以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
<1.トルクセンサの全体構成>
まず、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るトルクセンサ1の全体構成の一例について説明する。図1はトルクセンサ1をZ軸正の方向側から見た平面図、図2はトルクセンサ1をY軸負の方向側から見た側面図である。
図1及び図2に示すように、トルクセンサ1は、外力により歪みを生じる起歪体3を有する。起歪体3は、比較的軽量な金属で構成されている。起歪体3は、リング状の外周部5と、外周部5の径方向の内側に配置され、外周部5よりも小径のリング状である内周部7と、外周部5と内周部7とを連結する複数(この例では4)の連結部9A~9Dを有する。なお、内周部7を中空構造でなく中実構造(円板状の部材等)としてもよい。
図1に示すように、外周部5と内周部7とは、Z軸を中心とする径方向に同心円状に配置されている。外周部5には、当該外周部5を外部機器(例えばロボットのアーム、エンドエフェクタ、減速機、モータ等)に固定するための複数の締結ボルト(図示省略)が挿通される複数(この例では12)のボルト穴11が形成されている。ボルト穴11は、Z軸周りの周方向において連結部9A~9Dに対応する位置の方が連結部9A~9Dに対応していない位置よりも密になるように、連結部9A~9Dの各々の近傍に集約して配置されている。内周部7には、当該内周部7を外部機器(例えばロボットのアーム、エンドエフェクタ、減速機、モータ等)に固定するための複数の締結ボルト(図示省略)が挿通される複数(この例では12)のボルト穴13が形成されている。ボルト穴13は、Z軸周りの周方向に略等角度間隔(この例では30度間隔)で配置されている。
なお、ボルト穴13についても、ボルト穴11と同様に連結部9A~9Dの各々の近傍に集約して配置してもよい。また、ボルト穴11を、ボルト穴13と同様にZ軸周りの周方向に略等角度間隔で配置してもよい。
図2に示すように、内周部7のZ軸方向の厚みは外周部5の厚みよりも大きく形成されている。外周部5と内周部7は、それぞれの底面(Z軸負の方向側の端面)が略面一となり、内周部7の一部が外周部5よりZ軸正の方向側に突出するように配置されている。なお、内周部7の一部が外周部5よりZ軸負の方向側に突出してもよいし、Z軸正の方向及び負の方向の両側に突出してもよい。また、外周部5と内周部7の厚みを略同一としてもよいし、内周部7の厚みを外周部5の厚みよりも小さく形成してもよい。
連結部9A~9Dは、外周部5と内周部7の間の空間S(図2参照)に、Z軸周りの周方向に略等角度間隔(この例では90度間隔)で配置されている。連結部9A~9Dは、外周部5と内周部7とを、トルクセンサ1の検出対象となるトルク(Z軸周りのねじりモーメントMz)の大きさに応じた量だけZ軸周りに微小な量だけ相対的に回転可能に連結する。以下では説明の便宜上、空間Sのうち、周方向において連結部9A,9Bの間の空間をS1、連結部9B,9Cの間の空間をS2、連結部9C,9Dの間の空間をS3、連結部9D,9Aの間の空間をS4という。
なお、連結部の数や配置は、外周部5と内周部7とを所定の剛性を有するように連結可能であれば、上記以外の数や配置としてもよい。
図1に示すように、外周部5と内周部7の間の空間Sには、複数(この例では4)の基板PB1~PB4が配置されている。基板PB1~PB4の各々は複数の基板を有しており、基板のセットとして構成されている(図4参照)。基板PB1~PB4の各々は、Z軸周りの周方向において複数の連結部9A~9Dの間の複数の空間S1~S4にそれぞれ配置されている。すなわち、基板PB1は空間S1に、基板PB2は空間S2に、基板PB3は空間S3に、基板PB4は空間S4に配置されている。基板PB3と基板PB4には、外部機器との間で電源の入力や信号の送受信を行うための外部コネクタ15,17がそれぞれ設けられている。
周方向に隣接する基板同士、この例では基板PB4と基板PB1、基板PB1と基板PB2、基板PB2と基板PB3はそれぞれ、接続部19,21,23により、連結部9A,9B,9Cを跨いで電気的に接続されている。接続部19,21,23は、例えばフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。なお、接続部は基板同士を信号送受信可能に接続するものであればよく、FPC以外にも、例えばリード線、ケーブル、コネクタ等を用いてもよい。
なお、本実施形態では、Z軸に垂直な方向の軸のうち、周方向において基板PB2の略中心位置を通る方向(連結部9B,9Cの角度間隔を2等分する方向)の軸をX軸、当該X軸に垂直な方向、すなわち周方向において基板PB1の略中心位置を通る方向(連結部9A,9Bの角度間隔を2等分する方向)の軸をY軸とする。
<2.起歪体の構成>
次に、図3を参照しつつ、起歪体3の構成の一例について説明する。図3は、起歪体3をZ軸正の方向側から見た平面図である。なお、図3は図1に示すトルクセンサ1から基板PB1~PB4及び接続部19,21,23等を取り外した状態を示している。また、図3では煩雑防止のため、内周部7のボルト穴13の図示を省略している。また、図3では、スケールSC1~SC4との位置関係を示すために、基板PB1~PB4に設置される検出部D1~D4を破線で示している。
図3に示すように、起歪体3は、外周部5と、内周部7と、連結部9A~9Dとを有しており、連結部9A~9Dは周方向に略90度間隔で配置されている。内周部7は、空間Sにおいて径方向外側に向けて突出した複数(この例では4)のスケール固定部SF1~SF4を有する。スケール固定部SF1~SF4は、周方向に略90度間隔で配置されている。スケール固定部SF1~SF4の上面には、スケールSC1~SC4が例えばねじ(図示省略)によりそれぞれ固定されている。図示は省略するが、スケールSC1~SC4の各々は、周方向に配置された複数の反射スリットを有する。
スケール固定部SF1は、Y軸正の方向に突出し、周方向において基板PB1の2つの固定位置(後述する基板固定部PF1,PF1のピン穴25,25)の中間位置にスケールSC1を配置する。スケール固定部SF2は、X軸正の方向に突出し、周方向において基板PB2の2つの固定位置(後述する基板固定部PF2,PF2のピン穴25,25)の中間位置にスケールSC2を配置する。スケール固定部SF3は、Y軸負の方向に突出し、周方向において基板PB3の2つの固定位置(後述する基板固定部PF3,PF3のピン穴25,25)の中間位置にスケールSC3を配置する。スケール固定部SF4は、X軸負の方向に突出し、周方向において基板PB4の2つの固定位置(後述する基板固定部PF4,PF4のピン穴25,25)の中間位置にスケールSC4を配置する。
スケール固定部SF1~SF4の各々は、内周部7とは別体のピース(取付片の一例)として構成されている。スケール固定部SF1~SF4の各々は、ボルト穴27が形成された基部29を有する。基部29は、ボルト穴27に挿通された固定ボルト(図示省略)により、内周部7の固定部位(例えば底面側に形成された凹部)に対して着脱される。これにより、スケール固定部SF1~SF4の各々は、内周部7に対して着脱可能に固定されている。なお、スケール固定部SF1~SF4と内周部7とを一体構成としてもよい。また、スケール固定部SF1~SF4を繋げて1個のピースとしてもよい。
外周部5は、空間Sにおいて内側に向けて突出した複数セット(この例では4セット)の基板固定部PF1~PF4を有する。基板固定部PF1~PF4の各セット、すなわち基板固定部PF1,PF1のセットと、基板固定部PF2,PF2のセットと、基板固定部PF3,PF3のセットと、基板固定部PF4,PF4のセットは、周方向に略90度間隔で配置されている。基板固定部PF1,PF1は、スケール固定部SF1を周方向に挟むように配置され、基板固定部PF2,PF2は、スケール固定部SF2を周方向に挟むように配置され、基板固定部PF3,PF3は、スケール固定部SF3を周方向に挟むように配置され、基板固定部PF4,PF4は、スケール固定部SF4を周方向に挟むように配置されている。基板固定部PF1~PF4の各セットの上面には、検出部D1~D4をそれぞれ有する基板PB1~PB4が、スタッドピン31,31(図4参照)によりそれぞれ複数(この例では2箇所)の固定位置で固定される。
基板固定部PF1,PF1は、Y軸負の方向にそれぞれ突出し、基板PB1を固定するためのスタッドピン31(図4参照)が圧入されるピン穴25(第2のピン穴の一例)がそれぞれに形成されている。基板固定部PF1,PF1は、検出部D1が周方向において基板PB1の2つの固定位置(ピン穴25,25)の中間位置でスケールSC1とZ軸方向に対向配置されるように、基板PB1を固定する。基板固定部PF2,PF2は、X軸負の方向にそれぞれ突出し、基板PB2を固定するためのスタッドピン31が圧入されるピン穴25がそれぞれに形成されている。基板固定部PF2,PF2は、検出部D2が周方向において基板PB2の2つの固定位置(ピン穴25,25)の中間位置でスケールSC2とZ軸方向に対向配置されるように、基板PB2を固定する。
基板固定部PF3,PF3は、Y軸正の方向にそれぞれ突出し、基板PB3を固定するためのスタッドピン31が圧入されるピン穴25がそれぞれに形成されている。基板固定部PF3,PF3は、検出部D3が周方向において基板PB3の2つの固定位置(ピン穴25,25に相当する位置)の中間位置でスケールSC3とZ軸方向に対向配置されるように、基板PB3を固定する。基板固定部PF4,PF4は、X軸正の方向にそれぞれ突出し、基板PB4を固定するためのスタッドピン31(図4参照)が圧入されるピン穴25がそれぞれに形成されている。基板固定部PF4,PF4は、検出部D4が周方向において基板PB4の2つの固定位置(ピン穴25,25)の中間位置でスケールSC4とZ軸方向に対向配置されるように、基板PB4を固定する。
基板固定部PF1~PF4の各々は、外周部5とは別体のピース(取付片の一例)として構成されている。基板固定部PF1~PF4の各々は、ボルト穴33が形成された基部35を有する。基部35は、ボルト穴33に挿通された固定ボルト(図示省略)により、外周部5の固定部位(例えば底面側に形成された凹部)に対して着脱される。これにより、基板固定部PF1~PF4の各々は、外周部5に対して着脱可能に固定されている。なお、基板固定部PF1~PF4と外周部5とを一体構成としてもよい。
なお、上述した起歪体3の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、スケール固定部SF1~SF4を外周部5に設けてスケールSC1~SC4を外周部5に固定し、基板固定部PF1~PF4を内周部7に設けて検出部D1~D4を内周部7に固定してもよい。
<3.各基板の構成>
次に、図4を参照しつつ、基板PB1~PB4の各々の構成の一例について説明する。図4は、図1のIV-IV断面線(図3にも参照用に図示)における基板PB1~PB4の断面構造の一例を表す断面図である。なお、図4では、接続部19,21,23や各基板上の回路部品の図示を省略している。
基板PB1~PB4の各々の基板構成は同様であるため、ここでは基板PB1を例にとって説明する。図4に示すように、基板PB1は、複数(この例では3)の基板PB1a~PB1cを有する。基板PB1a~PB1cはそれぞれ略同一形状であり、Z軸方向に多段に配置されている。基板PB1a~PB1cは、基板固定部PF1,PF1及びこれらに圧入された2本のスタッドピン31,31により、Z軸方向に所定の隙間をあけてそれぞれ支持されている。基板PB1a~PB1cは、Z軸負の方向側から正の方向側に向けて、基板PB1a,PB1b,PB1cの順に配置されている。
基板PB1aは、主としてアナログ信号の信号処理を行う基板である。基板PB1aの下面(Z軸負の方向側の面)には、スケール固定部SF1に固定されたスケールSC1とZ軸方向に所定の隙間をあけて対向するように、検出部D1が配置されている。検出部D1とスケールSC1は第1光学式センサOS1を構成しており、起歪体3の歪みを検出する。基板PB1aには、検出部D1から出力されるアナログ信号の増幅回路や、オフセットの除去回路等が設けられている。
基板PB1bは、主としてデジタル信号の信号処理を行う基板である。基板PB1bには、A/D変換回路、後述するトルク算出部37として機能する演算回路、電源監視処理回路等が設けられている。これらの回路による機能は、CPUが実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
基板PB1cは、主として通信機能に関わる処理を行う基板である。基板PB1cには、電源回路や、他の機器や基板との間で信号の送受信を行うための通信回路等が設けられている。なお、基板PB3及び基板PB4では、基板PB3c及び基板PB4cの上面(Z軸正の方向側の面)に、前述の外部コネクタ15,17(図4では破線で図示)が設けられている。
他の基板PB2~PB4の基板構成は、上述した基板PB1と同様であるため説明を省略する。なお、スケール固定部SF2に固定されたスケールSC2と、基板PB2の基板PB2aに配置された検出部D2とが、第2光学式センサOS2を構成する。同様に、スケール固定部SF3に固定されたスケールSC3と、基板PB3の基板PB3aに配置された検出部D3とが、第3光学式センサOS3を構成する。同様に、スケール固定部SF4に固定されたスケールSC4と、基板PB4の基板PB4aに配置された検出部D4とが、第4光学式センサOS4を構成する。
なお、上述した基板PB1~PB4の基板構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上述した各基板の機能を一枚の基板に実装可能である場合には、基板PB1~PB4の各々を一枚の基板で構成してもよい。また、複数の基板で処理を分担する場合には、上述したアナログ信号処理、デジタル信号処理、通信処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の基板(例えば2枚の基板)で分担してもよいし、更に機能を細分化して更に多い数の基板(4枚以上の基板)で分担してもよい。
<4.検出部の構成>
次に、図5を参照しつつ、検出部D1~D4の構成の一例について説明する。図5は、検出部D1~D4をZ軸負の方向側から見た平面図である。
検出部D1~D4の各々の構成は同様であるため、ここでは検出部D1を例にとって説明する。図5に示すように、検出部D1は、光源39と、光源39をZ軸を中心とする径方向に挟むように配置された2つの受光部41を有する。
光源39は、スケールSC1に光を出射する。光源39としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。光源39は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な出射面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することにより、光源39は、対向した位置に配置されるスケールSC1にほぼ均等に光を照射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないので、光学素子による誤差等が生じにくく、スケールSC1への光の直進性を高める事が可能である。
各受光部41は、Z軸周りの周方向に沿って等間隔に配列された複数個(この例では16個)の受光素子43を有する。すなわち複数の受光素子43は、インクリメンタルパターンを有するように形成されている。なお、受光部41を構成する受光素子43の数は上記以外でもよい。
第1光学式センサOS1は、検出部D1の光源39からスケールSC1に光を照射し、スケールSC1で反射された光を受光部41の各受光素子43で受光する。これにより、第1光学式センサOS1は、外周部5と内周部7との相対回転量を検出し、当該回転量をトルク算出部37(図8参照)に送信する。
他の検出部D2~D4の構成は、上述した検出部D1と同様であるため説明を省略する。なお、第2光学式センサOS2、第3光学式センサOS3、及び第4光学式センサOS4も、上記と同様にして外周部5と内周部7との相対回転の回転量を検出し、当該回転量をトルク算出部37(図8参照)に送信する。トルク算出部37は、光学式センサOS1~OS4から受信した回転量と連結部9A~9Dの弾性係数等とに基づいて、外周部5と内周部7との間に作用するトルク値を算出する。
なお、上述した検出部D1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記では光源39を径方向に挟むように2つの受光部41を配置したが、光源39を周方向に挟むように2つの受光部を配置してもよい。
<5.基板の固定構造>
次に、図6を参照しつつ、基板PB1~PB4のスタッドピン31による固定構造の一例について説明する。図6は、基板PB1~PB4における一方のスタッドピン31による固定部分を拡大して示す断面図である。
基板PB1~PB4の各々の固定構造は同様であり、且つ、2本のスタッドピン31の各々における固定構造も同様であるため、ここでは基板PB1の一方のスタッドピン31による固定構造を例にとって説明する。図4に示すように、スタッドピン31(ピンの一例)は、直径が異なる複数の部分(この例では3つ)を有する円柱状の部材である。スタッドピン31は、直径が最も大きい大径部31Aと、直径が中程度である中径部31Bと、直径が最も小さい小径部31Cとを有する。大径部31Aと中径部31Bとの間には段差部31aが形成され、中径部31Bと小径部31Cとの間には段差部31bが形成されている。
大径部31Aの直径は、基板固定部PF1のピン穴25の直径と同等若しくはピン穴25の直径よりも若干大きく形成されており、大径部31Aはピン穴25に圧入される。一方、基板PB1aに形成されたピン穴45(第1のピン穴の一例)は、大径部31Aの直径よりも所定量だけ大きく形成されている。仮に、ピン穴45と大径部31Aの径とを略同等に形成し、大径部31Aを基板PB1aのピン穴45と基板固定部PF1のピン穴25の両方に圧入する構成とした場合、基板PB1a及び起歪体3(基板固定部PF1)にピン穴を加工する際に非常に高い寸法精度が要求されることとなり、量産が困難となると共に、組立作業性も低下する。本実施形態では、ピン穴45を大径部31Aの径よりも大きく形成することで、ピン穴の加工の際に要求される寸法精度を下げて量産を可能とすると共に、組立作業も容易となる。
また、ピン穴45の内周面と、ピン穴45に挿通された大径部31Aの外周面との隙間には、接着剤47が充填されている。これにより、大径部31Aに対して基板PB1aを強固に固定できる。なお、図6に示す例では、接着剤47により基板PB1a上に肉盛部(滑らかな裾広がり形状のフィレット)を形成することで、接着面積を増やして接着強度を高めている。また、大径部31Aの外周面の接着箇所には、一又は複数(この例では2つ)の溝部31cが形成されている。これにより、溝部31cに充填された接着剤47が楔となってアンカー効果を奏し、基板PB1aのZ軸方向のずれ防止効果をさらに高めることができる。なお、溝部31cの数は1つでもよいし、3以上としてもよい。また、溝部31cは必ずしも形成しなくともよい。
同様に、基板PB1bに形成されたピン穴49(第1のピン穴の一例)は、中径部31Bの直径よりも所定量だけ大きく形成されている。ピン穴49の内周面と、ピン穴49に挿通された中径部31Bの外周面との隙間には、接着剤51が充填されている。中径部31Bの外周面の接着箇所には、一又は複数(この例では2つ)の溝部31dが形成されている。
同様に、基板PB1cに形成されたピン穴53(第1のピン穴の一例)は、小径部31Cの直径よりも所定量だけ大きく形成されている。ピン穴53の内周面と、ピン穴53に挿通された小径部31Cの外周面との隙間には、接着剤55が充填されている。小径部31Cの外周面の接着箇所には、一又は複数(この例では2つ)の溝部31eが形成されている。
なお、上記ではスタッドピン31の大径部31Aを基板固定部PF1のピン穴25に圧入する構成としたが、大径部31Aの外周面におねじを形成すると共にピン穴25の内周面にめねじを形成しておき、大径部31Aをピン穴25にねじにより締結する構成としてもよい。
他の基板PB2~PB4の固定構造は、上述した基板PB1と同様であるため説明を省略する。
<6.基板の全体構成>
次に、図7を参照しつつ、トルクセンサ1の基板PB1~PB4の全体構成の一例について説明する。図7は、トルクセンサ1の基板PB1~PB4の全体構成の一例を概念的に表す説明図である。
図7に示すように、トルクセンサ1は4つの基板PB1~PB4を有する。基板PB1を構成する基板PB1a~PB1cは、スタッキングコネクタCN1により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。基板PB2を構成する基板PB2a~PB2cは、スタッキングコネクタCN2により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。基板PB3を構成する基板PB3a~PB3cは、スタッキングコネクタCN3により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。基板PB4を構成する基板PB4a~PB4cは、スタッキングコネクタCN4により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。
また、基板PB4cと基板PB1cとは、スタッキングコネクタCN4,CN1を介して接続部19により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。基板PB1cと基板PB2cとは、スタッキングコネクタCN1,CN2を介して接続部21により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。基板PB2cと基板PB3cとは、スタッキングコネクタCN2,CN3を介して接続部23により相互に電力や信号の送受信が可能に接続されている。基板PB4cには、外部機器との間で電源の入力や信号の送受信を行うための外部コネクタ17が設けられており、基板PB3cには、外部機器との間で電源の入力や信号の送受信を行うための外部コネクタ15が設けられている。
ここでは説明の便宜上、基板PB1と第1光学式センサOS1とを第1センサモジュールSM1、基板PB2と第2光学式センサOS2とを第2センサモジュールSM2、基板PB3と第3光学式センサOS3とを第3センサモジュールSM3、基板PB4と第4光学式センサOS4とを第4センサモジュールSM4という。
周方向に180度の角度間隔で配置された第1センサモジュールSM1と第3センサモジュールSM3とは、第1の系統を構成し、第3センサモジュールSM3はマスター、第1センサモジュールSM1はスレーブとして機能する。また、周方向に180度の角度間隔で配置された第2センサモジュールSM2と第4センサモジュールSM4とは、第2の系統を構成し、第4センサモジュールSM4はマスター、第2センサモジュールSM2はスレーブとして機能する。
第1の系統では、第1センサモジュールSM1が第1光学式センサOS1による検出値を第2センサモジュールSM2を介して第3センサモジュールSM3に送信し、第3センサモジュールSM3が第3光学式センサOS3による検出値に受信した第1光学式センサOS1による検出値を加算して平均値を算出する。同様に、第2の系統では、第2センサモジュールSM2が第2光学式センサOS2による検出値を第3センサモジュールSM3を介して第4センサモジュールSM4に送信し、第4センサモジュールSM4が第4光学式センサOS4による検出値に受信した第2光学式センサOS2による検出値を加算して平均値を算出する。他軸干渉による検出誤差のキャンセル(詳細は後述)のみを行う場合には、第3センサモジュールSM3において上記算出した平均値を用いてトルク値を算出し、外部コネクタ15を介して外部に送信する。また、第4センサモジュールSM4において上記算出した平均値を用いてトルク値を算出し、外部コネクタ17を介して外部に送信する。
一方、他軸干渉による検出誤差のキャンセルに加えてさらに、トルクセンサ1を波動歯車機構の減速機と合わせて使用する場合におけるトルクリップルによる検出誤差のキャンセル(詳細は後述)を行う場合には、例えば次のようにする。すなわち、第3センサモジュールSM3又は第4センサモジュールSM4のいずれか一方が他方のセンサモジュールに対して上述の算出した平均値を送信し、平均値を受信した他方のセンサモジュールがそれらの平均値同士を加算して平均値をさらに算出する。そして、当該算出した平均値を用いてトルク値を算出し、算出結果を外部コネクタ15又は外部コネクタ17を介して外部に送信する。
なお、以上では各系統における平均値の算出をマスターで行うようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、各系統における平均値の算出をスレーブで行い、それらの平均値を一方の系統のマスターに送信し、当該マスターにて平均値同士の平均を算出してトルク値を算出してもよい。また例えば、一方の系統における平均値の算出をマスターで行うと共に、他方の系統における平均値の算出をスレーブで行い、当該スレーブから一方の系統のマスターに平均値を送信し、当該マスターにて平均値同士の平均を算出してトルク値を算出してもよい。
以上のように、一方の系統におけるマスターとスレーブ間の信号等の送受信を他方の系統のスレーブを介して行う構成とすることで、各系統のマスターとスレーブを直接接続する場合に比べて配線を簡略化できる。また、第3センサモジュールSM3と第4センサモジュールSM4とを接続しないので、これによっても省配線化を促進できる。
なお、上述した基板構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、第3センサモジュールSM3と第4センサモジュールSM4とを接続部で接続し、基板PB1~PB4を円環状に接続してもよい。また例えば、各系統において外部コネクタをマスターに代えて又は加えてスレーブに設けてもよいし、いずれか一方の系統のみのマスター又はスレーブの少なくとも一方に設けてもよい。
<7.トルク算出処理>
次に、図8を参照しつつ、トルク算出処理の一例について説明する。図8は、トルク算出処理を実行するトルク算出部37の機能構成の一例を表すブロック図である。なお、図8に示すトルク算出部37による処理は、基板PB1b,PB2b,PB3b,PB4bのうちの全部又は一部の複数の基板により分担して実行されてもよいし、特定の1つの基板のみにより実行されてもよい。
トルク算出部37は、複数の光学式センサ(この例では4つの光学式センサOS1~OS4)の出力に基づいてトルク値を算出する。図8に示すように、トルク算出部37は、換算部56,58,60,62と、加算部57と、除算部59と、加算部61と、除算部63と、加算部65と、除算部67とを有する。
換算部56,58,60,62の各々は、第1光学式センサOS1、第2光学式センサOS2、第3光学式センサOS3、第4光学式センサOS4のそれぞれの出力(検出値)と、連結部9A~9Dの弾性係数等とに基づいて、外周部5と内周部7との間に作用するトルク値をそれぞれ算出する。
加算部57は、換算部56で算出されたトルク値と、換算部60で算出されたトルク値とを加算する。除算部59は、加算部57により加算されたトルク値を2で除算し、平均値を算出する。
加算部61は、換算部58で算出されたトルク値と、換算部62で算出されたトルク値とを加算する。除算部63は、加算部61により加算されたトルク値を2で除算し、平均値を算出する。
以上のように、周方向に180度間隔で配置された光学式センサOS1,OS3の出力(換算部により算出されたトルク値を含む)及び光学式センサOS2,OS4の出力(換算部により算出されたトルク値を含む)をそれぞれ加算することで、他軸干渉による検出誤差をキャンセルすることができる。ここで「他軸干渉」とは、X軸周りのねじりモーメントMx、Y軸周りのねじりモーメントMy、X軸、Y軸、Z軸の各方向における並進力Fx,Fy,Fzのことをいう。トルクセンサ1の外周部5と内周部7との間には、検出対象であるトルク(Z軸周りのねじりモーメントMz)によるZ軸周りの回転以外にも、トルク以外の外乱の力(ねじりモーメントMx,My)によりX軸又はY軸周りの相対回転が生じる場合がある。また、トルク以外の外乱の力(並進力Fx,Fy,Fz)によりX軸、Y軸、Z軸方向の相対移動が生じる場合がある。
例えば、外周部5と内周部7との間にX軸周りの相対回転が生じると、第1の系統を構成する光学式センサOS1,OS3では、スケールSC1,SC3と検出部D1,D3との間隔は変動するが、Z軸周りの周方向に対して平行な位置関係を維持するため、Z軸周りの周方向の検出位置の変化(回転量)は0もしくは非常に小さい。このため、トルクの検出精度への影響は無視できる。一方、第2の系統を構成する光学式センサOS2,OS4では、スケールSC2,SC4と検出部D2,D4との間でZ軸周りの周方向に対して傾斜が生じるため、周方向の検出位置が変化し、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS2,OS4の各々では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS2,OS4の出力を加算することで、ねじりモーメントMxによる検出誤差をキャンセルすることができる。
同様に、外周部5と内周部7との間にY軸周りの相対回転が生じると、第2の系統を構成する光学式センサOS2,OS4ではトルクの検出精度への影響は無視できる。一方、第1の系統を構成する光学式センサOS1,OS3では、スケールSC1,SC3と検出部D1,D3との間でZ軸周りの周方向に対して傾斜が生じるため、周方向の検出位置が変化し、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS1,OS3の各々では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS1,OS3の出力を加算することで、ねじりモーメントMyによる検出誤差をキャンセルすることができる。
なお、外周部5と内周部7との間に、XY軸平面におけるX軸周り及びY軸周り以外の相対回転が生じた場合、第1の系統では、上述したようにX軸周りの成分についてはトルクの検出精度への影響は無視でき、Y軸周りの成分については光学式センサOS1,OS3の出力を加算することで検出誤差をキャンセルできる。また第2の系統では、上述したようにY軸周りの成分についてはトルクの検出精度への影響は無視でき、X軸周りの成分については光学式センサOS2,OS4の出力を加算することで検出誤差をキャンセルできる。したがって、トルクセンサ1は、光学式センサOS1,OS3の出力及び光学式センサOS2,OS4の出力をそれぞれ加算することで、XY軸平面におけるどの方向の軸周りに相対回転が生じた場合でも、検出誤差をキャンセルできる。
また例えば、外周部5と内周部7との間にX軸方向の相対移動が生じると、第2の系統を構成する光学式センサOS2,OS4では、スケールSC2,SC4と検出部D2,D4とのZ軸周りの周方向の検出位置の変化(回転量)は0もしくは非常に小さいことから、トルクの検出精度への影響は無視できる。一方、第1の系統を構成する光学式センサOS1,OS3では、スケールSC1,SC3と検出部D1,D3との間でZ軸周りの周方向の検出位置が変化することから、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS1,OS3の各々では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS1,OS3の出力を加算することで、並進力Fxによる検出誤差をキャンセルすることができる。
同様に、外周部5と内周部7との間にY軸方向の相対移動が生じると、第1の系統を構成する光学式センサOS1,OS3では、スケールSC1,SC3と検出部D1,D3とのZ軸周りの周方向の検出位置の変化(回転量)は0もしくは非常に小さいことから、トルクの検出精度への影響は無視できる。一方、第2の系統を構成する光学式センサOS2,OS4では、スケールSC2,SC4と検出部D2,D4との間でZ軸周りの周方向の検出位置が変化することから、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS2,OS4の各々では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS2,OS4の出力を加算することで、並進力Fyによる検出誤差をキャンセルすることができる。
なお、外周部5と内周部7との間に、XY軸平面におけるX軸方向及びY軸方向以外の相対移動が生じた場合、第1の系統では、上述したようにY軸方向の成分についてはトルクの検出精度への影響は無視でき、X軸方向の成分については光学式センサOS1,OS3の出力を加算することで検出誤差をキャンセルできる。また第2の系統では、上述したようにX軸方向の成分についてはトルクの検出精度への影響は無視でき、Y軸方向の成分については光学式センサOS2,OS4の出力を加算することで検出誤差をキャンセルできる。したがって、トルクセンサ1は、光学式センサOS1,OS3の出力及び光学式センサOS2,OS4の出力をそれぞれ加算することで、XY軸平面におけるどの方向への相対移動が生じた場合でも、検出誤差をキャンセルできる。
なお、外周部5と内周部7との間にZ軸方向の相対移動が生じた場合、光学式センサOS1~OS4のいずれにおいても、スケールSC1~SC4と検出部D1~D4とのZ軸周りの周方向の検出位置の変化(回転量)はそれぞれ0もしくは非常に小さいことから、トルクの検出精度への影響は無視できる。
加算部65は、除算部59により除算された平均値と、除算部63により除算された平均値とを加算する。言い換えると、加算部65は、周方向に90度ずれて配置された第1の系統の出力(平均値)と第2の系統の出力(平均値)を加算する。除算部67は、加算部65により加算された平均値を2で除算し、平均値同士の平均値をさらに算出する。
以上のように、周方向に90度ずれて配置された第1の系統の出力(平均値)と第2の系統の出力(平均値)を加算することで、トルクセンサ1を波動歯車機構を備えた減速機と合わせて使用する場合における当該減速機に特有のトルクリップルによる検出誤差をキャンセルすることができる。図示は省略するが、一般に波動歯車機構は、サーキュラスプライン、ウェーブジェネレータ、フレクスプラインを有する。フレクスプラインは、ウェーブジェネレータにより楕円状にたわめられ、長軸の部分でサーキュラスプラインと歯が噛み合い、短軸の部分では歯が離れた状態になる。サーキュラスプライン又はフレクスプラインのいずれか一方を固定し、ウェーブジェネレータを時計方向へ回すと、フレクスプラインは弾性変形し、サーキュラスプラインとの歯の噛み合い位置が順次移動する。ウェーブジェネレータが1回転すると、サーキュラスプラインを固定している場合には、サーキュラスプラインとフレクスプラインの歯数差(例えば2)分だけフレクスプラインが反時計方向へ移動する。フレクスプラインを固定している場合には、歯数差(例えば2)分だけサーキュラスプラインが時計方向へ移動する。
波動歯車機構の上記構成により、ウェーブジェネレータが1回転(360度)する間に、フレクスプラインとサーキュラスプラインとの歯の噛み合い位置が2回通過する。これにより、図9に示すように、ウェーブジェネレータの1回転につき2周期のトルクリップルが生じ、トルクセンサの検出誤差として現れる場合がある。当該検出誤差は、トルクリップルに起因するため180度周期となる。一方、第1の系統の光学式センサOS1,OS3と第2の系統の光学式センサOS2,OS4とは、周方向に90度ずれて配置されているため、各々の出力の検出誤差は90度の位相差を有する。したがって、トルクセンサ1は、第1の系統の出力(平均値)と第2の系統の出力(平均値)を加算することで、波動歯車機構を備えた減速機に特有のトルクリップルによる検出誤差をキャンセルすることができる。
なお、上述したトルク算出処理は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、波動歯車機構を備えない減速機を使用する場合等、他軸干渉による検出誤差のキャンセルのみを行う場合には、加算部65及び除算部67を設けずに、除算部59により除算された平均値と除算部63により除算された平均値を、第1の系統と第2の系統の各々の独立したトルク値として出力してもよい。この場合、他軸干渉による検出誤差をキャンセルしつつ、センサ出力を二重化することができる。
また、加算部57及び除算部59で周方向に90度ずれて配置された第1光学式センサOS1の出力と第2光学式センサOS2の出力(第2光学式センサOS2の出力と第3光学式センサOS3の出力でもよい)とを加算して平均値を算出し、加算部61及び除算部63で周方向に90度ずれて配置された第3光学式センサOS3の出力と第4光学式センサOS4の出力(第4光学式センサOS4の出力と第1光学式センサOS1の出力でもよい)とを加算して平均値を算出し、加算部65及び除算部67でそれらの平均値を算出する構成としてもよい。この場合も、他軸干渉による検出誤差をキャンセルできると共に、波動歯車機構に特有のトルクリップルによる検出誤差をキャンセルすることができる。またこの場合において、トルクリップルによる検出誤差のキャンセルのみを行う場合には、加算部65及び除算部67を設けずに、除算部59により除算された平均値と除算部63により除算された平均値を、各々から独立したトルク値として出力してもよい。この場合、トルクリップルによる検出誤差をキャンセルしつつ、センサ出力を二重化することができる。
なお、上述した換算部56,58,60,62、加算部57、除算部59、加算部61、除算部63、加算部65、除算部67等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、これらの機能は例えば基板PB1b,PB2b,PB3b,PB4bに設けられたCPU(図示省略)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
また、光学式センサOS1,OS3又は光学式センサOS2,OS4は、それぞれ、周方向に90度以外の所定の角度間隔で配置された光学式センサの一例である。また、光学式センサOS1,OS2、光学式センサOS2,OS3、光学式センサOS3,OS4、又は光学式センサOS4,OS1は、それぞれ、周方向に180度以外の所定の角度間隔で配置された光学式センサの一例である。
<8.ヒステリシスの改善策>
次に、図10及び図11を参照しつつ、トルクセンサ1におけるヒステリシスの改善策の一例について説明する。図10は、ヒステリシスの改善策を施していない比較例のトルクセンサの起歪体3AをZ軸正の方向側から見た平面図である。図11は、上記比較例のトルクセンサにおける定格荷重に対する定格出力のヒステリシス曲線の一例を表すグラフである。
図10に示すように、比較例のトルクセンサの起歪体3Aでは、外周部5に複数(この例では12)のボルト穴11が、Z軸周りの周方向において等角度間隔(この例では30度)となるように配置されている。なお、ボルト穴11の配置以外の構成は、前述の図3に示す起歪体3と同様であるため説明を省略する。
図11に示すように、ボルト穴11が等間隔で配置された比較例のトルクセンサでは、定格出力にヒステリシスHSが生じる場合がある。このヒステリシスが大きくなると、トルクセンサの検出誤差として現れる。ヒステリシスの原因としては、外周部5の連結部9A~9D周辺における締結不足により、連結部9A~9D近傍において外周部5の締結面と外部機器(例えばロボットのアーム、エンドエフェクタ、減速機、モータ等)の締結面との間に滑りが生じていることが考えられる。
本実施形態のトルクセンサ1では、前述の図1及び図3に示すように、ボルト穴11は、Z軸周りの周方向において連結部9A~9Dに対応する位置の方が連結部9A~9Dに対応していない位置よりも密になるように、連結部9A~9Dの各々の近傍に集約して配置されている。具体的には、例えば図3に示すように、連結部9A~9Dの各々と略同じ角度(周方向の位置)にボルト穴11が配置され、その周方向両側に2つのボルト穴11が例えば略15度の間隔でそれぞれ配置されている。これにより、外周部5の連結部9A~9D周辺における締結力を高めることができる。その結果、締結ボルトの本数やボルトサイズを変更することなく、すなわちコストアップやサイズアップをさせずに、外周部5と外周部5を締結する部材との間の締結面の滑りを抑制することができる。その結果、ヒステリシスを小さくし、検出誤差を低減できる。
<9.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のトルクセンサ1は、起歪体3と、起歪体3の歪みを検出する光学式センサOS1~OS4と、を有し、起歪体3は、リング状の外周部5と、少なくとも一部が外周部5の径方向の内側に配置された内周部7と、を有し、光学式センサOS1~OS4は、内周部7に固定され、外周部5と内周部7との間に配置されたスケールSC1~SC4と、外周部5に固定され、外周部5と内周部7との間にスケールSC1~SC4と対向して配置された検出部D1~D4と、を有する。
これにより、外周部5と内周部7の少なくとも一部を軸方向に重ねて配置できるので、トルクセンサ1の軸方向寸法を低減できる。また、光学式センサOS1~OS4を外周部5と内周部7の隙間の空間Sに収容するので、光学式センサOS1~OS4が外周部5や内周部7から外部に突出する(はみ出す)ことを抑制できる。したがって、トルクセンサ1を小型化できる。
また、本実施形態では特に、トルクセンサ1は、外周部5と内周部7との間に配置され、検出部D1~D4を有する基板PB1~PB4をさらに有する。
これにより、光学式センサOS1~OS4に係る処理回路を有する基板PB1~PB4についても外周部5と内周部7の隙間の空間Sに収容することができるので、トルクセンサ1をコンパクト化できる。
また、本実施形態では特に、起歪体3は、外周部5と内周部7との間に配置され、外周部5と内周部7とを連結する複数の連結部9A~9Dを有し、基板PB1~PB4は、周方向において複数の連結部9A~9Dの間の空間に配置されている。
これにより、起歪体3としての機能(連結部9A~9Dで連結された外周部5と内周部7がトルクの大きさに応じた量だけ相対的に回転する)を阻害することなく、基板PB1~PB4を外周部5と内周部7の隙間の空間Sに収容することができる。
また、本実施形態では特に、複数の基板PB1~PB4の各々は、周方向において複数の連結部9A~9Dの間の複数の空間S1~S4にそれぞれ配置されており、トルクセンサ1は、周方向に隣接する基板同士を連結部9A~9Dを跨いで電気的に接続する接続部19,21,23をさらに有する。
これにより、外周部5と内周部7との間で複数の連結部9A~9Dによって形成される複数の空間S1~S4を有効活用できる。その上で、起歪体3としての機能を阻害することなく、複数の基板PB1~PB4間で信号を送受信することができる。
また、本実施形態では特に、光学式センサOS1~OS4は、起歪体3の周方向の複数箇所に配置されており、トルクセンサ1は、複数の光学式センサOS1~OS4の出力に基づいてトルクを算出するトルク算出部37をさらに有する。
このように周方向に配置された複数の光学式センサOS1~OS4の出力を使用することで、曲げモーメント(Mx,My)や並進力(Fx,Fy,Fz)等の他軸干渉による検出誤差や、トルクセンサ1を波動歯車機構を備えた減速機と合わせて使用する場合における当該減速機に特有のトルクリップルによる検出誤差をキャンセルすることができる。これにより、トルクの検出精度を向上することができる。
また、本実施形態では特に、複数の光学式センサOS1~OS4のうちの2つの光学式センサOS1,OS3(又は光学式センサOS2,OS4)は、周方向に90度以外の所定の角度間隔で配置されており、トルク算出部37は、2つの光学式センサOS1,OS3(又は光学式センサOS2,OS4)の出力に基づいてトルクを算出する。
2つの光学式センサOS1,OS3(又は光学式センサOS2,OS4)が周方向に90度以外の角度間隔で配置されている場合、各々のセンサの検出値に曲げモーメント(Mx,My)や並進力(Fx,Fy,Fz)等の他軸干渉による検出誤差が所定割合で重畳されるため、それらの出力を使用してトルクを算出することで、他軸干渉の影響を低減することができる。
また、本実施形態では特に、複数の光学式センサOS1~OS4のうちの2つの光学式センサOS1,OS2(又は光学式センサOS3,OS4)は、周方向に180度以外の所定の角度間隔で配置されており、トルク算出部37は、2つの光学式センサOS1,OS2(又は光学式センサOS3,OS4)の出力に基づいてトルクを算出する。
2つの光学式センサOS1,OS2(又は光学式センサOS3,OS4)が周方向に180度以外の角度間隔で配置されている場合、波動歯車機構を有する減速機に特有の1回転につき2周期のトルクリップルによる検出誤差が所定割合で重畳されるため、それらの出力を使用してトルクを算出することで、波動歯車機構のトルクリップルの影響を低減することができる。
また、本実施形態では特に、複数の光学式センサOS1~OS4は、それぞれ周方向に90度間隔で配置されている。
周方向に180度間隔で配置された2つの光学式センサOS1,OS3(又は光学式センサOS2,OS4)の出力を使用することで、他軸干渉の影響を低減することができる。また、周方向に90度間隔で配置された2つの光学式センサOS1,OS2(又は光学式センサOS3,OS4)の出力を使用することで、波動歯車機構に特有のトルクリップルの影響を低減することができる。したがって、各々が90度間隔で配置された4つの光学式センサOS1~OS4の出力を使用することで、上記両方の影響を共に低減することができる。
また、本実施形態では特に、トルク算出部37は、複数の光学式センサOS1~OS4の出力を加算し、加算した出力に基づいてトルクを算出する。
周方向に180度間隔で配置された2つの光学式センサOS1,OS3(又は光学式センサOS2,OS4)からは、他軸干渉による検出誤差が異なる符号(正と負)で出力される。また、周方向に90度間隔で配置された2つの光学式センサOS1,OS2(又は光学式センサOS3,OS4)からは、波動歯車機構に特有のトルクリップルによる検出誤差が異なる符号で出力される。したがって、これら2つの光学式センサの出力を加算することにより、検出誤差をキャンセルすることができる。
また、本実施形態では特に、起歪体3は、外周部5に固定され、外周部5と内周部7との間に突出し、検出部D1~D4を有する基板PB1~PB4を複数の固定位置(ピン穴25,25に相当する位置)で固定する基板固定部PF1~PF4を有し、検出部D1~D4は、基板PB1~PB4における複数の固定位置の中間位置(ピン穴25,25の中間位置)に配置されている。
起歪体3の材料は例えばアルミ等の金属であり、基板PB1~PB4は例えば樹脂製である。このため、各材料の熱膨張係数の差により、温度変化時に、基板PB1a~PB4a側に配置する検出部D1~D4と起歪体3側に配置するスケールSC1~SC4との間に相対変位が生じ、検出誤差が生じる可能性がある。本実施形態では、検出部D1~D4を、基板PB1~PB4における複数の固定位置(詳細にはPB1a~PB4aにおけるスタッドピン31が挿通されるピン穴45に相当する位置)の中間位置に配置する。これにより、検出部D1~D4の配置位置では、基板PB1a~PB4aが複数の固定位置からの引っ張り合い又は押し合いを受けて起歪体3による熱膨張・熱収縮が支配的となり、検出部D1~D4とスケールSC1~SC4との間に相対変位が生じるのを抑制できる。したがって、検出誤差を低減できる。
また、本実施形態では特に、トルクセンサ1は、基板PB1~PB4に形成されたピン穴45,49,53に挿通されて基板固定部PF1~PF4に形成されたピン穴25に圧入され、基板PB1~PB4が固定されたスタッドピン31をさらに有する。
トルクセンサ1の出力は、温度サイクルを繰り返すにつれてシフトする場合がある。その原因として、例えば基板固定部PF1~PF4と基板PB1~PB4との間で締結面に滑りが生じ、検出部D1~D4とスケールSC1~SC4との間に相対変位が生じることが考えられる。本実施形態では、基板固定部PF1~PF4のピン穴25に圧入されたスタッドピン31に対して基板PB1~PB4を固定するので、基板固定部PF1~PF4と基板PB1~PB4との間の締結面の滑りを抑制できる。これにより、検出誤差を低減できる。
また、本実施形態では特に、ピン穴45はスタッドピン31の大径部31Aの径よりも大きく形成されており、ピン穴49はスタッドピン31の中径部31Bの径よりも大きく形成されており、ピン穴53はスタッドピン31の小径部31Cの径よりも大きく形成されており、スタッドピン31とピン穴45,49,53との隙間にはそれぞれ接着剤47,51,55が充填されている。
仮に、ピン穴45,49,53とスタッドピン31の径とを略同等に形成し、スタッドピン31を基板PB1~PB4のピン穴45,49,53と基板固定部PF1~PF4のピン穴25の両方に圧入する構成とした場合、基板PB1~PB4及び起歪体3にピン穴を加工する際に非常に高い寸法精度が要求されることとなり、量産が困難となる。本実施形態では、ピン穴45,49,53をスタッドピン31の径よりも大きく形成することで、ピン穴の加工の際に要求される寸法精度を下げて量産を可能とすると共に、その隙間に接着剤47,51,55を充填することで、スタッドピン31に対して基板PB1~PB4を強固に固定できる。
また、本実施形態では特に、起歪体3は、外周部5及び内周部7とは別体且つ外周部5又は内周部7に対し着脱可能に構成され、検出部D1~D4又はスケールSC1~SC4が固定される取付片として構成される基板固定部PF1~PF4及びスケール固定部SF1~SF4を有する。
光学式センサOS1~OS4を構成するスケールSC1~SC4と検出部D1~D4を、起歪体3の外周部5と内周部7の間に配置する場合、狭いスペース内で繊細な組立作業を行う必要があり、作業性・生産性が低下する可能性がある。本実施形態では、検出部D1~D4又はスケールSC1~SC4が固定される基板固定部PF1~PF4及びスケール固定部SF1~SF4を外周部5及び内周部7に対して別ピース化することで、外周部5と内周部7の隙間の外部で組立作業を行うことができる。これにより、作業性・生産性を向上できる。
また、本実施形態では特に、起歪体3は、外周部5と内周部7との間に配置され、外周部5と内周部7とを連結する複数の連結部9A~9Dを有し、外周部5は、当該外周部5が固定される部材(外部機器)への締結位置(ボルト穴11)が、周方向において連結部9A~9Dに対応する位置の方が連結部9A~9Dに対応していない位置よりも密に配置されている。
ボルト穴11を等間隔配置とした前述の比較例のトルクセンサでは、出力のヒステリシスが大きい場合があり、検出誤差の一因となる(図11参照)。その原因として、例えば連結部9A~9D周辺の締結不足により外周部5と外部機器との間で締結面に滑りが生じ、検出部D1~D4とスケールSC1~SC4との間に相対変位が生じることが考えられる。そこで本実施形態では、締結位置(ボルト穴11)を連結部9A~9D周辺に密に配置することにより、外周部5と外部機器とを連結部9A~9Dの周辺で集中的に締結することができる。これにより、締結ボルトの本数やボルトサイズを変更することなく、すなわちコストアップやサイズアップをさせずに、外周部5と外部機器との間の締結面の滑りを抑制することができる。その結果、ヒステリシスを小さくし、検出誤差を低減できる。
<10.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
(10-1.3つの光学式センサを120度間隔で配置する場合)
上記実施形態では、4つの光学式センサOS1~OS4を90度間隔で配置したが、3つの光学式センサを120度間隔で配置してもよい。以下、この詳細について図12~図15を用いて説明する。
まず、図12を参照しつつ、本変形例に係るトルクセンサ101の全体構成の一例について説明する。図12はトルクセンサ101をZ軸正の方向側から見た平面図である。
図12に示すように、起歪体103は複数(この例では3)の連結部9A~9Cを有する。連結部9A~9Cは、外周部5と内周部7の間の空間Sに、Z軸周りの周方向に略等角度間隔(この例では120度間隔)で配置されている。以下では説明の便宜上、空間Sのうち、周方向において連結部9A,9Bの間の空間をS1、連結部9B,9Cの間の空間をS2、連結部9C,9Aの間の空間をS3という。
外周部5と内周部7の間の空間Sには、複数(この例では3)の基板PB1~PB3が配置されている。基板PB1~PB3の基本的な構成は前述の実施形態と同様であるが、空間S1,S2,S3が前述の実施形態よりも周方向に長くなったのに対応して、基板PB1~PB3についても周方向に長めに形成してもよい。基板PB1~PB3の各々は、Z軸周りの周方向において複数の連結部9A~9Cの間の複数の空間S1~S3にそれぞれ配置されている。すなわち、基板PB1は空間S1に、基板PB2は空間S2に、基板PB3は空間S3に配置されている。基板PB1と基板PB3には、外部機器との間で電源の入力や信号の送受信を行うための外部コネクタ17,15がそれぞれ設けられている。
周方向に隣接する基板同士、この例では基板PB1と基板PB2、基板PB2と基板PB3はそれぞれ、接続部21,23により、連結部9B,9Cを跨いで電気的に接続されている。なお、上記以外のトルクセンサ101の構成は、前述の実施形態に係るトルクセンサ1と同様であるので説明を省略する。
次に、図13を参照しつつ、起歪体103の構成の一例について説明する。図13は、起歪体103をZ軸正の方向側から見た平面図である。なお、図13では煩雑防止のため、内周部7のボルト穴13の図示を省略している。また、図13では、スケールSC1~SC3との位置関係を示すために、基板PB1~PB3に設置される検出部D1~D3を破線で示している。
図13に示すように、起歪体103は、外周部5と、内周部7と、連結部9A~9Cとを有しており、連結部9A~9Cは周方向に略120度間隔で配置されている。内周部7は、空間Sにおいて径方向外側に向けて突出した複数(この例では3)のスケール固定部SF1~SF3を有する。スケール固定部SF1~SF3は、周方向に略120度間隔で配置されている。スケール固定部SF1~SF3の上面には、スケールSC1~SC3が例えばねじ(図示省略)によりそれぞれ固定されている。
外周部5は、空間Sにおいて内側に向けて突出した複数セット(この例では3セット)の基板固定部PF1~PF3を有する。基板固定部PF1~PF3の各セット、すなわち基板固定部PF1,PF1のセットと、基板固定部PF2,PF2のセットと、基板固定部PF3,PF3のセットは、周方向に略120度間隔で配置されている。基板固定部PF1~PF3の各セットの上面には、検出部D1~D3をそれぞれ有する基板PB1~PB3が、スタッドピン31,31によりそれぞれ複数(この例では2箇所)の固定位置で固定される。なお、上記以外の起歪体103の構成は、前述の実施形態に係る起歪体3と同様であるので説明を省略する。
次に、図14を参照しつつ、本変形例に係るトルク算出処理の一例について説明する。図14は、トルク算出処理を実行するトルク算出部137の機能構成の一例を表すブロック図である。
トルク算出部137は、複数の光学式センサ(この例では3つの光学式センサOS1~OS3)の出力に基づいてトルク値を算出する。図14に示すように、トルク算出部137は、換算部164,166,168と、加算部165と、除算部167とを有する。
換算部164,166,168の各々は、第1光学式センサOS1、第2光学式センサOS2、第3光学式センサOS3のそれぞれの出力(検出値)と、連結部9A~9Cの弾性係数等とに基づいて、外周部5と内周部7との間に作用するトルク値をそれぞれ算出する。加算部165は、換算部164で算出されたトルク値と、換算部166で算出されたトルク値と、換算部168で算出されたトルク値とを加算する。除算部167は、加算部165により加算された検出値を3で除算し、平均値を算出する。
以上のように、周方向に120度間隔で配置された光学式センサOS1,OS2,OS3の出力(換算部により算出されたトルク値を含む)を加算することで、他軸干渉による検出誤差をキャンセルすることができる。例えば、外周部5と内周部7との間にX軸周りの相対回転が生じると、光学式センサOS1では、スケールSC1と検出部D1との間隔は変動するが、Z軸周りの周方向に対して平行な位置関係を維持するため、Z軸周りの周方向の検出位置の変化(回転量)は0もしくは非常に小さい。このため、トルクの検出精度への影響は無視できる。一方、光学式センサOS2,OS3では、スケールSC2,SC3と検出部D2,D3との間でZ軸周りの周方向に対して傾斜が生じる成分があるため、周方向の検出位置が変化し、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS2,OS3の各々では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、ねじりモーメントMxによる検出誤差をキャンセルすることができる。
同様に、外周部5と内周部7との間にY軸周りの相対回転が生じると、光学式センサOS1では、スケールSC1と検出部D1との間でZ軸周りの周方向に対して傾斜が生じ、且つ、光学式センサOS2,OS3では、スケールSC2,SC3と検出部D2,D3との間でZ軸周りの周方向に対して傾斜が生じる成分がある。このため、光学式センサOS1~OS3ではいずれも、周方向の検出位置が変化し、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS1と、光学式センサOS2,OS3では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、ねじりモーメントMyによる検出誤差をキャンセルすることができる。
なお、外周部5と内周部7との間に、XY軸平面におけるX軸周り及びY軸周り以外の相対回転が生じた場合でも、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、上述したようにX軸周りの成分及びY軸周りの成分の両方について検出誤差をキャンセルできる。したがって、トルクセンサ101は、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、XY軸平面におけるどの方向の軸周りに相対回転が生じた場合でも、検出誤差をキャンセルできる。
また例えば、外周部5と内周部7との間にX軸方向の相対移動が生じると、光学式センサOS1では、スケールSC1と検出部Dとの間でZ軸周りの周方向の検出位置が変化することから、検出誤差が生じる。また、光学式センサOS2,OS3では、スケールSC2,SC3と検出部D2,D3との間でZ軸周りの周方向の検出位置が変化する成分があることから、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS1と、光学式センサOS2,OS3では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、並進力Fxによる検出誤差をキャンセルすることができる。
同様に、外周部5と内周部7との間にY軸方向の相対移動が生じると、光学式センサOS1では、スケールSC1と検出部D1とのZ軸周りの周方向の検出位置の変化(回転量)は0もしくは非常に小さいことから、トルクの検出精度への影響は無視できる。一方、光学式センサOS2,OS3では、スケールSC2,SC3と検出部D2,D3との間でZ軸周りの周方向の検出位置が変化する成分があることから、検出誤差が生じる。しかし、光学式センサOS2,OS3の各々では、検出誤差がZ軸周りの周方向において反対方向(正方向と負方向)に生じるため、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、並進力Fyによる検出誤差をキャンセルすることができる。
なお、外周部5と内周部7との間に、XY軸平面におけるX軸方向及びY軸方向以外の相対移動が生じた場合でも、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、上述したようにX軸方向の成分及びY軸方向の成分の両方について検出誤差をキャンセルできる。したがって、トルクセンサ101は、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力をそれぞれ加算することで、XY軸平面におけるどの方向への相対移動が生じた場合でも、検出誤差をキャンセルできる。
また、周方向に120度間隔で配置された光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、上述した他軸干渉による検出誤差のキャンセルに加えてさらに、トルクセンサ1を波動歯車機構を備えた減速機と合わせて使用する場合における当該減速機に特有のトルクリップルによる検出誤差をキャンセルすることができる。
すなわち、前述のように波動歯車機構では、図15に示すように、ウェーブジェネレータの1回転につき2周期のトルクリップルが生じ、トルクセンサの検出誤差として現れる場合がある。当該検出誤差は、トルクリップルに起因するため180度周期となる。一方、光学式センサOS1,OS2,OS3はそれぞれ周方向に120度ずれて配置されているため、図15に示すように、各々の出力の検出誤差は120度の位相差を有する。したがって、トルクセンサ101は、光学式センサOS1,OS2,OS3の出力を加算することで、波動歯車機構を備えた減速機に特有のトルクリップルによる検出誤差をキャンセルすることができる。
なお、以上の変形例において、光学式センサOS1,OS2、光学式センサOS2,OS3、又は光学式センサOS3,OS1は、それぞれ、周方向に90度以外の所定の角度間隔で配置された光学式センサの一例であると共に、周方向に180度以外の所定の角度間隔で配置された光学式センサの一例である。
以上説明した変形例のトルクセンサ101では、3つの光学式センサOS1~OS3が周方向に120度間隔で配置されている。この場合、上述のように各々の光学式センサOS1~OS3の検出値に、他軸干渉による検出誤差及び波動歯車機構に特有のトルクリップルによる検出誤差が所定割合で重畳される。したがって、周方向に120度間隔で配置された3つの光学式センサOS1~OS3の出力を使用(加算して平均値を算出)することで、他軸干渉の影響及び波動歯車機構に特有のトルクリップルの影響の両方を共に低減することができる。
なお、上記変形例では、周方向に90度以外又は180度以外の所定の角度間隔で配置された光学式センサの一例として、周方向に120度間隔で配置された3つの光学式センサOS1~OS3について説明したが、光学式センサの角度配置はこれに限定されるものではない。例えば、周方向に60度間隔で配置された光学式センサ等、様々な角度間隔で配置することが可能である。
(10-2.その他)
以上では、起歪体3の歪みを検出するセンサとして、光学式のセンサを用いる場合について説明したが、センサの種類はこれに限定されるものではない。例えば、連結部9A~9Dにひずみゲージを設けてもよい。また、磁気センサを使用して外周部5と内周部7との相対回転量を検出してもよい。また、スケールと検出部に代えて対向する電極を設けておき、その電極間の距離を検出する静電容量式のセンサ等を使用してもよい。
<11.トルクセンサの適用例>
次に、図16~図19を参照しつつ、上記実施形態に係るトルクセンサ1(変形例に係るトルクセンサ101でもよい)の適用例について説明する。ここでは、トルクセンサ1をロボットのアームに適用する。
(11-1.ロボットの構成)
図16を参照しつつ、トルクセンサ1をアームの先端に備えたロボット200の構成の一例について説明する。図16に示すように、ロボット200は、基台201と、胴体部202と、別体として構成された2つのアーム203L,203Rとを有する、いわゆる双腕ロボットである。なお、ロボット200は必ずしも双腕ロボットである必要はなく、単一のアームのみ有するロボットとしてもよい。
基台201は、ロボット200の設置面(例えば床面)に対し、例えばアンカーボルト等により固定されている。なお、基台201は、床面以外の面(例えば天井面や側面等)に固定されてもよい。胴体部202は、基台201の上端部に旋回可能に支持されている。
アーム203Lは、胴体部202の一方側の側部に回動可能に支持されている。このアーム203Lは、肩部204Lと、上腕A部205Lと、上腕B部206Lと、下腕部207Lと、手首A部208Lと、手首B部209Lと、フランジ部210Lとを備える。
肩部204Lは、胴体部202の一方側の側部に回動可能に支持されている。この肩部204Lは、胴体部202との間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、胴体部202の一方側の側部に対し回動駆動される。
上腕A部205Lは、肩部204Lの先端側に旋回可能に支持されている。この上腕A部205Lは、肩部204Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、肩部204Lの先端側に対し旋回駆動される。
上腕B部206Lは、上腕A部205Lの先端側に回動可能に支持されている。この上腕B部206Lは、上腕A部205Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、上腕A部205Lの先端側に対し回動駆動される。
下腕部207Lは、上腕B部206Lの先端側に旋回可能に支持されている。この下腕部207Lは、上腕B部206Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、上腕B部206Lの先端側に対し旋回駆動される。
手首A部208Lは、下腕部207Lの先端側に回動可能に支持されている。この手首A部208Lは、下腕部207Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、下腕部207Lの先端側に対し回動駆動される。
手首B部209Lは、手首A部208Lの先端側に旋回可能に支持されている。この手首B部209Lは、手首A部208Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、手首A部208Lの先端側に対し旋回駆動される。
フランジ部210Lは、手首B部209Lの先端側に回動可能に支持されている。このフランジ部210Lは、手首B部209Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、手首B部209Lの先端側に対し回動駆動される。
フランジ部210Lの先端には、トルクセンサ1を介してハンド220Lが取り付けられている。ハンド220Lは、フランジ部210Lの回動と共にトルクセンサ1を介して回動する。このハンド220Lは、互いに遠近する方向に動作可能な一対の爪部材230を備える。
一方、アーム203Rは、上記アーム203Lと左右対称な構造を備え、胴体部202の他方側の側部に回動可能に支持されている。このアーム203Rは、肩部204Rと、上腕A部205Rと、上腕B部206Rと、下腕部207Rと、手首A部208Rと、手首B部209Rと、フランジ部210Rとを備える。
肩部204Rは、胴体部202の他方側の側部に回動可能に支持されている。この肩部204Rは、胴体部202との間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、胴体部202の他方側の側部に対し回動駆動される。
上腕A部205Rは、肩部204Rの先端側に旋回可能に支持されている。この上腕A部205Rは、肩部204Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、肩部204Rの先端側に対し旋回駆動される。
上腕B部206Rは、上腕A部205Rの先端側に回動可能に支持されている。この上腕B部206Rは、上腕A部205Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、上腕A部205Rの先端側に対し回動駆動される。
下腕部207Rは、上腕B部206Rの先端側に旋回可能に支持されている。この下腕部207Rは、上腕B部206Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、上腕B部206Rの先端側に対し旋回駆動される。
手首A部208Rは、下腕部207Rの先端側に回動可能に支持されている。この手首A部208Rは、下腕部207Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、下腕部207Rの先端側に対し回動駆動される。
手首B部209Rは、手首A部208Rの先端側に旋回可能に支持されている。この手首B部209Rは、手首A部208Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータ(図示省略)の駆動により、手首A部208Rの先端側に対し旋回駆動される。
フランジ部210Rは、手首B部209Rの先端側に回動可能に支持されている。このフランジ部210Rは、手首B部209Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAcR(後述の図17参照)の駆動により、手首B部209Rの先端側に対し回動駆動される。
フランジ部210Rの先端には、トルクセンサ1を介してハンド220Rが取り付けられている。ハンド220Rは、フランジ部210Rの回動と共にトルクセンサ1を介して回動する。このハンド220Rは、互いに遠近する方向に動作可能な一対の爪部材240を備える。
なお、上記アクチュエータはそれぞれ、例えば減速機等を備えたサーボモータにより構成されている。また、上記では、アーム203L,203Rの長手方向(あるいは延材方向)に沿った回転軸心まわりの回転を「回動」と呼び、アーム203L,203Rの長手方向(あるいは延材方向)に略垂直な回転軸心まわりの回転を「旋回」と呼んで区別している。
また、上記説明における「垂直」は、厳密なものではなく、実質的に生じる公差・誤差は許容されるものとする。また、上記説明における「垂直」は、仮想軸心が交わることを意味するものではなく、仮想軸心同士がなす方向が交差するものであればねじれの位置の場合も含まれるものとする。
(11-2.トルクセンサのアクチュエータへの組み付け構成)
次に、図17を参照しつつ、ロボット200におけるトルクセンサ1のアクチュエータへの組み付け構成の一例について説明する。なお、アーム203L,203Rの各々における組み付け構成は同様であるため、ここではアーム203Rにおけるトルクセンサ1のアクチュエータAcRへの組み付け構成を例にとって説明する。図17は、アーム203Rの先端部の断面構造の一例を表す断面図である。なお、図17ではトルクセンサ1の外周部5及び内周部7以外の構成の図示を省略する。
図17に示すように、アーム203Rの手首B部209Rの先端には、フランジ部210Rが回動可能に支持されている。フランジ部210Rは、手首B部209Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAcRの駆動により回動駆動される。フランジ部210Rの先端には、トルクセンサ1を介してハンド220Rが取り付けられている。ハンド220Rは、フランジ部210Rの回動と共にトルクセンサ1を介して回動する。
アクチュエータAcRは、サーボモータSVMと、減速機RGとを有する。サーボモータSVMは、モータフレーム251と、ブラケット253と、軸受255と、モータシャフト257と、回転子259と、固定子261とを有する。モータフレーム251とブラケット253とは、ボルト(図示省略)により締結されており、手首B部209Rの先端に取り付けられている。ブラケット253の内周には例えば2つの軸受255が設けられており、中空状のモータシャフト257を基端側(トルクセンサ1とは反対側)に突出させて回転可能に支持している。モータシャフト257の外周には回転子259が設けられ、モータフレーム251の内周に設けられた固定子261と径方向に間隙を空けて対向配置されている。モータシャフト257の内側には、モータフレーム251に固定された円筒状のスリーブ263が挿通されており、内部にケーブル等を配線することが可能である。
減速機RGは、波動歯車機構を備えた減速機である。減速機RGは、滑り軸受265と、サーキュラスプライン267と、フレクスプライン269と、ウェーブジェネレータ271とを有する。滑り軸受265は、外輪273と、摺動体275と、内輪277とを有する。外輪273は、フレクスプライン269と共に、ボルト(図示省略)によりサーボモータSVMのブラケット253に固定されている。内輪277は、サーキュラスプライン267に固定されており、サーキュラスプライン267と共に摺動体275を介して外輪273に対して回転可能に支持されている。ウェーブジェネレータ271の内周側は、モータシャフト257に連結されており、モータシャフト257と共に回転する。ウェーブジェネレータ271(入力)が1回転すると、フレクスプライン269が固定されているため、サーキュラスプライン267とフレクスプライン269の歯数差(例えば2)分だけ、サーキュラスプライン267(出力)がウェーブジェネレータ271と同じ回転方向へ移動する。また、減速機RGは、ウェーブジェネレータ271のベアリング279を覆うベアリングカバー281を有する。
フランジ部210Rは、ボルト(図示省略)により減速機RGのサーキュラスプライン267に固定されている。フランジ部210Rの基端側には、シール溝211が形成されており、当該シール溝211内にベアリングカバー281に対して摺動しつつ密封を行うシール部材213が設けられている。また、フランジ部210Rの内周側には、スリーブ263を回転可能に支持する軸受215が設けられている。
トルクセンサ1の外周部5は、ボルト穴11に挿通された複数(この例では12)の締結ボルト(図示省略)により、フランジ部210Rに締結されている。また、トルクセンサ1の内周部7は、ボルト穴13に挿通された複数(この例では12)の締結ボルト(図示省略)により、ハンド220Rに締結されている。
以上のように構成したロボット200によれば、トルクセンサ1の小型化により、アームの長さ方向寸法の増大を抑制しつつ関節部におけるトルクの検出精度を向上させたロボットを実現できる。また、関節部のトルクの検出精度の向上により、トルク制御の精度や、外部の物体との接触等の検出精度を向上できるので、例えば人間と共存するロボット等への適用が期待できる。
なお、以上ではアームの先端のアクチュエータAcRにトルクセンサ1を設けた場合について説明したが、その他の関節部のアクチュエータにトルクセンサ1を設置してもよい。
(11-3.トルクセンサのアクチュエータへの組み付け構成の第1の変形例)
図17に示す構成において、フランジ部の機能をトルクセンサに持たせてフランジ部を不要とし、アームの長さ方向寸法の低減を図ってもよい。図18は、本変形例におけるアーム203Rの先端部の断面構造の一例を表す断面図である。
図18に示すように、本変形例に係るトルクセンサ301は、外周部305と内周部307とを有する。外周部305は、内周部307の基端側(ハンド220Rとは反対側)の端部よりも基端側に向けて突出した円筒状の突出部309を有する。また、トルクセンサ301は、突出部309と、減速機RG(内周部が固定される部材の一例)の滑り軸受265の外輪273との間に配置されたシール部材317(第1シール機構の一例)を有する。なお、突出部309を有する外周部305の外径は、ブラケット253の外径と略同じかそれよりも小さくなるように形成されている。トルクセンサ301の外周部305は、ボルト穴11に挿通された複数(この例では12)の締結ボルト(図示省略)により、ハンド220Rに締結されている。
内周部307の基端側には、シール溝311が形成されており、当該シール溝311内に減速機RGのベアリングカバー281に対して摺動しつつ密封を行うシール部材313(第2シール機構の一例)が設けられている。また、内周部307の内周側には、スリーブ263を回転可能に支持する軸受315が設けられている。トルクセンサ301の内周部307は、ボルト穴13に挿通された複数(この例では12)の締結ボルト(図示省略)により、減速機RGのサーキュラスプライン267に締結されている。
なお、トルクセンサ301の上記以外の構成(起歪体、連結部、基板、光学式センサ等)やトルク算出処理の内容等は、前述の実施形態に係るトルクセンサ1と同様であるので説明を省略する。
以上説明した変形例によれば、トルクセンサ301に設けたシール部材317により、減速機RGとトルクセンサ301との間の外周の防塵・防滴性を確保することができる。また、トルクセンサ301に設けた軸受315によりスリーブ263を回転可能に支持できる。このようにして、前述のフランジ部210Rの機能(シール、軸受等)をトルクセンサ301に持たせることにより、フランジ部210Rとトルクセンサとを一体化し、フランジ部210Rを不要とすることができる。その結果、フランジ部210Rの厚み分の寸法を低減できるので、トルクセンサ301を取り付けたロボットのアームの長さ方向寸法を低減できる。また、トルクセンサ301の外径をアクチュエータAcRの外径内に収めることができ、アームの太さの増大を招くこともない。さらに、フランジ部210Rが不要となることにより部品点数を低減できると共に、コストを低減できる。
また、本変形例では特に、トルクセンサ301は、内周部307と当該内周部307が固定される減速機RG(ベアリングカバー281)との間に配置されたシール部材313をさらに有する。これにより、次の効果を奏する。すなわち、アクチュエータAcR及びトルクセンサ301が中空構造の場合には、内部に電気配線やケーブル等が付設されるため、より高い防塵・防滴仕様とするのが好ましい。本変形例では、シール部材317に加えてシール部材313を設けるので、2重のシール構造により、減速機RGとトルクセンサ301との間により高い防塵・防滴性を確保することができる。
(11-4.トルクセンサのアクチュエータへの組み付け構成の第2の変形例)
図18に示す構成において、減速機にトルクセンサを組み込むことにより減速機とトルクセンサとを一体化させ、アームの長さ方向寸法の更なる低減を図ってもよい。図19は、本変形例におけるアーム203Rの先端部の断面構造の一例を表す断面図である。
本変形例に係るトルクセンサ401は、外周部405と内周部407とを有する。外周部405は、基端側に向けて突出した円筒状の突出部409を有する。また、トルクセンサ401は、突出部409と、減速機RG(内周部が固定される部材の一例)の滑り軸受265の外輪273との間に配置されたシール部材417(第1シール機構の一例)を有する。なお、突出部409を有する外周部405の外径は、ブラケット253の外径と略同じかそれよりも小さくなるように形成されている。トルクセンサ401の外周部405は、ボルト穴11に挿通された複数(この例では12)の締結ボルト(図示省略)により、ハンド220Rに締結されている。
内周部407は、内周面に歯を有する内歯車として形成されたサーキュラスプライン部419を有する。このサーキュラスプライン部419と、当該サーキュラスプライン部419の内側に配置されたフレクスプライン269及びウェーブジェネレータ271とが、波動歯車機構を構成する。また、内周部407の基端側には、シール溝411が形成されており、当該シール溝411内に減速機RGのベアリングカバー281に対して摺動しつつ密封を行うシール部材413(第2シール機構の一例)が設けられている。また、内周部407の内周側には、スリーブ263を回転可能に支持する軸受415が設けられている。トルクセンサ401の内周部407は、ボルト穴13に挿通された複数(この例では12)の締結ボルト(図示省略)により、減速機RGの滑り軸受265の内輪277に締結されている。
なお、トルクセンサ401の上記以外の構成(起歪体、連結部、基板、光学式センサ等)やトルク算出処理の内容等は、前述の実施形態に係るトルクセンサ1と同様であるので説明を省略する。
以上説明した変形例によれば、トルクセンサ401の内周部407が、減速機RGのサーキュラスプラインを兼ねている。これにより、減速機RGにトルクセンサ401を組み込むことが可能となる。その結果、トルクセンサ401の厚み寸法分を低減できるので、トルクセンサ401を取り付けたロボットのアームの長さ方向寸法をさらに低減できる。また、トルクセンサ401の外径をアクチュエータAcRの外径内に収めることができ、アームの太さの増大を招くこともない。さらに、減速機RGにおいてサーキュラスプラインが不要となることにより部品点数を低減できると共に、コストを低減できる。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。