以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1~3には、本発明の1実施形態としての皮下埋込型ポート10が示されている。この皮下埋込型ポート10には、ハウジング12に設けられた開口部14を閉塞するように弾性体16が組み付けられており、ハウジング12の開口部14が弾性体16で塞がれることで、皮下埋込型ポート10の内部に薬液貯留用の内腔18が形成されている。また、ハウジング12の周壁20には、厚さ方向で貫通する薬液流出用流路22が内腔18に連通して形成されており、内腔18内に貯留された薬液が薬液流出用流路22を通じて血管などの体内の管腔内に注入されるようになっている。なお、以下の説明において上下方向とは、原則として図3中の上下方向をいう。また、水平方向とは、原則として上下方向に対して直交する方向であって、例えば図3中の左右方向をいう。
より詳細には、本実施形態のハウジング12は硬質の合成樹脂製とされており、図4~6に示されるハウジング本体24と図7,8に示されるベース部材26とを含む分割構造とされている。
このハウジング本体24は、全体として下方に向かって次第に拡開する略筒状とされており、周方向の略全周に亘って連続して延びる周壁28と、当該周壁28の内周側において上下方向に貫通する貫通孔30とを備えている。
かかる周壁28の外周面32は、略上半分が、略一定の傾斜角度をもって上方に向かって次第に外径寸法が小さくなる傾斜面32aとされている。また、周壁28の外周面32における略下半分において、周上の一部(図5,6中の左部分)は、上下方向と平行に広がる鉛直外周面32bとされているとともに、残りの部分は、傾斜角度が次第に変化しつつ上方に向かって次第に外径寸法が小さくなる湾曲外周面32cとされている。
一方、周壁28の内周面34は、略上半分が、略一定の傾斜角度をもって上方に向かって次第に内径寸法が小さくなる傾斜面34aとされているとともに、略下半分が、略一定の内径寸法をもって上下方向に略ストレートに延びる鉛直内周面34bとされている。本実施形態では、周壁28の略上半分における外周面32(傾斜面32a)と内周面34(傾斜面34a)とが、略平行に形成されている。
すなわち、本実施形態では、周壁28の略上半分が、略一定の厚さ寸法をもって上方に向かって次第に径寸法が小さくなるテーパ筒部36とされている。また、周壁28の略下半分において、湾曲外周面32cの形成部分は、下方に向かって次第に厚さ寸法が大きくなるフレア状部38とされているとともに、鉛直外周面32bの形成部分は、略一定の厚さ寸法をもって上下方向に延びる鉛直壁部40とされている。
ここにおいて、鉛直壁部40の幅方向(図5中の上下方向)中央部分には、下端面に開口すると共に厚さ方向で貫通する切欠き状の側方開口部42が形成されている。この側方開口部42は略矩形状とされており、貫通孔30が当該側方開口部42を通じて鉛直外周面32bに開口している。また、本実施形態では、側方開口部42の下端部分において、鉛直外周面32bから水平方向の外方(図5,6中の左方)に突出する一対の固定壁部44,44が設けられている。固定壁部44,44を介して、後述するカテーテル96がポート部88にロックされる。
これら固定壁部44,44は、何れも略ブロック状とされている。そして、かかる固定壁部44,44は、鉛直壁部40の幅方向で相互に対向しており、側方開口部42を挟んだ両側に設けられているとともに、固定壁部44,44の対向面間距離が、側方開口部42の開口幅寸法より小さくされている。すなわち、これら固定壁部44,44は、側方開口部42を挟んだ両側から側方開口部42の内部へ向かう方向に突出しており、本実施形態では、貫通孔30から外部へと至る側方開口部42の開口幅寸法が、固定壁部44,44の形成位置において縮小せしめられている。
特に、本実施形態では、それぞれの固定壁部44の突出先端部(図5,6の左方端部)には、固定壁部44,44の対向方向(鉛直壁部40の幅方向)外方に突出するリブ状突起46が形成されている。すなわち、固定壁部44の幅寸法(図5中の上下方向寸法)が、固定壁部44の突出先端におけるリブ状突起46の形成位置において、他の部分よりも大きくされている。
また、周壁28の上方開口部には、内周側に突出する略環状の内周フランジ部48が設けられている。すなわち、周壁28の内径寸法は、鉛直内周面34bの形成位置において上下方向で略一定とされている一方、傾斜面34aの形成位置において上方に向かって次第に小さくされているとともに、内周フランジ部48の形成位置において更に小さくされている。本実施形態では、かかる周壁28の上方開口部により、ハウジング12の開口部14が構成されている。
さらに、本実施形態では、内周フランジ部48の内周側端縁部(突出先端部)において下方に突出する略環状の係止爪50が形成されている。特に、本実施形態では、係止爪50の突出先端部(下方端部)が先細状に形成されている。
一方、周壁28の下端面52、即ちフレア状部38の下端面52は、水平方向に広がっており、中央に貫通孔30を有する略環状の平坦面とされている。当該下端面52には、略中央部分において下方に開口する略環状の環状溝54が貫通孔30と略同軸的に形成されており、貫通孔30と連通している。この環状溝54の内径寸法は、貫通孔30における他の部分の内径寸法よりも大きくされており、即ち、貫通孔30の内径寸法は、下方開口部である環状溝54の形成位置において、他の部分よりも大きくされている。
また、周壁28の下方部分、即ちフレア状部38において、鉛直壁部40を挟んだ周方向両側には、上下方向で貫通する略円形の貫通孔56が形成されている。すなわち、貫通孔56の上端部がフレア状部38の外周面32(湾曲外周面32c)に開口しているとともに、下端部がフレア状部38の下端面52に開口している。そして、フレア状部38の下端面52において、環状溝54と貫通孔56とが、下方に開口する嵌合溝58により接続されて相互に連通している。すなわち、本実施形態では、かかる嵌合溝58が、略矩形状とされており、フレア状部38の下端面52において、側方開口部42を挟んだ周方向両側に形成されている。また、本実施形態では、かかる嵌合溝58の溝深さ寸法(上下方向寸法)が、環状溝54の溝深さ寸法よりも小さくされている。
一方、本実施形態のベース部材26は、全体として略有底の筒形状とされており、周方向の略全周に亘って連続して延びる周壁部60と、当該周壁部60の下方開口部を覆蓋する略円板状の底壁部62とを備えている。すなわち、底壁部62が、何れも略円形とされた上端面63aと下端面63bを備えており、周壁部60が、底壁部62の上端面63aから上方に突出して設けられている。そして、これら周壁部60と底壁部62とにより、底壁部62の上端面63aを底面とし、且つ上方に開口する中央凹部64が形成されている。
ここにおいて、かかる周壁部60の内周側には、周方向の略全周に亘って連続して延びる内周壁部66が形成されている。この内周壁部66は、周壁部60が内周側に厚肉とされることで設けられている。要するに、当該内周壁部66が、周壁部60の内周面68から内周側に突出して設けられている。かかる内周壁部66の上下方向寸法(高さ寸法)は、周壁部60の上下方向寸法より小さくされており、内周壁部66の上端面70が、周壁部60の上端面72よりも下方に位置している。要するに、かかる内周壁部66の上端面70が、周壁部60の上端面72に対して段差状部を挟んで下方に位置しており、当該段差状部が、周壁部60の内周面68により構成されている。
すなわち、中央凹部64の内面が、内周壁部66の内周面と底壁部62の上端面63aとを含んで構成されており、本実施形態では、これら内周壁部66の内周面と底壁部62の上端面63aとが、下方に向かって次第に内周側に湾曲する湾曲面74により接続されている。したがって、中央凹部64の内径寸法は、中央凹部64の底面(底壁部62の上端面63a)から上方に向かって次第に大きくされて、内周壁部66の内周面で略一定とされているとともに、段差状部68の形成位置において更に大きくされて、周壁部60の内径寸法をもって略一定とされている。
なお、本実施形態では、かかる内周壁部66の内径寸法φα(図8参照)、即ち内周壁部66の上端面70における内径寸法φαが、ハウジング12の開口部14における内径寸法φβ(図6参照)、即ちハウジング本体24の内周フランジ部48における内径寸法φβと略等しいかそれよりも大きくされており、本実施形態では、これら内周壁部66の上端面70における内径寸法φαとハウジング12の開口部14における内径寸法φβとが略等しくされている(φα≒φβ)。
一方、周壁部60の外周面の下端部分からは、外周側に突出する外周フランジ部76が形成されている。すなわち、周壁部60の外径寸法が、外周フランジ部76の形成位置において、他の部分よりも大きくされている。かかる周壁部60の外径寸法は、ハウジング本体24におけるフレア状部38および鉛直壁部40の内径寸法(即ち、周壁28の内周面34において内径寸法が略一定とされた鉛直内周面34bにおける内径寸法)と略等しいか僅かに小さくされているとともに、外周フランジ部76の外径寸法は、ハウジング本体24の下端面52における環状溝54の内径寸法と略等しいか僅かに小さくされている。
また、周壁部60の外周面において、周上の一部(図8中の左方)からは、外周側に突出する外周突部78が形成されている。この外周突部78は、全体として略直方体状とされており、ハウジング本体24の鉛直壁部40における側方開口部42と略対応する形状とされている。さらに、当該外周突部78の外周面には、外周側に開口する収容凹所80が形成されている。この収容凹所80は、略円形の断面を有して水平方向に延びており、外周突部78および周壁部60を貫通して、収容凹所80の底面が、内周壁部66の径方向中間部分に至っている。そして、当該収容凹所80の底面には、内周壁部66を厚さ方向(径方向)で貫通する連通孔82が形成されている。すなわち、当該連通孔82の長さ方向一方の端部が収容凹所80の底面に開口するとともに、連通孔82の長さ方向他方の端部が中央凹部64の湾曲面74に開口して、これら収容凹所80と中央凹部64とが、連通孔82により連通されている。なお、収容凹所80の外周側開口部は、他の部分よりも内径寸法が大きくされており、即ち収容凹所80の外周側開口部分には、上下方向に広がる環状の段差面84が形成されている。
さらに、外周フランジ部76において、外周突部78を挟んだ両側には、外周側に突出する嵌合板部86が設けられている。この嵌合板部86は、ハウジング本体24の下端面52に設けられた嵌合溝58と略対応する略矩形状とされている。本実施形態では、ベース部材26の下端面87が、底壁部62の下端面63bと外周フランジ部76の下端面と外周突部78の下端面と嵌合板部86,86の下端面とを含んで構成されており、それぞれの下端面が段差なく連続する平坦面とされている。
そして、かかるベース部材26の収容凹所80には、ポート部88を備えるポート部材90が組み付けられている。このポート部材90は、水平方向に延びる略筒状とされており、中央には、略一定の内径寸法をもって長さ方向に貫通する中心孔92が形成されている。また、ポート部材90の長さ方向一方側は外径寸法が大きくされた大径部94とされているとともに、長さ方向他方側は外径寸法が小さくされた小径部とされている。
かかる大径部94が収容凹所80に挿入されて、必要に応じて圧入されたり接着や溶着などの処理が施されることで、ポート部材90がベース部材26に対して固定されており、大径部94の一部および小径部が、ベース部材26から水平方向外方に突出している。尤も、ポート部材90はベース部材26に対して非固定的に取り付けられてもよく、後述するように、ポート部材90がベース部材26とハウジング本体24との間に挟まれて、これらベース部材26とハウジング本体24とが相互に固定されることで、ポート部材90がベース部材26に対して固定されてもよい。
さらに、ベース部材26から水平方向外方に突出する小径部に対して、外部管路として、例えばカテーテル96(図3において二点鎖線で図示)が外挿装着されるようになっており、即ち外部管路が接続されるポート部88が、ポート部材90の長さ方向他方側である小径部により構成されている。なお、かかるポート部88の外周面には凹凸が付されており、ポート部88に外挿されたカテーテル96が、容易に外れないようになっている。本実施形態の皮下埋込型ポート10が皮下に埋設されることで、かかるカテーテル96が血管などの体内の管腔へ接続される。
また、大径部94の外周面において、長さ方向中間部分には、外周側に突出する略環状の係合突部98が形成されており、例えばポート部材90の収容凹所80への挿入に際して当該係合突部98と収容凹所80の内周面に設けられた段差面84とが相互に当接することで、ポート部材90の収容凹所80への挿入量が規定されるようになっている。
そして、このようにポート部材90がベース部材26の収容凹所80に挿入されて固定されることで、ポート部材90の中心孔92と収容凹所80の底面に設けられた連通孔82とが相互に連通している。すなわち、ベース部材26の中央凹部64が、連通孔82と中心孔92とカテーテル96とにより外部空間へ連通されている。したがって、後述するように、ハウジング12において内腔18に貯留された薬液を流出させる薬液流出用流路22が、これら連通孔82と中心孔92とを含んで構成されている。
なお、本実施形態では、例えばポート部材90の大径部94から幅方向外方(図2中の上下方向両側)に図示しない一対の腕部が突出しており、当該腕部の突出先端100に、上方に突出する位置決め突部102が設けられている。かかる位置決め突部102は、ハウジング本体24に形成された貫通孔56と略対応する形状とされた略円形の突部とされており、後述するハウジング本体24とベース部材26との組付時において位置決め突部102が貫通孔56に嵌まり込んで、ハウジング本体24とベース部材26とが相互に位置決めされるようになっている。
以上の如き構造とされたハウジング本体24とベース部材26を相互に組み付けて固定することで、本実施形態のハウジング12が構成されている。なお、ベース部材26とハウジング本体24との固定方法は何等限定されるものではないが、本実施形態では超音波溶着により固定されている。また、超音波溶着により溶着される箇所は何等限定されるものではないが、例えば環状溝54と外周フランジ部76との重ね合わせ部分や、側方開口部42と外周突部78との重ね合わせ部分などが溶着により相互に固着され得る。
すなわち、ポート部材90が組み付けられたベース部材26に対して上方からハウジング本体24を重ね合わせる。これにより、ポート部材90の腕部における突出先端100から上方に突出する位置決め突部102が、ハウジング本体24に設けられた貫通孔56に嵌め入れられる。また、ハウジング本体24の下端面52に設けられた環状溝54に、ベース部材26の外周フランジ部76が嵌め入れられるとともに、嵌合溝58に、ベース部材26の嵌合板部86が嵌め入れられる。これにより、ハウジング本体24とベース部材26との位置決めが高度に達成されるとともに、ポート部材90の腕部が下方から嵌合板部86で覆われることから、貫通孔56から位置決め突部102が抜け出すことが効果的に防止され得る。さらに、ハウジング本体24の下端面52とベース部材26の下端面87とが、段差が生じることなく滑らかに連続するようにされて、皮下埋込型ポート10を体内に埋設した際に体内組織などに引っ掛かることがないようになっている。
更にまた、ハウジング本体24の鉛直壁部40に設けられた側方開口部42に対してベース部材26の外周突部78が差し入れられることで、固定壁部44,44の対向面に対してポート部材90における大径部94の外周面が略当接しつつ差し入れられるとともに、大径部94から外周側に突出する係合突部98が、収容凹所80の外周側開口部分に設けられた段差面84と固定壁部44,44との水平方向間で挟まれて固定されるようになっている。これにより、ポート部材90が、ハウジング本体24やベース部材26に対して傾いたりすることや、ハウジング本体24やベース部材26から抜け落ちることが効果的に防止され得る。また、ポート部材90を非固定的にベース部材26に組み付けることもできることから、組付効率の向上も図られ得る。
このようにハウジング本体24とベース部材26とを相互に組み付けることで、ハウジング本体24の周壁28における下方開口部がベース部材26で覆蓋されるようになっている。すなわち、ハウジング本体24の周壁28の内周側にベース部材26の周壁部60および内周壁部66が挿入される。それ故、ハウジング12における周壁20が、部分的に、ハウジング本体24の周壁28(特に、フレア状部38および鉛直壁部40)とベース部材26の周壁部60および内周壁部66との重ね合わせ構造とされている。また、ベース部材26の周壁部60が、ハウジング本体24の内周フランジ部48およびテーパ筒部36と上下方向で対向しているとともに、ベース部材26の内周壁部66が、内周フランジ部48の突出先端(内周端縁部)、即ち本実施形態では内周フランジ部48において係止爪50が形成された部分と上下方向で対向している。
そして、かかるハウジング12に対して、図9,10,11(a),(b)に示される弾性体16が組み付けられるようになっている。すなわち、図9,10,11(a),(b)には、弾性体16が、ハウジング12に組み付けられる前の単品状態で示されている。この弾性体16は、ゴムやエラストマなどの弾性材により構成されている。本実施形態では、弾性体16が、全体として厚肉の略円板形状とされており、弾性体16の厚さ寸法が上下方向とされている。
すなわち、弾性体16は、ハウジング12への組付時に外面となる上面104と、内腔18側に位置する内面となる下面106とを備えており、本実施形態では、ハウジング12に組み付けられる以前の弾性体16の単品状態において、これら上面104および下面106が、相互に略同径の略円形状とされている。特に、本実施形態では、単品状態において、上面104および下面106の径寸法、即ち弾性体16の外径寸法が、ベース部材26における周壁部60の外径寸法と略等しいか僅かに小さくされている。また、弾性体16の単品状態において、弾性体16の上下方向寸法、即ち上面104と下面106の上下方向離隔距離D1 (図11(a)参照)は、後述するハウジング本体24とベース部材26との組付時における周壁部60と内周フランジ部48との上下方向離隔距離D2 (図3参照)よりも大きくされている。さらに、弾性体16の単品状態における、後述する円形凹部110の形成位置の上下方向寸法D3 (図11(a)参照)は、弾性体16のハウジング12への組付状態における、円形凹部110が形成されていた位置での最大上下方向寸法D4 (図3参照)よりも小さくされている。
ここにおいて、弾性体16の上面104の中央部分には、外面側、即ち上方に向かって突出する嵌合突部108が設けられている。換言すれば、弾性体16の上面104における外周部分には、嵌合突部108よりも下方に位置して環状の平坦面109が形成されており、弾性体16の上面104が、嵌合突部108の上端面と平坦面109を含んで構成されている。かかる嵌合突部108は、高さ寸法に比べて外径寸法の大きい略扁平な円柱形状とされており、本実施形態では、嵌合突部108の外径寸法が、開口部14の内径寸法、即ち内周フランジ部48の内径寸法と略等しいか僅かに小さくされている。また、弾性体16がハウジング12に組み付けられることで、嵌合突部108の上端面が、ハウジング12の上端面、即ち内周フランジ部48の上端面よりも上方に位置するようになっている。
一方、弾性体16の下面106の中央部分には、内面側、即ち下方に向かって開口する略円形状の凹部としての円形凹部110が形成されている。要するに、円形凹部110は、弾性体16の下面106よりも上方に位置する略円形の上底面112と、当該上底面112の外周端縁部から下方に延び出して弾性体16の下面106に接続される外周面114とを備えている。本実施形態では、上底面112が、弾性体16の径方向(図11中の左右方向)に対して略平行な平坦面とされているとともに、外周面114が、下方に向かって外周面114の内径寸法が次第に大きくなる滑らかな湾曲面とされている。なお、上底面112は必ずしも平坦面である必要はなく、例えば凹凸が設けられていてもよい。
特に、本実施形態では、当該外周面114の上下方向中間部分において、外周面114の曲率が変化する変曲点116(即ち、略0の長さ寸法を有する直線状部分)が設けられており、外周面114における変曲点116よりも上方では、曲率中心が外周面114よりも下方に位置しているとともに、外周面114における変曲点116よりも下方では、曲率中心が外周面114よりも上方に位置している。そして、本実施形態では、かかる変曲点116の形成位置における外周面114の内径寸法が、嵌合突部108の外径寸法と略等しくされている。さらに、後述するように、弾性体16をハウジング12に組み付けた状態では、嵌合突部108の外周面に対してハウジング本体24における内周フランジ部48の内周面が略当接することから、上記変曲点116の形成位置における外周面114の内径寸法は、内周フランジ部48の内径寸法、即ち開口部14の内径寸法および内周壁部66の上端面70における内径寸法とも略等しくされている。
また、弾性体16の下面106の中央部分に、かかる円形凹部110が形成されることで、弾性体16の下面(内面)106における当該円形凹部110よりも外周側では、上底面112よりも下方に位置する環状面としての環状平坦面118が形成されている。換言すれば、環状平坦面118よりも内周側に円形凹部110が形成されている。なお、円形凹部110の上底面112を弾性体16の下面(内面)として捉えることもできて、即ち弾性体16の内面(上底面112)における外周部分から内面側(下方)に向かって、環状平坦面118が突出していると把握することも可能である。何れの場合であっても、本実施形態では、弾性体16の下面106が、環状平坦面118と上底面112と、それらの間を接続する外周面114とを含んで構成されている。
ここで、図11(a),(b)において、弾性体16の下方にベース部材26を配置した状態(要するに、弾性体16の圧縮前の状態)を二点鎖線で示すように、環状平坦面118の径方向幅寸法は、ベース部材26における周壁部60の径方向幅寸法よりも大きくされている。すなわち、図11(b)に示すように、ベース部材26の上方に弾性体16を載置した状態では、ベース部材26における周壁部60の上端面72が、全面に亘ってまたはその一部において環状平坦面118の外周部分120に対向(当接)するとともに、ベース部材26における内周壁部66の上端面70が、環状平坦面118の内周部分122と上下方向で相互に離隔して対向するようになっている。
なお、本実施形態では、周壁部60の上端面72と対向する環状平坦面118の外周部分120が、環状平坦面118の径方向中間部分から外周端に至る領域とされているとともに、環状平坦面118の内周部分122が、環状平坦面118の径方向中間部分から内周端に至る領域とされている。ここで、本実施形態では、円形凹部110の外周面114と環状平坦面118との接続部分が面取り状に湾曲しているが、かかる面取り状の湾曲面は形成されなくてもよい。また、環状平坦面118は、必ずしも水平方向に広がる平坦面のみで形成されるものではなく、円形凹部110の外周面114に接続される環状平坦面118の内周部分122において面取り状の湾曲面やC面取りの傾斜面、凹凸などを含んでいてもよい。尤も、本発明における環状面は、水平方向に広がる平坦な面を含んでいる必要はなく、全面に亘って水平方向に対して傾斜する傾斜面や全面に亘って湾曲する湾曲面、凹凸が連続する面などにより構成されてもよい。
すなわち、本実施形態では、環状平坦面118の内径寸法が、内周壁部66の上端面70における内径寸法φαおよびハウジング12の開口部14における内径寸法φβと略等しくされている。
また、本実施形態では、周壁部60の上端面72における内周端縁部が環状平坦面118の径方向略中央か僅かに内周側に位置しており、即ち周壁部60の上端面72と対向する環状平坦面118の外周部分120の径方向幅寸法W1 (図11(b)参照)が、内周壁部66の上端面70と対向する環状平坦面118の内周部分122の径方向幅寸法W2 (図11(b)参照)と略等しい(W1 ≒W2 )か、僅かに大きく(W2 <W1 )されている。さらに、本実施形態では、後述する弾性体16の圧縮時において環状平坦面118の内周部分122と重ね合わされる周壁部60の内周面(段差状部)68の上下方向寸法L(図11(b)参照)は、環状平坦面118の内周部分122の径方向幅寸法W2 よりも大きく(W2 <L)されている。なお、内周面68の上下方向寸法Lは、内周部分122の径方向幅寸法W2 以上とされる(W2 ≦L)ことが好適である。
更にまた、内周壁部66の上端面70の径方向幅寸法W3 (図11(b)参照)は、円形凹部110の深さ寸法D5 (図11(b)参照)と略同じとされることが望ましく、円形凹部110の外周面114の円弧状の湾曲長さ寸法が、内周壁部66の上端面70の径方向幅寸法W3 以上に設定されることが望ましい。また、内周面68の上下方向寸法Lは、円形凹部110の深さ寸法D5 以上に設定される(D5 ≦L)ことが望ましい。
以上の如き構造とされた弾性体16をハウジング12に組み付けることで本実施形態の皮下埋込型ポート10が構成されている。以下に、弾性体16をハウジング12に組み付けて皮下埋込型ポート10を製造する方法を説明する。
先ず、ポート部材90を組み付けたベース部材26上に弾性体16を載置して、その上方からハウジング本体24を重ね合わせる。すなわち、弾性体16の下面106(環状平坦面118)をベース部材26における周壁部60の上端面72に重ね合わせるとともに、弾性体16の上面104(平坦面109)を内周フランジ部48に重ね合わせる。また、かかる重ね合わせにより、弾性体16の外周面がハウジング12(ハウジング本体24)におけるテーパ筒部36の内周面34(傾斜面34a)に重ね合わされるようになっている。弾性体16の外周面は、テーパ筒部36の傾斜面34aから圧を受けた状態となり、弾性体16の円形凹部110が下方に膨らむ。尤も、弾性体16の圧縮前は、弾性体16の外周面と傾斜面34aとは離隔していてもよく、弾性体16の圧縮に伴う膨出変形により弾性体16の外周面と傾斜面34aとが重ね合わされて密着するようになっていてもよい。
そして、かかる状態から、ハウジング本体24とベース部材26とを超音波溶着により相互に固定することにより、ハウジング本体24とベース部材26とを組み付けて、本実施形態の皮下埋込型ポート10を製造する。これにより、弾性体16がハウジング本体24とベース部材26との上下方向間で圧縮された状態で固定されるとともに、周壁28の上方開口部(ハウジング12の開口部14)が弾性体16で塞がれるようになっている。したがって、周壁28の上方開口部が弾性体16で塞がれると共に下方開口部がベース部材26で覆蓋されることで、即ちベース部材26の中央凹部64における上方開口部が弾性体16で覆蓋されることで、これら弾性体16とベース部材26との間に皮下埋込型ポート10の内腔18が形成されるようになっている。
そして、このように、弾性体16の上面104における平坦面109にハウジング12(ハウジング本体24)の内周フランジ部48を押し付けることで、平坦面109の内周部分に対して内周フランジ部48の突出先端部に設けられた係止爪50が食い込んで係止されるとともに、内周フランジ部48の内周側に弾性体16の嵌合突部108が入り込むようになっている。特に、弾性体16の外周部分が上下方向で圧縮されることで、弾性体16の中央部分に設けられた嵌合突部108の上端面が内周フランジ部48の上端面よりも上方に突出するようになっている。
ここにおいて、単品状態における弾性体16の上下方向寸法D1 に比べて、ハウジング12における周壁部60と内周フランジ部48との上下方向離隔距離D2 の方が小さくされていることから、弾性体16をハウジング本体24とベース部材26との上下方向間で挟み込んで組み付けることで、弾性体16の外周部分が、上下方向寸法がD2 となるまで圧縮されるようになっている。具体的には、弾性体16における環状平坦面118の外周部分120が、ベース部材26における周壁部60とハウジング本体24における内周フランジ部48とにより上下方向で圧縮されるようになっている。なお、本実施形態では、圧縮前における弾性体16の外径寸法が周壁部60の外径寸法よりも僅かに小さくされて、周壁部60の上端面72が、環状平坦面118の外周部分120に対して部分的に当接しているが、弾性体16が上下方向で圧縮されることで水平方向に膨出変形せしめられて、周壁部60の上端面72が、環状平坦面118の外周部分120に対して全面に亘って当接するようになっている。
すなわち、本実施形態では、弾性体16をハウジング12に組み付けた製品状態において、環状平坦面118の外周部分120を弾性体16の厚さ方向で圧縮した状態で保持すると共に環状平坦面118の外周部分120と対向する圧縮保持部が、周壁部60により構成されている。また、ベース部材26において圧縮保持部(周壁部60)を構成する環状の平坦な圧縮面が、周壁部60の上端面72により構成されている。なお、弾性体16に対して外周側から重ね合わされるテーパ筒部36の内周面が、上方に向かって次第に内周側に傾斜する傾斜面34aとされている。当該傾斜面34aは、圧縮保持部(周壁部60)による圧縮を受けた弾性体16を内側に逃がすように、弾性体16の外周面を圧縮するようになっている。
そして、弾性体16の外周部分が上下方向で圧縮されることで、要するに環状平坦面118における外周部分120に対して周壁部60(圧縮保持部)が下方から押し付けられることで、周壁部60の上端面72における内周端縁部を中心として、環状平坦面118における内周部分122が外周側に向きを変えて、即ち図11(b)中の矢印A1 の方向に屈曲変形せしめられて、当該内周部分122の少なくとも一部が、周壁部60の内周面(段差状部)68に水平方向で重ね合わされるようになっている。また、かかる環状平坦面118の内周部分122の外周側への変形に伴い、当該内周部分122から連続する円形凹部110の外周面114が内面側(下方)に向きを変えて、即ち図11(b)中の矢印A2 の方向に変形せしめられて、当該外周面114の少なくとも一部が、内周壁部66の上端面70に対して大きな当接力(圧縮力)を伴うことなく上下方向で当接するようになっている。すなわち、本実施形態では、弾性体16をハウジング12へ組み付けた際に、内面側(下方)に向きを変えた円形凹部110の外周面114が当接する当接面が、内周壁部66の上端面70により構成されている。
換言すれば、弾性体16の外周部分が上下方向で圧縮されて、弾性体16の環状平坦面118の外周部分120に対して下方から圧縮保持部(周壁部60)が押し付けられることで、弾性体16の円形凹部110が下方に膨らむようになっている。すなわち、円形凹部110の外周部分である外周面114が上記矢印A2 の方向に引っ張られる。円形凹部110が下方に膨らんで円形凹部110の深さ寸法が次第に小さくなり、やがて弾性体16の下面106(環状平坦面118の外周部分120)よりも下方に膨出変形せしめられる。また、弾性体16において外周部分を圧縮保持される環状平坦面118の内周側に位置して円形凹部110が形成されており、弾性体16の外周部分が圧縮保持されることに伴う弾性体16の(圧縮保持部(周壁部60)の内周側における)内面側の突出変形高さが抑えられる。それ故、当接面である内周壁部66の上端面70への押当力が軽減されるとともに、当該上端面70の位置よりも下方に形成される収容領域(内腔18)の容積の確保も図られる。
したがって、本実施形態では、弾性体16をハウジング12へ組み付けた後に、圧縮保持部(周壁部60)よりも内周側において下方へ膨らむ膨らみ面124(図3参照)が、弾性体16のハウジング12への組付前における円形凹部110の上底面112や外周面114を含んで構成されている。特に、本実施形態では、かかる膨らみ面124の外周部分、即ち圧縮前において円形凹部110の外周面114などに相当する部分は、内周壁部66の上端面70に対して、隙間なく重ね合わされて軽く当接する、即ち大きな当接力(圧縮力)を伴うことなく当接するようになっている。すなわち、膨らみ面124が大きな当接力をもって内周壁部66の上端面70に当接する(膨らみ面124に対して内周壁部66の上端面70が強く押し付けられる)ものでないことから、内周壁部66よりも内周側において膨らみ面124が更に下方に膨出することが回避される。それ故、本実施形態では、かかる膨らみ面124が略円形の平坦面とされて、その外周部分が当接面(内周壁部66の上端面70)に当接するようになっている。そして、本実施形態では、かかる平坦な膨らみ面124により内腔18の上面が形成されている。なお、かかる膨らみ面124の外周部分は、上記のように円形凹部110の外周面114や上底面112により構成されてもよいし、当該外周面114や上底面112に加えて、環状平坦面118の内周部分122を含んで構成されてもよい。
また、本実施形態では、膨らみ面124の外周部分と当接面(内周壁部66の上端面70)とは、略ゼロタッチで当接している一方、当接面70よりも外周側では、弾性体16の外周部分が圧縮保持部(周壁部60および内周フランジ部48)により上下方向で圧縮されている。すなわち、本実施形態では、弾性体16の外周部分が、圧縮保持部によりある程度の圧縮力をもって上下方向で圧縮されているとともに、圧縮保持部よりも内周側では、圧縮保持部よりも小さな圧縮力(当接力)をもって、膨らみ面124の外周部分と当接面70とが接触(当接)している。
ちなみに、図12に示されるように、本発明に係る皮下埋込型ポート10を実際に試作して、その内部断面をコンピュータ断層撮影法により撮影したところ、ハウジング12への組付前に弾性体16に形成されていた円形凹部(110)が消失して膨らみ面124が形成されているとともに、当該膨らみ面124が略凹凸のない平坦面となって、その外周部分が当接面(内周壁部66の上端面70)と当接していることが確認できた。また、本発明者らは、弾性体16をハウジング12へ組み付けることで、環状平坦面118が変形して周壁部60の内周面(段差状部)68に当接することも、実際に実験により確認した。
上述の如き構造とされた皮下埋込型ポート10は、患者の胸部や腹部、大腿部等の皮下に埋め込まれて、皮下埋込型ポート10から延び出すカテーテル96などの外部管路が目的とする血管などの体内管腔内に挿入される。このような装着状態下で薬液を注入するに際しては、図13に二点鎖線で示すように、ニードルとしてのコアレスニードル126を、患者の皮膚を通じて皮下埋込型ポート10の弾性体16に穿刺して内腔18内にまで到達させる。そして、コアレスニードル126に装着された図示しないシリンジなどを操作することにより、シリンジに収容された薬液などが、内腔18を経て薬液流出用流路22からカテーテル96を通じて目的の血管内などに注入されるようになっている。
なお、薬液の注入後は、コアレスニードル126を抜去することにより、弾性体16における穿刺孔が、弾性体16の弾性的な復元作用で自動的に閉塞される。
以上の如き構造とされた本実施形態の皮下埋込型ポート10では、弾性体16の外周部分をハウジング本体24とベース部材26とで厚さ方向で挟み込んで圧縮することにより、弾性体16における環状平坦面118の内周部分122が外周側(図11(b)中の矢印A1 の方向)に向きを変えて、圧縮保持部(周壁部60)の内周面に水平方向で重ね合わされるとともに、弾性体16における円形凹部110の外周面114が内面側(図11(b)中の矢印A2 の方向)に向きを変えて、当接面(内周壁部66の上端面70)に軸方向で重ね合わされるようになっている。これにより、弾性体16とハウジング12との間に隙間が発生することが回避されるか、隙間ができたとしても小さくされ得る。
また、弾性体16の外周部分をハウジング本体24とベース部材26とで挟み込んで圧縮することにより、弾性体16の円形凹部110が下方に膨らんで膨らみ面124が形成されて、当該膨らみ面124の外周部分が略ゼロタッチで当接面70に当接するようになっている。すなわち、膨らみ面124の外周部分に対して当接面70が強く押し付けられることで弾性体16の膨らみ面124が下方に膨出変形してハウジング12(ベース部材26)との間に前記図14に示される如き隙間が発生するおそれがあるが、本実施形態の皮下埋込型ポート10では、かかるおそれが回避されるか、隙間が形成されたとしても小さくすることができる。これにより、内腔18に薬液が貯留された際に、隙間内で薬液が滞留することが防止されるか、滞留が小さく抑制される。
さらに、弾性体16の外周部分が、ハウジング本体24とベース部材26との上下方向間である程度の圧縮力をもって挟み込まれることで、弾性体16が、ハウジング12に対して強固に固定され得る。これにより、例えば高粘度且つ高流量の薬液を採用して内腔18内の圧力が大きくなる場合にも、弾性体16が、ハウジング12から抜け落ちることがより確実に防止され得る。ちなみに、このように弾性体をハウジングに対して強固に組み付ける際には、一般に、弾性体を上下方向で強く圧縮することが行われるが、これにより、例えば弾性体の下面が下方に膨出変形して弾性体とハウジングとの間に隙間が生じ易かった。また、弾性体の強く圧縮された部分が大きく凹み、弾性体とハウジングとの間に隙間が生じ易かった。それに対して、本実施形態の皮下埋込型ポート10では、弾性体16の外周部分が圧縮されてハウジング12に対して強固に組み付けられつつ、それよりも内周側では弾性体16の下面(膨らみ面124)が略ゼロタッチでベース部材26の当接面70に当接することから、弾性体16のハウジング12への強固な組付けと、弾性体16とハウジング12との隙間の発生の防止とが両立して達成され得る。
また、本実施形態では、ハウジング12が、ハウジング本体24とベース部材26とを含んだ分割構造とされており、弾性体16が、これらハウジング本体24とベース部材26とにより厚さ方向で挟まれて支持されることから、弾性体16のハウジング12への組付けが容易とされ得る。
さらに、本実施形態では、ハウジング12において内周フランジ部48の突出先端部(内周端縁部)に設けられる係止爪50が、弾性体16の外面(上面104)に係止されることから、例えば粘度の高い薬液が貯留されて内腔18内の圧力が大きくなった場合にも、弾性体16がハウジング12から外面側(上方)に抜け落ちることが防止され得る。
更にまた、本実施形態では、ベース部材26における当接面の内径寸法φα(内周壁部66の上端面72における内径寸法)が、ハウジング12の開口部14の内径寸法φβ(内周フランジ部48の内径寸法)と略等しくされている。すなわち、開口部14の内径寸法φβが、内腔18の上方部分の内径寸法と略等しくされていることから、開口部14を通じて弾性体16にコアレスニードル126を穿刺する際に、コアレスニードル126の先端が安定して内腔18内に導かれて、例えば内腔18を外れてベース部材26に突き刺さることが防止され得る。
また、本実施形態では、ハウジング12において弾性体16に対して外周側から重ね合わされるテーパ筒部36の内周面が、上方に向かって次第に内周側に傾斜する傾斜面34aとされている。当該傾斜面34aが圧縮保持部(周壁部60)による圧縮を受けた弾性体16を好適に内側に逃がすように作用して、円形凹部110を下方に膨らませ易くしている。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、前記実施形態では、ポート部材90とベース部材26とが別体として形成されていたが、これらは一体として形成されてもよく、即ちベース部材に対してポート部が一体的に形成されて、水平方向外方に突出していてもよい。また、前記実施形態では、ハウジング12が、上下方向で分割可能なハウジング本体24とベース部材26とを含んで構成されていたが、ハウジングは、例えば水平方向で分割可能な構造とされてもよいし、複数の部材で形成されていてもよいし、一体として形成されてもよい。さらに、ハウジング本体やベース部材などの部材はそれぞれ1つの部材である必要はなく、各々を複数の部材で構成してもよい。更にまた、ハウジング本体とベース部材とが直接接合や係合などで固定されていなくてもよく、別部材などを組み付けて固定してもよい。
さらに、前記実施形態では、弾性体16の下面106に形成される凹部が円形凹部110とされていたが、凹部の形状は円形に限定されるものではなく、多角形状や楕円や半円、およびこれらの組み合わせなどであってもよい。また、凹部は環状であってもよく、円環形状や多角環形状などであってもよい。
更にまた、前記実施形態では、弾性体16における円形凹部110の外周面114が、図11に示す断面において、略全長に亘って湾曲面形状とされていたが、例えば部分的にまたは略全長に亘って直線状とされてもよい。また、凹部の外周面が直線状とされる場合であっても、上下方向と平行であってもよいし、上下方向に対して傾斜していてもよい。
また、前記実施形態では、弾性体16の上面104や下面106、周壁部60の上端面72や内周壁部66の上端面70が、何れも水平方向に広がる平坦面とされていたが、例えば水平方向に対して傾斜して広がる平坦面であってもよい。さらに、前記実施形態では、周壁部60の内周面68が上下方向に対して平行に広がっていたが、上下方向に対して傾斜していてもよい。
更にまた、前記実施形態では、弾性体16の上面104に係止される係止爪50が、ハウジング本体24における内周フランジ部48の突出先端部(内周側端縁部)から下方に向かって突出して形成されていたが、係止爪は、例えば内周フランジ部の突出先端部に代えてテーパ筒部36の内周面に設けられてもよいし、内周フランジ部の突出先端部とテーパ筒部の内周面との両方に設けられてもよい。尤も、かかる係止爪は、本発明において必須なものではない。また、係止爪に対応する係止凹部を弾性体16に設けても良い。更にまた、弾性体16における環状平坦面118等の下面106が重ね合わされるベース部材26の当接面70や圧縮面(周壁部60の上端面72)、段差状部(周壁部60の内周面68)などにおいても、弾性体16への拘束力等を考慮して、係止爪等の凹凸を設けたり、水平方向や上下方向に対して各面を傾斜させたりしても良い。
また、前記実施形態では、弾性体16の圧縮前において、周壁部60の上端面72と対向する環状平坦面118の外周部分120が、環状平坦面118の径方向中間部分から外周端まで至っているとともに、内周壁部66の上端面70と対向する環状平坦面118の内周部分122が、環状平坦面118の径方向中間部分から内周端まで至っていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、環状平坦面の外周部分や内周部分は、外周端や内周端まで至ることなく、環状平坦面の径方向中間部分とされてもよい。
さらに、前記実施形態では、弾性体16の外周部分が上下方向で圧縮されることで略円形の平坦な膨らみ面124が形成されて、且つ膨らみ面124の外周部分が当接面(内周壁部66の上端面70)に対して略ゼロタッチで当接していたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、内周壁部は弾性体に対して圧縮力を加えるようであってもよい。周壁部が弾性体を強固に固定するにあたり弾性体に対して必要な圧縮力を加えている場合、周壁部よりも下方に位置する内周壁部は周壁部に比して弾性体に加える圧縮力が弱くなり、圧縮による弾性体の変形が小さい。従って、弾性体とハウジングとの間に生じる隙間は従来に比して小さいものとなる。また、膨らみ面は完全に平坦面とされる必要はなく、多少凹凸があってもよい。また、膨らみ面の外周部分は、当接面に対してある程度の圧縮力をもって当接していてもよく、即ち当接面により膨らみ面の外周部分がある程度圧縮されてもよい。これらのように膨らみ面に凹凸があったり圧縮されたりすることで内腔内に隙間が形成されるおそれがあるが、薬液の滞留が略全く生じない、または薬液の滞留が僅かにしか生じない程度であれば、内腔内、例えばハウジングと弾性体との間において隙間が形成されてもよい。すなわち、本発明に従う構造を採用することで、ハウジングと弾性体との隙間は完全に消失されなくても、隙間の大きさは略確実に小さくされることから、薬液の滞留を抑制するという効果は十分に発揮され得る。
また、ハウジングの具体的構造や形状は前記実施形態に限定されるものでなく、例えば前記実施形態ではハウジングが二つの部材から構成されていたが、一つ或いは三つ以上の部材で構成しても良い。具体的には、図14に例示するように、ハウジング12を構成するベース部材26において、別部材であるリング部材130を組み付けた構造をもって皮下埋込型ポート132を構成することも可能である。なお、理解を容易とするために、前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、図14中に前記実施形態と同一の符号を付しておく。
特に図14に示されるリング部材130は、ハウジング12内部に組み付けられており、ハウジング12表面に露呈されていない。そして、かかるリング部材130によれば、例えばX線不透過性の材質を採用して皮下埋込型ポート132の埋設状態下でX線による位置等の確認を可能にしたり、例えば外周面にレーザーマーキングや刻印などによる表示を施して可視光線透過材からなるハウジング本体24を通じて外部から目視可能な識別表示を実現したり、例えばベース部材26より高強度な金属等の材質を採用してベース部材26の補強部材として用いたりすることも可能である。
本実施形態のリング部材130は、前記実施形態のベース部材26の一部を置換的に構成しており、本実施形態では、ハウジング本体24とベース部材26とリング部材130とによってハウジング12が構成されている。そして、かかるリング部材130は、ベース部材26における周壁部60の上端の外周角部に位置して、周壁部60に対して外嵌状態で組み付けられている。その結果、ベース部材26の上端面(圧縮面)72の外周部分が、リング部材130の上端面によって構成されている。
すなわち、本実施形態では、弾性体16の環状平坦面118の外周部分120に対して重ね合わせられる面が、ハウジング12においてベース部材26とリング部材130とによって協働して構成されている。このような図14に示す構造によっても、前記実施形態と同様な作用効果が有効に発揮され得る。なお、例えばベース部材26における周壁部60において、内周壁部66の外周側に位置する部分の全体をリング部材で形成して、上端面(圧縮面)72と段差状部68の全体を、ベース部材26とは別部品であるリング部材で構成すること等も可能である。
また、本発明は、もともと以下(i),(ii)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 弾性体と、該弾性体を厚さ方向に圧縮するように組み付けられるハウジングとを、備えており、該ハウジングの開口部が該弾性体で塞がれて薬液貯留用の内腔が形成された皮下埋込型ポートであって、前記ハウジングへの組付前の前記弾性体の内面には、内面側に突出する環状面と、該環状面の内周側に位置する凹部とが形成されている一方、前記ハウジングは、該弾性体の該環状面の対向方向に突出して、組み付け時に該環状面の外周部分を厚さ方向に圧縮するための圧縮保持部を有しており、該圧縮保持部での圧縮によって該弾性体の該環状面の内周部分が外周側に向きを変え、その少なくとも一部が前記圧縮保持部の内周面と重なり合っている皮下埋込型ポート、
(ii) 弾性体と、該弾性体を厚さ方向に圧縮するように組み付けられるハウジングとを、備えており、該ハウジングの開口部が該弾性体で塞がれて薬液貯留用の内腔が形成された皮下埋込型ポートの製造方法であって、組み付けられる前において、前記弾性体の内面には、内面側に突出する環状面と、該環状面の内周側に位置する凹部とが形成されている一方、前記ハウジングは、該弾性体の該環状面の対向部分において、組み付け時に該環状面の外周部分を厚さ方向に圧縮するための圧縮保持部を有しており、該圧縮保持部は、前記弾性体の前記環状面の外周部分を圧縮する際、該環状面の内周部分を該圧縮保持部側に変形させる皮下埋込型ポートの製造方法、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、弾性体内面における環状面の外周部分がハウジングにおける圧縮保持部により厚さ方向で圧縮されることにより弾性体内面の外周部分に上方への変形が生じる。圧縮保持部による変形は、環状面の内周部分で生じ易い一方、凹部では生じにくい。そして、環状面の内周部分は、その内側に凹部があることから大きく変形し易く、環状面の外周部分に追随して圧縮保持部側に変形し易い。このため、環状面の内周部分が圧縮保持部による圧縮に伴い生じる隙間を埋めるように変形することから、圧縮による圧縮保持部と弾性体との間の隙間を従来に比して小さくすることができる。具体的には、環状面の内周部分が向きを変えて圧縮保持部の内周面と重なり合うことから、弾性体とハウジングとの間において弾性体の厚さ方向と直交する方向における隙間の発生が回避されるか、隙間が発生しても、その大きさが小さく抑えられる。これにより、内腔内における薬液の滞留が回避または抑制され得る。
上記(ii)に記載の発明では、弾性体をハウジングに組み付けるに際して、ハウジングの圧縮保持部により弾性体内面の外周部分が圧縮されることにより弾性体内面の外周部分に上方への変形が生じる。圧縮保持部による変形は、環状面の内周部分で生じ易い一方、凹部では生じにくい。そして、環状面の内周部分は、その内側に凹部があることから大きく変形し易く、環状面の外周部分に追随して圧縮保持部側に変形し易い。このため、環状面の内周部分が圧縮保持部による圧縮に伴い生じる隙間を埋めるように変形することから、圧縮による圧縮保持部と弾性体との間の隙間を従来に比して小さくすることができる。従って、弾性体のハウジングへの組付けに伴う弾性体とハウジングとの間の隙間の発生が回避されるか、隙間が発生しても、その大きさが小さくされ得る。