JP7230595B2 - 光化学電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、人工光合成などに使用可能な光化学電極の製造方法に関する。
近年、太陽光エネルギーを利用する技術として、人工光合成技術、光触媒技術などが盛んに開発されている。
人工光合成技術においては、例えば、明反応では水から酸素とプロトンを生成し、暗反応では二酸化炭素とプロトンから有機物を合成する。
光触媒技術では、例えば、汚染物質を分解する。
これらの技術には、光を吸収して励起する光励起材料が用いられている。光励起材料は、価電子帯と伝導帯との間に禁制帯を持つ半導体である。光励起材料においては、太陽光を吸収して価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯には正孔(ホール)が生じる。生成した励起電子又は正孔が、水や汚染物質を還元又は酸化する。
ここで、太陽光エネルギーの利用率を高める、即ち高い光電流を得るためには、太陽光スペクトルを短波長からできるだけ長波長まで吸収する光励起材料を開発する必要があり、そのためには、バンドギャップのエネルギー幅を狭くしなければならない。
しかし、バンドギャップのエネルギー幅は、材料組成に依存するところがあり、光励起材料単独で高い光電流を得ることは、容易ではない。
そこで、光励起材料を用いた光化学電極の光電流を向上させる方法として、導電性基板の上に酸窒化物の材料を形成した光化学電極に対して水素ガス雰囲気下で加熱を行う方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、水素ガスは酸素と反応して爆発する危険があり、水素ガスを用いずに加熱処理できることが望ましい。
したがって、光電流が向上した光化学電極を水素ガスを用いずに製造する方法が求められている。
CrystEngComm, 2017,19, 5532-5541
本発明は、光電流が向上した光化学電極を水素ガスを用いずに製造することができる光化学電極の製造方法を提供することを目的とする。
一つの態様では、光化学電極の製造方法は、
導電体上に、光を吸収して励起する光励起材料を有する光励起層を形成し、
前記光励起層上に、前記光励起材料を還元可能な還元層を形成し、
前記光励起層及び前記還元層を加熱することを含む。
一つの側面では、光電流が向上した光化学電極を水素ガスを用いずに製造することができる光化学電極の製造方法を提供できる。
図1Aは、開示の光化学電極の製造方法の一例を説明するための図である(その1)。 図1Bは、開示の光化学電極の製造方法の一例を説明するための図である(その2)。 図1Cは、開示の光化学電極の製造方法の一例を説明するための図である(その3)。 図2Aは、開示の光化学電極の製造方法の他の一例を説明するための図である(その1)。 図2Bは、開示の光化学電極の製造方法の他の一例を説明するための図である(その2)。 図2Cは、開示の光化学電極の製造方法の他の一例を説明するための図である(その3)。 図3は、エアロゾルデポジション法による成膜に用いられる成膜装置の構造図である。 図4は、開示の光電気化学反応装置の一例の概略図である。
(光化学電極の製造方法)
本発明の光化学電極の製造方法は、導電体上に、光を吸収して励起する光励起材料を有する光励起層を形成し、前記光励起層上に、前記光励起材料を還元可能な還元層を形成し、前記光励起層及び前記還元層を加熱することを含む。
前記光化学電極の製造方法は、更に必要に応じて、導電体形成工程などのその他の工程を含む。
前記光化学電極は、導電体と、光励起層とを少なくとも有し、好ましくは助触媒層を有し、更に必要に応じて、支持体などのその他の部材を有する。
前記光励起層は、光を吸収して励起する光励起材料を含有する。
前記光励起材料は、構成元素として酸素を有する。
前記導電体は、前記支持体を兼ねていてもよい。
本発明者らは、光電流が向上した光化学電極を水素ガスを用いずに製造するために、鋭意検討を行った。そのところ、前記光励起層上に、前記光励起材料を還元可能な還元層を配した状態で、前記光励起層及び前記還元層を加熱することで、光電流が向上した光化学電極を水素ガスを用いずに製造できることを見出し、開示の技術の完成に至った。
なお、還元層を用いることで、水素ガスを用いる必要がなくなる。
開示の技術では、前記光励起層及び前記還元層を加熱することで、前記還元層の還元作用により、光励起材料から酸素が脱離する。前記光励起材料は、酸素が脱離して酸素欠陥を生じる。このことが、光電流の向上に寄与していると考えられる。
前記加熱の温度としては、前記還元層による前記光励起材料の還元を誘発できる温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、400℃~700℃であってもよいし、500℃~650℃であってもよい。
前記加熱の時間としては、前記還元層による前記光励起材料の還元を十分に行うことができる時間であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5分間~10時間であってもよいし、10分間~1時間であってもよい。
前記加熱は、真空条件下又は不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
前記真空条件の真空度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、僅かにガスが含まれていてもよい。ただし、その場合、含有されるガスが前記還元層による前記光励起材料の還元を阻害しないことが好ましい。
前記真空条件の真空度としては、例えば、大気圧に対して-30kPa以下とすることが好ましく、-100kPa以下とすることがより好ましい。
また、前記不活性ガス雰囲気における不活性ガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
前記不活性ガス雰囲気においても、前記不活性ガス以外のガスが僅かに含まれていてもよい。ただし、その場合、含有されるガスが、前記還元層による前記光励起材料の還元を阻害しないことが好ましい。
開示の技術では、前記光励起層上に、助触媒を含有する助触媒層を有する光化学電極を製造することが好ましい。その場合、前記還元層が、前記加熱により酸化され、前記光励起層により生じる光電流を増加させる助触媒層に転化することが好ましい。
<還元層>
前記還元層は、光励起材料を還元可能な層である。
前記還元層は、光励起材料を還元可能な還元剤を含有することが好ましい。
前記還元剤としては、前記光励起層及び前記還元層の加熱により、前記光励起材料を還元することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、貴金属などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、コバルト、ニッケル、イリジウム、ルテニウムなどが挙げられる。
ここで、前記還元剤としては、酸化されて前記助触媒となる材料として、例えば、コバルト、ニッケル、イリジウム、ルテニウムなどが挙げられる。一方、前記還元剤としては、酸化されても前記助触媒にならない材料として、例えば、チタンなどが挙げられる。
前記還元層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3nm~3μmが好ましく、10nm~300nmがより好ましい。
前記平均厚みは、前記還元層の厚みを10点測定した際の算術平均値である。
前記還元層の厚みは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により測定できる。
前記還元層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法などが挙げられる。前記蒸着法としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法などが挙げられる。前記物理蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
また、前記還元層は、還元剤の粒子をエアロゾルデポジション法により塗布することで形成してもよい。前記エアロゾルデポジション法については、後述する。
<導電体>
前記導電体としては、導電性を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記導電体の材質としては、例えば、金属、合金、金属酸化物などが挙げられる。
前記金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)などが挙げられる。
前記合金としては、例えば、前記金属の例示で挙げられた2以上の金属種からなる合金などが挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、酸化インジウム(In)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ、酸化亜鉛-酸化スズ系、酸化インジウム-酸化スズ系、酸化亜鉛-酸化インジウム-酸化マグネシウム系などが挙げられる。
ここで、導電性とは、例えば、体積抵抗率で10Ωcm以下の範囲を意味する。
前記導電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
前記導電体の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記導電体としては、例えば、蒸着膜などが挙げられる。前記蒸着膜は、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法などにより形成される。前記物理蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
<光励起層>
前記光励起層は、光励起材料を含有する。
前記光励起層は、通常、前記導電体に接するように配される。
前記光励起層は、光励起材料自体で構成されていることが好ましい。
<<光励起材料>>
前記光励起材料は、光を吸収して励起する材料である。
前記光励起材料は、構成元素として酸素を有する。
前記光励起材料としては、例えば、紫外光型光励起材料、可視光型光励起材料などが挙げられる。
-紫外光型光励起材料-
前記紫外光型光励起材料としては、紫外線以下の波長の光を吸収して励起する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外光応答型光触媒などが挙げられる。
ここで、紫外線以下の波長とは、例えば、400nm以下の波長が挙げられる。
前記紫外光応答型光触媒は、光の利用効率に優れる点から、バンドギャップが3.1eV~3.6eVであることが好ましい。このバンドギャップは、光の波長として344nm~400nmに相当する。
バンドギャップとは、バンド構造における電子に占有された最も高いエネルギーバンド(価電子帯)の頂上から、最も低い空のバンド(伝導帯)の底までの間のエネルギーの差を指す。
前記紫外光応答型光触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TiO(酸化チタン)(バンドギャップ;ルチル3.0eV、アナタ-ゼ3.2eV)、SrTiO(バンドギャップ3.2eV)、ZnO(バンドギャップ3.4eV)、Ti-CaHAP(チタンカルシウムハイドロキシアパタイト)(バンドギャップ3.6eV)、Ti-SrHAP(チタンストロンチウムハイドロキシアパタイト)(バンドギャップ3.6eV)などが挙げられる。
-可視光型光励起材料-
前記可視光型光励起材料としては、可視光線以下の波長の光を吸収して励起する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光応答型光触媒などが挙げられる。
ここで、可視光線以下の波長とは、例えば、800nm以下の波長が挙げられる。
前記可視光型光励起材料は、前記紫外光型光励起材料とは異なる光吸収特性を有する。言い換えれば、前記可視光型光励起材料は、前記紫外光型光励起材料とは異なるバンドギャップを有する。
前記可視光応答型光触媒は、光の利用効率に優れる点から、バンドギャップが2.5eV~3.0eVであることが好ましい。このバンドギャップは、光の波長として413nm~496nmに相当する。
前記可視光応答型光触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、WO(酸化タングステン)(バンドギャップ2.8eV)、BiVO(バナジン酸ビスマス)(バンドギャップ2.5eV)、AgPO(バンドギャップ2.5eV)、TiAg-CaHAP(チタン銀カルシウムハイドロキシアパタイト)(バンドギャップ2.8eV)、TiAg-SrHAP(チタン銀ストロンチウムハイドロキシアパタイト)(バンドギャップ2.8eV)、窒化ガリウム-酸化亜鉛固溶体(Ga1-xZn)(N1-x)などが挙げられる。
前記光励起材料としては、酸窒化物が、酸化物よりバンドギャップが小さくなる点から好ましい。
前記酸窒化物としては、例えば、BaNbON、BaTaON、SrNbON、SrTaON、CaNbON、CaTaON、LaTiON、LaZrON、PrTaON、TaON、NbON、GaN-ZnO系などが挙げられる。
また、前記光励起材料としては、酸窒化物の一種である以下のMN-ZnO固溶体が好ましい。
-MN-ZnO固溶体-
前記MN-ZnO固溶体は、MN(Mは、Ga、Al、及びInの少なくともいずれかである。)とZnOとの固溶体である。
前記MN-ZnO固溶体における前記ZnOの含有量は、20モル%以上70モル%以下が好ましく、25モル%以上60モル%以下がより好ましい。前記ZnOの含有量が、20モル%未満、又は70モル%超であると、バンドギャップエネルギーが2.20eV以下を達成することが困難になる。
前記MN-ZnO固溶体のバンドギャップエネルギーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.20eV以下が好ましく、1.90eV以上2.20eV以下がより好ましく、1.90eV以上2.10eV以下が更により好ましく、1.95eV以上2.00eV以下が特に好ましい。
なお、Ga、Al、及びInは、第13族元素であるという共通点を有する。
前記MN-ZnO固溶体は、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
1.00-x1.00-xZn ・・・一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、xは、0.20≦x≦0.70を満たし、0.20<x≦0.70が好ましく、0.25≦x≦0.60がより好ましい。
GaN-ZnO系材料は六方晶ウルツ鉱構造結晶の固溶体である。前記固溶体は、Ga-Zn、及びN-Oが置換することで連続的に組成を変化することができる。GaN-ZnO固溶体は、GaN単体材料、及びZnO単体材料よりバンドギャップが小さく、GaN中へのZnOの固溶量が増すにつれて、吸収波長端をより長波長側に広げることが可能となることが知られている。
本発明者らは、これまでに、Ga1-x1-xZn固溶体においてはxが0.5程度で最も禁制帯幅が狭くなることを見出している。このときの禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)は約2.5eVである。
太陽光スペクトルで光子エネルギー2.5eV以上の輻射は総エネルギー輻射の20%に過ぎない。そこでGa1-x1-xZnの禁制帯幅をさらに狭め、太陽光の利用効率を向上させることを目的に、本発明者らは検討を重ねた。
本発明者らは、検討を重ねた結果、本発明者らが開発したナノパーティクルデポジション(NPD)を、MN(Mは、Ga、Al、及びInの少なくともいずれかである。)とZnOとの固溶体の成膜に適用することにより、バンドギャップエネルギーが非常に小さい光励起材料を見出した。
なお、発明者らが先に開発したナノパーティクルデポジション(NPD)は、以下の3つの文献1~文献3において紹介されている方法である。前記NPDは、樹脂成分を用いることなく、結晶性の高いナノセラミック粒子構造体の膜を低温で形成できる手法である。
文献1: Imanaka, Y., Amada, H. & Kumasaka, F. Dielectric and insulating properties of embedded capacitor for flexible electronics prepared by aerosol-type nanoparticle deposition. Jpn. J. Appl. Phys. 52, 05DA02 (2013).
文献2: Imanaka, Y. et al., Nanoparticulated dense and stress-free ceramic thick film for material integration. Adv. Eng. Mater. 15, 1129-1135 (2013).
文献3: Imanaka, Y., Amada, H., Kumasaka, F., Awaji, N. & Kumamoto, A., Nanoparticulate BaTiO film produced by aerosol-type nanoparticle deposition. J. Nanopart. Res. 18, 102 (2016).
本明細書中に、これら文献1~文献3を参照することにより取り込む。
なお、以下の堂面らの報告においては、バンドギャップエネルギーは、2.5eVであり、以下のJensenらの報告においても、バンドギャップエネルギーは、2.29eVであり、バンドギャップエネルギーが2.20eV以下のM1.00-x1.00-xZn固溶体、及びその固溶体を得る方法は知られていない。
堂面らの報告:
Hashiguchi H. et al. Photoresponse of GaN:ZnO Electrode on FTO under Visible Light Irradiation. Bull. Chem. Soc. Jpn. 82, 401-407 (2009)
Jensenらの報告:
Jensen, L. L., Muckerman, J. T. & Newton, M. D. First-Principles Studies of the Structural and Electronic Properties of the (Ga1-xZnx)(N1-xOx) Solid Solution Photocatalyst. J. Phys. Chem. C 112, 3439-3446 (2008))
前記光励起材料の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2nm~5μmが好ましい。
前記平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により100個の粒子を観察した際の算術平均値として求められる。または、前記平均粒径は、例えば、粒度分布計(例えば、島津製作所製のレーザ回折式粒子径分布測定装置)を用いて求めることもできる。
前記光励起層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5μm~5μmなどが挙げられる。
前記平均厚みは、前記光励起層の厚みを10点測定した際の算術平均値である。
前記光励起層の厚みは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により測定できる。
<助触媒層>
前記助触媒層は、前記光励起層により生じる光電流を増加させる層である。
前記助触媒層は、助触媒を含有することが好ましい。
前記助触媒としては、前記光励起材料により生じる光電流を増加させる触媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記助触媒としては、例えば、金属酸化物などが挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、NiO、RuO、Cr、IrO、PtO、RuO、CoO、Co、CoOx(さまざまな酸化数のコバルトを含むコバルト酸化物混合物)、MnO、Mn、MnOx(さまざまな酸化数のマンガンを含むマンガン酸化物混合物)、SrCoO、LaNiO、LaCoOなどが挙げられる。
前記助触媒としては、光の利用効率をより向上できる点から、コバルトを含有する酸化物が好ましい。
前記コバルトを含有する酸化物としては、例えば、酸化コバルト、LaCoO、La(Co1-xNi)O(0<x<1)、Ba0.5Sr0.5Co0.8Fe0.23-δ(δは酸素欠損を表す。)、Ba0.5Sr0.5Co0.5Fe0.53-δ(δは酸素欠損を表す。)、Ba0.5Sr0.5Co0.2Fe0.83-δ(δは酸素欠損を表す。)、La0.7Sr0.3CoOなどが挙げられる。
前記助触媒層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3nm~3μmが好ましく、10nm~300nmがより好ましい。前記平均厚みが3nm未満であると、前記助触媒の効果が不十分となることがあり、前記3μmを超えると、前記光励起層への光の到達率が低下する結果、光の利用効率が低下することがある。
前記平均厚みは、前記助触媒層の厚みを10点測定した際の算術平均値である。
前記助触媒層の厚みは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により測定できる。
前記光励起材料と、前記助触媒との組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光励起材料が酸窒化物であり、前記助触媒がコバルトを含有する酸化物であるとが、得られる光電流がより多くなる点で好ましい。
<支持体>
前記支持体は、前記導電体、及び前記光励起層を支持する。
前記支持体は、例えば、前記導電体に接して配される。
前記支持体の材質としては、例えば、ガラス、有機樹脂等の絶縁体などが挙げられる。
<導電体形成工程>
前記導電体形成工程としては、前記支持体上に前記導電体を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法などが挙げられる。
前記蒸着法としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法などが挙げられる。前記物理蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
<光励起層形成工程>
前記光励起層形成工程としては、前記導電体上に、前記光励起層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光励起材料の粒子をエアロゾルデポジショ法により塗布することで形成すること(以下、「NPD成膜」と称することがある)が好ましい。
<<NPD成膜>>
エアロゾルデポジション法は、ナノパーティクルデポジション(NPD)と呼ばれることもある。
ナノパーティクルデポジション(NPD)は、前記文献1~文献3においても紹介された方法である。
ナノパーティクルデポジション(NPD)は、原料粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから基材に向けて噴射して、前記エアロゾルを前記基材表面に衝突させ、前記原料粒子からなる膜を前記基材上に形成させる方法である。
前記NPDは、更に詳細に説明すると、以下のようにして無機材料からなる膜を作製する方法である。
真空ポンプで継続的に減圧された系内で、ガス気流とともに無機材料である原料粒子がエアロゾルを形成して搬送される。搬送された前記原料粒子は、ノズル内で前記原料粒子同士が衝突しながら破砕される。前記原料粒子においては、前記原料粒子内部では結晶性を維持しつつ、前記原料粒子表面の結晶構造の一部が歪み、各原料粒子の表面エネルギー状態が高くなる。破砕された前記原料粒子が基板上に堆積する際に、高エネルギー状態にある不安定な原料粒子表面部が安定化する作用(凝集力)で前記原料粒子同士が再結合する。その結果、緻密なナノ粒子の集合構造体の膜が基板上に室温レベルの温度下で得られる。また、膜をアニールする場合も、膜の内部はナノ粒子で構成されているために、最適焼結を500℃以上、低くすることができる。
GaN-ZnO系材料を用いた前記NPD成膜において、例えば、粒子搬送流速を高くすることにより、得られる膜のバンドギャップエネルギーを、原料であるGaN-ZnO系材料のバンドギャップエネルギーよりも大幅に小さくすることができる。
なお、原料粒子であるGaN-ZnO系材料(Ga1.00-x1.00-xZn固溶体)は、例えば、酸化物原料(Ga、ZnO)をアンモニアガス気流中で高温下(例えば、1123K、約850℃)で反応させる一般的な固相反応により得ることができる。しかしながら、上記方法で原料粒子を作製した場合に、以下のような現象が起こることを本発明者らは知見した。GaとZnOとが反応して固溶体を形成する際に、ZnGaが副反応生成物として形成されやすい。一度ZnGaが形成されると、ZnGaはアンモニア気流中で反応させてもGaN-ZnO系に反応が進行しない。
そこで、本発明者らは、光励起材料でもある前記原料粒子〔GaN-ZnO系材料(Ga1.00-x1.00-xZn固溶体)〕の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、GaNとZnOとの混合物を反応させることにより、ZnGaなどの不純物の生成を防いで、GaNとZnOとの固溶体が得られることを見出している。
ここで、前記エアロゾルデポジション法の一例を図を用いて説明する。
図3は、エアロゾルデポジション法による成膜に用いられる成膜装置の一例の構造図である。
エアロゾルデポジション成膜装置は、エアロゾル室910及び成膜チャンバー920を有している。エアロゾル室910には成膜される材料の微粒子911が入れられており、He、N、Ar等のキャリアガスが入れられたガスボンベ930が配管960を介して接続されている。また、エアロゾル室910と成膜チャンバー920とは、配管941により接続されており、成膜チャンバー920内における配管941の端部にはノズル921が設けられている。成膜チャンバー920内においては、ノズル921の開口部と対向する側に、ステージ922が設けられており、ステージ922には、成膜がなされる基板923が設置されている。この成膜チャンバー920内は真空に排気可能であり、配管942を介し、メカニカルブースターポンプ943及び真空ポンプ944が接続されている。尚、エアロゾル室910内を排気することができるように、エアロゾル室910は、配管945及び不図示のバルブ等を介し配管942と接続されている。また、エアロゾル室910が設置される領域には、エアロゾル室910において、成膜される材料の微粒子が固まる、もしくは、成膜中に粒子が偏ることを防ぐため、エアロゾル室910を振動させるための振動器950が設けられている。
この成膜装置において、エアロゾルデポジション法による成膜を行う際には、成膜チャンバー920内をメカニカルブースターポンプ943及び真空ポンプ944により真空排気した後、ガスボンベ930よりキャリアガスをエアロゾル室910内に供給する。エアロゾル室910内では、供給されたキャリアガスにより成膜される材料の微粒子が巻き上げられ、成膜される材料の微粒子がキャリアガスとともに配管941を介し、成膜チャンバー920内のノズル921に運ばれる。この後、ノズル921から、キャリアガスとともに成膜される材料の微粒子が基板923に向けて噴出され、基板923の表面に向けてノズル921より噴出された微粒子が堆積することにより成膜が行われる。
ここで、図を用いて、開示の技術の光化学電極の製造方法の一例を説明する。
図1A~図1Cは、光化学電極の製造方法の一例を説明するための図である。
まず、図1Aに示すように、支持体1上に、導電体2、及び光励起層3が形成された積層体を用意する。光励起層3は、例えば、エアロゾルデポジション法により形成することができる。
続いて、光励起層3上に、還元層4を形成する(図1B)。還元層4は、例えば、エアロゾルデポジション法により形成することができる。
続いて、図1Bに示す積層体を、真空条件下又は不活性ガス雰囲気下で加熱する。加熱することで、還元層4に含有された還元剤が、光励起層3に含有された光励起材料を還元する。そして、光励起材料においては、酸素の脱離により、酸素欠陥を生じる。その結果、光電流が向上する。
続いて、不要となった還元層4を除去して、支持体1上に、導電体2、及び光励起層3がこの順で形成された光化学電極を得る(図1C)。
次に、図を用いて、開示の技術の光化学電極の製造方法の他の一例を説明する。
図2A~図2Cは、光化学電極の製造方法の一例を説明するための図である。
まず、図2Aに示すように、支持体1上に、導電体2、及び光励起層3が形成された積層体を用意する。光励起層3は、例えば、エアロゾルデポジション法により形成することができる。
続いて、光励起層3上に、還元剤(コバルト)からなる還元層4を形成する(図2B)。還元層4は、例えば、エアロゾルデポジション法により形成することができる。
続いて、図2Bに示す積層体を、真空条件下又は不活性ガス雰囲気下で加熱する。加熱することで、還元層4に含有された還元剤(コバルト)が、光励起層3に含有された光励起材料を還元する。そして、光励起材料においては、酸素の脱離により、酸素欠陥を生じる。その結果、光電流が向上する。他方、還元剤(コバルト)は酸化され、助触媒である酸化コバルトに転化する。なお、この転化は、還元層4の全ての還元剤(コバルト)で生じる必要はない。還元剤(コバルト)が酸化され、助触媒である酸化コバルトに転化した結果、還元層4が助触媒層5に変化する(図2C)。
その結果、支持体1上に、導電体2、光励起層3、及び助触媒層4がこの順で形成された光化学電極が得られる(図2C)。
(光電気化学反応装置)
開示の技術に関する光電気化学反応装置は、対向電極と、光化学電極と、透光性容器とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記対向電極は、陰極である。
前記光化学電極は、開示の前記光化学電極の製造方法により得られる。前記光化学電極は、陽極である。
前記光化学電極は、前記対向電極に導線を介して接続される。
前記透光性容器は、前記対向電極及び前記光化学電極を水中に浸すための容器である。前記透光性容器の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチック、ガラス、石英などが挙げられる。
図4を用いて、前記光電気化学反応装置の一例を説明する。
前記光電気化学反応装置は、陽極である光化学電極10と、陰極である対向電極15と、光化学電極10及び対向電極15を接続する導線16と、光化学電極10及び対向電極15を収容する透光性容器17とを有する。透光性容器17には、水溶液18が入っており、光化学電極10及び対向電極15は水溶液18に浸っている。透光性容器17にはプロトン交換膜14が配されている。
対向電極15には、例えば、水素の発生に高い触媒活性を示すPt金属電極が用いられる。
水の光分解反応を生じさせる照射光19は、例えば、紫外光を含む混合光である。
そして、光化学電極10に照射光19が照射されると、光化学電極10の光励起層13において、価電子帯の電子が励起されて伝導帯に遷移するとともに、価電子帯に正孔が形成される。照射光19によって励起された電子は導電体12方向へ、正孔は表面に向かう。そして、光励起層13の表面では、OHイオンが水中に存在すると、正孔によって表面で酸化反応が起きて酸素Oが生成する。一方、電子は、導線16で接続された対向電極15に移動し、対向電極15表面では、Hイオンが水中に存在すると、電子によって還元反応が起きて水素Hが生成する。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
<光電流測定>
光電流の測定は、以下の方法で行った。
ソーラートロン社製のポテンショスタット(SB1280B)を用いて、3極の電気化学セルを作製した。
作用極には、作製した光化学電極(面積0.75cm)を用い、対極にはPt箔を用い、参照電極にはAg/AgCl(飽和KCl水溶液)電極を用いた。
電解液には0.5M NaSO水溶液(pH=5.7~6.5)を用い、事前に窒素ガスを30分間通気して溶存酸素を脱気した。
電位の値は、pH=0における標準水素電極基準の値(V vs.NHE)に補正し、その値を表記した。
光電流密度-電位曲線を、電位を(標準水素電極基準に換算後)-0.4V~1.6Vまで掃引し、AM1.5Gの疑似太陽光(100mW/cm)を光励起層における導電体側と反対側から間欠照射しながら測定した。
(製造例1)
<SrNbONの製造>
SrCOとNbとを、SrCO:Nb=1:1(モル比)で混合し、アンモニアガス気流中、1173K(約900℃)で100h時間反応させて、純度99.9%以上、かつ平均粒径1μmのSrNbON粉末を得た。
(比較例1)
<光励起材料>
原料粉末として製造例1で製造した平均粒径1μmのSrNbON粉末を用いた。
<光化学電極の作製>
使用したナノパーティクルデポジション(NPD)装置は、エアロゾル発生システム、デポジションチャンバー、及び真空システムから構成される。このデポジション装置に熱源は配されていない。
製造例1で製造したSrNbON粉末を、前記エアロゾル発生システムの容器内にセットし、10Hzで振動させた。それから、ガス圧0.2MPa、かつ純度99.9%のヘリウムを前記容器に導入し、エアロゾルを発生させた。メカニカルブースター及び真空ポンプを用い、前記デポジションチャンバー内の圧力を、10Pa未満に制御した。発生した前記エアロゾルを、前記デポジションチャンバー内のノズルへ搬送させた。
前記エアロゾルを前記ノズルから発射し、前記エアロゾルを前記デポジションチャンバー内に配されたFTO基板(フッ素ドープ酸化スズ薄膜が形成されたガラス)に10分間衝突させた。その時のガス流速は、50m/sec~100m/secであった。ガス流速は、ノズル開口部を通過する部分のガス流量から算出した。
その結果、室温で、前記FTO基板上にSrNbONからなる光励起層(平均厚み2μm)が形成された。
続いて、光励起層の片面の全面に、図3に示すようなナノパーティクルデポジションの成膜技術を用いてコバルト系酸化物であるCoOからなる助触媒層(平均厚み100nm)を形成した。なお、原料のCoOは、高純度化学研究所製のCoO粒子を用いた。
続いて、水素ガス雰囲気(水素ガス濃度2%)中600℃、30分間でアニールした。
以上により、光化学電極を得た。
<光電流の測定>
作製した光化学電極の光電流を測定した。
(比較例2)
<光励起材料>
原料粉末として製造例1で製造した平均粒径1μmのSrNbON粉末を用いた。
<光化学電極の作製>
使用したナノパーティクルデポジション(NPD)装置は、エアロゾル発生システム、デポジションチャンバー、及び真空システムから構成される。このデポジション装置に熱源は配されていない。
製造例1で製造したSrNbON粉末を、前記エアロゾル発生システムの容器内にセットし、10Hzで振動させた。それから、ガス圧0.2MPa、かつ純度99.9%のヘリウムを前記容器に導入し、エアロゾルを発生させた。メカニカルブースター及び真空ポンプを用い、前記デポジションチャンバー内の圧力を、10Pa未満に制御した。発生した前記エアロゾルを、前記デポジションチャンバー内のノズルへ搬送させた。
前記エアロゾルを前記ノズルから発射し、前記エアロゾルを前記デポジションチャンバー内に配されたFTO基板(フッ素ドープ酸化スズ薄膜が形成されたガラス)に10分間衝突させた。その時のガス流速は、50m/sec~100m/secであった。ガス流速は、ノズル開口部を通過する部分のガス流量から算出した。
その結果、室温で、前記FTO基板上にSrNbONからなる光励起層(平均厚み2μm)が形成された。
続いて、光励起層の片面の全面に、図3に示すようなナノパーティクルデポジションの成膜技術を用いてコバルト系酸化物であるCoOからなる助触媒層(平均厚み100nm)を形成した。なお、原料のCoOは、高純度化学研究所製のCoO粒子を用いた。
続いて、窒素雰囲気中600℃、30分間でアニールした。
以上により、光化学電極を得た。
<光電流の測定>
作製した光化学電極の光電流を測定した。結果を表1に示した。
(実施例1)
<光励起材料>
原料粉末として製造例1で製造した平均粒径1μmのSrNbON粉末を用いた。
<光化学電極の作製>
使用したナノパーティクルデポジション(NPD)装置は、エアロゾル発生システム、デポジションチャンバー、及び真空システムから構成される。このデポジション装置に熱源は配されていない。
製造例1で製造したSrNbON粉末を、前記エアロゾル発生システムの容器内にセットし、10Hzで振動させた。それから、ガス圧0.2MPa、かつ純度99.9%のヘリウムを前記容器に導入し、エアロゾルを発生させた。メカニカルブースター及び真空ポンプを用い、前記デポジションチャンバー内の圧力を、10Pa未満に制御した。発生した前記エアロゾルを、前記デポジションチャンバー内のノズルへ搬送させた。
前記エアロゾルを前記ノズルから発射し、前記エアロゾルを前記デポジションチャンバー内に配されたFTO基板(フッ素ドープ酸化スズ薄膜が形成されたガラス)に10分間衝突させた。その時のガス流速は、50m/sec~100m/secであった。ガス流速は、ノズル開口部を通過する部分のガス流量から算出した。
その結果、室温で、前記FTO基板上にSrNbONからなる光励起層(平均厚み2μm)が形成された。
続いて、光励起層の片面の全面に、図3に示すようなナノパーティクルデポジションの成膜技術を用いてCo(還元剤)からなる還元層(平均厚み100nm)を形成した。なお、原料のCoは、高純度化学研究所製のCo粒子を用いた。
続いて、窒素雰囲気中600℃、30分間でアニールして、還元剤により光励起材料を還元した。その際、Co(還元剤)は酸化され、酸化コバルトに転化した。酸化コバルトは、光励起材料の助触媒である。即ち、前記還元層は、助触媒層に変化した。なお、XPS(X線光電子分光)及びEDXの結果からコバルトが酸化していることが確認された。
以上により、光化学電極を得た。
<光電流の測定>
作製した光化学電極の光電流を測定した。結果を表1に示した。
(比較例3)
<光励起材料>
原料粉末として製造例1で製造した平均粒径1μmのSrNbON粉末を用いた。
<光化学電極の作製>
使用したナノパーティクルデポジション(NPD)装置は、エアロゾル発生システム、デポジションチャンバー、及び真空システムから構成される。このデポジション装置に熱源は配されていない。
製造例1で製造したSrNbON粉末を、前記エアロゾル発生システムの容器内にセットし、10Hzで振動させた。それから、ガス圧0.2MPa、かつ純度99.9%のヘリウムを前記容器に導入し、エアロゾルを発生させた。メカニカルブースター及び真空ポンプを用い、前記デポジションチャンバー内の圧力を、10Pa未満に制御した。発生した前記エアロゾルを、前記デポジションチャンバー内のノズルへ搬送させた。
前記エアロゾルを前記ノズルから発射し、前記エアロゾルを前記デポジションチャンバー内に配されたFTO基板(フッ素ドープ酸化スズ薄膜が形成されたガラス)に10分間衝突させた。その時のガス流速は、50m/sec~100m/secであった。ガス流速は、ノズル開口部を通過する部分のガス流量から算出した。
その結果、室温で、前記FTO基板上にSrNbONからなる光励起層(平均厚み2μm)が形成された。
続いて、水素ガス雰囲気(水素ガス濃度2%)中600℃、30分間でアニールした。
以上により、光化学電極を得た。
<光電流の測定>
作製した光化学電極の光電流を測定した。結果を表1に示した。
(実施例2)
<光励起材料>
原料粉末として製造例1で製造した平均粒径1μmのSrNbON粉末を用いた。
<光化学電極の作製>
使用したナノパーティクルデポジション(NPD)装置は、エアロゾル発生システム、デポジションチャンバー、及び真空システムから構成される。このデポジション装置に熱源は配されていない。
製造例1で製造したSrNbON粉末を、前記エアロゾル発生システムの容器内にセットし、10Hzで振動させた。それから、ガス圧0.2MPa、かつ純度99.9%のヘリウムを前記容器に導入し、エアロゾルを発生させた。メカニカルブースター及び真空ポンプを用い、前記デポジションチャンバー内の圧力を、10Pa未満に制御した。発生した前記エアロゾルを、前記デポジションチャンバー内のノズルへ搬送させた。
前記エアロゾルを前記ノズルから発射し、前記エアロゾルを前記デポジションチャンバー内に配されたFTO基板(フッ素ドープ酸化スズ薄膜が形成されたガラス)に10分間衝突させた。その時のガス流速は、50m/sec~100m/secであった。ガス流速は、ノズル開口部を通過する部分のガス流量から算出した。
その結果、室温で、前記FTO基板上にSrNbONからなる光励起層(平均厚み2μm)が形成された。
続いて、光励起層の片面の全面に、図3に示すようなナノパーティクルデポジションの成膜技術を用いてCo(還元剤)からなる還元層(平均厚み100nm)を形成した。なお、原料のCoは、高純度化学研究所製のCo粒子を用いた。
続いて、窒素雰囲気中600℃、30分間でアニールして、還元剤により光励起材料を還元した。
続いて、エッチングにより、還元層を除去した。
以上により、光化学電極を得た。
<光電流の測定>
作製した光化学電極の光電流を測定した。結果を表1に示した。
(比較例4)
<光化学電極の作製>
比較例3において、アニールを、窒素雰囲気中600℃、30分間で行った以外は、比較例3と同様にして、光化学電極を得た。
<光電流の測定>
作製した光化学電極の光電流を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0007230595000001
なお、表1における光電流の値は、助触媒層を有する実施例1及び比較例2に関しては、助触媒層を有する比較例1の光電流の値を「1.00」とした際の、相対値である。
また、助触媒層を有しない実施例2及び比較例4に関しては、助触媒層を有しない比較例3の光電流の値を「1.00」とした際の、相対値である。
なお、比較例1の光電流の値を「1.00」とした際の、比較例3の光電流の値は、「0.42」である。
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
導電体上に、光を吸収して励起する光励起材料を有する光励起層を形成し、
前記光励起層上に、前記光励起材料を還元可能な還元層を形成し、
前記光励起層及び前記還元層を加熱することを特徴とする光化学電極の製造方法。
(付記2)
前記光励起材料が、酸窒化物である付記1に記載の光化学電極の製造方法。
(付記3)
前記還元層が、コバルトを含む付記1又は2に記載の光化学電極の製造方法。
(付記4)
前記還元層が、前記加熱により酸化され、前記光励起層により生じる光電流を増加させる助触媒層に転化する付記1から3のいずれかに記載の光化学電極の製造方法。
(付記5)
前記光励起層が、前記導電体上に、前記光励起材料の粒子をエアロゾルデポジション法により塗布することで形成される付記1から4のいずれか記載の光化学電極の製造方法。
1 支持体
2 導電体
3 光励起層
4 還元層
5 助触媒層

Claims (5)

  1. 導電体上に、光を吸収して励起する光励起材料を有する光励起層を形成し、
    前記光励起層上に、前記光励起材料を還元可能な還元層を形成し、
    前記光励起層及び前記還元層を真空条件下又は不活性ガス雰囲気下で加熱して前記還元層による前記光励起材料の還元を行い、
    前記還元層が、コバルト、ニッケル、イリジウム、ルテニウム、及びチタンから選択される1種以上の還元剤を含むことを特徴とする光化学電極の製造方法。
  2. 前記光励起材料が、酸窒化物である請求項1に記載の光化学電極の製造方法。
  3. 前記還元層が、コバルトを含む請求項1又は2に記載の光化学電極の製造方法。
  4. 前記還元層が、前記加熱により酸化され、前記光励起層により生じる光電流を増加させる助触媒層に転化する請求項1から3のいずれかに記載の光化学電極の製造方法。
  5. 前記光励起層が、前記導電体上に、前記光励起材料の粒子をエアロゾルデポジション法により塗布することで形成される請求項1から4のいずれか記載の光化学電極の製造方法。
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