JP7241222B1 - 繊維構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 3次元形状の復元性が高く且つ内部での空気の対流が起きにくく、保温・断熱性に優れた繊維構造体を提供する。【解決手段】噴出ノズル15と噴出ノズル16の対が2つ配置され、各対の噴出ノズル15からは、繊維径分布ピークが10nm~1μmとなる溶融ポリマーを噴出し、他方の噴出ノズル16からは、繊維径分布ピークが2μm~5mmとなる溶融ポリマーを噴出する。2つの噴出ノズルからの気流は平行に放出されるが、周囲が陰圧になるので徐々に合流して夫々の噴出ノズル15と噴出ノズル16から噴出して引張された繊維は混合され捕集シート10表面に堆積する。【選択図】 図3

Description

本発明は、衣服や断熱材等として利用できる繊維構造体とその製造装置に関する。
ナノファイバー(例えば繊維径が400nm以下)製品は表面積が大きく空間率が高いことなどの特性をもつため、衣服、電気製品、自動車の内装、建材などに広く用いられている。
特許文献1には、ナノファイバーのみでは、布帛(ふはく)の"張り"や"腰"といった力学特性が低下するという問題を解消するため、特定の溶剤に溶解するポリマーとこの溶剤に溶解しないポリマーを用いて2種類以上の繊維径とすることが提案されている。具体的には、断面が海島状の繊維(島の部分が特定の溶剤に溶解しないポリマー、海の部分が特定の溶剤に溶解するポリマー)を紡糸し、特定の溶剤を用いて海の部分を溶解させ島の部分のみを残すことで、極めて繊維径が揃ったナノファイバー(50~1500nm)と、ある程度繊維径が揃ったファイバー(2700~9600nm)で1本のフィラメントを構成することが開示されている。
特許文献2、3には不織布からなる基材シート表面に接着層を形成し、この接着層の上に、溶融樹脂を延伸して繊維径が400nm以下のナノファイバーを吹き付けたナノファイバー繊維製品が記載されている。
このナノファイバー繊維製品は衣料、電気、自動車、医療、建材などの様々な分野で用いられていると記載されている。
特許文献4には、電界紡糸法により2種の繊維を混合した繊維シートを製造する際に、繊維シートを構成する繊維の種類を区別するために、元素マッピング分析又は各種物性のマッピング分析を行うことが開示されている。また、この特許文献1には、小径の第1繊維とこれよりも太径の第2繊維が含まれる場合、その繊維の繊維径分布のピークは200μm以下、好ましくは100μm以下とすることが記載されている。
特許文献5には、ポリプロピレン(PP)を材料としたナノファイバーからなる吸音材が開示され、特にナノファイバーの径に応じて吸音率が高まる周波数が異なることに着目し、複数の径のナノファイバーを用いることで、幅広い周波数範囲での吸音効果を高める技術が開示されている。
特許文献6には、発泡スチロール製の包装材に比べて環境負荷が軽いと言われる繊維を用いた包装材が提案されている。この包装材に用いるナノファイバーとしては径が異なるものを用いてもよいと記載され、形状を維持するために繊維同士を架橋させて結合している。
特許文献7には、通気性布帛、手術用不織布、乳児ケア、成人ケア、衣類、建築、自動車、電子部品や航空機などに用いられるナノファイバー不織布として、最良性能を発揮するために異なる径の複合体が必要な場合があると記載されている。
WO2013/021809 特許第6273604号公報 特許第6633832号公報 特開2022-28029号公報 特開2021-177238号公報 特開2021-046639号公報 特表2019-518148号公報
特許文献1には、ナノファイバーの"張り"や"腰"といった力学特性が低下するのを防止するため、太い繊維径(2700~9600nm)の汎用繊維をナノファーバーに対し後混繊することが開示されているが、ナノファイバーと太い繊維とは1本のフィラメントを構成する要素であり、面(二次元)での力学的特性は改善で来ても3次元的な力学的特性は改善できない。
このため、羽毛の代わりや冷蔵庫などに用いる真空断熱材の代わりになるものではない。
特許文献2、3に開示される不織布シートは、基材シートの上にナノファイバー層を積層している。ナノファイバーは通常の線に比較して力学特性に劣るため、ナノファイバー層の厚みが厚くなると形状維持が困難になる。
特許文献4は、積極的に径の異なるナノファイバーを混合して繊維シートを作成するのではなく、製造工程において径の異なるナノファイバーが混ざるのは避けられないので、その影響を少なくする手段を開示しており、敢えて異なる径のナノファイバーを用いて、それぞれに異なる機能を発揮させることは開示ないし示唆していない。
特許文献5には、異なる径のナノファイバーを用いることが記載されているが、吸音周波数との関係に限定されており、形状維持と断熱(保温)性の両方を実現するために異なる径のナノファイバーを用いる点については、示唆されていない。
特許文献6に開示される包装体を構成するナノファーバーは互いに結合しているため一定の形状は維持するが、衣類や布団などに要求される柔軟性と断熱(保温)性の両方を実現することはできない。
特許文献7では、最良性能を発揮するために異なる径のナノファイバーを用いることが記載されているが、骨格機能を発揮するためにナノファイバーではない太い繊維を用い、断熱(保温)機能を発揮するためにナノファイバーを用いる点についての示唆はない。
上記の課題を解消するため、本発明に係る繊維構造体は、一種類のポリマーからなり且つ繊維径の分布ピークが異なる複数の繊維からなる繊維構成体である。具体的には、前記繊維構成体は、繊維径の分布ピークのうち最も小さな分布ピークが10nm~1μmの間に存在し、最も大きな分布ピークが2μm~5mmの間に存在し、繊維径の分布ピークが異なる複数の繊維は3次元的に均一に混合している。
繊維径の分布ピークが異なる複数の繊維としては、2種類に限らず3種類以上であってもよい。この場合は溶融ポリマーの噴出ノズルを3つ以上用意することになる。
前記最も小さな分布ピークは400nm以下とすることができる。このように繊維径の分布ピークを400nm以下とすることで、抗菌、抗ウイルス性を付与することができる。
また、上記の繊維構造体を製造する装置としては、溶融ポリマーの噴出ノズルを備え、前記噴出ノズルは分布ピークの数に合わせて複数対設けられ、更に各対を構成するノズルの間隔は10mm以下とする。
10mm以下とするのは、これよりも間隔が大きくなると2つの噴出ノズルから噴出して延伸された繊維同士が絡まなくなり、均一に混合した構造体が得られなくなる。
本発明に係る繊維構造体は、繊維径の分布ピークが2μm~5mmの太い繊維が骨格を形成して3次元形状を維持でき、この3次元形状の骨格間が繊維径分布のピークが10nm~1μmの細い繊維(ナノファイバー)にて充填される。細い繊維(ナノファイバー)にて充填された部分は、熱伝導の要素である空気の対流が抑制されるため、保温・断熱効果が高くなる。
羽毛の場合は、羽毛の偏りを防ぐためにキルト加工が必要になるが、本発明に係る繊維構造体は繊維の偏りがないためキルト加工は必要とならない。また、羽毛の場合は羽毛が外に飛び出るのを防ぐためと空気の層を維持するために、両面を高密度の織物で挟む必要があるが、本発明に係る繊維構造体はその必要がない。
空間を埋める細い繊維の分布ピークを400nm以下とすることで、ファンデルワールス力の作用が大きくなり、抗菌・抗ウイルス効果が発揮される。
また、冷蔵庫のドア内側などに配置される真空断熱材は、グラスウールの芯材をラミネートフィルムで包み、その内部を真空の多孔質構造としている。しかし経年変化などによって真空状態が破られると断熱効果が低下する。
しかしながら、本発明に係る繊維構造体は、内部を真空状態にせずにナノファイバーを充填することで、空気の対流を抑制し断熱するので、経年変化による断熱効果が低下しない。
本発明に係る繊維構造体のイメージ断面図。 400nmと2μmに繊維径分布ピークを有する繊維構造体の分布図。 本発明に係る繊維構造体を作製する装置の一例を説明した図。 噴出ノズルから噴出した繊維の挙動を説明した図。 4つの繊維径分布ピークを有する繊維構造体の顕微鏡写真(15000倍)。 本発明に係る繊維構造体の形状復元性を示す写真。
図1に示すように、本発明に係る繊維構造体の一例は、それぞれ異なる繊維分布ピークをもつ2種類の繊維径分布からなる。1種類の繊維分布は同じPP(ポリプロピレン)などのポリマーからなるが、図2に示すように、繊維径分布ピークが10nm~1μmの細い繊維(ナノファイバー)1と繊維径分布ピークが2μm~5mmの太い繊維2から構成される。
細い繊維1と太い繊維2は、太い繊維2が3次元的骨格をなし、その空間を細い繊維1が埋めるようにナノレベルで混合されている。
図3は本発明に係る繊維構造体を作製する装置の一例であり、図中10は繊維構造体を積層するための捕集シートであり、例えばテープ状の不織布などを用いる。
捕集シート10はガイドローラ11、12を介して一方(図中上方)から繰り出し下方で巻き取られる。捕集シート10の移動経路には捕集シートを介して吸引する吸引ボックス13が配置されている。
捕集シート10を挟んで吸引ボックス13と反対側には細い繊維径の噴出ノズル15と太い繊維径の噴出ノズル16が2対配置されている。繊維分布ピークの数だけ噴出ノズルを配置する。
繊維径の細い繊維径を噴出する噴出ノズル15と太い繊維径を噴出する噴出ノズル16から噴出された繊維は混合され、図4に示すように空気の抵抗によって飛翔速度が低下して後ろから飛翔してくる繊維がぶつかってくることで3次元的な構造をもった多繊維分布ピーク構造体となる。
ここで、本発明に係る作製装置では、噴出ノズル15,16の対を2つ配置し、各対の噴出ノズル15、16から噴出する繊維径を制御し、一方の噴出ノズル15からは繊維径分布ピークが10nm~1μmとなる溶融ポリマーを噴出し、他方の噴出ノズル16からは繊維径分布ピークが2μm~5mmとなる溶融ポリマーを噴出する。
噴出ノズル15と噴出ノズル16からの気流は平行に放出されるが、周囲が陰圧になるので徐々に合流し、夫々の噴出ノズル15、噴出ノズル16から噴出して引張された繊維はナノレベルで混合され捕集シート10表面に堆積する。
上記したように、2つの噴出ノズルからの繊維が合流して、繊維径分布ピークが異なる2種の繊維を混合するには、2つの噴出ノズル15と噴出ノズル16の間隔を10mm以下とする必要がある。
図示例では、噴出ノズル15と噴出ノズル16の対を2つ配置した例を示したが3つ以上でもよい。図5は4つの繊維径分布ピークを有する繊維構造体の顕微鏡写真(15000倍)であり、このような繊維構造体を作製するには、噴出ノズル15と噴出ノズル16の対を4つ配置する。
図6は、本発明に係る繊維構造体の3次元形状の復元性を示す写真である。
(a)は元の状態、(b)は重しを載せて圧潰して1時間経過した状態、(c)は(b)の状態から重しを除いた状態、(d)は(c)の状態から更に1時間経過した状態を示している。
図6(d)は、洗濯後の脱水機使用状態と同じであり、本発明に係る繊維構造体は撥水性と形状復元性に極めて優れていることが分かる。
1…繊維径分布ピークが10nm~1μmの細い繊維(ナノファイバー)
2…繊維径分布ピークが2μm~5mmの太い繊維
10…捕集シート
11、12…ガイドローラ
13…吸引ボックス
15…噴出ノズル
16…エアノズル

Claims (1)

  1. 冷蔵庫のドア内側の空間に配置される断熱材として用いられる繊維構造体であって、この繊維構造体は繊維径の分布ピークが400nm以下のナノファイバーと、繊維径の分布ピークが2μm~5mmの骨格繊維とからなり、前記骨格繊維によって形成される3次元形状の骨格間が前記ナノファイバーによって充填されることで空気の対流が抑制されることを特徴とする繊維構造体。


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