JP7235472B2 - メタクリル系樹脂組成物、成形体 - Google Patents
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Description
この問題を解決するために、特許文献1のように成形体の内部に防曇塗料を塗布することで曇りを防止する技術が提案されているが、放出される水蒸気の量が多いと、結露が発生し、その水滴が垂れた跡が残り、外観不良となってしまう課題があった。また、用いるメタクリル樹脂組成物によっては防曇塗料を塗布した際にメタクリル系樹脂組成物中に含有されている成分がブリードアウトし、外観不良を生じるといった課題があった。そのため、外観不良の発生なく防曇効果を発揮するメタクリル樹脂組成物の開発が望まれていた。
この問題を解決するために、特許文献2のように赤外線吸収剤を含有したメタクリル樹脂組成物を用いた車両用灯具が提案されているが、熱に長期間さらされたり、長期間直射日光にさらされたり、実用条件に近い湿度を含んだ熱に長期間さらされると、赤外線吸収剤が変性してしまい効果が十分に発揮できないという課題は残ったままであった。
特許文献4にはポリカーボネート樹脂に含有されるナフタロシアニン、フタロシアニンに対する加工安定性を改良するために、酸化防止剤、例えば、ホスファイト、ヒンダードフェノール、芳香族、脂肪族又は混合ホスフィン、ラクトン、チオエーテル及びヒンダードアミン等を含有できることが提案されているが、ポリカーボネート樹脂への有機IR吸収剤の溶融・混練を300℃という高温で行うため、有機IR吸収剤が熱分解して樹脂板の熱吸収特性や全光線透過率が低下する。また、ポリカーボネート樹脂からなる樹脂板であるため、耐候性も不十分である。
特許文献5には、高い全光線透過性と熱線遮蔽性を有し、且つ、切削加工性が良好な(メタ)アクリル樹脂組成物が開示されている。耐候性改良のために(メタ)アクリル樹脂組成物が用いられているが、耐候性は十分とは言えず、紫外線が当たる環境下で長期的にさらされると赤外線吸収剤が変性してしまい、全光線透過率が大きく低下してしまう。また、湿熱に対する赤外線吸収剤の長期特性も十分ではなかった。
〔1〕
重量平均分子量Mwが70,000~200,000であるメタクリル系樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、分子中に酸素原子又は窒素原子を含有する環構造を少なくとも1つ有するヒンダードフェノール系安定剤(D)、及び赤外線吸収剤(E)を含有することを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。
〔2〕
前記赤外線吸収剤(E)が、タングステン酸化物及び/又は六ホウ化ランタンであり、
前記赤外線吸収剤(E)の含有量が、前記メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.002~0.05質量部である、〔1〕に記載のメタクリル系樹脂組成物
〔3〕
前記メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、前記紫外線吸収剤(B)を0.01~0.3質量部、前記リン酸系安定剤(C)を0.03~0.5質量部、前記ヒンダードフェノール系安定剤(D)を0.03~0.5質量部含有する、〔1〕又は〔2〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔4〕
前記紫外線吸収剤(B)の融点が90℃以上137℃以下であり、前記リン酸系安定剤(C)の融点が90℃以上180℃以下であり、及び前記ヒンダードフェノール系安定剤(D)の融点が90℃以上110℃以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
〔6〕
建築用部材、電気電子用部材、車両用部材、照明用部材に用いられる、〔5〕に記載の成形体。
〔7〕
車両灯具用部材に用いられる、〔6〕に記載の成形体。
なお、以下において、本実施形態のメタクリル系樹脂をなす重合体を構成する構成単位のことを、「~単量体単位」、及び/又は複数の該「~単量体単位」を含む「~構造単位」という。
また、かかる「~単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「~単量体」と記載する場合もある。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、重量平均分子量Mwが70,000~200,000であるメタクリル系樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、ヒンダードフェノール系安定剤(D)、及び赤外線吸収剤(E)を含有することを特徴とする。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単量体単位80~99.9質量%と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体からなるビニル単量体単位0.1~20質量%とを含むことが好ましい。
メタクリル系樹脂(A)は、一種単独のメタクリル系樹脂を用いてもよく、二種以上のメタクリル系樹脂を併用したものであってもよい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
その他にも(メタ)アクリレート基を2つ以上有する、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;といったアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルが好ましく、さらには、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが入手のしやすさから、好ましい。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂(A)(100質量%)に対して、特に(メタ)アクリレート基を2つ有する単量体を使用する場合には0.4質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を3つ有する単量体を使用する場合には0.25質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を4つ以上有する単量体を使用する場合には0.15質量%以下での使用が、射出成形時の流動性の確保や、透明性維持の観点から好ましい。
上記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なアクリル酸エステル単量体や、前記例示したアクリル酸エステル単量体以外のビニル系単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)について説明する。
メタクリル系樹脂(A)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)が、70,000~200,000である。
優れた機械的強度及び耐溶剤性を得るためには、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の下限は、75,000以上が好ましく、80,000以上がより好ましく、85,000以上がさらに好ましい。
また、メタクリル系樹脂組成物が良好な流動性を示すためには、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限は、198,000以下が好ましく、195,000以下がより好ましく、190,000以下がさらにより好ましい。
前記メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が70,000~200,000の範囲であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される。
ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する〔実施例〕に記載の方法により測定することができる。
具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができ、これらにより分子量分布(Mw/Mn)を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
メタクリル系樹脂(A)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物100質量%に対し、75~99.9質量%であることが好ましく、80~99.8質量%であることがより好ましく、85~99.7質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂(A)は、溶液重合法、塊状重合法やキャスト重合法、懸濁重合法により製造できるが、これらの方法に限定されるものではない。好ましくは、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。懸濁重合を選択することで0.5μm~5mmの小さな球状のポリマーが得られ、本発明のように樹脂組成物を製造する際に、添加剤の分散を良好にすることが出来る。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂(A)の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0~1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
前記過酸化系重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられ、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂(A)を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。
当該過酸化物、アゾビス開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
前記連鎖移動剤としては、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましく、当該アルキルメルカプタン類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これらは、目的とするメタクリル系樹脂の分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部~5質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤、上述した連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法、重合温度等の各種重合条件を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、紫外線吸収剤(B)を含む。
紫外線吸収剤(B)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。製品名としては、BASF製チヌビンP、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン329、チヌビン213、チヌビン571等が挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、「優れた成形加工性」とは、例えば射出成形時に、金型表面への紫外線吸収剤(B)の付着が少ないことを意味する。
紫外線吸収剤(B)の含有量は、効果的に紫外線を吸収し、赤外線吸収剤(E)の変性を防ぐために、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.03質量部以上、さらにより好ましくは0.04質量部以上、特に好ましくは0.05質量部以上である。また、成形時のブリードアウトを抑制するために、紫外線吸収剤(B)の含有量は、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、さらにより好ましくは0.15質量部以下である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、リン酸系安定剤(C)を含有する。
リン酸系安定剤(C)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、CAS No.31570-04-4、3806-34-6、26741-53-7、119345-01-6、203255-81-6、145650-60-8、52664-24-1、80693-00-1、126050-54-2、80410-33-9、154862-43-8等が挙げられる。
本実施形態のリン酸系安定剤(C)は、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環を有し、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環同士が直接もしくは-(CH2)n-(nは1~4、好適には1~2の整数)を介して結合しているものを用いることが好ましい。このようなリン酸系安定剤(C)は、ヒンダードフェノール系安定剤(D)と併用された時、赤外線吸収剤(E)の酸化劣化を抑制する効果が顕著になり、また、ヒンダードフェノール系安定剤(D)の酸化劣化を抑制することが出来、高温環境下や高温多湿環境下に長時間さらされても赤外線吸収剤(E)の変性を抑制し、赤外線吸収能を維持させることが出来る。
芳香族環としては、炭素数3~16、好適には炭素数3~6の芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等の芳香族炭化水素基;イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピラジン基、ピリジル基、キノリン基、イソキノリン基等の複素芳香族基が挙げられる。
リン酸系安定剤(C)として、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環を有し、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環同士が直接もしくは-(CH2)n-(nは1~4の整数)を介して結合しているものの具体的な製品名は、例えば、アデカ製アデカスタブHP-10、住友化学製スミライザーGP、BASF製イルガフォス12、三光製HCA等が挙げられる。
リン酸系安定剤(C)の含有量は、赤外線吸収剤(E)の変性を効果的に防止するために、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.03質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.06質量部以上、さらにより好ましくは0.08質量部以上である。また、ブリードアウトによる金型汚染を防止するために、リン酸系安定剤(C)の含有量は、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.45質量部以下、さらに好ましくは0.4質量部以下、さらにより好ましくは0.35質量部以下である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、ヒンダードフェノール系安定剤(D)を含有する。
ヒンダードフェノール系安定剤(D)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、CAS No.96-69-5、6683-19-8、2082-79-3、90498-90-1、79-74-3、1879-09-0、85-60-9、119-47-1、36443-68-2、68610-51-5、61167-58-6、123968-25-2、991-84-4、40601-76-1、27676-62-6、1709-70-2、32687-78-8、41484-35-9、23128-74-7、35074-77-2、35958-30-6等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系安定剤(D)は、分子中に、酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子を1~3個、好適には2~3個含有する環構造(5員環、6員環等)を少なくとも一つ有するものを用いることが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤(D)は、リン酸系安定剤(C)と併用された時、リン酸系安定剤(C)の酸化劣化を抑制する効果が顕著になり、高温環境下や高温多湿環境下に長時間さらされても赤外線吸収剤(E)の変性を抑制し、赤外線吸収能を維持させることが出来る。分子中に、酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子を含有する環構造を少なくとも一つ有するヒンダードフェノール系安定剤(D)の具体的な製品名としては、例えば、住友化学製スミライザーGA-80、アデカ製アデカスタブAO-80、アデカ製アデカスタブAO-20、BASF製イルガノックス565、SONGWON製SONGNOX1790、SONGWON製SONGNOX3114等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系安定剤(D)の含有量は、リン酸系安定剤(C)の劣化抑制、赤外線吸収剤(E)の劣化抑制を効果的に行うために、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.03質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.06質量部以上、さらにより好ましくは0.08部以上である。また、樹脂組成物の着色を抑えるために、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、さらにより好ましくは0.2質量部以下である。
本実施形態における赤外線吸収剤(E)の変性を抑制する観点から、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、及びヒンダードフェノール系安定剤(D)の融点(Tm)が、いずれも90℃以上であることが好ましい。紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、及びヒンダードフェノール系安定剤(D)の融点が90℃以上であると、メタクリル系樹脂組成物の製造において熱溶融によってメタクリル系樹脂(A)中に他の成分を分散させる際に、必要以上に粘度が低下せず、良好な分散性を達成することが出来、赤外線吸収剤(E)の劣化をより効果的に抑制することが出来るため好ましい。この観点から、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、及びヒンダードフェノール系安定剤(D)の融点は、93℃以上がより好ましく、96℃以上がさらに好ましく、100℃以上がさらにより好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、赤外線吸収剤(E)を含む。
赤外線吸収剤(E)は、可視光線透過率の低下を抑えながら、赤外線領域に吸収極大波長を有する化合物であればよく、極大吸収を700~2000nmの範囲に持つことが好ましく、1000~1700nmの範囲に持つことがより好ましい。
赤外線吸収剤(E)は以下に限定されるものではないが、具体的には、複合タングステン酸化物、ホウ素化ランタン、複合スズ酸化物、酸化チタン等の無機化合物や、ペリレン色素、シアニン色素、クアテリレン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン化合物、ニッケルジチオレン化合物、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物といった有機化合物が挙げられる。
フタロシアニン化合物、酸化タングステン系化合物、ホウ素化ランタン及びジインモニウム色素が、耐候性の観点からより好ましく、酸化タングステン系化合物、ホウ素化ランタンがさらに好ましい。酸化タングステン系化合物(例えば、セシウムドープ酸化タングステン)やホウ素化ランタン(例えば、六ホウ化ランタン)を採用することにより、800nm付近での遮蔽率を向上させることができる。さらに酸化タングステン系化合物やホウ素化ランタンを採用することにより、最終的に得られるメタクリル系樹脂組成物を硬くすることができ、熱運動を適切に抑制でき、さらに、酸素遮断ができ、高い耐光性と耐熱性を達成できる。この効果は、セシウムが導入された酸化タングステンを用いる場合に顕著に効果的に発揮される。
無機粒子を用いる場合、効果的に赤外線を吸収するためにシェラー法で計算される粒子の直径(シェラー径)は、10nm以上が好ましい。また、メタクリル系樹脂組成物の透明性確保の観点から、シェラー法で計算される粒子の直径は、100nm以下が好ましい。粒子径は、15~80nmがより好ましく、20~60nmがさらに好ましく、30~50nmがさらにより好ましく、35~45nmがよりさらに好ましい。
本実施形態に適当な分散剤は、商業的に入手できる。特に、ポリアクリレートに基づく分散剤が適当である。このような適当な分散剤は、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社から商品名EFKA(登録商標)、EFKA(登録商標)4500、及びEFKA(登録商標)4530として入手できる。ポリエステル含有分散剤は、同様に適当である。それらは、例えば、Avecia社から、商品名Solsperse(登録商標)、Solsperse(登録商標)20000、24000Sc、26000、27000の商品名で入手可能である。さらに、ポリエーテル含有分散剤も既知であり、例えば、クスモト化学により製造されるDisparlon(登録商標)DA234及びDA325の商品名で入手可能である。ポリウレタンに基づく系もまた適当である。ポリウレタンに基づく系は、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社からEFKA(登録商標)4046、EFKA(登録商標)4047の商品名で入手可能である。Texaphor(登録商標)P60及びP63は、コグニスの対応する商品名である。
赤外線吸収剤(E)の含有量は、効果的に赤外線を吸収するために、有機化合物の赤外線吸収剤を用いる場合、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.002質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.003質量部以上、さらに好ましくは0.005質量部以上、さらにより好ましくは0.008質量部以上である。また、メタクリル系樹脂組成物の透明性や高外観維持の観点から、赤外線吸収剤(E)の含有量は、有機化合物の赤外線吸収剤(E)を用いる場合、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下がより好ましく、0.07質量部以下がさらに好ましく、0.05質量部以下がさらにより好ましく、0.02質量部以下が特に好ましい。
赤外線吸収剤(E)の含有量が上述の範囲内であれば、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、その用途に要求される赤外線吸収能に合わせ適宜選択してよい。
なお、本実施形態における赤外線吸収剤(E)の含有量は、分散剤等の表面処理剤を除いた有効成分での含有量である。
《その他の樹脂》
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のその他の樹脂を混合することができる。
当該その他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が好適に使用される。
熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、メタクリル系樹脂、AS系樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は、難燃性を向上させる効果が得られる。
また、硬化性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、キシレン樹脂、トリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、スチリルピリジン樹脂、シリコン樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
これらの樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、剛性や寸法安定性等の所定の各種特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を混合してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の離型剤;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤、ホスフィン系安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、染料、加水分解抑制剤、潤滑剤、耐衝撃性付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、増感材、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子、カーボンブラック等が挙げられる。
上記数値範囲で含有することにより、それぞれの材料の機能を発揮することができる。
波長1000nmは太陽光中に含まれる光量が多く、波長1000nmの光を効率的に吸収することが重要である。上記の赤外線吸収剤(E)の含有量の範囲の中で、メタクリル系樹脂組成物の波長1000nmにおける透過率が60%以下であれば、メタクリル系樹脂組成物は良好な赤外線吸収能を有すると言える。メタクリル系樹脂組成物の波長1000nmにおける透過率は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは38%以下である。
なお本開示で、波長1000nmにおける透過率は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、ヒンダードフェノール系安定剤(D)、及び赤外線吸収剤(E)と、必要に応じて、上述した種々の添加剤、その他の樹脂とを混合し、混練することにより得られる。
例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより製造できる。
特に押出機による混練が、生産性の観点から好ましい。
混練温度は、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂(A)や赤外線吸収剤(E)の劣化、各種添加剤の揮発防止の観点から、290℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
本実施形態の成形体は、上記の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする。
本実施形態の成形体は、公知の成形方法によって製造できる。公知の成形方法とは、以下に限定されるわけではないが、例えば、射出成形、押出成形、ブロー(中空)成形、真空成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション成形等が挙げられる。特に射出成形による成形が、生産性の観点から好ましい。
成形温度は、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂(A)や赤外線吸収剤(E)の劣化、各種添加剤の揮発の観点から、290℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含む成形体は、熱遮断性、防曇性、赤外線吸収能が良好であり、また、紫外線が当たる屋外環境に対する長期安定性、長期耐熱安定性、長期湿熱安定性に優れる樹脂成形体を得ることができるため、建築用部材、車両用部材、電気電子用部材、照明用部材等に好適に用いることが出来る。本実施形態の成形体の用途は、具体的には、例えば、建造物、自動車、列車又はバスに使用される屋根材や、照明や看板、メーターに使用される保護材、車両灯具用部材、船舶の灯具用部材、電池用保護カバー等である。
防曇性の発現と防曇性の長期維持が可能になることから、車両灯具用部材として用いられることが特に好ましい。
〈メタクリル系樹脂(A)の原料〉
メタクリル系樹脂組成物の製造に用いたメタクリル系樹脂(A)の原料は、下記のとおりである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールを2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・アクリル酸エチル(EA):三菱化学製
・n-オクチルメルカプタン:アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド:日本油脂製
・第三リン酸カルシウム:日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム:白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム:和光純薬工業製、懸濁助剤として使用
(B-1)チヌビンP:BASF製 融点128℃
(B-2)チヌビン234:BASF製 融点137℃
(C-1)アデカスタブ2112:アデカ製 融点180℃
(C-2)アデカスタブHP-10:アデカ製 融点146℃
(C-3)スミライザーGP:住友化学製 融点115℃
(C-4)アデカスタブPEP-8:アデカ製 融点50℃
(D-1)アデカスタブAO-80:アデカ製 110℃
(D-2)イルガノックス1010:BASF製 融点110℃
(D-3)イルガノックス565:BASF製 融点91℃
(E-1)YMDS874:住友金属鉱山製セシウムドープ酸化タングステン(有効成分比率23質量%、シェラー径32nm)
(E-2)YMDS874BT:住友金属鉱山製セシウムドープ酸化タングステン(有効成分比率23質量%、シェラー径36nm)
(E-3)FDN-006:山田化学工業製 フタロシアニン系色素
(E-4)KHDS06:住友金属鉱山製 六ホウ化ランタン(有効成分比率21.5質量%、シェラー径86nm)
(添加剤1)トリ-o-トリルホスフィン:東京化成工業製 融点124℃
(添加剤2)トリフェニルホスフィン:東京化成工業製 融点81℃
<I.メタクリル系樹脂(A)の分子量測定>
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)(Mnは数平均分子量)を下記の装置、及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検量線用標準サンプルとして、単分散のピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いた標準試料のポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、それぞれに対応するピークを重量ピーク分子量Mpと表記した。この点、一試料についてピークが複数ある場合に算出されるピークトップ分子量と区別した。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂(A)の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
1H-NMR測定により構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
1H-NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL-ECA500
溶媒:CDCl3-d1(重水素化クロロホルム)
試料:成分(A)15mgをCDCl3-d1 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
後述する実施例、参考例及び比較例で調製した平板試料の波長1000nmにおける透過率(%)を、島津製作所製UV-3100PCを用いて測定した。波長1000nmにおける透過率が60%以下であれば良好な赤外線吸収能を有していると言える。
後述する実施例、参考例及び比較例で調製した平板試料について、循環式熱風オーブン中に100℃で1000時間静置する前と後での波長1000nmにおける透過率(%)の変化を、島津製作所製UV-3100PCを用いて測定した。波長1000nmにおける透過率の変化が15%以内であれば◎(優れる)、15%超18%以内であれば〇(良好)、18%超21%以内であれば△(可)、21%超であれば×(不可)とした。透過率の変化が21%以内であれば、実用上十分な長期耐熱安定性を有していると言える。
後述する実施例、参考例及び比較例で調製した平板試料について、エスペック社製恒温恒湿機を用いて温度80℃、湿度95%の環境下で1000時間静置する前と後での波長1000nmにおける透過率(%)の変化を、島津製作所製UV-3100PCを用いて測定した。波長1000nmにおける透過率の変化が9.0%以内であれば◎(優れる)、9.0%超10.0%以内であれば〇(良好)、10.0%超11.0%以内であれば△(可)、11.0%超であれば×(不可)とした。透過率の変化が11.0%未満であれば、実用上十分な長期湿熱安定性を有していると言える。
後述する実施例、参考例及び比較例で調製した平板試料について、スガ試験機製サンシャインウェザーメーター(SWOM)中に、照射63℃で4時間、湿潤(結露)40℃で4時間の条件で1000時間連続して試験した平板試料の全光線透過率(%)の変化を、日本電色製1001DPを用いて測定した。また、波長1000nmにおける透過率(%)の変化を、島津製作所製UV-3100PCを用いて測定した。
全光線透過率の変化が2.0%以内ならば◎(優れる)、2.0%超2.5%以内ならば〇(良好)、2.5%超3.5%以内ならば△(可)、3.5%超は×(不可)とした。
また、波長1000nmにおける透過率の変化が6%以内ならば◎(優れる)、6%超7%以内ならば〇(良好)、7%超8%以内ならば△(可)、8%超ならば×(不可)とした。
全光線透過率の変化が3.5%以内でかつ、波長1000nmにおける透過率の変化が8%以内ならば、紫外線が当たる屋外環境に対する実用上十分な長期安定性を有していると言える。
後述する実施例、参考例及び比較例で、メタクリル系樹脂組成物の構成成分として用いたメタクリル系樹脂(A)について、以下記載する。
メタクリル系樹脂(A)は、下記製造例A1~A3により製造した(A-1)~(A-3)のメタクリル系樹脂を使用した。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:62gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子〔メタクリル系樹脂(A-1)〕を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は10.2万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:20.5kg、アクリル酸エチル:1.32kg、ラウロイルパーオキサイド:33g、及びn-オクチルメルカプタン:27.5gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子〔メタクリル系樹脂(A-2)〕を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は18.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/EA=94/6質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:88gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子〔メタクリル系樹脂(A-3)〕を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は7.3万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
表1に記載の配合割合になるよう、メタクリル系樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、ヒンダードフェノール系安定剤(D)、赤外線吸収剤(E)、その他の添加剤をそれぞれ計量した後、ヘンシェルミキサーへ投入し、それらを撹拌によって混合した。十分撹拌によって混合させた後、φ26mmの二軸押出機にその混合原料を投入し、溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、-0.06MPaの条件で水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。こうして、メタクリル系樹脂組成物を得た。なお、コンパウンド時の樹脂組成物の樹脂温度は、250~270℃であった。
なお、表1中の数値は、基材となるメタクリル系樹脂(A)の質量を100質量部としたときの配合部数(質量部)を表す。
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、平板状(100mm×100mm×2mm)に成形し、評価用の平板試料とした。なお、金型は、金型表面(金型キャビティ内面)が8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。そして、その8000番の磨き番手で研磨されている側の金型表面が転写されている成形品表面を、この平板試料の試験面とした。
なお、この評価用平板試料の成形条件は、下記のように設定した。
樹脂温度: 220℃~250℃
金型温度: 70℃
また、射出成形時の金型温度は、8000番の磨き番手で研磨された金型表面の転写性を高めるため、より高温に保つことが重要である。しかし、メタクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が110℃前後である事から、高過ぎても冷却時間が長すぎる事となり、実用的ではなくなる。それらを良質させる温度範囲は、60℃以上100℃以下であり、より好ましくは70℃以上90℃以下、さらに好ましくは70℃以上85℃以下であり、今回はその中の70℃を選択した。
実施例10においては、実用上十分ではあるが長期屋外環境安定性が実施例1、3、4、6~9、11、12、14~18、参考例2、5に比べやや劣っていた。
実施例13においては、実用上十分ではあるが長期屋外環境安定性と長期湿熱安定性が、実施例1、3、4、6~9、11、12、14、16~18、参考例2、5に比べやや劣っていた。
実施例15においては、実用上十分ではあるが長期湿熱特性が実施例1、3、4、6~12、14、16~18、参考例2、5に比べやや劣っていた。
Claims (7)
- 重量平均分子量Mwが70,000~200,000であるメタクリル系樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)、リン酸系安定剤(C)、分子中に酸素原子又は窒素原子を含有する環構造を少なくとも1つ有するヒンダードフェノール系安定剤(D)、及び赤外線吸収剤(E)を含有することを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。
- 前記赤外線吸収剤(E)が、タングステン酸化物及び/又は六ホウ化ランタンであり、
前記赤外線吸収剤(E)の含有量が、前記メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.002~0.05質量部である、請求項1に記載のメタクリル系樹脂組成物。 - 前記メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、前記紫外線吸収剤(B)を0.01~0.3質量部、前記リン酸系安定剤(C)を0.03~0.5質量部、前記ヒンダードフェノール系安定剤(D)を0.03~0.5質量部含有する、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂組成物。
- 前記紫外線吸収剤(B)の融点が90℃以上137℃以下であり、前記リン酸系安定剤(C)の融点が90℃以上180℃以下であり、及び前記ヒンダードフェノール系安定剤(D)の融点が90℃以上110℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
- 建築用部材、電気電子用部材、車両用部材、照明用部材に用いられる、請求項5に記載の成形体。
- 車両灯具用部材に用いられる、請求項6に記載の成形体。
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