以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
(パレット)
図1は、本実施形態に係るパレット10の構成を示す上面図である。図2は、パレット10の構成を示す下面図である。図3は、図1に示すIII-III断面に相当するパレット10の構成を示す断面図である。ここで、図1以下の各図において、鉛直方向に沿った方向をZ方向と規定する。Z方向に対して垂直となる水平面上で、車両の進退方向に沿った方向をX方向と規定し、X方向に対して垂直となる方向をY方向と規定する。
パレット10は、例えばエレベーターパーキングにおいて、上面に車両を載置した状態で移動させるために用いられる構造体である。パレット10は、パレット本体12と、補強部材20と、係合部材22とを備える。
パレット本体12は、車両を直接的に載置する板体である。パレット本体12の平面形状は、例えば一般乗用車の平面領域に合わせて規定されている。そのため、パレット本体12の車両の進退方向に沿ったX方向が長く、車両の横方向又は幅方向に沿ったY方向が短く設定されている。以下、パレット本体12における車両が載置される側の面を「上面」と表現する。すなわち、パレット本体12の上面は、Z方向の上側の面に相当する。一方、パレット本体12における上面とは反対側の面を「背面」と表現する。すなわち、パレット本体12の背面は、Z方向の下側の面に相当する。
パレット本体12を図3に示すようなYZ平面に沿って切断した断面で見るとわかるとおり、パレット本体12は、複数の凹凸部分の連続体である。パレット本体12は、それぞれ凹凸部分の一部として、2つの車輪支持部14と、中央凸部16と、2つの凸縁部18とを有する。車輪支持部14、中央凸部16及び凸縁部18は、それぞれ、基本的にはYZ平面での断面形状を維持しながらX方向に延伸している。パレット本体12は、このような形状を有するものとなるために、例えば、一定の厚みを有する鋼板等の1つの金属板体をおおよそZ方向に沿った厚み方向でプレス加工されることで形成され得る。又は、パレット本体12は、例えば、それぞれ折り曲げ加工により成形された複数の部材を溶接により繋ぎ合わせることで形成されてもよい。
車輪支持部14は、パレット本体12に車両が載置されたときに、車輪が接触する領域に相当する。中央凸部16は、2つの車輪支持部14の間に位置する領域に相当する。凸縁部18は、それぞれの車輪支持部14の外縁部分の領域に相当する。ここで、車輪支持部14におけるX方向に延伸する両端部には、凸部である中央凸部16又は凸縁部18のいずれかが連続している。すなわち、車輪支持部14の高さは、中央凸部16及び凸縁部18の高さよりも低い。パレット本体12は、このような形状を有することにより、車両が載置されたときに、車輪支持部14からの脱輪をさせづらくすることができる。また、凸縁部18の外縁端は、Z方向の下方、例えば本実施形態では斜め下方に向けて折り曲げられている。これにより、例えば、パレット本体12のX方向についての曲げ変形に対する強度を増加させたり、万が一外部の部材と接触した場合にパレット本体12及び外部の部材の双方を保護したりするのに有利となる。
補強部材20は、例えば、パレット本体12のY方向についての曲げ変形に対する強度を増加させるために、パレット本体12の背面に取り付けられる鋼板等の金属板である。補強部材20は、例えば、Y方向に沿って延伸する長板である。また、補強部材20の一方の端部は、一方の凸縁部18の近傍に位置し、補強部材20の他方の端部は、他方の凸縁部18の近傍に位置する。
ここで、補強部材20の設置数や設置位置は、適宜設定される。特に本実施形態では、補強部材20は、一例として2つある。2つの補強部材20は、パレット本体12におけるX方向について、中間位置よりも同一距離で離間する位置に設置されてもよい。また、本実施形態では、補強部材20の延伸方向がY方向に沿っているものとしているが、必ずしもY方向に沿っていなくてもよい。
係合部材22は、パレット本体12の背面に取り付けられ、例えばエレベーターパーキングにおいてパレット10を移動させるパレット駆動装置の一部が係合して引っ張り荷重が印加される金属加工体である。本実施形態では、係合部材22は、一例として、パレット10を横行させたり旋回させたりするときに、パレット駆動装置に含まれるドッグと呼ばれる引っ掛け部を係合可能とする。
例えば、エレベーターパーキング内にあるパレット駆動機構は、パレット10を横行移動させるために、図3に示すような、ドッグ107と、支持アーム108とを備える。支持アーム108は、駆動機構の動作により、様々な方向に変位可能である。ドッグ107は、係合部材22に接触可能なローラー107aと、ローラー107aを回転自在に支持するローラー支持部107bとを含む。ローラー支持部107bは、支持アーム108の先端に支持されている。パレット駆動機構は、ドッグ107を係合部材22に係合させ、係合状態を維持しながら支持アーム108をXY平面内で移動させることで、パレット10を横行させたり、場合によっては旋回させたりすることができる。
係合部材22は、パレット10とは別体であるドッグ107の係合と係合解除とが繰り返えされる関係上、このような係合動作を容易とするために、パレット本体12の凸縁部18の近傍に設置される。なお、エレベーターパーキング内でのパレット10の旋回を考慮すると、パレット10の延伸方向がX方向のプラス側マイナス側のどちらを向いていても係合部材22にドッグ107が係合可能であることが望ましい。そこで、本実施形態では、係合部材22は、パレット本体12の2箇所の凸縁部18のそれぞれに設置されているものとする。また、係合部材22は、X方向を長手方向とする。なお、係合部材22のX方向の長さは、特に限定されるものではなく、基本的には、ドッグ107の移動範囲に合わせて規定される。
図4は、パレット本体12に対する係合部材22の周辺の一部の接合構造を示す拡大図である。図4(a)は、図1に示すIVA-IVA断面(X方向に垂直な断面)に対応した、係合部材22の周辺の接合構造を示す断面図である。図4(b)は、図2に示すIVB-IVB領域(係合部材22のX方向の端部のうち、補強部材20が位置する側の周辺)に対応した、係合部材22の周辺の接合構造を示す下面図である。
まず、係合部材22の形状を詳説する前提として、パレット本体12に含まれる凸縁部18の形状について詳説する。凸縁部18は、第1板部18a、第2板部18b及び第3板部18cの3つの板体の組み合わせで構成される。第1板部18aは、車輪支持部14と連続し、車輪支持部14からZ方向上方に向かって延伸する板部である。第2板部18bは、第1板部18aと連続し、車輪支持部14と同様に水平面に沿った板部である。第3板部18cは、第2板部18bと連続し、凸縁部18の最外端部、すなわちパレット本体12の最外端部としての板部である。第3板部18cは、第2板部18bからZ方向下方に向かって延伸しているが、図4等に示すように、XZ平面から外側に若干傾斜した平面を含むものであってもよい。また、第3板部18cにおける第2板部18bとの連続位置から最外端までの長さは、第1板部18aにおける車輪支持部14との連続位置から第2板部18bとの連続位置までの長さよりも短くてもよい。
係合部材22は、係合溝22aと、係合溝22aと連続する支持部材22bとを備える。係合溝22aは、図3に示すように、ドッグ107を係合させる部位である。ドッグ107は、Z方向の下方から上方に移動することで係合溝22aに係合されるため、係合溝22aの開放方向は、Z方向の下方に向かう方向となる。係合溝22aのY方向の溝幅は、ドッグ107のローラー107aの外周径よりも大きく設定される。係合溝22aにドッグ107が係合した状態では、ローラー107aは、回転自在に係合溝22aの内面と接触可能である。支持部材22bは、パレット本体12の背面に対向する部位である。
図4(a)に示すように、係合部材22がパレット本体12に取り付けられている状態では、係合溝22aは、凸縁部18のZ方向下方に位置する。このとき、係合溝22aの側部は、凸縁部18の第1板部18aと接触していてもよいし、又は、対向していてもよい。係合溝22aの底部は、凸縁部18の第3板部18cと接触していてもよい。このような構成によれば、係合部材22の一部が凸縁部18の領域に含まれることになるので、例えば、係合部材22が凸縁部18に保護される点で有利となり得る。また、支持部材22bは、係合溝22aに連続している。支持部材22bは、パレット本体12の背面と対向しているが、支持部材22bの全体がパレット本体12の背面に接合されているわけではない。そのため、支持部材22bとパレット本体12との間には、微小な隙間Gが存在している。つまり、支持部材22bは、パレット本体12の背面に対して離反可能となっている。
次に、図4の各図を参照して、パレット本体12の背面に対する補強部材20及び係合部材22の接合について説明する。
まず、パレット本体12に対する係合部材22と補強部材20との位置関係は、一例として以下のとおりとする。係合部材22は、上記のとおり、X方向に延伸し、パレット本体12の凸縁部18に係合溝22aが接触するように、パレット本体12の背面に位置する。ここで、係合部材22の延伸方向を第1の方向と規定すると、図4等に示す例では、第1の方向は、パレット本体12の延伸方向と一致するX方向である。ただし、第1の方向は、必ずしもX方向と一致しなくてもよい。
一方、補強部材20は、第1の方向と交差する方向であるY方向に延伸する。ただし、第1の方向と交差する方向とは、必ずしも第1の方向に対して直交することのみを意味するものではなく、第1の方向に対して直交する方向とは若干ずれた角度方向に対応するものであってもよい。また、補強部材20は、係合部材22の第1の方向の一方側から延伸する。具体的には、図4(a)に示すように、補強部材20は、係合部材22の第1の方向の一方側であるX方向のプラス側から延伸するものとしてもよい。このとき、係合部材22の支持部材22bにおけるX方向のプラス側にある第1の端縁221と、補強部材20の延伸方向の側端縁のうちX方向プラス側の第1の側端縁202とが、Y方向に延伸する一直線上に並ぶものとしてもよい。なお、支持部材22bと対向する補強部材20の延伸方向の一方の端縁201は、支持部材22bの一部に接触していてもよい。ただし、補強部材20の端縁201と係合部材22とは、互いに接合されていない。補強部材20と係合部材22とが上記のような位置関係にある場合には、支持部材22bが係合溝22aと補強部材20との間に介在する形となる。
この場合、補強部材20は、図4中の隅肉溶接部24で表されるように、補強部材20の延伸方向の側端縁の双方、すなわち、第1の側端縁202と、X方向マイナス側の第2の側端縁203とが隅肉溶接されることで、パレット本体12の背面に接合される。
係合部材22は、図4(b)中のピッチ溶接部25で表されるように、係合部材22の延伸方向に沿った支持部材22bの側端縁222がピッチ溶接されることで、パレット本体12の背面に接合される。なお、ピッチ溶接とは、隅肉溶接を一定間隔で断続的に行う溶接をいう。したがって、図4(b)では、拡大図である性質上、ピッチ溶接部25が1箇所のみ示されているが、実際には、側端縁222に沿って複数箇所にピッチ溶接がなされている。つまり、本実施形態の係合部材22では、ピッチ溶接部25以外において、パレット本体12と接合されていない。
すなわち、支持部材22bにおける第1の端縁221は、係合溝22aからY方向に沿って離間する、自由な自由端縁を含む。ここで、自由端縁とは、パレット本体12に溶接接続されておらず、事実上、パレット本体12の背面に拘束されていないことで自由な状態にある端縁をいう。図4に示す例では、第1の端縁221は、全体が自由端縁である。ここで、支持部材22bにおいて、係合溝22aの外周面から反対側の側端縁222までの長さL1を第1の端縁221の長さと規定し、自由端縁の長さをLFと規定する。このとき、第1の端縁221の全体が自由端縁である場合には、第1の端縁221の長さL1と自由端縁の長さLFとは同じであるとみなすことができる。
一方、本実施形態では、以下で詳説するが、第1の端縁221の全体が自由端縁となることに限らず、支持部材22bにおける係合溝22aの補強部材20と対向する側の端縁から延伸する第1の端縁221の一部が自由端縁となってもよい(図5(b)参照)。
次に、本実施形態に係るパレット10の効果について説明する。
まず、本実施形態に係るパレット10は、車両が載置されるパレット本体12と、パレット本体12の背面に取り付けられ、第1の方向に延伸し、引っ張り荷重が印加される係合部材22とを備える。また、パレット10は、パレット本体12の背面に取り付けられ、係合部材22の第1の方向の一方側から第1の方向と交差する方向に延伸する補強部材20を備える。係合部材22は、第1の方向に延伸する係合溝22aと、係合溝22aと補強部材20との間に介在する支持部材22bとを備える。支持部材22bの、第1の方向の一方側にある第1の端縁221は、係合溝22aから離間する、自由な自由端縁を含む。
例えばエレベーターパーキング内でパレット10を移動させる際には、係合部材22の係合溝22aには外部から引っ張り荷重が印加される。そのため、パレット10が長期間使用され続けるのに伴って、係合部材22にも外部から力が加わり続けることになる。以下、係合部材22に対する引っ張り荷重の印加を考慮した本実施形態に係るパレット10の優位性を比較例との比較により示す。
図5は、図4(b)に準拠した、パレット本体12の背面に対する支持部材22bの第1の端縁221の溶接位置が互いに異なる係合部材22の周辺の接合構造を示す下面図である。図5(a)及び図5(b)に示す接合構造では、ともに、支持部材22bの第1の端縁221と、補強部材20の第1の側端縁202とが、Y方向に延伸する一直線上に並んでいる。そして、支持部材22bの第1の端縁221の少なくとも一部と、補強部材20の第1の側端縁202とが、隅肉溶接により、パレット本体12の背面に対して連続溶接されている。また、特に第1の端縁221での溶接位置を規定するための基準の一例として、パレット本体12において車輪支持部14と凸縁部18とが連続する曲面部Rを採用する。併せて、第1の端縁221の長さL1の一端でもある係合溝22aから車輪支持部14側の曲面部Rの開始位置までの長さをLRと規定する(図4(a)参照)。
図5(a)は、比較例として、支持部材22bの第1の端縁221にある隅肉溶接部24cの先端部が係合溝22aから長さLRの位置にある接合構造を示す図である。これに対して、図5(b)は、本開示の実施例として、第1の端縁221にある隅肉溶接部24dの先端部が、係合溝22aからの長さLRの位置から離間し、補強部材20の端縁201と近接する側端縁222側に寄った位置にある接合構造を示す図である。
図6は、図5に示す接合構造において、特に支持部材22bの第1の端縁221にある隅肉溶接部24の先端部で生じる応力を有限要素法(FEM)解析により算出した結果を示すグラフである。図5(a)における隅肉溶接部24cの先端部を第1計測点P1とすると、係合部材22に引っ張り荷重が印加されたときに、第1計測点P1で生じ得る応力値は、例えば、おおよそ350MPaである。これに対して、図5(b)における隅肉溶接部24dの先端部を第2計測点P2とすると、係合部材22に引っ張り荷重が印加されたときに、第2計測点P2で生じ得る応力値は、例えば、おおよそ280MPaである。
このうち、図5(a)に示す接合構造における第1計測点P1は、パレット本体12の曲面部Rを基準として規定された係合溝22aからの長さLRの位置の近傍にある。係合溝22aから長さLRまでの範囲は、図4(a)に示すように、凸縁部18の曲部と係合部材22とが対向する領域に相当する。そのため、支持部材22bの第1の端縁221をパレット本体12の背面に隅肉溶接により接合する領域としては不向きである。したがって、第1の端縁221をパレット本体12の背面に隅肉溶接により接合しようとした場合の実際上の溶接可能範囲は、係合溝22aからの長さLRの位置から、係合溝22aからの長さL1の位置までの範囲となる。図5(a)に例示した第1の端縁221では、溶接可能範囲の全体に隅肉溶接部24cがある。
このとき、係合溝22aから長さLRの位置までの範囲にある第1の端縁221は、パレット本体12の背面に溶接接続されていない。しかし、係合溝22aからの長さLRの位置は、係合溝22aに近いので、事実上、パレット本体12の背面に拘束されているとみなすことが可能であり、自由な状態にはない。そして、係合溝22aは、直接的に引っ張り荷重が印加される部位であるから、係合溝22aからの長さLRの位置にある隅肉溶接部24cの先端部には応力が集中し、ひずみが生じやすい。したがって、図6に示す結果のとおり、第1計測点P1で生じ得る応力値は、比較的高くなりやすい。
これに対して、本開示の実施例では、図5(b)に示す接合構造における第2計測点P2は、係合溝22aの側よりも支持部材22bの側端縁222の側に寄った位置にある。そのため、第1の端縁221には、係合溝22aからの長さがLFである自由端縁221aが存在することになる。自由端縁が存在するとみなされない図5(a)の場合と比較して、自由端縁221aが存在するとみなされる条件としては、例えば、係合溝22aの外周端を始端として、長さLFが、長さLRよりも大きく、長さL1以下であると規定することができる。
このとき、第2計測点P2の位置に相当する隅肉溶接部24dの先端部は、係合溝22aからは大きく離間し、しかも、その間は溶接接続されていない。そのため、係合溝22aに引っ張り荷重が印加されても、係合溝22aと支持部材22bとが連続する位置の近傍には応力が集中しづらくなる。したがって、図6に示す結果のとおり、第2計測点P2で生じ得る応力値は、第1計測点P1で生じ得る応力値よりも低くなる。
したがって、図5(b)に示すような接合構造を有するパレット10では、自由端縁221aが存在するように係合部材22をパレット本体12の背面に取り付けるので、係合部材22とパレット本体12との間に応力が集中しづらくなる。結果として、例えば、長期間に渡るパレット10の使用を考慮した場合、係合部材22とパレット本体12との間の接合強度が低下することを抑えることができる。
このように、本実施形態によれば、係合部材22とパレット本体12との接合強度の向上に有利なパレット10を提供することができる。
また、本実施形態に係るパレット10では、図4に示すように、第1の端縁221は、全体が自由端縁であり、支持部材22bは、第1の方向を溶接方向としたピッチ溶接により、パレット本体12の背面に接合されてもよい。
第1の端縁221の全体が自由端縁であれば、その間は溶接接続されていないため、図5(b)に示す接合構造の場合と同様に、係合溝22aに引っ張り荷重が印加されても、係合溝22aと支持部材22bとが連続する位置の近傍には応力が集中しづらい。したがって、図4に示すような接合構造を有するパレット10でも、係合部材22とパレット本体12との間に応力が集中しづらくなり、結果として、係合部材22とパレット本体12との間の接合強度が低下することを抑えることができる。
(他の実施形態)
上記のパレット10では、係合部材22の周囲においてひずみが大きくなる部分を減らすことで、係合部材22とパレット本体12との接合強度を向上させるものとした。これに対して、本開示の他の実施形態として、さらにひずみに対抗する部位形態をパレット10に持たせてもよい。
図7は、係合部材22に代わる第2の係合部材32を備えたパレット10における、パレット本体12に対する第2の係合部材32の周辺の一部の接合構造を示す拡大図である。なお、図7は、図4に対応するように描画されており、その他、図4に示すパレット10の構成要素と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
第2の係合部材32は、まず、係合部材22と同様に、係合溝32aと、第2の支持部材32bとを備える。ただし、Y方向に沿った第2の支持部材32bの長さは、上記説明した係合部材22におけるY方向に沿った支持部材22bの長さよりも長い。
また、第2の支持部材32bの第1の端縁321は、先端部が補強部材20の第1の方向すなわちX方向の位置を超えて第1の方向に突出する突出部32cを備える。突出部32cの平面形状は、図7に示す例では、矩形である。そして、突出部32cは、Y方向に沿って延伸する先端縁322と、それぞれX方向に沿って延伸する、先端縁322の一端と連続する第1の側端縁323、及び、先端縁322の他端と連続する第2の側端縁324とを備える。図7に示す例では、補強部材20側にある第2の側端縁324は、第2の支持部材32bの側端縁222と一直線上で連続している。一方、係合溝32a側にある第1の側端縁323は、第2の支持部材32bの第1の端縁321と連続している。ここで、係合溝22aから第1の側端縁323までの長さをL2と規定する。また、突出部32cに関して、先端縁322の長さをL31と規定し、第1の側端縁323及び第2の側端縁324のそれぞれの長さをL32と規定する。
本実施形態では、自由端縁は、係合溝32aから突出部32cまで延伸する第1の自由端縁と、該第1の自由端縁から突出部32cの外縁に沿って突出部32cの先端部に至る前まで延伸する第2の自由端縁323aとを含む。この条件を図7に示す接合構造に当てはめると、第1の自由端縁は、係合溝32aから突出部32cの第1の側端縁323まで延伸する第1の端縁321の部分に一致する、長さLF1の部分である。つまり、この場合、第1自由端縁の長さLF1は、長さL2と同一である。一方、第2の自由端縁323aは、第1の側端縁323に沿って、第1の端縁321から先端縁322に至る前まで延伸する部分に相当する、長さLF2の部分である。
この場合、突出部32c及び補強部材20は、第2の自由端縁323aから突出部32cの外縁に沿って補強部材20に亘る連続溶接により、パレット本体12の背面に接合される。この条件を図7に示す接合構造に当てはめると、突出部32c及び補強部材20は、第2の自由端縁323aの先端縁322側の端部から、突出部32cの外縁に沿って補強部材20の第1の側端縁202に亘り、連続して隅肉溶接されている。突出部32cと補強部材20とが連続溶接されている部分が、図7では第1の隅肉溶接部24aで表されている。なお、補強部材20の第2の側端縁203は、第2の隅肉溶接部24bで表されるように、図4に示す接合構造と同様に隅肉溶接される。
以下、第2の係合部材32に対する引っ張り荷重の印加を考慮した本実施形態に係るパレット10の優位性を比較例との比較により示す。
図8は、図7(b)に準拠した、パレット本体12の背面に対する第2の支持部材32bの突出部32cの溶接位置が互いに異なる第2の係合部材32の周辺の接合構造を示す下面図である。図8(a)は、比較例として、第1の隅肉溶接部24aが突出部32cの外縁全体にある接合構造を示す図である。これに対して、図8(b)は、本開示の実施例として、図7に示した接合構造と同様の接合構造を示す図である。
図9は、図8に示す接合構造において、特に第1の隅肉溶接部24aの先端部で生じる応力を有限要素法解析により算出した結果を示すグラフである。図8(a)における第1の隅肉溶接部24aの先端部を第3計測点P3とすると、第2の係合部材32に引っ張り荷重が印加されたときに、第3計測点P3で生じ得る応力値は、例えば、おおよそ370MPaである。これに対して、図8(b)における第1の隅肉溶接部24aの先端部を第4計測点P4とすると、第2の係合部材32に引っ張り荷重が印加されたときに、第4計測点P4で生じ得る応力値は、例えば、おおよそ220MPaである。
このうち、図8(a)に示す接合構造では、第2の係合部材32に突出部32cが存在しているが、第2の自由端縁323aが存在していない。そのため、第3計測点P3は係合溝22aからおおよそ長さL2の位置にあるものの、第3計測点P3が存在する第1の隅肉溶接部24aの先端部には応力が集中し、ひずみが生じやすい。したがって、図9に示す結果のとおり、第3計測点P3で生じ得る応力値は、上記の実施形態に関して説明した第1計測点P1で生じ得る応力値よりも高くなる。
これに対して、本開示の実施例では、図8(b)に示す接合構造における第4計測点P4は、第1の自由端縁である第1の端縁321から第2の自由端縁323a分離間した位置にある。そのため、第2の係合部材32には、第1の自由端縁に沿った応力の伝達方向と交差する方向に延伸している突出部32cが存在し、突出部32cの外縁の一部が連続溶接されていることで、第2の係合部材32とパレット本体12との接合強度の向上に寄与する。併せて、突出部32cの外縁の一部である第1の側端縁323では、第1の隅肉溶接部24aと第2の自由端縁323aとが滑らかに連続しているので、応力集中がより緩和され得る。したがって、図9に示す結果のとおり、第4計測点P4で生じ得る応力値は、上記の実施形態に関して説明した第2計測点P2で生じ得る応力値よりも低くなる。
したがって、このような構成によれば、第2の係合部材32とパレット本体12との接合強度をさらに向上させることが可能である。
なお、図7及び図8に示す例では、突出部32cの平面形状が、各端縁が第2の支持部材32bの各端縁と平行な矩形としたが、本開示はこれに限定されない。例えば、突出部32cに含まれる先端縁322は、Y方向から若干傾斜した方向に沿って延伸するものであってもよい。同様に、突出部32cに含まれる第1の側端縁323又は第2の側端縁324は、それぞれX方向から若干傾斜した方向に沿って延伸するものであってもよい。つまり、第1の側端縁323又は第2の側端縁324の延伸方向と、第1の自由端縁である第1の端縁321の延伸方向とは、必ずしも直交するものでなくてもよい。さらに、突出部32cの平面形状は、例えば曲端縁を含むものであってもよい。
(エレベーターパーキング)
図10は、上記説明したパレット10を備えたエレベーターパーキング100の構成を示す概略図である。エレベーターパーキング100は、一例として、車両Vが入出庫する乗り込み部102が地上面に合わせて設定されている下部乗り込み式を採用している。エレベーターパーキング100は、複数のパレット10と、昇降路103と、昇降路103内を昇降するケージ104と、昇降路103に沿ってその両側に多段に設けられ、パレット10を収容可能な駐車棚105とを備える。
複数のパレット10は、それぞれ、駐車棚105に設定されている駐車スペースごとに存在する。ケージ104には、予め空車スペースに対応したいずれかのパレット10が保持されている。そして、入庫時には、車両Vは、乗り込み部102からケージ104上のパレット10に乗り込む。車両Vを搭載したケージ104は、昇降機構104aにより上昇し、所定の駐車棚105の側面側で停止する。その後、車両Vを載置したパレット10は、ケージ104に備えられているパレット駆動機構106により横行又は旋回されることで、所定の空車スペース内に収められる。パレット駆動機構106は、図3を用いて説明した、ドッグ107や支持アーム108を備える。一方、出庫時には、車両Vは、この逆動作により、最終的に乗り込み部102から出庫される。
このようなエレベーターパーキング100によれば、係合部材22等を有するものの長期間使用され続けても接合強度が低下しづらいパレット10を採用するので、例えば、耐久性に優れた高品質なエレベーターパーキング100を提供することができる。
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。