以下、例示物及び実施形態を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、ある層の「面内方向」とは、別に断らない限り、層平面に平行な方向を表す。
以下の説明において、ある層の「厚み方向」とは、別に断らない限り、層平面に垂直な方向を表す。よって、別に断らない限り、ある層の面内方向と厚み方向とは、垂直である。
以下の説明において、ある面の「傾斜方向」とは、別に断らない限り、その面に平行でも垂直でもない方向を表し、具体的には前記面の極角が5°以上85°以下の範囲の方向を指す。
以下の説明において、ある層平面の傾斜方向の「方位」とは、別に断らない限り、その傾斜方向の、層平面に平行な成分を表す。
以下の説明において、用語「偏光板」及び用語「波長板」は、別に断らない限り、樹脂フィルム等の可撓性を有するフィルム及びシートを包含する。
以下の説明において、ある要素が層平面に対して「傾斜している」とは、その要素が前記層平面に対して平行でも垂直でもないことを表す。前記の要素が前記層平面に対してなす角度は、通常、5°以上85°以下の範囲にある。
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±4°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、複屈折の逆波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N1)を満たすことをいう。このような逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。
Δn(450)<Δn(550) (N1)
以下の説明において、複屈折の順波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N2)を満たすことをいう。このような順波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物は、通常、測定波長が長いほど、小さい複屈折を発現できる。
Δn(450)>Δn(550) (N2)
以下の説明において、ある層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、590nmである。面内レターデーションReは、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定できる。
以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、面内方向の遅相軸をいう。
以下の説明において、別に断らない限り、ある層に含まれる液晶性化合物の分子の「傾斜角」とは、その液晶性化合物の分子が層平面に対してなす角度を表し、「チルト角」とも呼ばれることがある。この傾斜角は、液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向が層平面となす角度のうち、最大の角度に相当する。また、以下の説明においては、別に断らない限り、「傾斜角」とは、液晶性化合物の分子の、当該液晶性化合物が含まれる層の層平面に対する傾斜角を表す。
以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算できる。
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して1万倍以下でありうる。
以下の説明において、置換基を有する基の炭素原子数には、別に断らない限り、前記置換基の炭素原子数を含めない。よって、例えば「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基」との記載は、置換基の炭素原子数を含まないアルキル基自体の炭素原子数が1~20であることを表す。
[1.円偏光板の概要]
本発明の一実施形態に係る長尺の円偏光板は、長尺の直線偏光子、長尺の第一液晶硬化層、及び、長尺の第二液晶硬化層を、この順に備える。第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層は、いずれも、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層であり、区別のために、「第一」及び「第二」との接頭語を付している。
第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層は、それぞれ独立に、層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子を含む。また、第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層は、それぞれ独立に、層平面に対する液晶性化合物の分子の傾斜角が相対的に大きい高傾斜面と、層平面に対する液晶性化合物の分子の傾斜角が相対的に小さい低傾斜面とを有する。さらに、第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層の少なくとも一方の高傾斜面は、直線偏光子に向いている。
このような長尺の円偏光板は、長尺の基材及び長尺の液晶硬化層を備えた長尺の転写体から、液晶硬化層を、当該転写体の基材以外の部材にロール・トゥ・ロール法によって貼り合わせることを含む製造方法によって製造できる。この際、前記の貼り合わせ回数を少なくできることから、本実施形態に係る円偏光板は、簡単な製造が可能である。
[2.長尺の直線偏光子]
長尺の直線偏光子は、吸収軸を有する長尺の部材であり、通常は、吸収軸を有するフィルムである。この直線偏光子は、吸収軸に平行な振動方向を有する直線偏光を吸収でき、それ以外の直線偏光を透過させることができる。直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。直線偏光子は、通常、当該直線偏光子の長尺方向に平行又は垂直な吸収軸を有する。市販の直線偏光子は、その長尺方向に吸収軸を有することが多い。
直線偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;が挙げられる。これらのうち、直線偏光子としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
偏光子の偏光度は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
また、偏光子の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5μm~80μmである。
[3.液晶硬化層]
円偏光板に含まれる第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層といった液晶硬化層の構成について説明する。液晶硬化層は、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成されている。液晶組成物の硬化物で形成されているので、液晶硬化層は、液晶性化合物の分子を含む。液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子は、配向状態を固定されていてもよい。用語「配向状態を固定された液晶性化合物」には、液晶性化合物の重合体が包含される。通常、重合によって液晶性化合物の液晶性は失われるが、本願においては、そのように重合した液晶性化合物も、用語「液晶硬化層に含まれる液晶性化合物」に含める。
液晶硬化層は、当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子を含む。すなわち、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子は、当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜している。液晶硬化層において、液晶性化合物の分子のうち、一部が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していてもよく、全部が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していてもよい。例えば、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角は、厚み方向において、一側に近いほど小さく、一側から遠いほど大きいことがある。よって、液晶硬化層の一側の面の近傍部分では、液晶性化合物の分子が層平面に対して平行でありえる。また、液晶硬化層の一側とは反対側の面の近傍部分では、液晶性化合物の分子が層平面に対して垂直でありえる。しかし、このように液晶硬化層の表面近傍部分で液晶性化合物の分子が層平面に対して平行又は垂直である場合であっても、通常は、液晶硬化層の表面近傍部分を除いた部分では、液晶性化合物の分子は、層平面に対して傾斜している。
液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜していることは、十分な分解能を有する偏光顕微鏡で液晶硬化層の断面を観察することによって、確認できる。この観察は、液晶性化合物の分子の傾斜を視認し易くするために、必要に応じて、観察サンプルと偏光顕微鏡の対物レンズとの間に検板として波長板を挿入して実施してもよい。
または、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜していることは、下記のようにして確認できる。液晶硬化層の面内の進相軸方向に対して垂直な測定方向で、入射角θにおける液晶硬化層のレターデーションR(θ)を測定する。そして、入射角θでの液晶硬化層のレターデーションR(θ)を入射角0°での液晶硬化層のレターデーションR(0°)で割ったレターデーション比R(θ)/R(0°)を求める。こうして求めたレターデーション比R(θ)/R(0°)を縦軸、入射角θを横軸としたグラフを描いた場合に、得られたグラフがθ=0°に対して非対称であれば、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜していることが確認できる。
以下、例を挙げてより具体的に説明する。図1は、ある例に係る液晶硬化層のレターデーション比R(θ)/R(0°)を、入射角θに対してプロットしたグラフである。液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の全ての分子の傾斜角が0°又は90°であると、レターデーション比R(θ)/R(0°)は、図1で破線で示す例のように、θ=0°の直線(図1では、θ=0°を通る縦軸)に対して線対称となる。これに対して、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していると、レターデーション比R(θ)/R(0°)は、図1に実線で示す例のように、通常はθ=0°の直線に対して非対称となる。よって、レターデーション比R(θ)/R(0°)がθ=0°に対して非対称である場合には、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜している、と判定できる。
前記のように層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子を含む液晶硬化層は、通常、オモテ面及びウラ面の一方として低傾斜面を有し、オモテ面及びウラ面の他方として高傾斜面を有する。低傾斜面とは、層平面に対する液晶性化合物の分子の傾斜角が相対的に小さい面をいう。また、高傾斜面とは、層平面に対する液晶性化合物の分子の傾斜角が相対的に大きい面をいう。後述するように、液晶硬化層は、通常、基材上に形成された液晶組成物の層を硬化させて製造される。液晶組成物の層の基材側界面では、液晶性化合物の分子が基材表面に沿って配向する傾向がある。よって、この基材側界面に相当する液晶硬化層の面では、液晶性化合物の分子の傾斜角は相対的に小さい。他方、液晶組成物の層の基材とは反対側の空気界面では、液晶性化合物の分子が層平面に対して大きな角度をなして配向する傾向がある。よって、この空気側界面に相当する液晶硬化層の面では、液晶性化合物の分子の傾斜角は相対的に大きい。したがって、液晶硬化層のオモテ面及びウラ面における液晶性化合物の分子の傾斜角は異なりうるので、一般に、液晶硬化層は、低傾斜面及び高傾斜面を有する。
液晶硬化層の表面における液晶性化合物の分子の傾斜角は、液晶硬化層の断面を偏光顕微鏡で観察し、消光位から測定できる。この観察の際には、液晶硬化層の遅相軸に平行でかつ層平面に垂直な断面を観察しうる。
図2は、一例に係る液晶硬化層100を、当該液晶硬化層100の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、液晶硬化層100に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子110は、層平面に対して傾斜している。よって、液晶硬化層100に含まれる液晶性化合物の分子110には、チルト方向ATが観念できる。この液晶性化合物の分子110の「チルト方向AT」とは、液晶硬化層100の層平面に平行な向きであって、液晶性化合物の分子110のダイレクタD110が立ち上がっている向きを示す。液晶性化合物の分子110の「ダイレクタD110」とは、液晶性化合物の分子110の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、液晶硬化層100全体の平均として示すベクトルを示す。また、ダイレクタD110の「立ち上がり」とは、液晶硬化層100の低傾斜面100Dを基準とした立ち上がりをいう。よって、低傾斜面100D側に始点を置き、高傾斜面100U側に終点を置くようにダイレクタD110を書くことにより、そのダイレクタD110の面内方向に平行な成分が示すベクトルの向きとして、そのダイレクタD110が立ち上がっている向きとしてのチルト方向ATを特定できる。
前記のチルト方向ATは、具体的には、下記の方法によって測定できる。
位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて、液晶硬化層100の遅相軸を検出する。
また、液晶硬化層100の低傾斜面100Dを特定する。低傾斜面100Dの特定は、例えば、液晶硬化層100の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面において液晶硬化層100を切断して、厚さ約1μmの切片を切り出し、偏光顕微鏡観察により前記切片の断面を観察することで、行うことができる。
そして、低傾斜面100Dを下にして、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて、液晶硬化層100のレターデーションを測定する。レターデーションの測定は、液晶硬化層100の進相軸に垂直な測定方向において、入射角を0°から次第に大きくして行う。入射角を次第に大きくするにつれて、液晶硬化層100のレターデーションが次第に小さくなる場合、測定方向がチルト方向ATと平行に近付くと判断できる。よって、前記のレターデーションの測定により、チルト方向を特定できる。
なお、液晶硬化層100の遅相軸及び低傾斜面100Dが判明している場合、遅相軸の検出及び低傾斜面100Dの特定の操作は、省略してもよい。
チルト方向ATは、例えば、転写体の製造方法における基材のラビング方向によって、調整できる。通常は、基材がラビング材によってラビングされる向きが、チルト方向ATに一致する。
図3は、一例に係る液晶硬化層100を模式的に示す平面図である。液晶硬化層100に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向ATは、当該チルト方向ATが幅方向ATDと正確に平行でない限り、長尺方向AMDにおいていずれかの向きに向きうる。ここで、長尺方向AMDにおけるチルト方向ATの向きとは、図3に示すように、チルト方向ATを表すベクトルBTを、長尺方向AMDのベクトル成分BMDと幅方向ATDのベクトル成分BTEとに分解した場合における、長尺方向AMDのベクトル成分BMDの向きを表す。
液晶硬化層が、当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子を含むので、その液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角は、通常、5°以上85°以下である。ある層に含まれる液晶性化合物の分子の「実質最大傾斜角」とは、その層の一方の面での分子の傾斜角が0°であり、且つ分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値をいう。液晶性化合物を含む層において、液晶性化合物の分子の傾斜角は、厚み方向において、層の一側に近いほど小さく前記一側から遠いほど大きいものでありうる。実質最大傾斜角は、このような厚み方向における傾斜角の変化の比率(即ち、一側に近いほど減少し、一側から遠いほど増加するという変化の比率)が一定であると仮定して計算される、傾斜角の最大値を表す。通常、液晶硬化層においては、実質最大傾斜角は、低傾斜面での分子の傾斜角が0°であり、且つ、分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値を表す。
前記の実質最大傾斜角は、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角の大きさを示す指標である。通常、実質最大傾斜角が大きい液晶硬化層ほど、その液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の全体として見た傾斜角が大きい傾向がある。よって、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角を調整することにより、液晶硬化層の厚み方向の複屈折を調整することが可能である。
液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角の範囲は、外光の効率的な反射の抑制が可能な円偏光板が得られるように、適切に設定することが望ましい。外光の反射をより効果的に抑制する観点では、前記の実質最大傾斜角の範囲は、好ましくは40°以上、より好ましくは45°以上、特に好ましくは50°以上であり、好ましくは85°以下、より好ましくは80°以下、特に好ましくは75°以下である。
液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角は、下記の方法によって測定しうる。
図4は、傾斜方向から液晶硬化層100のレターデーションを測定する際の測定方向を説明するための斜視図である。図4において、矢印A120は液晶硬化層100の面内の遅相軸を表し、矢印A130は液晶硬化層100の面内の進相軸を表し、矢印A140は液晶硬化層100の厚み方向を表す。
位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて、図4に示すように、液晶硬化層100のレターデーションを、入射角θが-50°~+50°の範囲で測定する。この際、測定方向A150は、液晶硬化層100の面内の進相軸A130に対して垂直に設定する。また、測定波長は590nmとする。測定されたレターデーションから、前記の位相差計に付属の解析ソフトウェア(AxoMetrics社製の解析ソフトウェア「Multi-Layer Analysis」;解析条件は、解析波長590nm、層分割数20層)により、液晶硬化層100に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角を解析できる。
液晶硬化層は、液晶組成物の硬化物で形成された層を1層のみ含む単層構造を有していてもよく、液晶組成物の硬化物で形成された層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。以下の説明において、複層構造の液晶硬化層に含まれる液晶組成物の硬化物で形成された複数の層それぞれを、液晶硬化層全体と区別するため、適宜「部分層」ということがある。通常、これらの部分層は、それらの間に他の層を介することなく、直接に接している。このように液晶硬化層が複層構造を有する場合、当該液晶硬化層の遅相軸とは、部分層それぞれの遅相軸ではなく、それらの複数の部分層を含む液晶硬化層全体としての遅相軸を表す。前記の遅相軸は、通常、面内方向において液晶性化合物の分子の配向によって生じている。
図5は、一例に係る液晶硬化層100を模式的に示す平面図である。図5に示すように、液晶硬化層100は、その長尺方向AMDに対して所定の角度φをなす方向に、遅相軸A120を有することが好ましい。具体的には、液晶硬化層100の遅相軸A120が当該液晶硬化層100の長尺方向AMDに対してなす角度φとしての配向角は、好ましくは42°以上、より好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは48°以下、より好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。このような範囲に遅相軸A120を有する液晶硬化層100を用いる場合、円偏光板を容易に得ることができる。
液晶硬化層の面内レターデーションの範囲は、第一液晶硬化層と第二液晶硬化層との組み合わせが1/4波長板として機能できるように設定することが望ましい。具体的には、第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層の面内レターデーションは、それぞれ、測定波長590nmにおいて、好ましくは50nm以上、より好ましくは55nm以上、特に好ましくは60nm以上であり、好ましくは90nm以下、より好ましく85nm以下、特に好ましくは80nm以下である。
液晶硬化層は、逆波長分散性の面内レターデーションを有することが好ましい。ここで、面内レターデーションの逆波長分散性とは、波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)及び波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、下記式(N3)を満たすことをいう。中でも、液晶硬化層の面内レターデーションは、下記式(N4)を満たすことが特に好ましい。このように逆波長分散性の面内レターデーションを有する液晶硬化層は、広い波長帯域において均一に機能を発現できるので、広い波長範囲において外光の反射を効果的に抑制できる円偏光板が得られる。
Re(450)/Re(550)<1.00 (N3)
Re(450)/Re(550)<0.90 (N4)
液晶硬化層は、透明性に優れることが好ましい。具体的には、液晶硬化層の全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは84%以上である。また、液晶硬化層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定できる。また、ヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定できる。
液晶硬化層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは7.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。
[4.円偏光板の詳細]
図6は、本発明の一実施形態に係る長尺の円偏光板200を模式的に示す斜視図である。図6に示すように、本実施形態に係る長尺の円偏光板200は、長尺の直線偏光子210、長尺の第一液晶硬化層220、及び、長尺の第二液晶硬化層230を、厚み方向でこの順に備える。通常、この長尺の円偏光板200においては、円偏光板200の長尺方向、直線偏光子210の長尺方向、第一液晶硬化層220の長尺方向、及び、第二液晶硬化層230の長尺方向は、一致している。
第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230としては、それぞれ独立に、上述した液晶硬化層を採用しうる。第一液晶硬化層220と第二液晶硬化層230との間で、液晶性化合物の種類、量、分子の傾斜角、チルト方向、実質最大傾斜角、レターデーション、遅相軸方向、厚み等の要素は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の組み合わせによってレターデーションの方位依存性を抑制できる円偏光板200を容易に製造する観点では、第一液晶硬化層220と第二液晶硬化層230との間で前記の要素の一部または全部は、同じであることが好ましい。
円偏光板200において、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の少なくとも一方の高傾斜面は、直線偏光子210に向いている。すなわち、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の少なくとも一方は、その低傾斜面よりもその高傾斜面の方が直線偏光子210に近くに位置するように、設けられている。これにより、円偏光板の製造過程における液晶硬化層の貼り合わせ回数を少なくできるので、簡単な製造方法で円偏光板200を製造できるという効果が得られる。
以下、前記の効果について説明する。
図7は、一例に係る長尺の転写体300を模式的に示す断面図である。図7に示すように、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230に相当する長尺の液晶硬化層320は、長尺の転写体300の一部として製造されうる。この転写体300は、長尺の基材310と、この基材310上に形成された長尺の液晶硬化層320とを備える。また、液晶硬化層320は、通常、基材310側にある面として低傾斜面320Dを、基材310とは反対側にある面として高傾斜面320Uを、それぞれ有する。
一般に、液晶硬化層320は、薄いので、単独での取り扱いが容易でない。そこで、液晶硬化層320は、通常、適切な支持体に貼り合せられた状態で取り扱いがなされる。したがって、長尺の転写体300に含まれる液晶硬化層320を長尺のフィルム部材(図7では、図示せず。)に転写する場合、通常は、転写体300に含まれる液晶硬化層320をフィルム部材と貼り合せた後で、必要に応じて基材310を剥離して、フィルム部材への液晶硬化層320の転写を達成する。
図8は、長尺の転写体300が備える液晶硬化層320を、ロール・トゥ・ロール法によって、長尺の任意のフィルム部材410に転写するための一例に係る転写装置400を模式的に示す概要図である。図8に示すように、長尺の転写体300に含まれる液晶硬化層320を長尺のフィルム部材410に転写する操作は、効率向上の観点から、ロール・トゥ・ロール法を用いることが好ましい。ロール・トゥ・ロール法とは、繰り出しロールから繰り出されるフィルムに連続的に処理を行い、処理されたフィルムを巻取り、ロール体として回収する方法を表す。
図8に示す例では、長尺の転写体300の繰り出しロール330と、長尺のフィルム部材410の繰り出しロール420とが用意されている。繰り出しロール330から繰り出された転写体300の液晶硬化層320と、繰り出しロール420から繰り出されたフィルム部材410とが、貼合ロール430及び440によって貼り合せられる。この貼り合せには、接着剤又は粘着剤を用いてもよい。その後、必要に応じて、剥離ロール450及び460によって基材310が剥離されて、フィルム部材410への液晶硬化層320の転写が達成されるので、フィルム部材410及び液晶硬化層320を含む長尺の複層フィルム470が得られる。複層フィルム470は、巻き取られてロール体480として回収される。他方、剥離された基材310は、巻き取られてロール体340として回収される。
図7に示したように、転写体300の液晶硬化層320は、通常、基材310とは反対側にある面として、高傾斜面320Uを有する。よって、図8に示したような1回の転写によれば、フィルム部材410と液晶硬化層320とを、液晶硬化層320の高傾斜面320Uがフィルム部材410に向くように、貼り合せることができる。そうすると、長尺のフィルム部材410として直線偏光子を含む長尺の部材(直線偏光子、又は、直線偏光子を含む複層フィルムなど)を採用した場合、1回の転写によって得られる複層フィルム470の液晶硬化層320が、直線偏光子に向いた高傾斜面320Uを有することができる。
しかし、液晶硬化層320の低傾斜面320Dを直線偏光子に向けようとすると、通常、2回以上の転写を行うことが求められる。すなわち、上述したように1回目の転写によって、フィルム部材410と、このフィルム部材410とは反対側に低傾斜面320Dを有する液晶硬化層320とを備える複層フィルム470を得る。その後、転写体300の代わりにこの複層フィルム470を用い、かつ、フィルム部材410の代わりに直線偏光子を含む長尺の部材を用いる2回目の転写を行う。このような2回の転写によって得られたフィルムは、直線偏光子と、この直線偏光子に向いた低傾斜面320Dを有する液晶硬化層320とを備える。
このように、高傾斜面320Uが直線偏光子に向く態様での液晶硬化層320の貼り合せは、1回の転写によって行うことができる。しかし、低傾斜面320Dが直線偏光子に向く態様での液晶硬化層320の貼り合せは、2回以上の転写を行うことが求められる。したがって、図6に示すような第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230という2層の液晶硬化層を備える円偏光板200を製造する製造方法は、通常、長尺の転写体の液晶硬化層を、当該転写体の基材以外の部材(長尺の直線偏光子、長尺のフィルム部材、等)にロール・トゥ・ロール法によって貼り合わせる工程を、2回以上行うことを含む。このとき、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の少なくとも一方、好ましは両方の高傾斜面が直線偏光子210に向いた円偏光板200は、それら第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230を設けるための液晶硬化層の貼り合せ回数を3回以下と少なくできる。よって、本実施形態に係る円偏光板200は、簡単な製造方法で製造できる。
厚み方向から見て、円偏光板200に含まれる第一液晶硬化層220の遅相軸と第二液晶硬化層230の遅相軸とは、平行に近いことが好ましく、平行であることが特に好ましい。具体的には、厚み方向から円偏光板を見た場合、第一液晶硬化層220の遅相軸と第二液晶硬化層230の遅相軸とがなす角度としての交差角度は、好ましくは0°~10°、より好ましくは0°~5°、特に好ましくは0°~2°である。この場合、円偏光板200の製造が容易である。
円偏光板200は、要件(X1)又は要件(X2)を満たすことが好ましい。
要件(X1):第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の両方の高傾斜面が、直線偏光子210に向いており、かつ、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向とが、長尺方向において、逆向きである(後述する円偏光板の第2の実施例を参照)。
要件(X2):第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の一方の高傾斜面が、直線偏光子210に向いており、かつ、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向とが、長尺方向において、同じ向きである(後述する円偏光板の第3及び第5の実施例を参照)。
要件(X1)又は要件(X2)を満たす円偏光板200は、層平面の傾斜方向において、反射抑制能力の方位依存性を抑制できる。ここで、反射抑制能力の方位依存性とは、反射抑制能力が方位によって異なる性質をいう。具体的には、下記のとおりである。一般に、層平面の傾斜方向における液晶硬化層のレターデーションには、方位依存性がある。ここで、レターデーションの方位依存性とは、レターデーションが方位によって異なる性質をいう。しかし、前記のように要件(X1)又は要件(X2)を満たす円偏光板200では、第一液晶硬化層220のレターデーションの方位依存性と、第二液晶硬化層230のレターデーションの方位依存性とを、相殺することができる。よって、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230の組み合わせとしては、傾斜方向におけるレターデーションの方位依存性を抑制できる。したがって、いずれの方位においても、通常は近い値のレターデーションを得ることができ、好ましくは同じ値のレターデーションを得ることができる。そのため、円偏光板200が、層平面の傾斜方向における反射抑制能力の方位依存性を抑制できる。
円偏光板200は、直線偏光子210、第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230に組み合わせて、更に任意の層を含んでいてもよい。任意の層としては、他の部材と接着するための接着剤層及び粘着剤層;フィルムの滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。
以下、円偏光板の実施例について、図面を示して説明する。以下に示す円偏光板の実施例においては、下記の要件(x1)~(x3)を満たす例を示すが、本実施形態に係る円偏光板は、これらの実施例に限定されない。
(x1)第一液晶硬化層の遅相軸と、第二液晶硬化層の遅相軸とが、厚み方向から見て、平行である。
(x2)第一液晶硬化層の遅相軸と、第一液晶硬化層のチルト方向とが、平行である。
(x3)第二液晶硬化層の遅相軸と、第二液晶硬化層のチルト方向とが、平行である。
また、以下に説明する図9、図11、図13、図15、図17及び図19では、液晶硬化層のチルト方向を矢印で示すが、このうち直線偏光子に向いている高傾斜面を有する液晶硬化層のチルト方向は実線の矢印で示し、直線偏光子に向いている低傾斜面を有する液晶硬化層のチルト方向は破線の矢印で示す。
(4.1.長尺の円偏光板の第一の実施例)
図9は、第一の実施例に係る長尺の円偏光板200Aを分解して模式的に示す斜視図である。また、図10は、第一の実施例に係る長尺の円偏光板200Aを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図9及び図10に示す第一の実施例に係る長尺の円偏光板200Aは、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第一の実施例においては、図10に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で同じ向きに立ち上がっている。よって、図9に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて同じ向きとなっている。
この第一の実施例に係る円偏光板200Aは、例えば、転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、直線偏光子210に貼り合わせ、基材を剥離して、直線偏光子210上に第一液晶硬化層220を形成する、第一の転写工程と;転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、第一液晶硬化層220に貼り合わせ、基材を剥離して、第一液晶硬化層220上に第二液晶硬化層230を形成する、第二の転写工程と;を含む製造方法によって、製造できる。よって、円偏光板200Aは、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを2回含む製造方法によって製造できる。よって、貼り合せの回数を少なくできるので、製造を簡単に行える。また、第一液晶硬化層220の形成用の転写体、及び、第二液晶硬化層230の形成用の転写体として、共通の転写体を用いることが可能であるので、省コスト化が可能である。
(4.2.長尺の円偏光板の第二の実施例)
図11は、第二の実施例に係る長尺の円偏光板200Bを分解して模式的に示す斜視図である。また、図12は、第二の実施例に係る長尺の円偏光板200Bを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図11及び図12に示す第二の実施例に係る長尺の円偏光板200Bは、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第二の実施例においては、図12に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で逆の向きに立ち上がっている。よって、図11に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて逆向きとなっている。
この第二の実施例に係る円偏光板200Bは、例えば、第一の実施例と同じく、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを2回含む製造方法によって製造できる。よって、貼り合せの回数を少なくできるので、製造を簡単に行える。また、第一液晶硬化層220の形成用の転写体、及び、第二液晶硬化層230の形成用の転写体として、共通の転写体を用いることが可能であるので、省コスト化が可能である。
さらに、図12に示した第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220及びD230から分かるように、第一液晶硬化層220のレターデーションの方位依存性と、第二液晶硬化層230のレターデーションの方位依存性とを、相殺することができる。よって、円偏光板200Bは、層平面の傾斜方向における反射抑制能力の方位依存性を抑制できる。
(4.3.長尺の円偏光板の第三の実施例)
図13は、第三の実施例に係る長尺の円偏光板200Cを分解して模式的に示す斜視図である。また、図14は、第三の実施例に係る長尺の円偏光板200Cを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図13及び図14に示す第三の実施例に係る長尺の円偏光板200Cは、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第三の実施例においては、図14に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で同じ向きに立ち上がっている。よって、図13に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて同じ向きとなっている。
この第三の実施例に係る円偏光板200Cは、例えば、転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、直線偏光子210に貼り合わせ、基材を剥離して、直線偏光子210上に第一液晶硬化層220を形成する、第一の転写工程と;転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、長尺のフィルム部材(図示せず。)に貼り合わせ、基材を剥離して、複層フィルム(図示せず。)を得る第二の転写工程と;複層フィルムに含まれる液晶硬化層を、第一液晶硬化層220に貼り合わせ、基材を剥離して、第一液晶硬化層220上に第二液晶硬化層230を形成する、第三の転写工程と;を含む製造方法によって、製造できる。よって、円偏光板200Cは、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを3回含む製造方法によって製造できる。よって、貼り合せの回数を少なくできるので、製造を簡単に行える。
さらに、図14に示した第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220及びD230から分かるように、第一液晶硬化層220のレターデーションの方位依存性と、第二液晶硬化層230のレターデーションの方位依存性とを、相殺することができる。よって、円偏光板200Cは、層平面の傾斜方向における反射抑制能力の方位依存性を抑制できる。
(4.4.長尺の円偏光板の第四の実施例)
図15は、第四の実施例に係る長尺の円偏光板200Dを分解して模式的に示す斜視図である。また、図16は、第四の実施例に係る長尺の円偏光板200Dを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図15及び図16に示す第四の実施例に係る長尺の円偏光板200Dは、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第四の実施例においては、図16に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で逆の向きに立ち上がっている。よって、図15に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて逆向きとなっている。
この第四の実施例に係る円偏光板200Dは、例えば、第三の実施例と同じく、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを3回含む製造方法によって製造できる。よって、貼り合せの回数を少なくできるので、製造を簡単に行える。
(4.5.長尺の円偏光板の第五の実施例)
図17は、第五の実施例に係る長尺の円偏光板200Eを分解して模式的に示す斜視図である。また、図18は、第五の実施例に係る長尺の円偏光板200Eを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図17及び図18に示す第五の実施例に係る長尺の円偏光板200Eは、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第五の実施例においては、図18に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で同じ向きに立ち上がっている。よって、図17に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて同じ向きとなっている。
この第五の実施例に係る円偏光板200Eは、例えば、転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、長尺のフィルム部材(図示せず。)に貼り合わせ、基材を剥離して、複層フィルム(図示せず。)を得る第一の転写工程と;複層フィルムに含まれる液晶硬化層を、直線偏光子210に貼り合わせ、基材を剥離して、直線偏光子210上に第一液晶硬化層220を形成する、第二の転写工程と;転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、第一液晶硬化層220に貼り合わせ、基材を剥離して、第一液晶硬化層220上に第二液晶硬化層230を形成する、第三の転写工程と;を含む製造方法によって、製造できる。よって、円偏光板200Eは、例えば、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを3回含む製造方法によって製造できる。
また、この第五の実施例に係る円偏光板200Eは、例えば、転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、別の転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層に貼り合わせ、一方の転写体の基材を剥離して、第一液晶硬化層、第二液晶硬化層及び基材をこの順で備える複層フィルム(図示せず。)を得る第四の転写工程と;複層フィルムに含まれる第一液晶硬化層を、直線偏光子210に貼り合わせ、基材を剥離して、直線偏光子210上に第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230を形成する、第五の転写工程と;を含む製造方法によって、製造できる。よって、円偏光板200Eは、例えば、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを2回含む製造方法によって製造できる。
よって、貼り合せの回数を少なくできるので、製造を簡単に行える。
さらに、図18に示した第一液晶硬化層220及び第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220及びD230から分かるように、第一液晶硬化層220のレターデーションの方位依存性と、第二液晶硬化層230のレターデーションの方位依存性とを、相殺することができる。よって、円偏光板200Eは、層平面の傾斜方向における反射抑制能力の方位依存性を抑制できる。
(4.6.長尺の円偏光板の第六の実施例)
図19は、第六の実施例に係る長尺の円偏光板200Fを分解して模式的に示す斜視図である。また、図20は、第六の実施例に係る長尺の円偏光板200Fを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図19及び図20に示す第六の実施例に係る長尺の円偏光板200Fは、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第六の実施例においては、図20に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で逆の向きに立ち上がっている。よって、図19に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて逆向きとなっている。
この第六の実施例に係る円偏光板200Bは、例えば、第五の実施例と同じく、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを2回又は3回含む製造方法によって製造できる。よって、貼り合せの回数を少なくできるので、製造を簡単に行える。
[5.比較例としての円偏光板の説明]
以下、上述した第一~第六の実施例との対比のため、比較例について説明する。下記の比較例においては、第一~第六の実施例と同じく、上述した要件(x1)~(x3)を満たす例を示す。
(5.1.長尺の円偏光板の第一の比較例)
図21は、第一の比較例に係る長尺の円偏光板900Aを分解して模式的に示す斜視図である。また、図22は、第一の比較例に係る長尺の円偏光板900Aを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図21及び図22に示す第一の比較例に係る長尺の円偏光板900Aは、長尺の直線偏光子210、長尺の第一液晶硬化層220及び長尺の第二液晶硬化層230を有する。ただし、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第一の比較例においては、図22に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で同じ向きに立ち上がっている。よって、図21に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて同じ向きとなっている。
この第一の比較例に係る円偏光板900Aは、例えば、第一の転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、長尺の第一のフィルム部材(図示せず。)に貼り合わせ、基材を剥離して、第一の複層フィルム(図示せず。)を得る第一の転写工程と;第一の複層フィルムに含まれる液晶硬化層を、直線偏光子210に貼り合わせ、基材を剥離して、直線偏光子210上に第一液晶硬化層220を形成する、第二の転写工程と;第二の転写体(図示せず。)に含まれる液晶硬化層を、長尺の第二のフィルム部材(図示せず。)に貼り合わせ、基材を剥離して、第二の複層フィルム(図示せず。)を得る第三の転写工程と;第二の複層フィルムに含まれる液晶硬化層を、第一液晶硬化層220に貼り合わせ、基材を剥離して、第一液晶硬化層220上に第二液晶硬化層230を形成する、第四の転写工程と;を含む製造方法によって、製造できる。よって、円偏光板200Cは、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを4回行うことが求められるので、貼り合せの回数を少なくできない。
(5.2.長尺の円偏光板の第二の比較例)
図23は、第二の比較例に係る長尺の円偏光板900Bを分解して模式的に示す斜視図である。また、図24は、第二の比較例に係る長尺の円偏光板900Bを、第一液晶硬化層220の遅相軸及び厚み方向の両方に平行な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図23及び図24に示す第二の比較例に係る長尺の円偏光板900Bは、長尺の直線偏光子210、長尺の第一液晶硬化層220及び長尺の第二液晶硬化層230を有する。ただし、第一液晶硬化層220の低傾斜面220D及び第二液晶硬化層230の低傾斜面230Dが直線偏光子210に向いている。よって、第一液晶硬化層220の高傾斜面220U及び第二液晶硬化層230の高傾斜面230Uは、直線偏光子210とは反対側にある。
また、この第二の比較例においては、図24に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のダイレクタD230とが、面内方向で逆の向きに立ち上がっている。よって、図23に示すように、第一液晶硬化層220に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T220と、第二液晶硬化層230に含まれる液晶性化合物の分子のチルト方向T230とは、長尺方向AMDにおいて逆向きとなっている。
この第二の比較例に係る円偏光板900Bを製造するためには、第一の比較例と同じく、転写体に含まれる液晶硬化層の貼り合わせを4回行うことが求められるので、貼り合せの回数を少なくできない。
[6.長尺の転写体の製造方法]
上述した実施形態に係る長尺の円偏光板は、長尺の基材と、この基材上に形成された長尺の液晶硬化層とを備える長尺の転写体を用いて製造される。この転写体において、液晶硬化層は、通常、基材とは反対側にある面としての高傾斜面と、基材側にある面としての低傾斜面とを有する。このような転写体は、例えば、基材上において、
(i)液晶組成物の層を形成する工程と、
(ii)液晶組成物の層に含まれる液晶性化合物を配向させる工程と、
(iii)液晶組成物の層を硬化させる工程と、
をこの順で含む製造方法によって、製造できる。
(6.1.液晶組成物)
液晶組成物は、液晶性化合物を含む。この液晶組成物は、2種類以上の成分を含む材料だけでなく、1種類の液晶性化合物のみを含む材料を包含する。
液晶性化合物は、液晶性を有する化合物であり、通常、当該液晶性化合物を配向させた場合に、液晶相を呈することができる。
液晶性化合物として、逆分散液晶性化合物を用いてもよく、順分散液晶性化合物を用いてもよく、逆分散液晶性化合物と順分散液晶性化合物との組み合わせを用いてもよい。逆分散液晶性化合物とは、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物である。また、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物とは、当該液晶性化合物の層を形成し、その層において液晶性化合物を配向させた際に、逆波長分散性の複屈折を発現する液晶性化合物をいう。他方、順分散液晶性化合物とは、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物である。また、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物とは、当該液晶性化合物の層を形成し、その層において液晶性化合物を配向させた際に、順波長分散性の複屈折を発現する液晶性化合物をいう。
通常は、液晶性化合物をホモジニアス配向させた場合に、液晶性化合物の層が示す複屈折の波長分散性を調べることで、その液晶性化合物が示す複屈折の波長分散性を確認できる。液晶性化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶性化合物を含む層を形成し、その層における液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。また、前記の層の複屈折は、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から求められる。
中でも、広い波長範囲において外光の反射を抑制する観点から、液晶性化合物としては、逆分散液晶性化合物が好ましい。
逆分散液晶性化合物の複屈折は、当該逆分散液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において、最大の屈折率を示す方向の屈折率と、この方向に交差する別の方向の屈折率との差として発現しうる。また、逆分散液晶性化合物の分子構造に応じて、前記の各方向の屈折率の波長分散性は、異なりうる。例えば、ある逆分散液晶性化合物は、屈折率が相対的に大きいある方向では、長波長で測定した屈折率は、短波長で測定した屈折率よりも小さくなるが、それらの差は小さい。他方、屈折率が相対的に小さい別の方向では、長波長で測定した屈折率は、短波長で測定した屈折率よりも小さくなり、且つ、それらの差は大きい。このような例の液晶性化合物では、前記方向間での屈折率差は、測定波長が短いと小さく、測定波長が長いと大きくなる。その結果、この逆分散液晶性化合物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
液晶性化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、液晶性化合物は、その分子が、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含むことが好ましい。液晶性化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。重合性を有する液晶性化合物は、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の配向状態を維持したまま重合体となることができる。よって、液晶硬化層において液晶性化合物の配向状態を固定したり、液晶性化合物の重合度を高めて液晶硬化層の機械的強度を高めたりすることが可能である。
液晶性化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する液晶性化合物を用いることにより、液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
測定波長550nmにおける液晶性化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する液晶性化合物を用いる場合、通常は、配向欠陥の少ない液晶硬化層を得やすい。
液晶性化合物の複屈折は、例えば、下記の方法により測定できる。
液晶性化合物の層を作製し、その層に含まれる液晶性化合物をホモジニアス配向させる。その後、その層の面内レターデーションを測定する。そして、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から、液晶性化合物の複屈折を求めることができる。この際、面内レターデーション及び厚みの測定を容易にするために、ホモジニアス配向させた液晶性化合物の層は、硬化させてもよい。
液晶性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
液晶性化合物の例としては、下記式(I)で表される液晶性化合物が挙げられる。式(I)で表される液晶性化合物は、通常、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
Arの好ましい例としては、例えば、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基が挙げられる。式(II-1)~式(II-4)において、*は、Z1又はZ2との結合位置を表す。また、Arは、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
前記の式(II-1)~式(II-4)において、E1及びE2は、それぞれ独立して、-CR11R12-、-S-、-NR11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。また、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。中でも、E1及びE2は、それぞれ独立して、-S-であることが好ましい。
前記の式(II-1)~式(II-4)において、D1~D2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D1及びD2は、一緒になって環を形成していてもよい。D1~D2が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
D1~D2における非環状基の炭素原子数は、1~13が好ましい。D1~D2における非環状基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基;シアノ基;カルボキシル基;炭素原子数1~6のフルオロアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;-C(=O)-CH3;-C(=O)NHPh;-C(=O)-ORx;が挙げられる。中でも、非環状基としては、シアノ基、カルボキシル基、-C(=O)-CH3、-C(=O)NHPh、-C(=O)-OC2H5、-C(=O)-OC4H9、-C(=O)-OCH(CH3)2、-C(=O)-OCH2CH2CH(CH3)-OCH3、-C(=O)-OCH2CH2C(CH3)2-OH、及び-C(=O)-OCH2CH(CH2CH3)-C4H9、が好ましい。前記のPhは、フェニル基を表す。また、前記のRxは、炭素原子数1~12の有機基を表す。Rxの具体例としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基、または、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。
D1~D2における非環状基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF3;-C(=O)-Rb;-O-C(=O)-Rb;-C(=O)-O-Rb;-SO2Ra;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Raは、炭素原子数1~6のアルキル基;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基若しくは炭素原子数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
Rbは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
Rbにおける炭素原子数1~20のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは4~10である。Rbにおける炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基等が挙げられる。
Rbにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CH2CF3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;及び、ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rbにおける炭素原子数2~20のアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12である。Rbにおける炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。
Rbにおける炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rbにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rbにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
Rbにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rbにおける炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。
Rbにおける炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CH2CF3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF3;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CH2CF3等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF3;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
D1及びD2が一緒になって環を形成している場合、前記のD1及びD2によって環を含む有機基が形成される。この有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。下記式において、*は、各有機基が、D1及びD2が結合する炭素と結合する位置を表す。
R*は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
R**は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
R***は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
R****は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、水酸基、及び、-COOR13からなる群より選ばれる基を表す。R13は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
フェニル基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基及びアルコキシ基が好ましい。フェニル基が有する置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
前記の式(II-1)~式(II-4)において、D3は、-C(Rf)=N-N(Rg)Rh、-C(Rf)=N-N=C(Rg)Rh、及び、-C(Rf)=N-N=Riからなる群より選ばれる基を表す。D3が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。
Rfは、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。
Rgは、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。
Rgにおける置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH2-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、又は、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;-Gx-Yx-Fx;-SO2Ra;-C(=O)-Rb;-CS-NH-Rb;が挙げられる。Ra及びRbの意味は、上述した通りである。
Rgにおける炭素原子数1~20のアルキル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rbにおける炭素原子数1~20のアルキル基と同じである。
Rgにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;-SO2Ra;-SRb;-SRbで置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。Ra及びRbの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rgにおける炭素原子数2~20のアルケニル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rbにおける炭素原子数2~20のアルケニル基と同じである。
Rgにおける炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rgにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rgにおける炭素原子数2~20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基等が挙げられる。
Rgにおける炭素原子数2~20のアルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rgにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rgにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、Rbにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基と同じ例が挙げられる。
Rgにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、Rgにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rgにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基としては、例えば、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基がより好ましい。
Rgにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、D1~D2における非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rgにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基等が挙げられる。中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基等の、単環の芳香族複素環基;並びに、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、及びベンゾチアジアゾリル基等の、縮合環の芳香族複素環基;がより好ましい。
Rgにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、D1~D2における非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Gxは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の2価の脂肪族炭化水素基;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH2-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR14-C(=O)-、-C(=O)-NR14-、-NR14-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);からなる群より選ばれる有機基を表す。R14は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
Yxは、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15-、-O-C(=O)-NR15-、-NR15-C(=O)-O-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれる基を表す。R15は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。中でも、Yxとしては、-O-、-O-C(=O)-O-及び-C(=O)-O-が好ましい。
Fxは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。この有機基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは30以下である。前記の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子を含まない。
Fxにおける芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Fxが、複数の芳香族炭化水素環を有する場合、複数の芳香族炭化水素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
Fxにおける芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF3;-C(=O)-Rb;-C(=O)-O-Rb;-O-C(=O)-Rb;等が挙げられる。Rbの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Fxにおける芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環等の、炭素原子数2~30の芳香族複素環が挙げられる。Fxが、複数の芳香族複素環を有する場合、複数の芳香族複素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
Fxにおける芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。Fxにおける芳香族複素環が有しうる置換基としては、例えば、Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Fxの好ましい例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~20の環状基」が挙げられる。以下、この環状基を、適宜「環状基(a)」ということがある。
環状基(a)が有しうる置換基としては、例えば、Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
環状基(a)の好ましい例としては、少なくとも一つの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の炭化水素環基が挙げられる。この炭化水素環基を、以下、適宜「炭化水素環基(a1)」ということがある。
炭化水素環基(a1)としては、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数10)、アントラセニル基(炭素原子数14)、フェナントレニル基(炭素原子数14)、ピレニル基(炭素原子数16)、フルオレニル基(炭素原子数13)、インダニル基(炭素原子数9)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素原子数10)、1,4-ジヒドロナフチル基(炭素原子数10)等の、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
前記の炭化水素環基(a1)の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yxとの結合手を表す。
環状基(a)の別の好ましい例としては、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~18の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基が挙げられる。この複素環基を、以下、適宜「複素環基(a2)」ということがある。
複素環基(a2)としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ペンゾピラノンニル基等の、炭素原子数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドーリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;およびテトラヒドロフラニル基;が挙げられる。
前記の複素環基(a2)の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yxとの結合手を表す。下記式中、Xは、-CH2-、-NRc-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO2-を表す。YおよびZは、それぞれ独立して、-NRc-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO2-を表す。Eは、-NRc-、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、Rcは、水素原子;または、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO2-は、それぞれ隣接しないものとする。)。
Fxの好ましい別の例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基で、少なくとも一つの水素原子が置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい、炭素原子数1~18のアルキル基」が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「置換アルキル基(b)」ということがある。
置換アルキル基(b)における炭素原子数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」としては、例えば、環状基(a)として説明した範囲の基が挙げられる。
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、炭素原子数1~18のアルキル基の炭素原子に、直接に結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15などが挙げられる。R15の意味は、上述した通りである。よって、置換アルキル基(b)における「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」には、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基等の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する基;置換されていてもよい芳香族炭化水素環基;置換されていてもよい芳香族複素環基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基;が含まれる。
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基の好ましい例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ペンゾピラノンニル基等の、炭素原子数2~20の芳香複素環基が挙げられる。
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、等が挙げられる。
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
置換アルキル基(b)が有しうる環状基以外の置換基としては、例えば、Fxにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
置換アルキル基(b)の具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yxとの結合手を表す。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
特に、Arが式(II-2)で表される場合、Fxは、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される基であることが好ましい。また、特に、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fxは、下記式(i-1)~(i-13)のいずれかで表される基であることが好ましい。下記式(i-1)~(i-13)で表される基は、置換基を有していてもよい。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
更には、Arが式(II-2)で表される場合、Fxは、下記式(ii-1)~(ii-18)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fxは、下記式(ii-1)~(ii-24)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。下記式(ii-1)~(ii-24)で表される基は、置換基を有していてもよい。下記の式において、Yの意味は、上述した通りである。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
Arが式(II-2)で表される場合、Fx中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fx中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
上述したものの中でも、Rgとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH2-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;並びに、-Gx-Yx-Fx;が好ましい。その中でも、Rgとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH2-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;並びに、-Gx-Yx-Fx;が特に好ましい。
Rhは、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
Rhの好ましい例としては、(1)一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基、が挙げられる。この芳香族炭化水素環を有する炭化水素環基を、以下、適宜「(1)炭化水素環基」ということがある。(1)炭化水素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
(1)炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。(1)炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF3;-C(=O)-Rb;-O-C(=O)-Rb;-C(=O)-O-Rb;-SO2Ra;等が挙げられる。Ra及びRbの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基、が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rhの別の好ましい例としては、(2)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。この芳香環を有する複素環基を、以下、適宜「(2)複素環基」ということがある。(2)複素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
(2)複素環基は、置換基を有していてもよい。(2)複素環基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rhの更に別の好ましい例としては、(3)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「(3)置換アルキル基」ということがある。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数1~12のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rgにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rgにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
(3)置換アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。(3)置換アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rhの更に別の好ましい例としては、(4)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルケニル基が挙げられる。この置換されたアルケニル基を、以下、適宜「(4)置換アルケニル基」ということがある。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~12のアルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rgにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rgにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
(4)置換アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。(4)置換アルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rhの更に別の好ましい例としては、(5)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルキニル基が挙げられる。この置換されたアルキニル基を、以下、適宜「(5)置換アルキニル基」ということがある。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~12のアルキニル基」としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rgにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rgにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
(5)置換アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。(5)置換アルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rhの好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
Rhの更に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
Rhの特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
上述したRhの具体例は、更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF3;-C(=O)-Rb;-O-C(=O)-Rb;-C(=O)-O-Rb;-SO2Ra;等が挙げられる。Ra及びRbの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Riは、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
Riの好ましい例としては、一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基が挙げられる。
また、Riの別の好ましい例としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。
Riの特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。
式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基は、D1~D3以外に更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のチオアルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(I)におけるArの好ましい例としては、下記の式(III-1)~式(III-7)で表される基が挙げられる。また、式(III-1)~式(III-7)で表される基は、置換基として炭素原子数1~6のアルキル基を有していてもよい。下記式中、*は、結合位置を表す。
式(III-1)の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。下記式中、*は、結合位置を表す。
式(I)において、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH2-、-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF2-O-、-O-CF2-、-CH2-CH2-、-CF2-CF2-、-O-CH2-CH2-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH2-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH2-、-CH2-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH2-、-CH2-CH2-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH2-CH2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH3)-、-C(CH3)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
式(I)において、A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A1、A2、B1及びB2が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
A1、A2、B1及びB2における芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
A1、A2、B1及びB2における芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(I)において、Y1~Y4は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
式(I)において、G1及びG2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH2-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G1及びG2の前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G1及びG2の両末端のメチレン基(-CH2-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
G1及びG2における炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
G1及びG2における炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
式(I)において、P1及びP2は、それぞれ独立して、重合性基を表す。P1及びP2における重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH2=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH2=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH2=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH2=C(CH3)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
上述した液晶性化合物の中でも、本発明の所望の効果を顕著に発揮する観点から、当該液晶性化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環を含有するものが好ましい。ここで、ベンゾチアゾール環とは、下記式(II)に示す構造の環構造を示す。よって、第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層の一方又は両方に含まれる液晶性化合物が、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
式(I)で表される液晶性化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号および国際公開第2018/173954号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
式(I)で表される液晶性化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。
液晶組成物は、必要に応じて、液晶性化合物に組み合わせて更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
任意の成分としては、例えば、重合開始剤が挙げられる。中でも、光重合開始剤が好ましい。重合開始剤の種類は、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の種類に応じて選択しうる。例えば、重合性の化合物がラジカル重合性であれば、ラジカル重合開始剤を使用しうる。また、例えば、重合性の化合物がアニオン重合性であれば、アニオン重合開始剤を使用しうる。さらに、例えば、重合性の化合物がカチオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を使用しうる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲に収まることにより、重合を効率的に進行させることができる。
別の任意の成分としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の中でも、液晶組成物の塗工性を良好にする観点、並びに、配向性に優れた液晶硬化層を安定して得る観点から、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。以下の説明において、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤を、適宜「フッ素系界面活性剤」ということがある。
界面活性剤はノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤がイオン性基を含まないノニオン系界面活性剤である場合に、液晶硬化層の面状態及び配向性を、特に良好にすることができる。
界面活性剤としては、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S420など)、ネオス社製のフタージェントシリーズ(251、FTX-212M、FTX-215M、FTX-209など)、DIC社製のメガファックシリーズ(F-444など)等が挙げられる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.03重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは0.50重量部以下、より好ましくは0.40重量部以下、更に好ましくは0.30重量部以下である。界面活性剤の量が前記の範囲にあることにより、配向性に優れた液晶硬化層を得ることができる。
更に別の任意の成分としては、例えば、溶媒が挙げられる。溶媒としては、液晶性化合物を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;及びトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;が挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは60℃~150℃である。
溶媒の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは200重量部以上、より好ましくは250重量部以上、特に好ましくは300重量部以上であり、好ましくは650重量部以下、より好ましくは550重量部以下、特に好ましくは450重量部以下である。溶媒の量を、前記範囲の下限値以上にすることにより異物発生の抑制ができ、前記範囲の上限値以下にすることにより乾燥負荷の低減ができる。
更に別の任意の成分としては、例えば、液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角を大きくする作用を発揮できる傾斜作用成分が挙げられる。傾斜作用成分を用いた場合、液晶性化合物の分子の傾斜を促進して、液晶性化合物の分子の傾斜角が大きい液晶硬化層を容易に得ることができる。ただし、液晶性化合物の分子の傾斜の促進は、液晶硬化層を製造する過程において操作又は条件を調整することによっても可能であるので、傾斜作用成分は必ずしも用いなくても構わない。このような傾斜作用成分としては、例えば、特開2018-163218号公報、特開2018-162379号公報、国際公開第2018/173778号などに記載の成分を用いうる。
液晶組成物が含みうるその他の任意の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;酸化防止剤;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、液晶性化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部でありうる。
(6.2.液晶組成物の層を形成する工程)
液晶組成物の層を形成する工程(i)では、通常、適切な長尺の基材の表面上に、液晶組成物の層を形成する。基材としては、液晶組成物の層を支持できる表面を有する長尺の部材を用いうる。基材は、液晶硬化層の面状態を良好にする観点から、凹部及び凸部の無い平坦面を有することが好ましい。
基材としては、通常、樹脂フィルム又はガラス板を用いる。特に、高い温度で配向処理を行う場合、その温度に耐えられる基材を選択するのが好ましい。樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。中でも、配向規制力の高さ、機械的強度の高さ、及びコストの低さといった観点から、樹脂としては、正の固有複屈折値を有する樹脂が好ましい。更には、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、ノルボルネン系樹脂等の、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが好ましい。基材に含まれる樹脂の好適な例を商品名で挙げると、ノルボルネン系樹脂として、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げられる。
基材の表面には、液晶組成物の層における液晶性化合物の配向を促進するため、配向規制力を付与するための処理が施されていることが好ましい。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させることができる、面の性質をいう。基材の表面に配向規制力を付与するため処理としては、例えば、光配向処理、ラビング処理、イオンビーム配向処理、延伸処理などが挙げられる。
液晶組成物の層を形成する工程(i)において、液晶組成物は、通常、流体状で用意される。そのため、通常は、基材の表面に液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成する。液晶組成物を塗工する方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
(6.3.液晶性化合物を配向させる工程)
液晶組成物の層を形成する工程(i)の後で、液晶組成物の層に含まれる液晶性化合物を配向させる工程(ii)を行いうる。この工程(ii)では、通常、液晶組成物の層に配向処理を施すことにより、基材の表面の配向規制力に応じた方向に液晶性化合物を配向させる。
配向処理は、通常、液晶組成物の層の温度を所定の配向温度に調整することによって行う。配向温度は、液晶組成物の液晶化温度以上の温度としうる。この際、配向温度は、基材に含まれる樹脂のガラス転移温度未満の温度であることが好ましい。これにより、配向処理による基材の歪みの発生を抑制できる。
通常、面内方向においては、液晶性化合物は、基材の表面の配向規制力に応じた方向に配向する。また、厚み方向において、液晶性化合物は、通常、少なくとも一部が層平面に対して傾斜するように配向する。この際、液晶性化合物の分子の層平面に対する傾斜角を大きくするために、前記の配向処理を適切な条件において行ってもよい。液晶性化合物の分子の層平面に対する傾斜角を大きくする方法としては、例えば、特許第5363022号公報、国際公開第2018/173778号、特開2018-163218号公報、特開2018-162379号公報、国際公開第2018/173773号に記載の方法を用いうる。
液晶性化合物を配向させる工程(ii)において、液晶組成物の層の温度を所定の配向温度に保持する時間は、所望の液晶硬化層が得られる範囲で任意に設定でき、例えば30秒間~5分間でありうる。
(6.4.液晶組成物の層を硬化させる工程)
液晶性化合物を配向させる工程(ii)の後で、液晶組成物の層を硬化させて、液晶硬化層を得る工程(iii)を行う。この工程(iii)の液晶組成物の硬化は、通常、当該液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成される。例えば、液晶性化合物が重合性を有する場合、その液晶性化合物の一部又は全部を重合させることにより、液晶組成物の層を硬化させる。重合は、通常、液晶性化合物の分子の配向を維持したままで進行する。よって、前記の重合により、重合前の液晶組成物に含まれる液晶性化合物の配向状態は、固定される。
重合方法としては、液晶組成物に含まれる成分の性質に適合した方法を選択しうる。重合方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び、熱重合法が挙げられる。中でも、加熱が不要であり、室温で重合反応を進行させられるので、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。
なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。紫外線照射時の温度は、基材に悪影響を与えない範囲という観点から、基材のガラス転移温度以下とすることが好ましく、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。紫外線の照射強度は、好ましくは0.1mW/cm2以上、より好ましくは0.5mW/cm2以上であり、好ましくは10000mW/cm2以下、より好ましくは5000mW/cm2以下である。紫外線の照射量は、好ましくは0.1mJ/cm2以上、より好ましくは0.5mJ/cm2以上であり、好ましくは10000mJ/cm2以下、より好ましくは5000mJ/cm2以下である。
前記の工程(iii)により、基材上に、液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層が得られる。液晶組成物の硬化は、通常、液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成されるので、液晶硬化層は、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。したがって、液晶性化合物が重合性を有する場合、その液晶性化合物が重合するので、液晶硬化層は、重合前の配向状態を維持したまま重合した液晶性化合物の重合体を含む層でありうる。
液晶組成物の硬化物においては、硬化前の流動性が失われるので、通常、液晶硬化層では、液晶性化合物の配向状態は、硬化前の配向状態のまま、固定されている。このようにして、少なくとも一部の分子が層平面に対して傾斜した液晶性化合物を含む液晶硬化層が得られる。
以上のようにして、長尺の基材と、この基材上に形成された長尺の液晶硬化層とを備える長尺の転写体を得ることができる。また上述した製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、上述した長尺の転写体の製造方法は、得られた液晶硬化層上に、更に液晶硬化層を形成する工程を含んでいてもよい。例えば、上述した工程(i)~工程(iii)を繰り返し行うことにより、基材上に、液晶組成物の硬化物で形成された複数の部分層を設けてもよい。この場合、基材上に複層構造の液晶硬化層を有する長尺の転写体を得ることができる。
前記のような製造方法によって製造される長尺の転写体は、連続的な製造が可能であり、生産性に優れる。また、長尺の転写体は、直線偏光子等のフィルムとの貼り合わせを、ロール・トゥ・ロール法によって行うことができるので、この点でも、生産性に優れる。通常、長尺の転写体は、巻き取られてロールの状態で保存及び運搬がなされる。
[7.有機EL表示装置]
上述した円偏光板は、例えば、有機EL表示装置に適用できる。この有機EL表示装置は、通常、上述した長尺の円偏光板から切り出された枚葉の偏光板を含む。例えば、有機EL表示装置は、表示素子として有機EL素子を含み、この有機EL素子の視認側に、偏光板が設けられる。また、偏光板は、有機EL素子側から、第二液晶硬化層、第一液晶硬化層及び直線偏光子をこの順に含む。そして、このような構成において、前記の偏光板が反射抑制フィルムとして機能できる。
以下、反射抑制の仕組みを説明する。装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが第一液晶硬化層及び第二液晶硬化層を通過することにより、円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子の反射電極等)により反射され、再び第二液晶硬化層及び第一液晶硬化層を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。これにより、反射抑制の機能が達成される。このような反射抑制の原理は、特開平9-127885号公報を参照してよい。
有機EL素子は、通常、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。