JP5950528B2 - 皮膜形成性外用製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膜形成性外用製剤に関する。より詳細には、本発明は、水と接触しても白濁化やゲル化を抑制して皮膜を皮膚上で形成可能な皮膜形成性外用製剤に関する。
ひび、あかぎれ、さかむけ、切り傷等の皮膚損傷部を細菌の侵入や感染から予防する衛生材料として、絆創膏が知られている。絆創膏は、粘着剤を積層させたテープ基材の中央部にガーゼや吸収パッドが取り付けられたテープ状絆創膏タイプと、使用前は液状を呈するが、皮膚に適用すると皮膜を形成する液体絆創膏に大別される。テープ状絆創膏では、粘着剤が皮膚を刺激したり、剥離時に皮膚に物理的刺激を与えたりするため、皮膚に発赤、かぶれ、痒み等を生じさせることがある。更に、皮膚損傷部位の大きさや形状は、損傷部位や損傷原因等によって種々異なるため、大きさや形状が予め決められているテープ状絆創膏では、皮膚損傷部位を選択的に被覆することができないという欠点もある。これに対して、液体絆創膏は、粘着剤を使用しておらず、剥離時の物理的刺激も緩和されており、更に、損傷部位に選択的に塗布することにより損傷部位の大きさや形状に応じた皮膜を形成できるため、テープ状絆創膏の前記欠点を補うものとして注目をあびている。
従来、液体絆創膏において、フィルム形成成分としてニトロセルロースが使用されており、ニトロセルロースを利用した液体絆創膏の製剤処方も種々報告されている。例えば、特許文献1には、ニトロセルロースを酢酸3−メチルブチル、酢酸イソブチル又はアセトンに溶解し、更にエチルアルコールを添加して製剤化したフィルムガード製剤が開示されている。また、特許文献2には、ニトロセルロースと溶剤を含む油性剤と、水溶性高分子を含む水溶液とが油中水型に乳化された皮膚外用剤が開示されている。更に、特許文献3には、1〜8重量%のニトロセルロースとポリビニルピロリドンを含み、ピロキシリン/ポリビニルピロリドンの重量比が3.5〜0.5であり、アセトン及び低級アルコールの混合溶媒に溶解された皮膚外用剤が開示されている。これらの従来の液体絆創膏に関する製剤処方では、外部からの物理的刺激の緩和や低減、化学的刺激や細菌感染に対する保護、皮膚に対する軟化作用の改善、剥離性の向上、速乾性や接着性の向上等が図られている。
液体絆創膏は、皮膚に塗布した後に溶剤が揮発することにより、皮膚上に皮膜を形成するが、従来の液体絆創膏では、溶剤の揮発前に水と接触すると、形成される皮膜が白濁化したり、ゲル化するという欠点がある。皮膚上に形成された皮膜のゲル化は、皮膚への付着性を喪失させ、バリア機能を損なうのみならず、皮膜に汚れや細菌が付着する原因にもなる。また、皮膚上に形成された皮膜の白濁化は、外観劣化だけでなく、皮膜強度の低下、皮膚損傷部の状態の視認性等を損なわせることにもなる。
今日の日常生活では、炊事、洗濯、掃除、入浴等において水との接触は避けることができず、液体絆創膏を塗布した後に十分に乾燥しない状態で水に接触したり、液体絆創膏を濡れた状態の皮膚に塗布する機会が多いのが現状であり、液体絆創膏が水と接触しても、白濁化やゲル化を生じさせることなく皮膜を形成できる液体絆創膏の開発が望まれている。
特開2008−105979号公報 特開平2−311414号公報 特開平5−058914号公報
本発明は、水と接触しても白濁化やゲル化を抑制して皮膜を皮膚上で形成可能な皮膜形成性外用製剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、(A)炭素数1〜4の一価アルコール及びベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール、(B)炭素数2〜4のモノカルボン酸と炭素数1〜5の一価アルコールとのエステル、並びに(C)ニトロセルロースを含み、前記(A)成分の含有量が15〜60重量%であり、且つ前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分が0.4〜6重量部の比率を充足する皮膜形成性外用製剤は、水と接触しても白濁化やゲル化を抑制でき、安定に皮膜を皮膚上で形成可能であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の皮膜形成性外用製剤を提供する。
項1.(A)炭素数1〜4の一価アルコール及びベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール、
(B)炭素数2〜4のモノカルボン酸と炭素数1〜5の一価アルコールとのエステル、及び
(C)ニトロセルロース
を含み、前記(A)成分の含有量が15〜60重量%であり、且つ前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分が0.4〜6重量部の比率で含まれることを特徴とする、皮膜形成性外用製剤。
項2.前記(A)成分が、エタノール、イソプロパノール、及びベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の皮膜形成性外用製剤。
項3.前記(B)成分が、酢酸エチル及び酢酸ブチルよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の皮膜形成性外用製剤。
項4.更に、(D)可塑剤を含む、項1〜3のいずれかに記載の皮膜形成性外用製剤。
項5.前記(D)成分が、ヒマシ油、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル及びカンフルよりなる群から選択される少なくとも1種である、項4に記載の皮膜形成性外用製剤。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、皮膚への塗布後に水と接触したり、濡れた状態の皮膚に塗布しても、形成される皮膜が白濁化したり、ゲル化するのを抑制できるので、皮膜強度低下、皮膚付着性低下、外観劣化、患部の視認性低下等の皮膜機能劣化を抑制することができる。
また、本発明の皮膜形成性外用製剤は、水との接触による白濁化を招き易い可塑剤(特に、ヒマシ油等の植物油)を配合しても、水との接触による白濁化を有効に抑制できるので、これらの可塑剤の配合によって、皮膚上での展延性や付着性を向上させることも可能である。
更に、本発明の皮膜形成性外用製剤は、原料成分が溶解し易い処方設計になっており、工業的な製造が簡便に行えるという利点もある。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、(A)特定のアルコール、(B)特定のエステル、及び(C)ニトロセルロースを含み、当該(A)成分の含有量と、当該(A)成分と当該(B)成分の比率が特定の範囲を充足していることを特徴とする。以下、本発明について詳述する。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、炭素数1〜4の一価アルコール及びベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール(本明細書において「(A)成分」と表記することもある)を含有する。
炭素数1〜4の一価アルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールが挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数2〜4の一価アルコール及びベンジルアルコール、更に好ましくはエタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、及びベンジルアルコール、特に好ましくはエタノール、イソプロパノール、及びベンジルアルコールが挙げられる。
本発明において、(A)成分として、炭素数1〜4の一価アルコール及びベンジルアルコールの中から、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
皮膚上で形成される皮膜において、水との接触により生じる白濁化及びゲル化を一層効果的に抑制するという観点から、(A)成分の好適な態様として、炭素数1〜4の一価アルコール、又は炭素数1〜4の一価アルコールとベンジルアルコールの組み合わせ;更に好適な態様として、エタノール及びイソプロパノールの少なくとも1種、又はエタノール及びイソプロパノールの少なくとも1種とベンジルアルコールの組み合わせ;好適な態様として、イソプロパノール単独、エタノールとイソプロパノールの組み合わせ、又はイソプロパノールとベンジルアルコールの組み合わせが挙げられる。特に、(A)成分として、炭素数1〜4の一価アルコールとベンジルアルコールを組み合わせて使用する場合には、水との接触による白濁化をより一層効果的に抑制することが可能になる。
(A)成分として、炭素数1〜4の一価アルコールとベンジルアルコールを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、炭素数1〜4の一価アルコール1重量部当たり、ベンジルアルコールが0.05〜2重量部、好ましくは0.05〜1.25重量部、より好ましくは0.05〜0.77重量部、更に好ましくは0.06〜0.56重量部が挙げられる。
また、(A)成分として、エタノールとイソプロパノールを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、イソプロパノール1重量部当たり、エタノールが1.5重量部以下であることが好ましい。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、上記(A)成分の含有量は、該製剤の総量当たり、15〜60重量%に設定される。水との接触により生じる白濁化及びゲル化をより効果的に抑制するという観点から、(A)成分の含有量として、好ましくは18〜60重量%、より好ましくは23〜60重量%、更に好ましくは28〜50重量%が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤における上記(A)成分の好適な含有量として、より具体的には、以下の範囲が例示される。
(A)成分としてイソプロパノールを単独で使用する場合:15〜60重量%、好ましくは18〜60重量%、より好ましくは23〜60重量%、更に好ましくは28〜50重量%;
(A)成分としてイソプロパノールとエタノールを組み合わせて使用する場合:好ましくは18〜60重量%、更に好ましくは28〜50量%;
(A)成分としてイソプロパノールとベンジルアルコールを組み合わせて使用する場合:15〜60重量%、好ましくは18〜60重量%、より好ましくは23〜60重量%、更に好ましくは28〜50重量%、特に好ましくは30〜40重量%が挙げられる。
また、本発明の皮膜形成性外用製剤は、炭素数2〜4のモノカルボン酸と炭素数1〜5の一価アルコールとのエステル(本明細書において「(B)成分」と表記することもある)を含有する。「炭素数2〜4のモノカルボン酸と炭素数1〜5の一価アルコールとのエステル」とは、炭素数2〜4のモノカルボン酸1分子と炭素数1〜5の一価アルコール1分子がエステル結合した化合物を意味する。
炭素数2〜4のモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。これらのモノカルボン酸の中でも、好ましくは、炭素数2又は3のモノカルボン酸、更に好ましくは、酢酸、乳酸が挙げられる。
また、炭素数1〜5の一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ベンジルアルコール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールが挙げられる。これらのアルコールの中でも、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、1−ペンタノール、ベンジルアルコール、更に好ましくはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、1−ペンタノールが挙げられる。
(B)成分として使用されるエステルとして、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル(酢酸n−プロピル)、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(酢酸n−ブチル)、酢酸sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル(酢酸1−ペンチル)、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸イソアミル(酢酸3−メチルブチル)、酪酸エチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。これらの中でも、水との接触により生じる白濁化及びゲル化を一層効果的に抑制するという観点から、(B)成分として、好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル;更に好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
本発明において、(B)成分として、上記エステルの中から、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、(B)成分として、沸点が異なる2種以上のエステルを組み合わせて使用することにより、本発明の皮膜形成性外用製剤の皮膜形成速度を適宜調節することもできる。例えば、沸点が100℃未満の上記エステル(例えば、酢酸エチル)と、沸点が100℃以上の上記エステル(例えば、酢酸ブチル)を併用し、沸点が100℃未満の上記エステルの比率を高く設定すると、皮膜形成速度を早くすることができ、沸点が100℃未満の上記エステルの比率を低く設定すると、皮膜形成速度を遅くすることができる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、上記(B)成分は、上記(A)成分1重量部当たり、0.4〜6重量部を充足する範囲で含有する。水との接触により生じる白濁化及びゲル化をより効果的に抑制するという観点から、上記(A)成分1重量部に対する上記(B)成分の比率として、好ましくは0.4〜3.5重量部、更に好ましくは0.4〜2.5重量部、特に好ましくは0.7〜1.9重量部が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、上記(B)成分の含有量は、前述する(A)成分に対する比率を充足する範囲で適宜設定されるが、例えば、該製剤の総量当たり、25〜65重量%、好ましくは25〜60重量%、更に好ましくは35〜55重量%が挙げられる。
更に、本発明の皮膜形成性外用製剤は、ニトロセルロース(本明細書において「(C)成分」と表記することもある)を含有する。本発明に使用されるニトロセルロースは、皮膚上で皮膜を形成できる限り、その分子量、窒素含有量等については、特に制限されず、一般的な液体絆創膏の皮膜形成成分として使用可能なものを用いることができる。
また、ニトロセルロースとして、ピロキシリンを使用することもできる。ピロキシリンとは、ニトロセルロースが溶媒に潤されているものであり、具体的には、ニトロセルロース70重量%程度とイソプロパノール30重量%程度の混合物が挙げられる。本発明において、(C)成分として、市販されているピロキシリンを使用することもできる。市販されているピロキシリンとしては、具体的には、T.N.C. Industrial Co.,Ltd製のRS 1/32 sec、RS1/16 sec、RS 1/8 sec、RS 1/8 L sec、RS 1/8 H sec、RS 1/4 sec、RS 1/4 H sec、RS 1/2 sec、RS 1 sec、RS 5〜6 sec、RS 10〜15 sec、RS 15〜20 sec、RS 30〜40 sec、RS 60〜80 sec、RS 120 sec、RS 150 sec、RS 300 sec、RS 500 sec、RS 800 sec、RS 1200 sec、RS 2000 sec;KCNC社製のRS 1/16、RS 1/8、RS 1/4、RS 1/2、RS 1、RS 2、RS 5、RS 7、RS 20、RS 60、RS 120、RS 500、RS 1000、RS 2000等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、(C)成分としてピロキシリンを使用する場合には、ピロキシリンに内在する炭素数1〜4の一価アルコールは、上記(A)成分の一部を構成することになる。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、上記(C)成分の含有量は、皮膚上で皮膜を形成可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、該製剤の総量当たり、3.5〜14重量%、好ましくは5.6〜11.2重量%(ニトロセルロース70重量%とイソプロパノール30重量%の混合物であるピロキシリンを使用する場合、当該ピロキシリン含有量として、5〜20重量%、好ましくは8〜16重量%)が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、上記(A)〜(C)成分に加えて、皮膚上に形成される皮膜に対して、良好な柔軟性や皮膚付着性を付与するために、可塑剤(本明細書において「(D)成分」と表記することもある)を含んでいてもよい。本発明で使用される可塑剤としては、薬学的に許容できるものであれば、特に制限されないが、例えば、植物油、炭素数5〜22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1〜9の一価アルコールのエステル、テルペノイド、多価アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、鉱物油、ポリエーテル、ポリエステル等が挙げられる。上記植物油としては、具体的には、ヒマシ油、綿実油、大豆油、ゴマ油、アルモンド油、ウイキョウ油、トウモロコシ油、オリブ油、オレンジ油、カミツレ油、ケイヒ油、小麦麦芽油、サフラワー油、シソ油、シトロネラー油、ショウキョウ油、スペアミント油、コメ油、チョウジ油、ツバキ油、テレビン油、トウヒ油、ナタネ油、ハッカ油、ヒマラヤスギ油、ヒマワリ油、ベルガモット油、ヤシ油、ユーカリ油、ラッカセイ油、ラベンダー油、卵黄油、レモン油、ローズ油、ロート油、ローマカミツレ油等が挙げられる。上記エステルとしては、具体的には、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。上記テルペノイドとしては、具体的には、カンフル、メントール、ボルネオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、ゲラニオール、ハッカ油等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、具体的には、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、ラウリン酸デカグリセリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。上記鉱物油としては、具体的には、シリコーンオイル、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられる。上記ポリエーテルとしては、具体的には、ポリエチレングリコール等が挙げられる。上記ポリエステルとしては、具体的には、アジピン酸ポリエステル等が挙げられる。
これらの可塑剤の中でも、好ましくは、植物油、炭素数5〜22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1〜9の一価アルコールのエステル、テルペノイド;更に好ましくは、ヒマシ油、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、カンフルが挙げられる。
また、可塑剤は、皮膜形成性外用製剤の皮膚上での展延性や皮膜の柔軟性を向上させるという利点がある反面、従来の皮膜形成性外用製剤に配合すると、水との接触による製剤の顕著な白濁化を生じさせる一因になっていた。とりわけ植物油(特に、ヒマシ油)は、上記白濁化を誘発し易い可塑剤の一つである。これに対して、本発明によれば、植物油等の可塑剤を含有しても、水との接触により生じる白濁化を有効に抑制することができる。このような本発明の効果に鑑みれば、本発明に配合される好適な可塑剤の例として、植物油(特に、ヒマシ油)が挙げられる。
本発明において、これらの可塑剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の皮膜形成性外用製剤において、上記(D)成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、該製剤の総量当たり、1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは5〜20重量%が挙げられる。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、水、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルエーテル等の溶剤を更に含んでいてもよい。但し、上記(A)及び(B)成分以外の溶剤は、皮膜の透明性を損なったり、水との接触により皮膜の白濁化やゲル化を生じ易くすることがあるため、上記(A)及び(B)成分以外の溶剤を配合する場合には、かかる特性を考慮する必要がある。更に、ジエチルエーテルは、揮発性の高さに起因する発火性から製造上の取り扱いに注意が必要であり、また、保存中の乾燥による固化、特有の匂い等の原因にもなり得るので、ジエチルエーテルを配合する場合には、このような特性に配慮することが求められる。上記(A)及び(B)成分以外の溶剤の含有量としては、例えば、本発明の皮膜形成性外用製剤の総量当たり、4重量%以下程度、特に2重量%以下程度であることが望ましい。
また、本発明の皮膜形成性外用製剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、抗炎症剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、殺菌剤、抗真菌剤、ビタミン類、保湿剤、美白剤、組織修復剤、皮膚保護剤、角質軟化剤、局所刺激剤、鎮痒剤、収斂剤、紫外防御剤、シリコンゲル、生薬エキス、アミノ酸類、ミネラル類等の薬効成分を含んでいてもよい。
更に、本発明の皮膜形成性外用製剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、増粘剤、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、乳化剤、防腐剤、香料、清涼化剤、着色剤、分散剤、流動化剤、粘稠化剤、増粘剤、吸着剤、保湿剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、上記(A)〜(C)成分、及び必要に応じて、上記(D)成分、他の溶剤、薬効成分、添加剤等を所望量混合することにより調製される。
本発明の皮膜形成性外用製剤は、粘性のある液状を呈するが、皮膚に塗布すると、上記(A)成分及び(B)成分が揮散して、(C)成分による透明な皮膜が形成される。本発明の皮膜形成性外用製剤は、外用医薬製剤(即ち、液体絆創膏)として使用することができる。具体的には、本発明の皮膜形成性外用製剤は、ひび、あかぎれ、さかむけ、小さな切り傷等の皮膚損傷部に塗布することにより、当該皮膚損傷部位に皮膜を形成させて、細菌、汚れ、水等から当該皮膚損傷部位を保護するために使用される。
本発明の皮膜形成性外用製剤を皮膚に塗布する方法については特に制限されず、例えば、指で塗布する他、チューブの容器口を用いて直接塗布したり、ヘラ等を用いて塗布してもよいが、刷毛を用いて塗布することが好ましい。また、使用者の利便性を高めるために、本発明の皮膜形成性外用製剤は、刷毛が付属された容器に収容して提供されることが望ましい。
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、ニトロセルロース源として、ピロキシリン(ニトロセルロース:イソプロピルアルコールの重量比が7:3)を使用した。
試験例1
表1〜3に示す組成の皮膜形成性外用製剤を調製した。具体的には、(A)成分及び(D)成分を攪拌混合し、これに(C)成分を添加して分散させた後、(B)成分を加えて均一に攪拌溶解して目的の製剤を得た。
各皮膜形成性外用製剤について、以下に示す方法で、白濁化の程度、ゲル化の程度、皮膚のツッパリ感、及び溶解性を評価した。
<白濁化及びゲル化の程度の評価>
皮膜形成性外用製剤0.5gに対して、水を0.01gずつ添加・混合しながら、皮膜形成性外用製剤の外観を観察して、下記の判定基準に従って、白濁化及びゲル化の程度を評価した。
白濁化の程度の判定基準
◎:皮膜形成性外用製剤100重量部に対して水添加量15重量部以上でも白濁しない。
○:皮膜形成性外用製剤100重量部に対して水添加量水10重量部以上15重量部未満で白濁が認められる。
×:皮膜形成性外用製剤100重量部に対して水添加量10重量部以下で白濁が認められる。
なお、上記判定基準と実使用上の白濁の程度との関係として、◎は白濁の懸念がほぼない、○は白濁の懸念がややある、×は白濁の懸念がある、であることが確認されている。
ゲル化の程度の判定基準
◎:皮膜形成性外用製剤100重量部に対して水添加量15重量部以上でもゲル化しない。
○:皮膜形成性外用製剤100重量部に対して水添加量水10重量部以上15重量部未満でゲル化が認められる。
×:皮膜形成性外用製剤100重量部に対して水添加量10重量部以下でゲル化が認められる。
なお、上記判定基準と実使用上のゲル化の程度との関係として、◎はゲル化の懸念がほぼない、○はゲル化の懸念がややある、×はゲル化の懸念がある、であることが確認されている。
<皮膚のツッパリ感の評価>
皮膜形成性外用製剤を手指の関節部に塗布して乾燥し、皮膜を形成させた後に、指を伸縮させた際に、皮膜を形成させた関節部のツッパリ感を以下の判定基準に従って評価した。
ツッパリ感の判定基準
◎:ツッパリ感を殆ど感じず、指を伸縮させても違和感がない。
○:ツッパリ感を若干感じるが、指を伸縮させても殆ど違和感がない。
×:ツッパリ感を感じ、指を伸縮させると違和感がある。
<溶解性の評価>
皮膜形成性外用製剤の製造時(原料の混合時)にニトロセルロースの溶解性を、以下の判定基準に従って評価した。
溶解性の判定基準
◎:ダマを生じることなく良好に溶解する。
○:ダマが生じやすく溶解に時間がかかる。
×:ダマが生じ、溶解しない。
得られた結果を表1〜3に示す。この結果から、イソプロパノール及び/又はエタノールが15〜60重量%であり、且つソプロパノール及び/又はエタノール1重量部当たりの酢酸エチルの比率が0.4〜6重量部を充足する場合に、白濁化及びゲル化を有効に抑制でき、皮膚のツッパリ感や溶解性の点でも良好であることが確認された。特に、アルコールとして、イソプロパノールを含む場合に、白濁化及びゲル化の抑制効果が顕著に奏されることも明らかになった。また、実施例1〜18の皮膜形成性外用製剤は、いずれも皮膚上で透明な皮膜を形成できることも確認された。

Figure 0005950528

Figure 0005950528

Figure 0005950528
試験例2
表4に示す組成の皮膜形成性外用製剤を調製した。具体的には、(A)成分及び(D)成分を攪拌混合し、これに(C)成分を添加して分散させた後、(B)成分を加えて均一に攪拌溶解して目的の製剤を得た。各皮膜形成性外用製剤について、試験例1と同様の方法で、白濁化の程度、ゲル化の程度、及び溶解性を評価した。更に、各皮膜形成性外用製剤の展延性、形成された皮膜の付着性について、以下に示す方法で評価した。
<展延性の評価>
ガラスプレートの表面をアルコールで清掃して乾燥させた後に、ガラスプレートを電子天秤上に置いた。次いで、ガラスプレートの約5cm上から皮膜形成性外用製剤を滴下し、皮膜形成性外用製剤の滴下量を測定した。皮膜形成性外用製剤の滴下後、そのまま放置して乾燥させ、ガラスプレート上に皮膜を形成させた。形成された皮膜の面積を測定し、皮膜の面積(mm)/滴下量(g)を算出し、以下の判定基準に従って展延性を評価した。
展延性の判定基準
◎◎:皮膜の面積(mm)/滴下量(g)が、1000以上
◎:皮膜の面積(mm)/滴下量(g)が、800以上1000未満
○:皮膜の面積(mm)/滴下量(g)が、600以上800未満
×:皮膜の面積(mm)/滴下量(g)が、600未満
<付着性の評価>
ガラスプレートの表面をアルコールで清掃して乾燥させた後に、ガラスプレートの約5cm上から皮膜形成性外用製剤を約0.05g滴下し、そのまま放置して乾燥させ、ガラスプレート上に皮膜を形成させた。形成された皮膜を覆うようにガラスプレート上に粘着テープの貼付及び引き剥がしを行った。粘着テープを引き剥がした際に、皮膜の状態を観察し、以下の判定基準に従って付着性を評価した。
付着性の判定基準
◎:ガラスプレートから皮膜が剥がれなかった。
×:ガラスプレートから皮膜が剥がれた。
得られた結果を表4に示す。この結果からも、実施例4、6及び19〜20の皮膜形成性外用製剤は、いずれも、白濁化及びゲル化を有効に抑制でき、溶解性の点でも良好であることが確認された。更に、ヒマシ油を配合した実施例19では、展延性が格段に優れていた。従来技術では、ヒマシ油を皮膜形成性外用製剤に配合すると、展延性の向上が図られる反面、水との接触による皮膜の白濁化のみならず、水との接触による皮膜の皮膚付着性の低下を顕著に引き起こすことが知られているが、実施例19の皮膜形成性外用製剤では、このようなヒマシ油の問題点を克服し、水との接触による白濁を有効に抑制することができていた。また、実施例4、6及び19〜20の皮膜形成性外用製剤は、いずれも皮膚上で透明な皮膜を形成できることも確認された。

Figure 0005950528
試験例3
表5に示す組成の皮膜形成性外用製剤を調製した。具体的には、(A)成分、(D)成分及び安定剤(トコフェロール酢酸エステル)を攪拌混合し、これに(C)成分を添加して分散させた後、(B)成分及び溶剤(ジエチルエーテル)を加えて均一に攪拌溶解して目的の製剤を得た。各皮膜形成性外用製剤について、試験例1と同様の方法で、白濁化の程度、ゲル化の程度、及び溶解性を評価した。更に、各皮膜形成性外用製剤の乾燥の速さについて、以下に示す方法で評価した。
<乾燥の速さの評価>
皮膜形成性外用製剤を手指の関節部に塗布し、以下の判定基準に従って乾燥の速さを評価した。
乾燥の速さの判定基準
速い:皮膜形成速度が速かった。
遅い:皮膜形成速度が遅かった。
得られた結果を表5に示す。この結果からも、イソプロパノール及び/又はエタノールが15〜60重量%であり、且つソプロパノール及び/又はエタノール1重量部当たりの酢酸エチル及び/又は酢酸ブチルの比率が0.4〜6重量部を充足する場合に、白濁化及びゲル化を有効に抑制でき、溶解性の点でも良好であることが確認された。また、(B)成分として酢酸エチル及び酢酸ブチルを使用する場合、酢酸エチルの比率が高い程、皮膜形成性外用製剤の乾燥が速くなる傾向が認められた。また、実施例21〜27の皮膜形成性外用製剤は、いずれも皮膚上で透明な皮膜を形成できることも確認された。

Figure 0005950528

Claims (4)

  1. 皮膚上で透明な被膜を形成させる被膜形成性外用製剤であって、
    (A)炭素数1〜4の一価アルコール及びベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール、
    (B)炭素数2〜4のモノカルボン酸と炭素数1〜5の一価アルコールとのエステル、
    (C)ニトロセルロース、及び
    (D)可塑剤を含み、
    前記(A)成分が、(A-1)イソプロパノール単独、又はイソプロパノールとエタノールとの組み合わせであってイソプロパノール1重量部に対してエタノールが1.5重量部以下である;或は(A-2)炭素数1〜4の一価アルコールとベンジルアルコールを含み、炭素数1〜4の一価アルコール1重量部に対してベンジルアルコールが0.05〜2重量部であり、
    前記(A-1)成分又は前記(A-2)成分の含有量が15〜60重量%であり、
    前記(A-1)成分又は前記(A-2)成分1重量部当たり、前記(B)成分が0.4〜6重量部の比率で含まれ、且つ
    前記(D)成分の含有量が5〜20重量%であることを特徴とする、皮膜形成性外用製剤。
  2. 前記(B)成分が、酢酸エチル及び酢酸ブチルよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の皮膜形成性外用製剤。
  3. 前記(D)成分が、植物油、炭素数5〜22のモノ、ジ又はトリカルボン酸と炭素数1〜9の一価アルコールのエステル、及びテルペノイドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の皮膜形成性外用製剤。
  4. 前記(D)成分が、ヒマシ油、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、及びカンフルよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の皮膜形成性外用製剤。
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