JP2023134197A - レーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、極大出力波長1550nmのレーザーのような長波長のレーザー光を良好に透過するレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物、並びにレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーを提供することを目的とする。を提供することにある。【解決手段】本発明の極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光に用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物は、金型磨き番手8000番手で厚み3mmの成形体とした時の波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上であることを特徴としている。【選択図】なし

Description

本発明は、レーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物並びにレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーに関する。
近年、自動車の自動運転を達成するために様々な技術開発が盛んに行われており、その中でも外界センシングに有効なLiDAR(Light Detection and Ranging)についての検討が盛んに行われている。LiDAR用のレーザーとしては波長905nmのレーザーなど、極大出力波長900nm前後のレーザーを使用することが多かったが、太陽光の影響を受けセンシング感度が低下しやすい、人の目に対する悪影響があるといった課題があった。これらの課題を解決するためにレーザーの波長を長波長化する検討が行われており、レーザー出光部や拡散部、センサーを保護しつつ、極大出力波長1550nmのレーザーのような長波長のレーザー光を良好に透過する材料が強く求められている。
特許文献1では、ガラスを用いたセンサーカバーが開示されているが、ガラスを用いた場合、脆い部材となってしまう。これを解決するために形状に制限が生じる。また、単純な平板状の形状ではなく、曲率や組付け部を持つような部材に用いる場合、生産性が良好でなく、また、非常に高価なものになってしまう。そのため、生産性良く、安価に生産できる熱可塑性樹脂材料が求められる。
特開2017-48090号公報
本発明は、極大出力波長1550nmのレーザーのような長波長のレーザー光を良好に透過し、また、生産性に優れるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体、レーザーカバーおよび/またはセンサーカバーを提供することを目的とする。
本発明者らは先記した従来技術の問題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、上記従来技術の問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
金型磨き番手8000番手で厚み3mmの成形体とした時の波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上である、ことを特徴とする極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光に用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
[2]
光散乱方式で測定された熱可塑性樹脂組成物1g中の光散乱粒径2μm以上20μm以下の異物の総数が1500個以下である、[1]に記載のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
[3]
メタクリル系樹脂組成物である、[1]または[2]に記載のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
[4]
メタクリル系樹脂組成物であり、前記メタクリル系樹脂組成物中に含まれるメタクリル系樹脂100質量%に対しフッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位が0質量%を超え70質量%以下含有されている、[1]~[3]のいずれかに記載のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
[5]
熱可塑性樹脂を含み、波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上である、極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光に用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー。
[6]
[1]から[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光を用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー。
本発明によれば、極大出力波長1550nmのレーザーのような長波長のレーザー光を良好に透過し、また、生産性に優れるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体、レーザーカバーおよび/またはセンサーカバーが得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、本明細書において、極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光に用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物を、単に「熱可塑性樹脂組成物」と称する場合がある。
なお、以下において、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をなす重合体を構成する構成単位のことを、「~単量体単位」、および/または複数の該「~単量体単位」を含む「~構造単位」という。
また、かかる「~単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「~単量体」と記載する場合もある。
[熱可塑性樹脂組成物]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、金型磨き番手8000番手で厚み3mmの成形体とした時の波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上(好ましくは87%以上)である。上記特性を持つことで、極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光を良好に透過することが出来、レーザーセンサーカバーとして用いることが出来る。また、熱可塑性樹脂組成物であることで、生産性良く成形体を製造でき、大量生産に好適である。
熱可塑性樹脂組成物の樹脂種は下記に特に限定されないが、メタクリル系樹脂組成物、ポリカーボネート系樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂組成物、環状オレフィン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリスチレン系樹脂組成物等が挙げられる。高い透明性、優れた耐候性を有するため、メタクリル系樹組成物を用いることが好ましい。
<メタクリル系樹脂組成物>
本実施形態において好ましい態様であるメタクリル系樹脂組成物を熱可塑性樹脂組成物として用いる場合は、メタクリル系樹脂組成物の特徴である高い透明性や優れた耐候性を効果的に発揮するために、熱可塑性樹脂組成物100質量%に対してメタクリル系樹脂を80質量%以上100質量%以下含有していることが好ましく、90質量%以上99.9質量%以下含有していることがより好ましく、98質量%以上99.9質量%以下含有していることがさらに好ましい。この時、メタクリル系樹脂は、一種単独のメタクリル系樹脂を用いてもよく、二種以上のメタクリル系樹脂を併用したものであってもよい。
(メタクリル系樹脂)
本実施形態において好ましい態様であるメタクリル系樹脂組成物を熱可塑性樹脂組成物として用いる場合に含まれるメタクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂100質量%に対してメタクリル酸エステル単量体単位80~99.9質量%と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体からなるビニル単量体単位0.1~20質量%とを含むことが好ましい。上記メタクリル系樹脂は、上記メタクリル酸エステル単量体単位と上記ビニル単量体単位とさらに他の単量体単位を含んでいてもよいし、上記メタクリル酸エステル単量体単位と上記ビニル単量体単位とのみからなっていてもよい。
メタクリル系樹脂に含まれるメタクリル酸エステル単量体単位を構成するメタクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等のフッ素原子を含むメタクリル酸エステル単量体、等が挙げられる。入手のしやすさ、価格の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
また、波長1550nmの透過率を一層良好なものにする観点から、フッ素原子を含有するメタクリル酸エステル単量体(好ましくはメタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル))を用いることが好ましい。メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)などのフッ素原子を含有するメタクリル酸エステル単量体単位(「フッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位」と称する場合がある)はメタクリル系樹脂100質量%に対し、0質量%を超え70質量%以下含有されていることが好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上40質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上35質量%以下がさらにより好ましい。
上記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて使用してもよい。
メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂100質量%に対し、80~99.9質量%であることが好ましく、82~99.8質量%であることがより好ましく、84~99.5質量%であることがさらに好ましい。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が99.9質量%以下であることにより、成形時における樹脂の分解を防止でき、揮発成分であるメタクリル酸エステル単量体の発生やシルバーと呼ばれる成形不良を効果的に防止できる。また、メタクリル酸エステル単量体単位が80質量%以上であることにより、成形品に一般的に必要とされている耐熱性を担保できる。十分な耐熱性を有することにより、剛性も確保でき、成形体として一般的に求められる強度を確保できる。
メタクリル系樹脂に含まれる、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
その他にも、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;といったアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルが好ましく、さらには、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが入手のしやすさから、好ましい。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体からなるビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂100質量%に対し、0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~18質量%であることがより好ましく、0.5~16質量%であることがさらに好ましい。0.1質量%以上であることにより、成形時における樹脂の分解を防止でき、揮発成分であるメタクリル酸エステル単量体の発生やシルバーと呼ばれる成形不良を効果的に防止できる。また、ビニル単量体単位が20質量%以下であることにより、成形品に一般的に必要とされている耐熱性を担保できる。
また、ビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂(100質量%)に対して、特に(メタ)アクリレート基を2つ有する単量体を使用する場合には0.4質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を3つ有する単量体を使用する場合には0.25質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を4つ以上有する単量体を使用する場合には0.15質量%以下での使用が、射出成形時の流動性の確保や、透明性維持の観点から好ましい。
また、上記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、アクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β-不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸およびそれらのアルキルエステル;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミドや、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
なお、メタクリル系樹脂においては、耐熱性、成形加工性等の特性を向上させる目的で、上記例示したビニル単量体以外のビニル系単量体を適宜添加して共重合させてもよい。
特に本発明においては波長1550nmの分光透過率を良好なものにするために、フッ素含有モノマー、例えば、以下に限定されるものではないが、アクリル酸(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロへキシル)、トリフルオロアセチル酸ビニルなどが挙げられる。
上記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なアクリル酸エステル単量体や、上記例示したアクリル酸エステル単量体以外のビニル系単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。
上記メタクリル系樹脂は、フッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位、フッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位以外のメタクリル酸エステル単量体単位、アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体単位を含む(好ましくは、のみからなる)樹脂であることが好ましく、メタクリル系樹脂100質量%に対して、フッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位の質量割合が25~35質量%、フッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位以外のメタクリル酸エステル単量体単位の質量割合が60~70質量%、アクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体単位1~5質量%であることが好ましい。
(メタクリル系樹脂の重量平均分子量)
本実施形態において好ましい態様であるメタクリル系樹脂組成物を熱可塑性樹脂組成物として用いる場合に含まれるメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)について説明する。
メタクリル系樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)が、70,000~200,000であることが好ましい。
優れた機械的強度および耐溶剤性を得るためには、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、75,000以上が好ましく、80,000以上がより好ましく、85,000以上がさらに好ましい。
また、メタクリル系樹脂組成物が良好な流動性を示すためには、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限は、198,000以下が好ましく、195,000以下がより好ましく、190,000以下がさらにより好ましい。
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が70,000~200,000の範囲であることにより、流動性、機械的強度、および耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される。
本実施形態において好ましい態様であるメタクリル系樹脂組成物を熱可塑性樹脂組成物として用いる場合に含まれるメタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.5であることがより好ましく、1.0~5.0であることがさらに好ましい。メタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が1.0~6.0であることにより、メタクリル系樹脂が発現する物性が安定する。
ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めることができ、これらにより分子量分布(Mw/Mn)を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
(メタクリル系樹脂の製造方法)
本実施形態において好ましい態様であるメタクリル系樹脂組成物を熱可塑性樹脂組成物として用いる場合に含まれるメタクリル系樹脂は溶液重合法、塊状重合法やキャスト重合法、懸濁重合法により製造できるが、これらの方法に限定されるものではない。好ましくは、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法であり、より好ましくは溶液重合、懸濁重合法である。懸濁重合を選択することで0.5μm~5mmの小さな球状のポリマーが得られ、添加剤を添加する場合に添加剤分散を良好にすることが出来る。溶液重合を選択することで、メタクリル系樹脂組成物製造時の異物や夾雑物の混入を抑えることが出来る。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、懸濁重合の場合、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。溶液重合の場合、50℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは90℃以上170℃以下である。
メタクリル系樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤および/またはレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0質量部超1質量部以下の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
メタクリル系樹脂の重合方法として、塊状重合法、キャスト重合法、または懸濁重合法を選択する場合には、メタクリル系樹脂の着色を防止する観点から、過酸化系重合開始剤を用いて重合することが好ましい。
上記過酸化系重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられ、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。
当該過酸化物、アゾビス開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
メタクリル系樹脂を製造する際には、本発明の目的を損わない範囲で、メタクリル系樹脂の分子量の制御を行ってもよい。メタクリル系樹脂の分子量を制御する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行う方法が挙げられる。また、これらの添加量を調整することにより、分子量を調整することも可能である。
上記連鎖移動剤としては、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましく、当該アルキルメルカプタン類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これらは、目的とするメタクリル系樹脂の分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部~5質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤、上述した連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法、重合温度等の各種重合条件を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、単一樹脂に添加剤を添加したものでも良いが、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の2種類以上の樹脂の混合物であっても良い。特に、熱可塑性樹脂祖として、メタクリル系樹脂を用いるときには、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の下記のようなその他の樹脂を混合することができる。
当該その他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂が好適に使用される。
上記その他の樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性アクリルエラストマー等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は、難燃性を向上させる効果が得られる。
これらの樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
(添加剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、剛性や寸法安定性等の所定の各種特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で上記樹脂以外の各種の添加剤を混合してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、またはトリグリセリド系等の離型剤;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤、ホスフィン系安定剤、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、染料、加水分解抑制剤、潤滑剤、耐衝撃性付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、増感材、着色用染料、顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子、カーボンブラック等が挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を得るための熱可塑性樹脂組成物中における、その他の樹脂、添加剤の合計含有量は、ブリードアウト等の成形不良を防止するために、熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して0~30質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.02~2質量%がさらに好ましい。
上記数値範囲で含有することにより、それぞれの材料の機能を発揮することができる。
熱可塑性樹脂組成物の外観は、透明であっても良いが、本発明の効果を損なわない範囲で着色用染料によって着色されていても良い。着色時の外観はカバー内のモジュールを見えなくし、意匠性を高める観点、太陽光がセンシングに与える悪影響を抑制する観点から黒色が好ましい。可視光を漏れなく遮蔽する観点から、2種類以上の染料を含むことが好ましく、3種以上の染料を含むことがより好ましい。それらの染料は、互いに色相の異なる3種以上の染料であるとさらに好ましく、赤系、黄系、緑系、青系および紫系の染料からなる群より選ばれる3種以上の染料であることが特に好ましい。単純に青系染料と黄系染料との組合せのみ、または緑系染料と赤系染料との組合せのみという狭い範囲での組合せよりも、所謂光の3原色をまんべんなく含んだ組合せる方が、可視光波長を漏れなく遮蔽できる観点で好ましいからである。そのような組合せとしては、例えば、紫系染料、緑系染料、黄系染料および青系染料の組合せ、紫系染料、黄系染料、緑系染料および赤系染料の組合せ、赤系染料、緑系染料、黄系染料および青系染料の組合せ、赤系染料、緑系染料および青系染料の組合せ、といった、複数の系統の染料の適量ずつの組合せが挙げられ、これらの中では、既に多くの市販製品があり、後述する耐光性染料の種類も多いのでより所望の漆黒性を実現しやすいという観点から、赤系染料、緑系染料、黄系染料および青系染料の組合せが好ましい。
赤系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 52、同111、同135、同145、同146、同149、同150、同151、同155、同179、同180、同181、同196、同197、同207、Disperse Red 22、同60、および同191等が挙げられる。
青系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Blue 35、同45、同78、同83、94、同97、同104、および同105等が挙げられる。
黄系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160、Disperse Yellow 54、同160、およびSolvent yellow 33が挙げられる。
緑系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Green 3、同20、および同28等が挙げられる。
紫系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 28、同13、同31、同35、および同36等が挙げられる。
これらの染料は色毎に、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
染料の種類は特に限定されないが、耐候性の観点から、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料およびペリノン系染料からなる群より選ばれるものが好ましい。
アントラキノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 36、Solvent Green 3、同28、Solvent Blue 94、同97、およびDisperse Red 22等が挙げられる。
複素環式化合物系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160等が挙げられる。
ペリノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 179等が挙げられる。
これらはそれぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
また、染料の合計配合量については可視光遮蔽性を十分に確保するために0.03質量部以上が好ましく0.1質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましい。一方で、耐候性やコストの観点から1質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましく、0.35質量部以下が特に好ましい。
(熱可塑性樹脂組成物の特性)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、極大出力波長1510nm~1590nmの長波長レーザー光をセンシングに用いるときのセンシング感度を良好なものにするために、熱可塑性樹脂組成物を金型磨き8000番手の金型を用いて厚み3mm厚みの成形体とした時に波長1500~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上である。分光透過率はより良好なセンシング感度を達成するためにより高い方が好ましく、好ましくは85.5%以上、より好ましくは86%以上、さらに好ましくは87%以上、さらにより好ましくは87.5%以上である。特に、極大出力波長1550nmのレーザーにおいて好適に用いるために熱可塑性樹脂組成物を金型磨き8000番手の金型を用いて厚み3mmの成形体とした時に1550nmの分光透過率が高いことが好ましい。この時、波長1550nmの分光透過率は85%以上が好ましく、86%以上がより好ましく、87%以上がさらに好ましく、88%以上がさらにより好ましく、88.5%以上が特に好ましい。波長1500~1600nmの分光透過率は異物の低減やフッ素含有単量体単位(好ましくは、フッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位)を含む熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂組成物中に導入することで高めることが出来る。
金型磨き8000番手の金型を用いて厚み3mm厚みの成形体とは、後述の実施例に記載の方法で射出成形した平板試料としてよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含有される異物の総数、特に極大出力波長1500~1600nmのレーザーに干渉する光散乱径2μm以上20μm以下の異物、夾雑物の総数は、熱可塑性樹脂組成物1gあたり2000個以下であることが好ましい。2000個以下であることで極大出力波長1500~1600nmのレーザーの散乱を効果的に抑え波長1500nm~1600nmの透過率を良好なものにすることが出来る。異物数は少なければ少ないほど好ましいため、1500個以下がより好ましく、1400個以下がさらに好ましく、1200個以下が特に好ましい。異物、夾雑物を低減する方法としては、懸濁剤の洗浄や、溶融混錬時の環境管理、フィルターの設置などが挙げられる
(熱可塑製樹脂組成物の製造方法)
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、必要に応じて、上述した種々の添加剤、その他の樹脂とを混合し、混練することにより得られる。
例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより製造できる。特に押出機による混練が、生産性の観点から好ましい。
混練温度は、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、各種添加剤の揮発防止の観点から、300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、さらに好ましくは280℃以下、さらにより好ましくは270℃以下である。
[レーザーカバーおよび/またはセンサーカバー]
本実施形態のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーは、熱可塑性樹脂を含み、波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、上述の熱可塑性樹脂が挙げられ、良好な透過率の確保、耐候性の観点から上記メタクリル系樹脂が好ましい。また、波長1500nm~1600nmの光線に干渉する2μm以上20μm以下の異物、夾雑物の総数を低減することで波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値を良好なものに合うることが出来る。 また、本実施形態のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーは上記の本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を含むことが好ましく、上述の本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることがより好ましい。
レーザーカバーおよび/またはセンサーカバーとして、1500~1600nmの分光透過率、強度、耐熱変形性のバランスを良好なものにするために、厚みは0.5mm以上7mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましく、1mm以上4mm以下であることがさらに好ましく、1.5mm以上3.5mm以下であることが特に好ましい。また、3mm以下であってもよい。薄いほど1500~1600nmの分光透過率に優れ、厚いほど強度、耐熱変形性に優れる。使用環境、要求特性に応じて厚みは調整出来る。なお、上記厚みとはレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーを取り出し、レーザーカバーおよび/またはセンサーカバー内の最も厚肉部の厚みのことを指す。
(外観)
レーザーカバーおよび/またはセンサーカバーの外観は、透明であっても良いが、本発明の効果を損なわない範囲で着色用染料によって着色されていても良い。着色時の外観はカバー内のモジュールを見えなくし、意匠性を高める観点、太陽光がセンシングに与える悪影響を抑制する観点から黒色が好ましい。可視光を漏れなく遮蔽する観点から、2種類以上の染料を含むことが好ましく、3種以上の染料を含むことがより好ましい。それらの染料は、互いに色相の異なる3種以上の染料であるとさらに好ましく、赤系、黄系、緑系、青系および紫系の染料からなる群より選ばれる3種以上の染料であることが特に好ましい。単純に青系染料と黄系染料との組合せのみ、または緑系染料と赤系染料との組合せのみという狭い範囲での組合せよりも、所謂光の3原色をまんべんなく含んだ組合せる方が、可視光波長を漏れなく遮蔽できる観点で好ましいからである。そのような組合せとしては、例えば、紫系染料、緑系染料、黄系染料および青系染料の組合せ、紫系染料、黄系染料、緑系染料および赤系染料の組合せ、赤系染料、緑系染料、黄系染料および青系染料の組合せ、赤系染料、緑系染料および青系染料の組合せ、といった、複数の系統の染料の適量ずつの組合せが挙げられ、これらの中では、既に多くの市販製品があり、後述する耐光性染料の種類も多いのでより所望の漆黒性を実現しやすいという観点から、赤系染料、緑系染料、黄系染料および青系染料の組合せが好ましい。
赤系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 52、同111、同135、同145、同146、同149、同150、同151、同155、同179、同180、同181、同196、同197、同207、Disperse Red 22、同60、および同191等が挙げられる。
青系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Blue 35、同45、同78、同83、94、同97、同104、および同105等が挙げられる。
黄系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160、Disperse Yellow 54、同160、およびSolvent yellow 33が挙げられる。
緑系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Green 3、同20、および同28等が挙げられる。
紫系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 28、同13、同31、同35、および同36等が挙げられる。
これらの染料は色毎に、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
染料の種類は特に限定されないが、耐候性の観点から、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料およびペリノン系染料からなる群より選ばれるものが好ましい。
アントラキノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 36、Solvent Green 3、同28、Solvent Blue 94、同97、およびDisperse Red 22等が挙げられる。
複素環式化合物系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160等が挙げられる。
ペリノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 179等が挙げられる。
これらはそれぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
また、染料の配合量については可視光遮蔽性を十分に確保するために、レーザーカバーまたはセンサーカバー100質量部に対して、0.03質量部以上が好ましく0.1質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましい。一方で、耐候性やコストの観点から1質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましく、0.35質量部以下が特に好ましい。
(特性)
本実施形態のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーは、極大出力波長1510nm~1590nmの長波長レーザー光をセンシングに用いるときのセンシング感度を良好なものにするために、波長1500~1600nmの分光透過率の平均値は85%以上であることが好ましい。分光透過率はより良好なセンシング感度を達成するためにより高い方が好ましく、好ましくは85.5%以上、より好ましくは86%以上、さらに好ましくは87%以上、さらにより好ましくは87.5%以上である。特に、極大出力波長1550nmのレーザーにおいて好適に用いるためにレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーとした時に1550nmの分光透過率が高いことが好ましい。この時、波長1550nmの分光透過率は85%以上が好ましく、86%以上がより好ましく、87%以上がさらに好ましく、88%以上がさらにより好ましく、88.5%以上が特に好ましい。
<レーザーカバーおよび/またはセンサーカバーの製造方法>
本実施形態のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーは、公知の成形方法によって製造できる。公知の成形方法とは、以下に限定されるわけではないが、例えば、射出成形、押出成形、ブロー(中空)成形、真空成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション成形等が挙げられる。特に射出成形による成形が、生産性の観点から好ましい。
成形温度は、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂の劣化、各種添加剤の揮発の観点から、300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、さらに好ましくは280℃以下、さらにより好ましくは270℃以下である。
(用途)
本実施形態のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーは、波長1500~1600nmの分光透過率に優れるため、極大出力波長1510~1590nmを持つレーザーのカバーとして用いることができる。また、極大出力波長1510~1590nmを持つレーザーの受光素子側のカバー、すなわちセンサーカバーとしても用いることもできる。中でも、外界センシングなどに用いられるのレーザーとセンサーが内部に設置された筐体のカバー、すなわちレーザーセンサーカバーとして用いられることが好ましく、特に自動車用レーザーセンサーカバーとして用いられることが特に好ましい。
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は、後述する実施例に限定されるものではない。
〔実施例および比較例において用いた原料〕
〈メタクリル系樹脂の原料〉
メタクリル系樹脂組成物の製造に用いたメタクリル系樹脂の原料は、下記のとおりである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールを2.5質量ppm添加されているもの)
・メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)(TFMMA):東ソー・ファインケム製
・アクリル酸メチル(MA):日本触媒製(重合禁止剤として4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が添加されているもの)
・n-オクチルメルカプタン:アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド:日本油脂製
・1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:アルケマ吉富製
・硫酸アルミニウム14-18水:関東化学製
・水酸化ナトリウム:富士フイルム和光純薬製
・ラウリル硫酸ナトリウム:和光純薬工業製、懸濁助剤として使用
<紫外線吸収剤>
チヌビンP:BASF製
<その他の添加剤>
(離型剤)カルコール8688:花王製
〔測定、評価方法〕
<I.メタクリル系樹脂の分子量測定>
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)(Mnは数平均分子量)を下記の装置、および条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検量線用標準サンプルとして、単分散のピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いた標準試料のポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、それぞれに対応するピークを重量ピーク分子量Mpと表記した。この点、一試料についてピークが複数ある場合に算出されるピークトップ分子量と区別した。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
<II.メタクリル系樹脂構造単位の解析>
H-NMR測定により構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
H-NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL-ECA500
溶媒:CDCl-d(重水素化クロロホルム)
試料:熱可塑性樹脂15mgをCDCl-d 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
<分光透過率の測定>
島津製作所製UV-3100PCを用いて分光透過率を測定した。測定間隔は1nm、スキャンスピードは中速として測定を実施した。測定結果から、波長1550nmの分光透過率の読み取りと、1500~1600nmの分光透過率の算術平均値を算出した。
<異物数の測定>
スペクトリス社製SLS-1500を用いて光散乱方式での光散乱径2μm以上20μm以下の粒子の個数を測定し、1g当たりの異物個数を算出した。測定は下記の手順で実施した。
少量のイソプロピルアルコールにて2回洗浄した容器に、熱可塑性樹脂組成物を採取し、熱可塑性樹脂組成物の質量に対して、倍量のイソプロピルアルコールで洗浄し、洗浄に使用したイソプロピルアルコールをデカンテーションによって除去し、熱可塑性樹脂組成物0.02g当たりクロロホルム1mlの割合でクロロホルムを追加し、熱可塑性樹脂組成物を溶解させたものを測定サンプルとした。測定を3回実施し、3回の測定結果の平均値を熱可塑性樹脂組成物1g辺りに換算したものを熱可塑性樹脂組成物1g当たりの異物個数とした。なお光散乱径2μmから10μmまでは1μm刻み、10μmから20μmまでは5μm刻みで粒子個数を計測した。上記操作および測定はオープンクリーンベンチKOACH 645-Fを使用した空間で実施した。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
後述する実施例および比較例で、熱可塑性樹脂組成物の構成成分として用いた熱可塑性樹脂について、以下記載する。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、下記製造例1~3より製造した熱可塑性樹脂(1)、(1-2)、(2-3)を使用した。
<製造例1(熱可塑性樹脂(1)の製造)>
攪拌機を有する容器に、硫酸アルミニウム14-18水:140gをイオン交換水2.5kgに溶解させたもの、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、混合液(a)を投入し、60℃に加温した。次いで、水酸化ナトリウム53gをイオン交換水690gに溶解させたもの、次いでイオン交換水:22kgを投入して80℃に昇温し、メタクリル酸メチル:18.9kg、アクリル酸メチル:0.59kg、ラウロイルパーオキサイド:30g、およびn-オクチルメルカプタン:45gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、70℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子〔熱可塑性樹脂(1)〕を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は11.4万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/MA=97/3質量%であった。
<製造例2(熱可塑性樹脂(1-2)の製造)>
製造例1で得られたポリマー微粒子〔熱可塑性樹脂(1)〕を、攪拌機を有した60L容器に入れ、次いで25質量%水酸化ナトリウム溶液3kgと水を30kg投入した。容器を攪拌しながら60℃に加温し、4時間攪拌を続け懸濁剤の洗浄を行った。内容物を取り出し、水洗脱水処理を行い、真空乾燥機で真空引きしながら80℃で乾燥しポリマー微粒子〔熱可塑性樹脂(1-2)〕を得た。
熱可塑性樹脂(1-2)の重量平均分子量は11.4万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/MA=97/3質量%であった。
<製造例3(熱可塑性樹脂(2)、(2-2)、(2-3)の製造)>
攪拌機を有する容器に、硫酸アルミニウム14-18水:140gをイオン交換水2.5kgに溶解させたもの、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に、混合液(b)を投入し、60℃に加温した。次いで、水酸化ナトリウム53gをイオン交換水690gに溶解させたもの、次いでイオン交換水:22kgを投入して80℃に昇温し、メタクリル酸メチル:13kg、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)5.9kg、アクリル酸メチル:0.59kg、ラウロイルパーオキサイド:29g、およびn-オクチルメルカプタン:45gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、70℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子〔熱可塑性樹脂(2)〕を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は11.3万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/TFMMA/MA=67/30/3質量%であった。
上記ポリマー微粒子〔熱可塑性樹脂(2)〕を、攪拌機を有した60L容器に入れ、次いで25質量%水酸化ナトリウム溶液3kgと水を30kg投入した。容器を攪拌しながら60℃に加温し、4時間攪拌を続けた。内容物を取り出し、水洗脱水処理を行い、真空乾燥機で真空引きしながら80℃で乾燥しポリマー微粒子〔熱可塑性樹脂(2-2)〕を得た。熱可塑性樹脂(2-2)をオープンクリーンベンチKOACH 645-Fを使用した空間でテトラヒドロフランへ溶解させ、3μmメッシュのメンブレンフィルターで吸引ろ過し、吸引ろ過後の溶液をメタノールで再沈殿を行った。次いで、メタノールをデカンテーションし、残った沈殿を真空乾燥機で真空引きしながら80℃で乾燥した。乾燥した沈殿物を凍結粉砕し、熱可塑性樹脂(2-3)を得た。
熱可塑性樹脂(2-3)の重量平均分子量は11.4万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.83であった。また、構造単位はMMA/TFMMA/MA=67/30/3質量%であった。
〔実施例1〕
製造例2で得られた熱可塑性樹脂(1-2)を、内部を陽圧制御したクリーンブース内で表1に示す配合で、スクリュー径φ26mmの2軸押出機を用いて溶融混錬し、ダイから押し出し、水冷後カットしペレット化し、実施例1の熱可塑性樹脂組成物を得た。この時、押出機のシリンダー温度は240℃に設定した。
〔比較例1〕
製造例1で得られた熱可塑性樹脂(1)を表1に示す配合で、スクリュー径φ26mmの2軸押出機を用いて溶融混錬し、ダイから押し出し、水冷後カットしペレット化し、比較例1の熱可塑性樹脂組成物を得た。この時、押出機のシリンダー温度は240℃に設定した。
〔実施例2〕
内部を陽圧制御したクリーンブース内で表1に示すような配合で熱可塑性樹脂(2-3)を添加剤と共に、スクリュー径φ26mmの2軸押出機を用いて溶融混錬し、水で冷却カットしペレタイズ」」を行い実施例2の熱可塑性樹脂組成物を得た。この時、押出機のシリンダー温度は250℃に設定した。
〔実施例3〕
攪拌機を備えた耐圧重合反応器に、メタクリル酸メチル:950g、アクリル酸メチル:9.6g、重合開始剤としてパーヘキサ22を0.2g、n-オクチルメルカプタン:2.8g、メタキシレン:240gを投入した。反応容器内を窒素雰囲気に置換し、温度を185℃に昇温し90分間重合反応を行った。内容物を取り出し、反応器の洗浄を行った後、繰り返し上記反応を5回実施した。取り出した内容物に対し凍結粉砕を行った後、240℃に設定されたφ30mmの押出機で脱気しながらペレタイズを行い「メタクリル系樹脂(A-4)」を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は7.6万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.97、構造単位はMMA/MA=99/1質量%、不飽和二重結合末端量は0.014モル%であった。
メチルメタクリレート534.6kg、アクリル酸メチル15kg、連鎖移動剤であるn-オクチルメルカプタンを0.49kg、メタキシレン450.0kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.23kgをメタキシレン1.82kgに溶解させた重合開始剤溶液を調製し、この溶液を1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.5kg/時、1時間後に0.42kg/時、2時間後に0.35kg/時、3時間後に0.14kg/時間、4時間後に0.13kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。重合開始から15時間経過した後、熱可塑性樹脂を含む重合溶液を得た。この重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3mのSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)と添加剤フィード装置とから構成される脱揮装置を用いた。重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、250℃に加熱した後、内温250℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。脱揮後の重合物には、重合物100質量部に対して0.1質量部のカルコール8688と0.04質量部のチヌビンPを脱揮槽下部に設置した添加剤供給装置より添加し、ギアポンプで混合・昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化して実施例3の熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られたペレット状の熱可塑性樹脂組成物(実施例3)に含まれる熱可塑性樹脂の組成を確認したところ、重量平均分子量は11.8万であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.02であった。また、構造単位はMMA/MA=97/3質量%であった。
〔平板試料〕
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、平板状(100mm×100mm×3mm)に成形し、レーザーカバー/センサーカバーとしての性能評価用試料、分光透過率測定用試料とした。なお、金型は、金型表面が8000番の磨き番手で研磨されたものを用いた。
なお、この評価用平板試料の成形条件は、下記のように設定した。
樹脂温度: 260℃
金型温度: 70℃
また、射出成形時の金型温度は、8000番の磨き番手で研磨された金型表面の転写性を高めるため、より高温に保つことが重要である。しかし、高過ぎても冷却時間が長すぎる事となり、実用的ではなくなる。それらを良質させる温度範囲は、60℃以上100℃以下であり、より好ましくは70℃以上90℃以下、さらに好ましくは70℃以上85℃以下であり、今回はその中の70℃を選択した。
(性能評価)
小型半導体レーザーモジュールLDM1550に接するようにレーザーカバーとして成形体を設置し、受光素子としてフォトダイオードを用いてレーザー光を照射した際の発生電圧の強弱を確認した。その結果、表2に示す1550nmの分光透過率の序列と同じ序列であった。またフォトダイオードに接するようにセンサーカバーとして成形体を設置し、レーザー光を照射した際の発生電圧の強弱を確認した。その結果も表1に示す1550nmの分光透過率の序列と同じ序列であった。
Figure 2023134197000001
Figure 2023134197000002
実施例1では、実施例2、3にわずかに劣るものの波長1500~1600nmの分光透過率、波長1550nmの分光透過率が良好でレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーに好適な成形体を製造することが出来た。実施例2では、異物数が少なく、また、フッ素を含有する単量体単位を熱顔性樹脂中に導入したため波長1500~1600nmの分光透過率や波長1550nmの分光透過率が特に優れるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーに好適な成形体を製造することが出来た。実施例3では、異物数が特に少なく波長1500~1600nmの分光透過率、波長1550nmの分光透過率に優れるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバーに好適な成形体を製造することが出来た。比較例1では、実施例に対し、異物数が多く波長1500~1600nmの分光透過率、波長1550nmの分光透過率が良好でなくレーザーカバーに好適な成形体を製造することが出来なかった。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体は、波長1500~1600nmの分光透過率に優れ、生産性良く、安価に生産できるため、極大出力波長1510~1590nmを持つレーザーのカバーとして有用である。レーザーのカバーとして用いることが出来ると同時に極大出力波長1510~1590nmを持つレーザーの受光素子側のカバー、すなわちセンサーカバーとしても有用である。具体的にはメカレス型LiDAR筐体用カバー、外界センシング用のレ-ザーカバーやセンサーカバー、産業機器のレーザーカバーやセンサーカバー等として産業上利用の可能性がある。

Claims (6)

  1. 金型磨き番手8000番手で厚み3mmの成形体とした時の波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上である、ことを特徴とする極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光に用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
  2. 光散乱方式で測定された熱可塑性樹脂組成物1g中の光散乱粒径2μm以上20μm以下の異物の総数が1500個以下である、請求項1に記載のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
  3. メタクリル系樹脂組成物である、請求項1または2に記載のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
  4. メタクリル系樹脂組成物であり、前記メタクリル系樹脂組成物中に含まれるメタクリル系樹脂100質量%に対しフッ素含有メタクリル酸エステル単量体単位が0質量%を超え70質量%以下含有されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 熱可塑性樹脂を含み、波長1500nm~1600nmの分光透過率の平均値が85%以上である、極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光に用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー。
  6. 請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、極大出力波長1510nm~1590nmのレーザー光を用いるレーザーカバーおよび/またはセンサーカバー。
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