JP7238550B2 - 燃料電池車両 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池を搭載する燃料電池車両に関する。
特許文献1には、燃料電池を搭載して、燃料電池で発電した電力によってモータを駆動させて走行する、燃料電池搭載電動車両が記載されている。特許文献1はハンドル型電動車椅子車両に適用したものであり、座席下側に燃料電池システムを配置し、レッグシールド内のステアリングポストの前方空間に燃料タンクを配置する、というレイアウトを採用している。
特許第5141168号公報
近年、環境負荷の低減(例えば、二酸化炭素の排出削減)のために、燃料電池車両として設計されていない電動車両においても、化石燃料由来の電力ではなく、燃料電池により電力供給して動作させたいという要求が生じている。しかし、特許文献1のように燃料電池車両として専用設計した構成を既存の電動車両に適用することは、大規模な変更が必要になってしまい、手間やコストの負担が大きい。
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、燃料電池による電力供給を簡単且つ低コストに実現可能な燃料電池車両を提供することを目的とする。
本発明は、車両前部に設けた乗車部と、バッテリと、該バッテリから供給される電力によって車両走行用の動力を発生する駆動ユニットとを備え、乗車部の後方に設けられる動力部と、燃料タンクと、燃料タンクの燃料を利用して発電する燃料電池ユニットと、燃料電池ユニットからの電流を変換する電流変換器とを備え、バッテリに供給する電力を発生させる燃料電池部と、を有する燃料電池車両であって、燃料電池部は、燃料電池ユニット及び電流変換器を備える上部ユニットと、燃料タンクを備える下部ユニットを上下に並べて、乗車部の後方に設けられることを特徴とする。
本発明によれば、上部ユニットと下部ユニットで構成した省スペースで安定性の高い燃料電池部を乗車部後方に配置することで、多様な車両への燃料電池部の搭載が可能になり、燃料電池車両を簡単且つ低コストに得ることができる。
本実施の形態の燃料電池車両を側方から見た図である。 燃料電池車両の電力供給システムを示す図である。 第1の形態の燃料電池部を車両側方から見た図である。 第1の形態の燃料電池部を車両後方から見た図である。 第2の形態の燃料電池部を車両側方から見た図である。 第2の形態の燃料電池部を車両後方から見た図である。
以下、本実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明を適用する燃料電池車両10の外観を示す図であり、図2は、燃料電池車両10の電力供給システムを示したものである。図3と図4は、燃料電池車両10の電力供給システムを構成する燃料電池部の第1の形態を示したものであり、図5と図6は、燃料電池車両10の燃料電池部の第2の形態を示したものである。以下の説明における各方向(前後、左右、上下)は、燃料電池車両10に乗車した乗員から見た方向を意味する。
図1に示すように、本実施の形態の燃料電池車両10は、荷物などを載せた被牽引車11を牽引して走行する運搬(牽引)用車両に適用したものである。燃料電池車両10は、前部に前輪12を有し、後部に後輪13を有し、後輪13を駆動輪として走行する。前輪12は、ハンドル14の操作によって向きを変える操舵輪である。
ハンドル14を支持するハンドルポスト15の後方には、乗員が乗車する乗車空間を構成する乗車部16が設けられている。乗車部16は、上下方向で前輪12に近い高さに床部17が位置する低床構造になっており、床部17上に乗員が立った状態で乗車する。
乗車部16の後方には、後輪13上に支持される後部ボディ18が設けられている。後部ボディ18は、床部17よりも高い位置に載置面19を有している。載置面19は、水平方向に広がりを持つ平坦な面である。図2に示すように、載置面19の下方の後部ボディ18内部には、乗車部16の後方に位置する動力部20が設けられている。後部ボディ18の載置面19上には、燃料電池部30が支持されている。
図2を参照して、燃料電池車両10における電力供給と駆動制御の概要を説明する。動力部20は、バッテリ21と駆動ユニット22を備えている。充電容量を大きくするために、車両の前後方向や左右方向(車幅方向)のサイズが大きいバッテリ21を用いている。バッテリ21の形状に対応して、バッテリ21の上方に位置する載置面19は、前後方向や左右方向に広い平坦な面になっている。駆動ユニット22は、バッテリ21から供給される電力によって駆動するモータ(図示略)と、モータの駆動力を後輪13に伝達する伝達機構(図示略)とを備えている。
燃料電池車両10は、制御回路23によって統括制御される。ハンドルポスト15の上部には電源スイッチ24が設けられる。電源スイッチ24は、キースイッチなどで構成され、乗員の操作によってオンとオフが切り替えられる。電源スイッチ24のオンによって、燃料電池車両10の電装系が動作状態になる。この動作状態で、ハンドル14周りに設けたアクセル(図示略)を操作すると、出力要求信号が制御回路23に送られ、制御回路23が駆動ユニット22のモータに駆動信号を送る。駆動信号を受けた駆動ユニット22のモータが駆動され、後輪13を回転させて燃料電池車両10が走行する。
バッテリ21は、燃料電池車両10の外部にある外部電源からの電力供給による充電と、燃料電池部30からの電力供給による充電が可能である。燃料電池車両10は、外部電源や燃料電池部30に接続するための電源コネクタ25を備えている。電源コネクタ25を介して外部電源からバッテリ21の充電を行って、燃料電池部30を搭載せずに燃料電池車両10を走行させることも可能である。つまり、燃料電池車両10は、燃料電池部30を搭載しない既存の電動車両をベースとして構成可能である。
図3及び図4を参照して、燃料電池部30の詳細を説明する。燃料電池部30は、燃料タンク32と燃料電池ユニット33と補機類をフレーム31内に収めたパッケージ構造になっている。補機類として、減圧弁34、DC-DCコンバータ35(電流変換器)、発電制御部36、水素センサ37などを備える。
フレーム31は、下枠40と、下枠40の上方に位置する中枠41と、中枠41の上方に位置する上枠42と、下枠40と中枠41と上枠42の四隅を接続して上下方向へ延びる4本の縦柱43と、を有している。下枠40と中枠41と上枠42はそれぞれ、4本の縦柱43を接続する矩形状の枠体の内側に、前後方向や左右方向に延びる複数の梁部分(図示略)を有している。上枠42の上部は天板44で覆われる。下枠40の下面に複数の制振部材45が配されている。フレーム31は金属などで構成されており剛性が高い。制振部材45は、ゴム、軟質樹脂、バネを内蔵した構造体などで形成されており、振動吸収効果が高い。
フレーム31の前面、後面、左右の側面は、図1に示す外装パネル46で覆われている。図2以降の各図は、外装パネル46を取り外した状態を示している。図示を省略するが、フレーム31の外部から内部に空気を取り入れ、フレーム31の内部の空気を外部に排出させるエアフロー構造が形成されている。エアフロー構造として、外装パネル46に設けた開口部、通気用のダクト、吸気用や排気用のファンなどが用いられる。外部からフレーム31内に取り入れた空気中の酸素は、燃料電池ユニット33での発電(水素との化学反応)に使用される。なお、フレーム31の四方全てではなく、部分的に外装パネル46を設けることも可能である。
燃料電池部30は、下部ユニットU1と上部ユニットU2が上下に並んだ構成である。下部ユニットU1と上部ユニットU2は、フレーム31における中枠41を境界として上下に分けられる2つの空間と、各空間内に設置される構造物によって構成される。
フレーム31における下枠40と中枠41の間には、燃料タンク32が配置される。本実施形態では、左右方向に並べて2つの燃料タンク32を設けている。各燃料タンク32は、軸方向を前後に向けており、固定台座38を介して下枠40上に固定されている。燃料タンク32の内部には、高圧状態の水素(純水素)が貯留されている。
燃料タンク32には、下部配管51が接続する入出部32aが設けられている。入出部32aから延出された下部配管51は2つに分岐して、一方の下部配管51が、中枠41の下面側に支持した充填口50に接続し、他方の下部配管51が、下枠40に支持した減圧弁34に接続する。充填口50を通して外部から燃料タンク32に水素が供給される。充填口50は、下部ユニットU1のうち上方(中枠41側)に配置されており、水素を充填する際に作業者が作業をしやすい高さになっている。発電を行う際には、燃料タンク32から減圧弁34へ水素が送出される。送出された水素は減圧弁34で減圧され、減圧弁34から上方へ延びる水素供給管52へ送られる。
以上の燃料タンク32、減圧弁34、充填口50などを、下枠40と中枠41の間に配置した構造が下部ユニットU1となる。下枠40が下部ユニットU1の底部を構成する。
中枠41上にブラケット55が固定され、ブラケット55を介して燃料電池ユニット33が支持されている。燃料電池ユニット33を左右から挟むように一対のブラケット55が設けられており、各ブラケット55は中枠41に対してボルト留めなどで固定される。ブラケット55によって、燃料電池ユニット33は中枠41に対して上方に離れた位置に支持されており、燃料電池ユニット33の下面と中枠41の上面との間に空間部56が形成されている。
中枠41上にはDC-DCコンバータ35が支持されており、DC-DCコンバータ35が空間部56内に収まっている。図4に示すように、DC-DCコンバータ35は、左右方向で一対のブラケット55の間に位置している。また、図3に示すように、DC-DCコンバータ35は、前後方向で各ブラケット55と一部重なる位置関係にある。燃料電池ユニット33の側方には、発電制御部36が縦柱43に支持されている。燃料電池ユニット33の上方には、上枠42に水素センサ37が支持されている。
以上の燃料電池ユニット33、DC-DCコンバータ35、発電制御部36、水素センサ37などを、中枠41と上枠42の間に配置した構造が上部ユニットU2となる。中枠41が上部ユニットU2の底部を構成する。
減圧弁34から上方へ延びる水素供給管52は、中枠41の間を貫通して上部ユニットU2に入り、燃料電池ユニット33に接続する。燃料電池ユニット33は、燃料極と空気極の間に電解質を配したセルを複数積層させて構成されており、水素供給管52を経由して供給される水素と、外部から取り入れた酸素を化学反応させて発電するものである。燃料電池ユニット33による発電の原理については周知のものであるため、詳細な説明を省略する。燃料電池ユニット33と、その下方に位置するDC-DCコンバータ35が配線で接続されており、燃料電池ユニット33の発電で生じた直流電流が、DC-DCコンバータ35によってバッテリ21に対応した電圧に変圧されて出力される。
以上のようにしてパッケージ化された燃料電池部30を、燃料電池車両10の車体に搭載する。図2に示すように、燃料電池車両10に設けられた電源コネクタ25に対して、燃料電池部30のDC-DCコンバータ35から延びる電力供給用の配線を接続させる。燃料電池車両10にはさらに信号コネクタ26を有しており、燃料電池部30を搭載する際に、発電制御部36から延びる信号線が信号コネクタ26に接続される。これにより、燃料電池車両10側の制御回路23と燃料電池部30側の発電制御部36との間で通信が可能になる。
燃料電池部30を搭載して上記の各配線をつなげた状態で、電源スイッチ24のオンオフ操作が燃料電池部30のオンオフと連動するようになる。電源スイッチ24をオンすると、燃料電池部30が起動して発電が可能な状態になる。発電制御部36が燃料電池部30での発電を統括的に制御し、バッテリ21の充電量が閾値を下回ると、発電を実行する。具体的には、電流センサ(図示略)によってバッテリ21の電流を検出し、DC-DCコンバータ35の電圧値からバッテリ21の電圧を測定し、これらの電流や電圧の値に基づいて、発電の制御パラメータを算出する。そして、算出した制御パラメータによって、減圧弁34、燃料電池ユニット33、DC-DCコンバータ35などを制御して発電を行わせる。
燃料タンク32への水素の充填を行う際には、充填口50の開放などを発電制御部36が検出して、充填モードに入る。充填モードでは、燃料電池部30での発電を禁止し、燃料電池ユニット33への水素の共有を停止する。
発電制御部36は自己診断機能を備えており、自身のエラーを検知してエラーログを記録する。エラーログは、発電制御部36が備える記録手段(フラッシュメモリなど)や、外部の通信機器を用いて、記録や発信が行われる。燃料電池部30を搭載した燃料電池車両10が不具合を起こした場合は、上記のエラーログを参照して、不具合が燃料電池部30に起因するものか、車両本体(動力部20など)に起因するものかを切り分けできる。
水素センサ37は、燃料電池部30内の水素濃度を検出して、検出値を発電制御部36に送信する。上部ユニットU2内の最上部に位置する水素センサ37は、左右方向に位置を異ならせて2つ設けられており(図4参照)、それぞれの水素センサ37は上部ユニットU2の最後部に位置している(図3参照)。左右方向での水素センサ37の間隔は、2つの燃料タンク32における入出部32aの間隔に概ね対応しており、各入出部32aの上方に水素センサ37が位置している(図4参照)。
図2に示すように、燃料電池部30は、下部ユニットU1と上部ユニットU2が上下に並ぶ構造にすることで、必要な設置面積が抑えられており、後部ボディ18の載置面19上にスペース効率良く燃料電池部30を載せることができる。フレーム31の底部に設けた制振部材45が載置面19に接触するため、燃料電池車両10からの振動が減衰され、燃料電池部30を振動や衝撃から保護できる。
燃料電池部30の安定性を高めるために、単に制振部材45を載置面19上に載せるだけでなく、フレーム31を後部ボディ18に固定させる固定手段を備えてもよい。例えば、固定手段としてボルトを用いる場合、後部ボディ18にボルト締結用のブラケット類を設ける程度の変更(改造)であれば、既存の電動車両に対しても行いやすい。燃料電池部30側の固定箇所としては、制振部材45や、フレーム31に別途設けた固定部などを選択できる。
燃料電池ユニット33を上部ユニットU2に配し、燃料電池ユニット33よりも重量の大きい重量物である燃料タンク32を下部ユニットU1に配することにより、燃料電池車両10の重心を下げて安定性を向上させる効果が得られる。特に、乗車部16の床部17よりも高い位置にある後部ボディ18の載置面19上に燃料電池部30を載せる構造であるため、燃料電池部30自身を低重心化することの効果が高い。
上部ユニットU2では、中枠41と燃料電池ユニット33の間に設けた空間部56内にDC-DCコンバータ35を配置している。この構成によれば、上下方向で燃料電池ユニット33と燃料電池車両10側の電源コネクタ25との間にDC-DCコンバータ35が位置するため、燃料電池ユニット33からDC-DCコンバータ35を経由して電源コネクタ25に至る配線を短くすることができる。
DC-DCコンバータ35を配置している空間部56は、燃料電池ユニット33の取付時や交換時に作業者が手や工具を入れるための作業スペースとしても利用できるため、生産性やメンテナンス性の向上にも寄与する。また、DC-DCコンバータ35を空間部56に配置することで、DC-DCコンバータ35が発する熱の放散性の向上にも寄与する。図4に示すように、空間部56は、前後方向に貫通しているので、燃料電池部30内で前後方向に空気が流れるようなエアフローを形成することで、空間部56内のDC-DCコンバータ35から効率的に熱を奪うことができる。
上部ユニットU2では、ブラケット55によって燃料電池ユニット33を中枠41から離間させて(浮かせて)支持することによって空間部56を形成しており、このブラケット55によって燃料電池ユニット33を左右両側から支持すると共に、両側のブラケット55によって囲むようにDC-DCコンバータ35を配置している。そのため、燃料電池車両10の衝突などで衝撃が加わった際に、ブラケット55によって燃料電池ユニット33及びDC-DCコンバータ35を衝撃から保護できる。燃料電池ユニット33やDC-DCコンバータ35は、外部からの衝撃に対してデリケートな精密機器であるため、ブラケット55を用いて保護することの有効性が高い。
後部ボディ18の載置面19上に載置した燃料電池部30は、動力部20の上方に位置する。この構成によると、燃料電池部30のDC-DCコンバータ35から動力部20のバッテリ21までの距離を短くして、電力供給用の配線の短縮化を実現できる。また、後部ボディ18の上部に燃料電池部30が配置されるので、燃料電池部30による制約を受けずに動力部20の後方のスペースを自由に使用できる。例えば、動力部20の後方の空いたスペースに物品を置いたり、図1のように被牽引車11などを配置したりできる。
燃料電池部30において、水素の供給に関係する配管類は、燃料電池車両10の後方側に配置されている。具体的には、減圧弁34、充填口50、下部配管51、水素供給管52が、燃料タンク32や燃料電池ユニット33の後方に配置されている。また、燃料タンク32の入出部32aも後方に向いている。このような配置にすることで、仮に配管類からの水素の漏出が生じても、漏出の発生箇所が、乗車部16に乗る乗員から遠い位置になる。また、燃料電池車両10の走行中では、漏出した水素は、走行風によって車両進行方向後方に流れやすい。従って、漏出した水素が乗員の位置まで達しにくく、安全性が高い。
また、配管類が後方側を向くことにより、燃料電池車両10の車体による制限を受けずに配管類にアクセスしやすくなり、燃料電池部30を燃料電池車両10に載せた状態でのメンテナンス性に優れている。例えば、燃料電池部30の配管類が前方側に位置していると、後部ボディ18などの構造物によって前方からのアクセスが制限され、配管類のメンテナンス作業などを行いにくい。
なお、本実施の形態では、水素の供給に関係する配管類を、燃料電池部30の最後部に配置しているが、最後部よりもある程度前方に配置しても、上記と同様の効果を得ることができる。具体的には、燃料電池部30の前後方向の中央よりも後方の領域(後半部分)に配管類を配置することが望ましい。最後部以外の配置にする場合、燃料タンク32における入出部32aや各配管などを、燃料電池部30の側方(左右方向)に向くように設定することも可能である。
燃料電池部30の内部では、空気よりも比重が小さい水素は上方に流れる。フレーム31の最上部に水素センサ37を設けているため、上記の供給系から漏出した水素を高い精度で検出することができる。さらに、天板44は、車両前方から後方へ進むにつれて高くなる傾斜が付けられているため(図3参照)、燃料電池部30内を上昇した水素は、天板44に沿って後方に進みやすい。これにより、漏出した水素は、乗車部16の乗員とは反対の後方に進む流れが支配的になり、高度な安全性を確保できる。水素センサ37は、上部ユニットU2内の最後部且つ最上部に設けられており、当該位置は、天板44に沿って進む水素の出口付近になるため、水素センサ37の設置に適している。水素センサ37によって所定以上の水素濃度が検出されると、発電制御部36から制御回路23に信号が送られて、音や発光による警告が発せられる。
続いて、図5及び図6を参照して、燃料電池部の第2の実施形態である燃料電池部60を説明する。燃料電池部60において、先に説明した燃料電池部30と同様に機能する部分については、寸法関係などに多少の違いがある場合でも、燃料電池部30のものと同じ符号で示し、説明を省略する。
燃料電池部60は、改質器61を備えている。改質器61は、メタンなどを含む天然ガス、メタノール、ガソリンなどの燃料から水素を取り出す反応装置である。改質器61は、燃料電池部60の上部ユニットU2内に設置されている。より詳しくは、左右一対のブラケット62によって、燃料電池ユニット33の底面位置を中枠41から離した状態で支持し、燃料電池ユニット33と中枠41の間に空間部63が形成されている。改質器61は、中枠41の上面に支持(固定)されて、空間部63内に位置している。つまり、燃料電池ユニット33の下方に改質器61が配置されている。また、空間部63内には、改質器61の後方に並ぶようにしてDC-DCコンバータ35も配置される。
図6に示すように、改質器61とDC-DCコンバータ35はいずれも、左右方向で一対のブラケット62の間に配置されている。また、図5に示すように、改質器61とDC-DCコンバータ35はそれぞれ、前後方向の少なくとも一部がブラケット62と重なるように配置されている。これにより、燃料電池車両10の衝突時に加わる衝撃から、ブラケット62によって改質器61とDC-DCコンバータ35が保護される。
下部ユニットU1には、左右方向に並べて2つの燃料タンク65が設けられ、各燃料タンク65は固定台座38を介して、下枠40上に固定されている。燃料タンク65の内部には、天然ガス、メタノール、ガソリンなど、水素以外の燃料(以下、非水素燃料と呼ぶ)が貯留されている。本実施の形態は非水素燃料の種類を制限するものではなく、改質器61によって水素を生成可能なものであればよい。中枠41の下面側に支持した充填口66に対して外部から非水素燃料が供給され、下部配管67を通して燃料タンク65に非水素燃料が注入される。燃料タンク65には、下部配管67が接続する入出部65aが設けられている。燃料タンク65内の非水素燃料は、下部配管67を通して、下枠40上に支持された減圧弁68に送られる。減圧弁68で減圧された非水素燃料は、上方へ向けて延びる中間供給管69へ送出される。
中間供給管69は、中枠41の間を貫通して上部ユニットU2に入り、改質器61に接続する。改質器61では、中間供給管69を通して供給された非水素燃料から水素を取り出す改質反応が行われる。この改質反応については周知のものであるため、詳細な説明を省略する。改質器61で得られた水素は、水素供給管70を通して燃料電池ユニット33に送られる。燃料電池ユニット33に水素を供給した以降の発電や電力供給については、先に燃料電池部30で説明した通りである。
以上の構成を有する燃料電池部60では、燃料タンク65に貯留するのが非水素燃料である。改質反応での水素生成に用いられる一般的な非水素燃料は、同等の発電性能を得ようとした場合に必要なタンク容量が、純水素よりも小さくて済む。従って、燃料タンク65を小型化させやすい。また、外部から純水素を直接に供給する場合よりも燃料単価を抑えやすい。
燃料電池部60において、非水素燃料や水素の供給に関係する配管類は、燃料電池車両10の後方側に向くように配置されている。具体的には、下部配管67、減圧弁68、中間供給管69、水素供給管70が、燃料タンク65や燃料電池ユニット33や改質器61の後方に配置されている。また、燃料タンク65の入出部65aも後方に向いている。従って、上述した燃料電池部30の場合と同様に、供給系からの非水素燃料や水素の漏出が生じた場合に、漏出物が乗員の位置まで届きにくい。また、配管類のメンテナンス性にも優れる。
上部ユニットU2では、燃料電池ユニット33の下方に改質器61を配している。この構成によると、下部ユニットU1側から改質器61に非水素燃料を送る中間供給管69と、改質器61から燃料電池ユニット33へ水素を送る水素供給管70とが、上下方向で段階的に配されるので、中間供給管69と水素供給管70のそれぞれの長さを短くして、効率的な燃料供給を行うことができる。
以上に説明したように、本実施の形態に係る燃料電池車両10は、燃料電池部30、60を独立した燃料電池パッケージとして構成し、使用の際に燃料電池部30、60を搭載する。この構成は、燃料電池車両として成立させるために燃料電池車両10側に施す変更が最小限で済むため、既存の電動車両に広く適用が可能という利点がある。また、燃料電池部30、60を取り外しての修理やメンテナンスが可能であり、代替の燃料電池部30、60に載せ替えることも可能であるため、燃料電池車両10の運用効率を高くすることができる。
燃料電池部30、60は、下部ユニットU1と上部ユニットU2を上下に並べ、下部ユニットU1に重量物である燃料タンク32、65を配置している。これにより、床面積が少なく低重心で、車載に適した燃料電池部30、60が得られる。従って、燃料電池車両としての専用設計ではないものを含めて、多様な車両に搭載しやすい。
例えば、本実施の形態の燃料電池車両10は、既存の運搬用電動車両に燃料電池部30、60を載せたものである。既存の運搬用電動車両からの変更点としては、燃料電池部30、60を連動させて制御するための信号コネクタ26を設ける程度の簡易な変更で済む。そのため、新規に燃料電池車両を設計、製造する場合に比べて、車両の入手性や生産コストの点で非常に優れている。
なお、本発明は上記実施の形態や各変形例に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成や制御等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
上記実施の形態における燃料電池部30、60は、骨格状のフレーム31の間を外装パネル46で覆って外形を構成している。これとは異なる形態として、箱型のケースによって燃料電池部の外形を構成することもできる。
また、骨格状のフレームを用いる場合に、下部ユニットU1と上部ユニットU2の間に中枠41のような仕切りを設けず、下部ユニットU1から上部ユニットU2にかけて貫通しているような内部構造のフレームを用いてもよい。この場合、縦柱43に取り付けたブラケットを介して、燃料電池ユニット33やDC-DCコンバータ35などの、上部ユニットU2の構成物を支持することができる。
上記実施の形態のように、乗車部16の後方において、下部に動力部20、上部に燃料電池部30、60という配置にすると、車両後方のレイアウトの自由度が高いので好ましい。しかし、動力部20の後方に燃料電池部30、60を配置することも可能である。この構成は、燃料電池部30、60をより低く配置したい場合などに有効である。また、車幅方向における制約が少ない場合は、動力部20の側方(左右方向)に燃料電池部30、60を配置することも可能である。つまり、燃料電池部30、60の配置は、少なくとも乗車部16の後方という要件を満たしていればよい。
上記実施の形態の燃料電池車両10では、燃料電池部30(60)と外部電源の接続先として共用の電源コネクタ25を備えているが、燃料電池部用のコネクタと外部電源用のコネクタを独立させてもよい。
燃料電池部には、発熱部分(DC-DCコンバータなど)を冷却するための水冷システムを搭載することも可能である。
下部ユニットに配置する燃料タンクの数や配置(向き)は、上記実施の形態とは異なっていてもよい。
上記実施の形態の燃料電池部30、60は、燃料電池車両10の車体に対して着脱可能であるが、燃料電池部を構成するフレームやケースを、燃料電池車両10の車体と一体に形成するような構成も可能である。この構成は、燃料電池車両の動力部を含む根本的なレイアウトの変更とは異なり、燃料電池部用のフレームやケースを追加形成するだけであるため、既存の電動車両の基本設計を活かしやすい。
以上説明したように、本発明は、燃料電池による電力供給を簡単且つ低コストに実現した燃料電池車両が得られるという効果を有し、特に、燃料電池を電力源としていない既存の電動車両を燃料電池車両として用いる場合に有用である。
10 :燃料電池車両
16 :乗車部
18 :後部ボディ
19 :載置面
20 :動力部
21 :バッテリ
22 :駆動ユニット
23 :制御回路
30 :燃料電池部
31 :フレーム
32 :燃料タンク
33 :燃料電池ユニット
35 :DC-DCコンバータ(電流変換器)
36 :発電制御部
37 :水素センサ
40 :下枠
41 :中枠(上部ユニットの底部)
42 :上枠
43 :縦柱
44 :天板
45 :制振部材
52 :水素供給管
55 :ブラケット
56 :空間部
60 :燃料電池部
61 :改質器
62 :ブラケット
63 :空間部
65 :燃料タンク
69 :中間供給管
70 :水素供給管
U1 :下部ユニット
U2 :上部ユニット

Claims (7)

  1. 車両前部に設けた乗車部と、
    バッテリと、該バッテリから供給される電力によって車両走行用の動力を発生する駆動ユニットとを備え、前記乗車部の後方に設けられる動力部と、
    燃料タンクと、前記燃料タンクの燃料を利用して発電する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットからの電流を変換する電流変換器とを備え、前記バッテリに供給する電力を発生させる燃料電池部と、を有する燃料電池車両であって、
    前記燃料電池部は、前記燃料電池ユニット及び前記電流変換器を備える上部ユニットと、前記燃料タンクを備える下部ユニットを上下に並べて、前記乗車部の後方に設けられることを特徴とする燃料電池車両。
  2. 前記上部ユニットは、前記燃料電池ユニットの下方に空間部を有し、前記空間部に前記電流変換器を配置したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
  3. 前記上部ユニットを前記下部ユニットと隔てる底部を有し、前記底部上に設けたブラケットによって、前記底部に対して前記空間部を空けた上方に前記燃料電池ユニットを支持することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両。
  4. 前記燃料電池部は、前記動力部の上方に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池車両。
  5. 前記燃料電池部は、前記燃料電池ユニットに水素を供給する供給管を有し、
    前記供給管は、前記燃料電池ユニット及び前記燃料タンクの後方に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池車両。
  6. 前記燃料電池部は、前記燃料タンクの燃料から水素を発生させる改質器を備えている請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池車両。
  7. 前記改質器は、前記上部ユニットで前記燃料電池ユニットの下方に配置されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両。
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