吸蔵量に基づき触媒の劣化の有無を判断することが行われる。具体的には、内燃機関の空燃比を強制的にリッチとリーンとの間で変化させるアクティブ空燃比制御を実行し、同制御中に内燃機関の空燃比がリッチとリーンとの間で変化する際に上記酸素吸蔵量を求める。より詳しくは、アクティブ空燃比制御中に上述したように内燃機関の空燃比が変化するとき、触媒上流センサの信号に上記空燃比の変化に対応する変化が生じてから、触媒下流センサの信号に上記空燃比の変化に対応する変化が生じるまでの期間中に、触媒に吸蔵される酸素の量もしくは同触媒から脱離される酸素の量を算出する。そして、上記期間の終了時点で算出された酸素の量が上記酸素吸蔵量、すなわち触媒に吸蔵される酸素の量の最大値とされる。こうして求められた酸素吸蔵量に基づき、触媒の酸素ストレージ機能の低下が生じているか否か、言い換えれば触媒の劣化が生じているか否かが判断される。
一方、触媒下流センサにおいては、その異常に伴って排気中の酸素濃度の変化に対する出力信号の変化の応答性が低下する。こうした応答性の低下は、例えば、内燃機関の空燃比が変化する際における触媒下流センサから出力される信号の変化速度が遅くなるというかたちで現れる。そして、触媒下流センサの上記応答性の低下(出力信号の変化速度の低下)に関係する異常に対処すべく、内燃機関の空燃比がリッチとリーンとの間で変化するとき、同変化に対応して触媒下流センサの出力信号が変化する際の変化速度を測定し、その変化速度に基づき同触媒下流センサで異常が生じているか否かが判断される。なお、内燃機関の空燃比がリッチとリーンとの間で変化する状況としては、例えば上述したアクティブ空燃比制御中があげられる。
ところで、触媒下流センサにおいては、その異常に伴う出力信号の変化の応答性の低下が、上述した排気中の酸素濃度の変化に対する出力信号の変化速度の低下というかたちではなく、排気中の酸素濃度の変化に対する出力信号の初動タイミングの遅れというかたちで現れることも考えられる。そして、触媒下流センサ周りの排気中の酸素濃度の変化に対する同センサ出力信号の初動タイミングが遅れると、その酸素濃度が変化するタイミングから同センサの出力信号に上記酸素濃度の変化に対応する変化が生じ始めるタイミングまでの時間(以下、初動遅れ時間という)が長くなる。こうした出力信号の初動タイミングの遅れ(初動遅れ時間の増大)に関係する触媒下流センサの異常に対処するため、上記排気中の酸素濃度の変化時に初動遅れ時間を求め、その求められた初動遅れ時間に基づいて上記初動タイミングの遅れに関係する触媒下流センサの異常が生じているか否かを判断することが提案されている。
例えば、特許文献2では、触媒の酸素吸蔵量と内燃機関の吸入空気量との関係が上記初動遅れ時間に対応して変化することに着目して同初動応答遅れ時間に対応したパラメータである変化率Kaを求めるようにしている。詳しくは、アクティブ空燃比制御中、吸入空気量の多くなる機関運転領域で触媒の酸素吸蔵量OSC1を求めるとともに、その酸素吸蔵量OSC1を求めたときの吸入空気量Ga1を取得する。更に、アクティブ空燃比制御中、吸入空気量の少なくなる機関運転領域で触媒の酸素吸蔵量OSC2を求めるとともに、その酸素吸蔵量OSC2を求めたときの吸入空気量Ga2を取得する。そして、それら酸素吸蔵量OSC1,OSC2及び吸入空気量Ga1,Ga2に基づき、次の式「Ka=(OSC1−OSC2)/(Ga1−Ga2)」を用いて上記変化率Kaを求める。こうして求められた変化率Kaに関しては、排気中の酸素濃度の変化時における触媒下流センサの出力信号の初動遅れ時間が長くなるほど大きくなるという傾向を有する。従って、上記変化率Kaに基づき、上記初動タイミングの遅れに関係する触媒下流センサの異常が生じているか否かを判断することができる。
以下、本発明を自動車用エンジンに適用した一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1に示されるエンジン1においては、その燃焼室2に繋がる吸気通路3にスロットルバルブ13が開閉可能に設けられており、吸気通路3を通じて燃焼室2に空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁4から噴射された燃料が吸気通路3を介して燃焼室2に供給される。燃焼室2に供給された空気と燃料とからなる混合気は、点火プラグ5による点火が行われて燃焼する。そして、燃焼室2内で混合気が燃焼することにより、ピストン6が往復移動してエンジン1の出力軸であるクランクシャフト7が回転する。
一方、燃焼室2にて燃焼した後の混合気は、排気として燃焼室2から排気通路8に送り出される。排気通路8を通過する排気は、同排気通路8に設けられた触媒コンバータ16の三元触媒にて排気中のHC、CO、NOxといった有害成分を浄化した後に外部に放出される。この三元触媒は、排気中における上記三成分を効果的に除去するために酸素ストレージ機能を有している。この酸素ストレージ機能を三元触媒に持たせるとともに、触媒雰囲気の酸素濃度が理論空燃比での混合気の燃焼時の値に収束するよう同混合気の空燃比を理論空燃比に制御する理論空燃比制御を行うことにより、三元触媒にて排気中におけるNOx、HC、COといった三成分を効果的に浄化することができる。
また、排気通路8において、触媒コンバータ16の上流には排気中の酸素濃度に基づく信号を出力する触媒上流センサとして空燃比センサ17が設けられるとともに、触媒コンバータ16の下流には排気中の酸素濃度に基づく信号を出力する触媒下流センサとして酸素センサ18が設けられている。
上記空燃比センサ17は、図2に示されるように、触媒上流の排気中の酸素濃度に応じたリニアな信号を出力する。
すなわち、空燃比センサ17の出力信号VAFは、触媒上流の排気中の酸素濃度が薄くなるほど小さくなり、理論空燃比での混合気の燃焼が行われたときには、そのときの排気中の酸素濃度Xに対応して例えば「0A」となる。従って、理論空燃比よりもリッチな混合気の燃焼(リッチ燃焼)に起因して触媒上流の排気中の酸素濃度が薄くなるほど、空燃比センサ17の出力信号VAFが「0A」よりも小さい値になる。また、理論空燃比よりもリーンな混合気の燃焼(リーン燃焼)に起因して触媒上流の排気中の酸素濃度が濃くなるほど、空燃比センサ17の出力信号VAFが「0A」よりも大きい値になる。
上記酸素センサ18は、図3に示されるように、触媒下流の排気中の酸素濃度に応じてリッチ信号又はリーン信号を出力する。
すなわち、酸素センサ18の出力信号VOは、触媒下流の排気中の酸素濃度が理論空燃比での混合気の燃焼が行われたときの値(酸素濃度X)であるときには例えば「0.5v」を出力する。そして、リーン燃焼が行われることに起因して触媒下流の排気中の酸素濃度が上述した酸素濃度Xよりも濃くなると、酸素センサ18からは「0.5v」よりも小さい値がリーン信号として出力される。このリーン信号に関しては、触媒下流の排気中の酸素濃度が上記酸素濃度Xに対し大きくなる際、その酸素濃度X付近では酸素濃度の増加に対し「0.5v」から減少側への急速な変化を示す一方、上記酸素濃度X付近から離れると酸素濃度の増加に対する減少側への変化が緩やかになる。
また、リッチ燃焼が行われることに起因して触媒下流の排気中の酸素濃度が上述した酸素濃度Xよりも薄くなると、酸素センサ18からは「0.5v」よりも大きい値がリッチ信号として出力される。このリッチ信号に関しては、触媒下流の排気中の酸素濃度が上記酸素濃度Xに対し小さくなる際、その酸素濃度X付近では酸素濃度の減少に対し「0.5v」から増大側への急速な変化を示す一方、上記酸素濃度X付近から離れると酸素濃度の減少に対する増大側への変化が緩やかになる。
次に、本実施形態における触媒劣化検出装置の電気的構成について、図1を参照して説明する。
この空燃比制御装置は、エンジン1に関する各種制御を実行する電子制御装置21を備えている。電子制御装置21は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置21の入力ポートには、上記空燃比センサ17及び上記酸素センサ18が接続される他、以下に示す各種センサ等が接続されている。
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル27の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ28。
・吸気通路3に設けられたスロットルバルブ13の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ30。
・吸気通路3を通じて燃焼室2に吸入される空気の量(吸入空気量)を検出するエアフローメータ32。
・吸気通路3内におけるスロットルバルブ13よりも下流側の圧力(吸気圧)を検出する吸気圧センサ33。
・クランクシャフト7の回転に対応する信号を出力し、エンジン回転速度の算出等に用いられるクランクポジションセンサ34。
電子制御装置21の出力ポートには、燃料噴射弁4、点火プラグ5、及びスロットルバルブ13の駆動回路等が接続されている。
そして、電子制御装置21は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、エンジン回転速度やエンジン負荷(エンジン1の1サイクル当たりに燃焼室2に吸入される空気の量)といったエンジン運転状態を把握する。なお、エンジン回転速度はクランクポジションセンサ34からの検出信号に基づき求められる。また、エンジン負荷は、アクセルポジションセンサ28、スロットルポジションセンサ30、及び、エアフローメータ32等の検出信号に基づき求められるエンジン1の吸入空気量と上記エンジン回転速度とから算出される。電子制御装置21は、エンジン負荷やエンジン回転速度といったエンジン運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうしてエンジン1における燃料噴射量制御、点火時期制御、及び吸入空気量制御等が電子制御装置21を通じて実施される。
触媒コンバータ16の三元触媒でエンジン1の排気を効果的に浄化するための上記理論空燃比制御は、空燃比センサ17の出力信号VAF及び酸素センサ18からの出力信号VOに基づき燃料噴射量を調整することによって実現される。詳しくは、空燃比センサ17の出力信号VAFがエンジン1の燃焼室2内の混合気を理論空燃比で燃焼させたときの値(この例では「0A」)と一致するよう、同出力信号VAFに基づきエンジン1の燃料噴射量を増減させる。これにより、エンジン1の燃焼室2内における混合気の空燃比がリッチとリーンとの間で変動しながらも理論空燃比に収束するように制御される。ただし、空燃比センサ17の出力信号VAFに応じた燃料噴射量の調整だけでは、同空燃比センサ17の製品ばらつき等に起因して上述したように理論空燃比に収束するようリッチとリーンとの間で変動するエンジン1の空燃比の変動中心が理論空燃比からずれる可能性がある。こうしたずれを補正するため、上記空燃比センサ17の出力信号VAFに応じた燃料噴射量の調整によってリッチとリーンとの間で変動するエンジン1の空燃比の変動中心が理論空燃比と一致するよう、酸素センサ18から出力される信号に応じたエンジン1の燃料噴射量の調整も行われる。
エンジン1における排気の浄化を適正状態に維持するためには、触媒コンバータ16における三元触媒の劣化が生じたときや酸素センサ18の応答性に異常が生じたとき、それらへの対策を速やかに講じることが重要になる。こうした速やかな対策を実現するため、三元触媒の劣化の有無を判断したり、酸素センサ18の異常の有無を判断したりすることが行われる。
三元触媒の劣化の有無の判断は、同触媒に吸蔵される酸素の量の最大値(以下、酸素吸蔵量という)を求め、その求めた酸素吸蔵量と予め定められた閾値との比較に基づいて行われる。詳しくは、求めた酸素吸蔵量が上記閾値未満であれば、三元触媒の酸素ストレージ機能が低下していると見なせることから、同触媒の劣化ありの旨判断される。一方、求めた酸素吸蔵量が上記閾値以上であれば、三元触媒の酸素ストレージ機能の低下は生じていないと見なせることから、同触媒の劣化なし(正常)の旨判断される。
三元触媒の劣化の有無の判断に用いられる上記酸素吸蔵量を求める際には、エンジン1の空燃比を所定タイミング毎に強制的にリッチとリーンとの間で変化させるアクティブ空燃比制御が実行される。そして、アクティブ空燃比制御中にエンジン1の空燃比がリッチとリーンとの間で変化する際、三元触媒の上記酸素吸蔵量が求められる。また、自動車の運転状態に応じてエンジン1での燃料噴射を停止させる燃料カット制御において、同制御中の燃料噴射の停止時にエンジン1の空燃比がリッチ側からリーン側に変化する際に酸素吸蔵量を求めることも可能である。アクティブ空燃比制御中及び燃料カット制御中に上記酸素吸蔵量を求めることは、より詳しくは次のようにして行われる。すなわち、上述したようにエンジン1の空燃比が変化するとき、空燃比センサ17の出力信号VAFに上記空燃比の変化に対応する変化が生じてから、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比の変化に対応する変化が生じるまでの期間中に、三元触媒に吸蔵される酸素の量もしくは同触媒から脱離される酸素の量が算出される。そして、上記期間の終了時点で算出された酸素の量が上記酸素吸蔵量、すなわち触媒に吸蔵される酸素の量の最大値とされる。
酸素センサ18の異常の有無の判断については、排気中の酸素濃度の変化に対する出力信号VOの変化の応答性に対応するパラメータとして、排気中の酸素濃度の変化時における酸素センサ18の出力信号VOの初動遅れ時間Tを求め、その求めた初動遅れ時間Tと予め定められた閾値との比較に基づいて行うことが考えられる。なお、上記初動遅れ時間Tとは、酸素センサ18周りの排気中の酸素濃度が変化するタイミングから、同センサ18の出力信号VOに上記酸素濃度の変化に対応する変化が生じ始めるタイミングまでの時間のことである。そして、上記求めた初動遅れ時間Tが上記閾値以上であれば、排気中の酸素濃度の変化に対する出力信号VOの初動タイミングの遅れに関係する酸素センサ18の異常が生じていると見なせることから、同酸素センサ18の異常ありの旨判断される。一方、求めた初動遅れ時間Tが上記閾値未満であれば、排気中の酸素濃度の変化に対する出力信号VOの初動タイミングの遅れに関係する酸素センサ18の異常は生じていないと見なせることから、同酸素センサ18の異常なし(正常)の旨判断される。
酸素センサ18の異常の有無の判断に用いられる上記初動遅れ時間Tに関しては、例えば以下のように求められる。すなわち、上記アクティブ空燃比制御中に三元触媒の酸素吸蔵量C1maxを求めるとともに、上記燃料カット制御における燃料噴射の停止時であってエンジン1の空燃比がリッチ側からリーン側に変化するときに三元触媒の酸素吸蔵量C2maxを求める。更に、それら酸素吸蔵量C1max,C2maxを求めたときのそれぞれのエンジン1の吸入空気量Ga1,Ga2を取得する。そして、上記酸素吸蔵量C1max,C2max、及びそれらを求めたときの各々のエンジン1の吸入空気量Ga1,Ga2に基づいて、上記初動遅れ時間Tが求められる。
次に、アクティブ空燃比制御中での酸素吸蔵量C1maxの算出、及び燃料カット制御中での酸素吸蔵量C2maxの算出について、個別に詳しく説明する。
[酸素吸蔵量C1maxの算出]
上記アクティブ空燃比制御に関しては、エンジン1の始動開始後に一度も三元触媒の酸素吸蔵量C1maxの算出が完了していないこと、予め定められた酸素吸蔵量算出用のエンジン運転領域内にてエンジン1が定常運転中であること、三元触媒の温度が活性温度領域にあること、といった各種の実行条件すべての成立をもって開始される。また、アクティブ空燃比制御の実行中において、上述した各種の実行条件のいずれか一つでも不成立になった場合や、同制御の実行目的である各種の値の算出及び測定が完了した場合には、実行中の同制御が停止されることとなる。
アクティブ空燃比制御において、図4(a)のタイミングt1にてエンジン1の空燃比が強制的にリッチとリーンとの間で切り換えられると(この例ではリッチからリーンに切り換え)、その変化に対応して空燃比センサ17の出力信号VAFが図4(b)に示されるように変化する。なお、図4(b)のタイミングt2は、空燃比センサ17の出力信号VAFがエンジン1の燃焼室2内で混合気を理論空燃比で燃焼させたときの排気中の酸素濃度に対応した値となるタイミングである。図中のタイミングt2以降では、上記空燃比のリーン側への変化に対応して酸素濃度の濃い排気が三元触媒を通過するようになる。しかし、上記排気中の酸素が三元触媒に吸蔵されることから、その吸蔵が行われている間は、触媒下流の排気中の酸素濃度が薄いままとなるため、図4(d)に実線で示されるように酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリーン側への変化に対応する変化は生じない。そして、三元触媒に酸素を吸蔵しきれなくなって触媒下流に酸素濃度の濃い排気が流れるようになると、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリーン側への変化に対応する変化が生じる。なお、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリーン側への変化に対応する変化が生じた旨の判断については、その旨判断するためのリーン判定値HLに対し上記出力信号VOが到達したことに基づいて行うことが可能である。出力信号VOが上述したようにリーン判定値HLに到達すると(t3)、エンジン1の空燃比が強制的にリーンからリッチに切り換えられる。
空燃比センサ17の出力信号VAFに上記空燃比のリッチからリーンへの変化が生じてから酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比の変化に対応する変化が生じるまでの期間中(t2〜t3)に、同触媒に吸蔵される酸素の量の合計値は、三元触媒に吸蔵される酸素の量の最大値(酸素吸蔵量)を表すものとなる。この酸素吸蔵量が上記期間中(t2〜t3)に次のようにして求められる。すなわち、上記期間中(図4(c)のt2〜t3)、微小時間毎に三元触媒に吸蔵される酸素の量として、酸素吸蔵量ΔOSCが次の式(1)に基づき算出される。
ΔOSC=(ΔA/F)・Q・K …(1)
ΔOSC:微小時間毎の酸素吸蔵量
ΔA/F:空燃比差
Q :燃料噴射量
K :酸素割合
式(1)の空燃比差ΔA/Fは、空燃比センサ17の出力信号VAFから求められる空燃比に対し理論空燃比を減算した値の絶対値を表している。また、式(1)の燃料噴射量Qは、空燃比センサ17の出力信号VAFに基づき求められる上記空燃比の原因となったエンジン1の燃料噴射量、すなわち燃料噴射弁4から噴射された燃料の量を表している。更に、式(1)の酸素割合Kは空気中に含まれる酸素の割合を表している。なお。ここでは酸素割合Kとして例えば「0.23」という固定値が用いられている。そして、上記式(1)に基づき算出される微小時間毎の酸素吸蔵量ΔOSCは上記期間(t2〜t3)に亘って積分され、同積分により得られる値が三元触媒に吸蔵された酸素の量として求められる。このため、上記期間(t2〜t3)の終了時点で上記積分により求められた値は、三元触媒に吸蔵可能な酸素の量の最大値(酸素吸蔵量C1max)となる。
以上のようにして求められた酸素吸蔵量C1maxは、アクティブ空燃比制御中での酸素センサ18の応答性を反映した値となる。こうした応答性を表すパラメータとして具体的には、アクティブ空燃比制御中におけるエンジン1の空燃比のリッチとリーンとの間での変化に基づき酸素センサ18の出力信号VOに変化が生じる際の同出力信号VOの初動遅れ時間Tがあげられる。この初動遅れ時間Tとは、既に述べたとおり、酸素センサ18周りの排気中の酸素濃度が変化するタイミング(例えば図4(d)のtr)から、同センサ18の出力信号VOに上記酸素濃度の変化に対応する変化が生じ始めるタイミング(例えば図4(d)のts)までの時間のことである。そして、アクティブ空燃比制御中での酸素センサ18の上記初動遅れ時間Tが長くなるほど、酸素吸蔵量C1maxを求めるための上記期間(t2〜t3)が長くなるため、その酸素吸蔵量C1maxが適正値に対し増加側にずれた値となる。
なお、アクティブ空燃比制御中、酸素吸蔵量C1maxが適正に求められるまでの間は、エンジン1の空燃比が所定のタイミング毎に強制的にリッチとリーンとの間で切り換えられる。上述した例では、エンジン1の空燃比がリッチからリーンに切り換えられた後に酸素吸蔵量C1maxを求めるようにしたが、これを適正に行えなかった場合には図4のタイミングt3にてエンジン1の空燃比が強制的にリーンからリッチに切り換えられ、その切り換え後に酸素吸蔵量C1maxを求めることが行われる。
すなわち、上記空燃比のリーンからリッチへの変化に対応して空燃比センサ17の出力信号VAFが変化すると、酸素濃度の薄い排気が三元触媒を通過するようになるものの、三元触媒に吸蔵されていた酸素が脱離して排気中に放出されることから、同触媒からの酸素の脱離が行われている間は、触媒下流の排気中の酸素濃度が濃いままとなる。そして、三元触媒に吸蔵されていた酸素が尽きて排気への酸素の放出ができなくなり、それによって触媒下流に酸素濃度の薄い排気が流れるようになると、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリッチ側への変化に対応する変化が生じる。なお、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリッチ側への変化に対応する変化が生じた旨の判断については、その旨判断するためのリッチ判定値HRに対し上記出力信号VOが到達したことに基づいて行うことが可能である。出力信号VOが上述したようにリッチ判定値HRに到達すると、エンジン1の空燃比が強制的にリッチからリーンに切り換えられる。
空燃比センサ17の出力信号VAFに上記空燃比のリーンからリッチへの変化が生じてから酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比の変化に対応する変化が生じるまでの期間中に、同触媒から脱離される酸素の量の合計値は、三元触媒に吸蔵されている酸素の量の最大値(酸素吸蔵量C1max)を表すものとなる。この酸素吸蔵量C1maxは上記期間中に図4の「t2〜t3」の期間中と同様の手法を用いて求められる。
[酸素吸蔵量C2maxの算出]
上記燃料カット制御においては、アクセル踏込量が「0」であって車速が「0」よりも大きい所定値以上であることを条件にエンジン1における燃料噴射弁4の燃料噴射が停止され、それによってエンジン1の自立運転が停止されることとなる。一方、こうした燃料カット制御でのエンジン1の自立運転停止中、アクセル踏込量が「0」よりも大きくなったり、車速が上記所定値未満となったりすると、燃料噴射弁4の燃料噴射を通じて同エンジン1の自立運転が再開される。
燃料カット制御において、図5(a)のタイミングt5にてエンジン1での燃料噴射が停止されると、それによってエンジン1の空燃比がリッチ側からリーン側に変化する。詳しくは、エンジン1における燃焼室2内の混合気の空燃比が例えば理論空燃比の状態から、同燃焼室2内のガスがほぼ空気となるほどリーンな状態になるまで変化する。こうしたエンジン1の空燃比のリッチ側からリーン側への変化に対応して、空燃比センサ17の出力信号VAFが図5(b)に示されるように変化する。なお、図5(b)のタイミングt6は、空燃比センサ17の出力信号VAFがエンジン1の燃焼室2内で混合気を理論空燃比で燃焼させたときの排気中の酸素濃度に対応した値から高酸素濃度側(図中上側)に変化したときのタイミングである。図中のタイミングt6以降では、空気とほぼ等しい排気が三元触媒を通過するようになるものの、同排気中の酸素が三元触媒に吸蔵されている間は、触媒下流の排気中の酸素濃度が薄いままとなるため、図5(d)に実線で示されるように酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリーン側への変化に対応する変化は生じない。そして、三元触媒に酸素を吸蔵しきれなくなって触媒下流に酸素濃度の濃い排気が流れるようになると、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリーン側への変化に対応する変化が生じる。なお、酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比のリーン側への変化に対応する変化が生じた旨の判断については、その旨判断するための燃料カット制御時に対応したリーン判定値HLfcに対し上記出力信号VOが到達したこと(t7)に基づいて行うことが可能である。
空燃比センサ17の出力信号VAFに上記空燃比のリッチ側からリーン側への変化が生じてから酸素センサ18の出力信号VOに上記空燃比の変化に対応する変化が生じるまでの期間中(t6〜t7)に、同触媒に吸蔵される酸素の量の合計値は、三元触媒に吸蔵される酸素の量の最大値(酸素吸蔵量C2max)を表すものとなる。この酸素吸蔵量C2maxに関しては、図5(c)における上記期間「t6〜t7」中に、アクティブ空燃比制御中における図4の「t2〜t3」の期間中と同様の手法を用いて求められる。
以上のようにして求められた酸素吸蔵量C2maxは、燃料カット制御中での酸素センサ18の応答性を反映した値となる。こうした応答性を表すパラメータとして具体的には、燃料カット制御中におけるエンジン1の空燃比のリッチ側からリーン側への変化に基づき酸素センサ18の出力信号VOに変化が生じる際の同出力信号VOの初動遅れ時間Tがあげられる。この初動遅れ時間Tは、例えば図5(d)においては、酸素センサ18周りの排気中の酸素濃度が変化するタイミングtrから、同センサ18の出力信号VOに上記酸素濃度の変化に対応する変化が生じ始めるタイミングtsまでの時間を表している。そして、燃料カット制御中での酸素センサ18の上記初動遅れ時間Tが長くなるほど、酸素吸蔵量C2maxを求めるための上記期間(t6〜t7)が長くなるため、その酸素吸蔵量C2maxが適正値に対し増加側にずれた値となる。
なお、上記初動遅れ時間Tに関しては、アクティブ空燃比制御中に酸素吸蔵量C1maxを求めるときの値であれ、燃料カット制御中に酸素吸蔵量C2maxを求めるときの値であれ、常に一定となる。これは、上記初動遅れ時間Tとは酸素センサ18周りの排気中の酸素濃度が変化してから同センサ18の出力信号VOに上記酸素濃度の変化に対応する変化が生じ始めるまでの時間であり、こうした時間に関してはエンジン1の運転領域に関係なく常に一定となるためである。
次に、アクティブ空燃比制御中での酸素吸蔵量C1max、及び燃料カット制御中での酸素吸蔵量C2max等を用いた酸素センサ18の初動遅れ時間Tの求め方について、詳しく説明する。
アクティブ空燃比制御中での酸素吸蔵量C1maxについては、三元触媒の酸素吸蔵量の真値A、及びアクティブ制御中にエンジン1の空燃比をリッチとリーンとの間で変化させたときの酸素センサ18の応答性を表すパラメータである上記初動遅れ時間Tを用いて、次の式(2)で表すことができる。
C1max=A+K1・T …(2)
C1max:アクティブ空燃比制御中での酸素吸蔵量
A:酸素吸蔵量の真値
K1:吸気量係数
T:初動遅れ時間
式(2)から分かるように、アクティブ空燃比制御中に求められた酸素吸蔵量C1maxは、三元触媒の酸素吸蔵量の真値Aに対し、式(2)の「K1・T」という項の分だけずれた値となる。この真値Aに対する酸素吸蔵量C1maxの項「K1・T」分のずれは、アクティブ空燃比制御中における排気中の酸素濃度の変化に対する酸素センサ18の出力信号VOの変化の応答性(初動遅れ時間T)に起因して生じる。なお、項「K1・T」における吸気量係数K1は、三元触媒の酸素吸蔵量の真値Aに対する酸素吸蔵量C1maxのずれが、その酸素吸蔵量C1maxを求めたときのエンジン1の吸入空気量Ga1によって変わることに対応して上記項「K1・T」を可変とするための値であって、エンジン1の吸入空気量Ga1等に基づき算出される。この吸入空気量Ga1に関しては、酸素吸蔵量C1maxを求めたときに取得された値が用いられる。
一方、燃料カット制御中での酸素吸蔵量C2maxについては、三元触媒の酸素吸蔵量の真値A、及び燃料カット制御中にエンジン1の空燃比がリッチ側からリーン側に変化したときの酸素センサ18の応答性を表すパラメータである上記初動遅れ時間Tを用いて、次の式(3)で表すことができる。
C2max=A+K2・T …(3)
C2max:燃料カット制御中での酸素吸蔵量
A:酸素吸蔵量の真値
K2:吸気量係数
T:初動遅れ時間
式(3)から分かるように、燃料カット制御中に求められた酸素吸蔵量C2maxは、三元触媒の酸素吸蔵量の真値Aに対し、式(3)の「K2・T」という項の分だけずれた値となる。この真値Aに対する酸素吸蔵量C2maxの項「K2・T」分のずれは、燃料カット制御中における排気中の酸素濃度の変化に対する酸素センサ18の出力信号VOの変化の応答性(初動遅れ時間T)に起因して生じる。なお、項「K2・T」における吸気量係数K2は、三元触媒の酸素吸蔵量の真値Aに対する酸素吸蔵量C2maxのずれが、その酸素吸蔵量C2maxを求めたときのエンジン1の吸入空気量Ga2によって変わることに対応して上記項「K2・T」を可変とするための値であって、エンジン1の吸入空気量Ga2等に基づき算出される。この吸入空気量Ga2に関しては、酸素吸蔵量C2maxを求めたときに取得された値が用いられる。
ここで、酸素吸蔵量C1maxと酸素吸蔵量C2maxの差分「C1max−C2max」に関しては、式(2)及び式(3)を用いて、次の式「C1max−C2max=K1・T−K2・T …(4)」のように表すことができる。この式(4)を変形すると、初動遅れ時間Tを算出するための次の式「T=(C1max−C2max)/(K1−K2) …(5)」が得られる。そして、この式(5)を用いて得られた初動遅れ時間Tに基づき酸素センサ18の異常の有無が判断される。
ここで、初動遅れ時間Tを求めるために用いられる酸素吸蔵量C1max及び吸入空気量Ga1と酸素吸蔵量C2max及び吸入空気量Ga2とは、アクティブ空燃比制御を実行可能なエンジン運転領域と燃料カット制御が実行されるエンジン運転領域といった互いに大きく異なる二つのエンジン運転領域でそれぞれ取得される。こうした大きく異なる二つのエンジン運転領域にて取得された酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2を用いて上記初動遅れ時間Tを求めることにより、同初動遅れ時間Tにおける酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の計測誤差等による適正値からのずれが生じにくくなる。
初動遅れ時間Tを求めるための酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量吸入空気量Ga1,Ga2は、アクティブ空燃比制御中と燃料カット制御中とでそれぞれ取得されることになるため、アクティブ空燃比制御中における酸素吸蔵量及び吸入空気量の取得については一度だけでよくなる。また、燃料カット制御での燃料噴射の停止は、アクティブ空燃比制御の実行条件の成立に伴う同制御の実行と比較して、高い頻度で実行される。そして、こうした燃料カット制御での燃料噴射の停止に際し、酸素吸蔵量C2max及び吸入空気量Ga2の取得が行われる。従って、上記初動遅れ時間Tを求めるための酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2を取得すべく、何度もアクティブ空燃比制御を実行しなければならなくなるという状況が生じ、それに起因して上記酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の取得の完了に時間がかかるということはない。このため、酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の取得を短い時間で完了することができ、ひいては上記初動遅れ時間Tを短時間で求めることができるようになる。
次に、三元触媒の劣化の有無の判断、及び酸素センサ18の異常の有無の判断の実行手順について、異常診断ルーチンを示す図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。この異常診断ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、まずアクティブ空燃比制御中での酸素吸蔵量C1maxの算出が未完であるか否かが判断され(S101)、ここで肯定判定であれば酸素吸蔵量C1maxを算出するためのC1max算出処理(S102)が実行される。このC1max算出処理では、酸素吸蔵量C1maxの算出を目的として、アクティブ空燃比制御の実行条件が成立したときに同制御を実行する。そして、アクティブ空燃比制御において、エンジン1の空燃比が強制的にリッチとリーンとの間で切り換えられる際、上記酸素吸蔵量C1maxが算出されることとなる。また、酸素吸蔵量C1maxが算出されたときのエンジン1の吸入空気量Ga1の取得も行われる。
同ルーチンにおいては、燃料カット制御中での酸素吸蔵量C2maxの算出が未完であるか否かの判断も行われ(S103)、ここで肯定判定であれば酸素吸蔵量C2maxを算出するためのC2max算出処理(S104)が実行される。このC2max算出処理では、燃料カット制御においてエンジン1の燃料噴射が停止されて同エンジン1の空燃比がリッチ側からリーン側に変化する際、上記酸素吸蔵量C2maxが算出されることとなる。また、酸素吸蔵量C2maxが算出されたときのエンジン1の吸入空気量Ga2の取得も行われる。
そして、酸素吸蔵量C1maxと酸素吸蔵量C2maxとの両方の算出が完了すると(S105:YES)、式(5)を用いて燃料カット制御中の酸素センサ18の応答性を表すパラメータである初動遅れ時間Tが算出される(S106)。詳しくは、上記算出の完了した酸素吸蔵量C1max,C2maxと、それら酸素吸蔵量C1max,C2maxを算出する際のエンジン1の吸入空気量Ga1,Ga2等に基づき求められた吸気量係数K1,K2とに基づき、式(5)を用いて上記初動遅れ時間Tが算出される。続いて、算出された初動遅れ時間Tが予め定められた閾値未満であるか否かが判断される(S107:図7)。ここで肯定判定であれば、出力信号VOの初動タイミングの遅れに関する酸素センサ18の異常ありの旨判断される(S108)。一方、否定判定であれば、出力信号VOの初動タイミングの遅れに関する酸素センサ18の応答性についての異常なし(正常)の旨判断される(S109)。
その後、酸素吸蔵量C1maxと酸素吸蔵量C2maxとのうちのいずれか(この例では酸素吸蔵量C2max)に対し、上記初動遅れ時間Tに基づく補正が加えられる(S110)。具体的には、初動遅れ時間Tに対し上記吸気量係数K2を乗算して得られる項「K2・T」の分だけ酸素吸蔵量C2maxが減量補正される。なお、こうした補正後の酸素吸蔵量のことを以下では補正後酸素吸蔵量Aと称する。上記式(3)から分かるように、上記酸素吸蔵量C2maxから項「K2・T」を減算した値は、三元触媒における酸素吸蔵量の真値Aということになる。従って、上記補正後酸素吸蔵量Aは式(3)の真値Aと等しくなる。言い換えれば、上記補正後酸素吸蔵量Aは、酸素吸蔵量C2maxから酸素センサ18の応答性(初動遅れ時間T)による影響を除去した値となる。
そして、この補正後酸素吸蔵量Aを用いて、三元触媒の劣化の有無が判断されることとなる。詳しくは、補正後酸素吸蔵量Aが予め定められた閾値未満であるか否かが判断される(S111)。ここで肯定判定であれば、三元触媒の劣化あり(異常)の旨判断される(S112)。一方、否定判定であれば、三元触媒の劣化なし(正常)の旨判断される(S113)。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)排気中の酸素濃度の変化に対する酸素センサ18の出力信号VOの初動タイミングの遅れに関係する同センサ18の異常の有無は、上記式(5)を用いて得られた初動遅れ時間Tと閾値との比較に基づいて行われる。ここで、上記式(5)により初動遅れ時間Tを求めるために用いられる酸素吸蔵量C1max及び吸入空気量Ga1と酸素吸蔵量C2max及び吸入空気量Ga2とは、アクティブ空燃比制御を実行可能なエンジン運転領域と燃料カット制御が実行されるエンジン運転領域といった互いに大きく異なる二つのエンジン運転領域でそれぞれ取得される。こうした大きく異なる二つのエンジン運転領域にて取得された酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2を用いて上記式(5)により初動遅れ時間Tを求めることで、同初動遅れ時間Tにおける酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の計測誤差等による適正値からのずれが生じにくくなる。
(2)アクティブ空燃比制御中と燃料カット制御中とでそれぞれ酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2を取得し、それらに基づき初動遅れ時間Tを算出することになるため、アクティブ空燃比制御中における酸素吸蔵量及び吸入空気量の取得については一度だけでよくなる。また、燃料カット制御での燃料噴射の停止は、アクティブ空燃比制御の実行条件の成立に伴う同制御の実行と比較して、高い頻度で実行される。そして、こうした燃料カット制御での燃料噴射の停止に際し、酸素吸蔵量C2max及び吸入空気量Ga2の取得が行われる。従って、上記初動遅れ時間Tを求めるための酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2を取得すべく、何度もアクティブ空燃比制御を実行しなければならなくなるという状況が生じ、それに起因して上記酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の取得の完了に時間がかかるということはない。このため、酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の取得を短い時間で完了することができ、ひいては上記初動遅れ時間Tを短時間で求めることができるようになる。
(3)排気中の酸素濃度の変化に対する酸素センサ18の出力信号VOの初動タイミングの遅れに関係する同センサ18の異常の有無を判断すべく、上記初動遅れ時間Tと閾値との比較を行う際には、その初動遅れ時間Tが閾値以上であるときに酸素センサ18が異常である旨判断される。一方、上記初動遅れ時間Tが閾値未満であるときには酸素センサ18が正常である旨判断される。従って、初動遅れ時間Tにおける酸素吸蔵量C1max,C2max及び吸入空気量Ga1,Ga2の計測誤差等による適正値からのずれが生じにくくなることで、そのずれによって上記初動遅れ時間Tに基づく酸素センサ18の異常の有無の判断が不正確になることを抑制でき、ひいては同判断の結果を正確なものとすることができる。また、上記初動遅れ時間Tを短時間で求めることができるようになることで、その初動遅れ時間Tに基づく酸素センサ18の異常の有無の判断を短時間で行うことができるようにもなる。
(4)上記初動遅れ時間Tが求められた後、その初動遅れ時間Tに基づく補正の対象として各酸素吸蔵量C1max,C2maxのうちの一方(この例ではC2max)が選択される。そして、その選択された酸素吸蔵量C2maxに対し、上記初動遅れ時間T及び吸気量係数K2に基づく補正が加えられる。そして、この補正後の酸素吸蔵量(補正後酸素吸蔵量A)に基づき三元触媒の劣化の有無が判断される。ここで、酸素吸蔵量に関しては、酸素センサ18の上記初動遅れ時間Tが長くなるほど、エンジン1の空燃比がリッチ側とリーン側との間で変化する際、その変化に対応した酸素センサ18の出力信号VOの変化が遅れて上記酸素吸蔵量を算出するための期間が長くなるため、適正値(真値A)に対し増大傾向を示すようになる。従って、仮に上述したように酸素センサ18の上記初動遅れ時間Tの影響を受けた酸素吸蔵量C2maxに基づき三元触媒の劣化の有無を判断したとすると、その判断の結果が不正確なものとなるおそれがある。しかし、三元触媒の劣化の有無の判断は、酸素センサ18の上記初動遅れ時間Tに応じて補正した後の酸素吸蔵量(補正後酸素吸蔵量A)に基づきなされるため、その判断の結果が上述したように不正確なものとなることは抑制される。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・上記補正後酸素吸蔵量Aに関しては、初動遅れ時間Tに対し上記吸気量係数K1を乗算して得られる項「K1・T」の分だけ、酸素吸蔵量C1maxを減量補正することによって算出することもできる。
・補正後酸素吸蔵量Aに基づき触媒の劣化の有無を判断する代わりに、酸素吸蔵量C1maxと酸素吸蔵量C2maxとの一方もしくは両方に基づき判断してもよい。
・三元触媒の劣化の有無の判断については必ずしも行う必要はない。
・触媒下流センサとして酸素センサ18の代わりに空燃比センサを設けてもよい。
・触媒上流センサとして空燃比センサ17の代わりに酸素センサを設けてもよい。