JP7237656B2 - 中空糸膜モジュール、及びこれを用いた海水のろ過方法 - Google Patents

中空糸膜モジュール、及びこれを用いた海水のろ過方法 Download PDF

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Description

本発明は、中空糸膜モジュール、及びこれを用いた海水のろ過方法に関する。より詳しくは、本発明は、ハウジング内部又は中空糸膜に、封入液として塩化ナトリウム等の無機塩を主成分とする水溶液を含む精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜モジュール、並びに該中空糸膜モジュールを、逆浸透(RO)の前処理に用いる海水のろ過方法に関する。
膜分離技術は、その優れた経済性、信頼性などが認められ、各種用水や飲料水などの様々な分野において広く採用されている。この膜分離技術に用いられる分離膜として、精密ろ過(MF)、限外濾過(UF)、逆浸透(RO)の中空糸(多孔)膜が挙げられる。
中空糸膜の素材としては、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素系、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、4フッ化エチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)などの多種多様な有機高分子化合物が使用されている。これらの中空糸膜は、有機高分子化合物の種類により、水との親和性が高い親水性のものと、水との親和性が低い疎水性のものとに分類できる。
疎水性の中空糸膜(以下、「疎水性膜」ともいう。)は、親水性の中空糸膜(以下、「親水性膜」ともいう。)に比べて、乾燥前後での膜構造変化が小さいため、中でも、PVDF疎水性膜は、耐薬品性、耐熱性、機械的強度などの点で非常に優れており、多くの分野で広く利用されている。
しかしながら、疎水性膜は、製膜後に乾燥すると、乾燥前に比べて著しく透水性能が低下したり、阻止性能が変化する場合がある。それゆえ、疎水性膜を濾過に使用する際、膜の細孔内に水を浸入させるための処理(以下、「親水化処理」ともいう。)が必要となる。
少なくとも一部分が乾燥した疎水性膜を親水化処理する方法としては、以下のような方法が一般的に知られている。
(1)物理的に水を細孔内に浸入させる方法
例えば、(1-1)表面張力の小さいアルコール等の溶液に浸漬する方法、及び(1-2)水中での高圧印加により細孔に通水(水を浸入)させる方法が挙げられる。
(2)膜表面を改質する方法
例えば、(2-1)アルカリ水溶液と接触させることにより膜表面へ親水基を導入する方法、(2-2)親水性モノマーを膜表面にグラフト重合させる方法、(2-3)プラズマ照射により親水性官能基を膜表面に導入する方法が挙げられる。
(3)親水性物質を膜表面にコーティングする方法
例えば、(3-1)フッ素系の界面活性剤、グリセリン等の親水化剤を膜表面にコーティングする方法、(3-2)水溶性ポリマー水溶液に接触させた膜を熱、放射線等で不溶化する方法が挙げられる。
前記(1)の方法により親水化した膜は、一旦乾燥するとその親水性が失われてしまうため、親水化処理後は膜を常に水と接触した状態に維持しなければならず、万が一、膜の一部が乾燥した場合は、再度、親水化処理が必要となる。また、(1-2)の方法では、細孔の孔径が小さくなると通水に要する圧力が極めて高くなるために、膜の孔径が変化したり、膜強度が低下したりするという問題点があり、本来の濾過に必要のない特殊な高圧設備が付帯設備として必要となるという問題点もある。(2)と(3)の方法は、親水化処理の工程が煩雑な上、高価で特殊な設備を必要とすることから生産性及び経済性の観点から大きく不利である。また、これらの方法は、アルカリ、熱又は放射線により膜強度が劣化したり、細孔の孔径が変化したりするという問題点があり、その他に設備の安全性確保という問題点もある。さらに、(3)の方法ではコーティングした物質が溶出するという問題点もある。また、(3-1)の方法において、親水化剤の中には、多孔膜を充填した濾過用ケースである膜モジュールに、ソルベントクラック(化学薬品との接触で樹脂成形品に生じる亀裂)を誘発し、使用中に膜モジュールが破損するおそれがあるものもある。そのため、採用する親水化剤の選定には十分な精査が必要となる。
前記(1)物理的に水を細孔内に浸入させる方法において、膜乾き防止に加え、さらに凍結防止、防菌・防黴を目的として、水に代えて特定の膜保存液を用いる場合がある。前記したように、膜乾き防止の目的は、膜が乾くと、透水性能が低下したり、阻止性能が変化する場合があるため、これを回避することである。凍結防止の目的は、例えば、空輸時や寒冷下で保管において、凍結すると、膜の阻止性能が変化したり、振動等で膜が破損し易くなるため、これを回避することである。また、防菌・防黴の目的は、保管中に細菌やカビが増殖して、製品の外観を損ねたり、ろ過性能が低下するため、これを回避することである。
これらを目的として、現在、以下の膜保存液が用いられている。
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液:乾き防止と防菌・防黴の効果、効果は比較的短期間、凍結防止機能は無し、国内向け
グリセリン水溶液:凍結防止(-20℃以下)、乾き防止、防菌・防黴の効果、廃水処理が必要、海外向け、産業用製品
塩化カルシウム(CaCl2)水溶液:凍結防止(-20℃以下) 、乾き防止、防菌・防黴の効果、金属を錆びさせる、海外向け、水処理用大型モジュール
以下の特許文献1には、ポリフェノールの1種である五倍子タンニンや日本茶の抽出物をポリスルホン膜に付着させ、親水性を付与させる方法が提案されている。ここで、五倍子タンニンは、加水分解型タンニンの1種である。
以下の特許文献2には、無機塩(塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリム目詰め剤として用いて(乾燥させる)、透水率を維持することが記載されている。しかしながら、かかる目詰め剤は、1重量%の無機塩水溶液中に膜を浸漬させた後に乾燥させたものであり、膜の乾燥による膜構造変化を回避することはできない。
以下の特許文献3には、HLBが8~15の非イオン界面活性剤とグリセリンを含有する水溶液からなる封入液が開示されている。
以下の特許文献4には、オキシエチレンとオキシプロピレンを単量体単位とする共重合体である非イオン界面活性剤とグリセリンを含有する水溶液からなる封入液が開示されている。
以下の特許文献5には、ライチ果皮由来のポリフェノールを含有する組成物をポリフッ化ビニリデン多孔膜の細孔内に含浸させる工程を有する、親水性多孔膜の製造方法が開示されている。該ポリフェノールは、膜の乾燥後に膜の細孔内で膜に吸着して存在していると考えられ、また、膜の乾燥による膜構造変化を回避することはできない。
他方、近年、化学物質のリスクによる人の健康と環境への影響の防止を改善することと、EUの化学産業の競争力を強化することを目的に、EUは、REACHシステム(Registration, Evaluation and Authorization of Chemicals)なる仕組みが構築され、全ての物質を、その範囲から明確に除外されない限り、規制の対象とし、製造者や輸入者に、化学物質庁への登録の届出を義務づけている。しかしながら、医薬品のように他の規則で十分寄生されている物質や、水や酸素、特定の希ガスやセルロースパルプなど、リスクが小さく登録が必要ないと一般に知られている特定の物質や、鉱物や鉱石及び鉱石の濃縮物、セメントクリンカーなどの物質は、化学的に修飾さていない限り、登録の必要はないとされ、登録の要求から免除されている(附属書IVとVに含まれている物質は適用除外とされている)。
塩化ナトリウム(NaCl)は、附属書Vに記載されるところの、化学的に修飾されない場合、天然に存在する鉱物に分類される可能性が高い。他方、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、塩化カルシウム(CaCl2)は、登録の義務がある。
このように、今日、使用されている膜保存液、及び特許文献3、4に記載された膜保存液はいずれも化学規制の対象である成分を含んでいる。また、特許文献1、2、5は、膜の細孔内を液体で満たしたものではなく、膜を乾燥させて細孔内に特定物質を付着させたものであるため、乾燥による膜構造変化を回避することは困難である。
特開平5-301036号公報 特開平6-277470号公報 特開2010-88996号公報 特開2011-218274号公報 特開2012-254404号公報
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、乾き防止、凍結防止、及び防菌・防黴性能を発揮し、化学品規制フリーで環境に優しく、海水淡水化プラントにおいてそのリンス水を廃水処理せずにそのまま海へ放流することができる封入液でハウジング内部又は中空糸膜を満たした中空糸膜モジュール、及びこれを用いた海水のろ過方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、連通性の良い膜を使用し、ハウジング内部又は中空糸膜の細孔内を満たす封入液として、塩化ナトリウム等の無機塩水溶液を用いることで、前記課題を解決することができることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]複数本の精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束が挿入されたハウジングと、該ハウジングと該中空糸膜束の両端部を接着固定する接着固定層とを備えた中空糸膜モジュールであって、該ハウジング内部又は該中空糸膜には、無機塩を主成分とする水溶液である封入液が存在し、かつ、該中空糸膜は、該膜の断面の電子顕微鏡写真を二値化し、内表面から外表面にかけて樹脂部の面積分布を測定した時に、1μm以下の面積を持つ樹脂部の面積割合が、樹脂部総和面積の70%以上である多孔質膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
[2]前記面積分布において、内表面から外表面にかけて少なくとも一つの視野で、10μm以上の面積を持つ樹脂部の割合が、総和面積の15%以下である、前記[1]に記載の中空糸膜モジュール。
[3]前記封入液は無機塩濃度が3%以上である、前記[1]又は[2]に記載の中空糸膜モジュール。
[4]前記無機塩は天然物由来である、前記[3]に記載の中空糸膜モジュール。
[5]前記無機塩は塩化物である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
[6]前記塩化物は塩化ナトリウムである、前記[5]に記載の中空糸膜モジュール。
[7]前記封入液は次亜塩素酸ソーダをさらに含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
[8]前記封入液は酸性液体をさらに含む、前記[7]に記載の中空糸膜モジュール。
[9]前記酸性液体は無機酸である、前記[8]に記載の中空糸膜モジュール。
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを使って海水のろ過を行う海水のろ過方法。
[11]前記海水のろ過は、海水淡水化逆浸透(RO)膜の前処理であって、前記中空糸膜モジュールをろ過装置に設置後、該中空糸膜モジュール内部に海水を供給して、そのままろ過を行い、逆浸透膜のろ過運転を開始する、前記[10]に記載の海水のろ過方法。
本発明に係る中空糸膜は、該膜の細孔内が、乾き防止、凍結防止、及び防菌・防黴性能を発揮し、化学品規制フリーで環境に優しく、海水淡水化プラントにおいてそのリンス水を廃水処理せずにそのまま海へ放流することができる膜保存液で見たされているため、海水淡水化プラントにおいて精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜として好適に利用可能である。
本発明のろ過方法の一実施形態で用いられる多孔性中空糸膜の断面図の一例を示す図である。 実施例1の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 実施例2の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 実施例3の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 比較例2の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 中空糸膜の外観を示す図面に代わる写真である。 中空糸膜モジュールの構造説明図である。 海水淡水化システムの一例を示す図面である。
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態ともいう。)について詳細に説明する。尚、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る中空糸膜モジュールは、複数本の精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束が挿入されたハウジングと、該ハウジングと該中空糸膜束の両端部を接着固定する接着固定層とを備えた中空糸膜モジュールであって、該ハウジング内部又は該中空糸膜には、塩化ナトリウム等の無機塩を主成分とする水溶液である封入液が存在し、かつ、該中空糸膜は、該膜の断面の電子顕微鏡写真を二値化し、内表面から外表面にかけて樹脂部の面積分布を測定した時に、1μm以下の面積を持つ樹脂部の面積割合が、樹脂部総和面積の70%以上である多孔質膜であることを特徴とする。
本実施形態の中空糸膜モジュールは、海水のろ過方法に使用することができる。
ろ過方法としては、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に、被ろ過物を含有する被処理液を通過させて、該被ろ過物からろ液を分離するろ過工程;及び
該多孔質膜に洗浄液を通過させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程;
を含むろ過方法であることができる。
多孔質膜の形状としては特に制限はなく、平膜、管状膜、中空糸膜であることができるが、ろ過装置の省スペース性の観点から、すなわち、膜モジュール単位体積当たりの膜面積を大きくすることができるため、中空糸膜が好ましい。
ろ過方法におけるろ過工程としては、例えば、多孔質中空糸膜の中空部(内側表面)に被ろ過物を含有する被処理液を供給し、多孔質中空糸膜の膜厚(肉厚)部を通過させ、多孔質中空糸膜の外側表面から滲み出した液体をろ液として取り出す、いわゆる内圧式のろ過工程であってもよいし、多孔質中空糸膜の外側表面から被処理液を供給し、多孔質中空糸膜の内側表面から滲み出したろ液を、中空部を介して取り出す、いわゆる外圧式のろ過工程であってもよい。
本明細書中、用語「多孔質膜の内部」とは、多数の細孔が形成されている膜厚(肉厚)部を指す。
本明細書中、「被ろ過物」とは、ろ過工程において多孔質膜に供給される被処理水中に含有され、ろ過により除去され、ろ液から分離されるべき物質等を意味する。
ろ過方法のろ過工程における被処理液としては、特に制限はなく、海水に限らず、懸濁水、工程プロセス液等が挙げられる。例えば、本実施形態のろ過方法は、懸濁水をろ過する工程を含む浄水方法に用いることができる。
本明細書中、用語「懸濁水」とは、天然水、生活排水(廃水)、これらの処理水などを指す。天然水としては、河川水、湖沼水、地下水、海水が例として挙げられる。これらの天然水に対し沈降処理、砂ろ過処理、凝集沈殿砂ろ過処理、オゾン処理、活性炭処理などの処理を施した処理水も、懸濁水に包含される。生活排水の例は下水である。下水に対してスクリーンろ過や沈降処理を施した下水1次処理水や、生物処理を施した下水2次処理水、更には凝集沈殿砂ろ過、活性炭処理、オゾン処理などの処理を施した3次処理(高度処理)水も、懸濁水に包含される。これらの懸濁水にはμmオーダー以下の微細な有機物、無機物及び有機無機混合物から成る濁質(腐植コロイド、有機質コロイド、粘土、細菌など)、細菌・藻類由来の高分子物質が含まれていてもよい。
懸濁水の水質は、一般に、代表的な水質指標である濁度及び/又は有機物濃度より規定できる。濁度(瞬時の濁度ではなく平均濁度)によれば、大きくは、濁度1未満の低濁水、濁度1以上10未満の中濁水、濁度10以上50未満の高濁水、濁度50以上の超高濁水などに水質を区分することができる。また、有機物濃度(全有機炭素濃度(Total Organic Carbon(TOC)):mg/L)(これも瞬時の値ではなく平均値))によれば、大きくは、1未満の低TOC水、1以上4未満の中TOC水、4以上8未満の高TOC水、8以上の超高TOC水などに水質を区分することができる。基本的には、濁度又はTOCの高い水ほど、多孔質ろ過膜を目詰まりさせやすい。
工程プロセス液とは、食品、医薬品、半導体製造などで有価物と非有価物とを分離するときの被分離液のことを指す。食品製造では、例えば、日本酒、ワインなどの酒類と酵母とを分離する場合などに、本実施形態のろ過方法を使用することができる。医薬品の製造では、例えば、タンパク質の精製する際の除菌などに、本実施形態のろ過方法を使用することができる。また、半導体製造では、例えば、研磨廃水から研磨剤と水との分離などに、本実施形態のろ過方法を使用することができる。
以下、ろ過方法に用いる多孔質膜の構造、素材(材料)、及び製造方法を、以下、詳述する。
<多孔質膜>
本実施形態の中空糸膜モジュールに用いる多孔性中空糸膜は、多孔性中空糸膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、その内側表面を含む視野、多孔性中空糸膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、その樹脂部の総面積に対して70%以上であり、好ましくは、同各領域において、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、樹脂部の総面積に対して15%以下であるものである。
図1は、本実施形態のろ過方法において用いられる多孔性中空糸膜の断面における1つの視野の電子顕微鏡写真を二値化処理した画像である。図1に示す断面図は、多孔性中空糸膜の長さ方向に直交する方向の断面における1つの視野の断面図であり、かつ多孔性中空糸膜の上述した4視野のうち内表面に最も近い視野を撮影して得たSEM画像を二値化処理した画像である。
尚、前記各領域内では、多孔性中空糸膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面と、該内側表面に平行する断面との間では、樹脂部の存在分布の差異、すなわち、孔の連通性の異方性は事実上無視することができる。
本明細書中、「樹脂部」とは、多孔質膜において多数の孔を形成する、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分である。図1に黒色で示す部分が樹脂部であり、白色の部分が孔である。
多孔性中空糸膜内部には、膜の内側から外側まで屈曲しながら連通している連通孔が形成されており、多孔性中空糸膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、その内側表面を含む視野、その膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であれば、孔の連通性が高い(すなわち、膜内部の連通孔の存在割合が高い)ものとなり、被処理液のフラックス(透水量、透水性)、透水性保持率が高く、膜保存液を効果的に保持することができる。しかしながら、樹脂部の総面積に対する1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計の割合が高すぎると、多孔質膜において多数の孔を形成する、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分が細すぎるものとなるため、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であることを維持しつつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下で存在するものが好ましい。
図2A~図2Dは、図1に示すような多孔性中空糸膜の各視野の断面図を画像解析し、樹脂部の面積分布を測定した結果を示すヒストグラムである。図2Aは、後述する実施例1の測定結果を示しており、図2Bは、実施例2の測定結果を示しており、図2Cは、実施例3の測定結果を示しており、そして図2Dは、比較例2の測定結果を示している。
図1に示す多孔性中空糸膜の断面図においては、樹脂部が粒状に表れている。図2A~図2Dは、この粒状の樹脂部のそれぞれの面積を計測し、その粒状の樹脂部の面積毎について、断面図内の全樹脂部の総面積に対する面積割合をヒストグラムとして示したものである。尚、図2A~図2Dにおける丸1~丸4は、多孔性中空糸膜の内表面から外表面に向かって等間隔で順次撮影された上述した4視野のそれぞれの番号を示している。具体的には、例えば、実施例1の丸1は、実施例1の多孔性中空糸膜の最も内表面側の視野を撮影した断面図のヒストグラムであることを意味し、実施例1の丸4は、実施例1の多孔性中空糸膜の最も外表面側の視野を撮影した断面図のヒストグラムであることを意味する。
尚、多孔性中空糸膜の各視野の断面図における樹脂部の面積分布の測定方法については、後で説明する。
多孔性中空糸膜の表面の開口率(表面開口率)は、25~60%であり、好ましくは25~50%であり、更に好ましくは25~45%である。処理対象液と接触する側の表面の開口率が25%以上である膜をろ過に用いることにより、目詰まりによる透水性能劣化も膜表面擦過による透水性能劣化もともに小さくし、ろ過安定性を高めることができる。しかしながら、開口率が高くても孔径が大きすぎては、求める分離性能を発揮できないおそれがある。そのため、外表面における細孔の平均孔径は、10nm~700nmであることが好ましく、20nm~600nmであることがより好ましい。平均孔径が30nm~400nmであれば、分離性能は十分であり、孔の連通性も確保できる。
多孔性中空糸膜の厚さは、好ましくは80~1,000μmであり、より好ましくは100~300μmである。厚さが80μm以上であることにより、強度が高くなり、他方、1000μm以下であることにより、膜抵抗による圧損が小さくなる。
多孔性中空糸膜10の空孔率は、好ましくは50~80%であり、より好ましくは55~65%である。この空孔率が50%以上であることにより、透水性能が高く、他方、80%以下であることにより、機械的強度を高くすることができる。
多孔性中空糸膜の形状としては、円環状の単層膜をあげることができるが、分離層と分離層を支持する支持層とで違う孔径を持つ多層膜であってもよい。また、外表面および内表面は、突起を持つなど異形断面構造でもよい。
また、本実施形態のろ過方法に用いられる多孔性中空糸膜は、球晶構造ではなく、3次元網目構造であることが好ましい。3次元網目構造を取ることにより、多孔性中空糸膜の内表面から外表面に亘って形成される細孔の連通性をより良好にすることができる。
<多孔性中空糸膜の素材(材質)>
多孔性中空糸膜を構成する樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、フッ素樹脂がより好ましい。フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ヘキサフルオロプロピレン樹脂、及びこれら樹脂の混合物からなる群から選ばれるものが挙げられる。
熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、オレフィンとハロゲン化オレフィンとの共重合体、ハロゲン化ポリオレフィン、それらの混合物が挙げられる。熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(ヘキサフルオロプロピレンのドメインを含んでもよい)、これらの混合物が挙げられる。これらの樹脂は、は熱可塑性ゆえに取り扱い性に優れ、且つ強靱であるため、膜素材として優れる。これらの中でもフッ化ビニリデン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、ヘキサフルオロプロピレン樹脂又はそれらの混合物、エチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンのホモポリマー又はコポリマー、あるいは、ホモポリマーとコポリマーの混合物は、機械的強度、化学的強度(耐薬品性)に優れ、且つ成形性が良好であるために好ましい。より具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合物、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合物、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。
多孔質膜は、熱可塑性樹脂以外の成分(不純物等)を5質量%程度まで含み得る。例えば、多孔質膜製造時に用いる溶剤が含まれる。後述するように、多孔質膜の製造時に溶剤として用いた第1の溶剤(以下、非溶剤ともいう)、第2の溶剤(以下、良溶剤若しくは貧溶剤ともいう)、又はその両方が含まれる。これらの溶剤は、熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)により検出することができる。
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
また、第2の溶剤は、第1の溶剤と異なり、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であることができる。炭素数6以上30以下の脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が挙げられる。また、エポキシ化植物油としては、エポキシ大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
第1の溶剤は、熱可塑性樹脂と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、熱可塑性樹脂が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることが好ましい。
第2の溶剤は、熱可塑性樹脂と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度で熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解する良溶剤であってもよい。
第2の溶剤は、熱可塑性樹脂と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃では熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度では熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であってもよい。
また、本実施形態のろ過方法においては、熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた多孔質中空糸膜であって、第1の溶剤(非溶剤)を含むものを用いることができる。
この場合、第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であって、ポリフッ化ビニリデンと第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、ポリフッ化ビニリデンが第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることができる。非溶媒としては、アジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)が好ましい。
また、上記多孔質中空糸膜は、第1の溶剤とは異なる第2の溶剤を含んでもよい。この場合、第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であって、ポリフッ化ビニリデンと第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解する良溶剤であってもよい。また、第2の溶剤は、第2の混合液の温度が25℃ではポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度ではポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であってもよい。貧溶媒としては、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が選択できる。
引張破断伸度の初期値は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上、特に好ましくは120%以上である。
また、実用上の観点から、多孔質膜の圧縮強度は0.2MPa以上が好ましく、より好ましくは0.3~1.0MPa、更に好ましくは0.4~1.0MPaである。
<多孔質膜の製造方法>
以下、多孔質中空糸膜の製造方法について説明する。但し、本実施形態のろ過方法に用いる多孔質中空糸膜の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
本実施形態のろ過方法に用い多孔質中空糸膜の製造方法は、(a)溶融混練物を準備する工程と、(b)溶融混練物を多重構造の紡糸ノズルに供給し、紡糸ノズルから溶融混練物を押し出すことによって中空糸膜を得る工程と、(c)可塑剤を中空糸膜から抽出する工程とを含むものであることができる。溶融混練物が添加剤を含む場合には、工程(c)の後に、(d)添加剤を中空糸膜から抽出する工程をさらに含んでもよい。
溶融混練物の熱可塑性樹脂の濃度は好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは25~45質量%であり、更に好ましくは30~45質量%である。この値が20質量%以上であれば、機械的強度を高くすることができ、他方、60質量%以下であれば、透水性能を高くすることができる。溶融混練物は添加剤を含んでもよい。
溶融混練物は、熱可塑性樹脂と溶剤の二成分からなるものであってもよく、熱可塑性樹脂、添加剤、及び溶剤の三成分からなるものであってもよい。溶剤は、後述するように、少なくとも非溶剤を含む。
工程(c)で使用する抽出剤としては、塩化メチレンや各種アルコールなど熱可塑性樹脂は溶けないが可塑剤と親和性が高い液体を使用することが好ましい。
添加剤を含まない溶融混練物を使用する場合には、工程(c)を経て得られる中空糸膜を多孔質中空糸膜として使用してもよい。添加剤を含む溶融混練物を使用して多孔質中空糸膜を製造する場合には、工程(c)後に、中空糸膜から(d)添加剤を抽出除去して多孔性中空糸膜を得る工程をさらに経ることが好ましい。工程(d)における抽出剤には、湯、又は酸、アルカリなど使用した添加剤を溶解できるが熱可塑性樹脂は溶解しない液体を使用することが好ましい。
添加剤として無機物を使用してもよい。無機物は無機微粉が好ましい。溶融混練物に含まれる無機微粉の一次粒径は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは5nm以上30nm未満である。無機微粉の具体例としては、シリカ(微粉シリカを含む)、酸化チタン、塩化リチウム、塩化カルシウム、有機クレイ等が挙げられ、これらのうち、コストの観点から微粉シリカが好ましい。上述の「無機微粉の一次粒径」は電子顕微鏡写真の解析から求めた値を意味する。すなわち、まず無機微粉の一群をASTM D3849の方法によって前処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡写真に写された3000~5000個の粒子直径を測定し、これらの値を算術平均することで無機微粉の一次粒径を算出することができる。
多孔質中空糸膜内部の無機微粉について、蛍光X線等により存在する元素を同定することで、存在する無機微粉の素材(材料)を同定することができる。
添加剤として有機物を使用する場合、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子を使用すると中空糸膜に親水性を付与することができる。また、グリセリン、エチレングリコールなど粘度の高い添加剤を使用すると溶融混練物の粘度をコントロールすることができる。
次に、本実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法における(a)溶融混練物を準備する工程について詳細に説明する。
本実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法では、熱可塑性樹脂の非溶剤を、良溶剤又は貧溶剤に混合させる。混合後の混合溶剤は使用する熱可塑性樹脂に対して非溶剤となる。このように膜の原材料として非溶剤を用いると、3次元網目構造を持つ多孔質中空糸膜が得られる。その作用機序は必ずしも明らかではないが、非溶剤を混合させて、より溶解性を低くした溶剤を用いた方がポリマーの結晶化が適度に阻害され、3次元網目構造になりやすいと考えられる。例えば、非溶剤、及び貧溶剤又は良溶剤は、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油等の各種エステル等からなる群から選ばれる。
熱可塑性樹脂を常温で溶解させることができる溶剤を良溶剤、常温では溶解できないが高温にして溶解させることができる溶剤をその熱可塑性樹脂の貧溶剤、高温にしても溶解させることができない溶剤を非溶剤と呼ぶが、良溶剤、貧溶剤、及び非溶剤は、以下のようにして判定することができる。
試験管に2g程度の熱可塑性樹脂と8g程度の溶剤を入れ、試験管用ブロックヒーターにて10℃刻み程度でその溶剤の沸点まで加温し、スパチュラなどで試験管内を混合し、熱可塑性樹脂が溶解するものが良溶剤又は貧溶剤、溶解しないものが非溶剤である。100℃以下の比較的低温で溶解するものが良溶剤、100℃以上沸点以下の高温にしないと溶解しないものを貧溶剤と判定する。
例えば、熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、溶剤としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル又はアジピン酸ジブチルを用いると、200℃程度でPVDFはこれらの溶剤に均一に混ざり合い溶解する。他方、溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル、又はセバシン酸ビス2エチルヘキシルを用いると温度を250℃まで上げても、PVDFはこれらの溶剤には溶解しない。
また、熱可塑性樹脂としてエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を用い、溶剤としてアジピン酸ジエチルを用いると、200℃程度でETFEは均一に混ざり合い溶解する。他方、溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DIBA)を用いると溶解しない。
また、熱可塑性樹脂としてエチレン-モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)を用い、溶剤としてクエン酸トリエチルを用いると200℃程度で均一に溶解し、トリフェニル亜リン酸(TPP)を用いると溶解しない。
こうして得られたポリフッ化ビニリデン中空糸(多孔)膜の外観を、図3に示す。尚、本明細書中、用語「中空糸膜の細孔内」とは、膜厚内の細孔を意味し、中空糸膜の内表面の内側の中空空隙を意味しない。図4に、中空糸膜モジュールの構造を示すが、複数本の精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜からなる中空糸膜束、ハウジング、及び該中空糸膜束の両端部を該ハウジング内に接着・固定する接着固定部を備えた中空糸膜モジュールにおいて、用語「該ハウジング内部又は該中空糸膜には、塩化ナトリウム等の無機塩を主成分とする水溶液である封入液が存在している」とは、封入液は、中空糸膜モジュール内の中空糸膜の外表面のハウジング内壁との間の空間、及び中空糸膜の内表面の内側の中空空隙に、存在している必要はなく、中空糸膜厚内の細孔内に存在していればよいことを意味している。
こうして得られた中空糸膜を用いて、図4に示すように、常法により、中空糸膜モジュールを作製した後、中空糸膜の細孔内に、封入液として、好ましくは3重量%以上の塩化ナトリウム等の無機塩水溶液を含浸する工程を施す。
含浸工程に先立って、ポリフッ化ビニリデン多孔膜を水溶性有機溶媒に浸漬して、少なくともその細孔内を水溶性有機溶媒で濡れた状態にした後、その水溶性有機溶媒を水で置換して、細孔内を湿潤した状態に保持してもよい。これにより、含浸工程において、3重量%以上の塩化ナトリウム等の無機塩水溶液を容易に細孔内に含浸することができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。これらの中では、安全性及び汎用性の観点から、エタノールが好ましい。
次に、含浸工程において、3重量%以上の塩化ナトリウム等の無機塩水溶液を、ポリフッ化ビニリデン多孔膜の細孔内に含浸させる。この3重量%以上の塩化ナトリウム等の無機塩水溶液は、膜乾き防止に加え、凍結防止、防菌・防黴性能を発揮する封入液(膜保存液)として機能するものである。
例えば、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液は、市販されている天然由来の塩化ナトリウムを、水に溶解させて製造することができる。3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液は、含浸前に加熱等により殺菌し、また、ろ過等し、ゴミくずや不純物を予め除去したものであることが好ましい。
また、場合により、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液に、滅菌剤として次亜塩素酸ナトリウムをさらに含有させてもよく、あるいは、酸性液体、例えば、無機酸をさらに含有させてもよい。これにより、微生物や菌の繁殖を抑制することができる。
本実施形態で用いる膜保存液としての塩化ナトリウム水溶液の塩化ナノリウムの含有量は3重量%以上である必要がある。これにより、膜保存液は、マイナス5℃でも凍結せず、また、長い期間にわたり防菌・防黴性能を発揮することが可能となる。3%以上であれば、防菌、防カビ効果が期待でき、5%以上であればなおよい。10%以上であれば細菌、カビはほぼ発生しない。
ポリフッ化ビニリデン多孔膜に、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液、他の滅菌剤等を含浸させる方法としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン多孔膜が湿潤状態にある場合、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液中に多孔膜を浸漬する方法、及び、該水溶液を多孔膜に噴霧又は流下させる方法が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデン多孔膜が乾燥状態にある場合、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液を、加圧条件下で多孔膜の細孔内に圧入するようにして細孔内に含浸させることも可能である。
ポリフッ化ビニリデン多孔膜に、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液を含浸させるのに要する時間、3重量%以上の塩化ナトリウム水溶液の使用量などの条件は、最終的に得られる親水性多孔膜の通水性が所望の程度になるのに必要な条件であれば、特に限定されない。
本実施形態の中空糸膜モジュールは、好ましくは、海水淡水化における逆浸透(RO)処理の前処理に使用するためのものであることができる。
本発明の他の実施形態は、前記中空糸膜モジュールを使って海水のろ過を行う海水のろ過方法であり、好ましくは、かかる海水のろ過は、海水淡水化逆浸透(RO)膜の前処理であって、前記中空糸膜モジュールをろ過装置に設置後、該中空糸膜モジュール内部に海水を供給して、そのままろ過を行い、逆浸透膜のろ過運転を開始する、海水のろ過方法である。
図5に、海水淡水化システム(プラント)の一例を示す。本実施形態の中空糸膜モジュールは、膜保存液として中空糸膜の細孔内に3重量%以上の塩化ナトリウム等の無機塩水溶液が含浸されているため、これを、海水淡水化における逆浸透(RO)処理の前処理としての精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜モジュールとして用いる際、全量ろ過方式で海水を供給し、細孔内の膜保存液のリンス水を廃水処理せずにそのまま海へ放流することができるため、環境に優しいものにできる。
また、本実施形態の中空糸膜モジュール自体の製造においても、上述から明らかなように、特殊な設備を要することなく、安全で簡易に親水性多孔膜を製造することができる。さらに連通性の良い膜であれば、長期間保存でき、凍結防止、防カビ、防菌効果のある溶液を用いることができ、保湿効果も高い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例、比較例で用いた多孔質中空糸膜の製造方法、ろ過試験、破損試験、及び各物性の測定方法等は、以下のものであった。
(1)多孔質中空糸膜の外径、内径
多孔質中空糸膜を、長さ方向に直交する断面でカミソリを使って薄くスライスし、100倍拡大鏡にて、外径と内径を測定した。一つのサンプルについて、長さ方向に30mm間隔で60箇所の切断面で測定を行い、平均値を中空糸膜の外径と内径とした。
(2)電子顕微鏡撮影
多孔質中空糸膜を、長さ方向に直交する断面で円環状に裁断し、10%リンタングステン酸+四酸化オスミウム染色を実施し、エポキシ樹脂に包埋した。次いで、トリミング後、試料断面にBIB加工を施して平滑断面を作製し、導電処理し、検鏡試料を作製した。作製した検鏡試料を、HITACHI製電子顕微鏡SU8000シリーズを使用し、加速電圧1kVで膜の断面の電子顕微鏡(SEM)画像を5,000~30,000倍で、膜厚(肉厚部)断面の内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(図2A~2Dにおける丸1~丸4)内で所定の視野で撮影した。平均孔径に応じて倍率を変えて測定することができ、具体的には、平均孔径が0.1μm以上の場合には、5000倍、平均孔径が0.05μm以上0.1μm未満の場合には、10,000倍、平均孔径が0.05μm未満の場合には、30,000倍とした。尚、視野のサイズは、2560×1920ピクセルとした。
画像処理には、ImageJを用い、撮影したSEM画像に対してThreshold処理(Image-Adjust-Treshold:大津法(Otsuを選択))を施すことより、孔の部分と樹脂部とで二値化した。
表面開口率:二値化画像の樹脂部と孔部との割合を算出することにより表面開口率を測定した。
樹脂部の面積分布:ImageJの「Analyze Particle」コマンド(Analyz Particle:Size0.10-Infinity)を使用し、撮影したSEM画像に含まれる二値化された粒状の樹脂部の大きさをそれぞれ計測した。SEM画像に含まれる全樹脂部の総面積をΣSとし、1μm以下の樹脂部の面積をΣS(<1μm)とした場合に、ΣS(<1μm)/ΣSを算出することによって、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合を算出した。同様に、所定範囲の面積を有する樹脂部の面積割合を算出した。
尚、二値化処理を施す際のノイズ除去については、0.1μm未満の面積の樹脂部をノイズとして除去し、0.1μm以上の面積の樹脂部を分析対象とした。また、ノイズ除去は、メディアンフィルタ処理(Process-Filters-Median:Radius:3.0pixels)を施すことによって行った。
また、SEM画像の端で切れている粒状の樹脂部についても計測対象とした。また、「Incude Holes」(穴をうめる)の処理は行わなかった。また、「雪だるま」型を「扁平」型などに形状を補正する処理は行わなかった。
平均細孔孔径:ImageJの「Plugins-Bone J-Thickness」コマンドを使用して測定した。尚、空間サイズは空隙に入る最大の円サイズとして定義した。
(3)フラックス(Flux、透水性、初期純水フラックス)
多孔質中空糸膜をエタノールに浸漬した後、純水浸漬を数回繰り返した後、約10cm長の湿潤中空糸膜の一端を封止し、他端の中空部内に注射針を挿入し、25℃の環境下にて注射針から0.1MPaの圧力で25℃の純水を注入し、膜の外側表面から透過してくる純水量を測定し、下記式:
初期純水フラックス[L/m/h=LMH]=60×(透過水量[L])/{π×(膜外径[m])×(膜有効長[m])×(測定時間[min])}
により純水フラックスを決定し、透水性を評価した。
尚、「膜有効長」は、注射針が挿入されている部分を除いた、正味の膜長を指す。
(4)モジュール透水性能保持率
作製した膜モジュールを使って純水を使用して透水性能保持率を測定した。
透水性能保持率[%]=100×(透水性能[LMH/kPa])/(初期透水性能[LMH/kPa])により求めた。
尚、各パラメーターは、下記式で算出した:
透水性能=モジュール純水フラックス[L/m2/h=LMH]/ろ過圧力[kPa]
ろ過圧力={(入圧)+(出圧)}/2
ここでろ過圧力はろ過工程の全体の時間における平均値を示す。
膜外表面積[m]=中空糸膜本数×π×(中空糸膜外径[m])×(中空糸膜有効長[m])
また、全てのろ過圧力は25℃の水の粘度に換算して算出している。
(5)中空糸膜モジュールの製作
片端の中空部をホットメルト接着剤により閉塞させた多孔質中空糸膜6600本の束2.2mに切断し、内径154mmのパイプに、サイドノズルを有するヘッドが上下に溶着されたハウジングに挿入した。
次いで、中空部を閉塞した側の中空糸膜束の一方の端部に、外径11mmの円柱形状の規制部材(予め下記のポッティング材と同様の接着剤を型に流延して硬化させて成形したもの)を、8本均等に分布するように挿入して配置した。中空糸膜束の他方の端部において、貫通孔を形成させるために、離型性のよいポリプロピレン製柱状部材を挿入した。
次いで、ポッティング材導入用チューブを取り付けた接着固定部形成用容器を、ハウジングの両端に固定し、水平方向に回転させながらポッティング材を、ハウジングの両端部に注入した。ポッティング材としては、2液性熱硬化型ウレタン樹脂(サンユレック社製:SA-6330A2/SA-6330B5(商品名))を用いた。ポッティング材の硬化反応が進行して流動化が停止した時点で遠心機の回転を停止して取り出し、オーブン中で50℃に加熱してキュアーした。
その後、ハウジングの、膜の中空部を閉塞させた側の端部を切断して、接着前の段階で中空部を閉塞した側の中空部を開口させた。他方の接着固定部からポリプロピレン製柱状部材を取り除いて複数の貫通孔を形成した。こうして膜有効長:2m、有効膜面積:50mの片端開口外圧型中空糸膜モジュールを製作した。
(6)中空糸膜モジュール保存液置換および保管試験
得られた中空糸膜モジュールを40%のエタノール水溶液を循環ろ過することで膜を濡らし、40%のエタノールを純水に置換した。次いで3~10%の塩化ナトリウム水溶液に置換した。さらにモジュール下部を開放してモジュールを30分立てかけ、内部に存在する塩化ナトリウム水溶液を垂れ切った。そのまま開口部を密閉して3か月間放置した。
(7)中空糸膜モジュール完全性試験
内部の液が排出された中空糸膜モジュールの下部から加圧空気を導入して膜モジュール内部を0.1MPaの加圧状態に保ちながら、ろ液側を水で満たし、ろ液配管の一部を透明配管とすることで、膜から漏れる空気を検出した。透明配管内に気泡が確認された場合は、中空糸膜が乾いていることを示す。
(8)防菌、防カビ性
3カ月放置した中空糸膜モジュールの解体し、中空糸全体を露出させ、膜面の状態を目視で観察することにより、細菌、カビの発生状況を観察した。
[実施例1]
熱可塑性樹脂としてPVDF樹脂(クレハ社製、KF-W#1000)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)32.9質量%と、貧溶剤としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC, 沸点343℃)4.1質量%とを用いて、溶融混練物を調製した。得られた溶融混連物の温度は240℃であった。得られた溶融混連物を2重管構造の紡糸ノズルを用い、中空糸状押出し物を120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔質構造を発達させた。得られた中空糸状押出し物を、5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。巻き取った中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてDOAとATBCを抽出除去し、次いで、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換し、次いで、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去して、多孔質中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、内径0.7mm、外径1.2mmであった。
以下の表1に、得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、3次元網目構造を示した。また、透水性が高く、連通性の高い膜であることが分かった。
得られた多孔質膜のモジュールを3%の塩化ナトリウム水溶液を保存液として保管試験を行った。3か月経過後、モジュール透水量保持率は97%であり、細菌、カビは発生せず、完全性試験も漏れなしであった。
[実施例2]
熱可塑性樹脂としてETFE樹脂(旭硝子社製、TL-081)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)32.9質量%と、貧溶剤としてアジピン酸ジイソブチル(DIBA)4.1質量%とを用いて、溶融混練物を調製した。得られた溶融混連物の温度は240℃であった。得られた溶融混連物を2重管構造の紡糸ノズルを用い、中空糸状押出し物を120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔質構造を発達させた。得られた中空糸状押出し物を、5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。巻き取った中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてDOAとDIBAを抽出除去し、次いで、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換し、次いで、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去して、多孔質中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、内径0.7mm、外径1.2mmであった。また、実施例1と同様に中空糸膜モジュールを作製した。
以下の表1に、得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、3次元網目構造を示した。また、透水性が高く、連通性の高い膜であることが分かった。
得られた多孔質膜のモジュールを7%の塩化カリウム水溶液を保存液として保管試験を行った。3か月経過後、モジュール透水量保持率は95%であり、細菌、カビは発生せず、完全性試験も漏れなしであった。
[実施例3]
熱可塑性樹脂として熱可塑性樹脂としてECTFE樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Halar901)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてトリフェニル亜リン酸(TPP)32.9質量%と、貧溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)4.1質量%とを用いて、溶融混練物を調製した。得られた溶融混連物の温度は240℃であった。得られた溶融混連物を2重管構造の紡糸ノズルを用い、中空糸状押出し物を120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔質構造を発達させた。得られた中空糸状押出し物を、5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。巻き取った中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてTPPとDOAを抽出除去し、次いで、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換し、次いで、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去して、多孔質中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、内径0.7mm、外径1.2mmであった。
以下の表1に、得られた実施例3の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、3次元網目構造を示し、また、透水性が高く、連通性の高い膜であることが分かった。
得られた多孔質膜のモジュールを10%の塩化ナトリウム水溶液を保存液として保管試験を行った。3か月経過後、モジュール透水量保持率は98%であり、細菌、カビは発生せず、完全性試験も漏れなしであった。
[比較例1]
溶剤をATBCのみとしたこと以外は、実施例1と同様にして製膜し、比較例1の中空糸膜を得た。以下の表2に、得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、球晶構造を示した。また、透水性が低く、連通性の低い膜であることが分かった。
得られた多孔質膜のモジュールを3%の塩化ナトリウム水溶液を保存液として保管試験を行った。3か月経過後、モジュール透水量保持率は65%であり、細菌、カビは発生しなかったが、完全性試験も漏れが発生していた。
[比較例2]
シリカを0%とし、溶剤をγ-ブチロラクトンのみとしたこと以外は、実施例1と同様にして製膜し、比較例2の中空糸膜を得た。以下の表2に、得られた比較例2の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、球晶構造を示した。また、透水性が低く、連通性の低い膜であることが分かった。
得られた多孔質膜のモジュールを10%の塩化ナトリウム水溶液を保存液として保管試験を行った。3か月経過後、モジュール透水量保持率は57%であり、細菌、カビは発生しなかったが、完全性試験も漏れが発生していた。
以上のように、膜構造の違いによって保管性に差異が現れることが分かった。連通性が良好な膜の方が、保管性に優れることが分かった。
Figure 0007237656000001
Figure 0007237656000002
本発明に係る中空糸膜は、連通性の良い該膜の細孔内が、乾き防止、凍結防止、及び防菌・防黴性能を発揮し、化学品規制フリーで環境に優しく、例えば、海水淡水化プラントにおいてそのリンス水を廃水処理せずにそのまま海へ放流することができる膜保存液で満たされているため、海水淡水化プラントにおいて精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜として好適に利用可能である。

Claims (11)

  1. 複数本の精密ろ過(MF)又は限外ろ過(UF)中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束が挿入されたハウジングと、該ハウジングと該中空糸膜束の両端部を接着固定する接着固定層とを備えた中空糸膜モジュールであって、該ハウジング内部又は該中空糸膜には、無機塩を主成分とする水溶液である封入液が存在し、かつ、該中空糸膜は、該膜の断面の電子顕微鏡写真を二値化し、内表面から外表面にかけて樹脂部の面積分布を測定した時に、表面開口率が25~45%であり、かつ、1μm以下の面積を持つ樹脂部の面積割合が、樹脂部総和面積の70%以上である多孔質膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
  2. 前記面積分布において、内表面から外表面にかけて少なくとも一つの視野で、10μm以上の面積を持つ樹脂部の割合が、総和面積の15%以下である、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  3. 前記封入液は、無機塩濃度が3%以上である、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
  4. 前記無機塩は天然物由来である、請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
  5. 前記無機塩は塩化物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
  6. 前記塩化物は塩化ナトリウムである、請求項5に記載の中空糸膜モジュール。
  7. 前記封入液は次亜塩素酸ソーダをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
  8. 前記封入液は酸性液体をさらに含む、請求項7に記載の中空糸膜モジュール。
  9. 前記酸性液体は無機酸である、請求項8に記載の中空糸膜モジュール。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュールを使って海水のろ過を行う海水のろ過方法。
  11. 前記海水のろ過は、海水淡水化逆浸透(RO)膜の前処理であって、前記中空糸膜モジュールをろ過装置に設置後、該中空糸膜モジュール内部に海水を供給して、そのままろ過を行い、逆浸透膜のろ過運転を開始する、請求項10に記載の海水のろ過方法。
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