JP4793304B2 - 車両の制振制御を行う駆動制御装置 - Google Patents
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Description
図1(A)は、本発明の制振制御を実行する駆動制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて後輪に駆動力又は駆動トルクを発生する駆動装置20が搭載される。駆動装置20は、図示の例では、エンジン22から、トルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して、駆動トルク或いは回転駆動力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成される。エンジン22は、公知の態様のガソリンエンジンであり、アクセルペダルの踏み込み量及び下記に説明する制御量に応じて決定される要求駆動トルクを達成するよう吸入空気量を調節すべく、スロットル弁22aの開度、点火プラグ22bの点火時期が制御される。また、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動装置と前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。なお、車両は、四輪駆動車又は前輪駆動車であってもよい。
[(注)有限の燃焼期間が存在する実際のエンジンに於いては、点火時期が早くなると、つまり、進角側に変化するほど、エンジンのシリンダ内のピストンの上死点前の圧縮仕事(機械損失、冷却損失等)が増大し、点火時期が遅くなると、つまり、遅角側に変化するほど、膨張比が小さくなり、排気損失が増大する。これらの進角側及び遅角側のエンジン出力の低下の要因は、エンジン回転数と吸入空気量に依存するので、出力、燃費が最良となる点火時期は、エンジン回転数と吸入空気量によって変動することとなる。]
車両に於いて、運転者の駆動要求に基づいて駆動装置が作動して車輪トルクの変動が生ずると、図2(A)に例示されている如き車体10に於いて、車体の重心Cgの鉛直方向(z方向)のバウンス振動と、車体の重心周りのピッチ方向(θ方向)のピッチ振動が発生し得る。また、車両の走行中に路面から車輪上に外力又はトルク(外乱)が作用すると、その外乱が車両に伝達され、やはり車体にバウンス方向及びピッチ方向の振動が発生し得る。そこで、ここに例示するピッチ・バウンス振動制振制御に於いては、車体のピッチ・バウンス振動の運動モデルを構築し、そのモデルに於いて要求駆動トルク(を車輪トルクに換算した値)と、現在の車輪トルク(の推定値)とを入力した際の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dt、即ち、車体振動の状態変数を算出し、モデルから得られた状態変数が0に収束するように、即ち、ピッチ/バウンス振動が抑制されるよう駆動装置(エンジン)の駆動トルクが調節される(要求駆動トルクが修正される。)。
Tw=M・r2・dω/dt …(5)
と推定することができる。ここに於いて、Mは、車両の質量であり、rは、車輪半径である。[駆動輪が路面の接地個所に於いて発生している駆動力の総和が、車両の全体の駆動力M・G(Gは、加速度)に等しいとすると、車輪トルクTwは、
Tw=M・G・r …(5a)
にて与えられる。車両の加速度Gは、車輪速度r・ωの微分値より、
G=r・dω/dt …(5b)
で与えられるので、車輪トルクは、式(5)の如く推定される。]
本発明の実施形態に於ける制振制御に於いては、既に触れたように、まず、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルを仮定して、運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Tw(外乱)とを入力としたバウンス方向及びピッチ方向の状態変数の状態方程式を構成する。そして、かかる状態方程式から、最適レギュレータの理論を用いてバウンス方向及びピッチ方向の状態変数を0に収束させる入力(トルク値)を決定し、得られたトルク値に基づいて要求駆動トルクが修正される。
dX(t)/dt=A・X(t)+B・u(t) …(2a)
ここで、X(t)、A、Bは、それぞれ、
a1=-(kf+kr)/M、a2=-(cf+cr)/M、
a3=-(kf・Lf-kr・Lr)/M、a4=-(cf・Lf-cr・Lr)/M、
b1=-(Lf・kf-Lr・kr)/I、b2=-(Lf・cf-Lr・cr)/I、
b3=-(Lf2・kf+Lr2・kr)/I、b4=-(Lf2・cf+Lr2・cr)/I
である。また、u(t)は、
u(t)=T
であり、状態方程式(2a)にて表されるシステムの入力である。従って、式(1b)より、行列Bの要素p1は、
p1=h/(I・r)
である。
u(t)=−K・X(t) …(2b)
とおくと、状態方程式(2a)は、
dX(t)/dt=(A−BK)・X(t) …(2c)
となる。従って、X(t)の初期値X0(t)をX0(t)=(0,0,0,0)と設定して(トルク入力がされる前には振動はないものとする。)、状態変数ベクトルX(t)の微分方程式(2c)を解いたときに、X(t)、即ち、バウンス方向及びピッチ方向の変位及びその時間変化率、の大きさを0に収束させるゲインKが決定されれば、ピッチ・バウンス振動を抑制するトルク値u(t)が決定されることとなる。
J=1/2・∫(XTQX+uTRu)dt …(3a)
(積分範囲は、0から∞)
の値が最小になるとき、状態方程式(2a)に於いてX(t)が安定的に収束し、評価関数Jを最小にする行列Kは、
K=R−1・BT・P
により与えられることが知られている。ここで、Pは、リカッティ方程式
-dP/dt=ATP+PA+Q−PBR−1BTP
の解である。リカッティ方程式は、線形システムの分野に於いて知られている任意の方法により解くことができ、これにより、ゲインKが決定される。
上記の如く、要求駆動トルク決定部51に於いて決定され制振制御部52の修正を受けた要求駆動トルクの指令値は、エンジン作動パラメータ決定部53へ送信される。エンジン作動パラメータ決定部53では、吸入空気量決定部に於いて、そのときのエンジン回転数と要求駆動トルクの指令値とから、図4(A)に於いて例示されている如き、予め定められたマップを用いて、要求駆動トルクを達成する吸入空気量の指標値である負荷率が決定される。そして、その負荷率とエンジン回転数から、図4(B)に例示されている如きマップを用いて、基本点火時期が決定される。
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
20…駆動装置
22…ガソリンエンジン
22a…スロットル弁
30FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
50a…駆動制御装置
50b…制動制御装置
Claims (6)
- 車両の駆動出力を制御して前記車両のピッチ又はバウンス振動を抑制する制振制御を実行する車両のガソリンエンジンの駆動制御装置であって、前記車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する前記車輪に作用する車輪トルクに基づいて前記ピッチ又はバウンス振動振幅を抑制する前記エンジンの駆動トルクを制御する制振制御部と、前記エンジンに対する要求駆動トルクに基づいて前記エンジンの点火時期を制御し前記点火時期を進角する際には進角量のなまし処理を実行する点火時期制御部とを含み、前記制振制御部により要求される駆動トルクの低減量が、前記なまし処理が実行されたときに許される進角量に基づいて決定される駆動トルクの低減量を超えないよう制限されることを特徴とする車両の駆動制御装置。
- 請求項1の装置であって、前記制振制御部により要求される駆動トルクの低減量と前記なまし処理が実行されたときに許される進角量に基づいて決定される駆動トルクの低減量とを比較しそのうちの小さい方の駆動トルクの低減量だけ駆動トルクの低減を実行することを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記点火時期の進角量のなまし処理が前記進角量を所定値以下に制限することにより実行されるものであり、前記なまし処理が実行されたときに許される進角量に基づいて決定される駆動トルクの低減量が前記所定値に基づいて決定される駆動トルクの低減量であることを特徴とする装置。
- 請求項3の装置であって、前記所定値に基づいて決定される駆動トルクの低減量が、前記エンジンに於いて現在発生しているトルクと、現在の点火時期から前記所定値だけ進角した点火時期を基本点火時期としたときの前記エンジンの吸入空気量により発生する駆動トルクとの差であることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記要求駆動トルクを決定する要求駆動トルク決定部を含み、前記制振制御部が前記車輪トルクに基づいて算出される要求駆動トルク補償成分に基づいて前記要求駆動トルクを修正し、前記制振制御部により要求される駆動トルクの低減量の制限が、前記要求駆動トルク補償成分の制御ゲインを低減することによって実行されることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、エンジン冷却水温度が所定水温以上であり、エンジン潤滑油温度が所定油温以上であるときに、該制振制御部により要求される駆動トルクの低減量が、前記なまし処理が実行されたときに許される進角量に基づいて決定される駆動トルクの低減量を超えないよう制限され、前記エンジン冷却水温度が前記所定水温より低いか、前記エンジン潤滑油温度が前記所定油温より低いときには、前記点火時期制御部が、前記なまし処理を実行しないことを特徴とする装置。
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