JP7219120B2 - 電解金めっき液及びその製造方法、並びに金めっき方法及び金錯体 - Google Patents

電解金めっき液及びその製造方法、並びに金めっき方法及び金錯体 Download PDF

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Description

本発明は、ウエハ、基板等への金めっきに用いられる電解金めっき液及びその製造方法、並びに金めっき方法、更には電解金めっき液の原料として適用可能な金錯体に関する。
電解めっき、無電解めっき法で用いられるめっき液としては、金供給源として液中での酸化安定性に優れるシアン化金錯体を用いたシアン系金めっき液が従来から用いられている。しかし、シアン系金塩は毒性が強いことから作業安全、排水処理の観点から好ましくないという問題がある。また、シアン系金めっき液を使用した場合、余剰シアン化物が半導体部品のレジストパターンを剥離、損傷させることから微細な回路パターンを形成させにくいという問題もある。
このような問題から、シアンを含有しない金塩又は金錯体を適用しためっき液の適用が望ましいと考えられており、その例として、亜硫酸金塩(NaAu(SO)溶液といった非シアン系金めっき液がある。
しかし、これら非シアン系の金めっき液に含まれる金塩又は金錯体は、酸化安定性に乏しく、めっき操業中に分解するという問題がある。例えば、上記した亜硫酸金塩では、溶液中の亜硫酸イオンが、めっき液中の溶存酸素、及び撹拌や被めっき物の出し入れによる空気の巻き込みによって酸化分解しやすく、その濃度が減少するため、金錯体の酸化安定性が低下し、めっき液の分解が生じるということがある。そして、このような分解が生じた場合、めっき液槽又は配管にめっき液の金が析出、沈殿する金沈現象が生じ、めっき作業に支障をきたすこととなる。そのため、非シアン系の電解めっきに対しては、めっき液中に安定剤や錯化剤といった添加剤を添加してめっき液の分解を防止し、めっき処理を行うこととしているが、このような対策は、安定剤のコスト及びめっき液製造工程が複雑となるため、そのコストが上昇することとなる。
また、酸化安定性の低い金塩又は金錯体を含有するめっき液はその保管の観点からも問題がある。上記した亜硫酸金塩の場合、保管時に金塩の分解による黒色沈殿が生じ易く、遮光状態での保管が必須でありその管理は容易ではない。
そこで、シアン化合物を含むことなく酸化安定性に優れた金錯体として、ヒダントイン系化合物を配位子として利用した、特許文献1や特許文献2に記載の金錯体が開示されている。特許文献1に記載の金錯体は、塩化金酸又は塩化金酸塩と、ヒダントイン系化合物を水溶液中で反応させ、金イオンにヒダントイン系化合物を配位させた錯体である。また、特許文献2に記載の金錯体は、水酸化金塩とヒダントイン系化合物を水溶液中で加熱して反応させ、金イオンにヒダントイン系化合物を配位させた錯体である。
特開2005-256072号公報 特開2003-183258号公報
これら金錯体は、上記した亜硫酸塩等の従来の非シアン系の金塩又は金錯体と比較して格段の酸化安定性を備える。ここで、特許文献1及び特許文献2において、金イオンに配位させるヒダントイン系化合物としては、反応後の錯体の酸化安定性が特に優れることから、5,5-ジメチルヒダントインの適用が推奨されている。しかし、5,5-ジメチルヒダントインは、5位炭素に水素原子を持たないことから、自らは酸化しないため、金を3価から1価に還元する反応が起こらず、3価の金イオン錯体で安定化してしまう。この結果、この金イオン錯体を用いて製造された電解金めっき液を用いて金めっきする場合には、陰極電流密度を3価の金イオン錯体に合わせる必要があるため、電流効率の面で不利であった。
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、シアン化合物を含むことなく酸化安定性に優れており、金めっきする際の電流効率の面で有利な電解金めっき液を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、金源として用いられる金錯体として、1価の金イオンに、特定のヒダントイン系化合物が配位した構造を有するものを用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明に係る電解金めっき液は、下記[1]の構成からなる。
[1] 金源として金錯体を用い、キレート化剤、伝導塩、緩衝剤を含有する電解金めっき液であって、
前記金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有していることを特徴とする電解金めっき液。
Figure 0007219120000001
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。
本発明に係る電解金めっき液の好ましい実施形態は、下記[2]~[4]の構成からなる。
[2] 前記電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下である、上記[1]に記載の電解金めっき液。
[3] 前記金錯体がアルカリ塩由来である、上記[1]又は[2]に記載の電解金めっき液。
[4] 前記キレート化剤は、ヒダントイン系化合物及びコハク酸イミドの少なくとも一方を含む、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の電解金めっき液。
また、本発明に係る電解金めっき液は、下記[5]の構成からなる。
[5] 金源として金錯体を用い、キレート化剤、伝導塩、緩衝剤を含有する電解金めっき液であって、
前記金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有しており、前記電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下であることを特徴とする電解金めっき液。
Figure 0007219120000002
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。
本発明に係る電解金めっき液の好ましい実施形態は、下記[6]又は[7]の構成からなる。
[6] 前記金錯体がアルカリ塩由来である、上記[5]に記載の電解金めっき液。
[7] 前記キレート化剤は、ヒダントイン系化合物及びコハク酸イミドの少なくとも一方を含む、上記[5]又は[6]に記載の電解金めっき液。
また、本発明に係る電解金めっき液の製造方法は、下記[8]又は[9]の構成からなる。
[8] 上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の電解金めっき液の製造方法であって、
塩化金酸又は塩化金酸塩と、前記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物と、水酸化アルカリとを水溶液中で反応させて前記金錯体を形成させる工程と、
前記金錯体を含む水溶液を冷却して金錯体アルカリ塩を抽出する工程と、
前記金錯体アルカリ塩を用いて、前記電解金めっき液を製造する工程と、を有することを特徴とする電解金めっき液の製造方法。
[9] 上記[5]~[7]のいずれか1つに記載の電解金めっき液の製造方法であって、
塩化金酸又は塩化金酸塩と、前記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物と、水酸化アルカリとを水溶液中で反応させて前記金錯体を形成させる工程と、
前記金錯体を含む水溶液を冷却して金錯体アルカリ塩を抽出する工程と、
前記金錯体アルカリ塩を用いて、前記電解金めっき液を製造する工程と、を有することを特徴とする電解金めっき液の製造方法。
また、本発明に係る金めっき方法は、下記[10]の構成からなる。
[10] 上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の電解金めっき液を用いてめっき処理する方法であって、
pH:5.0~10.0、液温:20~80℃、及び電流密度:0.1~4.5A/dmの条件で電解めっきするものであることを特徴とする金めっき方法。
また、本発明に係る金錯体は、下記[11]の構成からなる。
[11] 1価の金イオンに、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有していることを特徴とする金錯体。
Figure 0007219120000003
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。
本発明によれば、シアン化合物を含むことなく酸化安定性に優れており、金めっきする際の電流効率の面で有利な電解金めっき液を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
<電解金めっき液>
本実施形態の電解金めっき液について説明する。本実施形態の電解金めっき液は、金源として金錯体を用い、少なくともキレート化剤、伝導塩及び緩衝剤を含有する。この金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有している。
Figure 0007219120000004
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。
本実施形態に係る金錯体は、電解金めっき液中において、金イオンの価数が1であることを特徴とする。金イオンの価数が1であることにより、電解金めっき液を用いて金めっきをする場合に、陰極電流密度を1価の金イオン錯体に合わせることができるため、陰極電流密度を3価の場合と比べて1/3にすることができ、3価の金イオン錯体を用いる場合よりも、電流効率の面で有利であるからである。また、これにより、陽極電流密度も3価の場合と比べて1/3にすることができるため、めっき液の陽極付近での酸化分解を低減することができ、めっき液の長寿命化を図ることができる。
そして、ヒダントイン系化合物を配位子として利用した金錯体において、金イオンの価数を1とするために、ヒダントイン系化合物のうち特定のものを用いる。具体的には、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物を配位子として用いることとする。なお、配位子の同定は、金錯体の溶液中で錯体平衡によって遊離した配位子を、簡易的には液体クロマトグラフなどの方法で、分離、定性分析することにより可能である。
Figure 0007219120000005
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。
これらのヒダントイン系化合物は、アルカリ性条件下において金を3価から1価に還元する反応が生じ、1価の金イオン錯体で安定化する。
なお、一般式(1)中、R~Rで表わされる1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などの直鎖型とイソ型、第二級、第三級などの構造異性体を含むアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの直鎖型とイソ型、第二級、第三級などの構造異性体を含むアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、酢酸基、プロパン酸基などのカルボン酸、アセチル基、プロピオニル基などのアシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基などが挙げられる。また、上記有機基としては、水溶性と経済性の観点から、炭素数が1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物の具体例としては、例えば、ヒダントイン(R~Rのすべてが水素原子である場合)、3-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)、5-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)、5-ヒダントイン酢酸(Rが酢酸、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)が挙げられる。この中でも、材料として最も安価で経済的な観点から、ヒダントインを用いることが好ましい。
なお、上記式(1)において、「Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。」というのは、ヒダントイン系化合物のうち、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合である、「1-メチルヒダントイン」を除くという趣旨である。
その一方で、これら以外のヒダントイン系化合物、すなわち、例えば、5,5-ジメチルヒダントインや1,5,5-トリメチルヒダントインにおいては、5位炭素(上記一般式(1)を参照)に水素を持たないことから、アルカリ性条件下でも自らが酸化しないため、金を3価から1価に還元する反応が起こらず、3価の金イオン錯体で安定化してしまう。また、ヒダントイン酸においては、ヒダントイン環の構造を持たないことから、アルカリ性条件下でも自らが酸化しないため、上記と同様、金を3価から1価に還元する反応が起こらず、3価の金イオン錯体で安定化してしまう。
さらに、金とヒダントイン系化合物は、1位又は3位窒素上の水素がはずれ、1位又は3位窒素と金が結合して錯体を形成することから(上記一般式(1)を参照)、1位と3位窒素の両方にアルキル基が結合している1,3-ジメチルヒダントインにおいては、そもそも金錯体を形成することができない。
また、本実施形態の他の電解金めっき液も、金源として金錯体を用い、キレート化剤、伝導塩、緩衝剤を含有する。この金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有しており、電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下である。
Figure 0007219120000006
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。
これらのヒダントイン系化合物も、アルカリ性条件下において金を3価から1価に還元する反応が生じ、1価の金イオン錯体で安定化する。
なお、一般式(2)中、R~Rで表わされる1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などの直鎖型とイソ型、第二級、第三級などの構造異性体を含むアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの直鎖型とイソ型、第二級、第三級などの構造異性体を含むアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、酢酸基、プロパン酸基などのカルボン酸、アセチル基、プロピオニル基などのアシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基などが挙げられる。また、上記有機基としては、水溶性と経済性の観点から、炭素数が1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物の具体例としては、例えば、ヒダントイン(R~Rのすべてが水素原子である場合)、1-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合)、3-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)、5-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)、5-ヒダントイン酢酸(Rが酢酸、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)が挙げられる。この中でも、材料として最も安価で経済的な観点から、ヒダントインを用いることが好ましい。
そして、本実施形態に係る電解金めっき液は、電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下であることが好ましい。電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下、すなわち、電解金めっき液中の塩素が実質的に含まれないことにより、塩素を嫌う被めっき物への適用が可能となる。
ここで、特許文献1のような、塩化金酸又は塩化金酸塩と、ヒダントイン系化合物を反応させて得られる金錯体を用いて製造される電解金めっき液においては、塩化金酸又は塩化金酸塩由来の塩素イオンが電解金めっき液中に多量に含まれるため、塩素を嫌う被めっき物への適用が困難である。
本実施形態において、電解金めっき液中に塩素が実質的に含まれないための指標として、電解金めっき液中の塩素濃度を1000ppm以下としているが、電解金めっき液中の塩素が嫌われる理由として、金被膜の表面に塩素が残留することにより、下地やボンディングとの密着性が低下したり、被膜の腐食の原因となる、金被膜の結晶粒界に存在して硬度調整がしにくい、などの考察がなされており、塩素を嫌う被めっき物への適用を問題なく発揮させるためには、電解金めっき液中の塩素濃度は、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが更に好ましい。
なお、塩素が実質的に含まれない電解金めっき液を得るための方法については、後述する。
続いて、本実施形態の電解金めっき液を構成する、キレート化剤、伝導塩及び緩衝剤についてそれぞれ説明する。
キレート化剤としては、金錯体の配位子とは別に添加するものとし、ヒダントイン、1-メチルヒダントイン、5-メチルヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン及びコハク酸イミドが好適に用いられる。その中で、めっき液中での金錯体の酸化安定性や析出均一性のためには、キレート化剤として、5,5-ジメチルヒダントイン及びコハク酸イミドの少なくとも一方を含むことがより好ましい。電解金めっき液にキレート化剤を用いることにより、極めて安定な金めっき液となる。すなわち、めっき処理において金の沈殿が発生しにくくなる。それは、これらのキレート化剤が、金錯体の配位子と平衡を保ち、亜硫酸のような還元性のものではなく、酸化分解を起こしにくい性質を有しているためである。
なお、キレート化剤と、金錯体の配位子との平衡の状態や混合濃度は、イオンクロマト分析や液体クロマト分析などにより見分けることができる。
キレート化剤の量は、pH5~7の場合、金に対し0倍モル超、4倍モル以下であることが好ましい。使用量が多く、金錯体の補充が頻繁である場合には、金錯体の配位子が遊離するため、初期にキレート化剤を含ませなくても良く、4倍モルを超える場合には、焼けたような外観になる。
また、pH8~10の場合、金に対し4倍モル以上、10倍モル以下であることが好ましい。4倍モルより少ないと、焼けたような外観や、キレート化剤が金錯体の配位子と平衡を保つよりも、金錯体の配位子がアルカリ性によって酸化分解する反応が優先して、金沈現象が見られることがある。また、10倍モルを超える場合には、外観や酸化安定性に変化が見られなくなり、キレート化剤の増加効果があまり期待できない。
伝導塩としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、若しくはこれらの塩類のいずれか1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらのものを単独又は組み合わせて伝導塩として使用すれば、本実施形態に係る電解金めっき液の溶液安定性が極めて優れたものとなる。
上記した伝導塩を、本実施形態に係る電解金めっき液中に含有させる場合、伝導塩濃度が0.05~1.95mol/Lの濃度範囲にすることが好ましい。伝導塩濃度が0.05mol/L未満であると、伝導性が低下するため電流効率が低下し、めっきの外観不良も生じやすくなる。また、1.95mol/Lを超えると、電気伝導性や外観に変化が見られなくなり、pHによっては塩析を生じやすくなる。
緩衝剤としては、ホウ酸、コハク酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸、リン酸若しくはこれらの塩類のいずれか1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらのものを単独又は組み合わせて緩衝剤として使用すれば、本実施形態に係る電解金めっき液のpHが、大きく変動することがなく、pH的には弱酸性から弱アルカリ性(pH約5.0~10.0)の中性近傍のめっき液に維持することが容易になる。
上記した緩衝剤を、本実施形態に係る電解金めっき液中に含有させる場合、緩衝剤濃度が0.05~1.95mol/Lの濃度範囲にすることが好ましい。緩衝剤濃度が0.05mol/L未満であると、pHを安定化させる効果がなくなる。また、1.95mol/Lを超えると、pHの安定性に変化が見られなくなり、pHによっては塩析を生じやすくなる。
また、伝導塩と緩衝剤との総濃度は、0.1~2.0mol/Lの濃度範囲にすることが好ましい。伝導塩と緩衝剤との総濃度が0.1~2.0mol/Lであれば、本実施形態に係る金めっき液が、実操業的に最もトータルバランス的に優れたものとなる。すなわち、溶液安定性に優れ、電流効率も高く、めっき液pHも大きく変動することがなくなる。
なお、冬季における塩析を防止するための観点からは、伝導塩と緩衝剤との総濃度は、0.1~1.0mol/Lの濃度範囲にすることがより好ましい。
本実施形態に係る電解金めっき液中の金濃度は、キレート化剤濃度との割合にもよるが、0.5~15g/Lの濃度範囲であることが好ましい。0.5g/L未満であると、3V以上の電圧をかけないと金の電析が生じず、15g/Lを超えると、被めっき物によってめっき槽外への持ち出しにより、経済的に不便であることや、冬季に塩析しやすくなることが考えられる。
さらに、上記金濃度は、4~8g/Lの濃度範囲であることが好ましい。この濃度範囲では、様々な被めっき物に対応する制御が可能であり、金の消費による濃度変動に対する管理も行いやすい。
なお、本実施形態に係る電解金めっき液は、金錯体がアルカリ塩由来であることが好ましい。後述するように、本実施形態で用いられる特定のヒダントイン系化合物は、アルカリ性条件下において、1価の金イオン錯体で安定化し、その後抽出された金錯体アルカリ塩は、塩素を実質的に含まないものとなる。この金錯体アルカリ塩を用いて電解金めっき液を製造することで、塩素を嫌う被めっき物への適用が可能な電解金めっき液とすることができる。
上記アルカリ塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩が例として挙げられるが、中でもナトリウム塩やカリウム塩が好ましい。これらは、従来の金化合物であるシアン化金カリウムや亜硫酸金ナトリウムなどと共通して、経済的に優れたアルカリ金属を用いた塩であるからである。
<電解金めっき液の製造方法>
本実施形態に係る電解金めっき液の製造方法について説明する。本実施形態の電解金めっき液の製造方法は、塩化金酸又は塩化金酸塩と、上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物と、水酸化アルカリとを水溶液中で反応させて金錯体アルカリ塩を形成し、金錯体アルカリ塩を抽出する工程と、金錯体アルカリ塩を用いて、電解金めっき液を製造する工程と、を有する。
上述したように、本実施形態に係る電解金めっき液は、塩素が実質的に含まれないことを特徴としている。このため、特許文献2に記載のような水酸化金塩を原料として、ヒダントイン系化合物を配位子とする金錯体を形成することも可能であるが、通常、水酸化金塩はその収率はせいぜい60%程度と高くはないことから、電解金めっき液として使用する金のコストが高くなり、経済的ではない。
そこで、本実施形態では、使用する金のコストを抑制しつつも、塩素を嫌う被めっき物への適用が可能な電解金めっき液を得るため、以下の製造方法により電解金めっき液を得ることを特徴とする。
まず、金錯体を得るための原料として、従来技術と同様、塩化金酸又は塩化金酸塩を準備する。また、金イオンに配位させるための、上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物と、更には、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、などの水酸化アルカリを準備する。
そして、塩化金酸又は塩化金酸塩と、上記のヒダントイン系化合物と、水酸化アルカリとを水溶液中で反応させることで、1価の金イオンに、上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有する金錯体を得る。
ここで、本実施形態において塩化金酸又は塩化金酸塩とヒダントイン系化合物との反応条件としては、温度40~80℃、反応時間30~360分間とするのが好ましい。そして、反応温度については60~75℃とするのが特に好ましく、反応時間としては180分以上とするのが特に好ましい。
なお、塩化金酸又は塩化金酸塩と、ヒダントイン系化合物とを単に混合しても液中のヒダントイン化合物はいわゆるキレート化剤としての機能は有するが、金は塩化金錯体の状態のままであって錯体の形成は生じない。そして、このような液で金めっきはできるものの、金は3価のままであるため、その析出量は1/3となり、その析出機構は本実施形態に係る金錯体の場合とは異なるものとなる。
ここで、本実施形態に係る金錯体の原料は、塩化金酸又は塩化金酸塩であるが、塩化金酸塩としては、塩化金酸とアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)又はアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)との塩が好ましく、塩化金酸ナトリウム若しくは塩化金酸カリウムが特に好ましい。
続いて、上記で得られた金錯体を含む溶液を室温(25℃)以下に冷却すると、構造上塩素を含まない金錯体アルカリ塩の結晶が析出するので、固液分離を行い、上記溶液から金錯体アルカリ塩として抽出する。このような処理により、塩素は溶液中に残存した状態となり、抽出された金錯体アルカリ塩には、当然、塩素が実質的に含まれないものとなる。なお、この操作方法によれば、水酸化金塩を用いることなく、非常に高い収率で、上記溶液から金錯体アルカリ塩を得ることができる。
その後、溶液より抽出された金錯体アルカリ塩を原料として、電解金めっき液を製造すれば、塩素が実質的に含まれない電解金めっき液を得ることができる。
なお、参考までに、上記特許文献1の段落0017及び上記特許文献2の段落0013において、「水溶液中において金錯体の生成反応を生じさせているが、この錯体をめっき液等への利用に供する場合、この反応後の溶液はそのままめっき液の原料として使用することができ、」とあるが、例えば、塩化金酸又は塩化金酸塩を原料として金錯体を生成する場合の、反応後の溶液をそのままめっき液の原料として使用した場合には、反応後の溶液中に多量の塩素イオンが含まれることで、電解金めっき液中にも多量の塩素イオンが含まれる状態となるため、塩素を嫌う被めっき物への適用は困難である。
<金めっき方法>
本実施形態に係る金めっき方法について説明する。本実施形態の金めっき方法は、上述の電解金めっき液を用いてめっき処理する方法であって、pH:5.0~10.0、液温:20~80℃、及び電流密度:0.1~4.5A/dmの条件で電解めっきするものである。
金めっき液のpH値は、緩衝剤と伝導塩の濃度によって、pH5.0~10.0の範囲となり、この範囲であれば、析出する金めっきの外観に異常が発生しない。pHが5.0未満になると、めっき外観にムラが生じ、10.0を超えると、被めっき物にフォトレジスト(以下、PRという)が被覆されている場合に、PRを溶解してしまう傾向となる。
金めっき液の液温を20~80℃の条件としたのは、20℃未満では実質上めっき処理のばらつきが大きすぎるため操業に適さず、80℃を越えると析出する金めっきの光沢に影響を与えるとともに、溶液寿命が急激に低下するためである。
電解時の電流密度を0.1~4.5A/dmとしたのは、上述のめっき液のpH値、液温、金濃度を考慮して、析出する金めっきの性状が非常に良好な状態となることを確認して決定したものである。この場合のめっき性状とは、外観、密着性、レベリング、硬度等の総合的なものを含むものである。
<金錯体>
本実施形態に係る金錯体について説明する。本実施形態の金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有している。
Figure 0007219120000007
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。
これらのヒダントイン系化合物は、アルカリ性条件下において金を3価から1価に還元する反応が生じ、1価の金イオン錯体で安定化する。
なお、一般式(1)中、R~Rで表わされる1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などの直鎖型とイソ型、第二級、第三級などの構造異性体を含むアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの直鎖型とイソ型、第二級、第三級などの構造異性体を含むアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、酢酸基、プロパン酸基などのカルボン酸、アセチル基、プロピオニル基などのアシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基などが挙げられる。また、上記有機基としては、水溶性と経済性の観点から、炭素数が1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物の具体例としては、例えば、ヒダントイン(R~Rのすべてが水素原子である場合)、3-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)、5-メチルヒダントイン(Rがメチル基、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)、5-ヒダントイン酢酸(Rが酢酸、かつ、R、R及びRのすべてが水素原子である場合)が挙げられる。この中でも、材料として最も安価で経済的な観点から、ヒダントインを用いることが好ましい。
なお、上記式(1)において、「Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。」というのは、ヒダントイン系化合物のうち、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合である、「1-メチルヒダントイン」を除くという趣旨である。
この金錯体を得るための方法としては、上記の<電解金めっき液の製造方法>で説明した通りである。この金錯体を金供給源として、電解金めっき液を得ることにより、上述した種々の効果を得ることができる。
なお、先行技術文献となる論文「Nouman A.Malik、“X-Ray Crystal Structure of Sodium Bis(N-methylhydantoinato)gold(I) Tetrahydrate;a Linear Planar Complex of Pharmacological Interest Stabilised by Two Nitrogen Ligands”、J.C.S.CHEM.COMM.,1978、p.711-712」において、1価の金イオンに1-メチルヒダントインが配位した構造を有する金錯体が開示されている。ただし、当該論文は、リューマチ性関節炎の治療用1価Au錯体の研究に関するものであり、本実施形態のような電解金めっき液への用途としての記載はない。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<金錯体アルカリ塩の抽出>
[ヒダントイン金錯体ナトリウム塩の抽出]
ヒダントイン50gを水250mLに溶解させたヒダントイン水溶液を、水酸化ナトリウムでpH11.5~12.5に調整し、金換算で25gの塩化金酸(HAuCl)を添加し、65℃で180分間加温攪拌して反応させて、ヒダントイン金錯体を得た。
続いて、得られた金錯体を有する水溶液に対し、更に水酸化ナトリウムを添加してpH9.0とした後、当該水溶液を室温(25℃)以下に冷却することで、ヒダントイン金錯体ナトリウム塩の結晶を析出させた。その後、ろ別(固液分離)により、金錯体アルカリ塩であるヒダントイン金錯体ナトリウム塩を水溶液より抽出した。
[ヒダントイン金錯体カリウム塩の抽出]
水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを使用したこと以外は、[ヒダントイン金錯体ナトリウム塩の抽出]の操作と同様にして、ヒダントイン金錯体カリウム塩を抽出した。
[5-メチルヒダントイン金錯体ナトリウム塩の抽出]
ヒダントイン50gの代わりに5-メチルヒダントイン63gを使用したこと以外は、[ヒダントイン金錯体ナトリウム塩の抽出]の操作と同様にして、5-メチルヒダントイン金錯体ナトリウム塩を抽出した。
なお、上記で得られたヒダントイン金錯体ナトリウム塩、ヒダントイン金錯体カリウム塩及び5-メチルヒダントイン金錯体ナトリウム塩は、金めっきにおける析出効率(詳細は後述)により、1価の金イオンを有することが確認された。
<電解金めっき液の製造、及び金めっき処理>
[実験No.1~12]
上記で得られたヒダントイン金錯体ナトリウム塩、ヒダントイン金錯体カリウム塩及び5-メチルヒダントイン金錯体ナトリウム塩のいずれかを金錯体塩として用い、表1に示すような各仕様の電解金めっき液を製造した(実験No.1~12)。なお、実験No.1においては、キレート化剤の添加を行わなかった。
[実験No.13]
5,5-ジメチルヒダントイン64gを水250mLに溶解させた5,5-ジメチルヒダントイン水溶液を、水酸化ナトリウムでpH11.5~12.5に調整し、金換算で25gの塩化金酸(HAuCl)を添加し、65℃で180分間加温攪拌して反応させて、5,5-ジメチルヒダントイン金錯体を得た。
得られた金錯体を有する水溶液に対し、更に水酸化ナトリウムを添加してpH9.0とした後、当該水溶液を室温(25℃)以下に冷却したが、5,5-ジメチルヒダントイン金錯体ナトリウム塩の結晶を析出させることができなかった。その後、当該水溶液をそのままめっき液の原料(表1の実験No.13における、5,5-ジメチルヒダントイン金溶液)として使用し、表1に示すような仕様の電解金めっき液を製造した(実験No.13)。
[実験No.14]
ヒダントイン50gを水250mLに溶解させたヒダントイン水溶液に、金換算で25gの塩化金酸ナトリウム(NaAuCl)を添加し、65℃で180分間加温攪拌して反応させて、ヒダントイン金錯体を得た。
得られた金錯体を有する水溶液に対し、更に水酸化ナトリウムを添加してpH9.0とした後、当該水溶液を室温(25℃)以下に冷却したが、ヒダントイン金錯体ナトリウム塩の結晶を析出させることができなかった。その後、当該水溶液をそのままめっき液の原料(表1の実験No.14における、ヒダントイン金溶液)として使用し、表1に示すような仕様の電解金めっき液を製造した(実験No.14)。
続いて、金錯体アルカリ塩を電解金めっき液の原料とした、実験No.1~12の各電解金めっき液に対し、イオンクロマト分析(Thermo SCIENTIFIC社製、装置名:Dionex ICS-2100、分離カラム:Dionex IonPacTM AS12A(4x200mm))を行った所、金濃度が8g/Lでは、電解金めっき液中の塩素濃度が550ppm、金濃度が4g/Lでは、電解金めっき液中の塩素濃度が300ppmであることを確認した(表1の「塩素濃度(ppm)」を参照)。
一方、金錯体を生成した水溶液をそのままめっき液の原料とした、実験No.13及び14の各電解金めっき液に対し、上記と同様にイオンクロマト分析を行った所、実験No.13については塩素濃度が5800ppm、実験No.14については塩素濃度が5700ppmと、いずれも非常に高い塩素濃度であった(表1の試験結果における「塩素濃度(ppm)」を参照)。
また、実験No.1~14の各電解金めっき液を用い、共通条件として、めっき液温度を60℃とし、真ちゅう製であり、Ni:5μm及びAuストライクめっきを施したテストピースに、電流密度0.5A/dmでめっき処理を行った。得られた各金めっき膜の外観結果も表1に合わせて示す。ここで、表1の「外観」における「○」は、明るいレモンイエローの色調を呈していたことを示し、「×」は、暗く茶色の焼けた色調を呈していたことを示し、「-」は、以下の析出効率の結果より金イオンが3価のままであったことから、外観の評価を行わなかったことを示す。なお、実験No.12については、キレート化剤の添加量が、pH8~10の場合において金に対し4倍モル未満であったため、焼けたような外観に加え、金錯体の配位子がアルカリ性によって酸化分解する反応が生じ、微量であるが金が沈殿する金沈現象が生じたため、表1の「外観」の欄を「×、金沈現象」と表記した。
さらに、実験No.1~14の各電解金めっき液を用いためっき処理における析出効率を算出した。表1に、析出効率の結果を示す。表1の結果より、実験No.1~12における析出効率(mg/A・min)は、金錯体が1価の金イオンを有する場合の理論値である122.5mg/A・minの95%以上(すなわち、約116.3mg/A・min以上)の値を示しており、当該電解金めっき液は、1価の金イオンを有することが確認された。
一方、実験No.13及び14における析出効率(mg/A・min)は、金錯体が3価の金イオンを有する場合の理論値である40.8mg/A・min程度の値を示しており、これら電解金めっき液は、3価の金イオンを有することが確認された。
以上の実験結果より、実験No.1~12の電解金めっき液における金錯体は、1価の金イオンを有することが確認され、金めっきする際の電流効率の面で有利になることが示された。また、上記で示した金錯体アルカリ塩を金供源として製造された電解金めっき液(実験No.1~12)は、実質的に塩素を含まないことが確認され、塩素を嫌う被めっき物への適用が可能であることが示された。
Figure 0007219120000008
<金錯体の酸化安定性の確認>
上記で得られたヒダントイン金錯体ナトリウム塩を金として5g/L含む溶液を、pH7.0に調整して、5本に分配した。それぞれに3.45%過酸化水素水(H)を、Au当量比で0、0.5、1.0、2.0、3.0、5.0となるように添加した。室温で保管したところ、95時間後も外観の変化は起こらなかった。なお、pHは最大で0.4低下した。
また、亜硫酸金ナトリウム(NaAu(SO)を金として5g/L含む溶液を、pH9.8であることを確認して、6本に分配した。それぞれに3.45%過酸化水素水(H)を、Au当量比で0、0.5、1.1、1.4、1.7、2.0、5.4となるように添加した。室温で保管したところ、数時間後から過酸化水素の添加量が多いものから金と思われる沈殿が見られ、68時間後には1.1当量以上の添加量の場合で多くの沈殿が見られた。なお、pHは1.1当量以上の添加量の場合で大きく低下した。
以上の比較実験より、上記で得られたヒダントイン金錯体は、非シアン系の金源として用いられる亜硫酸金塩と比べて、金錯体の酸化安定性が優れていることが確認された。

Claims (11)

  1. 金源として金錯体を用い、キレート化剤、伝導塩、緩衝剤を含有する電解金めっき液であって、
    前記金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有していることを特徴とする電解金めっき液。
    Figure 0007219120000009

    (式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。)
  2. 前記電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下である、請求項1に記載の電解金めっき液。
  3. 前記金錯体がアルカリ塩由来である、請求項1又は2に記載の電解金めっき液。
  4. 前記キレート化剤は、ヒダントイン系化合物及びコハク酸イミドの少なくとも一方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解金めっき液。
  5. 金源として金錯体を用い、キレート化剤、伝導塩、緩衝剤を含有する電解金めっき液であって、
    前記金錯体は、1価の金イオンに、下記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有しており、前記電解金めっき液中の塩素濃度が1000ppm以下であることを特徴とする電解金めっき液。
    Figure 0007219120000010

    (式(2)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。)
  6. 前記金錯体がアルカリ塩由来である、請求項5に記載の電解金めっき液。
  7. 前記キレート化剤は、ヒダントイン系化合物及びコハク酸イミドの少なくとも一方を含む、請求項5又は6に記載の電解金めっき液。
  8. 請求項1~4のいずれか1項に記載の電解金めっき液の製造方法であって、
    塩化金酸又は塩化金酸塩と、前記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物と、水酸化アルカリとを水溶液中で反応させて前記金錯体を形成させる工程と、
    前記金錯体を含む水溶液を冷却して金錯体アルカリ塩を抽出する工程と、
    前記金錯体アルカリ塩を用いて、前記電解金めっき液を製造する工程と、を有することを特徴とする電解金めっき液の製造方法。
  9. 請求項5~7のいずれか1項に記載の電解金めっき液の製造方法であって、
    塩化金酸又は塩化金酸塩と、前記一般式(2)で表わされるヒダントイン系化合物と、水酸化アルカリとを水溶液中で反応させて前記金錯体を形成させる工程と、
    前記金錯体を含む水溶液を冷却して金錯体アルカリ塩を抽出する工程と、
    前記金錯体アルカリ塩を用いて、前記電解金めっき液を製造する工程と、を有することを特徴とする電解金めっき液の製造方法。
  10. 請求項1~7のいずれか1項に記載の電解金めっき液を用いてめっき処理する方法であって、
    pH:5.0~10.0、液温:20~80℃、及び電流密度:0.1~4.5A/dmの条件で電解めっきするものであることを特徴とする金めっき方法。
  11. 1価の金イオンに、下記一般式(1)で表わされるヒダントイン系化合物が配位した構造を有していることを特徴とする金錯体。
    Figure 0007219120000011

    (式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子、かつ、R又はRの両方又はいずれか一方が水素原子である。ただし、Rがメチル基、かつ、R~Rのすべてが水素原子である場合を除く。)
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