添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、ウェーハ11の構成例を示す斜視図である。本実施形態のウェーハ11は、主としてシリコン(Si)で形成されており、表面11aからこの表面11aとは反対側に位置する裏面11bまでの厚さが500μmから1000μm程度の円盤状である。
なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)などから成るシリコン以外の他の半導体材料等を用いることもできる。
ウェーハ11の表面11a側は、格子状に配置された複数の分割予定ライン(ストリート)13で区画されており、この区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。なお、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等に制限はない。
ウェーハ11は、表面11a側に、複数のデバイス15が配置されたデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とを有する。外周余剰領域の外周端部には、結晶方位を示すノッチ11cが設けられている。なお、ノッチ11cの代わりに、オリエンテーションフラット等の他のマークが設けられてもよい。
次に、図2から図9を用いて、ウェーハ11の加工方法について説明する。なお、図10は、ウェーハ11の加工方法を示すフロー図である。
まず、図2(A)、図2(B)及び図2(C)を用いて、ウェーハ11の表面11aに保護部材19を形成する保護部材形成ステップ(S10)について説明する。本実施形態の保護部材形成ステップ(S10)では、液状樹脂塗布装置(不図示)を用いてウェーハ11の表面11aに液状樹脂17を塗布する。
液状樹脂塗布装置は、液状樹脂17を吐出する液状樹脂吐出ノズル(不図示)を有する。この液状樹脂吐出ノズルは、流路を介して液状樹脂供給源(不図示)に接続されている。液状樹脂17は、紫外線(UV)又は熱によって硬化する硬化型液状樹脂である。
本実施形態の液状樹脂17は、紫外線の照射により重合を開始してポリマー化する紫外線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂)であるが、液状樹脂17は、熱により重合を開始してポリマー化する熱硬化型樹脂(例えば、熱硬化型アクリル樹脂)であってもよい。
液状樹脂塗布装置は、液状樹脂17が塗布されるテーブル12を更に有する。なお、テーブル12上のゴミが付着したり、テーブル12に液状樹脂17が固着したりすることを防ぐべく、テーブル12の表面上には樹脂製のシート16が配置されている。液状樹脂17は、このシート16の表面に塗布される。
シート16は、例えば、5μm以上200μm以下の厚さを有し、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等の高分子材料で形成されている。シート16は、可視光、紫外線(UV)等の光を透過させ、且つ、可撓性を有するフィルムである。
シート16が配置されるテーブル12の上部には、硬質の支持基板12aが設けられている。本実施形態の支持基板12aは、可視光、紫外線等の光を透過させる透明のガラス基板又は樹脂基板である。但し、液状樹脂17が熱硬化型樹脂である場合には、支持基板12aは、必ずしも透明でなくてもよく、100℃から200℃程度の熱が印加されたとしても軟化又は変形しない耐熱性基板であればよい。
支持基板12aの縁部は、金属等で形成された枠体12bにより支持されており、支持基板12aの下部には空洞部12cが形成されている。本実施形態では、空洞部12cの底部に、紫外線を照射可能な光源14が配置されている。但し、液状樹脂17が熱硬化型樹脂である場合には、光源14に代えて、発熱源(不図示)が配置される。
テーブル12の上方には、搬送アーム(不図示)が設けられている。搬送アームは、ウェーハ11の裏面11b側の略全面を吸着する吸着パッド(不図示)を先端部に有しており、吸着パッドによりウェーハ11を吸着した状態で移動可能である。
保護部材形成ステップ(S10)では、まず、液状樹脂吐出ノズルからシート16上に液状樹脂17を塗布する。図2(A)は、液状樹脂17を塗布する様子を示す一部断面側面図である。
次に、搬送アームの吸着パッドでウェーハ11の裏面11b側を吸着し、搬送アームによりウェーハ11を水平方向に移動させて、ウェーハ11の表面11a側を液状樹脂17に対面させる。次いで、搬送アームを垂直下方に移動させて、ウェーハ11の表面11a側を液状樹脂17に押し当てる。図2(B)は、ウェーハ11を液状樹脂17へ押し当てる様子を示す一部断面側面図である。
ウェーハ11から押し込まれた液状樹脂17は、ウェーハ11とシート16との間の隙間に広がる様に変形する。なお、ウェーハ11の表面11aはシート16に接触しないように、液状樹脂17の供給量、搬送アームの垂直移動量等は調節される。
その後、光源14から支持基板12a及びシート16を介して液状樹脂17へ紫外線を数秒間照射する。これにより、液状樹脂17は硬化して保護部材19となる。図2(C)は、液状樹脂17を硬化させる様子を示す一部断面側面図である。
本実施形態では、紫外線照射により液状樹脂17を硬化させるので、液状樹脂17を自然硬化させる場合に比べて短時間で、液状樹脂17の全体を確実に硬化させることができる。また、熱処理により液状樹脂17を硬化させる場合も、自然硬化させる場合に比べて短時間で、液状樹脂17の全体を確実に硬化させることができる。
なお、保護部材19を形成した後、保護部材19の表面側(即ち、ウェーハ11とは反対側に位置する保護部材19の表面側)を研削してもよい。これにより、保護部材19の表面の平坦性を向上させることができる。
保護部材19の表面側の研削は、後述する研削装置20のように研削砥石を有する研削装置を用いて行ってよい。また、研削装置に代えて、バイト切削装置(不図示)を用いて行ってもよい。バイト切削装置は、ウェーハ11及び保護部材19のウェーハ11側を吸引して保持するチャックテーブルを有する。
また、バイト切削装置は、チャックテーブルに対向する位置に、スピンドル等を含むバイト切削ユニットを有する。バイト切削ユニットのスピンドルの一端には、駆動モータが接続されており、スピンドルの他端には、底部にバイト工具が設けられた円盤状のバイトホイールが接続されている。また、バイトホイールとは反対側のバイト工具の先端には、ダイヤモンド等から成る切り刃が設けられている。
例えば、バイト工具を旋回させた状態で、保護部材19の表面が上になる様にチャックテーブルで保持されたウェーハ11及び保護部材19を、所定方向(加工送り方向)に移動させる。旋回するバイト工具の切り刃に保護部材19の表面側が接触することで、保護部材19の表面側は切削されて平坦化される。
なお、液状樹脂17をシート16上に塗布することに代えて、スピンコータ(不図示)を用いて液状樹脂17をウェーハ11の表面11a側に塗布してもよい。例えば、スピンナテーブル(不図示)でウェーハ11の裏面11b側を保持した状態で、スピンナテーブルを30rpmから50rpmで回転させる。
その後、液状樹脂吐出ノズルからウェーハ11の表面11a側に液状樹脂17を供給する。液状樹脂17は、遠心力により、ウェーハ11の表面11a上に略一様に広がる。しかしながら、このスピンコート法を用いると、ウェーハ11の表面11a側の端部近傍には数μmオーダーの環状の凹凸(いわゆる、ムラ)が形成される場合がある。
仮に、液状樹脂17に凹凸が形成された状態で液状樹脂17を硬化させると、ウェーハ11の端部近傍に凹凸を有する保護部材19が形成されることとなる。後続の研削ステップ(S20)では、保護部材19をチャックテーブルで吸引保持してウェーハ11の裏面11b側を研削するので、保護部材19の凹凸は、そのままウェーハ11に反映されてしまう。
そこで、スピンコータを用いて保護部材19を形成する場合には、ウェーハ11の裏面11b側を研磨する前に、保護部材19の表面側(即ち、ウェーハ11とは反対側に位置する保護部材19の表面側)を予め研削又はバイト切削して平坦にすることが望ましい。これにより、ウェーハ11の裏面11b側を研削する研削ステップ(S20)で、保護部材19の凹凸がウェーハ11に反映されることを防ぐことができる。
本実施形態では、保護部材形成ステップ(S10)後に、シート16を保護部材19から剥離する。保護部材19とシート16とは大気圧で互いに密着しているに過ぎないので、例えば、可撓性のシート16を保護部材19から捲り取ることにより、シート16は保護部材19から容易に剥離される。これに対して、保護部材19は板状に固化しており、保護部材19とウェーハ11とは密着しているので、シート16のように容易には剥離されない。
シート16をウェーハ11から剥離した後、ウェーハ11をテーブル12から取り出し、研削装置20へ搬送する。その後、研削装置20を用いてウェーハ11の裏面11b側を研削する(研削ステップ(S20))。図3は、研削ステップ(S20)を示す一部断面側面図である。研削装置20は、ウェーハ11の保護部材19側を保持するためのチャックテーブル22を備える。
チャックテーブル22はモータ等の回転駆動源(不図示)と接続されており、鉛直方向に概ね平行な直線を回転軸として回転する。また、チャックテーブル22の下方にはテーブル移動機構(不図示)が設けられており、このテーブル移動機構はチャックテーブル22を水平方向に移動させる。
チャックテーブル22の上面側には、略円形状の保護部材19の外周よりも内側の範囲に円盤状のポーラス板(不図示)が設けられている。ポーラス板は多孔質部材で形成されており、その表面は、ウェーハ11を保持する保持面22aを構成している。保持面22aは、チャックテーブル22の内部に形成された流路(不図示)等を介して吸引源(不図示)と接続されている。
チャックテーブル22の上方には、ウェーハ11の研削を行う研削ユニット24が配置されている。研削ユニット24は、昇降機構(不図示)によって支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングにはスピンドル26が収容されており、スピンドルハウジングから露出したスピンドル26の下端部には円盤状のホイールマウント28が固定されている。
ホイールマウント28の下面側には、ホイールマウント28と概ね同径の研削ホイール30が装着される。研削ホイール30は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成された円環状のホイール基台32を有する。また、ホイール基台32の下面側には、直方体状の複数の研削砥石(砥石チップ)34がホイール基台32の外周に沿って円環状に配列されている。
研削砥石34は、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、CBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合して形成される。ただし、結合材及び砥粒の種類に制限はなく、研削砥石34の仕様に応じて適宜選択できる。
スピンドル26の上端側にはモータ等の回転駆動源(不図示)が接続されており、研削ホイール30は、この回転駆動源から発生する力によってスピンドル26を軸として回転する。また、研削ユニット24には、研削砥石34及びウェーハ11に純水等の研削液を供給するためのノズル(不図示)が設けられている。
研削ステップ(S20)では、まず、保護部材19を介してウェーハ11をチャックテーブル22の保持面22a上に配置する。この状態で保持面22aに吸引源の負圧を作用させることにより、ウェーハ11は裏面11b側が上方に露出した状態でチャックテーブル22によって吸引保持される。
次に、チャックテーブル22を研削ユニット24の下方に移動させる。そして、チャックテーブル22と研削ホイール30とを所定の方向にそれぞれ回転させて、研削液を研削砥石34及びウェーハ11の裏面11b側に供給しながらスピンドル26を降下させる。
スピンドル26の位置及び降下速度は、研削砥石34が適切な力でウェーハ11の裏面11b側に押し当てられるように調節される。ウェーハ11は、裏面11b側から研削され、所定の厚さになるまで薄化される。図3では、研削ステップ(S20)で研削された後のウェーハ11の表面11aと反対側に位置する面を裏面11dとして示す。なお、研削ステップ(S20)後、且つ、後述する粘着テープ貼り付けステップ(S30)の前に、研磨装置(不図示)を用いて裏面11dを研磨してもよい。
本実施形態では、研削ステップ(S20)後に、ウェーハ11の裏面11dに粘着テープ37を貼り付ける(粘着テープ貼り付けステップ(S30))。図4(A)は、研削された後のウェーハ11の裏面11dに粘着テープ37を貼り付ける様子を示す図である。
粘着テープ37は、例えば、ウェーハ11と同じ又はウェーハ11よりも大きい径を有する樹脂製の基材層を有する。基材層は、例えば、5μm以上200μm以下の厚さを有し、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等の高分子材料で形成されている。
本実施形態の基材層の表面には、粘着層が設けられている。粘着層は、例えば、熱又は紫外線が照射されると硬化して粘着力が低下する樹脂製の接着剤の層である。粘着層は、例えば、基材層の全面に設けられる。
粘着テープ貼り付けステップ(S30)では、テープ貼り付け装置(不図示)を用いて、ウェーハ11の裏面11dに粘着テープ37を貼り付ける。テープ貼り付け装置は、ウェーハ11を支持する支持テーブル36を有する。
支持テーブル36の裏面にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、支持テーブル36を所定方向に移動させるボールネジ(不図示)が回転可能に連結されている。ボールネジの一端部にはパルスモータ(不図示)が連結されており、パルスモータでボールネジを回転させれば、支持テーブル36は所定方向に沿って移動する。
支持テーブル36の上方には、粘着テープ37の粘着層とは反対側に位置する基材層の面を支持テーブル36に向けて押圧する円柱状の加圧ローラー38が配置されている。加圧ローラー38の円柱の長さは、例えば、環状フレーム35の直径よりも大きい。
また、加圧ローラー38は、円柱の長さ方向と平行な方向を回転軸として回転可能に構成されており、加圧ローラー38の円柱の長さ方向は、支持テーブル36が移動する上述の所定方向と直交している。
粘着テープ貼り付けステップ(S30)では、支持テーブル36上に、ウェーハ11よりも大きな径の開口を有する金属製の環状フレーム35を配置する。次いで、ウェーハ11の保護部材19側が上側となるように、環状フレーム35の開口にウェーハ11を配置する。
次に、加圧ローラー38とウェーハ11及び環状フレーム35との間に粘着テープ37を挟んだ状態で、加圧ローラー38が支持テーブル36に対して図4(A)の矢印38aの向きに移動する様に、支持テーブル36と加圧ローラー38とを相対的に移動させる。
これにより、加圧ローラー38によって加圧される粘着テープ37の被加圧領域を支持テーブル36に対して移動させながら、粘着テープ37をウェーハ11の裏面11dと環状フレーム35とに貼り付けて、ウェーハ11、保護部材19、環状フレーム35及び粘着テープ37から成るフレームユニット39を形成する。図4(B)は、フレームユニット39の断面図である。
なお、粘着テープ37は、粘着層を有せず、基材層のみを有してもよい。この場合、粘着テープ貼り付けステップ(S30)では、支持テーブル36を加熱することにより、粘着テープ37を軟化及び変形させつつ、粘着テープ37をウェーハ11の裏面11d側に貼り付ける。なお、加熱温度は、粘着テープ37の材料に応じて、各材料の軟化点となる様に適宜調節してよい。
また、支持テーブル36の加熱及び加圧ローラー38による加圧に代えて、粘着テープ37に対して温風を吹き付けることにより、粘着テープ37を軟化及び変形させながら貼り付けてもよい。温風を吹き付ける場合、風圧により粘着テープ37はウェーハ11の裏面11dと環状フレーム35とに押し付けられるので、加圧ローラー38を用いずに、粘着テープ37をウェーハ11等に密着させて貼り付けることができる。
粘着テープ貼り付けステップ(S30)の後、ウェーハ11の分割予定ライン13に沿って保護部材19にレーザー加工溝を形成する(レーザー加工ステップ(S40))。図5(A)は、保護部材19にレーザー加工溝を形成するレーザー加工ステップ(S40)を示す一部断面側面図である。
レーザー加工ステップ(S40)は、レーザー加工装置40を用いて実行される。レーザー加工装置40は、フレームユニット39を吸引保持するチャックテーブル42を有する。
チャックテーブル42の上面側には、粘着テープ37よりも小さい径を有する円盤状のポーラス板(不図示)が設けられている。ポーラス板は多孔質部材で形成されており、その表面は、フレームユニット39を保持する保持面42aを構成している。保持面42aは、チャックテーブル42の内部に形成された流路(不図示)等を介して吸引源(不図示)と接続されている。
チャックテーブル42の下方でチャックテーブル42を支持する支持テーブル(不図示)の裏面にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、支持テーブルをX軸方向に移動させるボールネジ(不図示)が回転可能に連結されている。ボールネジの一端部にはパルスモータ(不図示)が連結されており、パルスモータでボールネジを回転させれば、支持テーブルはX軸方向に沿って移動する。
チャックテーブル42に対向する位置には、パルス状のレーザービームLを照射する加工ヘッド44が設けられている。レーザービームLは、保護部材19に対して吸収性を有する(即ち、保護部材19に吸収される)波長、例えば、355nmの波長を有する。
レーザー加工ステップ(S40)では、まず、1つの分割予定ライン13とチャックテーブル42が移動するX軸方向とを平行にする。そして、レーザービームLをウェーハ11の保護部材19の表面19a側から照射しつつ、加工ヘッド44とチャックテーブル42とをX軸方向に相対的に移動させる。
これにより、保護部材19を分割予定ライン13に沿ってアブレーションして除去し、ウェーハ11の表面11a側が露出するレーザー加工溝19b(図5(B)及び図6参照)を分割予定ライン13に沿って形成する。また、チャックテーブル42をY軸方向に移動させたり回転させたりすることにより、全ての分割予定ライン13に沿ってレーザー加工溝19bを形成する。なお、レーザービームLの幅にも依存するが、レーザービームLは、1つの分割予定ライン13に沿って1回又は複数回照射されてもよい。
図5(B)は、レーザー加工ステップ(S40)後のフレームユニット39の断面図である。また、図6は、レーザー加工ステップ(S40)後のフレームユニット39の斜視図である。上述の様に、保護部材19には、互いに直交する分割予定ライン13に沿って格子状にレーザー加工溝19bが形成されている。
本実施形態では、研削ステップ(S20)でウェーハ11の表面11a側を保護するために用いた保護部材19に、レーザー加工ステップ(S40)でレーザー加工溝19bを形成し、この保護部材19を後述するプラズマエッチングステップ(S50)でのマスクとして利用する。それゆえ、プラズマエッチングステップ(S50)専用のマスクが不要となるので、ウェーハ11の加工におけるコストを低減できる。
レーザー加工溝形成ステップ(S40)の後、レーザー加工溝19bに沿ったエッチング溝をウェーハ11に形成してウェーハ11を分割する(プラズマエッチングステップ(S50))。本実施形態では、プラズマエッチング装置60を用いてプラズマエッチングステップ(S50)を実行する。図7は、プラズマエッチング装置60の構成例を示す断面模式図である。なお、図7では、構成要素の一部を線、ブロック、記号等により簡略化して示す。
プラズマエッチング装置60は、処理空間62を形成するエッチングチャンバ64を備えている。エッチングチャンバ64は、底壁64aと、上壁64bと、第1側壁64cと、第2側壁64dと、第3側壁64eと、第4側壁(不図示)とを含む直方体状に形成されており、第2側壁64dには、フレームユニット39を搬入搬出するための開口66が設けられている。
開口66の外側には、開口66を開閉するゲート68が設けられている。このゲート68は、開閉機構70によって上下に移動する。開閉機構70は、エアシリンダ72と、ピストンロッド74とを含んでいる。エアシリンダ72はブラケット76を介してエッチングチャンバ64の底壁64aに固定されており、ピストンロッド74の先端はゲート68の下部に連結されている。
開閉機構70でゲート68を開くことにより、開口66を通じてフレームユニット39をエッチングチャンバ64の処理空間62に搬入でき、フレームユニット39をエッチングチャンバ64の処理空間62から搬出できる。エッチングチャンバ64の底壁64aには排気口78が形成されている。この排気口78は、真空ポンプ等の排気機構80と接続されている。
エッチングチャンバ64の処理空間62には、下部電極82と上部電極84とが対向するように配置されている。下部電極82は導電性の材料で形成されており、円盤状の保持部86と、保持部86の下面中央から下方に突出する円柱状の支持部88とを含む。
支持部88は、エッチングチャンバ64の底壁64aに形成された開口90に挿通されている。開口90内において、底壁64aと支持部88との間には環状の絶縁部材92が配置されており、エッチングチャンバ64と下部電極82とは絶縁されている。下部電極82は、エッチングチャンバ64の外部において高周波電源94と接続されている。
保持部86の上面には凹部が形成されており、この凹部には、フレームユニット39の粘着テープ37側を吸引保持するためのテーブル96が設けられている。テーブル96には吸引路(不図示)が形成されており、この吸引路は、下部電極82の内部に形成された流路98を通じて吸引源100と接続されている。
また、保持部86の内部には、冷却流路102が形成されている。冷却流路102の一端は、支持部88に形成された冷媒導入路104を通じて冷媒循環機構106と接続されており、冷却流路102の他端は、支持部88に形成された冷媒排出路108を通じて冷媒循環機構106と接続されている。この冷媒循環機構106を作動させると、冷媒は、冷媒導入路104、冷却流路102、冷媒排出路108の順に流れ、下部電極82を冷却する。
上部電極84は、導電性の材料で形成されており、円盤状のガス噴出部110と、ガス噴出部110の上面中央から上方に突出する円柱状の支持部112とを含む。支持部112は、エッチングチャンバ64の上壁64bに形成された開口114に挿通されている。開口114内において、上壁64bと支持部112との間には環状の絶縁部材116が配置されており、エッチングチャンバ64と上部電極84とは絶縁されている。
上部電極84は、エッチングチャンバ64の外部において高周波電源118と接続されている。また、支持部112の上端部には、昇降機構120と連結された支持アーム122が取り付けられており、この昇降機構120及び支持アーム122によって、上部電極84は上下に移動する。
ガス噴出部110の下面には、複数の噴出口124が設けられている。この噴出口124は、ガス噴出部110に形成された流路126及び支持部112に形成された流路128を通じて、ガス供給源130に接続されている。ガス供給源130、流路126及び流路128、並びに、噴出口124によって、エッチングチャンバ64内にガスを導入するガス導入部が構成される。
開閉機構70、排気機構80、高周波電源94、吸引源100、冷媒循環機構106、高周波電源118、昇降機構120、ガス供給源130等は、制御装置134に接続されている。
排気機構80から制御装置134には、処理空間62の圧力に関する情報が入力される。また、冷媒循環機構106から制御装置134には、冷媒の温度に関する情報(即ち、下部電極82の温度に関する情報)が入力される。
更に、制御装置134には、ガス供給源130から、各ガスの流量に関する情報が入力される。制御装置134は、これらの情報や、ユーザーから入力される他の情報等に基づいて、上述した各構成を制御する制御信号を出力する。
次に、プラズマエッチングステップ(S50)の手順について説明する。プラズマエッチングステップ(S50)では、まず、開閉機構70でプラズマエッチング装置60のゲート68を降下させる。
次に、開口66を通じてフレームユニット39をエッチングチャンバ64の処理空間62に搬入して、フレームユニット39の粘着テープ37側が下部電極82のテーブル96の上面に接する様に、フレームユニット39をテーブル96上に配置する。なお、フレームユニット39の搬入時には、昇降機構120で上部電極84を上昇させ、下部電極82と上部電極84との間隔を広げておくことが好ましい。
その後、吸引源100の負圧を作用させて、フレームユニット39をテーブル96上に固定する。また、開閉機構70でゲート68を上昇させて、処理空間62を密閉する。これにより、フレームユニット39は、エッチングチャンバ64に収容される。
更に、上部電極84と下部電極82とがプラズマ加工に適した所定の位置関係となるように、昇降機構120で上部電極84の高さ位置を調節する。また、排気機構80を作動させて、処理空間62を所定の真空度とする。
なお、処理空間62の減圧後、吸引源100の負圧によってフレームユニット39を保持することが困難な場合は、フレームユニット39を電気的な力(代表的には静電引力)等によってテーブル96上に保持する。例えば、テーブル96の内部に電極を埋め込み、この電極に電力を供給することにより、テーブル96とフレームユニット39との間に電気的な力を作用させることができる。
この状態で、プラズマ加工用のガスを所定の流量で供給しつつ、下部電極82及び上部電極84に所定の高周波電力を供給する。本実施形態におけるエッチングステップ(S70)では、処理空間62内を所定の圧力(例えば、5Pa以上50Pa以下)に維持し、ガス供給源130からフッ素系のガス(例えば、パーフルオロシクロブタン(C4F8)又は六フッ化硫黄(SF6))を含有するガスを所定の流量で供給しながら下部電極82及び上部電極84の少なくとも一方に所定の高周波電力(例えば、1000W以上3000W以下)を付与する。
これにより、下部電極82と上部電極84との間にプラズマが発生し、プラズマ化したガスは保護部材19側からウェーハ11に供給される。本実施形態では、レーザー加工溝19bが形成された保護部材19をマスクにして、ウェーハ11をプラズマエッチングする。これにより、ウェーハ11にはエッチング溝11eが形成され、ウェーハ11はエッチング溝11eで分割される(図8参照)。
図8は、プラズマエッチングステップ(S50)後のフレームユニット39を示す断面図である。上述の様に、本実施形態では、研削ステップ(S20)でウェーハ11の表面11a側を保護するために用いた保護部材19をプラズマエッチングステップ(S50)でのマスクとして利用するので、ウェーハ11の加工におけるコストを低減できる。
なお、本実施形態では、平行平板型のプラズマエッチング装置60を用いたが、他のプラズマエッチング装置を用いてもよい。例えば、プラズマ加工用のガスをエッチングチャンバ64内でプラズマ状態にする代わりに、プラズマ状態にしたプラズマ加工用のガスをエッチングチャンバ64内に導入するリモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置を用いてもよい。
プラズマエッチングステップ(S50)の後、エッチング溝11eで分割されたウェーハ11から保護部材19を除去する(保護部材除去ステップ(S60))。本実施形態では、剥離装置140を用いて保護部材除去ステップ(S60)を実行する。
剥離装置140は、チャックテーブル142を有する。保護部材19が上面に位置する態様でチャックテーブル142上に配置されたフレームユニット39は、保持面142aで吸引保持される。チャックテーブル142の構造は、上述のチャックテーブル22と同様であるので、詳細な説明は省略する。
剥離装置140は、フレームユニット39の保護部材19上に剥離用粘着テープ144を送り出す送り出し機構(不図示)を有する。剥離用粘着テープ144は、保護部材19の径よりも大きく、環状フレーム35の内径よりも小さい所定の径を有する略円形状のテープである。剥離用粘着テープ144は、基材層(不図示)と、基材層の一面全体に設けられた接着層(不図示)とを有する。
剥離用粘着テープ144の基材層は、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等の高分子材料で形成されている。剥離用粘着テープ144の接着層は、例えば、シリコーンゴム、アクリル系材料、エポキシ系材料等の接着剤で構成されている。
剥離用粘着テープ144は、接着層を介して、保護部材19とウェーハ11との接着力よりも高い接着力で保護部材19と接着する。つまり、剥離用粘着テープ144を保護部材19に接着した後、剥離用粘着テープ144を上方に引き上げると、保護部材19は、ウェーハ11の表面11a側から剥離するが、剥離用粘着テープ144とは接着したままである。
剥離装置140は、保護部材19上に送り出された剥離用粘着テープ144をチャックテーブル142に向けて加圧する円柱状の加圧ローラー146を有する。加圧ローラー146の円柱の長さは、例えば、剥離用粘着テープ144の直径よりも大きい。また、加圧ローラー146は、円柱の長さ方向を軸として回転可能に構成されている。
また、剥離装置140は、保護部材19に貼り付けられた剥離用粘着テープ144をウェーハ11から引き離すクランプユニット(不図示)を有する。クランプユニットは、例えば、保護部材19に接着していない剥離用粘着テープ144の一部を挟み、且つ、挟んだ状態で引き上げるよう構成されている。
保護部材除去ステップ(S60)では、まず、保護部材19が上側になるように、保持面142a上にフレームユニット39を配置する。次に、保持面142aに吸引源の負圧を作用させることにより、フレームユニット39をチャックテーブル142で吸引保持する。
次に、送り出し機構を用いて、剥離用粘着テープ144の粘着層側が保護部材19に接し、剥離用粘着テープ144の基材層側が加圧ローラー146に接する態様で、保護部材19と加圧ローラー146との間に剥離用粘着テープ144を送り出す。
そして、加圧ローラー146がチャックテーブル142に対して図9(A)に示す矢印148の向きに移動する様に、チャックテーブル142と加圧ローラー146とを相対的に移動させる。これにより、保護部材19の表面19aに剥離用粘着テープ144を貼り付ける。図9(A)は、保護部材19に剥離用粘着テープ144を貼り付ける様子を示す一部断面側面図である。
保護部材19に剥離用粘着テープ144を貼り付けた後、剥離用粘着テープ144及びクランプユニットを用いて、保護部材19をウェーハ11から剥離する。図9(B)は、剥離用粘着テープ144を用いて、保護部材19をウェーハ11から剥離する様子を示す一部断面側面図である。
本実施形態では、フレームユニット39をチャックテーブル142で吸引保持した状態で、剥離用粘着テープ144の端部領域144aを剥離装置140のクランプユニットで挟み、ウェーハ11から離す様に保護部材19を引き上げる。
更に、端部領域144aをウェーハ11の表面11aと平行な方向に移動させることで、引き上げた保護部材19を表面11aと平行な方向に引き剥がす。これにより、剥離用粘着テープ144はウェーハ11から引き離され、保護部材19はウェーハ11から剥離される。
本実施形態では、剥離用粘着テープ144を用いて保護部材19をウェーハ11から機械的に剥離できる。それゆえ、保護部材19を溶解させる有機溶剤を用いて保護部材19を除去する場合に比べて、エッチング溝11eで分割されたウェーハ11(即ち、複数のデバイスチップ)が有機溶剤で汚染されることを回避できる。
図9(C)は、保護部材19を剥離した後の様子を示す一部断面側面図である。保護部材除去ステップ(S60)後に、粘着テープ37上で複数のデバイスチップが露わになる。そこで、粘着テープ37の粘着層の接着力を低下させた上で、フレームユニット39をピックアップ装置(不図示)等へ移し、各デバイスチップをピックアップしてよい。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。