JP7212242B2 - 被研磨物の保持具 - Google Patents
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Description
従来一般的な研磨装置は、図1に示した本発明の実施形態と同様の構成を備えている。すなわち、研磨装置1は、被研磨物2を保持する保持パッド3が設けられた保持定盤4と、研磨パッド5が設けられた研磨定盤6とを備えており、保持定盤4の保持パッド3により被研磨物2を保持して、研磨定盤6に保持した研磨パッド5を上記被研磨物2に押圧させた状態で摺動させるとともにスラリーS(研磨液)を上記研磨パッド5による研磨領域に供給するようになっている。
上記保持パッド3による被研磨物2の保持性が不十分であると、研磨加工中に被研磨物2が横ずれしたり、脱落するおそれがあるため、従来ではさらに上記保持パッド3の下面3A(保持面)の外周部側に枠状部材8を粘着層9により貼り付けて、枠状部材8によって囲繞した状態で被研磨物2を保持パッド3の下面3A(保持面)に保持し、その状態で被研磨物2を研磨するようにしている。
ところで、従来、被研磨物の平坦性等を向上させるようにした研磨装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1の研磨装置においては、枠状部材における保持パッドへの接着面をラッピング及び/又は研磨して研磨厚さの精度を向上させるようにしている。
上記粘着層により上記保持パッドの保持面に接着される上記枠状部材の接着面にドット状の無数の凸部が格子状に形成されており、各凸部の高さの平均が1~10μmとなっていることを特徴とするものである。
他方、保持定盤4の下面4Aの全域にわたって保持パッド3が設けられており、この保持パッド3の下面3A(保持面)における外周側には、環状をした枠状部材8が粘着層9により貼り付けられている。そして、研磨対象となる被研磨物2は、枠状部材8の内方側となる保持パッド3の下面3Aの中央側の領域に吸着して保持されるようになっている。枠状部材8と保持パッド3により、被研磨物2を保持する保持具10が構成されている。
保持パッド3は、シート状のポリウレタン(ポリウレタンシート、発泡ポリウレタンシートともいう)であることが好ましい。さらに、被研磨物2の保持性においては、複数の涙形状(teardrop-shaped)気泡を有するポリウレタンシートが好ましい。涙形状気泡は、湿式成膜法によってポリウレタンシート内部に形成される気泡(異方性があり、樹脂シートの上部(被研磨物と接する側)から下部に向けて径が大きい構造を有する気泡)を意図するものであり、乾式成型法によって形成される略球状の気泡と区別するために用いられる。従って、本発明の複数の涙形状気泡を有するポリウレタンシートは、湿式成膜法により形成されたポリウレタンシートと言い換えることができる。湿式成膜法とは、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後、該有機溶媒は溶解するが該樹脂は溶解しない凝固液中に通して該有機溶媒を置換し、凝固させ、乾燥して発泡層を形成する方法を意味する。通常、湿式成膜法によりポリウレタンシートを製造すると、ポリウレタンシート内部に略涙形状のマクロ気泡(涙形状気泡)が複数生じる。
ポリウレタン樹脂の種類に特に制限はなく、種々のポリウレタン樹脂の中から使用目的に応じて選択すればよい。例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、又はそれら混合系の樹脂を用いることができる。
ポリエステル系の樹脂としては、エチレングリコールやブチレングリコール等とアジピン酸等とのポリエステルポリオールと、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等のジイソシアネートとの重合物が挙げられる。
ポリエーテル系の樹脂としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等のイソシアネートとの重合物が挙げられる。
ポリカーボネート系の樹脂としては、ポリカーボネートポリオールと、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等のイソシアネートとの重合物が挙げられる。
これらの樹脂は、DIC(株)製の商品名「クリスボン」や、三洋化成工業(株)製の商品名「サンプレン」、大日精化工業(株)製の商品名「レザミン」など、市場で入手可能な樹脂を用いてもよく、所望の特性を有する樹脂を自ら製造してもよい。
保持パッド3の被研磨物2を保持する下面3A(保持面)は、バフ処理などの研削処理が施されていても施されていなくてもよいが、研削処理が施されていないことが好ましい。すなわち、保持パッド3の被研磨物2を保持する下面3A(保持面)は、スキン層を有することが好ましい。研削処理が施されていないと、被研磨物2との吸着性が向上し、研磨加工中に生じる被研磨物2の保持パッド3上での横ずれを低減しやすい。
このように、被研磨物2は、保持パッド3の下面3Aの中央側の領域に保持されるとともに枠状部材8によって囲繞されるので、被研磨物2が研磨される際に下面3Aに沿って横への位置ずれや脱落を防止できるようになっている。
被研磨物2の研磨加工を行う際には、保持定盤4を介して被研磨物2を研磨パッド5に設定圧力で押し当てながら回転させるとともに、スラリー供給手段7から研磨パッド5の研磨面5AにスラリーSを供給するようになっている。これにより研磨面5Aと被研磨物2とが摺動するとともに、それらの間にスラリーSが入り込むことで、被研磨物2の研磨が行われるようになっている。以上の構成は、従来公知の研磨装置と変わるところはない。
すなわち、図2(a)に示すように、本実施形態においては、先ず、枠状部材8の材料として所要の厚さで環状に成形した材料108を準備する。なお、この図2は、材料108の断面の要部の模式図を示している。
材料108としては、所要の厚さをした樹脂及び1種以上の繊維を含んだ環状の樹脂板を用いる。製造方法としては従来公知の上記特許文献1の段落0047~0048にも開示されており、樹脂を織布に含侵させるか、或いは塗布する。
樹脂の種類としては特に制限はないが、研磨時に研磨パッド5と接することにより発生する摩擦熱や摩耗を考慮すると、熱硬化性樹脂で耐熱性に優れるエポキシ樹脂が好ましい。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
一方、織布に用いる繊維は、有機繊維であっても無機繊維であってもよいが、後述する枠状部材8の表面を切削することによって織布に由来する凸部を形成させるためには、繊維は樹脂よりも硬いものであることが好ましく、そのような点から無機繊維を含むことが好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維が挙げられる。これらの中でもガラス繊維が好ましい。枠状部材8の内部に剛性の高いガラス繊維を配することにより、研磨加工時に被研磨物2が枠状部材8の内周面(保持孔の側面)に衝突したときの衝撃強さを高めることができ、衝撃による枠状部材8の剥離を抑えることができる。また、枠状部材8に含まれる繊維が有機繊維のみであると、保持パッド5と枠状部材8を粘着層9により貼り合わせる工程の熱プレス時に枠状部材8がゆがみやすいが、耐熱性の高いガラス繊維を枠状部材8の内部に要することで、保持パッド3と枠状部材8を粘着層9により貼り合わせる工程の熱プレス時に枠状部材8が熱で反ってゆがんでしまうのを抑制することができる。これにより、枠状部材8と貼り合わせた保持パッド3の表面を平滑に保てるため、被研磨物2の保持面を平滑に保てることができ、被研磨物2の平坦性を更に向上することが出来る。
ガラス繊維としては、当技術分野において慣用のものを使用することができる。例えば、繊維径が約3.0μm~約10μm、構成フィラメント数70~200本のガラス糸を使用することができる。また、ガラス繊維は、平織りして織布の形で用いられることが好ましい。ガラス繊維織布の厚さは、通常は約0.170mm~約0.200mmである。好ましいガラス繊維織布としては、IPCスペック7628 (日東紡社製)、厚さ0.180mm、平均繊維の質量209g/m2、密度タテ44本/25mm、ヨコ32本/25mmなどが挙げられる。
こうして材料108として用意された樹脂板の表面108Aには、不規則な間隔で凹凸が形成されており、この状態における凸部の頂点と隣接位置の凹部の底部の高低差は大きなものとなっている(図3(a)参照)。
なお、図4に示した従来技術においても、枠状部材8として本発明と同様の環状の樹脂板を準備し(図4(a))、その上面となる接着面8Aをラッピング等で研磨するようにしている(図4(b))。しかしながら、この従来技術においては、ラッピング等で接着面8Aを研磨したことにより、該接着面8Aが平滑になりすぎて、保持パッド5との接着力が弱くなるという問題がある。
これに対して、本実施形態では、上記材料108を準備したら、その後、該材料108における、保持パッド3に接着される側の表面108A(上面)を円周方向に沿って所定の回転数、送り速度、回数にて切削量を制御しながらルーター加工を施し切削することで、表面108Aに織布に由来するドット状の無数の凸部108Bが格子状に形成される(図2(b)参照)。
ルーター加工時の回転数は5000~10000rpm、送り速度は200~700mm/min、回数は3~5回が好ましい。これらの上限を超えると表面に加工筋が残り、枠状部材8の平坦性が損なわれるおそれがある。
ルーター加工に用いる回転刃物工具としては特に制限はないが、刃数は2~4枚、径はφ6~10mmのエンドミルを用いることができる。
隣り合うドット状の凸部108Bの間隔Pの平均は1000μm以下であることが好ましい。1000μmを超えると保持パッド3の下面3A(保持面)に粘着層9によって貼りつけた際のアンカー効果が期待されず、研磨時に枠材部材8が剥離するおそれがある。
また、各凸部108Bの高さHの平均は1~10μmであることが好ましい。1μmを下回ると、研磨時にスラリーSが保持パッド3と枠材部材8との接着面から内部へ侵入することで剥離が起こる要因となり、10μmを超えると保持具10全体の平坦性が損なわれ、被研磨物2へ悪影響を及ぼすおそれがある。
このように、本実施形態では、所定の回転数、送り速度、回数にてルーター加工を施し切削すると、枠状部材8となる材料108の表面108Aにドット状で無数の凸部108Bが格子状に形成される。これにより、環状をした枠状部材8の製造が終了する(図2(b))。
このようにして製造された枠状部材8は、その表面8A(接着面)にドット状の無数の凸部8Bが格子状に形成されており、接着面としての表面8Aが粘着層9を用いて上記保持パッド3の下面3A(保持面)に接着されるようになっている(図1)。
次いで、枠状部材8は次のように調製した。まず、繊維径が6.0μm、構成フィラメント数150本、ガラス繊維織布の厚さ0.170mm、平均繊維質量209g/m2、密度タテ44本/25mm、ヨコ32本/25mmのガラス繊維を含有する厚さ600μmのエポキシ樹脂板を、外周直径355mm、内周直径302の円環状に加工した。その片面(上面)をHAMジャパン社製(HAM40-5151)φ6mm4枚刃エンドミルを用い、回転数10000rpm、送り速度600mm/minにて円周方向に沿って4周加工し、56μm切削した。
ルーター加工をした表面の隣り合うドット状の凸部108Bの間隔P、および隣り合う凸部108Bと凹部の高さH(高低差)は次のように測定した。すなわち、Zygo製走査型白色干渉計(型式:Nexview)で20倍対物レンズを用い、枠材部材8のルーターで加工した任意の表面(5000μm×2000μm)における凸部と凹部が繰り返されている部分をスライスし、その断面波形をカットオフ値λc=200μmの輪郭曲線フィルタをかけた。得られた断面波形から間隔Pの平均は780μm、高さHの平均は1.63μmであった(図3(b)参照)。
得られた枠状部材8のルーター加工面(表面8A)と保持パッド3を貼り合わせ、実施例に係る被研磨物の保持具10を得た。
枠状部材8としてガラス繊維を含有するエポキシ樹脂板を円環状に加工し、ルーター加工せずにそのまま保持パッド3に貼りつけたこと以外は実施例と同様にして比較例1に係る被研磨物の保持具10を得た。なお、比較例1で用いられる枠状部材8の表面における隣り合うドット状の凸部8Bの間隔Pの平均は580μm、隣り合う凸部と凹部の高さHの平均は12.4μmであった。
枠状部材8としてガラス繊維を含有するエポキシ樹脂板を円環状に加工し、表面をラップ研磨により200μm切削し、加工面を保持パッド3に貼りつけたこと以外は実施例と同様にして比較例2に係る被研磨物の保持具を得た。なお、比較例1で用いられる枠状部材の表面における隣り合うドット状の凸部の間隔Pの平均は820μm、隣り合う凸部と凹部の高さHの平均は0.78μmであった。
(研磨条件)
研磨パッド:フジボウ愛媛(株)社製不織布パッドFPK550
回転数:(定盤)40rpm/(トップリング)41rpm
研磨圧:100g/cm2
揺動:20mm
研磨剤:フジミインコーポレーテッド社製 GLANZOX 1306(原液:水=1:20)
被研磨物:12インチシリコンウエーハ(厚み780μm)
(評価)
ダミー用の被研磨物6枚を1バッチ研磨加工後、続けて測定用の被研磨物6枚を1バッチ研磨加工し、平坦性を評価した。平坦性は、例えば、光学式表面粗さ計にて外周端部から中心に向かい0.3mmの位置より半径方向に2mmの範囲で2次元プロファイル像を得る。得られた2次元プロファイル像において、半径方向をX軸、厚み方向をY軸としたときに、外周端部からX=0.5mmおよびX=1.5mmの座標位置のY軸の値がY=0となるようにレベリング補正した。このときの2次元プロファイル像のX=0.5~1.5mm間におけるPV値を相対値で表した。平坦性の測定には、表面粗さ測定機(Zygo社製、型番New View 5022)を使用した。また、平坦性については、比較例1の保持具を用いて被研磨物を研磨したときの平坦性に対する実施例1、2の保持具を用いて被研磨物を研磨したときの平坦性の比を、平坦性(相対値)として算出した。平坦性(相対値)が小さいほど、比較例1の保持具を用いた場合に比べて、研磨加工後の被研磨物の平坦性が良好であることを意味する。さらに、研磨加工終了後、保持具の枠状部材が保持パッドからの剥離有無を目視で確認した。なお、剥離の評価基準としては、枠状部材の剥離が認められない場合には○、枠状部材の剥離が一部でも認められる場合には×とそれぞれ表した。
さらに実施例では研磨後における枠状部材の剥離が確認されなかったが、比較例2は枠状部材と保持パッドとの接着面へのスラリー侵入による剥離が起こる結果となった。
3A‥下面(保持面) 4‥保持定盤
5‥研磨パッド 6‥研磨定盤
8‥枠状部材(保持具) 8A‥表面(接着面)
8B‥凸部
Claims (3)
- 上面が保持定盤に取り付けられるとともに下面は被研磨物を保持する保持面となる保持パッドと、保持パッドの保持面の外周側に粘着層により貼り付けられて、該保持面の中央側に被研磨物が保持された際に該被研磨物を囲繞する枠状部材とを備えた被研磨物の保持具において、
上記粘着層により上記保持パッドの保持面に接着される上記枠状部材の接着面にドット状の無数の凸部が格子状に形成されており、各凸部の高さの平均が1~10μmとなっていることを特徴とする被研磨物の保持具。 - 上記枠状部材の材料は、ガラス織布にエポキシ樹脂を含侵、又は塗布して得られたガラスエポキシ樹脂板であることを特徴とする請求項1に記載の被研磨物の保持具。
- 隣り合う上記凸部の間隔Pの平均が1000μm以下となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被研磨物の保持具。
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