本発明を実施するための形態(実施形態1)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る加工装置の構成の一例を示す概略構成図である。図2は、図1に示された加工装置により正規の加工溝が形成された被加工物の要部を示す平面図である。図3は、図1の加工装置による加工溝の幅の許容値のラインの表示の一例を示す撮像画像である。図4は、図1の加工装置による加工溝の位置の許容値のラインの表示の一例を示す撮像画像である。図5は、図1の加工装置による最大許容値のラインの表示の一例を示す撮像画像である。図6は、図1の加工装置による最大許容値のラインの表示の別の一例を示す撮像画像である。
なお、以下の説明に用いられるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに垂直であるものとする。実施形態1に係る加工装置1は、図1に示すように、被加工物100に設定された分割予定ライン103に沿って加工溝200(図1及び図2に示す)を形成する。
まず、実施形態1に係る加工装置1の加工対象である被加工物100について説明する。被加工物100は、図1に示すように、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板101とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物100は、基板101の表面102に形成された複数の分割予定ライン103によって格子状に区画されたデバイス領域104を備える。
被加工物100は、表面102の裏側の裏面106に基板101より径の大きい粘着テープであるダイシングテープ107が貼着され、ダイシングテープ107の外周に環状のフレーム108が貼着される。すなわち、被加工物100は、環状のフレーム108の開口にダイシングテープ107を介して支持されている。
なお、被加工物100の基板101の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる任意の形状の基板101を被加工物100として用いることもできる。また、デバイス領域104及びデバイス領域104に形成される各デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。さらに、被加工物100の基板101の表面102に、機能層としてのLow-k層ともいう低誘電率絶縁体被膜を積層し、低誘電率絶縁体被膜が回路を形成する導電体膜と積層されてデバイス領域104の各デバイスを形成する構成としてもよい。
次に、実施形態1に係る加工装置1について説明する。加工装置1は、図1に示すように、被加工物100を保持する保持テーブル10と、分割予定ライン103に沿って被加工物100に加工溝200を形成する加工手段20と、保持テーブル10に保持された被加工物100を撮像する撮像手段30と、撮像手段30で撮像された被加工物100の撮像画像を表示するディスプレイ40と、これらの各手段を制御する制御手段50と、加工手段20による加工条件等の設定の入力を受け付ける入力手段60と、を備える。
保持テーブル10は、分割予定ライン103に沿った加工が可能な状態に表面102を露出させて、被加工物100の裏面106側を保持する。保持テーブル10は、具体的には、テーブル面においてダイシングテープ107を介して裏面106側を吸着保持するとともに、テーブル面の外周の把持部でフレーム108を把持して保持する。
加工装置1は、図1に示すように、加工送り手段であるX軸移動手段70と、をさらに備えている。X軸移動手段70は、加工送り方向であるX軸方向に概ね平行な方向にスライド可能なX軸移動テーブルと、Z軸方向に概ね平行な回転軸の回りに回転可能なθテーブルとを介して設けられた保持テーブル10を、X軸方向に移動する。X軸移動手段70には、保持テーブル10のX軸方向の位置を測定する不図示のX軸測定ユニットが設けられている。
加工手段20は、分割予定ライン103に沿って切削加工をすることで、被加工物100に加工溝200を形成する切削手段であり、加工手段20-1と、加工手段20-2と、を含む。加工装置1は、図1に示すように、加工手段20-1,20-2を2つ備えた、すなわち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
加工装置1は、図1に示すように、割り出し送り手段であるY軸移動手段80と、切り込み送り手段であるZ軸移動手段90と、をさらに備えている。Y軸移動手段80とZ軸移動手段90とは、図1に示すように、加工装置1の装置本体2にX軸移動手段70を跨いで設けられた門型の支持構造3に設けられている。
支持構造3は、装置本体2のX軸移動手段70を挟む両側にそれぞれ立設された柱部3-1,3-2と、柱部3-1,3-2の上端を連結する水平梁3-3と、で構成されている。本実施形態1では、加工装置1は、二対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90を有しており、一方の一対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90が、一方の柱部3-1及び水平梁3-3に渡って設けられ、他方の一対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90が、他方の柱部3-2及び水平梁3-3に渡って設けられている。
加工手段20-1は、切削ブレード21-1を含む。加工手段20-1は、一方の一対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90を介して、一方の柱部3-1に設けられている。一方の一対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90は、保持テーブル10に対する加工手段20-1の相対位置を、それぞれY軸方向及びZ軸方向に移動する。
加工手段20-2は、切削ブレード21-2を含む。加工手段20-2は、他方の一対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90を介して、他方の柱部3-2に設けられている。他方の一対のY軸移動手段80及びZ軸移動手段90は、保持テーブル10に対する加工手段20-2の相対位置を、それぞれY軸方向及びZ軸方向に移動する。
Y軸移動手段80及びZ軸移動手段90には、保持テーブル10に対する加工手段20-1及び加工手段20-2のそれぞれの相対位置を測定する不図示のY軸測定ユニット及びZ軸測定ユニットがそれぞれ設けられている。
以下、加工手段20-1に関する各部を加工手段20-2に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-1」を付して記し、加工手段20-2に関する各部を加工手段20-1に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-2」を付して記す。加工手段20-1と加工手段20-2とを区別する必要がない場合には、対応する各部を、双方に共通のものであるとして、符号の後ろに「-1」も「-2」も付さずに適宜省略して記す。
撮像手段30は、加工手段20に隣接する位置に設けられている。撮像手段30は、加工手段20を保持テーブル10に対して相対的にY軸方向に移動させる割り出し送りに伴って、加工手段20と共に割り出し送りされ、加工手段20を保持テーブル10に対して相対的にZ軸方向に移動させる切り込み送りに伴って、加工手段20と共に切り込み送りされる。
ディスプレイ40は、受信した情報に基づいて、文字、画像、動画等により表示する。ディスプレイ40は、制御手段50が実行する加工溝200の形成に関する各種電算処理の結果として得られる出力情報を出力するための機能、例えば、制御手段50から出力された出力情報を受信する機能、及び、出力情報に基づく出力画面等をディスプレイ40の表示部に表示する機能を有する。ディスプレイ40は、これらの様々な機能を、制御手段50を利用するためのソフトウェアまたはアプリケーションを実行したり、制御手段50を利用するためのインターネットブラウザ機能を実行したりすることで、実現する。
制御手段50は、各手段等、すなわち、保持テーブル10、加工手段20、撮像手段30、ディスプレイ40、入力手段60、X軸移動手段70、Y軸移動手段80及びZ軸移動手段90と電気的に接続されており、これらの各手段等の動作を制御する。
制御手段50は、加工装置1を制御するコンピュータシステムを含む情報処理装置である。制御手段50は、図示しない処理部と、記憶部と、情報通信インターフェイスと、を有する。
制御手段50の処理部は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、制御手段50内部の記憶装置である記憶部に記憶されている各種プログラム(加工溝形成プログラムの一例に相当)がRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御手段50の処理部は、例えば、コントローラであり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。制御手段50の処理部は、各装置からの情報の入力を受け付けたり、制御手段50と電気的に接続されているディスプレイ40に加工装置1に関する各種パラメータ、検出結果、及び算出結果等の情報の出力を行ったりする情報通信インターフェイスが接続されている。
制御手段50の処理部は、記憶部及び情報通信インターフェイスと、互いに情報通信可能に電気的に接続されており、これらの各構成要素をそれぞれ制御する制御部として機能する。すなわち、処理部は、記憶部とともに、制御部として機能して、加工溝形成を本実施形態1に係る加工装置1に実行させるものである。
制御手段50の記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部は、加工装置1の各手段等を制御するための制御信号の生成処理に必要な各種出力処理情報、及び、加工装置1の各手段等から得られる受信信号の解析処理に必要な各種入力処理情報を記憶する。また、記憶部は、加工装置1の各手段等から得られる受信信号を解析して得られる各種入力情報を、随時記憶する。
制御手段50の情報通信インターフェイスは、制御手段50の処理部と、制御手段50と電気的に接続されている各手段等とを、互いに情報通信可能に接続している。情報通信インターフェイスは、X軸移動手段70、Y軸移動手段80及びZ軸移動手段90がそれぞれ取得した位置情報を、X軸移動手段70、Y軸移動手段80及びZ軸移動手段90から受信して処理部に送信する。また、情報通信インターフェイスは、撮像手段30が撮像した被加工物100の撮像画像を、撮像手段30から受信して処理部に送信する。また、情報通信インターフェイスは、入力手段60から入力を受け付けた各種情報を入力手段60から受信して処理部に送信する。
制御手段50の情報通信インターフェイスは、制御手段50の処理部で生成される各情報、例えば、各手段等を制御するための制御信号を処理部から受信し、それぞれ、各手段等に向けて送信する。また、情報通信インターフェイスは、処理部で生成される加工溝形成に関する各種電算処理の結果として得られる出力情報を処理部から受信し、ディスプレイ40に向けて送信する。
入力手段60は、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、タブレット端末、ノート型またはデスクトップ型のPC(Personal Computer)、携帯情報端末であるPDA(Personal Digital Assistant)、及び、眼鏡型や時計型のウェアラブルデバイス(Wearable Device)等に例示される情報処理端末である。
入力手段60は、制御手段50が加工溝形成に関する各種電算処理を実行する際に必要となる各種情報を入力するための機能、例えば、制御手段50から送信される各種情報の入力を受け付けるための入力画面等を入力手段60の表示部に表示する機能、及び、入力を受け付けた各種情報を制御手段50に送信する機能を有する。入力手段60は、これらの様々な機能を、制御手段50を利用するためのソフトウェアまたはアプリケーションを実行したり、制御手段50を利用するためのインターネットブラウザ機能を実行したりすることで、実現する。
なお、加工装置1は、本実施形態1では、ディスプレイ40と入力手段60とを別々に設けたが、本発明はこれに限定されず、ディスプレイ40と入力手段60とが一体化された形態であってもよい。この場合、例えば、入力手段60の表示部がディスプレイ40として機能する。
前述した加工装置1は、以下のように被加工物100を加工する。加工装置1は、制御手段50の記憶部に加工内容情報が登録されると、保持テーブル10に被加工物100を吸引保持する。加工装置1は、保持テーブル10を撮像手段30の下方まで移動させた後、撮像手段30に保持テーブル10上の被加工物100を撮影させる。加工装置1は、撮像手段30が撮像して得た撮像画像300,301,302,303(図3から図6に示す)をディスプレイ40に表示する。加工装置1は、オペレータから加工動作の開始指示を受け付けると、被加工物100と切削ブレード21との位置合わせを行うアライメントを遂行し、保持テーブル10と加工手段20の切削ブレード21とを分割予定ライン103に沿って相対的に移動させながら分割予定ライン103に切削ブレード21を切り込ませて、分割予定ライン103に加工溝200を形成する。
加工装置1は、被加工物100の加工中に、予め定められた所定のタイミングで形成した加工溝200を撮像手段30で撮像して、加工溝200の位置及び幅が許容されるか否かを判定するカーフチェックを実行する。加工装置1は、切削ブレード21が全ての分割予定ライン103に切り込んで、全ての分割予定ライン103に加工溝200を形成した後、保持テーブル10の吸引保持を解除し、加工動作を終了する。
次に、本明細書は、制御手段50の記憶部に入力手段60から登録される加工内容情報を説明する。実施形態1において、加工内容情報は、少なくとも、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置と、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とが含まれる。
なお、実施形態1では、図2に示す例では、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置201は、分割予定ライン103の正規の位置に形成された加工溝200の幅方向の中央の位置であり、分割予定ライン103の幅方向の中央と一致している。また、加工溝200の正規の幅202は、切削ブレード21の厚みである。加工溝200についての幅202の許容値203は、加工上許容される加工溝200の最大の幅と正規の幅202との差である。加工溝200の位置ずれの許容値204は、加工上許容される加工溝200の幅方向の中央201-1の正規の位置201からのずれ量である。
制御手段50は、図1に示すように、加工溝幅検出部51と、加工位置検出部52と、許容値設定部53と、算出部54と、を有する。
許容値設定部53は、制御手段50が入力手段60を介して入力を受け付けて記憶部に加工溝200についての幅202の許容値203が記憶されることで、加工溝200についての幅202の許容値203を設定する。許容値設定部53は、制御手段50が入力手段60を介して入力を受け付けて記憶部に加工溝200の位置ずれの許容値204が記憶されることで、加工溝200の位置ずれの許容値204を設定する。
算出部54は、許容値設定部53が設定した幅202の許容値と位置ずれの許容値204とに基づいて、幅202の許容値と位置ずれの許容値204とを合算した最大許容値205を算出する。具体的には、算出部54は、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置201と位置ずれの許容値204とに基づいて、加工上許容される加工溝200の幅方向の中央の位置の範囲を算出する。図2に示す例では、加工上許容される加工溝200の幅方向の中央の位置の範囲は、中央201-1,201-1間の範囲である。
算出部54は、加工上許容される加工溝200の幅方向の中央の位置の範囲と、幅202の許容値とに基づいて、最大許容値205を算出する。具体的には、加工上許容される加工溝200の幅方向の中央の位置の範囲即ち中央201-1,201-1それぞれから加工上許容される加工溝200の最大の幅の1/2を合算した位置205-1,205-1を算出し、これらの位置205-1,205-1間を最大許容値205として算出する。即ち、最大許容値205とは、加工内容情報として登録された分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置と、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とから定められるカーフチェック時にエラーを出さずに分割予定ライン103上に加工溝200が形成される範囲を示している。
また、算出部54は、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200についての幅202の許容値203とから求められる加工上許容される加工溝200の最大の幅を算出する。
加工溝幅検出部51は、前述したカーフチェックの際に、撮像手段30が撮像して得た加工溝200の撮像画像をもとに加工溝200の幅を検出する。加工溝幅検出部51は、具体的には、まず、加工溝200が形成された領域の少なくとも一部を含む被加工物100の撮像画像を画像解析することで、加工溝200の一端側を形成する一端線と、加工溝の他端側を形成する他端線とを検出する。加工溝幅検出部51は、次に、検出した一端線と他端線とに基づいて、検出した一端線と他端線との間の距離を算出し、この算出した距離を、加工溝200の幅として処理する。
加工位置検出部52は、前述したカーフチェックの際に、加工溝200の撮像画像をもとに加工溝200の位置を検出する。加工位置検出部52は、加工溝幅検出部51と同様の画像解析をすることで、一端線と他端線とを検出する。なお、加工位置検出部52は、加工溝幅検出部51が検出した一端線と他端線との情報を転用してもよい。加工位置検出部52は、次に、これらの一端線と他端線とに基づいて、加工溝200の幅方向の中央を算出し、この算出した加工溝200の幅方向の中央の座標を、加工溝200の幅方向の位置として処理する。
被加工物100の加工中に加工手段20の切削ブレード21の回転軸方向の傾斜または摩耗等に起因して、加工手段20の切削ブレード21によって形成される加工溝200の幅が変化する場合がある。加工溝200についての幅202の許容値203は、この場合を想定して設定されるものである。カーフチェックの際に、制御手段50は、加工溝幅検出部51が算出した被加工物100に形成された加工溝200の幅が、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200についての幅202の許容値203とから求められる加工上許容される加工溝200の最大の幅を超えたと判定した場合、加工溝形成処理を一端中止にする等の措置を取ることができる。
また、被加工物100の加工中に、加工手段20の切削ブレード21の割り出し送り方向の位置のずれ等に起因して、加工手段20の切削ブレード21によって形成される加工溝200の幅方向の位置が変化する場合がある。加工溝200についての幅方向の位置ずれの許容値204は、この場合を想定して設定されるものである。カーフチェックの際に、制御手段50は、加工位置検出部52が算出した被加工物100に形成された加工溝200の幅方向の中央の位置が、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置201と位置ずれの許容値204とから求められる加工上許容される加工溝200の幅方向の中央の位置の範囲を超えたと判定した場合、加工溝形成処理を一端中止にする等の措置を取ることができる。
加工溝幅検出部51と、加工位置検出部52と、算出部54との機能は、処理部において加工溝形成プログラムを実行することにより、実現される。許容値設定部53の機能は、記憶部により実現される。
ディスプレイ40は、幅許容値表示部41と、位置許容値表示部42と、最大許容値表示部43と、を備える。なお、ディスプレイ40は、本実施形態1では、幅許容値表示部41、位置許容値表示部42及び最大許容値表示部43を備えた形態について説明するが、本発明はこれに限定されず、これらの3つの表示部機能の少なくともいずれか1つを備えていればよい。
実施形態1において、幅許容値表示部41は、加工前の分割予定ライン103を含む図3に一例を示す撮像画像300に制御手段50によって設定された加工溝200についての幅の許容値に基づくライン203-1,203-1を重ねて表示する。具体的には、幅許容値表示部41は、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置と、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200についての幅202の許容値203とが登録され、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置に設定された加工溝200の最大の幅を合算し、加工上許容されるライン203-1,203-1として表示する。
位置許容値表示部42は、加工前の分割予定ライン103を含む図4に一例を示す撮像画像301に、制御手段50によって設定された加工溝200についての幅方向の位置ずれの許容値204に基づくライン201-1,201-1(前述した中央201-1,201-1と同一である)を重ねて表示する。具体的には、位置許容値表示部42は、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置と、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200の位置ずれの許容値204とが登録され、加工上許容される加工溝200の幅方向の中央の位置の範囲をライン201-1,201-1として表示する。
最大許容値表示部43は、加工前の分割予定ライン103を含む図5および図6に例を示す撮像画像302,303に、制御手段50によって算出された加工溝200についての最大許容値205に基づくライン205-1,205-1(前述した位置205-1,205-1と同一である)を重ねて表示する。具体的には、最大許容値表示部43は、分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置と、加工溝200の正規の幅202と、加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とが登録され、算出部54が最大許容値205を算出すると、最大許容値205の幅方向の両縁をライン205-1,205-1として表示する。
幅許容値表示部41、位置許容値表示部42及び最大許容値表示部43は、いずれも、表示させるライン201-1,203-1,205-1を、撮像画像300,301,302,303内の各ラインに対して区別可能な形で表示し、例えば、色彩や点滅等により強調した強調表示をすることが好ましい。幅許容値表示部41、位置許容値表示部42及び最大許容値表示部43は、いずれも、ディスプレイ40が上記したようなソフトウェアまたはアプリケーション等を実行することにより、実現される機能部である。
ディスプレイ40は、さらに、幅許容値表示部41、位置許容値表示部42及び最大許容値表示部43による各機能のオン及びオフを切り替える機能を有していてもよい。すなわち、ディスプレイ40は、加工前の分割予定ライン103を含む撮像画像300,301,302,303に、幅の許容値のライン203-1、位置ずれの許容値のライン201-1及び最大許容値205のライン205-1を、オペレータの希望等に合わせて、例えば後述する入力手段60からの入力の受付に従って、表示させたり表示を消したりすることができる。なお、ディスプレイ40に関するこれらの切り替え機能は、制御手段50の制御に応じて実行するものとしてもよい。
このように、実施形態1に係る加工装置1は、オペレータが、加工内容情報を登録し後でかつ加工動作の開始前に、分割予定ライン103の撮像画像300,301,302,303と、加工溝形成に関する各許容値に基づくライン203-1,201-1,205-1とを同時に視認可能に重ねて表示することができるので、加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とが妥当な値か否かを容易に判別することができるという作用効果を奏する。
例えば、図5に示す撮像画像302のように、最大許容値205のライン205-1が分割予定ライン103内に位置しているか、図6に示す撮像画像303のように、最大許容値205のライン205-1がデバイス領域104内に位置しているかを確認することで、オペレータは、切削ブレード21がデバイス領域104に侵入しない加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とを容易に設定できるという作用効果を奏する。
また、加工装置1は、図5に示された撮像画像302がディスプレイ40に表示されると、最大許容値205のライン205-1が、分割予定ライン103内に収まっている。このため、加工装置1は、オペレータが、この撮像画像302を見て、図5に示されたライン205-1,205-1が表示されるときの加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204の設定下で加工溝200を形成しても、加工手段20の切削ブレード21が誤ってデバイス領域104を切削加工してしまう可能性が低いことがわかり、面倒な作業を要しなくても、許容値の設定が適切な状態であることを認識することができる。
また、加工装置1は、図6に示された撮像画像303がディスプレイ40に表示されると、最大許容値205のライン205-1が、デバイス領域104内に侵入している。このため、加工装置1は、オペレータが、この撮像画像303を見て、図6に示されたライン205-1,205-1が表示されるときの加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204の設定下で加工溝200の形成を実行した場合、加工手段20の切削ブレード21が誤ってデバイス領域104を切削加工してしまう可能性があることがわかり、面倒な作業を要しなくても、許容値の設定が不適切な状態であることを認識することができる。
また、加工装置1は、撮像画像300にライン203-1に表示でき、撮像画像301にライン201-1を表示できるので、加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とがそれぞれ妥当な値か否かを容易に判別することができるという作用効果を奏する。
〔実施形態2〕
図7は、実施形態2に係る加工装置による加工溝の幅の許容値のラインの表示の一例を示す撮像画像である。図8は、図7の加工装置による加工溝の位置の許容値のラインの表示の一例を示す撮像画像である。図9は、図7の加工装置による最大許容値のラインの表示の一例を示す撮像画像である。図10は、図7の加工装置による最大許容値のラインの表示の別の一例を示す撮像画像である。なお、図7、図8、図9及び図10は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係る加工装置1は、制御手段50の記憶部に加工内容情報のうちの少なくとも、加工溝200を形成する加工における加工内容情報の分割予定ライン103の幅方向における加工溝200の正規の位置と、加工溝200の正規の幅202とが登録されると、保持テーブル10に被加工物100を吸引保持する。加工装置1は、保持テーブル10を撮像手段30の下方まで移動させた後、撮像手段30に保持テーブル10上の被加工物100を撮影させる。加工装置1は、被加工物100と切削ブレード21との位置合わせを行うアライメントを遂行し、保持テーブル10と加工手段20の切削ブレード21とを分割予定ライン103に沿って相対的に移動させながら分割予定ライン103に切削ブレード21を切り込ませて、まず、一つの分割予定ライン103に加工溝200を形成する。
加工装置1は、一つの分割予定ライン103に加工溝200を形成した後、撮像手段30に保持テーブル10上の被加工物100に形成された加工溝200を撮影させる。加工装置1は、撮像手段30が撮像して得た撮像画像300,301,302,303(図7、図8、図9及び図10に示す)をディスプレイ40に表示する。実施形態2では、幅許容値表示部41は、一つの分割予定ライン103の加工後の加工溝200を含む図7に一例を示す撮像画像300に、制御手段50によって設定された加工溝200についての幅の許容値に基づくライン203-1,203-1を重ねて表示する。
また、実施形態2では、位置許容値表示部42は、一つの分割予定ライン103の加工後の加工溝200を含む図8に一例を示す撮像画像301に、制御手段50によって設定された加工溝200についての幅方向の位置ずれの許容値204に基づくライン201-1,201-1を重ねて表示する。実施形態2では、最大許容値表示部43は、一つの分割予定ライン103の加工後の加工溝200を含む図9および図10に例を示す撮像画像302,303に、制御手段50によって算出された加工溝200についての最大許容値205に基づくライン205-1,205-1を重ねて表示する。
実施形態2では、撮像画像300,301,302,303を確認して、オペレータが加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とを加工溝200についての最大許容値205に基づくライン205-1,205-1が分割予定ライン103上に留まる妥当な値に調整した後、加工装置1は、オペレータから加工動作の開始指示を受け付けると、被加工物100の加工動作を再開する。
このように、実施形態2に係る加工装置1は、オペレータが、一つの分割予定ライン103に加工溝200を形成した後に、加工溝200を含む撮像画像300,301,302,303と、加工溝200の形成に関する各許容値に基づくライン203-1,201-1,205-1とを同時に視認可能に重ねて表示することができるので、加工溝200を形成する加工における加工内容情報の加工溝200についての幅202の許容値203と、加工溝200の位置ずれの許容値204とが妥当な値か否かを容易に判別することができるという作用効果を奏する。
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。その他、上記実施形態に係る構造等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、実施形態2に係る加工装置1は、一つの分割予定ライン103に加工溝200を形成した後に、加工溝200を含む撮像画像300,301,302,303と、加工溝形成に関する各許容値に基づくライン203-1,201-1,205-1とを同時に視認可能に重ねて表示したが、本発明では、被加工物100の加工中に、任意のタイミングで、撮像手段30で加工溝200を撮像して、撮像画像300,301,302,303と、ライン203-1,201-1,205-1とを同時に視認可能に重ねて表示しても良い。
また、本発明では、加工装置1は、実施形態1に示すように、加工前の分割予定ライン103を撮像して撮像画像300,301,302,303と、ライン203-1,201-1,205-1とを同時に視認可能に重ねて表示し、被加工物100の加工中に、任意のタイミングで、撮像手段30で加工溝200を撮像して、撮像画像300,301,302,303とライン203-1,201-1,205-1とを同時に視認可能に重ねて表示しても良い。
なお、実施形態1及び2における加工溝200は、加工溝の両端から突出するチッピングと呼ばれる欠けを含む幅でもよいし、チッピングを含まなくてもよい。チッピングを含まない場合、チッピングの許容値は別途チッピング許容値として設定し、前述の幅202の許容値203はチッピングを除いた状態での許容値を設定する。チッピング許容値を設定した場合、最大許容値205は、チッピング許容値と加工溝200の幅202の許容値203と位置ずれの許容値204との最大を合算した値になる。