JP4983549B2 - ディーゼルエンジン車両の制振制御を行う駆動制御装置 - Google Patents
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Description
図1は、本発明の制振制御を実行する駆動制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて後輪に駆動力又は駆動トルクを発生する駆動装置20が搭載される。駆動装置20は、図示の例では、エンジン22から、トルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して、駆動トルク或いは回転駆動力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成される。エンジン22は、公知の態様のディーゼルエンジンであり、燃料装置22aの作動が、アクセルペダルの踏み込み量及び下記に説明する制御量に応じて決定される要求駆動トルクを達成するよう、エンジンの各気筒の燃料噴射装置22bからの燃料噴射量及び/又はその他のパラメータ(噴射時期、噴射率(単位時間当たりの燃料噴射量)、噴射圧力など。以下、総じて「燃料噴射制御量」と称する。)を調節すべく制御される。また、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動装置と前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。なお、車両は、四輪駆動車又は前輪駆動車であってもよい。
(i)制御の概要
車両に於いて、運転者の駆動要求に基づいて駆動装置が作動して車輪トルクの変動が生ずると、図3(A)に例示されている如き車体10に於いて、車体の重心Cgの鉛直方向(z方向)のバウンス振動と、車体の重心周りのピッチ方向(θ方向)のピッチ振動が発生し得る。また、車両の走行中に路面から車輪上に外力又はトルク(外乱)が作用すると、その外乱が車両に伝達され、やはり車体にバウンス方向及びピッチ方向の振動が発生し得る。そこで、ここに例示するピッチ・バウンス振動制振制御に於いては、車体のピッチ・バウンス振動の運動モデルを構築し、そのモデルに於いて要求駆動トルク(を車輪トルクに換算した値)と、現在の車輪トルク(の推定値)とを入力した際の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dt、即ち、車体振動の状態変数を算出し、モデルから得られた状態変数が0に収束するように、即ち、ピッチ/バウンス振動が抑制されるよう駆動装置(エンジン)の駆動トルクが調節される(要求駆動トルクが修正される。)。
図3(B)は、制振制御部52の構成をより詳細に示した本発明の実施形態に於ける駆動制御装置50aの作動を制御ブロックの形式で模式的に示したものである。図3(B)を参照して、駆動制御装置50aに於いては、運転者の駆動要求、即ち、アクセルペダルの踏み込み量(C0)が、通常の態様にて、要求駆動トルクに換算された後(C1)、既に述べた如く、要求駆動トルクに基づいて、燃料噴射量及び/又は燃料噴射制御量の目標値が決定され、かかる目標値を達成する制御指令が生成されて(C2)、駆動装置(C3)へ送信される。
本発明の実施形態に於ける制振制御に於いては、既に触れたように、まず、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルを仮定して、運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Tw(外乱)とを入力としたバウンス方向及びピッチ方向の状態変数の状態方程式を構成する。そして、かかる状態方程式から、最適レギュレータの理論を用いてバウンス方向及びピッチ方向の状態変数を0に収束させる入力トルク値(即ち、要求駆動トルク補償成分)を決定し、得られたトルク値に基づいて要求駆動トルクが修正される。
dX(t)/dt=A・X(t)+B・u(t) …(2a)
ここで、X(t)、A、Bは、それぞれ、
a1=-(kf+kr)/M、a2=-(cf+cr)/M、
a3=-(kf・Lf-kr・Lr)/M、a4=-(cf・Lf-cr・Lr)/M、
b1=-(Lf・kf-Lr・kr)/I、b2=-(Lf・cf-Lr・cr)/I、
b3=-(Lf2・kf+Lr2・kr)/I、b4=-(Lf2・cf+Lr2・cr)/I
である。また、u(t)は、
u(t)=T
であり、状態方程式(2a)にて表されるシステムの入力である。従って、式(1b)より、行列Bの要素p1は、
p1=h/(I・r)
である。
u(t)=−K・X(t) …(2b)
とおくと、状態方程式(2a)は、
dX(t)/dt=(A−BK)・X(t) …(2c)
となる。従って、X(t)の初期値X0(t)をX0(t)=(0,0,0,0)と設定して(トルク入力がされる前には振動はないものとする。)、状態変数ベクトルX(t)の微分方程式(2c)を解いたときに、X(t)、即ち、バウンス方向及びピッチ方向の変位及びその時間変化率、の大きさを0に収束させるゲインKが決定されれば、ピッチ・バウンス振動を抑制するトルク値u(t)が決定されることとなる。
J=1/2・∫(XTQX+uTRu)dt …(3a)
(積分範囲は、0から∞)
の値が最小になるとき、状態方程式(2a)に於いてX(t)が安定的に収束し、評価関数Jを最小にする行列Kは、
K=R−1・BT・P
により与えられることが知られている。ここで、Pは、リカッティ方程式
-dP/dt=ATP+PA+Q−PBR−1BTP
の解である。リカッティ方程式は、線形システムの分野に於いて知られている任意の方法により解くことができ、これにより、ゲインKが決定される。
Tw=M・r2・dω/dt …(5)
と推定することができる。ここに於いて、Mは、車両の質量であり、rは、車輪半径である。[駆動輪が路面の接地個所に於いて発生している駆動力の総和が、車両の全体の駆動力M・G(Gは、加速度)に等しいとすると、車輪トルクTwは、
Tw=M・G・r …(5a)
にて与えられる。車両の加速度Gは、車輪速度r・ωの微分値より、
G=r・dω/dt …(5b)
で与えられるので、車輪トルクは、式(5)の如く推定される。]
要求駆動トルクの補償成分Uは、上記の制振制御の原理の説明から理解される如く振動を抑制する成分であるので、それ自体が振動成分である。従って、かかる補償成分が要求駆動トルクに重畳すると、図3(B)のブロックC1からブロックC2へ直接渡される要求駆動トルクに変化がなくても、ブロックC2が受信する要求駆動トルクが振動的に変化する場合が有り得る。そうなると、既に述べた如く、車両が定常走行状態であったとしても、定常走行判定部54aがそのように判定されない事態が生じ得る。そこで、本実施形態の一つに於いては、エンジンに於いて定期的に実行されるPM再生モード又はS再生モードが実行されている間又は変速機が或る特定の変速段のときは、制御ゲイン調節器C7にて補償成分に乗ぜられる制御ゲインλを低減し、ブロックC2が受信する要求駆動トルクに於ける補償成分Uの寄与が低減される。
λ・U …(6)
として加算器C1aへ渡される。制御ゲインλは、通常時は、
λ=1 (7)
に設定される。しかしながら、PM再生モード又はS再生モードの実行指令を受信している間は、
λ=λo(<1) (7a)
に設定される。ここで、λoの値は、実験的又は理論的に予め決定されてよい。なお、λoは、λo=0に設定されてもよい。その場合、制振制御は、実質的に実行されないこととなる。一方、λo>0を満たす値に設定すると、Uの絶対値が特に大きいとき、即ち、大きなピッチ・バウンス振動が予測される場合には、PM再生モード又はS再生モードの実行指令があるとき又は変速機が或る特定の変速段のときでも、制振制御の実行が優先される利点が得られる。
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
20…駆動装置
22…ディーゼルエンジン
22a…燃料装置
30FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
50a…駆動制御装置
50b…制動制御装置
Claims (3)
- 車両の駆動出力を制御して前記車両のピッチ又はバウンス振動を抑制する制振制御を実行する車両のディーゼルエンジンの駆動制御装置であって、前記車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する前記車輪に作用する車輪トルクに基づいて前記ピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するよう前記エンジンの駆動トルクを制御する制振制御部と、前記車両の定常走行時に前記エンジンの気筒間の回転速度又は出力のばらつきを抑制する気筒間補正制御部と、前記車両が前記定常走行状態であるか否かを判定する定常走行判定部とを含み、前記エンジンがPM再生モード又はS再生モードにて運転されている状態であるときに、前記定常走行判定部が前記車両が前記定常走行状態であるか否かの判定を実行すると共に、前記制振制御部が前記制振制御のための前記車輪トルクを補償する補償成分の大きさを低減することを特徴とする車両の駆動制御装置。
- 請求項1の装置であって、前記車両が前記エンジンがPM再生モード又はS再生モードにて運転されている状態であるときの前記制振制御部に於ける前記制振制御のための前記補償成分の大きさの低減が、前記補償成分の制御ゲインを低減することにより実行されることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記気筒間補正制御部が前記エンジンの各気筒の回転速度に基づいて前記各気筒の燃料噴射量を学習補正することを特徴とする装置。
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