以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る自動機の精査システム90は、後述のように、各自動機10の精査スケジュールを各自動機10の在高情報に基づいて調整すると共に、その開始時期を一元的に管理する。精査システム90は、図外の勘定系ホストに通信可能に接続されている。
精査とは、自動機10の保有する現金残高が正しいか検査することできる。精査は、一般的に、あらかじめ設定されたスケジュールに従って、店舗内でATM10自体を操作したり、または店舗内に設置されている精査クライアント(精査管理端末)から現金計数の精査実施を指示したりすることにより、計数結果と勘定系ホストで保持している結果とを比較し、差異がないかを確認する。例えば自動機10内に識別不能な現金などが保持されているために差異が生じた場合には、行員等がその不明現金を計数し、上役が確認した後に現金有高を修正する。
本実施形態の精査システム(精査管理センタと呼ぶこともできる)90は、監視サーバ20と精査サーバ30と精査クライアント40を有し、通信ネットワーク60を介して各自動機10に接続されている。精査システム90は、精査クライアント40により選択された任意の自動機10に関する基本スケジュール(基本精査スケジュール)を調整する際に、その自動機10の在高情報を利用する。
精査システム90は、対象の自動機10の在高情報から現金の計数に要する計数所要時間を算出し、算出された計数所要時間と対象の自動機10の運用に対する影響とに基づいて、スケジュールを調整することもできる。
自動機10の運用に対する影響とは、例えば自動機10のサービス提供時間についての影響である。例えば、店舗の始業前に精査が終了していないと、自動現金取引サービスの開始が遅れるため、サービス品質に影響を与える。一方、精査に要する時間は、対象の自動機10が保持している現金の量に主に依存する。そこで、精査システム90は、対象の自動機10の現金保持量である在高情報と運用時間に対する影響との両方を考慮して、スケジュールを調整する。
精査システム90は、精査を実行可能であるかを対象の自動機10に対して確認し、確認が得られた場合に精査の実行を指示することもできる。これにより、自動機10の状態を確認してから精査を実施させることができ、例えば保守作業中の自動機10について精査を開始するといった状況の発生を防止でき、使い勝手が向上する。
精査システム90は、精査の実行を指示した後、精査が開始されるまでの開始待ち時間を対象の自動機10に表示させることもできる。精査が開始されると、対象の自動機10はサービス停止状態になる。サービス停止状態となる前にその旨を周囲に通知することにより、使い勝手が向上する。
精査システム90は、精査の実行が開始される前に所定の停止要求が入力された場合には、精査の開始を停止させることもできる。これにより例えば、緊急に自動現金取引サービスを利用しなければならないような状況にも対応でき、使い勝手が向上する。
精査システム90は、対象の自動機10について精査が可能な時間帯である場合に、精査を実行可能であるか対象の自動機10に対して確認し、確認が得られた場合に精査の実行を指示することもできる。精査が可能な時間帯とは、例えば、精査を実行可能な時間帯として予め設定された時間帯である。これにより、精査が可能な時間帯以外で自動機の精査が開始されるのを防止でき、使い勝手が向上する。
本実施形態によれば、店舗内の精査業務に影響を与えずに、かつ、店舗内の業務実施者に意識させずに、遠隔から精査スケジュールを制御することができる。これにより、自動機10を適正に運用することができ、使い勝手も向上する。
本実施形態では、精査システム90において全ての自動機10の在高情報を監視し、全ての自動機10の精査スケジュールを一元的に管理する。これにより、例えば、精査スケジュールの調整の難しい自動機10を早期に発見して、対策を立てることもできる。この結果、適正な自動機の運用を担保しつつ、使い勝手を向上することができる。
さらに本実施形態では、後述のように、自動機10の現金在高の正当性を、精査システム90で管理している情報と、自動機10内の実物現金有高と、前回精査後の取引または係員操作による計算値とのうち、いずれか複数を組合せてチェックできる。
図1~図10を用いて第1実施例を説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その構成を変更し得る。
図面等における各構成の位置、大きさ、形状、範囲、数量などは、発明の理解を容易にするために記載されたものであり、実際の位置、大きさ、形状、範囲、数量などを表していない場合がある。したがって、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲、数量などに限定されない。
図1は、精査システム90を含む全体システムの構成を示す。自動機(以下、ATM)10は、例えば、金融機関の支店、空港、駅、商業施設などの施設70に設置され、顧客の操作によって出金または入金などの取引を行う。図示は省略するが、ATM10は施設70の外部に設置されてもよい。或る施設(あるいは店舗。以下同じ)70は、精査クライアント50を備えていない。他の施設70は、精査クライアント50を備えている。ATM10は、例えばルータ61を介して通信ネットワーク60に接続されており、通信ネットワーク60を介して精査システム90と接続されている。店舗内の精査クライアント50は、店舗の業務実施者が操作する精査管理端末である。
図1に示すATM10は、例えば制御部10と、センサ部12と、収容部13と、表示部14とを有する。制御部11は、ATM10の全体動作を制御する機能であり、図2で後述する制御部101に対応する。センサ部12は、紙幣および現金の種別と数量を検出する機能であり、後述する紙幣入出金機構部105および硬貨入出金機構部106の持つ機能の一部に相当する。収容部13は、紙幣および現金を種別にわけて保存する機能であり、紙幣入出金機構部105および硬貨入出金機構部106の持つ機能の他の一部に相当する。
精査システム90は、例えば、監視サーバ20と、精査サーバ30と、精査クライアント40とを備えており、これら各装置20~40は通信可能に接続されている。「監視装置」としての監視サーバ20は、各ATM10の管理情報と在高情報とを監視する装置である。監視サーバ20は、ATM管理情報21と在高情報22とを利用できる。「精査装置」としての精査サーバ30は、各ATM10のうち選択されたATM10の精査を制御する装置である。精査サーバ30は、精査情報31と精査スケジュール32とを利用することができる。精査システム90内の精査クライアント40は、システム管理者などが操作する精査管理端末である。
図2を参照する。ATM10は、上述の通り、顧客(利用者)の要求する種々の取引を自動的に実行する装置であり、例えば、通信部102、カード・明細票機構部103、操作部104、紙幣入出金機構部105、硬貨入出金機構部106、通帳機構部107、音声案内部108、これら各部102~108を制御する制御部101などを備えて構成されている。
制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびメモリ(いずれも不図示)等のハードウェア構成と、オペレーティングシステム、コンピュータプログラム、データ(いずれも不図示)等のソフトウェア構成とを備えており、ATM10に要求される各処理および取引を制御する。
通信部102は、通信ネットワーク60などを介して監視サーバ20、精査サーバ30、および精査クライアント40と通信する装置である。
カード・明細票機構部103は、例えば、カードの挿入機能、カード排出機能、カードの磁気ストライプまたはICチップに帯するデータのリードまたはライト機能、カードエンボス部分のイメージの読取り機能などを有する。カード・明細票機構部103は、取引内容を印字部(不図示)により明細票に印字して、ATM10から排出させる明細票機構部を有する。
操作部104は、顧客からの操作を受け付けたり、利用者に情報を提示したりする装置である。操作部104は、画面表示機能、キー入力検知機能などを有する。操作部104は、ATM10の利用者が取引を行う際に、取引操作の誘導画面を表示したり、暗証番号などの利用者に操作されたキー入力を受付ける。なお、操作部104は、入力部と表示部とを兼用するタッチパネル等から構成されてもよいし、入力部と表示部とが別々の装置として構成されてもよい。利用者の所持する携帯情報端末(いわゆるスマートフォン)を操作部104の少なくとも一部として利用してもよい。
紙幣入出金機構部105と硬貨入出金機構部106は、現金の入金機能や出金機能、現金の鑑別機能、現金の搬送機能、現金の収納機能を有する。紙幣入出金機構部105および硬貨入出金機構部106は、紙幣および硬貨の種類と状態とを検査し、種別ごとにわけて保存させる。
通帳機構部107は、利用者による通帳の挿入機能、通帳の排出機能、磁気ストライプへのリードまたはライト機能、通帳への印字機能などを有する。音声案内部108は、ATM10の操作方法などを画面および音声メッセージを用いることにより、利用者に対して案内する機能である。
制御部101は、上述の各機能102~108の処理を制御する。
監視サーバ20は、金融機関のセンタ等に設置されるコンピュータであり、ATM10から在高情報を収集し、管理する。監視サーバ20は、例えば、制御部201、記憶部202、通信部203、ユーザインターフェース部(図中、UI部)204を備える。
監視サーバ20は、通信部203と通信ネットワーク60を介して、各ATM10の通信部102と精査サーバ30の通信部303とに接続されている。
監視サーバ20は、各ATM10から在高情報等の情報を収集する機能を持つ。ユーザインターフェース部204は、システム管理者等と監視サーバ20との間で情報を交換する機能である。ユーザインターフェース部204は、システム管理者等が監視サーバ20へ情報を入力する情報入力部と、監視サーバ20がシステム管理者等へ情報を提供する情報出力部(いずれも不図示)とを有する。ユーザインターフェース部204は、ディスプレイ、キーボード、音声認識装置、プリンタ等を使用することができる。システム管理者は、ユーザインターフェース部204を通じて、ATM10からの情報収集の実行を指示したり、ATM10からの情報の収集状況を把握したりする。
記憶部202は、「管理情報」としてのATM管理情報21と、在高情報22等とを記憶する。図1に示したように、ATM管理情報21と在高情報22を監視サーバ20の外部の記憶装置内に設けてもよい。
ATM管理情報21は、各ATM10を管理するための情報であり、例えば、ATM10の設置されている店舗を特定する店舗番号、店舗内でATMを識別する号機番号、ATMの機種の情報のうち少なくとも一つを含む。
在高情報22は、ATM10により作成される電子データであり、ATM10での各種取引情報と精査時の実施結果等を含む情報である。
制御部201は、CPUおよびメモリ等のハードウェア構成と、コンピュータプログラムおよびデータ等のソフトウェア構成とを備え、監視サーバ20の実現すべき各処理を制御する。
精査サーバ30は、各ATM10のうち選択されたATM10の精査スケジュールを調整し、精査の実行を制御するコンピュータである。精査サーバ30は、監視サーバ20により収集された在高情報をもとに、全店舗のATM10の精査スケジュールを最適化して管理する機能を有する。
精査サーバ30は、例えば、制御部301、記憶部302、通信部303、ユーザインターフェース部304を備える。制御部301は、精査サーバ30として実現すべき機能を制御する。通信部303は、通信ネットワーク60を介して、監視サーバ20と各ATM10と精査クライアント40とに接続される。ユーザインターフェース部304は、システム管理者との間で情報を交換する機能である。ユーザインターフェース部304は、監視サーバ20のユーザインターフェース部204と同様である。システム管理者などの精査の管理者は、例えば精査結果を確認する際に、ユーザインターフェース部304を用いる。管理者は、ユーザインターフェース部304を用いることにより、ATM10の在高情報の収集状態を確認したり、精査結果の確認状況を表示させたりする。
記憶部302は、後述する精査情報31と精査スケジュール32とを記憶する。図1に示したように、精査情報31および精査スケジュール32を精査サーバ30の外部の記憶装置に記憶させてもよい。
精査システム90内の精査クライアント40は、精査の基本スケジュールを精査サーバ30に登録したり、精査の実施を精査サーバ30へ指示等するコンピュータである。精査クライアント40は、例えば、制御部401、記憶部402、通信部403、ユーザインターフェース部404を備えている。
制御部401は、精査クライアント40の全体動作を制御する。記憶部402は、精査クライアント40としての機能を実現するコンピュータプログラムを格納する。そのようなコンピュータプログラムには、例えば、ウェブブラウザなどがある。通信部403は、通信ネットワーク60を介して精査サーバ30と通信する。ユーザインターフェース部404は、精査システム90内の(例えば金融機関のセンタ内の)精査業務の実施者との間で情報を交換する。
ATM10を有する店舗80には、他の精査クライアント50が設けられている。精査クライアント50は、店舗80内の精査業務実施者により操作される。精査クライアント50は、精査クライアント40と同様に、例えば、制御部501、記憶部502、通信部503、ユーザインターフェース部504を備えている。各機能501~504は、上述した精査クライアント40の各機能401~404と同様のため、説明を省略する。
図3は、在高情報22の例を示す。在高情報22は、ATM10ごとにATM10の内部で生成される情報であり、例えば、店番号221、号機222、機種223、紙幣枚数224、硬貨枚数225を含む。これら項目221~225以外に、図6で後述するように、例えばリジェクト金額、回収金額などを含むことができる。
店番号221は、ATM10の配置された店舗を識別する情報である。号機222は、店舗内の各ATM10を識別する情報である。したがって、店番号221および号機222は、ATM10を特定する識別情報である。ATM10を識別できる情報であれば、店番号221と号機222の組合せ以外の他の情報でもよい。なお、図示せぬ通信管理テーブルには、店番号221および号機222で特定されるATM10と通信するための情報を格納しておくことができる。
機種223は、ATM10の種類を示す情報である。紙幣枚数224は、紙幣の種類ごとの収容枚数を示す情報である。硬貨枚数225は、硬貨の種類ごとの収容枚数を示す情報である。収容枚数とは、ATM10内に保持されている数量である。
図4~図6を用いて、精査情報31の例を説明する。図4は、精査システム90で管理される精査情報31Aであり、前回の精査結果と前回の精査以降に発生した取引内容とから論理的に算出された結果データである。前回の精査以降に発生した取引内容には、ATM10の利用者により行われた取引内容と、店舗80に配置された管理者(例えば行員)により操作された内容とを含む。
前回の精査結果とその後の取引内容とから算出される精査情報31Aは、店番号と号機から特定される全てのATM10について、例えば、開始時の現金残高311A、補充金額312A、回収金額313A、入金額314A、現金残高315Aを管理する。
開始時の現金残高311Aは、今回の精査情報31Aの作成時点での現金残高、すなわち前回の精査実施時の現金残高である。補充金額312Aは、ATM10に行員等が補充した現金の額である。回収金額313Aは、ATM10から回収された金額である。入金額314Aは、利用者によりATM10に入金された現金額である。
図5は、勘定系ホストにより算出される精査情報31Bを示す。勘定系ホストでは、利用者の取引内容に基づいて各ATM10の現金残高(オンライン残高)311Bを論理的に算出し、その結果データを管理する。
図6は、ATM10において実際に計数された精査結果データである精査情報31Cを示す。精査情報31Cは、在高情報22から検索することにより得られる。
ATM10で実施された精査情報31Cは、例えば、ATM計数金額311C、リジェクト金額312C、回収金額313C、現金残高314Cを含む。ATM計数金額311Cは、ATM10で計数された金額である。リジェクト金額312Cは、リジェクトされた金額である。回収金額313Cは、回収された金額である。現金残高314Cは、精査後の現金残高である。
図4~図6で述べた通り、精査システム90は、それぞれ異なる方法により算出された精査情報31A~31Cを利用可能である。したがって、各精査情報31A~31Cの組合せによる整合性チェックを行うことにより、複数の観点から現金残高(在高データ)の信憑性を確認できる。
図7を用いて、精査スケジュールの例を説明する。図7には、店舗内で実施される精査スケジュール例と、精査システム90において任意に選択されたATM10に対して任意のタイミングでATM精査結果を再確認するスケジュール例とが示されている。
図7の下側には、各店舗80A~80Zにおける精査の実施スケジュールが示されており、図7の上側には、各店舗での精査結果を精査システム90で再確認するスケジュールが示されている。図7上側の確認スケジュールおよび図7下側の店舗内での精査スケジュールは、いずれも複数の週の曜日ごとに設定することができる。図中では、店舗の符号80を省略し、アルファベットで表記する。すなわち店舗80Aは店舗Aと、店舗80Bは店舗Bと、店舗80Zは店舗Zと表記する。
図7の下側の例では、店舗名の右隣に位置する数字は、その店舗に配置されたATM10を示す。曜日欄に記載された丸印は、精査の実行予定日を示す。
店舗80Aには3台のATMが配置されている。毎週月曜日には1台目のATM10について精査され、毎週水曜日には2台目のATM10について精査され、毎週金曜日には3台目のATM10について精査される。同様に、店舗80Bには2台のATMが配置されている。毎週火曜日には1台目のATM10について精査され、毎週木曜日には2台目のATM10について精査される。店舗80Zは1台のATMを有し、毎週水曜日に精査される。
一方、精査システム90では、毎週火曜日に店舗80Aの1台目のATM10と、店舗80Cの2台目のATM10と、店舗80Hの1台目のATM10と、店舗80Zの1台目のATM10とについて、それぞれで実施された精査結果を再確認する。
同様に、精査システム90は、毎週水曜日に店舗80Bの一台目のATM10と、店舗80Dの2台目のATM10と、店舗80Iの一台目のATM10と、店舗80Jの一台目のATM10と、店舗80Kの一台目のATM10と、店舗80Nの二台目のATM10と、店舗80Oの8台目のATM10と、店舗80Yの1台目のATM10とについて、それぞれで実施された精査結果を再確認する。
精査システム90での再確認スケジュールは、任意に選択されたATM10に対して、任意のタイミングで複数台について実行することもできるし、計画的に実行(例えば1週間で全店舗の全てのATMに対し実施する等)こともできる。
図7で述べたように、本実施例によれば、店舗側でのATM業務に影響を与えずに、精査システム90において不正などを検出することができる。
図8は、精査スケジュール32の例を示す。精査スケジュール32は、各ATMにおける精査の実施スケジュールを示す情報である。精査スケジュール32は、例えば、店舗番号321、号機322、精査開始時刻323、精査終了予定時刻324を含む。
店舗番号321と号機322とにより、精査対象のATM10が特定される。精査開始時刻323は、対象のATM10での精査開始時刻である。精査終了予定時刻324は、対象のATM10での精査が終了する予定時刻である。
精査システム90は、対象のATM10についての在高情報22に基づいて、対象のATM10における精査に要する時間(計数所要時間)を算出し、算出された時間と精査開始時刻323とに基づいて精査終了予定時刻324を算出する。
精査システム90は、在高情報22に含まれる機種223から、対象のATM10の単位時間あたりの計数能力を知ることができる。さらに、精査システム90は、在高情報22に含まれる紙幣枚数224および硬貨枚数225から、紙幣の計数と硬貨の計数とに要する時間を算出することができる。
そして、精査システム90は、精査開始時刻323に計数所要時間を加えることにより、精査終了予定時刻324を得る。もしも例えば、精査終了予定時刻324が店舗80の業務開始時刻を過ぎる場合、精査システム90は、業務開始時刻の前にATMでの精査が終了するように、精査開始時刻を早めることができる。
図9は、精査の全体を示すシーケンス図である。精査システム90の管理者は、精査クライアント40を用いて精査サーバ30にアクセスし、各ATM10において基本となる精査スケジュール(基本スケジュール)を登録する(S10)。例えば、管理者は、精査サーバ30の提供する基本スケジュール登録画面(不図示)を開いて、店舗番号と号機、精査開始時刻などを設定することにより、基本スケジュールを精査サーバ30に登録することができる。
精査サーバ30は、登録された基本スケジュールに基づいて、所定のタイミングで、監視サーバ20にチューニング用情報を要求する(S11)。チューニング用情報とは、精査サーバ30が基本スケジュールを調整するために使用する情報である。チューニング用情報には、例えば、対象のATM10を特定するための管理情報(店舗番号、号機、機種など)21と在高情報22とが含まれる。
監視サーバ20は、定期的にまたは不定期に、各ATM10から在高情報22などを収集して管理している。監視サーバ20は、精査サーバ30からの要求に応じて、在高情報22と管理情報21とを記憶部202から読み出し(S12)、チューニング用情報として精査サーバ30に送信する(S13)。
精査サーバ30は、対象のATM10の基本スケジュールを、対象のATM10の管理情報21および在高情報22に基づいて調整する(S14)。本実施例では、基本スケジュールの実行タイミングを適切に調整することを、チューニングすると称している。
精査サーバ30は、調整済のスケジュールに設定されたタイミングが到来すると、対象のATM10に対して、精査を実行可能であるか確認する(S15)。精査サーバ30は、ATM10から精査可能であるとの応答を受領すると(S16)、対象のATM10に対して精査の実行を指示する(S17)。ATM10は、精査サーバ30からの指示に応じて精査を実行し(S18)、精査が完了すると、精査サーバ30に精査終了を報告する(S19)。図9のシーケンスのうち精査処理の部分は、図10で詳述する。
図10は、精査処理の詳細を示すフローチャートである。精査サーバ30は、実行対象の基本スケジュールがあるか判定する(S101)。実行対象の基本スケジュールが無い場合(S101:NO)、本処理を終了する。
実行対象の基本スケジュールがある場合(S101:YES)、精査サーバ30は、実行対象の基本スケジュールの中から一つまたは複数を選択し、選択されたATMに関するチューニング用情報を監視サーバ20から取得する(S102)。すなわち、精査サーバ30は、現在時刻が実行許容時間に含まれているか判定する(S103)。実行許容時間とは、ATM10において精査を行うことができる時間帯であり、あらかじめ設定されている。
精査サーバ30は、現在時刻が実行許容時間内である場合(S103:YES)、ステップS101で選択されたスケジュールに対応するATM10のうち、精査を実行可能なATM10が存在するか確認する(S104)。精査サーバ30は、例えば現在の曜日と現在時刻とに基づいて、精査を行うことができるATM10を、ステップS101で選択された基本スケジュールから抽出する。
現在時刻が実行許容時間内ではない場合(S103:NO)、または精査可能なATM10が存在しない場合(S104:NO)、精査サーバ30は、ステップS101で選択されたスケジュールをキャンセルして本処理を終了する。
精査サーバ30は、精査可能なATM10が存在する場合(S104:YES)、そのATM10に設定されている基本スケジュールを、ステップS102で取得されたチューニング用情報(管理情報21と在高情報22)に基づいて調整する(S106)。
精査サーバ30は、精査の基本スケジュールが調整されたATM10に対して、精査を実行可能であるか問い合わせて確認する(S107)。精査サーバ30は、ATM10から実行可能であるとの応答を得ると(S108:YES)、ステップS106で調整済の基本スケジュールにしたがって精査の実行を指示する(S109)。
精査サーバ30は、ATM10からの終了報告を受領すると(S110:YES)、本処理を終了する。
このように構成される本実施例によれば、ATM10に対して最適な精査スケジュールを設定することができ、ATM10での精査処理を適切に行うことができ、信頼性と使い勝手が向上する。
本実施例を採用しない場合、精査サーバ30からATM10に対して、決められたスケジュールで精査実行を指示することになる。しかし、ATM10内の現金保有量は、店舗の位置および時期などに応じてまちまちのため、精査に要する時間は店舗ごとにATMごとに異なる。もしも精査の終了時刻が当初の終了予定時刻よりも長くなると、始業前に精査が終了しないなどのように、店舗でのATM運用に悪影響を与えることになる。悪影響の発生を抑制するために、終了予定時刻に余裕を持たせることもできるが、その場合は、無駄な時間が発生するため、精査を効率的に行うことができない。
このように、本実施例を採用しない場合は、店舗での運用に対する影響を低減させた最適な精査スケジュールをATMごとに作成することは難しく、さらに複数の店舗に展開する複数のATM10について精査スケジュールを最適化するのは難しい。
これに対し、本実施例では、精査システム90において、ATM10の在高情報22と管理情報21に基づいて基本スケジュールを調整するため、店舗でのATM運用に与える影響を抑制することができる。したがって、本実施例の精査システム90は、精査の信頼性と店舗のATM運用の利便性とを向上させることができる。
さらに本実施例では、図7で述べたように、各店舗での精査スケジュールと、各店舗での精査を再確認するスケジュールとを一元管理し、複数のATM10の精査スケジュールを自由に設定することができる。これにより、多店舗展開するATM10の精査を効率的にかつ信頼性高く実行することができる。