JP2011152838A - 車両のショックアブソーバの減衰力制御装置 - Google Patents

車両のショックアブソーバの減衰力制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 うねり路走行時にうねりに起因する車体振動に基づいてこれから車輪が到達すると予測される路面のうねりの振動に合わせて車両のショックアブソーバの減衰力を制御する場合に於いて、制御開始後に、路面のうねりに起因する車体振動に適合して要求減衰力の位相又は周期を補正できるようにすること。
【解決手段】 本発明の減衰力制御装置は、走行路面のうねりに起因する車両の少なくとも一部に発生する上下方向の振動と車速とに基づいてうねりの波長を推定するうねり波長推定部と、うねりの波長に基づいて要求減衰力を決定する要求減衰力決定部と、要求減衰力に基づきショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、うねりに起因する車両の上下方向の振動と要求減衰力の位相差に基づいて要求減衰力の位相を補正する位相補正部とを含む。
【選択図】 図4

Description

本発明は、自動車等の車両のショックアブソーバの減衰力制御装置に係り、より詳細には、路面高が振動的に変化する“うねり”を有する路面上を走行中の車両に於いて車両の上下方向の振動を効果的に減衰するための減衰力制御装置に係る。
自動車等の車両のサスペンションのショックアブソーバに要求される減衰力の大きさは、車両の走行状況や路面状態によって変化する。そこで、従来より、運転操作や路面入力に基づいてショックアブソーバの減衰力を可変に制御する減衰力可変制御が種々提案され実用化されている。典型的なショックアブソーバは、流体を封入したシリンダと、流体を逃す流路(オリフィス、バルブ)が設けられシリンダ内にて往復動するピストンとを有し、車体の上下運動と伴にピストンがシリンダ内にて運動する際にピストンの流路を流体が通過するときの流動抵抗により減衰力を発生して車体の上下運動のエネルギーを吸収するよう構成されているところ、減衰力可変制御では、ピストンの流路の大きさが(通常、数段階にて)可変のショックアブソーバが用いられ、加減速時又は操舵時に発生し得る車両に作用し得る前後加速度や横加速度に基づいて、或いは、車体振動の発生状態に基づいて、乗り心地と制振を考慮した好適な減衰力が得られるようにピストンの流路の大きさを変更して流動抵抗が制御される。
かかる減衰力可変制御のうち、加減速或いは操舵等の運転操作に基づく減衰力制御に於いては、運転者の操作があったときから、その操作が車両に反映されるまでの時間に、運転操作に対応した好適な減衰力の調整が可能である。しかしながら、路面の凹凸や突起の乗り越しなど、路面からの車輪への“入力”に起因する車体振動の抑制のための減衰力制御に於いては、通常、受動的に、即ち、路面入力後に車体振動が発生してからその振動を抑制することになるので、要求減衰力の算出や流動抵抗の変更のためのアクチュエータの作動遅れにより、所望の減衰力が達成されるべき時期に間に合わず(制御の遅れ)、反って、振動の助長が起こり得る。そこで、従前の典型的な減衰力の調整に際しては、或る程度の車体の動きを許容した違和感の無いような緩やかな振動の収束と或る程度の衝撃感を許容した短期間の振動の収束とを適当にバランスするといった処置が為されていた。或いは、路面入力に対する遅れのない減衰力制御を達成するための手法として、車体の上下振動のFFT演算により得られた振動の周波数成分からファジー推論によって推定された路面状態に対応して減衰力を設定すること(特許文献1)や、車両の前方(車輪よりも前方)に設けられた路面の凹凸を検知するセンサの出力に基づいて要求減衰力を算出し、車輪が検知された路面の凹凸に到達したときに算出された要求減衰力を達成できるようにすること(特許文献2、3)などが提案されている。
特開平5−310022 特開平6−24233 特開2001−47835
ところで、車両の走行道路に於いて、例えば、アメリカ合衆国ロサンゼルス地域などでは、山と谷が交互に連続する「うねり」、即ち、路面高が振動的に増減する状態が比較的長い距離に連続する道路(以下、「うねり路」と称する。)が存在する。そのような「うねり路」の走行中に於いて、上記の如く、減衰力制御を受動的に実行する場合には、やはり、要求減衰力の算出やアクチュエータの作動遅れにより制御の遅れが生じ得る。特に、かかる制御遅れは、うねりの間隔が短く、車速が高い場合に生じ易い。そこで、本発明の発明者は、車両のうねり路の走行中に於いてうねりに起因する車体振動の周期(うねりの周期)を算出する手段を有し、うねりの周期が算出された後は、そのうねりの周期を用いてショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御装置を提案した(特願2008−286374)。かかる減衰力制御装置によれば、路面のうねりに起因する車体の振動については、時々刻々の路面入力により発生した車体の振動に対する受動的な制振制御ではなく、うねりの周期に基づいて、これから車輪が到達すると予測される路面のうねりに起因する振動に合わせて減衰力が振動的に変更され、精度の良い制振制御が、制御の遅れがない状態にて実行可能となることが期待される。
しかしながら、上記のうねりの周期を算出しその周期に基づいて振動的な減衰力制御が実行される場合、制御開始後に、うねり路の走行中に車速が変化すると、路面のうねりが変化していなくても、路面のうねりに起因する車体の振動の周期が変化し、検出された路面のうねりの周期がそのまま要求減衰力の算出に用いることができなくなる。また、上記の如き減衰力制御に於いて、制御の開始後、種々の要因で、例えば、急な加減速が為された場合、或いは、路面のうねりが変化した場合などに、装置に於いて算出される要求減衰力が路面のうねり又はそれに起因する車体振動に適合しなくなり、要求減衰力の位相又は周期と、実際の路面のうねり又はそれに起因する車体振動に対して達成されるべき減衰力の位相又は周期との間に有意なずれ(偏差)が生ずることとなる。従って、かかる減衰力制御の精度を更に向上をするためには、装置に於いて算出される要求減衰力の位相又は周期が実際の路面のうねり又はそれに起因する車体振動に対応して車両の走行中に自動的に修正できるようになっていることが好ましい。
かくして、本発明の一つの課題は、うねり路走行時に路面のうねりに起因する車体振動に基づいてこれから車輪が到達すると予測される路面のうねりの振動に合わせて車両のショックアブソーバの減衰力を制御する装置であって、車速によらず、路面のうねりの振動に合わせて減衰力の変更ができるよう構成された装置を提供することである。
また、本発明のもう一つの課題は、上記の如きうねり路の走行時のための減衰力制御装置であって、制御開始後に路面のうねり若しくはそれに起因する車体振動に対応して要求減衰力の位相及び/又は周期を補正できるよう構成された装置を提供することである。
本発明によれば、上記の課題を解決するための一つの態様として、車両のショックアブソーバの減衰力制御装置であって、車両のうねり路走行中に走行路面のうねりに起因する車両の少なくとも一部に発生する上下方向の振動と車速とに基づいてうねりの波長を推定するうねり波長推定部と、推定されたうねりの波長に基づいて要求減衰力を決定する要求減衰力決定部と、その要求減衰力に基づきショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、うねりに起因する車両の上下方向の振動と要求減衰力の位相差に基づいて要求減衰力の位相を補正する位相補正部とを含むことを特徴とする装置が提案される。かかる構成に於いて、「車両の少なくとも一部に発生する上下方向の振動」とは、路面のうねり、即ち、路面高の周期的な変化が直接的に反映される車両の任意の部位に於ける振動であってよく、具体的には、例えば、ばね上又はばね下の上下加速度の振動的な変位、サスペンション・ストロークの振動的な変位であってよい。また、「うねりの波長」とは、周期的に増減する路面高の波形に於ける一つの波(一つの山と谷との組)の長さであり、実施形態に於いて、路面の一つの山(又は谷)とそれに隣接する山(又は谷)との間の距離であってよい。
既に触れた如く、前記の特願2008−286374に記載されている減衰力制御に於いては、先ず、車両のうねり路走行中に路面のうねりに起因する車体の振動からうねりの周期が検出され、その検出された周期に基づいて決定された要求減衰力が達成されるように減衰力の変更が為されるようになっていた。かかる構成によれば、制御の遅れなく路面高の変化に時間的に適合して減衰力の変更が可能となり、例えば、車輪が路面の山(又は谷)に到達するときまで実際の減衰力をかかる路面の山(又は谷)に適合した大きさに設定する、といった制御態様が可能となる。しかしながら、かかる構成の場合、(うねりの波長の変化がない状態で)車速が変化したときには、うねりによって生ずる車両の振動の周期が変化してしまい、それ以後、既に検出された周期は要求減衰力の決定には利用できなくなる。そこで、本発明に於いては、車両のうねり路走行中に走行路面の「うねりの波長」を推定し、その推定された「うねりの波長」に基づいて要求減衰力が決定される。路面の「うねりの波長」は、実施形態の欄に記載されている如く、前記の車両の上下方向の振動と車速とから推定可能であり、且つ、その値は、当然、車速に依存しない値であるので、かかる「うねりの波長」を用いて要求減衰力を決定する手法によれば、うねり路走行時のための減衰力制御の開始後に車速の変化があっても精度よく制御が続行できることとなる。
しかしながら、上記の如く、うねりの波長に基づいて要求減衰力が決定されたとしても、その他の某かの要因により、振動的に変化する要求減衰力がうねりに起因する車両の上下方向の振動変位に時間的に適合しなくなる場合がある。そこで、上記の本発明の装置に於いては、更に、うねりに起因する車両の上下方向の振動と要求減衰力の位相差を監視し、かかる位相差に基づいて要求減衰力の振動位相が適正な状態となるよう要求減衰力の位相を補正する位相補正部が設けられ、減衰力制御の更なる精度向上が図られる。
上記の本発明の装置の構成に於いて、より詳細には、減衰力制御が適正である場合、うねりに起因する車両の上下方向の振動変位と要求減衰力の変位との間の位相差は予定された或る値となる。従って、うねりに起因する車両の上下方向の振動変位と要求減衰力の位相差と、予定された位相差との間に偏差があるときには、要求減衰力を補正するようになっていてよい。その際、前記の偏差が略一定のときには、要求減衰力の周波数(又は周期)は、路面のうねりに適合していると考えられるので、その場合には、位相補正部により、要求減衰力の位相が変更されるようになっていてよい。一方、うねりに起因する車両の上下方向の振動変位と要求減衰力との位相差が時間と伴に変化するときには、要求減衰力の周波数(又は周期)は、路面のうねりに適合しなくなっていると考えられるので、その場合には、うねりの波長を変更して要求減衰力が決定されるようになっていてよい。なお、うねりに起因する車両の上下方向の振動変位と要求減衰力との間の位相差の予定された値からの偏差は、うねりに起因する車両の上下方向の振動変位と要求減衰力の変位とを直接的に比較することによって、或いは、それらの振動変位を周波数解析するなどによって監視するようになっていてよい。
また、上記の本発明の装置の構成に於いて、うねりの波長は、任意の手法にて推定されてよいところ、少なくとも二つ以上の異なる手法により推定され、その推定精度の向上が図られていることが好ましい。そこで、実施の形態として、
うねり波長推定部は、好適には、車両の上下方向の振動から検出されるうねりに起因する振動の周波数と車速とに基づいてうねりの波長を推定する第一のうねり波長推定部と、車両の上下方向の振動の強度と車速とに基づいてうねりの波長を推定する第二のうねり波長推定部とを含み、第一のうねり波長推定部により推定されたうねりの波長と第二のうねり波長推定部により推定されたうねり波長とが実質的に一致したとき、要求減衰力決定部が、うねりの波長に基づいて要求減衰力を決定するようになっていてよい。かかる構成によれば、外乱やノイズ等による誤判定が生ずる可能性が低減され、制御の精度向上も期待される。また、特に、前記の第二のうねり波長推定部は、より詳細には、車両の上下方向の振動の強度の少なくとも2つのピークの間の時間と車速とに基づいてうねりの波長を推定するよう構成されていてよい。かかる手法では、周波数解析等による手法に比して、推定演算に要する時間が短く、迅速にうねり波長の推定結果が得られる点で有利である。なお、うねりの波長の推定は、上記の第一又は第二のうねり波長推定部のいずれか一方のみにより為されてもよく、そのような場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
ところで、上記のうねりに起因する車両の上下方向の振動と要求減衰力の位相差を監視し、かかる位相差に基づいて要求減衰力の振動位相が適正な状態となるよう要求減衰力を補正する態様は、要求減衰力がうねりの周期に基づいて決定される場合にも適用可能である。従って、本発明のもう一つの態様によれば、車両のショックアブソーバの減衰力制御装置であって、車両のうねり路走行中に走行路面のうねりに起因する車両の少なくとも一部に発生する上下方向の振動の周期又は周波数を検出するうねり検出部と、前記の周期又は周波数に基づいて決定される要求減衰力に基づきショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部とを含み、更に、うねりに起因する車両の上下方向の振動と要求減衰力の位相差を検出し、その位相差が変化しているときには、要求減衰力の周期又は周波数を補正し、前記の位相差と予定された位相差との偏差が略一定のときには要求減衰力の位相を補正する減衰力補正部が設けられている装置が提案される。かかる構成によれば、うねりに起因する車両の上下方向の振動の対する要求減衰力の振動が適正でなくなったとき、要求減衰力の周波数又は位相が適正に修正されることとなり、従前に比して、より良好な減衰力制御の達成が期待されることとなる。
従前の車両のショックアブソーバの減衰力制御のうち、路面入力に対する制御は、特別なセンサを用いて予め路面状態を検知する場合を除き、受動的制御であり、比較的早い振動入力に対しては、既に触れた如く、制御の遅れが生ずる可能性があったことから、うねり路走行時には、減衰力を比較的低いレベルに設定し、ソフトな乗り心地を維持する処置が取られていた。そして、その結果、操舵時の車両応答性能や接地性の悪化、ブルブル振動の増加といった現象が発生し易くなっていた。しかしながら、上記の本発明による減衰力制御装置によれば、うねり路の走行時に於いては、路面のうねりの変化に時間的に間に合うように減衰力の調整を行うことが可能な「能動的」な制御が実現可能となり、減衰力を比較的低いレベルに固定した場合に生じていた問題が解消されることとなる。また、本発明の構成に於いては、制御の開始後に要求減衰力の位相を監視し、その周期又は位相を自動的に補正できるようになっているので、従前に比してより長期間に亘って良好な制御が続行できることが期待される。更に、本発明に於いては、うねりの波長又は周期(若しくは周波数)の検出、制御開始後の要求減衰力の周期又は位相の補正は、車両の振動変位と車速、即ち、通常の車両に搭載される設備により取得可能な情報を用いて達成されることとなるので、路面の状態を車輪がその路面に到達する前に検知するための特殊なセンサを準備する必要がない点でも有利である。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1(A)は、本発明によるショックアブソーバの減衰力制御装置の好ましい実施形態が組み込まれる自動車の模式図を示している。図1(B)は、減衰力制御装置の内部構成を制御ブロック図の形式で表したものである。 図2(A)は、波長xのうねり路を速度Vにて走行中の車両の模式図を示し、図2(B)は、うねり路走行中の前輪のサスペンション・ストロークのFFT処理の結果の例を示している。 図3は、うねり路走行中の車両に於いて検出される路面高(ばね下振動に対応)の時間変化(上段)と、ショックアブソーバのピストンの運動速度の時間変化(中段)と、ショックアブソーバに於いて達成されるべき減衰力(要求減衰力)の時間変化(下段)の関係を説明する図である。 図4は、それぞれ、うねり路走行時のための減衰力制御の開始後の要求減衰力の時間変化(上段)とばね下振動(路面高に相当)の時間変化(下段)の関係を模式的に示した図である。(A)要求減衰力とばね下振動の位相差が予定された値(1/4fb)からずれた状態。(B)要求減衰力とばね下振動の周期がずれた状態。 図5(A)は、要求減衰力決定部に於ける制御処理をフローチャートの形式で表した図であり、図5(B)は、位相差監視・補正要求部に於ける制御処理をフローチャートの形式で表した図である。
10…車体
12FL、FR、RL、RR…車輪
20FL、FR、RL、RR…サスペンション
22…減衰力調整式ショックアブソーバのアクチュエータ
30FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
60a…車体上下Gセンサ
60b…前輪上下Gセンサ又はサスペンション・ストローク・センサ
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
図1(A)は、本発明の車両のショックアブソーバの減衰力制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両を模式的に示している。同図を参照して、左右前輪12FL、12FR及び左右後輪12RL、12RRを有する車両10に於いては、ばねkf、krとショックアブソーバcf、crとを有するサスペンション20FL、FR、RL、RRが、それぞれ、車体又は車枠10aと各輪12i(i=FL、FR、RL、RR)との間に、通常の態様にて、走行中に路面から受ける振動を緩和しながら車体を車輪上に支持するよう設けられる。各サスペンション20i(i=FL、FR、RL、RR)のショックアブソーバは、所謂、減衰力可変式ショックアブソーバであり、流体を封入したシリンダを上室と下室とに分割するピストンがそのシリンダ内にて往復動する際に、電子制御装置50から制御指令に応答して、ピストンに設けられたアクチュエータ22が、上室と下室との間で流体を逃す流路(オリフィス、バルブ)を開閉し、これにより、流路を通る流体の流動抵抗を変更することによって、ショックアブソーバに於いて生ずる減衰力cf、crが任意に制御できるよう構成されている(典型的には、アクチュエータ22は、ステップモータであり、流体を逃す流路の開度は、段階的に調整される。)。なお、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に、前輪及び/又は後輪に駆動力又は駆動トルクを発生する駆動装置と、各輪に制動力を発生する制動装置と、前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。
路面からの入力を処理して各アクチュエータ22に制御指令を与える減衰力制御装置を実現する電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。電子制御装置50には、各輪に搭載された車輪速センサ30i(i=FL、FR、RL、RR)からの車輪速Vwi(i=FL、FR、RL、RR)を表す信号と、ばね上振動状態の指標となる車体上下Gセンサ60aからの車体上下加速度信号と、ばね下振動状態の指標となる(前輪の車軸近傍の任意の部位に設けられた)前輪上下Gセンサ或いは前輪のサスペンション・ストローク・センサ60bからの信号(前輪上下加速度信号又はストローク信号)等が入力される。なお、上記以外に、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータを得るための各種検出信号が入力されてよいことは理解されるべきである。
図1(B)は、かかる減衰力制御装置(電子制御装置)50の実施形態の内部の構成を制御ブロックの形式で表したものである。同図を参照して、本実施形態の減衰力制御装置に於いては、概して述べれば、路面のうねり(路面高の振動的な増減)を検出し、その波長(路面高の波形に於ける一つの波(一つの山と谷との組)の長さ)を推定するうねり波長推定部54と、ショックアブソーバで達成されるべき減衰力の目標値(要求減衰力)cf、crを決定する要求減衰力決定部56と、要求減衰力に従って各輪アクチュエータ22を作動するアクチュエータ制御部56aとが設けられる。
上記の構成に於いて、うねり波長推定部54は、端的に述べれば、車速V(車輪速センサ30iからの車輪速情報に基づいて車速決定部52に於いて任意の手法により決定されてよい。)と、ばね下振動が反映されるセンサ60bのばね下振動変位を表す指標値(前輪ばね下上下加速度信号又は前輪サスペンション・ストローク信号等)Zb又はその周波数特性(FFT等の周波数解析により与えられてよい。(周波数解析部53))とを参照して、上記の如く、車両の走行中の路面のうねりの検出及びその波長の推定を実行する。特に、本実施形態の例に於いて、うねり波長推定部54は、車速Vと路面のうねりに起因するばね下振動の周波数fbとからうねり波長x1を算出する第一のうねり波長推定部54aと、車速Vとばね下振動変位Zbとからうねり波長x2を算出する第二のうねり波長推定部54bとを有し、うねり波長判定部54cに於いて、算出されたうねり波長x1,x2が一定時間に亘って互いに実質的に等しい状態が検出されたときに、最終的な推定結果としてうねり波長x(x1又はx2)を出力する。
要求減衰力決定部56は、通常時(うねり路走行のための減衰力制御を実行していないとき)に於いては、車体上下加速度などのばね上振動変位Zt(又はその周波数解析結果)や車速V等に基づいて任意の手法にて各輪の要求減衰力cf、crを算出するところ、うねり波長推定部54から波長xが出力され且つその周波数fbの振動強度I(fb)が所定の閾値を超えたとき、後に詳細に説明する態様にて、車速Vとうねり波長xとに基づいて、うねり路走行時のための各輪の要求減衰力を算出し、アクチュエータ制御部56aへそれらの算出された要求減衰力cf、crを出力する。そして、アクチュエータ制御部56aは、要求減衰力cf、crに基づいて任意の手法により各アクチュエータ22への制御指令を生成し、対応するアクチュエータ22へ制御指令を与え、これにより、各輪ショックアブソーバの減衰力が制御されることとなる。典型的には、既に触れた通り、アクチュエータとしてはステップモータが採用され、ピストンの流路の開度は段階的に制御されるので、アクチュエータ制御部56aに於いては、任意の通常の態様にて、受信した要求減衰力に最も近い状態を達成する開度の段数が決定され、しかる後にその段数に対応するステップモータの回転角が決定され、かかる回転角が制御指令として出力されることとなる。
また、上記の構成に於いては、更に、うねり路走行のための減衰力制御中の要求減衰力の位相又は周期の修正を要求する位相差監視・補正要求部58が設けられる。位相差監視・補正要求部58に於いては、端的に述べれば、ばね下振動変位Zbと、要求減衰力決定部56からの要求減衰力(前輪用の値cfのみでよい。)並びにその周期(x/V)が入力され、後に詳細に説明する態様にて、うねり路走行のための減衰力制御中に要求減衰力とばね下振動変位の位相差を監視し、両者の位相差が予定された位相差を維持しているか否かが判定される。そして、両者の位相差が予定された位相差と異なっている場合には、要求減衰力決定部56に対して、要求減衰力の位相の補正又は参照すべきうねり波長xの更新が要求され、これにより、要求減衰力が精度良く路面のうねりに適合した状態の維持が図られる。
なお、上記の各制御ブロックは、電子制御装置50内のメモリ等の記憶装置に予め記憶されたプログラムに従ったCPU及びその他の要素の処理作動により実現されることは理解されるべきである。
装置の作動
以下、上記の減衰力制御装置に於ける各部の制御作動について説明する。
(i)うねり路走行時の減衰力制御の概要
図2(A)に模式的に描かれている如く、路面高が振動的に増減して山と谷が交互に連続するうねり路上を車両10が速度Vにて走行する際、車両10の車体に於いて、路面高の増減に対応する車輪の周期的な上下運動に起因した振動が発生することとなる。そこで、車両の減衰力制御では、かかる振動が効果的に抑制又は低減されるように、ショックアブソーバの減衰力増減が実行される。かかる減衰力制御に於いて、受動的に、即ち、路面高の実際の変化に応答して、その都度、減衰力が変更されるようになっている場合、路面高の実際の変化量から要求減衰力を算出する演算時間及びその要求減衰力をショックアブソーバに於いて達成するためのアクチュエータの作動時間を要するため、実際に発生する減衰力が、路面高の実際の変化に対して要求される減衰力よりも遅れてしまうこととなり得る。[振動周波数が車両のばね上振動の共振周波数帯域以下であれば、車体の振動的変位の速度は、比較的遅いため、路面高の変化に略追従して減衰力の調整が実行可能であるが、うねりの間隔が比較的短く或いは車速が比較的高くなってくると、路面高の変化に起因する振動の周波数が上昇し、減衰力変化を路面高の変化に追従させることが困難となる。]そこで、本実施形態に於いては、うねり路走行中にうねりに起因する車体振動がうねりに対応して周期的となることに着目し、車両がうねり路上を走行し始めたときに、初期の段階で、うねりに起因する車体振動の変位(特に、ばね下振動変位)に基づいて、以後の予測される振動挙動を推定し、推定後には、予測される振動の周期又は周波数並びに位相に対応して要求減衰力の周期又は周波数並びに位相(増減のタイミング)を決定し、路面高の実際の変化時にその変化に必要な減衰力が実際に発生できるように減衰力の制御が実行される。即ち、換言すれば、うねり路走行中の車両が或る地点に到達する前にその地点に必要な要求減衰力を予め算出しておき、車両がその地点に到達した際に先に算出して置いた要求減衰力が達成されるようにする減衰力の予測的又は能動的制御が実行される。
なお、うねりに起因する振動の周期(T)又は周波数(fb)は、うねりの波長x[m]と車速V[m/s]とを用いて、
T=x/V …(1a)
fb=V/x …(1b)
により与えられるので、車速Vによって変化することとなる。そこで、特に本実施形態では、うねりに起因する振動変位等を用いてうねりの波長xを推定し、要求減衰力の周波数は、かかる波長の推定値を用いて上記の式(1a)又は(1b)の関係により決定される。かかる構成によれば、推定結果を用いた減衰力制御の開始後に車速が変化しても、要求減衰力の周波数は、うねりに起因する振動に対応したものとすることが可能となる。また、推定結果を用いた減衰力制御の開始後に、何らかの要因により、要求減衰力の周波数又は位相が路面のうねりに起因する振動に対して達成されるべき減衰力の周波数又は位相と相違してしまう場合があり得る。そこで、既に触れた如く、本実施形態に於いては、更に、要求減衰力の周波数又は位相を適宜補正するための構成が設けられ、減衰力制御の精度向上が図られる。
かくして、車両の走行中、本実施形態の減衰力制御装置に於いては、次の制御処理、即ち、(a)うねりの検出とうねり波長の推定[うねり波長推定部54]、(b)要求減衰力の決定[要求減衰力決定部56]、(c)要求減衰力の位相と周期の監視と補正[位相差監視・補正要求部58]が並行して実行される。以下、それぞれの制御処理について説明する。
(ii)うねりの検出とうねり波長の推定−うねり波長推定部54の処理
図1(B)に関連した説明に於いて既に触れた如く、本実施形態に於いては、第一、第二のうねり波長推定部54a、54bにて、うねり波長xがそれぞれ別々の処理により推定され、かかる推定結果が互いに実質的に等しい状態が所定の時間経過したときに、路面に波長xのうねりが存在することが判定される。このように別々の異なる処理により波長xを推定する構成により、波長xの推定精度の向上が期待される。
実際の制御処理では、まず、第一のうねり波長推定部54aが、車速Vと、うねりに起因するばね下振動の周波数fbとを参照して、
x1=V/fb …(2)
により、うねり波長の第一の推定値x1を決定する。ここで、ばね下振動周波数fbは、具体的には、前輪のサスペンション・ストローク値又は前輪のばね下の上下加速度値を周波数解析部53(図1(B)参照)にてFFT処理することにより得られるようになっていてよい。車両がうねり路上を走行する際には、前輪が路面に沿って上下方向に変位することになるので、前輪のサスペンション・ストローク値又は前輪のばね下の上下加速度値は、路面高の変化に追従して変化することとなる。その際、前輪サスペンション・ストローク値又は前輪ばね下上下加速度値のFFT解析を行うと、図2(B)に例示されている如き振動強度(パワースペクトル)の周波数分布が得られ、そこに於いて、図中矢印にて示されている如く、うねりに対応する振動周波数は、ばね上振動の共振周波数帯域よりも高い領域にピークとして表出する。そこで、第一のうねり波長推定部54aでは、周波数解析部53に於ける前輪のサスペンション・ストローク値又は前輪のばね下の上下加速度値のFFT解析によって得られた振動強度の周波数分布に於いて表出した(ばね上振動の共振周波数帯域よりも高い領域の)ピークの周波数が、ばね下振動の周波数(うねり周波数)fbとして用いられるようになっていてよい。なお、上記のFFT解析とうねり波長x1の算出は、車両の走行中、反復して実行され続けてよい。
一方、第二のうねり波長推定部54bは、ばね下振動変位(前輪のサスペンション・ストローク値又は前輪のばね下の上下加速度値)Zbがそのまま入力され、かかる振動変位に現れるピーク(極大値)を逐次的に検出し、連続するピークの生じた時間の間隔tpが計測される。かかる時間間隔tpは、ばね下振動の一周期の長さであり、車輪が路面上の一つの山から隣接する次の山まで到達するのに要した時間、つまり、一波長分の長さだけ走行するのに要した時間に相当する。従って、第二のうねり波長推定部54bに於いては、かかる時間間隔tpと車速Vを用いて、うねり波長の第二の推定値x2が、
x2=V×tp …(3)
により決定される。かかるうねり波長x2の算出も、車両の走行中、反復して実行され続けて良い。
かくして、上記の如く決定された第一、第二のうねり波長x1、x2は、それぞれ、うねり波長判定部54cへ送信される。うねり波長判定部54cでは、受信したx1とx2とが実質的に等しいか否か、例えば、
|x1−x2|<xo …(4)
(ここで、xoは、微小定数)
が成立しているか否かが判定され、式(4)が所定の時間(実験的に又は理論的に設計者に於いて設定されてよい。)に亘って成立したとき、路面上に波長x(=x1=x2)のうねりが存在していると判定し、後に説明される要求減衰力決定部56へ波長値xを出力する。なお、うねり波長推定部54の処理は、車両の走行中、随時又は反復して実行され、後に説明されるうねり路走行時のための減衰力制御の開始後に周期の補正要求が為された際には、最新のうねり波長の推定結果が要求減衰力決定部56に提供されるようになっていてよい。
(iii)要求減衰力の決定−要求減衰力決定部56の処理
既に述べた如く、要求減衰力決定部56は、車両が通常の路面を走行しているときには、公知の任意の態様にて車体振動を抑制すべく、ばね上振動状態を表す車体の上下加速度値や車速Vを用いてショックアブソーバの要求減衰力を決定するが、車両がうねり路上を走行し始めると、うねり波長推定部54で決定されたうねり波長を用いて要求減衰力を決定する。
うねり路走行時の要求減衰力は、端的に述べれば、図3に模式的に示されている如く、車輪が路面うねりの谷から山へ上昇する際、即ち、ショックアブソーバの圧縮相(ピストン速度が上向きの相)には低減され、車輪が路面うねりの山から谷へ下降する際、即ち、ショックアブソーバの伸長相(ピストン速度が下向きの相)に増大するよう設定されることが好ましい。車輪が路面うねりの谷から山へ上昇する期間に於いてショックアブソーバの減衰力を低減するのは、これにより、路面に沿った車輪の上向きの変位に伴う車体の上向きの運動(車体の突き上げ)が抑制され、これと伴に、車体の上方への変位量(浮き上がり)も小さく抑えることが可能になるからである。一方、車輪が路面うねりの山から谷へ下降する期間に於いてショックアブソーバの減衰力をする増大するのは、これにより、山を昇ったことにより上方へ浮き上がった車体を下方へ速やかに引き下げることが可能となるためである。そこで、要求減衰力決定部56では、上記の如きうねり路の路面高の変位に要求減衰力の変化を追従させるべく、路面高の変位に起因するばね下振動変位が正弦波に概ね一致するものと仮定し、減衰力の位相がばね下振動変位の位相に対して1/4周期遅れるように要求減衰力が決定される。
具体的には、車速Vにてうねり波長xの路面を走行している車両の(時刻tに於ける)前輪のばね下振動変位が
A・cos2π(V/x)t …(5)
にて表されるとしたとき(ここで、tは、現在の時刻であり、Aは、振動の振幅である。)、上記の位相差にて前後輪に於いて達成されるべき減衰力cf、crは、それぞれ、
cf=a・sin2π(V/x)t …(6a)
cr=b・sin2π(V/x)(t−L/V) …(6b)
となる。ここで、a、bは、それぞれ、前後輪の減衰力の振幅であり、Lは、車両のホイールベース長である。後輪の位相が前輪の位相に対して−L/Vだけずれているのは、後輪が或る地点に到達する時間が前輪に対してL/Vだけ遅れているためである。かくして、上記の減衰力を達成するためには、要求減衰力決定部56から出力されるべき要求減衰力の値は、要求減衰力決定部56からの出力から各輪アクチュエータが作動するまでに要する遅れ時間τを考慮して(時刻tに於いて時刻t+τのときの目標値を出力しなければならないから)、
cf=a・sin2π(V/x)(t+τ) …(7a)
cr=b・sin2π(V/x)(t−L/V+τ) …(7b)
となる。なお、上記の式に於ける要求減衰力の振幅a、bは、車速、ばね上又はばね下振動変位の振幅等を用いて任意に決定されてよい。重要なことは、ばね下振動変位と要求減衰力との位相差が1/4周期となっていることである。
図5(A)は、要求減衰力決定部56の制御処理をフローチャートの形式にて表した図である。なお、かかるフローチャートは、車両の走行中、反復して実行される。同図を参照して、要求減衰力決定部56に於いては、まず、うねり波長推定部54から上記の式(4)が所定の時間に亘って成立していることを表す情報が存在し、且つ、周波数解析部53に於けるFFT解析結果に於いて得られた振動強度の周波数分布にてばね上振動の共振周波数帯域よりも高い領域に表出したピークの周波数fbの強度I(fb)が
I(fb)>I_th …(8)
の条件を所定の時間に亘って満たしているか否かが判定される(ステップ10)。ここで、I_thは、所定の閾値であり、実験的に又は理論的に設計者に於いて設定されてよい。上記の式(8)の条件が判定される理由は、うねり波長推定部54がうねりの検出をしていても、うねりが小さいときには、通常通りの制御を実行して問題がないためである。かくして、かかるステップ10に於いて、式(4)又は式(8)の双方又はいずれか一方が所定の時間に亘って成立していないときには、要求減衰力は、通常の態様にて算出され(ステップ70)、アクチュエータ制御部56aへ出力される(ステップ80)。
他方、式(4)又は式(8)の双方が所定の時間に亘って成立しているときには、うねり波長xを用いた要求減衰力の算出が実行されることとなる。具体的には、まず、現在の処理サイクルが制御の初回(うねり波長xを用いた制御の最初のサイクル)であるか否かが判定される(ステップ20)。もし制御の初回であれば、うねり波長推定部54にて決定されたうねり波長xが取得される(ステップ30)。次いで、ステップ20と同様に、現在の処理サイクルが制御の初回であるか否かが判定され、もし制御の初回であれば、要求減衰力の出力の際の位相の調整が為される(ステップ50)。かかる位相の調整は、任意の手法でなされてよい。例えば、ばね上又はばね下振動変位の上側のピークを検出した時点を時刻0として要求減衰力の位相が+τとなるように設定されてよい。
かくして、波長の取得と位相の調整が為されると、要求減衰力cf、crが、上記の式(7a)、(7b)により演算され(ステップ60)、アクチュエータ制御部56aへ出力される(ステップ80)。次回以降の処理サイクルに於いては、後に説明される周期補正要求又は位相補正要求が存在しない限り、ステップ10の条件が成立しなくなるまで、つまり、路面のうねりが存在しなくなるまで、式(7a)、(7b)に従って算出された要求減衰力の出力が繰り返し実行される。
(iv)要求減衰力の位相と周期の監視と補正−位相差監視・補正要求部58の処理
上記の式(7a)、(7b)による要求減衰力cf、crに基づいて各輪アクチュエータへ制御指令が送られれば、時間τ後に各ショックアブソーバに於いて路面高の変位に対応した減衰力が達成されることとなる。しかしながら、上記の構成で、波長xの変化や急加減速があったときなど、何らか要因で、達成されるべき減衰力の周期又は位相が変化する場合がある。この点に関し、既に触れた如く、達成されるべき減衰力とばね下振動変位の位相差は、予定された値(本実施形態では1/4周期)となるはずであるので、位相差監視・補正要求部58は、うねり路走行時のための減衰力制御の開始後、要求減衰力とばね下振動変位の位相差を監視し、その変化の態様に応じて要求減衰力の位相又は周期が補正される。
図4(A)、(B)は、要求減衰力とばね下振動変位の位相差の変化の態様を例示的に示している。同図を参照して、制御開始後、(A)、(B)のそれぞれの上段に示されている如く要求減衰力が振動的に変化している場合に、ばね下振動は、その周期(うねり波長)と位相とに変化がなければ、(A)、(B)のそれぞれの下段の一点鎖線にて示されている如く変化し、要求減衰力が下側のピークに到達した時点の1/4周期後にばね下振動の上側のピークが到来するはずである(同図の要求減衰力は、遅れ時間τがないものとしている。)。しかしながら、ばね下振動に位相のずれが生じた場合には、ばね下振動は、(A)、(B)のそれぞれの下段の実線にて示されている如く変位し、その結果、要求減衰力とばね下振動変位の位相差の偏差δτが生ずることとなる。そして、かかるδτの変化について見ると、もしばね下振動変位の位相のみが変化した場合には、図4(A)の下段の如くδτの大きさは、略一定となり、一方、ばね下振動変位の周期が変化した場合には、図4(B)の下段の如くδτの大きさは時間と伴に増大(若しくは縮小)することとなる。そこで、本実施形態に於いて位相差監視・補正要求部58は、要求減衰力とばね下振動変位の位相差の偏差δτの大きさとその変化とを監視し、δτの大きさと変化態様に応じて、要求減衰力決定部56に対して、要求減衰力の位相又は周期の補正が要求される。
図5(B)は、位相差監視・補正要求部58の制御処理の例をフローチャートの形式にて示したものであり、図示の処理に於いては、概して述べれば、要求減衰力の下側のピーク到来時とばね下振動の上側のピーク到来時の位相差が2サイクルに亘って1/4周期から有意にずれているときに、要求減衰力の位相又は周期の補正要求が出力される。なお、かかるフローチャートの処理は、うねり路走行時の減衰力制御の実行中に反復して実行されるようになっていてよい。
同図を参照して、具体的には、まず、要求減衰力cfの値が参照され、下側のピークが到来したときの時刻tc_peakが検出される(ステップ100)。なお、ここでの要求減衰力は、現在の時刻に達成されているべき減衰力であり、時間τ前に出力された値が参照される。そして、tc_peakの検出後、ばね下振動の上側のピークが到来したときの時刻ts_peakが検出される(ステップ110)。かくして、二つのピーク時刻が検出されると、位相差の1/4周期からの偏差δτが、
δτ=ts_peak−tc_peak−1/4(x/V) …(9)
により算出される。x/Vは、現在までに推定されている波長xに基づいて要求減衰力の周期である。かかるδτが実質的に0であるとき、即ち、
|δτ|<δτo …(10)
(ここで、δτoは、任意に設定されてよい正の微小定数)
が成立するときには、要求減衰力の位相と周期は、ばね下振動変位に対して予定通りに設定されていることになるので、位相及び周期の補正は為されない(ステップ130)。
一方、上記の式(10)が成立しないときには、要求減衰力の位相と周期は、ばね下振動変位に対して予定された状態となっていないこととなる。そこで、位相差の1/4周期からの偏差δτの変化態様が検査されることとなる。その場合には、まず、前回の要求減衰力とばね下振動変位のピーク間の位相差の偏差δτ_preが、
|δτ_pre|<δτo …(11)
を満たしているか否かが判定される(ステップ140)。ここで、もし条件(11)が成立している場合には、今回の位相差の偏差δτが最初に発生した有意な偏差となるので、次のピークに於ける位相差の偏差を参照して、位相又は周期の補正が必要であるか否かが判断されることとなる。かくして、次のピークで検出された位相差の偏差δτが実質的に0でないとき(もしδτが実質的に0であれば、位相及び周期の補正は為されない(ステップ130)。)、条件(11)が成立することとなるので、δτとδτ_preとの差が下記の式により、評価される(ステップ150)。
|δτ−δτ_pre|>δτη …(12)
(δτηは、任意に設定されてよい正の微小定数)
ここで、条件(12)が成立していなければ、偏差δτには変化がなく、図4(A)に例示されている如く、ばね下振動変位の位相のみが変化したことになるので、要求減衰力決定部56に対して位相補正の要求が出力され(ステップ160)、条件(12)が成立していれば、位相差に変化があり、図4(B)に例示されている如く、ばね下振動変位の周期が変化したことになるので、要求減衰力決定部56に対して周期補正の要求が出力される(ステップ170)。
図5(B)のステップ160の位相補正要求が出力されたときには、要求減衰力決定部56に於ける処理サイクルに於けるステップ40にて「位相補正要求有り」と判定され、要求減衰力の位相調整が実行される(ステップ50)。かかる位相調整に於いては、δτだけ要求減衰力の位相が変更され、要求減衰力cf、crは、
cf=a・sin2π(V/x)(t+τ−δτ) …(13a)
cr=b・sin2π(V/x)(t−L/V+τ−δτ) …(13b)
と修正される。[δτ>0のとき、ばね下振動変位の位相が当初よりδτだけ遅れていることになるので、要求減衰力の位相がδτだけ遅らされる。δτ<0のとき、ばね下振動変位の位相が当初より|δτ|だけ進んでいることになるので、要求減衰力の位相が|δτ|だけ進められる。]一方、図5(B)のステップ170の周期補正要求が出力されたときには、要求減衰力決定部56に於ける処理サイクルに於けるステップ20にて「周期補正要求有り」と判定され、うねり波長推定部54に於ける最新のうねり波長の推定結果の取得が為される(ステップ30)。なお、この場合には、要求減衰力の周期が変更されることとなるので、制御初回のときと同様の要領にてステップ50に於いて位相の調整が実行される。
かくして、上記の構成によれば、車両がうねり路に進入すると、ショックアブソーバの減衰力が、うねり波長の推定値を用いて決定された要求減衰力に従って路面高の変化のタイミングに適合した態様にて制御され、制御の遅れが回避され、また、かかる制御の開始後に於いても要求減衰力の位相及び周期の補正が自動的に実行されるようになっていることから、減衰力制御の精度の向上が図られることとなる。特に、制御の開始後の要求減衰力の周期の補正は、その補正が必要であると判定されたときにのみ実行されるので、十分な時間を使ってうねり波長の推定演算を行う余裕が生まれ、従って、精度の高いうねり波長の推定演算が実行可能となる。更に、本発明の制御は、車両に対して路面高の変化が入力される前にその路面高の変化を予測し、その変化に適合するよう減衰力を制御する所謂「能動的」制御であるところ、路面高が周期的に変化するという点に着目し、ばね下振動変位からうねり波長を推定し、その推定結果に基づいて路面高の変化の予測を行うようになっており、制御の達成のために路面高の変化の予測のための特殊なセンサを使用する必要がない点で有利である。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
例えば、上記の実施形態に於けるうねり路走行時のための減衰力制御の開始後の要求減衰力の周期は、うねり波長推定部54の逐次的に出力するうねり波長の有意な変化があったときに、要求減衰力の算出の際にうねり波長に最新の推定値が用いられるようになっていてよい。かかる処理に於いては、現在使用しているうねり波長xと現在の車速Vから算定される周波数V/xとばね下振動変位の周波数解析により得られた周波数fbの最新の値との差分が有意な値となった状態が所定の時間継続したときに、うねり波長が有意に変化したと判定されるようになっていてよい。
また、上記の構成に於いて、達成されるべき減衰力とばね下振動変位との位相差は、1/4周期に設定されているが、かかる位相差は、設計者による制御思想によって別の値に設定されてもよく、そのような場合も本発明の範囲に属する。
更にまた、上記の構成に於いては、要求減衰力の周期又は周波数がうねり波長の推定値xと車速Vとにより与えられているが、重要なことは、達成されるべき減衰力とばね下振動変位との位相差又は変化のタイミングが予定された状態となっていることであり、要求減衰力の周期又は周波数はその他の任意の手法により与えられるようになっていてもよい。例えば、特願2008−286374に記載されている如く、うねりに起因する車体振動の周期と位相とに基づいて要求減衰力の周期と位相が決定されるようになっていてもよい。その場合にも、位相差監視・補正要求部58に関連して説明された要求減衰力とばね下振動変位との位相差の変化の大きさ及び態様を監視し、監視結果に基づいて要求減衰力の周期又は位相を補正する構成が適用可能であり、そのような場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。また、うねりの波長は、第一又は第二のうねり波長推定部のうちのいずれか一方のみにより決定されてもよい。

Claims (6)

  1. 車両のショックアブソーバの減衰力制御装置であって、車両のうねり路走行中に車速と走行路面のうねりに起因する前記車両の少なくとも一部に発生する上下方向の振動とに基づいて前記うねりの波長を推定するうねり波長推定部と、前記うねりの波長に基づいて要求減衰力を決定する要求減衰力決定部と、前記要求減衰力に基づきショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、前記うねりに起因する前記車両の上下方向の振動と前記要求減衰力の位相差に基づいて前記要求減衰力の位相を補正する位相補正部とを含むことを特徴とする装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記位相補正部が、前記うねりに起因する前記車両の上下方向の振動と前記要求減衰力の位相差と予定された位相差との偏差が略一定のとき、前記偏差が低減する方向に前記要求減衰力の位相を変更することを特徴とする装置。
  3. 請求項1の装置であって、前記うねりに起因する前記車両の上下方向の振動と前記要求減衰力の位相差が変化するとき、前記うねりの波長を変更して前記要求減衰力が決定されることを特徴とする装置。
  4. 請求項1の装置であって、前記うねり波長推定部が、前記車両の上下方向の振動から検出される前記うねりに起因する振動の周波数と前記車速とに基づいて前記うねりの波長を推定する第一のうねり波長推定部と、前記車両の上下方向の振動の強度と前記車速とに基づいて前記うねりの波長を推定する第二のうねり波長推定部とを含み、前記第一のうねり波長推定部により推定されたうねりの波長と前記第二のうねり波長推定部により推定されたうねりの波長とが実質的に一致したとき、前記要求減衰力決定部が前記うねりの波長に基づいて要求減衰力を決定することを特徴とする装置。
  5. 請求項5の装置であって、前記第二のうねり波長推定部が、前記車両の上下方向の振動の強度の少なくとも2つのピークの間の時間と前記車速とに基づいて前記うねりの波長を推定することを特徴とする装置。
  6. 車両のショックアブソーバの減衰力制御装置であって、車両のうねり路走行中に走行路面のうねりに起因する前記車両の少なくとも一部に発生する上下方向の振動の周期又は周波数を検出するうねり検出部と、前記周期又は周波数に基づいて決定される要求減衰力に基づきショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、前記うねりに起因する前記車両の上下方向の振動と前記要求減衰力の位相差を検出し、前記位相差が変化しているときには、前記要求減衰力の周期又は周波数を補正し、前記位相差と予定された位相差との偏差が略一定のときには前記要求減衰力の位相を補正する減衰力補正部とを含むことを特徴とする装置。
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