JP7241529B2 - 皮膜形成性外用製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膜形成性外用製剤に関する。より詳細には、本発明は、皮膜形成性外用製剤から形成される皮膜からの有効成分の放出率を向上させる皮膜形成性外用製剤に関する。
ひび、あかぎれ、さかむけ、切り傷等の皮膚損傷部を細菌の侵入や感染から予防する衛生材料として、絆創膏が知られている。絆創膏は、粘着剤を積層させたテープ基材の中央部にガーゼや吸収パッドが取り付けられたテープ状絆創膏タイプと、使用前は液状を呈するが、皮膚に適用すると皮膜を形成する液体絆創膏に大別される。このうち液体絆創膏は、粘着剤を使用しておらず、剥離時の物理的刺激も緩和されており、更に、損傷部位に選択的に塗布することにより損傷部位の大きさや形状に応じた皮膜を形成できるため、テープ状絆創膏の前記欠点を補うものとして注目を浴びている。
従来、液体絆創膏において、フィルム形成成分としてニトロセルロースが使用されており、ニトロセルロースを利用した液体絆創膏の製剤処方も種々報告されている。例えば、特許文献1には、ニトロセルロースを酢酸3-メチルブチル、酢酸イソブチル又はアセトンに溶解し、更にエチルアルコールを添加して製剤化したフィルムガード製剤が開示されている。このような液体絆創膏から形成される皮膜は水に対して耐性を有しており、皮膚を有効に保護できる。
一方で、水洗により容易に除去可能皮膜を形成する液体絆創膏も報告されている。例えば、特許文献2には、特定のアクリルアミド系共重合体と特定の脂肪族アルコールとを含む皮膜形成用組成物が開示されているとともに、さらに有効成分を含む場合には皮膜中の有効成分の放出性に優れ、ドラッグデリバリーシステム製剤としての有用性が高い液体絆創膏となることが開示されている。
特開2008-105979号公報 特開2007-119428号公報
特定のアクリルアミド系共重合体と特定の脂肪族アルコールとを含む皮膜形成用組成物では、有効成分を含ませると、皮膜中の有効成分を効率的に放出することが可能である。しかしながら、有効成分の放出により皮膚へ有効成分を供給するには、皮膜を皮膚表面に留まらせることが大前提である。当該皮膜形成用組成物のように水洗いにより除去可能に設計されている組成では、皮膜が水に接触することで容易に皮膜が剥がれるため、皮膜を皮膚表面に留まらせることができる時間は必然的に短くなる。このため、有効成分を効果的に皮膚へ供給することができなくなる。
そこで本発明は、耐水性皮膜を形成し、且つ、耐水性皮膜からの有効成分を効率的に放出することができる皮膜形成性外用製剤を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の結果、(A)炭素数1~4の一価アルコール、(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、及び(C)ニトロセルロース、を含み、有効成分として(D)グリチルレチン酸、その誘導体、及び/又はその塩(以下、グリチルレチン酸類とも記載する)を配合した皮膜形成性外用製剤において、(B)成分の含有量を所定量以上とすることで、有効成分である(D)成分の放出性が向上することを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.(A)炭素数1~4の一価アルコール、(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、(C)ニトロセルロース、及び(D)グリチルレチン酸、その誘導体、及び/又はその塩を含み、
前記(B)成分の含有量が40重量%以上であることを特徴とする、皮膜形成性外用製剤。
項2. 前記(B)成分の含有量が40~52重量%である、項1に記載の皮膜形成性外用製剤。
項3. 前記(B)成分が、酢酸エチルと酢酸ブチルとを含む、項1又は2に記載の皮膜形成性外用製剤。
項4. 更に(E)可塑剤を含む、項1~3のいずれかに記載の皮膜形成性外用製剤。
項5. 前記(E)成分の含有量が0重量%超6重量%以下である、項4に記載の皮膜形成性外用製剤。
項6. 前記(E)成分が、炭素数5~22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1~9の一価アルコールのエステルである、項4又は5に記載の皮膜形成性外用製剤。
項7. (A)炭素数1~4の一価アルコール、(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、(C)ニトロセルロース、及び(D)グリチルレチン酸、その誘導体、及び/又はその塩を含む皮膜形成性外用製剤において、前記皮膜形成性外用製剤から形成される皮膜からの前記(D)成分の放出率を向上させる方法であって、前記皮膜形成性外用製剤に、前記(B)成分を40重量%以上の含有量となるように配合することを特徴とする、皮膜からの放出率向上方法。
本発明によれば、耐水性皮膜を形成し、且つ、耐水性皮膜からの有効成分を効率的に放出することができる皮膜形成性外用製剤が提供される。
1.皮膜形成性外用製剤
本発明の皮膜形成性外用製剤は、(A)特定のアルコール(以下において(A)成分とも記載する)、所定量の(B)特定のエステル(以下において(B)成分とも記載する)、(C)ニトロセルロース(以下において(C)成分とも記載する)、及び(D)グリチルレチン酸類(以下において(D)成分とも記載する)を含むことを特徴とする。以下、本発明の皮膜形成性外用製剤について詳述する。
(A)炭素数1~4の一価アルコール
本発明の皮膜形成性外用製剤は、(A)成分として、炭素数1~4の一価アルコールを含有する。
炭素数1~4の一価アルコールの種類については、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールが挙げられる。これらのアルコールの中でも、好ましくは炭素数2~4の一価アルコール、より好ましくはエタノール、イソプロパノール、及びn-ブタノール、さらに好ましくはエタノール及びイソプロパノールが挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(A)成分として、炭素数1~4の一価アルコール中から、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、(A)成分の好適な態様としてイソプロパノールが挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、10~70重量%が挙げられる。より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、(A)成分の含有量としては、好ましくは15~65重量%、より好ましくは30~50重量%、更に好ましくは35~45重量%、特に好ましくは35~40重量%が挙げられる。
(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル
本発明の皮膜形成性外用製剤は、(B)成分として、炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステルを含有する。「炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル」とは、炭素数2~4のモノカルボン酸1分子と炭素数1~5の一価アルコール1分子がエステル結合した化合物である。
前記エステルを構成する炭素数2~4のモノカルボン酸の種類については、特に制限されないが、例えば、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。これらのモノカルボン酸の中でも、好ましくは、炭素数2又は3のモノカルボン酸、更に好ましくは、酢酸、乳酸が挙げられる。
また、前記エステルを構成する炭素数1~5の一価アルコールの種類については、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ベンジルアルコール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2ジメチル-1-プロパノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノールが挙げられる。これらのアルコールの中でも、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、1-ペンタノール、ベンジルアルコール、更に好ましくはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、1-ペンタノールが挙げられる。
前記エステルとして、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル(酢酸n-プロピル)、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(酢酸n-ブチル)、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル(酢酸1-ペンチル)、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸イソアミル(酢酸3-メチルブチル)、酪酸エチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。これらの中でも、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、前記エステルとして、好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル;更に好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(B)成分として、前記エステルの中から、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、(B)成分として、沸点が異なる2種以上のエステルを組み合わせて使用することにより、本発明の皮膜形成性外用製剤の皮膜形成速度を適宜調節することもできる。例えば、沸点が100℃未満の上記エステル(例えば、酢酸エチル)と、沸点が100℃以上の上記エステル(例えば、酢酸ブチル)を併用し、沸点が100℃未満の上記エステルの比率を高く設定すると、皮膜形成速度を早くすることができ、沸点が100℃未満の上記エステルの比率を低く設定すると、皮膜形成速度を遅くすることができる。
(B)成分の好適な例としては、同じ量の(B)成分で比較すると、酢酸エチルと酢酸ブチルを組み合わせて使用することが、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から好ましい。酢酸エチル1重量部当たりの酢酸ブチルの含有量としては、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、0.05~0.4重量部、好ましくは0.08~0.4重量部、より好ましくは0.11~0.3重量部、さらに好ましくは0.2~0.3重量部が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(B)成分の含有量は、40重量%以上である。(B)成分の含有量が40重量%を下回ると、所望の有効成分の放出向上効果を得ることができない。より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、例えば、(B)成分の含有量は、好ましくは40~60重量%、より好ましくは40~52重量%、さらに好ましくは47~52重量%が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、これらの両成分の各含有量を充足する範囲で適宜設定すればよいが、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、例えば、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が0.9~2.5重量部、好ましくは0.95~2重量部、より好ましくは1~1.5重量部、さらに好ましくは1.2~1.4重量部が挙げられる。
(C)ニトロセルロース
本発明の皮膜形成性外用製剤は、(C)成分としてニトロセルロースを含有する。ニトロセルロースは、皮膚上形成される耐水性皮膜の基剤としての役割を果たす。
本発明に使用されるニトロセルロースは、皮膚上で皮膜を形成できる限り、その分子量、窒素含有量等については、特に制限されない。
また、本発明の皮膜形成性外用製剤では、ニトロセルロースとして、ピロキシリンを使用することもできる。ピロキシリンとは、ニトロセルロースが溶媒に潤されているものであり、具体的には、ニトロセルロース70重量%程度とイソプロパノール30重量%程度の混合物が挙げられる。本発明において、(C)成分として、市販されているピロキシリンを使用することもできる。市販されているピロキシリンとしては、具体的には、T.N.C.Industrial Co.,Ltd製のRS 1/32 sec、RS 1/16 sec、RS 1/8 sec、RS 1/8 L sec、RS 1/8 H sec、RS 1/4 sec、RS 1/4 H sec、RS 1/2 sec、RS 1 sec、RS 5~6 sec、RS 10~15 sec、RS 15~20 sec、RS 30~40 sec、RS 60~80 sec、RS 120 sec、RS 150 sec、RS 300 sec、RS 500 sec、RS 800 sec、RS 1200 sec、RS 2000 sec;Korea CNC Ltd製のRS 1/16、RS 1/8、RS 1/4、RS 1/2、RS 1、RS 2、RS 5、RS 7、RS 20、RS 60、RS 120、RS 500、RS 1000、RS 2000等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、(C)成分としてピロキシリンを使用する場合には、ピロキシリンに内在する炭素数1~4の一価アルコールは、前記(A)成分の一部を構成することになる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(C)成分の含有量は、皮膚上で皮膜を形成可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、3.5~14重量%、好ましくは5~11重量%、より好ましくは7~9.5重量%が挙げられる。
(D)グリチルレチン酸類
本発明の皮膜形成性外用製剤は、(D)成分としてグリチルレチン酸類を含有する。グリチルレチン酸類は、グリチルレチン酸、その誘導体、及びそれらの塩の少なくともいずれかである。(D)成分は皮膜形成性外用製剤の有効成分として含まれており、本発明の皮膜形成性外用製剤においては、形成された皮膜からの(D)成分の放出率が向上されている。
グリチルレチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
グリチルレチン酸の誘導体としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド等が挙げられる。これらのグリチルレチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
グリチルレチン酸及び/又はその誘導体の塩としては、薬学的又は香粧学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(D)成分として、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルレチン酸の誘導体、及びグリチルレチン酸の誘導体の塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの(D)成分の中でも、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、好ましくはグリチルレチン酸が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(D)成分の含有量については、特に制限されず、付与すべき薬効に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、更に好ましくは0.1~0.5重量%が挙げられる。また、本発明の皮膜形成性外用製剤においては、有効成分の放出率が向上しているため、0.01~0.4重量%、又は0.05~0.35重量%といった比較的少ない量であっても、効果的に有効成分を皮膚に供給することができる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(B)成分に対する(D)成分の比率については、これらの両成分の各含有量を充足する範囲で適宜設定すればよいが、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、例えば、(B)成分100重量部当たり、(D)成分が0.8重量部以下、好ましくは0.3~0.8重量部、より好ましくは0.5~0.7重量部、さらに好ましくは0.59~0.7重量部、特に好ましくは0.59~0.65重量部が挙げられる。
(E)可塑剤
本発明の皮膜形成性外用製剤は、皮膚上に形成させる皮膜に対して、良好な柔軟性や皮膚付着性を付与するために、必要に応じて、(E)成分として可塑剤を含んでいてもよい。
本発明で使用される可塑剤としては、薬学的に許容できるものであれば、特に制限されないが、例えば、植物油、炭素数5~22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1~9の一価アルコールのエステル、テルペノイド、多価アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、鉱物油、ポリエーテル、ポリエステル等が挙げられる。より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、好ましくは炭素数5~22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1~9の一価アルコールのエステルが挙げられる。
植物油としては、具体的には、ヒマシ油、綿実油、大豆油、ゴマ油、アルモンド油、ウイキョウ油、トウモロコシ油、オリブ油、オレンジ油、カミツレ油、ケイヒ油、小麦麦芽油、サフラワー油、シソ油、シトロネラー油、ショウキョウ油、スペアミント油、コメ油、チョウジ油、ツバキ油、テレビン油、トウヒ油、ナタネ油、ハッカ油、ヒマラヤスギ油、ヒマワリ油、ベルガモット油、ヤシ油、ユーカリ油、ラッカセイ油、ラベンダー油、卵黄油、レモン油、ローズ油、ロート油、ローマカミツレ油等が挙げられる。これらの植物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
炭素数5~22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1~9の一価アルコールのエステルとしては、具体的には、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられ、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、好ましくはパルミチン酸イソプロピルが挙げられる。これらのエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
テルペノイドとしては、具体的には、カンフル、メントール、ボルネオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、ゲラニオール、ハッカ油等が挙げられる。これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの可塑剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(E)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、例えば0重量%超10重量%以下が挙げられる。より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、好ましくは0重量%超6重量%以下、より好ましくは2~6重量%、さらに好ましくは4~6重量%、特に好ましくは4~5.5重量%が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、(E)成分を含有させる場合、(D)成分に対する(E)成分の比率については、これらの両成分の各含有量を充足する範囲で適宜設定すればよいが、より一層優れた有効成分の放出向上効果を得る観点から、例えば、(D)成分1重量部当たりの(E)成分の含有量として0重量部超20重量部以下、好ましくは2~18重量部、より好ましくは10~18重量部、特に好ましくは15~17重量部が挙げられる。
その他の成分
本発明の皮膜形成性外用製剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、水、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルエーテル等の溶剤を更に含んでいてもよい。但し、(A)成分及び(B)成分以外の溶剤は、皮膜の透明性を損なったり、水との接触による皮膜の白濁化やゲル化を生じ易くなったりすることがあるため、(A)成分及び(B)成分以外の溶剤を配合する場合には、かかる特性を考慮する必要がある。更に、ジエチルエーテルは、揮発性の高さに起因する発火性から製造上の取り扱いに注意が必要であり、また、保存中の乾燥による固化、特有の匂い等の原因にもなり得るので、ジエチルエーテルを配合する場合には、このような特性に配慮することが求められる。本発明の皮膜形成性外用製剤における(A)成分及び(B)成分以外の溶剤の含有量としては、例えば、4重量%以下程度、特に2重量%以下程度であることが望ましい。
更に、本発明の皮膜形成性外用製剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、(D)成分以外の薬効成分を含んでいてもよい。このような薬効成分としては、例えば、抗炎症剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、殺菌剤、抗真菌剤、ビタミン類、保湿剤、美白剤、組織修復剤、皮膚保護剤、角質軟化剤、局所刺激剤、鎮痒剤、収斂剤、紫外線防御剤、シリコンゲル、生薬エキス、アミノ酸類、ミネラル類等が挙げられる。
また、本発明の皮膜形成性外用製剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、(D)成分以外の増粘剤、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、乳化剤、可塑剤、防腐剤、香料、清涼化剤、着色剤、分散剤、流動化剤、粘稠化剤、吸着剤、保湿剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
製剤形態
本発明の皮膚洗浄剤組成物の製剤形態については、皮膚に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられ、形成する皮膜の厚みを十分に確保する観点から、好ましくは半固形状が挙げられる。本発明の皮膚洗浄剤組成物が半固形状である場合の具体的な粘度としては、形成する皮膜の厚みを十分に確保する観点から、好ましくは5000~15000mPa・s、より好ましくは5500~13000mPa・s、更に好ましくは6000~11000mPa・s、特に好ましくは6000~8000mPa・sが挙げられる。ここで、粘度とは、20~22℃において、B型粘度計(スピンドルNo.3、12rpm)によって測定される値である。
皮膜形成性外用製剤の製造方法
本発明の皮膜形成性外用製剤は、上記(A)~(D)成分、及び必要に応じて、上記(E)成分、上記他の溶剤、薬効成分、添加剤等を所望量混合することにより調製される。
皮膜形成性外用製剤の使用方法
本発明の皮膜形成性外用製剤は、有効成分である(D)成分の供給が求められている部位であれば、特に制限されず、例えば、上肢、下肢、胸部、腹部、背部、腰部、足首、手首、肘、膝、指、足背部、足底部、踵等が挙げられる。本発明の皮膜形成性外用製剤は有効成分である(D)成分の放出率が向上しているため、皮膚の創傷部に対して適用されることがより好ましい。創傷部としては、(D)成分による効能が期待されるものであれば特に限定されず、例えば、すり傷、掻き傷、靴ずれ、ひび、あかぎれ、切り傷、刺し傷、皮むけ、その他角質層の薄化又は欠落を生じている部位が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤を皮膚に塗布する方法については、特に制限されず、例えば、指での塗布、チューブの容器口を用いた直接塗布、刷毛やヘラ等を用いた塗布等による方法であればよいが、使用者の利便性の観点から、刷毛を用いた塗布が好ましい。また、使用者の利便性を高めるために、本発明の皮膜形成性外用製剤は、刷毛が付属された容器に収容して提供されることが望ましい。
2.皮膜からの放出率向上方法
前述するように、炭素数1~4の一価アルコールと、炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステルと、ニトロセルロースと、グリチルレチン酸類とを含む皮膜形成性外用製剤において、炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステルの含有量を40重量%以上となるように調節することで、形成される皮膜からのグリチルレチン酸類の放出率を向上させることができる。従って、本発明は、更に、(A)炭素数1~4の一価アルコール、(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、(C)ニトロセルロース、及び(D)グリチルレチン酸、その誘導体、及び/又はその塩を含む皮膜形成性外用製剤において、前記皮膜形成性外用製剤から形成される皮膜からの前記(D)成分の放出率を向上させる方法であって、前記皮膜形成性外用製剤に、前記(B)成分を40重量%以上の含有量となるように配合することを特徴とする、皮膜からの放出率向上方法を提供する。
なお、本発明において、皮膜からの放出率を向上するとは、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)を含む皮膜形成性外用製剤において、(B)成分の含有量が40重量%未満である場合に比べ、皮膜からの(D)成分の放出量が多くなることをいう。皮膜からの(D)成分の放出量は、第十七改正日本薬局方に規定されたパドルオーバーディスク法により測定することができる。
前記皮膜からの放出率向上方法において、使用する成分の種類や使用量、皮膜形成性外用製剤の形態、使用方法等については、前記「1.皮膜形成性外用製剤」の欄に示す通りである。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例
[皮膜形成性外用製剤の調製]
表1に示す組成の皮膜形成性外用製剤を調製した。具体的には、(A)成分、(D)成分、及び(E)成分を撹拌混合し、これに(C)成分を添加して分散させた後、(B)成分を加えて均一に撹拌溶解して皮膜形成性外用製剤を得た。なお、ニトロセルロースについてはピロキシリンを用い、ピロキシリン中のニトロセルロースが表中の配合量となるように調製した。
[グリチルレチン酸の放出性試験]
(放出試験)
第十七改正日本薬局方に規定されたパドルオーバーディスク法に準拠し、パドルオーバーディスク(富山産業株式会社製、網125μm、SUS316製、D2414)に、調製された皮膜形成性外用製剤約0.1gを素早くドーナツ状に塗布し、約2時間風乾して皮膜を形成した。試験液(放出されるグリチルレチン酸を受容する液)としては、32℃±0.5℃に加温したエタノール900mLを用いた。皮膜形成性外用製剤で皮膜を形成したディスク1個を、ベッセル内に収容した試験液中で、パドル回転数を毎分50回転に設定した試験に供した。回転開始1分後にベッセル内の試験液を採取し、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過して試料溶液とした。
(標準溶液の調製)
グリチルレチン酸標準品をエタノールに加えて超音波照射で溶解させることで、0.5μg/mLグリチルレチン酸標準溶液を調製した。
(定量試験)
標準溶液及び試料溶液25μLについて、高速液体クロマトグラフを用いた以下の条件での試験に供し、グリチルレチン酸を測定した。
<高速液体クロマトグラフ操作条件>
検出器:紫外吸光光度計
カラム:Inertsil ODS-4(3μm,4.6mm×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/リン酸(1v/v%→100v/v%グラジエント)混液(3:2(v:v))
流量:0.75mL/min
測定波長:254nm
標準溶液0.5μg/mLのグリチルレチン酸とピーク面積とから、以下の式に基づいて試料中のグリチルレチン酸放出率を算出した。結果を表1に示す。
Figure 0007241529000001
Figure 0007241529000002
表1から明らかなように、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む皮膜形成性外用製剤のうち、(B)成分が40重量%未満である皮膜形成性外用製剤(比較例1~4)では皮膜からのグリチルレチン酸の放出率が低いことに対し、(B)成分が40重量%以上である皮膜形成性外用製剤(実施例1~5)では皮膜からのグリチルレチン酸の放出率が顕著に向上した。

Claims (7)

  1. (A)炭素数1~4の一価アルコール、(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、(C)ニトロセルロース、並びに(D)グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、及び/又はそれらの塩を含み、
    前記(B)成分の含有量が45重量%以上であることを特徴とする、皮膜形成性外用製剤(但し、6~13重量%の前記(C)成分と5~15重量%の植物油とを含有し、前記植物油/前記(C)成分重量比が0.8~1.5であるものを除く)
  2. 前記(B)成分の含有量が45~52重量%である、請求項1に記載の皮膜形成性外用製剤。
  3. 前記(B)成分が、酢酸エチルと酢酸ブチルとを含む、請求項1又は2に記載の皮膜形成性外用製剤。
  4. 更に(E)可塑剤を含む、請求項1~3のいずれかに記載の皮膜形成性外用製剤。
  5. 前記(E)成分の含有量が0重量%超6重量%以下である、請求項4に記載の皮膜形成性外用製剤。
  6. 前記(E)成分が、炭素数5~22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1~9の一価アルコールのエステルである、請求項4又は5に記載の皮膜形成性外用製剤。
  7. (A)炭素数1~4の一価アルコール、(B)炭素数2~4のモノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、(C)ニトロセルロース、並びに(D)グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、及び/又はそれらの塩を含む皮膜形成性外用製剤(但し、6~13重量%の前記(C)成分と5~15重量%の植物油とを含有し、前記植物油/前記(C)成分重量比が0.8~1.5であるものを除く)において、前記皮膜形成性外用製剤から形成される皮膜からの前記(D)成分の放出率を向上させる方法であって、前記皮膜形成性外用製剤に、前記(B)成分を45重量%以上の含有量となるように配合することを特徴とする、皮膜からの放出率向上方法。
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