以下に、本発明に係る制御装置について、図面を用いて説明する。なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが、本発明に係る制御装置は、二輪のモータサイクル以外の車両(例えば、三輪のモータサイクル、バギー車、自転車等の他の鞍乗り型車両又は四輪の車両等)に用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ドライバが跨って乗車する車両を意味する。
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
<第1の実施形態>
図1~図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る制御装置30について説明する。
[モータサイクルの構成]
図1~図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る制御装置30が搭載されるモータサイクル100の構成について説明する。
図1は、制御装置30が搭載されるモータサイクル100の概略構成を示す模式図である。図2は、サスペンションの減衰特性について説明するための説明図である。図3は、制御装置30の機能構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、フロントサスペンション5と、リアサスペンション6と、制御装置(ECU)30とを備える。また、モータサイクル100は、フロントストロークセンサ71と、リアストロークセンサ72とを備える。モータサイクル100は、エンジン又はモータ等の動力源を備えており、動力源から出力される動力を用いて走行する。
フロントサスペンション5及びリアサスペンション6は、モータサイクル100のサスペンションの一例に相当し、胴体1と車輪との間に介在する。具体的には、フロントサスペンション5は、ハンドル2と前輪3とを接続するフロントフォーク7に設けられ、当該フロントサスペンション5の軸方向に沿って伸縮可能になっている。また、リアサスペンション6は、胴体1に搖動可能に支持され後輪4を旋回自在に保持するスイングアーム8と胴体1とを接続し、当該リアサスペンション6の軸方向に沿って伸縮可能になっている。
モータサイクル100のサスペンションは、具体的には、バネ及びダンパを備えている。当該バネ及び当該ダンパがサスペンションの軸方向に沿って伸縮することによって、路面からの振動が吸収され、モータサイクル100の車体に振動が伝達されることが抑制される。サスペンションのダンパ内に形成されている作動油の流路には、サスペンションの減衰特性(具体的には、各サスペンションのストローク速度に対する減衰力の特性)を制御するための制御弁が設けられている。当該制御弁の動作が制御装置30により制御されることによって、サスペンション(具体的には、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6)の減衰特性が制御されるようになっている。
サスペンションの減衰力は、具体的には、ストローク速度の正負(つまり、サスペンションのストロークする方向)に応じた方向に生じる。また、サスペンションの減衰力の大きさ(絶対値)は、ストローク速度の大きさ(絶対値)が大きいほど大きくなる。例えば、図2では、サスペンションの減衰特性として、減衰特性C1,C2,C3が例示されている。なお、図2では、横軸をストローク速度Vとし、縦軸を減衰力Fとして、各減衰特性が示されている。図2に示されるように、同一のストローク速度について生じる減衰力の大きさは、減衰特性C1,C2,C3の順に順次小さくなっている。ゆえに、例えば、サスペンションの減衰特性を減衰特性C2から減衰特性C1に変更することによって、サスペンションの減衰力を強くすることができる。一方、サスペンションの減衰特性を減衰特性C2から減衰特性C3に変更することによって、サスペンションの減衰力を弱くすることができる。なお、図2では、理解を容易にするために、3つの減衰特性が離散的に示されているが、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性は、具体的には、連続的に変更可能になっている。
フロントストロークセンサ71は、フロントサスペンション5のストローク量を検出し、検出結果を出力する。フロントストロークセンサ71が、フロントサスペンション5のストローク量に実質的に換算可能な他の物理量(例えば、フロントサスペンション5のストローク加速度又はフロントサスペンション5に掛かる力等)を検出するものであってもよい。フロントストロークセンサ71は、例えば、フロントサスペンション5に設けられている。
リアストロークセンサ72は、リアサスペンション6のストローク量を検出し、検出結果を出力する。リアストロークセンサ72が、リアサスペンション6のストローク量に実質的に換算可能な他の物理量(例えば、リアサスペンション6のストローク加速度又はリアサスペンション6に掛かる力等)を検出するものであってもよい。リアストロークセンサ72は、例えば、リアサスペンション6に設けられている。
フロントストロークセンサ71及びリアストロークセンサ72の検出値は、本発明に係る振動信号の一例に相当する。ここで、振動信号は、路面からモータサイクル100に入力される振動を示す信号を意味する。
制御装置30は、モータサイクル100のサスペンションの減衰特性を制御する装置である。
例えば、制御装置30の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置30の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置30は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置30は、例えば、胴体1に取り付けられている。
図3に示されるように、制御装置30は、例えば、取得部310と、制御部320とを含む。
取得部310は、モータサイクル100に搭載されている各装置から出力される情報を取得し、制御部320へ出力する。例えば、取得部310は、上述した各センサから出力される情報を取得する。
特に、取得部310は、モータサイクル100の走行中に振動信号を取得し、当該振動信号を制御部320へ出力する。例えば、取得部310は、フロントストロークセンサ71及びリアストロークセンサ72の検出値を振動信号としてモータサイクル100の走行中に取得する。取得部310でモータサイクル100の走行中に取得される振動信号は、制御部320が行う処理に用いられる。
制御部320は、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を制御する。具体的には、制御部320は、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の制御弁の動作を制御することによって、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を制御する。
特に、制御部320は、モータサイクル100の走行中に取得される振動信号に基づいて路面形状に関するパラメータを推定し、当該パラメータに基づいてフロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を制御する。路面形状に関するパラメータは、モータサイクル100が走行している路面の形状に関するものであり、例えば、路面の単位長さに含まれる凹凸の数に相当する空間周波数の推定値である周波数推定値又は路面の凹凸の振幅の推定値である振幅推定値を含む。
例えば、制御部320は、複数のバンドパスフィルタ部321と、統計処理部322と、サスペンション制御部323とを含む。各バンドパスフィルタ部321は、車両の走行中に取得される振動信号に対して他のバンドパスフィルタ部321と異なる周波数帯を有するバンドパスフィルタを施す。このように、振動信号に対して互いに異なる周波数帯を有する複数のバンドパスフィルタが並列に施されることにより、複数のバンドパス信号が生成され、統計処理部322に出力される。統計処理部322は、複数のバンドパス信号の各々の特徴量を用いた統計的処理を行うことにより路面形状に関するパラメータを推定すし、サスペンション制御部323に出力する。例えば、統計処理部322は、路面の周波数推定値を上記パラメータとして推定する周波数推定部322aと、路面の振幅推定値を上記パラメータとして推定する振幅推定部322bとを含む。サスペンション制御部323は、上記パラメータに基づいてフロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を変更する。
制御装置30では、制御部320によるサスペンションの減衰特性の制御によって、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を適切に制御することが実現される。このような制御部320が行うサスペンションの減衰特性の制御に関する処理については、後述にて詳細に説明する。
[制御装置の動作]
図4及び図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る制御装置30の動作について説明する。
図4は、制御装置30が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。具体的には、図4に示される制御フローは、制御装置30が行う処理のうち制御部320が行うサスペンションの減衰特性の制御に関する処理の流れに相当する。また、図4に示される制御フローは、例えば、モータサイクル100の電源システムの起動後(換言すると、モータサイクル100の運転開始後)に開始され、予め設定された設定時間間隔で繰り返し行われる。また、図4に示される制御フローが行われている間、取得部310は、フロントストロークセンサ71及びリアストロークセンサ72の検出値を振動信号として継続して取得する。図4におけるステップS510及びステップS590は、制御フローの開始及び終了にそれぞれ対応する。
図4に示される制御フローが開始されると、ステップS511において、制御部320は、モータサイクル100の走行中に取得される振動信号に対して互いに異なる周波数帯を有する複数のバンドパスフィルタを並列に施すことにより複数のバンドパス信号を生成する。なお、ステップS511におけるバンドパスフィルタ処理の対象となる振動信号としては、例えば、フロントストロークセンサ71の検出値及びリアストロークセンサ72の検出値のいずれか一方のみが用いられてもよく、双方の検出値を合成して得られる信号が用いられてもよい。
具体的には、各バンドパスフィルタ部321は、振動信号に対して他のバンドパスフィルタ部321と異なる周波数帯を有するバンドパスフィルタを施すことにより、バンドパス信号をそれぞれ生成する。それにより、振動信号に対して互いに異なる周波数帯を有する複数のバンドパスフィルタが並列に施され、複数のバンドパス信号が生成される。
ここで、図5を参照して、各バンドパスフィルタ部321により生成されるバンドパス信号について説明する。図5は、振動信号に対してバンドパスフィルタが施されることにより生成されるバンドパス信号について説明するための説明図である。なお、図5では、横軸を周波数fとし、縦軸をバンドパス信号の信号値SVとして、バンドパス信号の波形の一例が示されている。
図5に示されているバンドパス信号は、周波数帯の下限周波数がfLであり上限周波数がfHであるバンドパスフィルタを用いるバンドパスフィルタ部321によって生成されるバンドパス信号に相当する。上記バンドパスフィルタは、基本的には、下限周波数fLから上限周波数fHまでの間の周波数の信号を通過させ、それ以外の周波数の信号を遮断する。ゆえに、振動信号に対して上記バンドパスフィルタを施すことにより生成されるバンドパス信号は、図5に示されるように、主として、下限周波数fLから上限周波数fHまでの間の周波数を信号成分として有する。また、このようなバンドパス信号の信号値SVは、例えば、上記バンドパスフィルタの共振周波数fCの近傍で最大値をとる。以下では、このような信号値SVの最大値を最大信号値SVmaxと呼ぶ。後述する統計処理部322による路面形状に関するパラメータの推定では、例えば、バンドパス信号の最大信号値SVmaxがバンドパス信号の特徴量として用いられる。
ここで、バンドパス信号の生成に用いられるバンドパスフィルタの種類は、特に限定されないが、計算負荷を低減する観点では、バンドパス信号の生成に用いられるバンドパスフィルタは、IIR(Infinite impulse response)フィルタであることが好ましい。
なお、各バンドパスフィルタ部321のバンドパスフィルタの周波数帯は、適宜設定され得る。例えば、各バンドパスフィルタの周波数帯の幅は、所謂オクターブ分析において設定されるように対数スケールにおいて互いに同一であってもよく、対数スケールにおいて互い異なっていてもよい。また、例えば、共振周波数fCの大きさの順に複数のバンドパスフィルタを並べた場合に、隣り合うバンドパスフィルタの周波数帯は、互いに部分的に重複していてもよく、重複していなくてもよい。ゆえに、複数のバンドパスフィルタの周波数帯は、連続していてもよく、不連続であってもよい。
次に、ステップS513において、制御部320は、路面の周波数推定値を路面形状に関するパラメータとして推定する。
具体的には、統計処理部322の周波数推定部322aは、各バンドパス信号の特徴量を用いた統計的処理を行うことにより路面の周波数推定値を推定する。例えば、周波数推定部322aは、各バンドパスフィルタの周波数帯に対応する指標値を各バンドパス信号の特徴量に応じた重みで重み付け平均することにより路面の周波数推定値を推定する。
例えば、周波数推定部322aは、各バンドパスフィルタの周波数帯に対応する指標値として、バンドパスフィルタの共振周波数fCを用いる。また、例えば、周波数推定部322aは、バンドパス信号の特徴量として、バンドパス信号の最大信号値SVmaxを用いる。この場合、周波数推定部322aは、各バンドパスフィルタの周波数帯に対応する指標値としての共振周波数fCを各バンドパス信号の特徴量としての最大信号値SVmaxに応じた重みで重み付け平均することにより路面の周波数推定値を推定する。例えば、周波数推定部322aは、N個のバンドパスフィルタを用いてN個のバンドパス信号が生成される場合、下記の式(1)を用いて路面の周波数推定値P1を推定する。
式(1)において、fC_iはi個目のバンドパスフィルタの共振周波数fCであり、SVmax_iはi個目のバンドパスフィルタを用いて生成されるバンドパス信号の最大信号値SVmaxである。
なお、上記では、周波数推定値の推定方法の一例を説明したが、周波数推定値の推定方法は上記の例に特に限定されない。例えば、各バンドパスフィルタの周波数帯に対応する指標値として、共振周波数fC以外の値(例えば、各バンドパスフィルタの中心周波数等)を用いて周波数推定値を推定してもよい。また、例えば、式(1)の右辺にさらに係数が追加されてもよい。また、例えば、上記の式(1)を用いた重み付け平均による算出方法では、最大信号値SVmaxそのものが重みとして設定されているが、重みの設定方法は上記の例に限定されない。例えば、一部のバンドパスフィルタの共振周波数fCについて、最大信号値SVmaxより大きな値又は小さな値が重みとして設定されるようになっていてもよい。
また、周波数推定部322aは、重み付け平均以外の統計的処理を行うことにより周波数推定値を推定してもよい。例えば、周波数推定部322aは、事前に学習される予測モデルを用いた統計的処理を行うことにより周波数推定値を推定してもよい。事前の学習では、例えば、各バンドパス信号の特徴量と周波数推定値とのペアが多数用意され、用意された多数のペアを用いて各バンドパス信号の特徴量から周波数推定値を予測するための予測モデルが構築される。ゆえに、周波数推定部322aは、このような予測モデルと、各バンドパス信号の特徴量とに基づいて、周波数推定値を推定することができる。
次に、ステップS515において、制御部320は、路面の振幅推定値を路面形状に関するパラメータとして推定する。
具体的には、統計処理部322の振幅推定部322bは、各バンドパス信号の特徴量を用いた統計的処理を行うことにより路面の振幅推定値を推定する。例えば、振幅推定部322bは、各バンドパス信号の特徴量の総和を算出することにより路面の振幅推定値を推定する。
例えば、振幅推定部322bは、上述した周波数推定値の推定処理と同様に、バンドパス信号の特徴量として、バンドパス信号の最大信号値SVmaxを用いる。この場合、振幅推定部322bは、各バンドパス信号の特徴量としての最大信号値SVmaxの総和を算出することにより路面の振幅推定値を推定する。例えば、振幅推定部322bは、N個のバンドパスフィルタを用いてN個のバンドパス信号が生成される場合、下記の式(2)を用いて路面の振幅推定値P2を推定する。
式(2)において、SVmax_iは、上述した式(1)と同様に、i個目のバンドパスフィルタを用いて生成されるバンドパス信号の最大信号値SVmaxである。
なお、上記では、振幅推定値の推定方法の一例を説明したが、振幅推定値の推定方法は上記の例に特に限定されない。例えば、式(2)の右辺にさらに係数が追加されてもよい。また、振幅推定部322bは、各バンドパス信号の特徴量の総和を算出すること以外の統計的処理を行うことにより振幅推定値を推定してもよい。例えば、振幅推定部322bは、周波数推定値の推定処理と同様に、事前に学習される予測モデルを用いた統計的処理を行うことにより振幅推定値を推定してもよい。事前の学習では、例えば、各バンドパス信号の特徴量と振幅推定値とのペアが多数用意され、用意された多数のペアを用いて各バンドパス信号の特徴量から振幅推定値を予測するための予測モデルが構築される。ゆえに、振幅推定部322bは、このような予測モデルと、各バンドパス信号の特徴量とに基づいて、振幅推定値を推定することができる。
次に、ステップS517において、制御部320は、路面形状に関するパラメータに基づいて、モータサイクル100のサスペンションの減衰特性を変更する。
具体的には、サスペンション制御部323は、統計処理部322により推定された路面形状に関するパラメータに基づいて、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を変更する。
例えば、サスペンション制御部323は、路面の周波数推定値が大きいほど、路面の周波数推定値が小さい場合と比較して同一のストローク速度について生じる減衰力の大きさが小さくなるように、サスペンションの減衰特性を変更する。それにより、路面の周波数推定値が大きく、路面が比較的荒れている場合において、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰力を弱くすることができる。また、路面の周波数推定値が小さく、路面が比較的滑らかである場合において、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰力を強くすることができる。ゆえに、モータサイクル100の姿勢を安定化することができる。
また、例えば、サスペンション制御部323は、路面の振幅推定値が大きいほど、路面の振幅推定値が小さい場合と比較して同一のストローク速度について生じる減衰力の大きさが小さくなるように、サスペンションの減衰特性を変更する。それにより、路面の振幅推定値が大きく、路面が比較的荒れている場合において、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰力を弱くすることができる。また、路面の振幅推定値が小さく、路面が比較的滑らかである場合において、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰力を強くすることができる。ゆえに、モータサイクル100の姿勢を安定化することができる。
なお、サスペンション制御部323は、路面の周波数推定値及び路面の振幅推定値の双方に基づいてフロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を変更してもよく、路面の周波数推定値及び路面の振幅推定値のいずれか一方に基づいてフロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を変更してもよい。また、上記では、路面の周波数推定値又は路面の振幅推定値が大きいほどサスペンションの減衰力が弱くなるようにサスペンションの減衰特性を変更する例について説明したが、路面形状に関するパラメータと変更後の減衰特性との関係性は、上記の例に特に限定されない。
次に、図4に示される制御フローは終了する。
[制御装置の効果]
本発明の第1の実施形態に係る制御装置30の効果について説明する。
制御装置30では、制御部320は、モータサイクル100の走行中に取得される振動信号に対して互いに異なる周波数帯を有する複数のバンドパスフィルタを並列に施すことにより複数のバンドパス信号を生成する。そして、制御部320は、複数のバンドパス信号の各々の特徴量を用いた統計的処理を行うことにより路面形状に関するパラメータを推定する。そして、制御部320は、路面形状に関するパラメータに基づいてモータサイクル100のサスペンションの減衰特性を変更する。それにより、高速フーリエ変換等を用いる従来の方法と比較して、路面形状に関するパラメータを推定するための処理における計算負荷及び処理時間を低減することができる。ゆえに、サスペンションの減衰特性の制御において制御装置30の処理能力が不足することを抑制することができる。また、サスペンションの減衰特性の制御における路面形状の変化に対する応答性を向上させることができる。よって、サスペンションの減衰特性を適切に制御することができる。
好ましくは、制御装置30では、制御部320は、路面の周波数推定値を路面形状に関するパラメータとして推定し、路面の周波数推定値に基づいてモータサイクル100のサスペンションの減衰特性を変更する。それにより、路面の単位長さに含まれる凹凸の数に相当する空間周波数に応じてモータサイクル100のサスペンションの減衰特性をより適切に制御することができる。ゆえに、モータサイクル100の姿勢を適切に安定化することができる。
好ましくは、制御装置30では、制御部320は、複数のバンドパスフィルタの各々の周波数帯に対応する指標値を複数のバンドパス信号の各々の特徴量に応じた重みで重み付け平均することにより路面の周波数推定値を推定する。それにより、複数のバンドパス信号の各々の特徴量を用いた統計的処理を行うことにより路面の周波数推定値を路面形状に関するパラメータとして推定することを適切に実現することができる。ゆえに、路面形状に関するパラメータとしての路面の周波数推定値を推定するための処理における計算負荷及び処理時間を適切に低減することができる。
好ましくは、制御装置30では、制御部320は、路面の振幅推定値を路面形状に関するパラメータとして推定し、路面の振幅推定値に基づいてモータサイクル100のサスペンションの減衰特性を変更する。それにより、路面の凹凸の振幅に応じてモータサイクル100のサスペンションの減衰特性をより適切に制御することができる。ゆえに、モータサイクル100の姿勢を適切に安定化することができる。
好ましくは、制御装置30では、制御部320は、複数のバンドパス信号の各々の特徴量の総和を算出することにより路面の振幅推定値を推定する。それにより、複数のバンドパス信号の各々の特徴量を用いた統計的処理を行うことにより路面の振幅推定値を路面形状に関するパラメータとして推定することを適切に実現することができる。ゆえに、路面形状に関するパラメータとしての路面の振幅推定値を推定するための処理における計算負荷及び処理時間を適切に低減することができる。
好ましくは、制御装置30では、バンドパス信号の生成に用いられるバンドパスフィルタは、IIRフィルタである。それにより、振動信号からバンドパス信号を生成する処理における計算負荷を低減することができる。ゆえに、路面形状に関するパラメータを推定するための処理における計算負荷をさらに低減することができる。
<第2の実施形態>
図6及び図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る制御装置40について説明する。
[モータサイクルの構成]
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る制御装置40が搭載されるモータサイクル200の構成について説明する。
モータサイクル200は、上述したモータサイクル100と比較して、制御装置の機能構成について異なる。なお、モータサイクル200における制御装置40以外の構成については、上述したモータサイクル100と共通するので、説明を省略する。
図6は、制御装置40の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6に示されるように、制御装置40は、例えば、取得部310と、制御部420とを含む。制御部420は、上述した制御装置30の制御部320と比較して、モード設定部424をさらに備える。
モード設定部424は、サスペンションの減衰特性を特定の目標減衰特性に変更する制御モードを複数のモードの間で切り替えて設定する。複数のモードの間では、目標減衰特性は、互いに異なっている。
具体的には、モード設定部424は、サスペンションの減衰特性を第1の減衰特性に変更する第1モードと、サスペンションの減衰特性を第2の減衰特性に変更する第2モードとを切り替えて設定する。第1モードの目標減衰特性である第1の減衰特性及び第2モードの目標減衰特性である第2の減衰特性は、互いに異なっている。ここで、モード設定部424は、路面形状に関するパラメータに応じて第1モードと第2モードとを切り替える。
より詳細には、統計処理部322により推定された路面形状に関するパラメータがモード設定部424に出力され、モード設定部424は、当該パラメータに応じて第1モードと第2モードとを切り替える。そして、モード設定部424により設定されたサスペンションの減衰特性の制御モードを示す情報はサスペンション制御部323に出力され、サスペンション制御部323は、設定されたサスペンションの減衰特性の制御モードに応じてフロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を変更する。
[制御装置の動作]
図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る制御装置40の動作について説明する。
図7は、制御装置40が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。具体的には、図7に示される制御フローは、制御装置40が行う処理のうち制御部420が行うサスペンションの減衰特性の制御に関する処理の流れに相当する。また、図7に示される制御フローは、例えば、モータサイクル200の電源システムの起動後(換言すると、モータサイクル200の運転開始後)に開始され、予め設定された設定時間間隔で繰り返し行われる。また、図7に示される制御フローが行われている間、取得部310は、フロントストロークセンサ71及びリアストロークセンサ72の検出値を振動信号として継続して取得する。図7におけるステップS610及びステップS690は、制御フローの開始及び終了にそれぞれ対応する。
なお、以下では、図7を参照して、モード設定部424が路面の周波数推定値に応じて第1モードと第2モードとを切り替える例を説明するが、後述するように、モード設定部424は路面の振幅推定値に応じて第1モードと第2モードとを切り替えてもよい。
図7に示される制御フローが開始されると、ステップS611において、制御部420は、上述した図4に示される制御フローのステップS511の処理と同様に、モータサイクル200の走行中に取得される振動信号に対して互いに異なる周波数帯を有する複数のバンドパスフィルタを並列に施すことにより複数のバンドパス信号を生成する。
次に、ステップS613において、制御部420は、上述した図4に示される制御フローのステップS513の処理と同様に、路面の周波数推定値を路面形状に関するパラメータとして推定する。
次に、ステップS615において、モード設定部424は、周波数推定値が基準周波数範囲内にあるか否かを判定する。周波数推定値が基準周波数範囲内にあると判定された場合(ステップS615/YES)、ステップS617へ進む。一方、周波数推定値が基準周波数範囲内にないと判定された場合(ステップS615/NO)、ステップS619へ進む。
基準周波数範囲は、例えば、サスペンションの減衰特性が第1の減衰特性である場合の方が、サスペンションの減衰特性が第2の減衰特性である場合よりも、モータサイクル200の姿勢が安定化されやすくなる路面の空間周波数の範囲である。
ステップS615でYESと判定された場合、ステップS617において、モード設定部424は、サスペンションの減衰特性の制御モードを第1モードに切り替える。一方、ステップS615でNOと判定された場合、ステップS619において、モード設定部424は、サスペンションの減衰特性の制御モードを第2モードに切り替える。
ステップS617又はステップS619の次に、ステップS621において、サスペンション制御部323は、モード設定部424により設定されたサスペンションの減衰特性の制御モードに応じてフロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を変更する。
具体的には、サスペンション制御部323は、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を、設定された制御モードに対応した目標減衰特性に変更する。例えば、ステップS615でYESと判定された場合、ステップS617においてサスペンションの減衰特性の制御モードが第1モードに切り替えられているので、サスペンション制御部323は、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を第1の減衰特性に変更する。一方、ステップS615でNOと判定された場合、ステップS617においてサスペンションの減衰特性の制御モードが第2モードに切り替えられているので、サスペンション制御部323は、フロントサスペンション5及びリアサスペンション6の減衰特性を第2の減衰特性に変更する。
次に、図7に示される制御フローは終了する。
なお、上記では、モード設定部424が路面の周波数推定値に応じて第1モードと第2モードとを切り替える例を説明したが、モード設定部424は路面の振幅推定値に応じて第1モードと第2モードとを切り替えてもよい。その場合、例えば、モード設定部424は、路面の振幅推定値が基準振幅範囲内にあるか否かに応じて第1モードと第2モードとを切り替える。
具体的には、モード設定部424は、路面の振幅推定値が基準振幅範囲内にある場合、サスペンションの減衰特性の制御モードを第1モードに切り替える。一方、モード設定部424は、路面の振幅推定値が基準振幅範囲内にない場合、サスペンションの減衰特性の制御モードを第2モードに切り替える。基準振幅範囲は、例えば、サスペンションの減衰特性が第1の減衰特性である場合の方が、サスペンションの減衰特性が第2の減衰特性である場合よりも、モータサイクル200の姿勢が安定化されやすくなる路面の凹凸の振幅の範囲である。
なお、モード設定部424は、路面の周波数推定値及び路面の振幅推定値の双方に応じて、第1モードと第2モードとを切り替えてもよい。
また、上記では、図7に示される制御フローを参照してモード設定部424が設定可能なサスペンションの減衰特性の制御モードが2個である例を説明したが、設定可能な制御モードは3個以上であってもよい。例えば、モード設定部424は、第1モード及び第2モードに加えて、サスペンションの減衰特性を第3の減衰特性に変更する第3モードを、サスペンションの減衰特性の制御モードとして設定可能であってもよい。なお、第3モードの目標減衰特性である第3の減衰特性は、第1の減衰特性及び第2の減衰特性とは異なる減衰特性である。
[制御装置の効果]
本発明の第2の実施形態に係る制御装置40の効果について説明する。
好ましくは、制御装置40では、制御部420は、モータサイクル200のサスペンションの減衰特性を第1の減衰特性に変更する第1モードと、モータサイクル200のサスペンションの減衰特性を第2の減衰特性に変更する第2モードとを切り替えて設定するモード設定部424を含む。また、モード設定部424は、路面の周波数推定値に応じて第1モードと第2モードとを切り替える。それにより、サスペンションの減衰特性を路面の周波数推定値に応じて段階的に変化させることができる。ゆえに、サスペンションの減衰特性を路面の単位長さに含まれる凹凸の数に相当する空間周波数に応じて適切に制御しつつ、例えば減衰特性を路面の周波数推定値に応じて連続的に変化させる場合と比較して計算負荷をさらに低減することができる。
好ましくは、制御装置40では、制御部420は、モータサイクル200のサスペンションの減衰特性を第1の減衰特性に変更する第1モードと、モータサイクル200のサスペンションの減衰特性を第2の減衰特性に変更する第2モードとを切り替えて設定するモード設定部424を含む。また、モード設定部424は、路面の振幅推定値に応じて第1モードと第2モードとを切り替える。それにより、サスペンションの減衰特性を路面の振幅推定値に応じて段階的に変化させることができる。ゆえに、サスペンションの減衰特性を路面の凹凸の振幅に応じて適切に制御しつつ、例えば減衰特性を路面の振幅推定値に応じて連続的に変化させる場合と比較して計算負荷をさらに低減することができる。
本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の全て又は一部が組み合わされてもよく、また、各実施の形態の一部のみが実施されてもよい。